説明

防汚コーティングを付与する方法

海洋構造体の表面に、パイル生地シートを含む防汚コーティングを付与する方法であって、前記表面にバインダー層を塗布することを含む方法。前記方法は、さらに前記バインダー層に、重ならないように複数の前記シートを付着させて、防汚コーティングを作製すること、および前記コーティングにおける前記付着されたシート間の複数の隙間を、前記隙間の前記バインダー層に繊維を付着させることによって埋めることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶および全体的または部分的に水面下に存在する海洋構造体上の防汚コーティングに関する。より詳細には、本発明は海洋構造体の表面に複数のパイル生地シートを含む防汚コーティングを付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水位線下にある表面上にパイルまたは毛皮材料あるいは繊維フロック加工シートを備えた船舶および他の海洋構造体を提供することは、その表面上の藻、他の植物および動物の成長を抑制する。すなわち、そのシートは防汚効果を有する。それゆえ毒性物質でその表面をコーティングすることは、不要となる。
【0003】
欧州特許出願公開第353095号には、保護されるべき部分に貼り付けられた毛皮被覆シートが示されている。そのシートは水中で自由に揺らぐために好ましくは10〜30mmの長さの繊維を有する。英国特許出願公開第2221428号には、フィルムを細長く切断して細長いリボンにすること、基板上のその細長いリボンを折り曲げまたはうねらせることを含むリボン植付け方法であって、前記リボンが5〜25μmの厚さ、1〜10mmの幅および10〜100mmの長さを有する方法が記載されている。欧州特許出願公開第312600から水中に沈められる船舶の部分に貼り付けられ、これによりそこへの有機体の付着を防ぐパイル材料は知られている。
【0004】
これらすべての文献にはその表面にシートまたは他種の材料を貼り付けるためのバインダーを使用することの可能性について述べられている。これらの文献には、そのシートを貼り付けることが一般的に記載されているが、シートによって形成されたコーティングの隙間を避ける方法は記載されていない。例えばボートの船体などの曲面形状を、平面的で本質的に伸縮性のないシートでシート間の隙間を持たせずに覆うことは、曲面形状にシートを切断する時間および材料の要求を暗に示す。他方では、隙間はその表面に弱い箇所を作り出すので、隙間がないということが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この欠点を取り除くことおよび防汚コーティングの途切れがない海洋構造体の表面に防汚コーティングを付与する方法を改善および容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、表面にバインダー層を塗布すること、前記バインダー層に、重ならないように複数の前記シートを付着させて、防汚コーティングを作製すること、および前記コーティングにおける前記付着されたシート間の複数の隙間を、前記隙間の前記バインダー層に繊維を付着させることによって埋めることを含む、導入部で述べられた方法に従った方法の手段によって達成される。
【0007】
繊維を塗布する簡便かつ効果的な方法は、前記表面に静電技術の手段によって噴霧することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、海洋構造体の表面に防汚コーティングを付与するための発明に従った方法の好ましい実施態様を記載する。本発明はこの実施態様に限定されず、特許請求の範囲内において異なる方法で変えられることができる。
【0009】
海洋構造体は、船舶またはボートであり、ゆえにその表面はボートの船体であるが、言うまでもなく例えば水中用の配管のような他の構造体もあり得る。
【0010】
防汚のため、船体は、柔軟性があるが伸縮性のないパイル生地で覆われる。パイル生地の例は、シートにバインダーを塗布し、帯電した繊維をシートに噴霧して、その結果シートに付着することによって作られた繊維フロック加工シートである。シートは、50〜300繊維/mmで覆われており、その繊維は0.7〜3mmの長さおよび1〜20デニールの繊維線密度を有する。この繊維フロック加工技術は布地および他の表面に繊維を塗布するための技術としてよく知られている。シートは塗布に応じて適切な長さに切断されている。これは制御された環境、すなわち例えば風や雨のような天候の要因によって乱されない環境下の屋内でなされる。
【0011】
バインダーは水面下となるべき船体の部分に塗布される。
【0012】
その後、繊維シートの長さが重ならないようにバインダーに貼り付けられる。これはその長さ間に約0〜50mmの大きさを有する隙間を作り出す。
【0013】
バインダーが乾燥する前に繊維が50〜300繊維/mmの量でその隙間に噴霧される。0.7〜3mmの長さおよび1〜20デニールの繊維線密度を有する繊維は、繊維フロック加工シートとして使用される繊維と同じ種類および同じ大きさであることが好ましい。
【0014】
隙間における繊維の塗布は、帯電した繊維で噴霧することによってなされる。これを行う一つの方法は、プラスチックチューブを介して繊維を吹き付けることであり、その繊維は摩擦で帯電に至る。
【0015】
バインダーは2成分樹脂が好ましく、および使用される繊維は例えばポリイミドから作られた合成繊維であるが、石炭繊維、ガラス繊維または同様のものが使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造体の表面に、複数のパイル生地シートを含む防汚コーティングを付与する方法であって、
前記表面にバインダー層を塗布すること、
前記バインダー層に、重ならないように複数の前記シートを付着させて、防汚コーティングを作製すること、および
前記コーティングにおける前記付着されたシート間の複数の隙間を、前記隙間の前記バインダー層に繊維を付着させることによって埋めること
を含む、方法。
【請求項2】
前記隙間に繊維を噴霧することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
静電技術で繊維を塗布することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
パイル生地シートの複数の領域と、前記領域間における繊維で覆われた複数の隙間とを具備してなる海洋構造体の船体。

【公表番号】特表2010−520113(P2010−520113A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552150(P2009−552150)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051783
【国際公開番号】WO2008/107278
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509247489)シールコート(ダイレン、エフ.ティー.ゼット.)、トレイディング、カンパニー、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SEALCOAT(DALIAN F.T.Z.)TRADING CO.,LTD.
【Fターム(参考)】