説明

防火戸

【課題】ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制できる防火戸を提供する。
【解決手段】戸本体11の両面側において開口19を覆うように複数のガラス12が取り付けられる。金属製の遮蔽板13が、戸本体11の内部に収納され、上下方向に沿って移動することで、開口19から外れた位置に退避した退避位置から開口19を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置に移動する。遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動したときに、錘部27の落下に伴って遮蔽板13を退避位置から遮蔽位置へと移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火炎を遮蔽するための防火戸に関し、見通しを良くすることや採光できるようにすること等を目的としてガラスが取り付けられた防火戸が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された防火戸は、外周が耐火鋼材で支持された耐熱板ガラスを備えて構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−287961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された防火戸のように、耐熱板ガラスを用いることで、防火戸においても見通しや採光の目的を達成することができる。しかしながら、耐熱板ガラスを用いた防火戸の場合、耐熱板ガラスの取り扱いを専門に行う専門業者によって施工することが必要となる。このため、施工に際して、業者の選定に制約が多くなり、円滑な施工が難しく、更には施工費用の増大を招いてしまうという問題がある。また、耐熱板ガラスを用いるため、耐熱板ガラスでない一般のガラスを用いた場合に比して大幅なコスト増を招いてしまうという問題もある。従って、ガラスが取り付けられて見通しと採光とが確保された防火戸の構造を耐熱板ガラスを用いることなく実現することが望まれる。また、このような防火戸の実現にあたっては、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮できることが必要となるとともに、構造の複雑化が抑制されることも望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制できる防火戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明に係る防火戸は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、開口が形成された戸本体と、前記戸本体の少なくとも片面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向又は上下方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、火災の発生に応じて作動する作動手段と、重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によると、戸本体に形成された開口を覆うようにガラスが取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体内には金属製の遮蔽板が水平方向又は上下方向に移動可能に収納されている。そして、火災の発生に応じて作動する作動手段が作動したとき、遮蔽板駆動手段が作動して錘部が落下することで、錘部に連結された遮蔽板が、開口から外れた退避位置から開口を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口が金属製の遮蔽板で遮蔽され、火災の進展によってガラスが破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段の作動に基づいて錘部が落下することで開口を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、本発明によると、開口に取り付けるガラスは耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。更に、耐熱板ガラスでない一般のガラスを用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0008】
従って、本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制できる防火戸を提供することができる。
【0009】
第2発明に係る防火戸は、第1発明の防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、遮蔽板には、遮蔽位置において開口の周囲で戸本体の内壁に向かって延びてこの内壁に近接する内壁近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、戸本体の内壁と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0011】
第3発明に係る防火戸は、第2発明の防火戸において、前記内壁近接部は、複数回屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、内壁近接部が複数回屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、戸本体の内壁と内壁近接部との間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0013】
第4発明に係る防火戸は、第1発明乃至第3発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、戸本体の内壁における開口の周囲には、遮蔽位置において遮蔽板に向かって延びて遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板と遮蔽板近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、遮蔽板と遮蔽板近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0015】
第5発明に係る防火戸は、第1発明の防火戸において、前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、遮蔽板には内壁近接部が設けられ、戸本体の内壁における開口の周囲には遮蔽板近接部が設けられている。また、内壁近接部の最も戸本体内壁側が遮蔽板近接部の最も遮蔽板側よりも戸本体の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部と遮蔽板近接部とが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板近接部と内壁近接部との間を経由して開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路が形成される。このため、火災が発生して開口が遮蔽された状態でガラスが破損しても、火炎は、開口を通過するためには、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路も通過しなければならないことになる。これにより、入り組んで配置された遮蔽板近接部と内壁近接部との間の狭い空間と迂回経路とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0017】
第6発明に係る防火戸は、第1発明乃至第5発明のいずれかの防火戸において、前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内部に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、戸本体内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体を支持する柱部材が設けられ、この柱部材として、内部に錘部が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材が備えられている。このため、戸本体内において強度メンバーを配置するスペースと錘部が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体内のスペースを効率よく活用することができる。
【0019】
第7発明に係る防火戸は、第6発明の防火戸において、前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、錘部内蔵柱部材の内側の壁面によって錘部の落下移動方向がガイドされるため、錘部の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0021】
第8発明に係る防火戸は、第7発明の防火戸において、前記錘部の側面が、前記錘部内蔵柱部材の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、錘部の側面が錘部内蔵柱部材の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所で摺接可能なため、落下移動時における錘部の姿勢がより安定して維持されることになる。このため、遮蔽板駆動手段の作動を更に速やかに円滑に行わせることができる。
【0023】
第9発明に係る防火戸は、第6発明乃至第8発明のいずれかの防火戸において、前記錘部の側面には、前記錘部内蔵柱部材の内側の壁面に対して摺接する樹脂部材が設けられていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、錘部の側面において錘部内蔵柱部材の内側の壁面に摺接する樹脂部材が設けられているため、この樹脂部材が錘部と上記壁面との間で緩衝材として機能することになる。このため、防火戸が開閉動作する際に錘部が振動して上記壁面との間で衝突音が発生することが防止され、防音効果が発揮されることになる。
【0025】
第10発明に係る防火戸は、第6発明乃至第9発明のいずれかの防火戸において、前記遮蔽板は、上下方向に沿って移動することで、前記退避位置から前記遮蔽位置に移動し、前記錘部内蔵柱部材は、前記遮蔽板の両側方に配置されていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、遮蔽板が上下方向に移動するため、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状の防火戸において、開口の面積を大きく確保することができる。そして、錘部内蔵柱部材が遮蔽板の両側方に配置されているため、錘部の落下移動空間を形成するとともに強度メンバーである錘部内蔵柱部材を、大きな面積が確保された開口と干渉させることなく、戸本体内においてスペース効率よく配置することができる。
【0027】
第11発明に係る防火戸は、第1発明乃至第10発明のいずれかの防火戸において、前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、作動手段が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板側と戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段を作動させるように構成されている。機械式であるため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0029】
第12発明に係る防火戸は、第1発明乃至第11発明のいずれかの防火戸において、前記遮蔽板駆動手段は複数の前記錘部を有し、複数の前記錘部はそれぞれ前記連結部を介して前記遮蔽板に連結されていることを特徴とする。
【0030】
この発明によると、錘部が複数設けられているため、仮に1つの錘部と遮蔽板との連結が破断等した或いはしている場合であっても、他の錘部の落下によって、確実に遮蔽板駆動手段を作動させることができる。
【0031】
第13発明に係る防火戸は、第12発明の防火戸において、前記錘部は2つ設けられ、2つの前記錘部が、前記遮蔽板に対して、前記遮蔽板の移動方向に対して垂直な方向における両端部において、前記連結部を介してそれぞれ連結されていることを特徴とする。
【0032】
この発明によると、2つの錘部が、遮蔽板に対してその移動方向と垂直な方向の両端部でそれぞれ連結されるため、2つの錘部の落下移動によって、安定した姿勢を維持させながら遮蔽板を移動させることができる。このため、遮蔽板駆動手段の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0033】
第14発明に係る防火戸は、第12発明又は第13発明の防火戸において、前記遮蔽板駆動手段は、1つの前記作動手段の作動に基づいて複数の前記錘部を落下させることを特徴とする。
【0034】
この発明によると、1つの作動手段の作動に基づいて複数の錘部が落下するため、複数の錘部の落下タイミングの統一を図ることができ、遮蔽板駆動手段の作動を更に速やかに円滑に行わせることができる。また、作動手段が1つでよいため、部品点数の削減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、ガラスが取り付けられた防火戸に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制できる防火戸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸として広く適用することができるものであり、自動ドア及び手動ドア(手動で開閉されるドア)のいずれ戸の形態に対しても適用することができる。また、開き戸、引き戸、折戸等、種々の形態の戸に対しても適用することができる。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る防火戸1を示す正面図である。図1に示す防火戸1は、例えば、所定の部屋に対してその内側(室内側)と外側(室外側)とを仕切る戸として設けられる。そして、防火戸1は、例えば、引き戸式の自動ドアとして設けられ、図示しないドア駆動装置によって水平方向に移動するように駆動されることで開閉する。尚、防火戸1は、単独で1枚の自動ドアとして用いられてもよく、また、複数枚で構成される自動ドアにおける1枚の戸として用いられてもよい。また、防火戸1は、室内外を仕切る戸に限らず、通路の途中に配置されて所定の領域に対してその内側と外側とを仕切る戸として設けられてもよい。
【0038】
図2は図1のA−A線矢視断面図であり、図3は図2のB−B線矢視断面図である。図1乃至図3に示すように、防火戸1は、戸本体11、複数のガラス12、遮蔽板13、作動手段14、遮蔽板駆動手段15などを備えて構成されている。そして、戸本体11は、両面のパネル体16、柱部材17、横フレーム18などを備えて構成されている。この戸本体11は、図示しない建築構造物に対して支持され、上下方向に沿って配置された状態で水平方向において移動自在に支持されている。そして、前述のドア駆動装置が作動することで、戸本体11が水平方向に移動し、防火戸1の開閉動作が行われる。
【0039】
図1乃至図3に示すパネル体16は、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状に形成されている。そして、パネル体16は、室外側に配置されるパネル体16aと室内側に配置されるパネル体16bとを有して構成され、鋼製の板材によって形成されている。尚、本実施形態では、1枚の板材が折り曲げ加工されることでパネル対16(16a、16b)が形成されている場合を例示しているが、この通りでなくてもよく、複数の板材が互いに固定されることでパネル体16が形成されていてもよい。また、パネル体16a及びパネル体16bには、その上半側において、大きな四角形状の貫通孔として形成された開口がそれぞれ設けられている。このように戸本体11のパネル体16に形成されたこれらの開口が、戸本体11における開口19を構成している。
【0040】
図1及び図2に示す柱部材17は、戸本体11内における水平方向の両側(左右両側)にそれぞれ配置された柱部材17aと柱部材17bとで構成されている。そして、柱部材17(17a、17b)は、戸本体11の内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における上下方向の強度メンバー)として設けられている。各柱部材(17a、17b)は、複数の鋼製の板材が折り曲げ加工されるとともに互いに固定されることで形成されている。
【0041】
図4は、図2における柱部材17a及びその近傍を拡大して示す断面図である。図4に示すように、柱部材17(17a、17b)は、戸本体11の内部でパネル体16a及びパネル体16bの両方に対して固定された縦フレーム20と、縦フレーム20に固定された錘部支持フレーム21とで構成されている。柱部材17(17a、17b)は、略矩形断面の錘部支持フレーム21の内部が中空となるように形成されている。これにより、柱部材17(17a、17b)は、後述する遮蔽板駆動手段15の錘部27が落下移動可能な空間が内部に形成された本実施形態の錘部内蔵柱部材を構成している。尚、後述の錘部27の水平方向の断面形状は錘部支持フレーム21の内壁の水平方向の断面形状に沿った形状となっており、これにより、錘部内蔵柱部材である柱部材17(17a、17b)は、内側の壁面が錘部27の落下移動方向をガイドするように形成されている。
【0042】
図1及び図3に示す横フレーム18は、戸本体11の内部において水平方向に沿って配置され、柱部材17とともに両面のパネル体16(16a、16b)を支持する部材(即ち、戸本体11における水平方向の強度メンバー)として設けられている。そして、横フレーム18は、鋼製の板材が折り曲げ加工されることで形成され、戸本体11内の複数個所に配置されるとともに、開口19の上側及び下側のいずれにも配置されている。尚、横フレーム18として、開口19の下側に配置されるとともに、パネル体16aとパネル体16bとに対してそれぞれ固定される複数の部材が設けられている。戸本体11の内部の両面側にそれぞれ配置されたこの横フレーム18は、戸本体11のねじれ荷重に対抗するための強度メンバーとして設けられている。
【0043】
図1及び図3に示す複数のガラス12は、複数の板ガラスとして設けられ、戸本体11の両面側において開口19を戸本体11の内部側から覆うように取り付けられている。そして、ガラス12は、パネル体16aに対して取り付けられるガラス12aと、パネル体16bに対して取り付けられるガラス12bとで構成されている。ガラス12aは、パネル体16aに形成された開口を塞ぐように配置されている。このガラス12aは、その周縁部に沿って配置されるシール部材23aを介して開口19を密閉した状態で、戸本体11の内壁の一部として設けられたガラス取付部材22aによりパネル体16aに取り付けられている。また、ガラス12bは、パネル体16bに形成された開口を塞ぐように配置されている。このガラス12bは、その周縁部に沿って配置されるシール部材23bを介して開口19を密閉した状態で、戸本体11の内壁として設けられたガラス取付部材22bによりパネル体16bに取り付けられている。
【0044】
図1乃至図3に示す遮蔽板13は、鋼(本実施形態における金属)製で略四角形の板状部材として形成されるとともに、戸本体11の内部に収納されている。この遮蔽板13は、後述の遮蔽板駆動手段15と連結され、後述の作動手段14が作動することにより、戸本体11内において上下方向に沿って移動するように設けられている。遮蔽板13は、作動手段14が作動していない(火災が発生していない場合)状態では、図1乃至図3に示すように、開口19から外れた下方の位置に退避した退避位置に位置している。一方、作動手段14が作動すると(火災が発生している場合)、図5の防火戸1の正面図に示すように、退避位置から上方に移動して、開口19を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。図5のC−C線矢視断面図である図6、及び図6のD−D線矢視断面図である図7によく示すように、遮蔽板13は、上記の遮蔽位置では、開口19を遮蔽するように複数のガラス12(12a、12b)の間に配置されることになる。この遮蔽位置では、遮蔽板13の上端側は、戸本体11の一部であるガラス取付部材22aにおける開口19の上側に配置された部分に当接しており、遮蔽板13の上端側と戸本体11の内壁との間は封鎖されている。尚、前述した柱部材17(17a、17b)は、この遮蔽板13の両側方に配置されている。
【0045】
また、遮蔽板13には、図2、図3、図6及び図7に示すように、その外周の縁部分に沿って設けられた内壁近接部24が設けられている。この内壁近接部24としては、遮蔽板13の上下方向に沿って延びる両側の縁部分にそれぞれ配置された内壁近接部24aと、遮蔽板13の水平方向に沿って延びる下側の縁部分に配置された内壁近接部24bとが設けられている。尚、内壁近接部24bは、複数回屈曲形成された板状の部分として設けられている。
【0046】
内壁近接部24(24a、24b)は、図6及び図7によく示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で戸本体11の内部において開口19の周囲に沿って配置されている。そして、この内壁近接部24(24a、24b)は、戸本体11の内壁に向かって延びる部分を有しており、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で、隙間を介して戸本体11の内壁に近接するように構成されている。また、遮蔽板13の上下方向に沿って延びる縁部分に配置された内壁近接部24aとしては、戸本体11の内壁においてパネル体16a側に近接するものとパネル体16b側に近接するものとが設けられている。同様に、遮蔽板13の水平方向に沿って延びる縁部分に配置された内壁近接部24bとしては、戸本体11の内壁においてパネル体16a側に近接するものとパネル体16b側に近接するものとが設けられている。尚、内壁近接部24bのうちパネル体16aに近接するものについては、その下面側において、遮蔽板13が遮蔽位置にあるときに下側の横フレーム18と当接する防振ゴム25が取り付けられている。これにより、防火戸1の開閉時における遮蔽板13の振動が抑制され、振動音の発生が防止されることになる。
【0047】
一方、遮蔽板13に内壁近接部24が設けられているのに対して、戸本体11の内壁には、図3、図6及び図7に示すように、開口19の周囲に沿って配置された遮蔽板近接部26が設けられている。この遮蔽板近接部26としては、戸本体11の内壁において、パネル体16a側に配置された遮蔽板近接部26a(図6参照)及び遮蔽板近接部26b(図3、図7参照)と、パネル体16b側に配置された遮蔽板近接部26c(図6参照)とが設けられている。尚、遮蔽板近接部26bは、複数回屈曲形成された板状の部分として設けられている。
【0048】
遮蔽板近接部26(26a、26b、26c)は、図6及び図7によく示すように、遮蔽板13が遮蔽位置に移動した状態で遮蔽板13に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して遮蔽板13に近接するように構成されている。また、パネル体16a側に配置された遮蔽板近接部26のうちの遮蔽板近接部26aは、開口19の水平方向の両側(左右両側)においてそれぞれ上下方向に沿って延びるように配置されている。この遮蔽板近接部26aは、ガラス取付部材22aを構成する部材の一部として設けられている。一方、パネル体16a側に配置された遮蔽板近接部26のうちの遮蔽板近接部26bは、開口19の下側において水平方向に沿って延びるように配置されている。この遮蔽板近接部26bは、ガラス取付部材22aを構成する部材の一部として設けられている。また、パネル体16b側に配置された遮蔽板近接部26cは、開口19の水平方向の両側においてそれぞれ上下方向に沿って延びるように配置されている。この遮蔽板近接部26cは、ガラス取付部材22bを構成する部材の一部として設けられている。
【0049】
図8は、火災が発生して遮蔽板13が遮蔽位置に移動して開口19を遮蔽するとともに、火災によってガラス12(12a、12b)が破損した状態を示す図5のC−C線矢視位置に対応する断面図である。また、図9は、図8のE−E線矢視断面図である。図8及び図9に示す状態では、開口19に取り付けられたガラス12(12a、12b)は破損し、パネル体16a及びパネル体16bに設けられた開口は、大きく開放された状態になっている。しかしながら、遮蔽板13が遮蔽位置に移動することで、戸本体11の内部において開口19の両面側を連通する空間経路が、遮蔽板13の内壁近接部(24a、24b)と戸本体11の内壁の遮蔽板近接部(26a、26b、26c)との間を経由するとともに開口19の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(F、G)として形成されることになる。
【0050】
図8中において矢印Fで示す迂回経路F、及び図9中において矢印Gで示す迂回経路Gは、防火戸1の室内側から室外側に向かう経路を示している。図8に示す迂回経路Fは、パネル体16b側に近接する内壁近接部24aと遮蔽板近接部26cとの間を経由した後、更にパネル体16a側に近接する内壁近接部24aと遮蔽板近接部26aとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。尚、パネル体16b側に近接する内壁近接部24aにおける戸本体11の内壁に最も接近した部分は、遮蔽板近接部26cにおける遮蔽板13に最も近接した部分よりも、戸本体11の内壁に近い側に位置している。一方、図9に示す迂回経路Gは、パネル体16b側に近接する内壁近接部24bと戸本体11のパネル体16bの内壁との間を経由した後、更にパネル体16a側に近接する内壁近接部24bと遮蔽板近接部26bとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。尚、パネル体16a側に近接する内壁近接部24bにおける戸本体11の内壁に最も近接する部分は、遮蔽板近接部26bにおける遮蔽板13に最も近接した部分よりも、戸本体11の内壁に近い側に位置している。
【0051】
図10は、図3における作動手段14及びその近傍を拡大して示す断面図である。図1、図3及び図10に示す作動手段14(図7、図9では図示を省略)は、戸本体11の内部において水平方向の両側にそれぞれ配置され(図1参照)、遮蔽板13に対して一方の端部が取り付けられる遮蔽板側取付片14aと、戸本体11に対して一方の端部が取り付けられる戸本体側取付片14bとをそれぞれ備えている(図10参照)。そして、作動手段14は、これらの遮蔽板側取付片14a及び戸本体側取付片14bの他方の端部同士が、所定の温度の融点で溶融する合金によってろう付されて接合されることで構成されている。これにより、作動手段14は、遮蔽板13側と戸本体11側とを連結するとともに、所定の温度を超えることでろう付の部分で溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられている。即ち、作動手段14は、火災が発生して所定の温度に達することで作動(溶断)し、遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除するように構成されている。尚、作動手段14の戸本体側取付片14bは、戸本体11に対しては、室内側に配置されたパネル体16b側において連結されるように取り付けられている。このため、室内側で発生した火災を迅速に検知できるように配置されている。
【0052】
遮蔽板駆動手段15は、図1に示すように、遮蔽板13に対して水平方向の両側にそれぞれ配置された複数(2つ)の錘部27と、複数(2つ)の連結ワイヤ28と、複数(2つ)の滑車29とを備えて構成されている。遮蔽板駆動手段15における各錘部27は、例えば直方体状の鋼塊として形成されており、図1及び図4に示すように、錘部内蔵柱部材である柱部材17(17a、17b)の錘部支持フレーム21内に配置されている。そして、火災発生時には、後述のように、錘部支持フレーム21内を重力によって落下して、図1に示す状態から図5に示す状態へと移動するように構成されている。また、図4によく示すように、各錘部27の側面は、柱部材17(17a、17b)の錘部支持フレーム21の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されている。更に、各錘部27の側面には、柱部材17(17a、17b)の錘部支持フレーム21の内側の壁面に対して摺接する樹脂部材30が設けられている。
【0053】
また、図1及び図5に示す各連結ワイヤ28は、鋼製のワイヤとして設けられ、錘部27を遮蔽板13に連結する本実施形態の連結部を構成している。そして、各連結ワイヤ28は、一方の端部が各錘部27に取り付けられており、他方の端部が図3及び図7にて二点鎖線で示すワイヤ取付部材28aを介して遮蔽板13に取り付けられている。これにより、2つの錘部27は、それぞれ各連結ワイヤ28を介して遮蔽板13に連結されている。尚、2つの錘部27は、遮蔽板13に対して、遮蔽板13の移動方向(本実施形態では上下方向)に対して垂直な方向(本実施形態では水平方向)における両端部において、連結ワイヤ28を介してそれぞれ連結されている。また、図1、図3及び図7によく示すように、各滑車29は、戸本体11の内部において開口19の上側で水平方向における両側にそれぞれ配置され、戸本体11に対して取り付けられている。この各滑車29の車輪の溝部には、各連結ワイヤ28が掛け回されている。
【0054】
遮蔽板駆動手段15においては、火災による温度上昇によって、作動手段14のろう付部分が溶断すると、戸本体11と遮蔽板13との連結が解除され、錘部27の連結ワイヤ28及び遮蔽板13を介した戸本体11への拘束状態も解除されることになる。これにより、各錘部27が重力によって落下し、各連結ワイヤ28が各錘部27によって引っ張られるとともに各滑車29の車輪が回転し、錘部27及び連結ワイヤ28の移動とともに遮蔽板13が上方に引き上げられることになる。このように、遮蔽板駆動手段15は、作動手段14が作動(溶断)したとき、錘部27の落下に伴って遮蔽板13を退避位置(図1乃至図3参照)から遮蔽位置(図5乃至図7参照)へと移動させるように構成されている。
【0055】
次に、上述した防火戸1の作動について説明する。防火戸1は、火災が発生していない通常時は、自動ドアとして図示しないドア駆動装置によって開閉操作が行われている。一方、例えば防火戸1の室内側で火災が発生したときには、防火戸1は閉鎖され、ドア駆動装置による制御が停止される。そして、火災による温度上昇によって、防火戸1の温度が上昇すると、作動手段14におけるろう付部分が溶断され、そして遮蔽板13と戸本体11との連結が解除され、遮蔽板駆動手段15が作動し、錘部27が重力によって落下する。これにより、滑車29を介して連結ワイヤ28によって遮蔽板13が上方に引っ張り上げられ、開口19を遮蔽するように複数のガラス12の間に配置される遮蔽位置へと移動することになる(図5乃至図7参照)。
【0056】
遮蔽板13が遮蔽位置へと移動した後、室内で発生した火災が消火されておらず火勢が強くなると、室内の温度が更に上昇し、図8及び図9に示すように、ガラス12が破損することになる。しかしながら、このようにガラス12が破損した状態でも、開口19は遮蔽板13によって遮蔽されていることになる。そして、この状態では、開口19の両面側を連通する空間経路は、前述した迂回経路F及び迂回経路Gのみとなり、火炎の通過が阻まれることになる。
【0057】
以上説明した防火戸1によると、戸本体11に形成された開口19を覆うようにガラス12が取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体11内には金属製の遮蔽板13が上下方向に移動可能に収納されている。そして、作動手段14が作動(溶断)し、遮蔽板駆動手段15が作動して錘部27が落下することで、錘部27に連結された遮蔽板13が、開口19から外れた退避位置から開口19を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口19が金属製の遮蔽板13で遮蔽され、火災の進展によってガラス12が破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして、作動手段14の作動に基づいて錘部27が落下することで開口19を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、防火戸1によると、開口19に取り付けるガラス12は耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸1を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。更に、耐熱ガラスでない一般のガラス12を用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0058】
従って、本実施形態によると、ガラス12が取り付けられた防火戸1に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制することができる。
【0059】
また、防火戸1によると、遮蔽板13には内壁近接部24(24a、24b)が設けられ、戸本体11の内壁における開口19の周囲には遮蔽板近接部26(26a、26b、26c)が設けられている。また、内壁近接部(24a、24b)の最も戸本体内壁側が遮蔽板近接部(26b、26c)の最も遮蔽板13側よりも戸本体11の内壁に近い側に位置するように、内壁近接部(24a、24b)と遮蔽板近接部(26b、26c)とが入り組んで構成されている。そして、遮蔽位置では、開口19の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板近接部24と内壁近接部26との間を経由して開口19の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(F、G)が形成される。このため、火災が発生して開口19が遮蔽された状態でガラス12が破損しても、火炎は、開口19を通過するためには、入り組んで配置された遮蔽板近接部24と内壁近接部26との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路(F、G)も通過しなければならないことになる。これにより、入り組んで配置された遮蔽板近接部24と内壁近接部26との間の狭い空間と迂回経路(F、G)とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0060】
また、内壁近接部24b及び遮蔽板近接部26bが複数回屈曲形成された板状の部分として設けられるため、屈曲部の位置や個数を調整することで、内壁近接部24bと遮蔽板近接部26bとの間の狭い空間の経路をより長く確保するとともに長い迂回経路を確保することを簡易な構造で容易に実現することができる。これにより、更に効率よく火炎を遮蔽することができる。
【0061】
また、防火戸1によると、戸本体11内の強度メンバーとして上下方向に延びてパネル体16を支持する柱部材17が設けられ、この柱部材17として、内部に錘部27が落下移動可能な空間が形成された錘部内蔵柱部材17(17a、17b)が備えられている。このため、戸本体11内において強度メンバーを配置するスペースと錘部27が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体11内のスペースを効率よく活用することができる。
【0062】
また、防火戸1によると、錘部内蔵柱部材17の内側の壁面によって錘部27の落下移動方向がガイドされるため、錘部27の落下移動時の揺れの発生が抑制され、遮蔽板駆動手段15の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。そして、防火戸1によると、錘部27の側面が錘部内蔵柱部材17の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所で摺接可能なため、落下移動時における錘部27の姿勢がより安定して維持されることになる。このため、遮蔽板駆動手段15の作動を更に速やかに円滑に行わせることができる。
【0063】
また、防火戸1によると、錘部27の側面において錘部内蔵柱部材17の内側の壁面に摺接する樹脂部材30が設けられているため、この樹脂部材30が錘部27と上記壁面との間で緩衝材として機能することになる。このため、防火戸1が開閉動作する際に錘部27が振動して上記壁面との間で衝突音が発生することが防止され、防音効果が発揮されることになる。
【0064】
また、防火戸1によると、遮蔽板13が上下方向に移動するため、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状の防火戸において、開口19の面積を大きく確保することができる。そして、錘部内蔵柱部材17が遮蔽板13の両側方に配置されているため、錘部27の落下移動空間を形成するとともに強度メンバーである錘部内蔵柱部材17を、大きな面積が確保された開口19と干渉させることなく、戸本体11内においてスペース効率よく配置することができる。
【0065】
また、防火戸1によると、作動手段14が、所定の温度を超えると溶断されて遮蔽板13側と戸本体11側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられ、煙感知器やソレノイドなど電気的な駆動制御手段を介さずに遮蔽板駆動手段15を作動させるように構成されている。このため、火災発生時に確実に作動する機械式の作動手段14によって、防火機能の信頼性を更に向上させることができる。
【0066】
また、防火戸1によると、錘部27が複数設けられているため、1つの錘部27と遮蔽板13とを連結している連結ワイヤ28が破断等した或いはしている場合であっても、他の錘部27の落下によって、確実に遮蔽板駆動手段15を作動させることができる。そして、防火戸1によると、2つの錘部27が、遮蔽板13に対してその移動方向と垂直な方向の両端部でそれぞれ連結されるため、2つの錘部27の落下移動によって、安定した姿勢を維持させながら遮蔽板13を移動させることができる。このため、遮蔽板駆動手段15の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0067】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る防火戸2を示す正面図である。図11に示す防火戸2は、例えば、所定の部屋に対してその内側(室内側)と外側(室外側)とを仕切る戸として設けられる。そして、防火戸2は、第1実施形態と同様に、引き戸式の自動ドアとして設けられ、図示しないドア駆動装置によって水平方向に移動するように駆動されることで開閉する。
【0068】
図12は図11のH−H線矢視断面図である。図1及び図2に示すように、防火戸2は、戸本体31、複数のガラス32、遮蔽板33、作動手段34、遮蔽板駆動手段35などを備えて構成されている。そして、戸本体31は、両面のパネル体36、柱部材37、横フレーム38などを備えて構成されている。この戸本体31は、図示しない建築構造物に対して支持され、上下方向に沿って配置された状態で水平方向において移動自在に支持されている。そして、前述のドア駆動装置が作動することで、戸本体31が水平方向に移動し、防火戸2の開閉動作が行われる。
【0069】
図11及び図12に示すパネル体36は、水平方向よりも上下方向に長い縦長形状に形成されている。そして、パネル体36は、室外側に配置されるパネル体36aと室内側に配置されるパネル体36bとを有して構成され、鋼製の板材によって形成されている。尚、パネル体36(36a、36b)は、第1実施形態と同様に、1枚の板材が折り曲げ加工されることで形成されている。また、パネル体36a及びパネル体36bには、その上半側にて水平方向における一方に偏った位置に、縦長の長方形の貫通孔として形成された開口がそれぞれ設けられている。このように戸本体31のパネル体36に形成されたこれらの開口が、戸本体31における開口39を構成している。
【0070】
図11及び図12に示す柱部材37は、戸本体11の内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体36(36a、36b)を支持する部材(即ち、戸本体31における上下方向の強度メンバー)として設けられている。この柱部材37は、第1実施形態の柱部材17と同様に構成されている。即ち、柱部材37は、戸本体31の内部でパネル体36a及びパネル体36bの両方に対して固定された縦フレームと、この縦フレームに固定された錘部支持フレームとで構成されている。柱部材37における縦フレーム及び錘部支持フレームは、第1実施形態の柱部材17の縦フレーム20及び錘部支持フレーム21と同様に構成されている。これにより、柱部材37は、後述する遮蔽板駆動手段35の錘部47が落下移動可能な空間が内部に形成された本実施形態の錘部内蔵柱部材を構成しており、更に、柱部材37の内側の壁面が錘部47の落下移動方向をガイドするように形成されている。尚、戸本体11では、柱部材37以外にも、上下方向の強度メンバーを構成する他の縦フレームが複数設けられている。
【0071】
図11及び図12に示す複数のガラス32は、複数の板ガラスとして設けられ、戸本体31の両面側において縦長の長方形の開口39を戸本体31の内部側から覆うように取り付けられている。そして、ガラス32は、パネル体36aに対して取り付けられるガラス32aと、パネル体36bに対して取り付けられるガラス32bとで構成されている。ガラス32aは、パネル体36aに形成された開口を塞ぐように配置されている。このガラス32aは、その周縁部に沿って配置されるシール部材43aを介して開口39を密閉した状態で、戸本体31の内壁の一部として設けられたガラス取付部材42aによりパネル体36aに取り付けられている。また、ガラス32bは、パネル体36bに形成された開口を塞ぐように配置されている。このガラス32bは、その周縁部に沿って配置されるシール部材43bを介して開口39を密閉した状態で、戸本体31の内壁として設けられたガラス取付部材42bによりパネル体36bに取り付けられている。
【0072】
図11及び図12に示す遮蔽板33は、鋼(本実施形態における金属)製で略四角形の板状部材として形成されるとともに、戸本体31の内部に収納されている。この遮蔽板33は、後述の遮蔽板駆動手段35と連結され、後述の作動手段34が作動することにより、戸本体31内において水平方向に沿って移動するように設けられている。遮蔽板33は、作動手段34が作動していない(火災が発生していない場合)状態では、図11及び図12に示すように、開口39から外れた側方の位置に退避した退避位置に位置している。一方、作動手段34が作動すると(火災が発生している場合)、図13の防火戸2の正面図に示すように、退避位置から開口39側に向かって水平方向に移動して、開口39を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。
【0073】
図14は図13のI−I線矢視断面図であり、図15は図14のJ−J線矢視断面図である。図11、図13及び図15によく示すように、遮蔽板33の下端部には、複数の車輪51が取り付けられている。この車輪51は、遮蔽板33の下端部分である車輪保持部53に対して回転自在に保持されている。そして、戸本体11の内部には、水平方向の強度メンバーである横フレーム38に対して取り付けられて、水平方向に沿って延びるように配置されたレール部材52が設けられている。遮蔽板33は、車輪51における周方向に延びる溝部がレール部材52上に転動自在に配置されることで、レール部材52に沿って水平方向に移動可能に設けられている。そして、上述のように、作動手段34が作動すると、遮蔽板33は、上記の退避位置から遮蔽位置へとレール部材52に沿って水平方向に移動する。また、遮蔽板33は、上記の遮蔽位置では、開口39を遮蔽するように複数のガラス32(32a、32b)の間に配置されることになる。この遮蔽位置では、遮蔽板33の水平方向における一端側(退避位置から遮蔽位置へと向かう方向における端部側)は、戸本体31の一部であるガラス取付部材42aにおける開口39の側方に配置されている部分に当接しており、遮蔽板33の一端側と戸本体31の内壁との間は封鎖されている。
【0074】
また、遮蔽板33には、図12、図14及び図15に示すように、その外周の縁部分に沿って設けられた内壁近接部44(44a、44b、44c)が設けられている。内壁近接部44aは、遮蔽板33の水平方向における他端側(遮蔽位置から退避位置へと向かう方向における端部側)の縁部分に配置され、遮蔽板33の上下方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部44bは、遮蔽板33の上側の縁部分に配置され、遮蔽板33の水平方向に沿って延びるように設けられている。内壁近接部44cは、遮蔽板33の下側の縁部分に配置され、遮蔽板33の水平方向に沿って延びるように設けられている。尚、内壁近接部44aには、その他端側の端部において、遮蔽板33が退避位置にあるときに戸本体31における縦フレームと当接する防振ゴム45が取り付けられている。これにより、防火戸2の開閉時における遮蔽板33の振動が抑制され、振動音の発生が防止されることになる。
【0075】
内壁近接部44(44a、44b、44c)は、図14及び図15によく示すように、遮蔽板33が遮蔽位置に移動した状態で戸本体31の内部において開口19の周囲に沿って配置されている。そして、この内壁近接部44(44a、44b、44c)は、戸本体31の内壁に向かって延びる部分を有しており、遮蔽板33が遮蔽位置に移動した状態で、隙間を介して戸本体31の内壁に近接するように構成されている。また、内壁近接部44aにおいては、戸本体31の内壁においてパネル体36a側に近接するものとパネル体36b側に近接するものとが設けられている。同様に、内壁近接部44b及び内壁近接部44cにおいても、戸本体31の内壁においてパネル体36a側に近接するものとパネル体36b側に近接するものとが設けられている。尚、内壁近接部44cは、車輪保持部53を構成する部材の一部として設けられている。
【0076】
一方、遮蔽板33に内壁近接部44が設けられているのに対して、戸本体31の内壁には、図12、図14及び図15に示すように、開口39の周囲に沿って配置された遮蔽板近接部46が設けられている。この遮蔽板近接部46としては、戸本体31の内壁において、上下方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部46a及び遮蔽板近接部46bと、開口19の上側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部46c及び遮蔽板近接部46dと、開口19の下側で水平方向に沿って延びるように配置された遮蔽板近接部46e及び遮蔽板近接部46fと、が設けられている。
【0077】
遮蔽板近接部46(46a、46b、46c、46d、46e、46f)は、図14及び図15によく示すように、遮蔽板33が遮蔽位置に移動した状態で遮蔽板33に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して遮蔽板33に近接するように構成されている。そして、遮蔽板近接部46a及び遮蔽板近接部46bは、遮蔽位置にある遮蔽板33の他端側に対向するように配置され、遮蔽板近接部46aがパネル体36a側に設けられ、遮蔽板近接部46bがパネル体36b側に設けられている。また、遮蔽板近接部46aはガラス取付部材42aを構成する部材の一部として設けられ、遮蔽板近接部46bはガラス取付部材42bを構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部46c及び遮蔽板近接部46eは、パネル体36a側に設けられて、ガラス取付部材42aを構成する部材の一部として設けられている。遮蔽板近接部46d及び遮蔽板近接部46fは、パネル体36b側に設けられて、ガラス取付部材42bを構成する部材の一部として設けられている。
【0078】
図16は、火災が発生して遮蔽板33が遮蔽位置に移動して開口39を遮蔽するとともに、火災によってガラス32(32a、32b)が破損した状態を示す図11のH−H線矢視位置に対応する断面図である。また、図17は、図16のK−K線矢視断面図である。図16及び図17に示す状態では、開口39に取り付けられたガラス32(32a、32b)は破損し、パネル体36a及びパネル体36bに設けられた開口は、大きく開放された状態になっている。しかしながら、遮蔽板33が遮蔽位置に移動することで、戸本体31の内部において開口39の両面側を連通する空間経路が、遮蔽板33の内壁近接部(44a、44b、44c)と戸本体31の内壁の遮蔽板近接部(46a、46b、46c、46d、46e、46f)との間を経由するとともに開口39の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)として形成されることになる。
【0079】
図16中において矢印Lで示す迂回経路L、図9中において矢印M及び矢印Nでそれぞれ示す迂回経路M及び迂回経路Nは、防火戸2の内側から外側に向かう経路を示している。図16に示す迂回経路Lは、パネル体36b側に近接する内壁近接部44aと遮蔽板近接部46bとの間を経由した後、更にパネル体16a側に近接する内壁近接部44aと遮蔽板近接部46aとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。また、図17に示す迂回経路Mは、パネル体36b側に近接する内壁近接部44bと遮蔽板近接部46dとの間を経由した後、更にパネル体36a側に近接する内壁近接部44bと遮蔽板近接部46cとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。尚、パネル体36b側に近接する内壁近接部44bにおける戸本体31の内壁に最も近接する部分は、遮蔽板近接部46dにおける遮蔽板33に最も近接した部分よりも、戸本体31の内壁に近い側に位置している。また、図17に示す迂回経路Nは、パネル体36b側に近接する内壁近接部44cと遮蔽板近接部46fとの間を経由した後、更にパネル体36a側に近接する内壁近接部44cと遮蔽板近接部46eとの間を経由する迂回経路として構成されることになる。
【0080】
図11及び図12に示す作動手段34は、戸本体31の内部において開口19の上下方向におけるほぼ中間位置に1つ配置されている。この作動手段34は、第1実施形態の作動手段14と同様に構成されている。即ち、作動手段34は、遮蔽板33に対して一方の端部が取り付けられる遮蔽板側取付片と、戸本体31に対して一方の端部が取り付けられる戸本体側取付片とを備え、これらの遮蔽板側取付片及び戸本体側取付片の他方の端部同士が、所定の温度の融点で溶融する合金によってろう付されて接合されることで構成されている。これにより、作動手段34は、遮蔽板33側と戸本体31側とを連結するとともに、所定の温度を超えることでろう付の部分で溶断されて遮蔽板33側と戸本体31側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられている。即ち、作動手段34は、火災が発生して所定の温度に達することで作動(溶断)し、遮蔽板33側と戸本体31側との連結を解除するように構成されている。
【0081】
遮蔽板駆動手段35は、図11に示すように、上下方向に並んで配置された複数(2つ)の錘部47と、複数(2つ)の連結ワイヤ48と、複数(2つ)の滑車49とを備えて構成されている。遮蔽板駆動手段35における各錘部47は、例えば直方体状の鋼塊として形成されており、図11乃至図14に示すように、錘部内蔵柱部材である柱部材37内に配置されている。そして、火災発生時には、後述のように、柱部材37内を重力によって落下して、図11に示す状態から図13に示す状態へと移動するように構成されている。尚、錘部47は、第1実施形態の錘部27と同様に、その側面が柱部材37の錘部支持フレームの内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されている。更に、各錘部47の側面には、柱部材37の錘部支持フレームの内側の壁面に対して摺接する樹脂部材(第1実施形態の樹脂部材30と同様の樹脂部材)が設けられている。
【0082】
また、図11及び図13に示す各連結ワイヤ48は、鋼製のワイヤとして設けられ、錘部47を遮蔽板33に連結する本実施形態の連結部を構成している。そして、各連結ワイヤ48は、一方の端部が各錘部47に取り付けられており、他方の端部が図12及び図14にて二点鎖線で示すワイヤ取付部材48aを介して遮蔽板33に取り付けられている。これにより、2つの錘部47は、それぞれ各連結ワイヤ48を介して遮蔽板33に連結されている。尚、2つの錘部47は、遮蔽板33に対して、遮蔽板33の移動方向(本実施形態では水平方向)に対して垂直な方向(本実施形態では上下方向)における両端部において、連結ワイヤ48を介してそれぞれ連結されている。また、図11乃至図13、及び図15に示すように、各滑車49は、戸本体31の内部において開口39の側方で上下方向における両側にそれぞれ配置され、戸本体31に対して取り付けられている。この各滑車49の車輪の溝部には、各連結ワイヤ48が掛け回されている。
【0083】
遮蔽板駆動手段35においては、火災による温度上昇により、1つの作動手段34のろう付部分が溶断すると、戸本体31と遮蔽板33との連結が解除され、錘部47の連結ワイヤ48及び遮蔽板33を介した戸本体31への拘束状態も解除されることになる。これにより、各錘部47が重力によって落下し、各連結ワイヤ48が各錘部47によって引っ張られるとともに各滑車49の車輪が回転し、錘部47及び連結ワイヤ48の移動とともに遮蔽板33が水平方向に引っ張られることになる。このように、遮蔽板駆動手段35は、作動手段34が作動(溶断)したとき、錘部47の落下に伴って遮蔽板33を退避位置(図11及び図12参照)から遮断位置(図13乃至図15参照)へと移動させるように構成されている。尚、この遮蔽板駆動手段35は、1つの作動手段34の作動に基づいて複数の錘部47を落下させるように構成されている。
【0084】
次に、上述した防火戸2の作動について説明する。防火戸2は、火災が発生していない通常時は、自動ドアとして図示しないドア駆動装置によって開閉操作が行われている。一方、例えば防火戸2の室内側で火災が発生したときには、防火戸2は閉鎖され、ドア駆動装置による制御が停止される。そして、火災による温度上昇によって、防火戸2の温度が上昇すると、作動手段34におけるろう付部分が溶断され、遮蔽板33と戸本体31との連結が解除され、遮蔽板駆動手段35が作動し、錘部47が重力によって落下する。これにより、滑車49を介して連結ワイヤ48によって遮蔽板33が水平方向に引っ張られてレール部材52上を移動し、開口39を遮蔽するように複数のガラス32の間に配置される遮蔽位置へと移動することになる(図13乃至図15参照)。
【0085】
遮蔽板33が遮蔽位置へと移動した後、室内で発生した火災が消火されておらず火勢が強くなると、室内の温度が更に上昇し、図16及び図17に示すように、ガラス32が破損することになる。しかしながら、このようにガラス32が破損した状態でも、開口39は遮蔽板33によって遮蔽されていることになる。そして、この状態では、開口39の両面側を連通する空間経路は、前述した迂回経路L、迂回経路M、及び迂回経路Nのみとなり、火炎の通過が阻まれることになる。
【0086】
以上説明した防火戸2によると、戸本体31に形成された開口39を覆うようにガラス32が取り付けられているため、見通しと採光とを確保することができる。また、戸本体31内には金属製の遮蔽板33が水平方向に移動可能に収納されている。そして、作動手段34が作動(溶断)したときに、遮蔽板駆動手段35が作動して錘部47が落下することで、錘部47に連結された遮蔽板33が、開口39から外れた退避位置から開口39を遮蔽する遮蔽位置へと移動する。このため、火災発生時には、開口39が金属製の遮蔽板33で遮蔽され、火災の進展によってガラス32が破損しても、火炎を十分に遮蔽できる優れた防火機能を発揮することができる。そして作動手段34の作動に基づいて錘部47が落下することで開口39を遮蔽できるため、簡易な構造で防火機能を実現でき、構造の複雑化を抑制することができる。また、防火戸2によると、開口39に取り付けるガラス32は耐熱板ガラスでなくてよいため、見通しと採光とが確保された防火戸2を耐熱板ガラスを用いることなく実現することができる。そして、耐熱板ガラスを用いなくてよいため、施工に際して業者の選定に制約が多くなることがなく、円滑な施工を実現でき、施工費用の増大を抑制することができる。更に、耐熱ガラスでない一般のガラス32を用いることができるため、耐熱板ガラスを用いる場合に比して大幅なコストダウンを図ることもできる。
【0087】
従って、本実施形態によると、ガラス32が取り付けられた防火戸2に関し、耐熱板ガラスを用いることなく、施工の円滑化を図れ、優れた防火機能を発揮できるとともに構造の複雑化を抑制することができる。
【0088】
また、防火戸1によると、遮蔽板33には内壁近接部44(44a、44b、44c)が設けられ、戸本体11の内壁における開口19の周囲には遮蔽板近接部46(46a、46b、46c、46d、46e、46f)が設けられている。そして、遮蔽位置では、開口39の両面側を連通する空間経路として、遮蔽板近接部44と内壁近接部46との間を経由して開口39の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路(L、M、N)が形成される。このため、火災が発生して開口39が遮蔽された状態でガラス32が破損しても、火炎は、開口39を通過するためには、遮蔽板近接部44と内壁近接部46との間の狭い空間を通過するとともに迂回経路(L、M、N)も通過しなければならないことになる。これにより、遮蔽板近接部44と内壁近接部46との間の狭い空間と迂回経路(L、M、N)とによって、火炎の通過が効率よく阻まれることになる。従って、火炎を効率よく遮蔽できる更に優れた防火機能を実現することができる。
【0089】
また、防火戸2によると、柱部材47が設けられていることで、第1実施形態と同様に、戸本体31内において強度メンバーを配置するスペースと錘部47が落下移動するスペースとを兼用させることができ、戸本体31内のスペースを効率よく活用することができる。
【0090】
また、防火戸2によると、作動手段34が、第1実施形態と同様に、火災発生時に確実に作動する機械式の作動手段34として設けられているため、作動の信頼性を更に向上させることができる。
【0091】
また、防火戸2によると、第1実施形態と同様に、錘部47が複数設けられているため、1つの錘部47と遮蔽板33とを連結している連結ワイヤ48が破断等した或いはしている場合であっても、他の錘部47の落下によって、確実に遮蔽板駆動手段35を作動させることができる。そして、防火戸2によると、2つの錘部47が、遮蔽板33に対してその移動方向と垂直な方向の両端部でそれぞれ連結されるため、2つの錘部47の落下移動によって、安定した姿勢を維持させながら遮蔽板33を移動させることができる。このため、遮蔽板駆動手段35の作動をより速やかに円滑に行わせることができる。
【0092】
また、防火戸2によると、1つの作動手段34の作動に基づいて複数の錘部47が落下するため、複数の錘部47の落下タイミングの統一を図ることができ、遮蔽板駆動手段35の作動を更に速やかに円滑に行わせることができる。また、作動手段34が1つでよいため、部品点数の削減を図ることもできる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0094】
上記の実施形態では、引き戸式の自動ドアに対して適用される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてよく、開き戸式や折戸式の防火戸として適用されてもよく、また、手動ドアに適用されてもよい。
【0095】
開口の位置や大きさについては、上記の実施形態で例示したものに限らず、種々変更して実施することができる。また、ガラスの枚数については、上記の実施形態で例示した2枚であれば、遮蔽板の移動時に通行人等の手等が触れることが無く、安全性を確保できるが、これに限られず、他の手段(通行人等の手等が戸本体の内部に入り込めない程度のサイズの格子や金網など)により安全性を確保することもできるのでガラスの枚数は1枚であっても本発明の目的は達成できる。更に気密性や遮音性等を無視できる場合は、ガラスを用いず、上記他の手段による安全性の確保のみ行っても良い。また、戸本体における柱部材については、上記の実施形態で例示した構造に限らず、配置や形状を種々変更して実施することができる。また、作動手段については、温度ヒューズ以外の手段、例えば、煙感知器に連動して作動するソレノイドを用いてもよい。また、遮蔽板駆動手段については、錘部の配置や個数、連結部の構成を種々変更して実施することができる。また、内壁近接部及び遮蔽板近接部の配置や形状については、種々変更して実施することができる。
なお、各図面は設計図相当の精度で描かれている。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、火炎を遮蔽するための防火戸であって、ガラスが取り付けられた防火戸として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防火戸を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図2のB−B線矢視断面図である。
【図4】図2に示す防火戸における柱部材及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図5】図1に示す防火戸の図1とは異なる状態を示す正面図である。
【図6】図5のC−C線矢視断面図である。
【図7】図6のD−D線矢視断面図である。
【図8】図6に対応する断面図であって、火災によりガラスが破損した状態を示す断面図である。
【図9】図8のE−E線矢視断面図である。
【図10】図3に示す防火戸における作動手段及びその近傍を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る防火戸を示す正面図である。
【図12】図11のH−H線矢視断面図である。
【図13】図11に示す防火戸の図11とは異なる状態を示す正面図である。
【図14】図13のI−I線矢視断面図である。
【図15】図14のJ−J線矢視断面図である。
【図16】図14に対応する断面図であって、火災によりガラスが破損した状態を示す断面図である。
【図17】図16のK−K線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 防火戸
11 戸本体
12、12a、12b ガラス
13 遮蔽板
14 作動手段
15 遮蔽板駆動手段
19 開口
27 錘部
28 連結ワイヤ(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎を遮蔽するための防火戸であって、
開口が形成された戸本体と、
前記戸本体の少なくとも片面側において前記開口を覆うように取り付けられたガラスと、
金属の板状部材として形成されるとともに、前記戸本体の内部に収納されて、水平方向又は上下方向に沿って移動することで、前記開口から外れた位置に退避した退避位置から前記開口を遮蔽するように前記ガラスに対向するように配置される遮蔽位置に移動する遮蔽板と、
火災の発生に応じて作動する作動手段と、
重力によって落下する錘部及び当該錘部を前記遮蔽板に連結する連結部を有し、前記作動手段が作動したときに、前記錘部の落下に伴って前記遮蔽板を前記退避位置から前記遮蔽位置へと移動させる遮蔽板駆動手段と、
を備えていることを特徴とする、防火戸。
【請求項2】
請求項1に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記戸本体の内壁と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項3】
請求項2に記載の防火戸であって、
前記内壁近接部は、複数回屈曲形成された板状の部分として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板と前記遮蔽板近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項5】
請求項1に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板には、当該遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記戸本体の内部において前記開口の周囲に沿って配置されるとともに、前記戸本体の内壁に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記戸本体の内壁に近接する内壁近接部が設けられ、
前記戸本体の内壁には、前記開口の周囲に沿って設けられ、前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動した状態で前記遮蔽板に向かって接近する方向に延びる部分を有して隙間を介して前記遮蔽板に近接する遮蔽板近接部が設けられ、
前記内壁近接部における前記戸本体の内壁に最も接近した部分が、前記遮蔽板近接部における前記遮蔽板に最も近接した部分よりも、前記戸本体の内壁に近い側に位置し、
前記遮蔽板が前記遮蔽位置に移動することで、前記戸本体の内部において前記開口の両面側を連通する空間経路が、前記遮蔽板近接部と前記内壁近接部との間を経由するとともに前記開口の両面側を結ぶ直線方向に対して迂回する迂回経路として形成されることを特徴とする、防火戸。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記戸本体には、その内部において上下方向に沿って配置され、両面のパネル体を支持する柱部材が設けられ、
前記柱部材として、前記錘部が落下移動可能な空間が内部に形成された錘部内蔵柱部材が備えられていることを特徴とする、防火戸
【請求項7】
請求項6に記載の防火戸であって、
前記錘部内蔵柱部材は、内側の壁面が前記錘部の落下移動方向をガイドするように形成されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項8】
請求項7に記載の防火戸であって、
前記錘部の側面が、前記錘部内蔵柱部材の内側の壁面に対して挟まれる位置で複数個所において摺接可能に配置されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記錘部の側面には、前記錘部内蔵柱部材の内側の壁面に対して摺接する樹脂部材が設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板は、上下方向に沿って移動することで、前記退避位置から前記遮蔽位置に移動し、
前記錘部内蔵柱部材は、前記遮蔽板の両側方に配置されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記作動手段は、前記遮蔽板側と前記戸本体側とを連結するとともに、所定の温度を超えることで溶断されて前記遮蔽板側と前記戸本体側との連結を解除する温度ヒューズ部材として設けられていることを特徴とする、防火戸。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板駆動手段は複数の前記錘部を有し、複数の前記錘部はそれぞれ前記連結部を介して前記遮蔽板に連結されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項13】
請求項12に記載の防火戸であって、
前記錘部は2つ設けられ、
2つの前記錘部が、前記遮蔽板に対して、前記遮蔽板の移動方向に対して垂直な方向における両端部において、前記連結部を介してそれぞれ連結されていることを特徴とする、防火戸。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の防火戸であって、
前記遮蔽板駆動手段は、1つの前記作動手段の作動に基づいて複数の前記錘部を落下させることを特徴とする、防火戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−126902(P2010−126902A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299592(P2008−299592)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】