説明

防水通音部材およびその製造方法、ならびに防水通音部材担持体

【課題】タブの張出部を引っ張ったときに、防水通音部材が剥離紙から確実に剥離される防水通音部材を提供する。
【解決手段】
本発明の防水通音部材2の製造方法は、第1の層71と、膜予備体61と、第2の層72と、タブ予備体63と、をこの順に積層して積層体52aを作製する工程と、積層体52aの第1の層71からタブ予備体63に向かって刃90を入れ、第1の層71、膜予備体61および第2の層72を切断して第1の接着層21、防水通音膜11および第2の接着層22を形成するとともに、タブ予備体63における第2の層72側の面に第1の接着層21、防水通音膜11および第2の接着層22の端面と連続するノッチ13nを設ける工程と、タブ予備体63を切断してタブ13を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーおよびマイクなどの音響装置を有する電子機器の筐体用の防水通音膜にタブが接着された防水通音部材およびその製造方法に関する。また、本発明は、防水通音部材に剥離紙が接着された態様である防水通音部材担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話およびコードレス電話、ならびにデジタルカメラなどの電子機器では、音響装置が筐体に収容されている。これらの筐体は、音の通過を許容するための開口を有する。この開口を通って水が筐体内に入り込むことを防ぐために、この開口に音が通過することを許容しつつ水が通過することを阻止する防水通音膜を取り付けることが行われている。例えば、特許文献1には、上記の防水通音膜を含む保護カバーアセンブリが開示されている。
【0003】
近年の携帯電話などの電子機器は、従来よりも小型かつ薄型になっており、これに伴って、電子機器の筐体に取り付ける防水通音膜も小型になっている。したがって、近年の電子機器の筐体に防水通音膜を取り付ける際には、防水通音膜を精度よく所定の位置に取り付ける必要がある。このことは、防水通音膜を筐体に取り付ける作業を難しくしている。
【0004】
特許文献2では、防水通音膜を筐体に取り付ける作業を容易にするために、防水通音膜を筐体に取り付けた後に剥離され得るタブを防水通音膜上に設けている。このタブは、防水通音膜から張り出した張出部を有する。このように形成された張出部は掴みやすい。したがって、特許文献2のタブが接着された防水通音膜は、筐体に容易に取り付けられ得る。また、このようなタブを用いることで、防水通音膜を筐体に取り付ける際に防水通音膜自体に直接触れる必要がなくなるので、防水通音膜を傷つけるおそれが低減する。
【0005】
また、特許文献2には、タブが接着された防水通音膜(防水通音部材)を、剥離紙上に担持した防水通音部材担持体が記載されている。この防水通音部材担持体中の防水通音膜を筐体に取り付ける際には、まず、防水通音部材担持体におけるタブの張出部を剥離紙とは反対方向に引っ張ることにより防水通音膜を剥離紙から剥離させ、次に、防水通音膜を筐体に取り付け、最後に、タブの張出部を筐体とは反対方向に引っ張ることによりタブを防水通音膜から剥離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−245332号公報
【特許文献2】特開2009−111993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような防水通音部材担持体のタブの張出部を引っ張ったときには、防水通音膜が剥離紙から確実に剥離されることが望まれる。本発明は、このような防水通音部材担持体に適した防水通音部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような防水通音部材担持体を作製するには、生産性の観点から、まず、防水通音部材担持体におけるタブ以外の部材の素材を、剥離紙上に順に積層して積層体を作製し、次に、剥離紙の反対側から剥離紙に向かって積層体における剥離紙以外の部材を打ち抜き、最後にタブを張り付けることが考えられる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、このようにして製造された防水通音部材担持体のタブの張出部を引っ張ると、防水通音膜が剥離紙から剥離せず、タブが防水通音膜から剥離することがあった。
【0009】
本発明者らは、上記の積層体にタブの素材を含ませて、上記の方法とは反対にタブに向かって積層体を打ち抜けば、タブ側の接着力が向上することを見出した。本発明はこのような観点からなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、音の通過を許容する孔を有する筐体に取り付けられる防水通音膜と、前記防水通音膜上に設けられ、前記防水通音膜が前記筐体に取り付けられた後には剥離されるタブであって、前記防水通音膜から張り出した張出部を有するタブと、を備える防水通音部材の製造方法であって、前記防水通音膜を前記筐体に接着するための第1の接着層を含む第1の層と、前記防水通音膜を含む膜予備体と、前記タブを前記防水通音膜に接着するための第2の接着層を含む第2の層と、前記タブを含むタブ予備体と、をこの順に積層して積層体を作製する工程と、前記積層体の前記第1の層から前記タブ予備体に向かって刃を入れ、前記第1の層、前記膜予備体および前記第2の層を切断して前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層を形成するとともに、前記タブ予備体における前記第2の層側の面に前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層の端面と連続するノッチを設ける工程と、前記タブ予備体を切断して前記タブを形成する工程と、を含む、防水通音部材の製造方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、音の通過を許容する孔を有する筐体に取り付けられる防水通音膜と、
前記防水通音膜の一方面側に設けられ、前記防水通音膜を前記筐体に接着するための第1の接着層と、前記防水通音膜の他方面側に設けられた第2の接着層と、前記第2の接着層上に設けられ、前記防水通音膜が前記筐体に接着された後には剥離されるタブであって、前記防水通音膜から張り出した張出部を有するタブと、を備え、前記タブの前記第2の接着層側の面には前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層の端面と連続するノッチが、前記張出部を区画するように形成されている、防水通音部材を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、タブと防水通音膜との間の接着力が向上する。したがって、本発明の製造方法により製造された防水通音部材を剥離紙上に担持させれば、タブの張出部を引っ張ったとき、防水通音部材が剥離紙から確実に剥離される。
【0013】
また、上記の理由から、本発明の防水通音部材は、剥離紙上に担持させる態様に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される防水通音部材を含む、防水通音部材担持体の一例であって、(A)は防水通音膜の厚さ方向に平行な断面における断面図であり、(B)はタブ側から観察したときの上面図である。
【図2】タブと防水通音膜との位置関係を説明するための図であり、(A)〜(F)は位置関係の例を示す。
【図3】図1に示す防水通音部材担持体の使用方法を説明するための図であり、(A)〜(E)は防水通音部材担持体を利用する際の各場面を示す。
【図4】図1に示す防水通音部材担持体の製造方法を説明するための図であり、(A)〜(G)は防水通音部材担持体の製造工程の各場面を示す。
【図5】図1に示す防水通音部材担持体の製造方法の変形例を説明するための図であり、(A)〜(H)は防水通音部材担持体の製造工程の各場面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される防水通音部材を含む、防水通音部材担持体の一例を示す断面図である。図1(B)は、防水通音部材担持体の上面図である。図1に示す防水通音部材担持体1は、防水通音部材2と剥離紙14とを備え、内部には第1の空間31と第2の空間32が形成されている。防水通音部材2は、第1の接着層21の一方面において剥離紙14と接着している。なお、本実施形態では、1つの剥離紙14に対して1つの防水通音部材2が設けられているが、剥離紙14は、多数個の防水通音部材2により共有されていてもよい。
【0017】
防水通音部材2は、防水通音膜11と、支持層12と、タブ13とを備える。支持層12は中間接着層25により防水通音膜11に接着されており、タブ13は第2の接着層22により支持層12に接着されている。本実施形態では、図1(B)に示すように、防水通音膜11の厚さ方向から見たときに、防水通音膜11および支持層12は同一の長方形の外輪郭を有し、タブ13はそれよりも大きな長方形の外輪郭を有する。ただし、防水通音膜11、支持層12およびタブ13は、例えば円形などの他の形状の外輪郭を有していてもよい。
【0018】
防水通音膜11は、音の通過を許容しつつ液体および埃などの異物の通過を阻止する膜である。
【0019】
防水通音膜11の材料としては、高分子材料が挙げられる。防水通音膜11を構成する好適な高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。また、防水通音膜11はフッ素を含有していることが(フッ素樹脂からなることが)好ましく、ポリテトラフルオロエチレンは、防水通音膜11を構成する材料として特に好適である。本実施形態では、防水通音膜11はフィルム状の形態を有する。また、防水通音膜11は、不織布の態様を有していてもよく、ナノファイバーを集結させることにより構成されていてもよい。また、防水通音膜11には撥水処理が施されていてもよい。
【0020】
支持層12は、防水通音膜11に接着されることにより防水通音部材2の剛性を高める。すなわち、支持層12は、防水通音部材2の形状を安定させる作用を有する。本実施形態では、支持層12は枠状に形成されている。また、支持層12の厚さは、防水通音部材2が取り付けられる筺体の寸法などに基づいて適宜調製可能である。
【0021】
支持層12の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの高分子材料が挙げられる。また、クッション性を有する高分子発泡体(例えばPORON)は、支持層12の材料として好適に用いられ得る。また、本実施形態では、支持層12はフィルム状の形態を有する。
【0022】
なお、図1では、支持層12は中間接着層25により防水通音膜11に接着されているが、支持層12は防水通音膜11に直接接着されていてもよい。例えば、接着方法として熱ラミネートを採用すれば、支持層12を防水通音膜11に直接接着させることができる。また、本実施形態では、支持層12を、防水通音膜11から見てタブ13側に設けているが、支持層12を、防水通音膜11から見てタブ13とは反対側に設けてもよい。また、防水通音部材2に要求される剛性およびその他特性によっては、支持層12を省略してもよい。
【0023】
タブ13は、防水通音部材2をハンドリングする際の掴み代として作用する。また、防水通音膜11が外部の筐体に取り付けられた後は、タブ13は防水通音膜11から(より正確には支持層12から)剥離される。タブ13は、防水通音膜11から張り出した張出部13tを有するように、防水通音膜11上に設けられている。また、タブ13の第2の接着層22側の面にはノッチ13nが、張出部13tを区画するように形成されている。換言すれば、ノッチ13nは、タブ13の張出部13t以外の部分と張出部13tとの境界線に沿って延びている。
【0024】
タブ13と防水通音膜11の位置関係を、図2を参照しながらより詳細に説明する。図2は、防水通音部材担持体1を、タブ13側から観察したときの上面図である。タブ13は、張出部13tがタブ13の1方向に形成されるように、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(A))。また、タブ13は、張出部13tがタブ13の2方向に形成されるように、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(B))。また、タブ13は、張出部13tがタブ13の3方向に形成されるように、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(C))。また、タブ13は、張出部13tがタブ13の4方向(周囲)に形成されるように(張出部13tが防水通音膜11を取り囲む枠状をなすように)、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(D))。また、タブ13は、防水通音膜11の一部を覆うように(防水通音膜11の一部がタブ13から張り出すように)、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(E))。また、図2(A)〜図2(E)では、タブ13の各辺と防水通音膜11の各辺とが平行であるが、タブ13は、タブ13の各辺と防水通音膜11の各辺とが所定の角度θ(0°<θ<90°)を形成するように、防水通音膜11上に設けられていてもよい(図2(F))。また、タブ13および防水通音膜11の形状によっては、タブ13の張出部13tが防水通音膜11を取り囲む環状をなしていてもよい。製造の容易さの観点からは、図2(A)のようにタブ13を設けることが好ましい。また、図2(A)〜図2(D)のようにタブ13が設けられている場合は、タブ13と防水通音膜11との間の接着力を確保でき、ハンドリングが容易となる。
【0025】
ノッチ13nは、第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22の端面に連続するように形成されている。また、ノッチ13nは、例えば、防水通音膜11の厚さ方向に平行な断面において、V字状(対称なV字状であってもよく、タブ13の中心側または周縁側に偏ったV字状であってもよい)の形状を有する。また、防水通音膜11の厚さ方向から見たときに、ノッチ13nは、直線状であってもよく(図2(A))、L字状であってもよく(図2(B))、コの字状であってもよく(図2(C)、(E))、ロの字状であってもよい(図2(D)、(F))。なお、本実施形態では、タブ13の両面は、ノッチ13nが形成されている部分以外において平坦である。
【0026】
タブ13の材料としては、高分子材料および金属が挙げられる。タブ13を構成する好適な高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。タブ13の材料として、クッション性を有する高分子発泡体を採用することもできる。本実施形態では、タブ13はフィルム状の形態を有する。また、タブ13は、不織布の態様を有していてもよく、ナノファイバーを集結させることにより構成されていてもよい。また、タブ13には撥水処理が施されていてもよい。
【0027】
また、防水通音部材2が筺体に取り付けられた後にタブ13が防水通音膜11からスムーズに剥離されるように、タブ13の第2の接着層22側の面には離型処理が施されていることが好ましい。離型処理は、接着剤に対するぬれ性の小さな高分子(離型剤)をコーティングする処理である。離型処理に用いられる高分子としては、シリコーン系の高分子が例示される。また、コーティングの方法としては、塗布が例示される。
【0028】
また、タブ13の厚さは0.001mm〜1mmが好ましい。また、ノッチ13nの深さは、例えば、タブ13の厚さの1%〜95%が好ましい。
【0029】
剥離紙14は、平坦なシートである。本実施形態の剥離紙14における防水通音膜11側の面には離型処理が施されている。防水通音膜11を外部の筐体に取り付ける際には、防水通音部材2を剥離紙14から剥離させる。なお、剥離紙14の材料として、タブ14の材料を採用してもよい。
【0030】
第1の接着層21、第2の接着層22および中間接着層25としては、例えば、アクリル系やシリコーン系の粘着剤を用いた接着テープが挙げられる。本実施形態では、これらは、支持層12と同一の枠状の形状を有する。
【0031】
次に、図3を参照しながら、本実施形態の防水通音部材担持体1の使用方法を説明する。まず、図1を参照して説明した防水通音部材担持体1を準備する(図3(A))。次に、防水通音部材担持体1におけるタブ13の張出部13tを、剥離紙14とは反対方向に引っ張り、防水通音部材2を剥離紙14から剥離させる(図3(B))。次に、防水通音部材2を筐体40に取り付ける(図3(C))。次に、防水通音部材2におけるタブ13の張出部13tを、筐体40とは反対側に引っ張り、タブ13を防水通音膜11から剥離させる(図3(D))。これにより、筐体40に防水通音膜11が取り付けられた状態を得る(図3(E))。
【0032】
なお、本実施形態では、第1の接着層21の形状を中空形状にすることにより防水通音膜11の一方面側に第1の空間31を形成するとともに、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22の形状を中空形状とすることにより防水通音膜11の他方面側に第2の空間32を形成している(図1および図3(A))。これにより、図3(E)のように、防水通音膜11が筐体40に取り付けられたとき、筐体40の内部空間と第1の空間31とが連続するとともに第2の空間32と外部空間とが連続し、筐体40の内部空間と外部空間とが音の通過を許容しつつ液体の通過を阻止する防水通音膜11のみにより仕切られた状態となる。すなわち、本実施形態では、第1の接着層21、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22の形状を中空形状とすることにより、外部空間から筐体40の内部空間への液体の到来を阻止しながらも、筐体40の内部空間と外部空間との間の音の往来を良好に許容する構成を得ている。ただし、これらの形状を、必ずしも中空形状にしなければならないわけではない。例えば、これらの材料を、音の通過を妨げにくい材料から選定すれば、これらの材料の形状を中空形状にしなくても、筐体40の内部空間と外部空間との間の良好な音の往来を確保できる。
【0033】
以下、本実施形態の防水通音部材担持体の製造方法を、図4を参照しながら具体的に説明する。
【0034】
まず、中空形状を有する第1の層71と、膜予備体61と、中空形状を有する中間層75と、中空形状を有する支持層予備体62と、中空形状を有する第2の層72と、タブ予備体63とをこの順に積層して、積層体52aを作製する(図4(A))。第1の層71、膜予備体61、中間層75、支持層予備体62、第2の層72およびタブ予備体63は、それぞれ第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12、第2の接着層22およびタブ13を切り出し可能なものである。
【0035】
次に、積層体52aの第1の層71からタブ予備体63に向かって刃90(本実施形態ではトムソン型)を入れる(図4(B))。これにより、第1の層71、膜予備体61、中間層75、支持層予備体62および第2の層72を打ち抜いて(切断して)、第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22を形成する。さらに、タブ予備体63の所定の深さにまで刃90を入れることによりタブ予備体63にノッチ13nを形成する。次に、積層体52aから不要部を取り除いて積層体52bを得る(図4(C))。図4(C)に示すように、タブ予備体63には、第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22の端面と連続するノッチ13nが設けられる。
【0036】
次に、積層体52bのタブ予備体63を、防水通音膜11から張り出した部分を残すように刃91(本実施形態ではトムソン型)により切断する(図4(D))。これにより、例えば枠状の張出部13tを有するタブ13を形成し、防水通音部材2を作製する(図4(E))。
【0037】
次に、防水通音部材2に剥離紙14を接着させる(図4(F))。これにより、防水通音部材担持体1を作製する(図4(G))。
【0038】
本実施形態の製造方法では、上記のように積層体52aに刃90を入れることにより、所定の形状の端面を有する第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12および第2の接着層22と、ノッチ13nを有するタブ予備体63とを連続的に形成している。これにより、防水通音部材2が剥離紙14から確実に剥離される防水通音部材担持体1を得ている。
【0039】
防水通音部材2が剥離紙14から確実に剥離される理由は、以下のように説明される。
【0040】
すなわち、本実施形態の防水通音部材担持体1を構成する部材と同じ部材が同じ順に積層された防水通音部材担持体を、まず、防水通音部材担持体におけるタブ以外の部材の素材を剥離紙上に順に積層して積層体を作製し、次に、剥離紙の反対側から剥離紙に向かって積層体における剥離紙以外の部材を刃により打ち抜き、最後に所定の形状のタブを張り付けることにより作製する場合(比較形態)は、タブにはノッチが形成されない。
【0041】
これに対し、本実施形態の製造方法により防水通音部材担持体1を作製する場合は、タブ13(タブ予備体63)にノッチ13nが形成される。本実施形態の製造方法では、ノッチ13nが形成される際に第2の層72が刃90に引っ張られることにより、形成される第2の接着層22の一部がノッチ13nに押し込まれた状態になると考えられる。すなわち、本実施形態の製造方法により作製された防水通音部材担持体1では、第2の接着層22のうちノッチ13nに押し込まれた部分もタブ13と防水通音膜11との間の接着力(より詳細には、タブ13と支持層12との間の接着力)に寄与するため、比較形態の場合に比べると、タブ13と防水通音膜11との間の接着力が向上していると考えられる。
【0042】
なお、本実施形態では、積層体52aを作製する前に、第1の層71が中空形状を有するように、第1の層71を予め加工している。これにより、積層体52aが作製された後に、第1の空間31が形成されるようにしている。同様に、積層体52aを作製する前に、支持層予備体62、中間層75および第2の層72が中空形状を有するようにこれらを予め加工することにより、積層体52aが作製された後に第2の空間32が形成されるようにしている。ただし、第1の空間31および第2の空間32を形成するために他の方法を採用してもよい。例えば、中実の素材から積層体を構成して、得られた積層体の一部を打ち抜き、最後にタブ予備体を取り付けることにより、積層体52aと同様の形状を有する積層体を作製することもできる。また、例えば積層体を構成する材料を音の通過を阻止しにくい材料から選定した場合は、積層体に、第1の空間31および第2の空間32に相当する空間を形成する必要は必ずしもない。
【0043】
また、本実施形態では、積層体52bのタブ予備体63を、防水通音膜11から張り出した部分を残すように(形成されるタブ13が防水通音膜11から張り出さないように)切断することにより防水通音膜11を取り囲む枠状をなす張出部13tを形成しているが、タブ予備体63を、形成されるタブ13の一部から防水通音膜11が張り出すように切断してもよい。すなわち、少なくとも一部分にノッチ13nが維持されかつ維持されたノッチ13nによって区画された張出部13tが形成されるように、タブ予備体63を切断すればよい。
【0044】
また、本実施形態では、支持層予備体62を、膜予備体61から見てタブ予備体63側に設けているが、支持層予備体62を、膜予備体61から見てタブ予備体63の反対側に設けてもよい。また、作製すべき防水通音部材担持体によっては、支持層予備体62を省略してもよい。
【0045】
また、刃90の刃先は、例えば、V字状(対称なV字状であってもよく、偏ったV字状であってもよい)の形状を有する。刃91についても同様である。
【0046】
また、本実施形態では、図4(D)のように、タブ予備体63に、第2の接着層22側の面から第2の接着層22の反対側の面に向かって刃91を入れることによりタブ予備体63をタブ13に加工しているが、第2の接着層22の反対側の面から第2の接着層22側の面に向かって刃91を入れることによりタブ予備体63をタブ13に加工してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、積層体52bにおけるタブ予備体63をタブ13に加工して防水通音部材2を作製した後に防水通音部材2に剥離紙14を接着させることにより防水通音部材担持体1を作製しているが、積層体52bに剥離紙14を接着させた後にタブ予備体63をタブ13に加工することにより防水通音部材担持体1を作製してもよい。
【0048】
また、図5に示すように、本実施形態の積層体52aを作製する代わりに、剥離紙14と同様の剥離紙14αと、第1の層71と、膜予備体61と、中間層75と、支持層予備体62と、第2の層72と、タブ予備体63と、をこの順に積層して、積層体52αを作製してもよい(図5(A))。このような積層体52αを作製する場合も、積層体52αに本実施形態と同様に刃90を入れることにより(図5(B))、積層体52αを、剥離紙14αが打ち抜かれて得られる剥離紙14β、第1の接着層21、防水通音膜11、中間接着層25、支持層12、第2の接着層22およびタブ予備体63を有する積層体52βに加工でき(図5(C))、さらに刃91によりタブ予備体63をタブ13に加工することにより(図5(D))積層体52γに加工できる(図5(E))。その後、剥離紙14βを防水通音膜11から剥離させることにより、防水通音部材2が得られ(図5(F))、防水通音部材2に剥離紙14を接着させることで(図5(G))、防水通音部材担持体1を作製できる(図5(H))。このようにして防水通音部材担持体を作製する場合、積層体52αを作製してから剥離紙14βを防水通音膜11から剥離させるまでの間は、第1の層71および第1の接着層21の主面(最も広い面)が露出しない。したがって、この製造方法を採用すれば、防水通音部材担持体の製造中に、粉塵などの異物が第1の層71および第1の接着層21に付着するおそれを低減できる。
【実施例】
【0049】
実施例として図1に示す防水通音部材担持体を作製した。具体的には、まず、両面テープA(日東電工社製 No.5636)と、防水通音膜(日東電工社製 NTF610AP)と、両面テープB(日東電工社製 No.5605)と、クッション材(ロジャースイノアック社製 PORON SR−S−70P)と、両面テープC(日東電工社製 No.5603)と、タブ(ニッパ社製 SS4シリーズA)とをこの順に積層することにより、図4(A)に示すような積層体を作製した。次に、作製した積層体の両面テープAからタブに向かって刃を入れて、両面テープA、防水通音膜、両面テープB、クッション材および両面テープCを所定の形状に切断するとともにタブにノッチを形成することにより、図4(C)に示すような積層体を作製した。次に、作製した積層体のタブに刃を入れて、タブを切断することにより、図4(E)に示すような、張出部を有するタブを含む防水通音部材を作製した。最後に、作製した防水通音部材に剥離紙(ニッパ社製 SS1シリーズA)を接着させることにより、図4(G)に示すような水通音部材担持体を作製した。すなわち、本実施例では、実施形態に倣って、防水通音部材担持体を作製した。
【0050】
比較例でも、実施例と同じ素材が同じ順に積層された防水通音部材担持体を作製した。ただし、比較例では、まず、剥離紙、両面テープA、防水通音膜、両面テープB、クッション材および両面テープCを積層して積層体を作製し、次に、剥離紙の反対側から剥離紙に向かって積層体における剥離紙以外の部材を打ち抜き、最後に所定の形状のタブを張り付けることにより(すなわち、比較形態に倣って)、防水通音部材担持体を作製した。
【0051】
実施例の防水通音部材担持体では、タブの張出部を引っ張ることにより、防水通音部材を剥離紙から容易に剥離させることができた。また、防水通音部材を筐体に取り付けた後には、タブの張出部を引っ張ることにより、タブをクッション材から容易に剥離させることができた。
【0052】
一方、比較例の防水通音部材担持体では、タブの張出部を引っ張ると、防水通音部材が剥離紙から剥離せず、タブが防水通音膜から剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の防水通音部材は、防水通音膜を携帯電話およびコードレス電話、ならびにデジタルカメラなどの電子機器に取り付ける際に、好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0054】
1 防水通音部材担持体
2 防水通音部材
11 防水通音膜
12 支持層
13 タブ
13n ノッチ
13t 張出部
14,14α,14β 剥離紙
21 第1の接着層
22 第2の接着層
25 中間接着層
31 第1の空間
32 第2の空間
40 筐体
52a,52b,52α,52β,52γ 積層体
61 膜予備体
62 支持層予備体
63 タブ予備体
71 第1の層
72 第2の層
75 中間層
90,91 刃


【特許請求の範囲】
【請求項1】
音の通過を許容する孔を有する筐体に取り付けられる防水通音膜と、前記防水通音膜上に設けられ、前記防水通音膜が前記筐体に取り付けられた後には剥離されるタブであって、前記防水通音膜から張り出した張出部を有するタブと、を備える防水通音部材の製造方法であって、
前記防水通音膜を前記筐体に接着するための第1の接着層を含む第1の層と、前記防水通音膜を含む膜予備体と、前記タブを前記防水通音膜に接着するための第2の接着層を含む第2の層と、前記タブを含むタブ予備体と、をこの順に積層して積層体を作製する工程と、
前記積層体の前記第1の層から前記タブ予備体に向かって刃を入れ、前記第1の層、前記膜予備体および前記第2の層を切断して前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層を形成するとともに、前記タブ予備体における前記第2の層側の面に前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層の端面と連続するノッチを設ける工程と、
前記タブ予備体を切断して前記タブを形成する工程と、
を含む、
防水通音部材の製造方法。
【請求項2】
音の通過を許容する孔を有する筐体に取り付けられる防水通音膜と、
前記防水通音膜の一方面側に設けられ、前記防水通音膜を前記筐体に接着するための第1の接着層と、
前記防水通音膜の他方面側に設けられた第2の接着層と、
前記第2の接着層上に設けられ、前記防水通音膜が前記筐体に接着された後には剥離されるタブであって、前記防水通音膜から張り出した張出部を有するタブと、を備え、
前記タブの前記第2の接着層側の面には前記第1の接着層、前記防水通音膜および前記第2の接着層の端面と連続するノッチが、前記張出部を区画するように形成されている、
防水通音部材。
【請求項3】
前記張出部は、前記防水通音膜を取り囲む環状または枠状をなしている、請求項2に記載の防水通音部材。
【請求項4】
前記防水通音膜は、フッ素樹脂からなる、請求項2または3に記載の防水通音部材。
【請求項5】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項4に記載の防水通音部材。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の防水通音部材と、前記第1の接着層により前記防水通音膜に接着された、前記防水通音膜側の面に離型処理が施されている剥離紙と、を含む、防水通音部材担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253480(P2012−253480A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123183(P2011−123183)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】