説明

防水秤及びそれに用いる計量ブロック

【課題】高精度の計量が可能な防水秤を提供する。
【解決手段】秤の筐体124の内部に配置されるユニット化された計量ブロック40が、筐体124に取り付けるための取付部を有する固定部と、固定部にロバーバル機構で支持される荷重受け部と、荷重受け部の変位を検出するセンサ部と、荷重受け部の荷重支承部材に内縁が保持されたダイアフラム48と、ダイアフラム48の外縁を保持する、固定部に支持された円環状部材46と、を備え、筐体121の開口122と円環状部材46との間が、気密に結合される。ダイアフラム48を有する計量ブロック40を筐体内に配置して筐体の開口122と計量ブロックの円環状部材46との間を気密に結合すれば、秤の防水構造が完成する。この秤は、筐体とダイアフラムとが切り離されているため、筐体に加わる力は、荷重受け部の変位に影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を備えた秤と、それに組み込む計量ブロックに関し、特に、高精度の計量が可能な防水秤を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
防水機能を備えた秤は、従来から、食品や水産物などを扱う分野で広く利用され、使用後に秤量皿の汚れを落とすためにホースで水を掛けるような使われ方がされている。
近年、水やホコリが機器に降り掛かり、あるいは、湿気が充満するような、秤にとって非常に過酷な環境の中で作業が行われる生産や流通の現場でも、高精度の計量の必要性が高まっており、それに応える防水構造の電子天秤の出現が求められている。
従来の防水秤は、例えば、図10に示すように、秤の筐体1の開口と、秤量皿3の荷重が伝わる荷重伝達棒4との間にダイアフラム9を配して、測定空間を外界から密閉し、且つ、荷重伝達棒4が、秤量皿3に載せた荷重に応じて上下に変位できるように構成されている(下記特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−283328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、荷重伝達棒と筐体とをダイアフラムで結合する従来の防水秤の構造では、高精度の計量の場合、筐体に加わる力が、ダイアフラムを通じて荷重伝達棒の変位を招来するため、精確な計測が困難である。
また、従来の防水秤は、各機種の秤において共通的に使用できる構成が少なく、汎用性に欠ける面がある。
【0004】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、高精度の計量が可能な防水秤を提供し、また、この防水秤に用いる汎用性を備えた計量ブロックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、防水秤であって、秤の筐体の内部に配置されるユニット化された計量ブロックが、前記筐体の底部に取り付けるための取付部を有する固定部と、前記固定部にロバーバル機構で支持され、秤量皿上の荷重を受けて変位する荷重受け部と、前記荷重受け部の変位を検出するセンサ部と、前記秤量皿上の荷重が伝わる前記荷重受け部の荷重支承部材に内縁が保持されたダイアフラムと、前記ダイアフラムの外縁を保持する、前記固定部に支持された円環状部材と、を備え、前記筐体の上面に設けられた開口と前記円環状部材との間が、前記ダイアフラムに影響を与えない形態で気密に結合されることを特徴としている。
このユニット化された計量ブロックは、荷重支承部材の荷重による変位を保障し、且つ、荷重支承部材周辺からの水分やホコリの浸入を防止するダイアフラムを有しているため、この計量ブロックを筐体内に配置して筐体の開口と計量ブロックの円環状部材との間を気密に結合すれば、秤の防水構造が完成する。この秤は、筐体とダイアフラムとが切り離されているため、筐体に加わる力は、荷重支承部材の変位に影響を与えない。
【0006】
また、本発明の防水秤では、前記円環状部材の内側に前記ダイアフラムの外縁を固定し、前記円環状部材の外側に前記筐体の開口の周縁を、パッキンを介して固定するように構成することができる。
こうすることで、ダイアフラムに影響を与えずに、筐体の開口と計量ブロックとの間を気密に結合することができる。
【0007】
また、本発明は、秤の筐体の内部に配置されるユニット化された計量ブロックであって、前記筐体の底部に取り付けるための取付部を有する固定部と、前記固定部にロバーバル機構で支持され、秤量皿上の荷重を受けて変位する荷重受け部と、前記荷重受け部の変位を検出するセンサ部と、前記秤量皿上の荷重が伝わる前記荷重受け部の荷重支承部材に内縁が保持されたダイアフラムと、前記ダイアフラムの外縁を保持する、前記固定部に支持された円環状部材と、を備え、前記円環状部材が、内側に前記ダイアフラムの外縁を保持するダイアフラム保持部を有し、外側に前記筐体の開口の周縁に固定される筐体結合部を有していることを特徴としている。
この計量ブロックは、荷重支承部材による荷重伝達を保障し、且つ、荷重支承部材周辺からの水分の浸入を防止するダイアフラムを有しているため、いかなる機種の秤の筐体内に組み込んだ場合でも、筐体の開口と円環状部材との間を気密に結合するだけで防水構造が完成する。
【0008】
また、本発明の計量ブロックでは、前記荷重支承部材が、前記ダイアフラムの内縁を挟んで前記荷重受け部に固定されるように構成することができる。
こうすることで、荷重受け部の荷重支承部材においてダイアフラムの内縁を気密に保持することができる。
【0009】
また、本発明の計量ブロックでは、前記円環状部材の前記ダイアフラム保持部の上に、パッキン、前記ダイアフラムの外縁及び円環状の抑え板を順次積層して、前記抑え板と前記円環状部材とを、前記ダイアフラムの外縁及びパッキンを挟んで固定し、前記円環状部材の前記筐体結合部の上で、前記筐体の開口の周縁と前記円環状部材とを、パッキンを介して固定するように構成することができる。
こうすることで、ダイアフラムに影響を与えずに、筐体の開口と計量ブロックとの間を気密に結合することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防水秤は、筐体に加わる力が測定に影響を与えないため、高精度の計量が可能である。
また、本発明の計量ブロックは、汎用性を有しており、筐体を付けない状態で調整を行うことができ、この調整済みの計量ブロックを各機種の防水秤で用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る防水秤の斜視図、図2は、この防水秤の分解斜視図、図3は、図1の防水秤のA−A方向の断面図、図4は、この断面図の一部拡大図、図5は、図1の防水秤のB−B方向の断面図、図6は、この断面図の一部拡大図、図7は、本発明の実施形態に係る計量ブロックの斜視図、図8は、この計量ブロックの主要部の分解斜視図、また、図9は、この計量ブロックのダイアフラムの取り付け構造を示す図である。
【0012】
この防水秤は、図1及び図2に示すように、被計量物を載せる秤量皿10と、秤量皿10を支持する皿受板11と、表示窓123や開口122が設けられた上部筐体121と、電子表示板18及び所要の電子回路が搭載された回路基板19や電池ボックス17、さらには、ユニット化された計量ブロック40が固定される下部筐体124とを有している。下部筐体124の裏側には、高さの調節が可能な支持脚20を設けている。
この下部筐体124に上部筐体121を気密に嵌合すると、筐体121、124内部への水分やホコリの侵入経路が、開口122以外に存在しなくなる。そして、この開口122も後述する構成により密閉される。
【0013】
計量ブロック40は、図7及び図8に示すように、下部筐体124に取り付けるための取付孔45を備えた固定部41と、固定部41にロバーバル機構の平行リンク42、43を介して接続され、秤量皿10上の荷重を受けて上下方向に変位する荷重受け部44と、固定部41の取付孔412及び荷重受け部44の取付孔441に取り付けられて荷重受け部44の変位を検出する音叉センサ50(図3及び図4参照)とを有している。
固定部41及び荷重受け部44は、捻りに対して高い剛性を保つように、アルミニウム系合金を素材としてダイカスト法によりブロック形状に成形されている。また、軽量化を図るための“肉盗み(凹部)”が各所に設けられている。
【0014】
平行リンク42、43には、それぞれ板バネ421、431が結合され、この板バネ421、431が固定部41及び荷重受け部44に固定される。上側の平行リンク42に結合された板バネ421は、固定部41の固定位置413に固定され、荷重受け部44の取付孔443に固定される。また、下側の平行リンク43の板バネ431は、平行リンク42と平行リンク43とが互いに平行になるように、固定部41及び荷重受け部44に固定される(図5、図6)。
平行リンク42が固定される固定部41の固定位置413は、回転部材414の回転により微小変位するように構成されており、この回転部材414を回転して偏置誤差が調整される。
【0015】
また、図2、図7に示すように、計量ブロック40は、さらに、脚部がネジ33で固定部41に固定された円環状部材46と、円環状部材46の上に配置されたパッキン47と、内縁が荷重受け部44の荷重支承部材442で保持されたダイアフラム48と、ダイアフラム48の外縁を固定する円環状の抑え板49とを有している。
荷重支承部材442は、図4、図6、図9(a)に示すように、ボルト形状の部材であり、上部に皿受板11がネジ30で固定される。荷重支承部材442の下部は、荷重受け部44の孔に嵌合され、この孔に向かって横方向から進入するネジ34(図9(a))により固定される。
【0016】
ダイアフラム48は、シリコンゴムで成形され、内縁及び外縁に厚肉の環状体を有し、その間が同心状に波打つ薄肉によって接続されている。このダイアフラム48の内縁は、図9(a)に示すように、荷重支承部材442と荷重受け部44との間に挟まれて、荷重受け部44に固定される。
また、ダイアフラム48の外縁は、図9(b)に示すように、円環状部材46の内側の部分(この部分を“ダイアフラム保持部”と呼ぶことにする。)に固定される。円環状部材46には、パッキン47が配置されており、ダイアフラム48の外縁は、このパッキン47の上に配置され、さらにその上に抑え板49を重ね、抑え板49と円環状部材46とをネジ32で締め付けることにより、ダイアフラム48の外縁が円環状部材46のダイアフラム保持部に固定される。
【0017】
また、図9(c)に示すように、上部筐体121の開口122の周縁が、円環状部材46の外側の部分(この部分を“筐体結合部”と呼ぶことにする。)に固定される。上部筐体121の開口122の周縁は、パッキン47を介して、円環状部材46の筐体結合部に配置され、ネジ31により、円環状部材46に固定される。
このとき、上部筐体121の開口122の周縁が、円環状部材46の上でダイアフラム48と接触しないように、両者の間に隙間を空ける。
【0018】
このように、荷重受け部44と円環状部材46との間をダイアフラム48で塞ぎ、さらに、上部筐体121の開口122の周縁と円環状部材46との間を気密に結合することにより、上部筐体121の開口122からの水分やホコリの浸入は、完全に阻止される。
また、ダイアフラム48は、上部筐体121に接続していないため、ダイアフラム48に結合された荷重受け部44は、筐体に加わる力の影響を受けることなく、秤量皿10上の荷重を伝える。そのため、精確な測定が可能である。
【0019】
また、図7の形態の計量ブロック40は、荷重支承部材442及び荷重受け部44による荷重の伝達を保障し、且つ、荷重支承部材442周辺からの水分の浸入を防止するダイアフラム48を有しているため、いかなる機種の秤の筐体内に組み込んだ場合でも、筐体の開口と円環状部材46との間を気密に結合するだけで防水構造が実現できる。
そのため、図7の形態の計量ブロック40を独立した製品として生産し、且つ、調整して、この計量ブロック40を用いて各機種の防水秤を製造することが可能である。
なお、ここで示した構造や素材、各部材の結合方法等は、すべて一例であって、本発明は、それに限定されない。
また、ここでは、音叉センサを用いて荷重を検出しているが、その他の荷重センサを使用する場合にも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の防水秤は、水やホコリを浴びたり、湿気が充満していたりする過酷な環境でも高精度の計量が可能である。この防水秤は、食品加工や水産物の製造現場、化学品や医薬品の生産現場、電子部品などの化学処理現場、建築現場など、幅広い分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る防水秤の斜視図
【図2】図1の防水秤の分解斜視図
【図3】図1の防水秤のA−A方向の断面図
【図4】図3の断面図の一部拡大図
【図5】図1の防水秤のB−B方向の断面図
【図6】図5の断面図の一部拡大図
【図7】本発明の実施形態に係る計量ブロックの斜視図
【図8】図7の計量ブロックの主要部の分解斜視図
【図9】図7の計量ブロックのダイアフラム取り付け構造を示す図
【図10】従来の防水秤を示す図
【符号の説明】
【0022】
10 秤量皿
11 皿受板
17 電池ボックス
18 電子表示板
19 回路基板
20 支持脚
30 ネジ
31 ネジ
32 ネジ
33 ネジ
34 ネジ
40 計量ブロック
41 固定部
42 平行リンク
43 平行リンク
44 荷重受け部
45 取付孔
46 円環状部材
47 パッキン
48 ダイアフラム
49 抑え板
50 音叉センサ
121 上部筐体
122 開口
123 表示窓
124 下部筐体
412 音叉センサ取付孔
413 板バネ固定位置
414 回転部材
421 板バネ
431 板バネ
441 音叉センサ取付孔
442 荷重支承部材
443 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤の筐体の内部に配置されるユニット化された計量ブロックが、
前記筐体の底部に取り付けるための取付部を有する固定部と、
前記固定部にロバーバル機構で支持され、秤量皿上の荷重を受けて変位する荷重受け部と、
前記荷重受け部の変位を検出するセンサ部と、
前記秤量皿上の荷重が伝わる前記荷重受け部の荷重支承部材に内縁が保持されたダイアフラムと、
前記ダイアフラムの外縁を保持する、前記固定部に支持された円環状部材と、
を備え、
前記筐体の上面に設けられた開口と前記円環状部材との間が、前記ダイアフラムに影響を与えない形態で気密に結合されることを特徴とする防水秤。
【請求項2】
請求項1に記載の防水秤であって、前記円環状部材の内側に前記ダイアフラムの外縁が固定され、前記円環状部材の外側に前記筐体の開口の周縁がパッキンを介して固定されることを特徴とする防水秤。
【請求項3】
秤の筐体の内部に配置されるユニット化された計量ブロックであって、
前記筐体の底部に取り付けるための取付部を有する固定部と、
前記固定部にロバーバル機構で支持され、秤量皿上の荷重を受けて変位する荷重受け部と、
前記荷重受け部の変位を検出するセンサ部と、
前記秤量皿上の荷重が伝わる前記荷重受け部の荷重支承部材に内縁が保持されたダイアフラムと、
前記ダイアフラムの外縁を保持する、前記固定部に支持された円環状部材と、
を備え、
前記円環状部材が、内側に前記ダイアフラムの外縁を保持するダイアフラム保持部を有し、外側に前記筐体の開口の周縁に固定される筐体結合部を有していることを特徴とする計量ブロック。
【請求項4】
請求項3に記載の計量ブロックであって、前記荷重支承部材が、前記ダイアフラムの内縁を挟んで前記荷重受け部に固定されることを特徴とする計量ブロック。
【請求項5】
請求項3または4に記載の計量ブロックであって、前記円環状部材の前記ダイアフラム保持部の上に、パッキン、前記ダイアフラムの外縁及び円環状の抑え板が順次積層され、前記抑え板と前記円環状部材とが前記ダイアフラムの外縁及びパッキンを挟んで固定され、前記円環状部材の前記筐体結合部の上で、前記筐体の開口の周縁と前記円環状部材とが、パッキンを介して固定されることを特徴とする計量ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−258010(P2009−258010A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109216(P2008−109216)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)