説明

防汚塗料、樹脂組成物およびこれらの製造方法

本発明は防汚塗料、樹脂組成物およびこれらの製造方法に関する。特に、本発明は、安定化アシル化オキシ−ボランを含有する塗料および樹脂組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な防汚塗料、樹脂組成物およびこれらの製造方法に関する。特に、本発明は、安定化アシル化オキシ−ボランを含有する塗料および樹脂組成物に関する。
【0002】
水態様下の構造物に汚れが存在すると、それらの性能が低下、例えば静的構造物および水中装置に損傷が生じること、または船の速度が低下しかつ燃料消費量が増加することなどが起こり得る。従って、そのような汚れの有害な影響を防除する目的で防汚システムが用いられている。
【0003】
通常の防汚塗料は主に塗料マトリクスの中に添加された1種以上の殺生物剤で構成されている。そのような1つのファミリーの船舶用塗料、即ち有機錫(TBT)ポリマーが基になっていて大成功を収めた自己研磨型防汚塗料は現在では法律によって禁止されている。従って、船舶用塗料化学者は、TBTポリマーが示す効果に合致する代替の自己研磨型無錫コポリマーを提供する試みを現在行っている。
【0004】
いろいろな窒素部分と錯体と形成しているトリフェニルボランを調製しそして防汚剤として用いることは公知である(特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17)。
【0005】
トリフェニルボランピリジン(PK)は、船舶用塗料で用いられる公知の防汚殺生物剤である。そのような殺生物剤を塗料マトリクスの中に分散させているが、その塗料の活性は当該殺生物剤の滲出速度に依存し、その速度が制御されていないとしばしば長期の性能が劣る。
【0006】
アンモニウム−テトラアリールボレートポリマーが特許文献18に開示されている。トリフェニルボランと錯体を形成しているポリマー結合4−ビニルピリジンが特許文献19に開示されている。同様に、重金属を含有しない防汚塗料用樹脂組成物も特許文献20に開示されている。そのような組成物は、窒素原子を分子中に少なくとも1個有する不飽和モノマーにホモ重合を受けさせることで得られたポリマーを含有する。そのN原子はトリアリールボランに配位している。
【0007】
防汚塗料で使用可能なアシルオキシトリフェニルボラン含有モノマーおよびポリマーが特許文献21および22に開示されている。そのボラン部分を酸性ポリマーにグラフト化させることは可能である。しかしながら、本発明者らは、特許文献21の実施例の全部でボラン部分を酸性ポリマーにグラフト化させる時の収率はゼロであるか或は低いことを確認した。そこに示されている実施例のいずれで得られた生成物も濁っているか或はゲルになることで、そのようなポリマーは塗料で用いるには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】JP7−133207
【特許文献2】JP8−295608
【特許文献3】JP8−295609
【特許文献4】JP9−78007
【特許文献5】JP10−182322
【特許文献6】JP11−322763
【特許文献7】JP2000302614
【特許文献8】JP11292883
【特許文献9】JP11080166
【特許文献10】JP1999080166
【特許文献11】JP2000143672
【特許文献12】JP2000143417
【特許文献13】JP2002301494
【特許文献14】JP2002363014
【特許文献15】JP2002363187
【特許文献16】JP2002356475
【特許文献17】EP 0877061
【特許文献18】JP2000290317
【特許文献19】JP200297118
【特許文献20】JP 11−199801 A1
【特許文献21】EP1245592
【特許文献22】JP2002284786
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、そのような問題を解決することにある。
【0010】
本発明に従えば、樹脂組成物および溶媒を含有する防汚塗料が提供され、前記樹脂組成物は、
式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、
【0013】
【化2】

【0014】
を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成り、かつこの防汚塗料は、前記溶媒がn−ブタノールを含有しないことを特徴とする。
【0015】
好適には、前記溶媒はC1−C10アルカノール、より好適にはアルコールを含有しない。
【0016】
塗料組成物にC1−C10アルカノール、特にn−ブタノールを含有させないままにしておくと、驚くべきことに、そのような塗料が示す防汚活性がずっとより高くなり、ゲルが生じる度合が低くなりかつ加水分解が改善されることを見いだした。
【0017】
本発明の2番目の態様に従えば、式(I):
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、
Zは、
【0020】
【化4】

【0021】
を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有する樹脂組成物を提供し、この樹脂組成物は溶媒を含有するが、n−ブタノールを含有しないことを特徴とする。
【0022】
好適には、前記溶媒はC1−C10アルカノール、より好適にはアルコールを含有しない。
【0023】
樹脂溶液にC1−C10アルカノール、特にn−ブタノールを含有させないままにしておくと、驚くべきことに、得られる式(I)で表される側鎖もしくは末端基の収率がずっと高くなる。
【0024】
本発明の3番目の態様に従えば、樹脂組成物を含有する防汚塗料が提供され、前記樹脂組成物は、式(I):
【0025】
【化5】

【0026】
[式中、
Zは
【0027】
【化6】

【0028】
を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成り、かつこの防汚塗料は、前記樹脂組成物がアルコキシボリル残基を含有しないことを特徴とする。
【0029】
本発明における用語「含有しない」は、特定部分、アルコールなどが<1%(重量/重量)、より好適には<0.1%(重量/重量)であることを意味する。
【0030】
本発明の4番目の態様に従えば、式(I):
【0031】
【化7】

【0032】
[式中、
Zは
【0033】
【化8】

【0034】
を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有する樹脂組成物が提供され、この樹脂組成物は、アルコキシボリル残基を含有しないことを特徴とする。
【0035】
本発明の5番目の態様に従えば、式(I):
【0036】
【化9】

【0037】
[式中、
Zは
【0038】
【化10】

【0039】
を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリ
ールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有する樹脂組成物が提供され、この樹脂組成物は、また、式Iで表される基を安定にする安定剤も含有することを特徴とする。
【0040】
そのような安定剤は典型的にアミンまたは窒素含有複素環式化合物である。
【0041】
好適には、そのような安定剤は錯体を形成していない置換もしくは非置換窒素原子、より好適には置換されていない窒素原子を有する複素環式化合物である。
【0042】
そのような安定剤は好適には窒素原子を少なくとも1個含有する複素環式化合物である。その複素環式化合物はまた窒素、酸素および硫黄から選択されるさらなるヘテロ原子も含有していてもよい。そのような安定剤に存在させてもよいヘテロ原子の数は5以下である。そのような複素環式化合物には、好適には少なくとも4−12員環、より好適には5−8員環が含まれる。その複素環式化合物は単環式、二環式もしくは多環式であってもよい。
【0043】
好適には、その少なくとも1個の窒素が4−12員の複素環式環の一部を形成している。その複素環式化合物は飽和、不飽和および/または芳香であってもよい。
【0044】
窒素原子を少なくとも1個含有する前記複素環式化合物は、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、キノリン、インドール、カルバゾール、フェナントロリン、ピペリジンおよびキヌクリジン、および置換基を有する複素環式化合物、例えばエチルピリジン、ニコチン酸、ニコチン酸オクチル、ビニルピリジン、アリルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン酸、1−メチルイミダゾール、モルホリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジンおよびN−エチルモルホリンなどから選択可能である。
【0045】
従って、前記安定剤は、この上に詳述した置換もしくは非置換窒素原子を有する複素環式化合物、特にピリジン、または本明細書で定義する如きアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アルカリール、アリールまたはアリール基で置換されているピリジンから選択可能である。
【0046】
別法として、前記安定剤は、本明細書で定義する如き1個以上のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アルカリール、アリール基またはこれらの組み合わせ(これらの基は置換されていないか或はアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、−COOH、−COOアルキルまたはさらなるアミノ基で置換されていてもよい)を有する第一級、第二級または第三級アミン、例えばn−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、イソ−オクチルアミン、n−ペンチルアミン、ネオ−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジ−シクロヘキシルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジ−エチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、2−フェニルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミンなどのいずれであってもよい。
【0047】
好適には、そのような安定剤を本組成物に総樹脂組成物の1−50%、より好適には1−15%、最も好適には1−10%、特に5−10%(重量/重量)の濃度で添加する。
【0048】
驚くべきことに、本発明者らは、ホウ素錯体ポリマーをアルコール、例えばn−ブタノールなどの存在無しに生じさせるとそれの収率が劇的に向上することを見いだした。加うるに、本発明者らは、特定の添加剤が前記ポリマーの安定性を向上させ得ることも見いだした。
【0049】
従って、本発明は、また、ホウ素含有ポリマーの製造方法も提供し、この方法は、式-Z(OH)[式中、n=1または2であり、そしてZはこの上で定義した通りである]で表される酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーと下記の式(II):
【0050】
【化11】

【0051】
[式中、
、RおよびRは、同一もしくは異なってもよく、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキルまたはアリール、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そしてAは、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される窒素原子配位ホウ素化合物の反応をn−ブタノールの存在無しに起こさせる段階を含んで成る。
【0052】
前記反応を好適には如何なるC−C10アルカノールも存在させない、より好適には如何なるアルコールも存在させないで起こさせる。
【0053】
本発明のさらなる態様に従い、(a)重合性有機酸と前記式(II)で表される窒素原子配位ホウ素化合物の反応をn−ブタノールの存在無しに起こさせそして(b)段階(a)で得たホウ素含有重合性モノマーを含んで成るモノマー成分を場合によりn−ブタノールを存在させないで重合または共重合させることを含んで成るホウ素含有ポリマー製造方法を提供する。
【0054】
前記反応を好適には如何なるC−C10アルカノールも存在させない、より好適には如何なるアルコールも存在させないで起こさせる。
【0055】
前記重合性有機酸は、好適には、重合性有機カルボン酸、重合性有機スルホン酸または重合性有機燐酸である。
【0056】
その上、本発明は、前記ホウ素含有ポリマー製造方法で得ることができるホウ素含有ポ
リマーを含有する樹脂組成物も提供する。
【0057】
その上、本発明は、前記樹脂組成物を含有する防汚塗料も提供する。
【0058】
本明細書における樹脂組成物は、いずれかの溶媒および他の樹脂用添加剤、例えば本明細書に記述する如き安定剤などと一緒になっている樹脂ポリマー1種または2種以上を意味し、本明細書で樹脂組成物を言及する場合、特に明記しない限り、相当して理解されるべきである。従って、前記樹脂組成物を含有する塗料または塗料組成物は当該樹脂組成物に加えてまたさらなる添加剤も含有していてもよくかつさらなる溶媒(これは樹脂組成物用のいずれかの溶媒と同じまたは異なってもよい)も含有していてもよいことは理解されるであろう。
【0059】
上述した様式で得た酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーが示す酸価は好適にはポリマー1g当たり40から120mgのKOHである。酸価が40mgのKOH/g未満であると、その結果として得られる塗膜が示す防汚特性はポリマーと結合している窒素原子配位ホウ素化合物の量が少ないことが理由で充分でない可能性がある一方、酸価が120mgのKOH/gより高いと、その結果として得られる塗膜はゲル化を起こす傾向がある。より好適には酸価が50から90mgのKOH/gになるようにする。前記酸価は容易に測定可能であり、モノマーの選択およびモノマーの使用量の影響を受け得る。
【0060】
アルコール、例えばn−ブタノールなどを存在させないとジアシル化および恐らくはトリアシル化ホウ素含有部分の生成を回避するのは不可能であり、それによって当該ポリマーの望ましくない架橋がもたらされる可能性がある。当該安定剤の濃度を注意深く調節することで架橋を最小限にする。ジ−およびトリ−アシル化ホウ素部分が総ホウ素を占める割合が好適には5%(重量/重量)未満、より好適には3%(重量/重量)未満、最も好適には1%(重量/重量)未満になるようにする。典型的には、ジアシル化ホウ素部分が当該ポリマーの酸基と結合しているホウ素部分全体の0.5%−5%、より好適には1%−4%の範囲になるようにする。そのようなポリマーと結合しているジおよびトリ−アシル化部分の%の測定は、当該ポリマーが示す酸価(mgのKOH/g)を当該ホウ素化合物の存在無しに測定することで実施可能である。添加するホウ素化合物のモル数によって予想される理論的酸価低下度合を決定しそして前記値を必要モル数のホウ素化合物をポリマーに添加した後に実験的に測定したKOH/g値と比較する。
【0061】
酸含有量が高いポリマーを用いると膜の形成が妨害されかつ加うるにゲルの形成がもたらされることを見いだした。驚くべきことに、さらなる酸、特に揮発性が低い酸を添加するとポリマーの酸濃度が高くても膜の形成が改善されかつまたゲルの生成が防止される。
【0062】
従って、本発明のさらなる態様に従えば、塗料配合物に入れる結合剤として用いるに適した樹脂組成物が提供され、この組成物は、式(ZO)BR3−n:A[式中、n=1−3でありそしてRは以下に定義する如きRおよび/またはRであり得る]で表されるホウ素含有ポリマーを含有して成り、前記ホウ素含有ポリマーは、ポリマー1g当たり60mgのKOH以上の酸濃度を有するポリマーと式II
【0063】
【化12】

【0064】
[式中、
、RおよびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そしてA:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表されるホウ素錯体から生じさせたポリマーであり、ここでは、
前記組成物に追加的酸を含有させるが、前記樹脂組成物に添加する追加的酸の量を添加するホウ素錯体1モル当量当たり1モル当量未満の追加的酸の比率にする。
【0065】
この態様において、式IIで表されるボラン錯体に対する酸官能ポリマー/追加的酸を一緒にした当量が>1当量であるとジ−アシル化ボリル化合物またはモノ−ジおよびトリアシル化ボリル化合物の混合物が生じる可能性があることを注目すべきである。前記式中のn=1−3の場合にはn=1,2および/または3のペンダント型ボリル錯体基が存在し得る。n=2および/または3の存在率がボリル錯体部分を占める割合が好適には10%未満、典型的には1−10%になるようにする。従って、本発明の樹脂組成物は、好適には、式Iで表されるペンダント型側鎖もしくは末端基に加えて式IVおよびV
【0066】
【化13】

【0067】
[式中、Z、AおよびRは、本明細書で式Iに関して定義した通りである]
で表される架橋基も有するポリマーを含有する可能性がある。
【0068】
そのような酸性ポリマー:追加的酸の比率を好ましくは10:1から1:10、好適には3:1から1:2の範囲内にする。
【0069】
そのような追加的酸は好適には非重合性酸であり、その酸はロジン、水添ロジン、酢酸、ナフテン酸、ピコリン酸、安息香酸およびp−t−ブチル安息香酸から選択可能である。
【0070】
本樹脂組成物に入っているホウ素錯体は初期の化学的錯体形態(II)であってもよいか或は本組成物の他の成分と反応していてもよい。従って、本発明の前記態様では、添加するホウ素錯体のモル当量を前記追加的酸と比較する。
【0071】
上述したように、本発明の樹脂組成物は、前記式(I)で表される基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するホウ素含有ポリマーを含有する。
【0072】
Zが酸基の一部を表す前記式(I)の場合、好適には、Zはカルボン酸基の一部である。
【0073】
本明細書で用いる如き用語“独立して選択”または“独立して表す”は、そのように記述する基Rまたは他の基もしくは各々が同一または異なってもよいことを示す。
【0074】
本明細書で用いる如き用語“アルキル”は飽和炭化水素基に関し、これは直鎖、分枝、多環式もしくは環式部分またはこれらの組み合わせであり、炭素原子を1から20、好適には炭素原子を1から10、より好適には炭素原子を1から8、更により好適には炭素原子を1から6、更により好適には炭素原子を1から4個含有する。そのような基の例は独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブ
チル、t−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチル、完全水添アビエチルなどから選択可能である。
【0075】
本明細書で用いる如き用語“アルケニル”は、二重結合を1または数個有する炭化水素基に関し、これは直鎖、分枝、多環式もしくは環式部分またはこれらの組み合わせであり、炭素原子を2から18、好適には炭素原子を2から10、より好適には炭素原子を2から8、更により好適には炭素原子を2から6、更により好適には炭素原子を2から4個含有する。アルケニル基の例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、イソプレニル、ファルネシル、ゲラニル、ゲラニルゲラニル、アビエチル、ジヒドロアビエチル、アビエチル二量体(Dymerex(R))などが含まれる。
【0076】
本明細書で用いる如き用語“アルキニル”は、三重結合を1または数個有する炭化水素基に関し、これは直鎖、分枝、多環式もしくは環式部分またはこれらの組み合わせであり、炭素原子を2から18、好適には炭素原子を2から10、より好適には炭素原子を2から8、更により好適には炭素原子を2から6、更により好適には炭素原子を2から4個有する。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが含まれる。
【0077】
本明細書で用いる如き用語“アリール”は、芳香炭化水素から水素が1個取り除かれることで生じた有機基に関し、それには各環中の員数が7以下の単環式、二環式または多環式炭素環のいずれも含まれるが、少なくとも1個の環は芳香環である。前記基は場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシルまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。アリールの例には、フェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(t−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル、アセナフチル、デヒドロアビエチルなどが含まれ、フェニルが最も好適である。
【0078】
本明細書で用いる如き用語“アラルキル”または“アルカリール”は、
式:アルキレン−アリールまたはアリーレンアルキル[式中、アルキレンおよびアリーレンは、この上で定義した如きアルキルまたはアリールと同じ意味を有する(さらなる水素が取り除かれて二価になっている以外は)]で表される基に関する。アラルキルおよびアルカリール基の例には、ベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3−(2−ナフチル)−ブチル、メチルベンゼンなどが含まれる。
【0079】
用語“アルコキシル”および“アリールオキシル”は、酸素と結合していて前記酸素がアルキル/アリール置換基と結合しているアルキルまたはアリール基を意味する。アルカリールオキシルおよびアラルキルオキシは前記定義を参照して理解されるべきである。
【0080】
上述したように、基Aは第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表す。
【0081】
前記第一級から第三級アミンはアルキル基含有アミン、例えばオクタデシルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンなど、アシル基含有アミン、例えばアセチルアミンなど、アルコキシル基含有アミン、例えば3−エトキシプロピルアミン、エトキシメチルアミンなど、アリール基含有アミン、例えばアニリン、ヘキシルアニリンなど、アリルアミン、ビニルアミン、アミノスチレンなどから選択可能である。第一級アミンの方が第二級アミンよりもまた第三級アミンよりも好適である。
【0082】
前記複素環式化合物は、また、窒素、酸素および硫黄から選択されるさらなるヘテロ原子も含有していてもよい。そのような化合物に存在していてもよいヘテロ原子の数は5以下である。そのような複素環式化合物には好適には少なくとも4−12員環、より好適には5−8員環が含まれる。その複素環式化合物は単環式、二環式または多環式であり得る。
【0083】
好適には、少なくとも1個の窒素がそのような4−12員の複素環式環の一部を形成している。その複素環式化合物は飽和、不飽和および/または芳香であり得る。
【0084】
窒素原子を少なくとも1個含有する前記複素環式化合物は、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、キノリン、インドール、カルバゾール、フェナントロリン、および置換基を有する複素環式化合物、例えば2−エチルピリジン、ピコリン酸、ニコチン酸、ニコチン酸オクチル、ビニルピリジン、アリルピリジンなどから選択可能である。前記置換基には、本明細書の上に具体的に記述した置換基が含まれる。
【0085】
従って、そのような複素環式化合物は置換もしくは非置換窒素原子を持ち得る。適切な置換基にはアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アルカリールおよびアラルキルが含まれる。
【0086】
前記式(I)で表される基を少なくとも1個有するホウ素含有ポリマーの数平均分子量は好適には2000から40000である。その分子量が2000未満であると、結果としてもたらされる樹脂組成物はフィルム形成能力が劣りかつ塗膜の異常さ、例えば亀裂、剥がれなどの原因になり得る一方、前記分子量が40000を超えると、塗料の粘度が高くなることである場合には取り扱い特性が劣る原因になるであろう。
【0087】
上述した数平均分子量の測定は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーを用いることで実施可能である。
【0088】
前記から明らかであろうように、前記式(I)で表される基を少なくとも1個有するホウ素含有ポリマーの製造は、酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーと前記式(II)で表される窒素原子配位ホウ素化合物を反応させることで実施可能である。別法として、本発明のポリマーの製造を酸基を少なくとも1個有するモノマーと前記式IIで表される窒素原子配位ホウ素化合物を反応させた後に前記窒素原子配位ホウ素錯体でエステル化されたモノマーを重合または共重合させることで実施することも可能である。また、そのような製造方法も本発明の範囲内に入る。
【0089】
前記酸基は好適にはカルボン酸基、スルホン酸基または燐酸基である。それはより好適にはカルボン酸基である。
【0090】
酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーは、それが上述した酸基を少なくとも1個有する限り特に制限はなく、それの例にはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂
、アルキド樹脂、エポキシ樹脂などが含まれる。しかしながら、好適には、アクリル樹脂を用いる。
【0091】
酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを製造する方法は、当該技術分野で公知の適切な方法のいずれであってもよい。例えば、酸基を有する重合性モノマーを必要ならばコモノマーと一緒にホモ重合または共重合させることでアクリル樹脂を得ることができる。
【0092】
式(II)で表される窒素原子配位ホウ素化合物と反応させる前または後に重合もしくは共重合させることができかつ酸基を有する前記重合性モノマーには、カルボン酸基を有するモノマー、例えば(C−Cアルク)アクリル酸、例えばメタアクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル、マレイン酸モノアルキル(モノアルキル残基中のアルキルには、例えばC1−20アルキル、例えばメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシルなどが含まれる)、OH基含有重合性不飽和モノマーの半エステルおよび酸無水物、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの半エステルおよび無水こはく酸、無水マレイン酸または無水フタル酸など、スルホン酸基を有するモノマー、例えばp−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−アクリルアミドプロパンスルホン酸など、および燐酸基を有するモノマー、例えばメタアクリル酸ホスホキシプロピル、メタアクリル酸3−クロロ−2−ホスホキシプロピル、メタアクリル酸ホスホキシエチルなどが含まれる。
【0093】
前記コモノマーは、上述した如き異なる1種以上のC−C20アルキル(C−Cアルク)アクリレートまたは相当する1種以上の酸、または前記の官能化アクリレートから選択可能であるか、或はいろいろなビニル系コモノマー、例えばスチレン、アルファメチルスチレン、ビニルアルコール、ビニルトルエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、エチレン、フマル酸ブチル、マレイン酸ブチル、酢酸ビニルなどから選択可能である。
【0094】
適切な官能化アクリレートには、アルキル基が官能基、例えばエポキシ、ヒドロキシアルキルまたはアミン基などに置き換わっているアクリレート、例えばメタアクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたはアクリルアミドなどが含まれる。別法として、アクリル基に官能化を官能基、例えばハロゲンなどをビニル炭素上に導入することで受けさせることも可能である。
【0095】
更にその上、アクリル系モノマーにビニル基を2個以上持たせる意味で多官能にすることも可能であり、その例には、ヘキサンジオールジアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートが含まれる。
【0096】
特に適切なアクリレートには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ラウリルが含まれる。
【0097】
本発明のポリマーを他の相溶性ポリマーと混合することでポリマー混合物を生じさせることも可能であり、例えば本発明のアクリルポリマーを他のアクリルポリマーまたは相溶し得る非アクリル系ポリマーと混合することで適切な塗料特性を有するポリマー混合物などを生じさせることも可能である。
【0098】
本発明のポリマーに顔料、さらなる防汚剤、溶媒および他の添加剤を添加することで適切な塗料を生じさせることも可能であり、それらは当該技術分野で良く知られている。
【0099】
本発明の防汚塗料で用いるに適した溶媒には、アセテート、ケトンおよび官能基を含有しない芳香族化合物、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシプロピル、トルエン、キシレン、ホワイトスピリット、酢酸エトキシプロピル、プロピオン酸エトキシエチル、酢酸メトキシブチル、ブチルグリコールアセテート、溶媒ナフサおよびこのような溶媒の混合物が含まれる。このような溶媒の使用量を本防汚組成物の重量を基準にして70重量%以下、好適には40重量%以下にする。本発明の溶媒にアルコールを含めない。しかしながら、また、n−ブタノールを含めないこと、好適にはC−C10アルカノールのみを含めないことも有利である。
【0100】
必要に応じて使用すべきさらなる添加剤は、例えば可塑剤、例えば燐酸トリクレジル、フタル酸ジエステルまたはクロロパラフィンなど、顔料、例えば着色顔料、ブライト(bright)顔料および増量用顔料など、および充填剤、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、チョーク、カーボンブラックなど、触媒、例えばN,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、オクタン酸亜鉛、オクタン酸錫(II)およびジブチル錫ジラウレートなど、レベリング剤(levelling agents)、増粘剤、安定剤、例えば置換フェノールまたは有機官能シランなどである。また、接着促進剤および光安定剤も使用可能である。
【0101】
そのような1種以上のコモノマーを前記酸および/または窒素原子配位ホウ素錯体エステル化モノマーと一緒に重合させてもよい。
【0102】
トリフェニルボラン−アミン錯体とカルボン酸の反応はプロトン化分解と呼ばれる。ボランとカルボン酸のプロトン化分解は公知の反応であり、一般に、トリアルキルボランおよびトリフェニルボランの場合にも同じ機構が推奨され得る。
【0103】
トリアルキルまたはトリアリールボランはそのままでは安定でなく、それを安定にするには常にルイス塩基(エーテル、スルフィドまたはアミン)と錯体を形成させる必要がある。そのような錯化剤は錯体部分の相対強度または当該錯化剤の溶解性/揮発性の差(アミン交換)に応じて容易に交換可能である。
【0104】
トリアルキル(アリール)ボラン(i)は下記の機構下でカルボン酸(ii)によってB−C開裂を起こしてボリン酸アシルオキシジアルキル(アリール)(iii)および相当するアルカン(アレン)(iv)をもたらす。
【0105】
【化14】

【0106】
従って、その反応の主副生成物は、トリアルキルボランの場合にはアルカンであり、またはトリアリールボランの場合には芳香族化合物である。従って、最も一般的な原料はト
リエチル−またはトリフェニルボランであることから、その工程でエタンまたはベンゼンが生じる可能性があるが、後者は蒸留によって反応槽から除去可能である。
【0107】
従って、酸性ポリマーまたは重合性モノマーから出発して、ボリン酸アシルオキシをポリマー鎖にグラフト化させる。この反応の完了は13Cまたは11B NMRでか或は放出されたベンゼンまたはアルカンの量を測定することで監視可能である。
【0108】
このように、前記反応を用いると式(I)で表される窒素原子配位ホウ素化合物を高収率で製造することが可能になる。最初に塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウムなどを添加しておいた三置換ホウ素化合物とAで表される第一級から第三級アミンまたは置換もしくは非置換窒素原子含有複素環式化合物を反応させることで窒素原子配位ホウ素錯体(II)を生じさせることができる。
【0109】
三置換ホウ素化合物は商業的に入手可能であるか或はBF・O(R)(ここで、Rはエチル、プロピル、フェニルなどである)とグリニヤール試薬をTHFまたは無水トルエン中で反応させることで得ることができる。
【0110】
酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有する前記酸性ポリマーと前記窒素原子配位ホウ素化合物(II)の反応は約40から130℃、好適には約80℃で実施可能である。
【0111】
前記酸性ポリマーまたは重合性酸モノマーと式(II)で表されるホウ素錯体をアルコール溶媒の存在無しに反応させる時、酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有する前記ポリマーと前記窒素原子配位ホウ素化合物の混合比の選択を一般に前記窒素原子配位ホウ素化合物を導入すべき酸基1個当たりに添加する前記窒素原子配位ホウ素化合物の分子数が0.3から3、好適には分子数が0.7から2になるように行う。
【0112】
上述した他の結合剤樹脂の添加量を好適には他の結合剤樹脂が0−70重量%でホウ素含有ポリマーが100から30重量%になるような量にする。前記“他の結合剤樹脂”の比率を前記範囲より高くするのは好ましくない、と言うのは、塗膜が示す優れた長期防汚特性および優れた抗亀裂特性の両方が同時には確保されなくなるからである。
【0113】
本発明の樹脂組成物を適切には防汚塗料に取り込ませてもよい。また、前記樹脂組成物を取り込ませた防汚塗料も本発明の範囲内である。前記樹脂組成物の添加量は一般に当該防汚塗料に入っている固体内容物の0.1から80質量%である。その量が0.1質量%未満であると、その結果としてもたらされる塗膜は防汚特性の点で劣る一方、その量が80質量%を超えると、不便さが生じる可能性があり、例えば塗膜に亀裂が生じることなどが起こる可能性がある。その量を好適には1から60質量%にする。
【0114】
本発明にとって必須ではないが、さらなる防汚剤を本発明の塗料組成物に入れる1成分として用いることも可能であり、それらは1種以上の通常の公知防汚剤のいずれであってもよい。公知防汚剤はおおまかに無機化合物、金属含有有機化合物および金属を含有しない有機化合物に分類分けされる。
【0115】
無機化合物の例には、銅化合物(例えば硫酸銅、銅粉、チオシアン酸第一銅、炭酸銅、塩化銅および伝統的に好適な酸化第一銅)、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸ニッケルおよび銅ニッケル合金が含まれる。
【0116】
金属含有有機化合物の例には、有機銅化合物、有機ニッケル化合物および有機亜鉛化合物が含まれる。また、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン(マネブ)、プロピネブ
なども使用可能である。有機銅化合物の例にはノニルフェノール−スルホン酸銅、ビス(エチレンジアミン)ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸)銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、銅ピリチオンおよび銅ビス(ペンタクロロフェノラート)が含まれる。有機ニッケル化合物の例には、酢酸ニッケルおよびジメチルジチオカルバミン酸ニッケルが含まれる。有機亜鉛化合物の例には、酢酸亜鉛、カルバミン酸亜鉛、ビス(ジメチルカルバモイル)亜鉛エチレン−ビス(ジチオカルバメート)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、亜鉛ピリチオンおよびエチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛が含まれる。混合型金属含有有機化合物の例として、亜鉛塩と錯体を形成している(高分子量)エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン(マンコゼブ)を挙げることができる。
【0117】
金属を含有しない有機化合物の例には、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、ジチオカルバミン酸、N−アリールマレイミド、3−(置換アミノ)−1,3チアゾリジン−2,4−ジオン、ジチオシアノ化合物、トリアジン化合物、オキサチアジンなどが含まれる。
【0118】
N−トリハロメチルチオフタルイミドの例には、N−トリクロロメチルチオフタルイミドおよびN−フルオロジクロロメチルチオフタルイミドが含まれる。
【0119】
ジチオカルバミン酸の例には、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウムおよびエチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)アンモニウムが含まれる。
【0120】
トリハロメチルチオスルファミドの例には、N−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミドおよびN−(ジクロロフルオロメチルチオ)−N’,N’−ジメチル−N−(4−メチルフェニル)スルファミドが含まれる。
【0121】
N−アリールマレイミドの例には、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−4トリルマレイミド、N−3クロロフェニルマレイミド、N−(4−n−ブチルフェニル)マレイミド、N−(アニリノフェニル)マレイミドおよびN−(2,3−キシリル)マレイミドが含まれる。
【0122】
3−(置換アミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの例には、2−(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール、3−ベンジリデンアミノ−1、3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(4−メチルベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン、3−(2−ヒドロキシベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン,3−(4−ジメチルアミノベンジリドアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンおよび3−(2,4−ジクロロベンジリデンアミノ)−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンが含まれる。
【0123】
ジチオシアノ化合物の例には、ジチオシアノメタン、ジチオシアノエタンおよび2,5−ジチオシアノチオフェンが含まれる。
【0124】
トリアジン化合物の例には、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンが含まれる。
【0125】
オキサチアジンの例には、1,4,2−オキサチアジンおよびこれらのモノ−およびジ−オキサイド、例えばPCT特許WO 98/05719に開示されているそれら:即ち3位に(a)フェニル;ヒドロキシル、ハロ、C1−12アルキル、C5−6シクロアルキル、トリハロメチル、フェニル、C1−C5アルコキシ、C1−5アルキルチオ、テトラヒドロピラニルオキシ、フェノキシ、C1−4アルキルカルボニル、フェニルカルボニ
ル、C1−4アルキルスルフィニル、カルボキシまたはこれのアルカリ金属塩、C1−4アルコキシカルボニル、C1−4アルキルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、トリルアミノカルボニル、モルホリノカルボニル、アミノ、ニトロ、シアノ、ジオキソラニルまたはC1−4アルキルオキシイミノメチルから独立して選択される1から3個の置換基で置換されているフェニル;ナフチル;ピリジニル;チエニル;フラニル;またはC1−C4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、ハロ、シアノ、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ニトロ、C1−C4アルコキシカルボニル、フェニル、フェニルアミノカルボニルおよびC1−4アルキルオキシイミノメチルから独立して選択される1から3個の置換基で置換されているチエニルまたはフラニルに相当する置換基または(b)一般式
【0126】
【化15】

【0127】
[式中、Xは酸素または硫黄であり、Yは窒素、CHまたはC(C1−4アルコキシ)である]
で表される置換基に相当する置換基を有する1,4,2−オキサチアジンのモノ−およびジ−オキサイド[C6環はC1−4アルキル置換基を1個持っていてもよく、場合によりC1−4アルキルまたはベンジルから選択される2番目の置換基が5または6位に存在していてもよい]などが含まれる。
【0128】
金属を含有しない有機化合物の他の例には、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチル−ジクロロフェニル尿素、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、カルバミン酸3−ヨード−2−プロピニルブチル、2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンゾイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、フェニル(ビスピリジン)ビスマスジクロライド、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ジヒドロアビエチルアミン、N−メチロールホルムアミドおよびピリジントリフェニルボランが含まれる。
【0129】
好適な態様に従ってWO−A−9505739に開示されているオキサチアジンを防汚剤として用いると当該塗料の自己研磨特性が向上すると言った追加的利点が得られる(EP−A−823462に開示)。
【0130】
汚れの原因になる有機体の中でフジツボが最も厄介であることが確かめられている、と言うのは、それらは大部分の殺生物剤に耐性を示すからである。従って、塗料配合物にまた少なくとも1種の特定の殺フジツボ剤、例えば酸化第一銅またはチオシアネートなどを少なくとも有効な量で含有させることも可能である。好適な殺フジツボ剤がEP−A−831134に開示されている。EP−A−831134には、5位および場合により1位が置換されている少なくとも1種の2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体[2位および3位のハロゲンは独立してフッ素、塩素および臭素から成る群より選択され、5位の置換基はC1−8アルキル、C1−8モノハロゲノアルキル、C5−6シクロアルキル、C5−6モノハロゲノシクロアルキル、ベンジル、フェニル、モノ−およびジ−ハロゲノベンジル、モノ−およびジ−ハロゲノフェニル、モノ−およびジ−C1−4−アルキルベンジル、モノ−およびジ−C1−4−アルキルフェニル、モノハ
ロゲノモノ−C1−4−アルキルベンジルおよびモノハロゲノモノ−C1−4−アルキルフェニルから成る群より選択され、5位に位置する置換基が有する任意のハロゲンは塩素および臭素から成る群より選択され、1位の任意の置換基はC1−4アルキルおよびC1−4アルコキシC1−4アルキルから選択される]を当該組成物の無水質量の総重量を基準にして0.5から9.9重量%用いることが開示されている。
【0131】
そのような追加的防汚剤から選択した1種以上の防汚剤を本発明で用いることも可能である。そのような防汚剤を当該塗料組成物の固体内容物中のそれの比率が通常は0.05から90重量%、好適には0.05から80重量%、より好適には0.5から60重量%になるような量で用いる。防汚剤の量があまりにも少ないと防汚効果がもたらされない一方、防汚剤の量があまりにも多すぎると結果として欠陥、例えば亀裂および剥がれなどが発生する傾向があることで防汚特性があまり有効でない塗膜が生じてしまう。
【0132】
前記可塑剤には特に制限がなく、それには例えばフタレートが基になった可塑剤、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジシクロヘキシルなど、二塩基性脂肪エステルが基になった可塑剤、例えばアジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチルなど、グリコールエステルが基になった可塑剤、例えばジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステルなど、ホスフェートが基になった可塑剤、例えば燐酸トリクレジル、燐酸トリクロロエチルなど、エポキシが基になった可塑剤、例えばエポキシ化大豆油、オクチルエポキシステアレートなど、有機錫が基になった可塑剤、例えばジオクチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートなどおよびトリメリット酸トリオクチル、トリアセチレンなどが含まれる。
【0133】
前記顔料には特に制限がなく、それには例えば増量用顔料、例えば沈澱硫酸バリウム、タルク、粘土、チョーク、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイトなど、および着色顔料、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、塩基性硫酸鉛、酸化錫、カーボンブラック、グラファイト、赤色酸化鉄、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドンなどが含まれる。
【0134】
上述した添加剤以外の他の添加剤にも特に制限はなく、それには例えばロジン、一塩基性有機酸、例えばフタル酸モノブチルおよびこはく酸モノオクチルなど、樟脳、ヒマシ油などが含まれる。
【0135】
本発明の防汚塗料の調製は、例えば通常の添加剤、例えば他の結合剤樹脂、防汚剤、可塑剤、塗膜研磨調節剤(coating−abrasion regulator)、顔料、溶媒などを本発明に従うホウ素含有ポリマーを含有する前記樹脂組成物に添加した後にそれらを混合装置、例えばボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル(sand grind mill)などで混合することなどで実施可能である。
【0136】
上述した防汚塗料を塗装すべき基質の表態様に通常様式で加えた後に溶媒を通常の温度または加熱下で蒸発させて除去することで乾燥した塗膜を生じさせることができる。
【0137】
本発明に従うホウ素含有ポリマーを含有する樹脂組成物は、防汚塗料に入れる結合剤樹脂として優れた防汚特性を示す新規な化合物であり、この樹脂は水中で徐々に加水分解を起こして塗膜の研磨をもたらすいわゆる自己研磨特性を有する加水分解性樹脂である。
【0138】
本発明に従うホウ素含有ポリマーを含有する樹脂組成物が組み込まれている防汚塗料は、結果としてもたらされる塗膜が示す防汚特性の点で優れている。
【0139】
本発明に従うホウ素含有ポリマーを含有する樹脂組成物を防汚塗料の中に組み込むと、
それは結果としてもたらされる塗膜が示す防汚特性の点で優れている。前記ホウ素含有ポリマーの合成は本発明の製造方法に従って簡潔かつ容易に実施可能である。
【0140】
特に、本発明の組成物は、産業物を塗装するための塗料および塗料として使用可能であり、特に、船体造船産業(造船用ブロックを包含)で使用可能である。後者の場合のブロックは、船体または他の構成要素、例えばバラストタンクなど用のブロックであり得る。
【0141】
本組成物の塗布は例えばハケ塗り、噴霧、浸漬などで実施可能である。
【0142】
以下の実施例を参照することで本発明がより容易に理解されると思われるが、本実施例は単に本発明の特定の態様および態様を例示する目的で含めるものであり、本発明を制限することを意図するものでない。
【実施例】
【0143】
序文
トリフェニルボラン−ピリジン錯体をHokkoから購入した。トリフェニルボラン−オクタデシルアミンはInvistaから供給されたものであった。他の試薬を全部Aldrichから購入して精製無しに用いた。NMRスペクトルの記録をCDCl中でBF:OEtを外部標準として用いて実施した。GC分析を内径が320ミクロンで膜厚が0.5ミクロンのDB−Wax 60 mが用いられているAgilent HP6890装置を用いて実施した。結合剤をヘキサンに約1%入れて沈澱を起こさせ、そしてその溶液を1ミクロリットルの量でスプリット−スプリットレスインジェクター(split−splitless injector)の中に注入した。検出を炎イオン化検出器を用いて行う。
固体含有量の測定では、サンプルを120℃に1時間加熱する前と後の重量を計ることで測定を実施した[標準試験方法ISO 3233/ASTM 2697/DIN 53219]。固体含有量を重量(%)で示す。結合剤溶液および塗料の粘度の測定をBrookfieldを用いて25℃で実施した[ASTM試験方法D2196−86]。粘度を(dPa.s)として示す。
【0144】
樹脂A:
575gのキシレンおよび143.7gのn−ブタノールを4Lの4口フラスコに入れて窒素下に維持した。前記フラスコの4つの口に撹拌手段、還流冷却器、反応温度制御用温度計およびモノマー添加手段を取り付けた。
予混合物の調製を個別の容器内で実施した。それに下記を入れた:
− 277gのアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)[モノマーの30.8重量%ー]
− 565gのメタアクリル酸メチル(MMA)[モノマーの62.6重量%]
− 202gのアクリル酸(AAc)[モノマーの6.4重量%]
− 18g(=総モノマー重量を基準にして2%)のTrigonox 21S
【0145】
前記予混合物を反応容器に温度を115℃に維持しながら滴下した(総時間:約3時間)。前記予混合物の滴下が終了してから30分後に1.8g(0.2重量%)のTrigonox 21Sの後添加を1回実施した。その後、反応を完了させる目的で温度を115℃に90分間維持した。その溶液を181.3gのキシレンで希釈した。その結合剤の固体含有量は50%で粘度は7dPa.sであった。
【0146】
樹脂B−L:
樹脂Aに関して記述した手順と同じ手順を樹脂B−Lの調製で用いた。相対量を表1に示す。
樹脂Cはブタノールを用いないで製造する以外はAと同様である。
樹脂Dはブタノールを用いないで製造する以外はBと同様である。
【0147】
製造実施例1
250mlの3口フラスコ内で6gの酢酸(AcOH)および32.1gのトリフェニルボラン−ピリジン錯体(ボラン1)を195gのキシレンに溶解させて窒素下に維持した。前記フラスコの3つの口に撹拌手段、還流冷却器、反応温度制御用温度計を取り付けた。その溶液を80℃に加熱して4時間撹拌すると透明な溶液がもたらされた。反応容器内の揮発性化合物を減圧下60−70℃で留出(留出液を192.9g集めた)させると褐色の溶液がもたらされた。
11B NMRは主ピークが6.8ppmの所に存在しそして小さなピークが4.6ppmの所に存在することを示していた。
【0148】
製造実施例2−4
製造実施例1に関して記述した手順と同じ手順を用いて製造実施例2−4の調製を実施した。相対量を表2に示す。
製造実施例2では、11B NMRが4.6および6.8ppmの所にピークを示した。
製造実施例3(n−ブタノール(n−BuOH)を後で添加)では、11B NMRが28.7および45.5ppmの所にピークを示した。
製造実施例4では、n−ブタノールを存在させ、その反応によって沈澱物がもたらされる。
【0149】
比較実施例1
157.1gの樹脂A、185.5gのキシレンおよび22.5gのトリフェニルボラン−ピリジン錯体を4Lの4口フラスコに入れて窒素下に維持した。前記フラスコの4つの口に撹拌手段、還流冷却器および反応温度制御用温度計を取り付けた。その溶液を80℃に加熱して4時間撹拌すると曇った溶液がもたらされた。反応容器から揮発性化合物を減圧下60−70℃で留出(留出液を228.5g集めた)させると曇った褐色の樹脂溶液がもたらされた。
その留出液をGCで分析した結果、ベンゼンが化学量論的量の47%の量で存在しかつピリジンが化学量論的量の32%の量で存在することが分かった。
その乾燥させた樹脂がCDClに溶解した状態で示した11B NMRは、ピークが28.7および45.5ppmの所に存在することを示していた。
【0150】
比較実施例2
比較実施例1に関して記述した手順と同じ手順を用いて比較実施例2の調製を実施した。相対量を表1に示す。
【0151】
実施例1
157.1gの樹脂C、185.5gのキシレンおよび22.5gのトリフェニルボラン−ピリジン錯体を4Lの4口フラスコに入れて窒素下に維持した。前記フラスコの4つの口に撹拌手段、還流冷却器および反応温度制御用温度計を取り付けた。その溶液を80℃に加熱して4時間撹拌すると透明な溶液がもたらされた。反応容器から揮発性化合物を減圧下60−70℃で留出(留出液を248.5g集めた)させると透明な褐色の樹脂溶液がもたらされた。
【0152】
その留出液をGCで分析した結果、ベンゼンが化学量論的量の100%の量で存在しかつピリジンが化学量論的量の1%の量で存在することが分かった。
その乾燥させた樹脂がCDClに溶解した状態で示した11B NMRは、ピークが
4.6ppmの所に存在することを示していた。
【0153】
実施例2−11
実施例1に関して記述した手順と同じ手順を用いて実施例2−11の調製を実施した。相対量を表3に示す。
【0154】
実施例12
実施例1に従って調製した生成物が示した粘度は26dPa.s(23℃)で固体量は50%であった。この材料を室温で11ケ月貯蔵した後にそれが示した粘度は52dPa.s(23℃)で固体量は50%であった。
実施例1に従って調製したサンプルに関して溶媒の5%(重量/重量)%をピリジンに置き換えた。そのサンプルが示した粘度は22dPa.s(23℃)で固体量は50%であり、それを室温で11ケ月貯蔵した後にそれが示した粘度は25dPa.s(23℃)で固体量は50%であった。
【0155】
実施例13:
(蒸留前に安定剤(アミン)を添加)
157.1gの樹脂C、185.5gのキシレンおよび22.5gのトリフェニルボラン−ピリジン錯体を4Lの4口フラスコに入れて窒素下に維持した。前記フラスコの4つの口に撹拌手段、還流冷却器および反応温度制御用温度計を取り付けた。その溶液を80℃に加熱して4時間撹拌すると透明な溶液がもたらされた。その溶液に103.6gのオクタデシルアミンおよび103gのキシレンを加えた後、反応容器から揮発性化合物を減圧(150ミリバール)下60−70℃で留出(留出液を511g集めた)させると透明な褐色の樹脂溶液がもたらされ、それの粘度は12.3dPa.s(23℃)で固体量は46.5%である。
【0156】
その結合剤を室温で11ケ月貯蔵した後にそれが示した粘度は12.7dPa.s(23℃)で固体量は46.5%である。
【0157】
本出願に関連して本明細書と同時またはそれより前に出願されかつ本明細書に関連して一般閲覧の目的で公開された論文および資料の全部に注意を払い、そのような論文および資料全部の内容は引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0158】
本明細書(添付請求項、要約および図のいずれも包含)に開示する特徴の全部および/またはそのようにして開示した方法または工程いずれかの段階の全部を任意組み合わせで組み合わせてもよいが、但しそのような特徴および/または段階の少なくともいくつかが相互に排除される組み合わせを除くことを条件とする。
【0159】
本明細書(添付請求項、要約および図のいずれも包含)に開示する特徴の各々は特に明記しない限り同じ、相当または同様な目的を果たす代替特徴に置き換え可能である。このように、特に明記しない限り、開示する特徴は各々一般的組の相当もしくは同様な特徴の中の単なる一例である。
【0160】
本発明を前記態様1種または2種以上の詳細に限定するものでない。本発明は、本明細書(添付請求項、要約および図のいずれも包含)に開示する特徴のいずれかの新規な1つの特徴またはいずれかの新規な組み合わせまたはそのように開示したいずれかの方法または工程の段階のいずれかの新規な1つの段階またはいずれかの新規な組み合わせにも及ぶ。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物および溶媒を含有する防汚塗料であって、前記樹脂組成物が、
式(I):
【化1】

[式中、
Zは、
【化2】

を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成りかつ前記溶媒がn−ブタノールを含有しないことを特徴とする防汚塗料。
【請求項2】
樹脂組成物であって、式(I):
【化3】

[式中、
Zは、
【化4】

を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成りかつ溶媒を含有するが、n−ブタノールを含有しないことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物であって、式(I):
【化5】

[式中、
Zは
【化6】

を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成りかつまた前記式Iで表される基を安定にする安定剤も含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
前記安定剤がアミンまたは窒素含有複素環式化合物である請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記安定剤が錯体を形成していない置換もしくは非置換窒素原子を有する複素環式化合物であるか或は前記安定剤が本明細書で定義する如き1個以上のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アルカリール、アリール基またはこれらの組み合わせを有する第一級、第二級もしくは第三級アミンのいずれかであり、かつ前記基が置換されていないか或はアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、−COOH、−COOアルキルまたはさらなるアミノ基で置換されていてもよい請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記安定剤が総樹脂組成物の1−50%(重量/重量)の濃度で添加されている請求項4または5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ホウ素含有ポリマーの製造方法であって、式-Z(OH)[式中、n=1または2であり、そしてZは前記請求項1で定義した通りである]で表される酸基を側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーと下記の式(II):
【化7】

[式中、
、RおよびRは、同一もしくは異なってもよく、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキルまたはアリール、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そしてAは、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される窒素原子配位ホウ素化合物の反応をn−ブタノールの存在無しに起こさせる段階を含んで成る方法。
【請求項8】
ホウ素含有ポリマーの製造方法であって、(a)重合性有機酸と請求項1記載の式(II)で表される窒素原子配位ホウ素化合物の反応をn−ブタノールの存在無しに起こさせそして(b)段階(a)で得たホウ素含有重合性モノマーを含んで成るモノマー成分を場合によりn−ブタノールを存在させないで重合または共重合させることを含んで成る方法。
【請求項9】
前記重合性有機酸が重合性有機カルボン酸、重合性有機スルホン酸または重合性有機燐酸である請求項8記載の方法。
【請求項10】
塗料配合用結合剤組成物であって、式(ZO)BR3−n:A[式中、n=1−3でありそしてRは以下に定義する如きRおよび/またはRであり得る]で表されるホウ素含有ポリマーを含有して成り、前記ホウ素含有ポリマーが、ポリマー1g当たり60mgのKOH以上の酸濃度を有するポリマーと式II
【化8】

[式中、
、RおよびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そしてA:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表されるホウ素錯体から生じさせたポリマーであり、かつ追加的酸を含有するが、添加された前記追加的酸の量が前記添加されたホウ素錯体1モル当量当たり1モル当量未満の追加的酸の比率である結合剤組成物。
【請求項11】
前記酸性ポリマー:追加的酸の重量比が10:1から1:10の範囲内である請求項8記載の結合剤組成物。
【請求項12】
前記追加的酸が非重合性酸である請求項10または11記載の結合剤組成物。
【請求項13】
前記第一級から第三級アミンがアルキル基含有アミン、アシル基含有アミン、アルコキシル基含有アミン、アリール基含有アミン、アリルアミン、ビニルアミンおよびアミノスチレンから選択され得る請求項1から10のいずれか記載の樹脂組成物もしくは防汚塗料。
【請求項14】
第一級アミンが選択されている請求項11記載の樹脂組成物もしくは防汚塗料。
【請求項15】
前記窒素含有複素環式化合物がピリジン、ピロール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、イミダゾール、キノリン、インドール、カルバゾール、フェナントロリン、および置換基を有する複素環式化合物、例えば2−エチルピリジン、ピコリン酸、ニコチン酸、ニコチン酸オクチル、ビニルピリジンおよびアリルピリジンなどから選択される請求項1から12のいずれか記載の樹脂組成物もしくは防汚塗料。
【請求項16】
前記溶媒がアセテート、ケトンおよび官能基を含有しない芳香族化合物、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸メトキシプロピル、トルエン、キシレン、ホワイトスピリット、酢酸エトキシプロピル、プロピオン酸エトキシエチル、酢酸メトキシブチル、ブチルグリコールアセテート、溶媒ナフサおよびこれらの溶媒の混合物から選択される請求項1から15のいずれか記載の防汚塗料もしくは樹脂組成物。
【請求項17】
樹脂組成物を含有する防汚塗料であって、前記樹脂組成物が、式(I):
【化9】

[式中、
Zは、
【化10】

を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成りかつ前記樹脂組成物がアルコキシボリル残基を含有しないことを特徴とする防汚塗料。
【請求項18】
樹脂組成物であって、式(I):
【化11】

[式中、
Zは、
【化12】

を表し、かつ
およびRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはアルカリール基から選択され、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、アラルキルオキシル、アルカリールオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
A:は、第一級から第三級アミンまたは窒素含有複素環式化合物を表し、かついずれの場合にもホウ素にN−B結合を通して配位している]
で表される基をペンダント型側鎖中または末端に少なくとも1個有するポリマーを含有して成りかつアルコキシボリル残基を含有しないことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項19】
請求項2−6、11−13および16のいずれか1項記載の樹脂組成物を含有する防汚塗料。
【請求項20】
溶液である請求項2−6、11−13および16のいずれか記載の樹脂組成物。

【公表番号】特表2010−530461(P2010−530461A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512703(P2010−512703)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057884
【国際公開番号】WO2008/155414
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505258612)
【氏名又は名称原語表記】PPG B.V.
【Fターム(参考)】