説明

防水構造

【課題】防水シートが損傷しても、水が防水下地側へ漏水しにくくする。
【解決手段】防水下地1の上に並べて配置された防水性を有する複数の断熱板2と、隣接する断熱板2どうしの目地の全長にわたって密閉状態に設置された防水テープMと、各断熱板2の上に点在させてネジ部材4で防水下地1にそれぞれ固定された複数の防水シート固定板5と、各防水シート固定板5にわたって配置されて、その下面を各防水シート固定板5に固定してある防水シート3と、ネジ部材4の周りにおいて防水シート固定板5と断熱板2との間に設置され、ネジ部材4の貫通部分を密閉状態にシールするシール材6とを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水下地の上に断熱板を敷き詰めて断熱層を形成し、その断熱層の上に防水シートを敷設して防水層を形成してある防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防水構造としては、防水下地の上に並べて配置された発泡樹脂製の複数の断熱板と、前記断熱板の目地での下方から上方への空気の流通を防ぐ密閉テープと、前記各断熱板の上に点在させてネジ部材で前記防水下地にそれぞれ固定された複数の防水シート固定板と、前記各防水シート固定板にわたって配置されて、その下面を前記各防水シート固定板に固定してある防水シートを設けてあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−77506号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の防水構造によれば、例えば、防水シートが損傷すると、防水シート上の水はその損傷部分を通して裏面側に回り、防水下地側への漏水を引き起こす危険性が高い。
即ち、防水性の低い断熱板を使用してある場合には、防水シートの裏面側に廻った水は、断熱板を通して下方の防水下地側へ漏水する。また、防水性を有する断熱板を使用していたとしても、防水シート固定板のネジ部材が断熱板を貫通しているから、ネジ部材周りが漏水経路となって防水下地側への漏水を引き起こす危険性が高い。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、防水シートが損傷しても、水が防水下地側へ漏水しにくい防水構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、防水下地の上に並べて配置された防水性を有する複数の断熱板と、隣接する前記断熱板どうしの目地の全長にわたって密閉状態に設置された防水テープと、前記各断熱板の上に点在させてネジ部材で前記防水下地にそれぞれ固定された複数の防水シート固定板と、前記各防水シート固定板にわたって配置されて、その下面を前記各防水シート固定板に固定してある防水シートと、前記ネジ部材の周りにおいて前記防水シート固定板と前記断熱板との間に設置され、前記ネジ部材の貫通部分を密閉状態にシールするシール材とを設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、防水シートによる第1防水層に加えて、防水性を有する複数の断熱板と、それらの目地全長にわたって密閉状態に設置された防水テープとによる第2防水層が構成され、二重の防水層によって、より確実な防水を実現することができる。
また、断熱板を貫通するネジ部材の設置箇所については、前記ネジ部材の周りにおいて前記防水シート固定板と前記断熱板との間に設置され、前記ネジ部材の貫通部分を密閉状態にシールするシール材とを設けてあるから、ネジ部材の貫通部分に関しても防水性を維持することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記シール材は、発泡ゴム体によって構成してあり、前記防水シート固定板と前記断熱板とによって挟圧されているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、シール材が発泡ゴム体で構成してあるから、中実のシール材に比べてシール材の弾性変形能を高く、シート固定板と断熱板とで挟圧される際、少ない力で、弾性変形させることができる。また弾性変形能が高いことから、挟圧されるシート固定板や断熱板の形状にシール材が馴染みやすく、シール対象の隙間に満遍なく拡がって高いシール効果を発揮することができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記防水下地より立ち上がる建物立上部と前記断熱板との取り合い部には、その取り合い部全長にわたって密閉状態に防水テープを設置してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、断熱板と防水テープとによる第2防水層の縁部を、防水テープによって建物立上部と密閉状態に連結することで、より完璧な第2防水層を形成することができ、前記防水シートによる第1防水層と合わせた二重防水層の信頼性を、更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】防水構造を示す説明斜視図
【図2】防水構造を示す断面図
【図3】防水構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3は、本発明の防水構造を採用した屋根の一例を示すもので、コンクリートスラブ(防水下地に相当)1の上方に、複数の断熱板2を並設すると共に、その上を覆う状態に防水シート3を敷設して構成してある。尚、当該防水構造に関しては、新築工事や改修工事のいずれの場合にも適用することができる。
防水構造について更に詳しく説明すると、前記コンクリートスラブ1の上に並べて配置された防水性を有する複数の断熱板2と、隣接する前記断熱板2どうしの目地の全長にわたって密閉状態に設置された防水テープMと、前記各断熱板2の上に点在させてネジ部材4で前記コンクリートスラブ1にそれぞれ固定された複数の防水シート固定板5と、前記各防水シート固定板5にわたって配置されて、その下面を前記各防水シート固定板5に固定してある防水シート3と、前記ネジ部材4の周りにおいて前記防水シート固定板5と前記断熱板2との間に設置され、前記ネジ部材4の貫通部分を密閉状態にシールするシール材6とを設けて屋根防水構造が構成されている。
【0015】
防水下地となる前記コンクリートスラブ1は、現場打設によって形成されたコンクリートスラブに限らず、例えば、プレキャストコンクリートパネルや、その他のセメント二次製品によるパネルを敷設して構成してあるものや、例えば、折板や単なる平らな金属板や、所謂「デッキプレート」や、野地板、屋根構造部材等、防水の下地となるものであればよい。
【0016】
前記断熱板2は、本実施形態においては防水性に加えて耐火性をも備えさせてあり、断熱本体部2bと、その表裏面を被う金属外皮部2aとを一体に形成して構成してある(図2、図3参照)。
断熱板2は、細長い板形状に形成してあり、前記コンクリートスラブ1の上に順次並べて配置される(図1参照)。
また、前記断熱本体部2bは、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、適度な強度と耐熱性と防水性とを備えている。無数の独立気泡が内在していることによって、高い防水性能と断熱性能とを発揮できるように構成してある。
前記金属外皮部2aは、前記断熱本体部2bの外周面を包み込む状態に一体的に設けられている。この金属外皮部2aは、具体例として、亜鉛メッキ鋼板の薄板材で構成してあり、高い防水性能と耐火性能とを発揮できるように構成してある。
【0017】
前記防水シート3は、防水性を有する合成樹脂製シート(例えば、軟質塩化ビニル)によって構成してあり、敷設された前記断熱板2上に点在させて設置した防水シート固定板5を使用して固定される。尚、建物外周部でコンクリートスラブ1より立ち上がる建物立上部7においては、その建物立上部7に沿って防水シート3も立ち上げられて、コーキング処理等の端部防水処理を施される。
この防水シート3の一連によって、第1防水層P1が構成される。
【0018】
前記防水テープMは、防水性を有する合成樹脂製テープで構成してあり、前記断熱板2どうしの目地において両断熱板2にわたる状態で目地全長に貼着してあることで、目地の防水を図っている。具体的な構成の一例は、樹脂繊維の不織布層の表面に金属ラミネート層を一体に設け、裏面に接着層を備えたものが挙げられる。
尚、建物外周部の前記建物立上部7においては、建物立上部7と断熱板2との取り合い部全長にわたって、この防水テープMを貼着して取り合い部の防水を図ってある。
従って、防水テープMと断熱板2との一連によって、第2防水層P2が構成され、前記第1防水層P1とこの第2防水層P2とによって構成される二重防水層によって、より確実な防水構造を形作っている。
【0019】
前記防水シート固定板5は、図1、図2に示すように、円板形状に形成してあり、薄い金属板を凹凸のある断面形状にプレス成形することで、軽量でありながら強度の高いものに構成されている。また、防水シート固定板5の中央部には、ネジ部材4を挿通するネジ挿通孔5aが形成してあり、その周りには、ネジ部材4の拡径頭部4aが納まる座繰り部5bが形成してある。従って、防水シート固定板5をネジ部材4でコンクリートスラブ1に固定した状態では、拡径頭部4aが防水シート固定板5の上面より上方へ突出しないように構成されている。
また、防水シート固定板5の上面には、ホットメルト接着剤層5cを一体的に設けてあり、コンクリートスラブ1に固定した防水シート固定板5の上から防水シート2を被せた後、防水シート2越しに電磁誘導加熱装置を使用して防水シート固定板5を加熱し、その熱によって前記ホットメルト接着剤層5cを溶かして防水シート固定板5に防水シート2を接着することができる。
尚、建物立上部7と断熱板2との取り合い部に設置される防止シート固定板5は、薄い帯板を幅方向中間部で屈曲させた断面「L字」状に形成したもの(又は、帯板状のもの)を使用する(図1、図3参照)。
【0020】
前記シール材6は、発泡ゴム体(例えば、EPDMゴムの発泡体)によって構成してあり、前記防水シート固定板5より小径の円板形状に成形してある。
中央部には、前記ネジ部材4を挿通自在なネジ挿通孔6aが設けられている。
前記防水シート固定板5をコンクリートスラブ1に固定する際に、両ネジ挿通孔5a,6aが合致するように防水シート固定板5の裏面に沿わせてシール材6を配置する。ネジ部材4を両ネジ挿通孔5a,6aに挿通させて断熱板2を貫通させてコンクリートスラブ1に螺着させると、シール材6は、ネジ部材4の周りにおいて前記防水シート固定板5と前記断熱板2とによって挟圧され弾性変形しながらネジ部材4周りの空間を埋め、前記ネジ部材4の貫通部分を密閉状態にシールすることができる。
従って、前記第2防水層は、ネジ部材4が貫通するものの、その貫通部分を前記シール材6によって密閉しているから、第2防水層としての防水性能を維持することができる(図2参照)。
尚、建物立上部7と断熱板2との取り合い部に設置されるL字状の防水シート固定板5に対応するシール材6は、その防水シート固定板5の底面と同形のものを使用する。
【0021】
次に、防水手順について説明する。
[1] コンクリートスラブ1上に断熱板2を敷き詰める。その際、断熱板2の目地、及び、断熱板2と建物立上部7との取り合いには、防水テープMを貼着して第2防水層P2を形成する。
[2] 断熱板2の上に、横間隔をあけて防水シート固定板5を配置してネジ部材4によってコンクリートスラブ1に固定する。防水シート固定板5の配置にあたっては、裏面側に前記シール材6を沿わせて配置しておき、ネジ部材4の締め付けに伴ってシール材6を挟圧してネジ周りの密閉を図る。
[3] 防水シート3を敷き詰めて、上方から電磁誘導加熱装置を使用して防水シート固定板5を加熱し、その熱によって前記ホットメルト接着剤層5cを溶かして防水シート固定板5に防水シート2を接着することで第1防水層P1を形成する。
【0022】
本実施形態の防水構造によれば、防水シートによる第1防水層と、断熱板と防水テープとによる第2防水層との二重の防水層によって、より確実な防水を実現することができる。また、弾性変形能の高い発泡ゴム体によるシール材をネジ部材の周りに設置することで、高いシール効果を発揮して、ネジ部材の貫通部分の防水性をも維持することが可能となる。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
〈1〉 前記防水下地は、先の実施形態で説明したコンクリートスラブ1に限るものではなく、例えば、折板やデッキプレートや、野地板や、ALC板等であってもよく、その形式や材質は特に限定されるものではない。
〈2〉 前記防水シート3は、先の実施形態で説明した合成樹脂製防水シートに限るものではなく、例えば、合成ゴム製シートやアスファルトシート等の防水シート、又は、それらの積層体等であってもよく、それらを含めて防水シートと総称する。
また、防水シートに、ガラス繊維やポリエステル繊維等の繊維性基材を、層状又は全体に混入させてあってもよく、補強効果と共に寸法安定効果等を発揮させることも可能である。
〈3〉 前記断熱板2は、先の実施形態で説明したように断熱本体部2bと金属外皮部2aとからなるものに限らず、他の構成を採用することができるものであり、要するに、防水性を有するものであればよい。
また、形状的には、先の実施形態で説明したように隣接する端面部どうしを単純に突き合わせるだけの構成に限るものではなく、例えば、断熱板2の端面部に、隣接する断熱板2と嵌合できるように構成してあってもよい。
〈4〉 前記防水テープは、先の実施形態で説明したように、断熱板2の表面に貼着する事に限らず、表裏両面、又は、裏面のみに貼着するものであってもよい。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 コンクリートスラブ(防水下地に相当)
2 断熱板
3 防水シート
4 ネジ部材
5 防水シート固定板
6 シール材
7 建物立上部
M 防水テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地の上に並べて配置された防水性を有する複数の断熱板と、
隣接する前記断熱板どうしの目地の全長にわたって密閉状態に設置された防水テープと、
前記各断熱板の上に点在させてネジ部材で前記防水下地にそれぞれ固定された複数の防水シート固定板と、
前記各防水シート固定板にわたって配置されて、その下面を前記各防水シート固定板に固定してある防水シートと、
前記ネジ部材の周りにおいて前記防水シート固定板と前記断熱板との間に設置され、前記ネジ部材の貫通部分を密閉状態にシールするシール材とを設けてある防水構造。
【請求項2】
前記シール材は、発泡ゴム体によって構成してあり、前記防水シート固定板と前記断熱板とによって挟圧されている請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記防水下地より立ち上がる建物立上部と前記断熱板との取り合い部には、その取り合い部全長にわたって密閉状態に防水テープを設置してある請求項1又は2に記載の防水構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−52394(P2011−52394A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200180(P2009−200180)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)