説明

防災機能を有するPC人工地盤と集落としての自治機能とを備えた集合住宅街区システム

【課題】地震によって発生する軟弱地盤の液状化対策と巨大津波に対する居住領域の安全性を確保する、並びに、居住領域を沿岸部に設けて集落を形成し地域の治安と地方自治による行政サービスを十分受けられるようにする。
【解決手段】地震による液状化対策と沿岸部の巨大津波対策としてインフラ・社会基盤整備を行ない防災機能と集落としての自治機能とを備えた集合住宅街区システムであって、集落としての所要領域に地下基礎構造体1とPC人工地盤2とで形成される高床型人工地盤を形成し、該高床型人工地盤を集落として必要とする建造物毎に所要範囲内において所要間隔をもって形成して配置し、該各高床型人工地盤上にそれぞれ設定された高層建造物3を構築して集落機能を付与した防災機能と自治機能とを備えた集合住宅街区システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの集落または町としての自治機能を備えると共に、例えば、巨大地震による地盤の液状化や津波などに対して長期に渡って耐えられるPC人工地盤による防災機能を備えた集合住宅街区システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の一般的な集合住宅で、第1の従来例としては、例えば、階段やエレベータ等の共用施設が設けられる共用ゾーンを中央部に配置してその周囲に住戸を配置すると共に、各住戸を台所、洗面所、浴室、便所等の水場を集中配置する設備ゾーンと居室を配置する住居ゾーンとに区分し、各住戸の設備ゾーンを前記共有ゾーンに隣接する位置に配置するとともにその外周側に各住戸の居室ゾーンを配置してなり、前記共有ゾーンおよび各住戸の設備ゾーンを柱と梁とを主体とするラーメン構造とするとともに、前記居住ゾーンを外周柱と外周梁及び無梁のフラットプレートからなるチューブ構造としたことを特徴とする集合住宅である(特許文献1参照)。
【0003】
このように構成した集合住宅は、各住戸の居住ゾーンを無梁のフラットプレートを採用したチューブ構造とし、共有ゾーンおよびそれに隣接する各住戸の設備ゾーンをラーメン構造としたので、住戸の居住ゾーンにおける室内天井面に梁形が突出することがなく、したがって居住性が改善されるとともに間仕切りの位置やその変更に対する自由度が高まり、しかも床厚の大きいフラットプレートにより居住ゾーンの遮音性が自ずと優れたものとなるというものである。
【0004】
また、集合住宅の構造の一部において、共有ゾーンに耐震壁を設けたことによって、地震時の剛性を確保できる、および耐震壁に地震時の振動を減衰させるための制震ダンパーを設けたことによって、地震時の揺れを速やかに減衰させることができるというものである。
【0005】
地盤の液状化防止については、第2の従来例として、例えば、地盤改良を必要とする地盤中に、地表から所定の深さに達する鉛直固化壁を一方向または二方向に所定間隔に複数列構築し、この鉛直固化へ期間にこれと一体をなす水平固化盤を所定間隔に複数層構築することを特徴とする基礎地盤の改良工法がある(特許文献2参照)。
【0006】
この地盤改良においては、特に地下水および土の移動を確実に阻止できるとともに、下方からの過剰間隙水圧の伝達も確実に遮断できて液状化地盤の安定化を図ることができるというものである。
【0007】
住宅の敷地に砕石などの摩擦に富んだ基礎材料を層状に埋設して地盤を改良し、住宅の不同沈下防止する方法において、該敷地を水平に適当な深さで掘削してその掘削部分の表面を透水性の不織布で覆ったのち、その不織布上に強度が大きく土中での耐久性の良い材料で形成したメッシュの筐体を設置し、この筐体内に該基礎材料を突き固めた層を形成し、該層の上面を筐体と同材料からなるメッシュで形成され且つ該筐体と一体の蓋で塞ぎ、その上を覆土して転圧することを特徴とする住宅用地盤改良方法である(特許文献3参照)。
【0008】
この住宅用地盤改良では、軟弱地盤の不同沈下を阻止でき、環境汚染もなく、振動の伝達も小さくなり、地震による液状化にも耐えられて安全性が向上し、施工も容易になるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−13820号公報
【特許文献2】特開平10−311023号公報
【特許文献3】特開平11−181794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記いずれの従来技術においても、地震対策については建築基準法に基づいてM6級、又は震度5強程度で構築されていると認められ、建造物が地震によって倒壊または損傷しない構成になっている。しかし、M7級、又は震度7を超える巨大地震によって発生する建造物の損傷、軟弱地盤の液状化と巨大津波に対する安全性は確保されていないという問題点を有している。
【0011】
また、巨大津波に襲われる沿岸部の地域においては、居住区域が広範囲に渡るため、個別に津波対策をすることはできず、必然的に沿岸部から離れた山側の高台に住居を構えるようにしなければならないのである。
【0012】
しかしながら、沿岸部に近い部分では平坦地が多いが、沿岸部から離れた山側では、平坦地が少ないために、一定の範囲で集落を形成することが困難であって、地域の安全性と地方自治の行政サービスとが欠落する虞があると共に、沿岸部に居住する人は漁業に携わる仕事により生計を立てていると認められるが、沿岸部から離れた場所に居住するということは、実質的に漁業を放棄することになるのであり、生計が成り立たなくなるという問題点を有している。
【0013】
したがって、従来技術においては、地震によって発生する軟弱地盤の液状化対策と巨大津波に対する居住領域の安全性を確保すること、並びに、居住領域を沿岸部に設けて集落を形成し、公的機関による地域の治安と地方自治による行政サービスが充実した街造りをすることに解決課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前述の従来例の課題を解決する具体的手段として、地震による液状化や地盤沈下対策と沿岸部の巨大津波対策としてインフラ・社会基盤整備を行なって防災機能と集落としての自治機能とを備えた集合住宅街区システムであって、集落としての所要領域に地下基礎構造体とPC人工地盤とで形成される高床型人工地盤を形成し、該高床型人工地盤を集落として必要とする建造物毎に所要範囲内において所要間隔をもって形成して配置し、該各高床型人工地盤上にそれぞれ設定された高層建造物を構築して集落機能を付与したことを特徴とする防災機能と自治機能とを備えた集合住宅街区システムを提供するものである。
【0015】
この発明においては、前記高床型人工地盤上に、人工公園、緑地帯、総合運動場、駐車場、青果・魚市場や公共商業施設を配置されること;前記地下基礎構造体は、多数個のPC床版または筐体を隣接状態で一体的に結合させて所要厚みで所要広さの略四角形状に形成したこと;前記地下基礎構造体には、上下水配管スペース、電気配管スペース、貯水槽または貯雪槽が設けられていること;前記PC人工地盤は、少なくとも2層の重層人工地盤で形成されること;および前記PC人工地盤は、城塞型または開放型とからなること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るM7級を超える巨大地震と20mを超える巨大津波に対応する防災機能と自治機能とを備えた集合住宅街区システムによれば、埋立地のような軟弱地盤であっても地下基礎構造体を構築することによって液状化が防げるし、また、沿岸部に集落を形成しても、集落として必要な自治や安全性が確保されており、また、職業として漁業を行なって生計を立てることができるし、地震による巨大津波が襲ってきても、PC人工地盤が高床型人工地盤であるので、津波による住居および集落としての全ての機能が失われないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る集合住宅街区システムの一部を構成する第1の実施の形態に係る防災機能を備えた城塞型集合住宅を略示的に示した正面図である。
【図2】同実施の形態に係る集合住宅のPC人工地盤を略示的に示した平面図である。
【図3】同実施の形態に係る集合住宅のPC人工地盤と住居部とにおける要部を略示的に示した断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る防災機能を備えた集合住宅を略示的に示した正面図である。
【図5】同実施の形態に係る集合住宅のPC人工地盤と居住部とにおける要部を略示的に示した断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る防災機能を備えた集合居住施設を略示的に示した斜視図である。
【図7】同実施の形態に係る集合住宅のPC人工地盤と居住施設部とにおける要部を略示的に示した断面図である。
【図8】同実施の形態に係る集合住宅の地下基礎構造体における基本的な構成を略示的に示した平面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る防災機能を備えた集合住宅の一部を略示的に示した側面図である。
【図10】同実施の形態に係る集合住宅のPC人工地盤における最下階を略示的に示した平面図である。
【図11】同実施の形態に係るPC人工地盤において2階部分を略示的に示した平面図である。
【図12】同実施の形態に係るPC人工地盤における屋上階部分を略示的に示した平面図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る防災機能を備えた集合住宅を略示的に示した平面図である。
【図14】同実施の形態に係る集合住宅を略示的に示した側面図である。
【図15】本発明に係る防災機能と集落としての自治機能とを備えた集合住宅街区システムの構図に係る集落部分を大まかに示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1〜4は、本発明に係る第1の実施の形態に係る地震や津波に対する防災機能を有する集合住宅を略示的に示したものであり、地下基礎構造体1の上部に、PC人工地盤2を構築し、その上に高層集合住宅3が構築されるのである。
【0019】
PC人工地盤の地下基礎構造体1は、地下に打ち込んだ複数本の杭1aを含み、PC床版のような四角形状のコンクリート板または筐体を多数個用いて重ね合わせると共に隣接状態で一体的に結合させて所要高さ(3〜4m)で所要広さ(一辺の長さが100〜150m)の略四角形状に形成するものであり、そして、その内部には上水配管スペース4、電気配管スペース5、下水配管スペース6および貯水槽または貯雪槽7が設けられている。なお、軟弱地盤や地盤沈下し易い場合は、地下基礎構造体1の高さを5〜8mとすることが必要である(図3参照)。
【0020】
このように形成された地下基礎構造体1の上部に、円筒状のPC人工地盤2が構築される。このPC人工地盤2の直径は、前記地下基礎構造体1の略1辺の長さと同じであり、その外周壁が三段階の高さに形成されている。まず、一段目の高さは少なくとも12〜20mの高さの外周壁8が形成され、その外周壁8の上部内側に重層人工地盤9が配設され、多数本の支柱10および梁11により支持されている。
【0021】
次に、1段目の外周壁8から所要間隔をもって内側に且つ重層人工地盤9上に配設された二段目の外周壁8aは、その高さが地上から少なくとも15〜25m程度であり、その上部内側に二段目の重層人工地盤9aが配設され、前記同様に多数本の支柱10および梁11により支持されている。
【0022】
さらに、三段目の外周壁8bは、二段目の外周壁8aから内側に所要間隔をもって且つ高さとして地上から少なくとも25m超える高さに形成され、その内側に屋上階となる三段目の重層人工地盤9bが配設され、前記同様に多数本の支柱10および梁11により支持されている。そして、各階層毎に外周回廊12、13が形成され、地下基礎構造体1とPC人工地盤2とによってインフラ・社会基盤整備された高床型人工地盤が形成される。
【0023】
このように形成されたPC人工地盤2は城塞型のものであって、そのPC人工地盤2の上部、即ち、屋上階となる三段目の重層人工地盤9bの上部に免震装置14を介して高層集合住宅3が構築されるのである。この場合に、PC人工地盤2の支柱10と高層集合住宅3としての柱15との間で、最下梁16との間に免震装置14を介在させて構築される。
【0024】
なお、地下基礎構造体1とその上部に構築されるPC人工地盤2とは、基本的には、四角形状の地下基礎構造体1の上部に多数本の支柱10を介して複数層の重層人工地盤9〜9bからなるPC人口地盤構造体2が形成されるのであるが、第1の実施の形態の場合は、各層の外周を全面的に囲う外周壁8〜8bを設けて、例えば、津波の浸入を全面的に阻止するように構成したものであって、PC人工地盤2の外周を外周壁で全面的に囲う場合には、強度的に円形または円筒状に形成した方が良いのである。なお、一階部分に相当する外周壁8には、津波が押し寄せる方向ではない側面または背面側に、図示していないが、荷物搬送用の車両が出入りできる複数の開口部が設けられ、通常は開放状態にあるが緊急時には開閉できる重厚な扉を設けてある。
【0025】
そして、PC人工地盤2の一階部分は、例えば、一部において駐車場に使用する他に、鮮魚や青果市場として利用され、二階部分は主として各種商店街として利用され、三階部分の一部も商店街として利用する他に事務所や、市場や商店街で働く人のための診療所等に利用されるのである。そして、当然のこととして、各階層には上下できるように複数箇所に広い階段17が設けられているが、地上から屋上階への階段18も複数箇所に設けられている。
【0026】
次に、 図4〜図5に第2の実施の形態に係る集合住宅を示してある。この集合住宅としては、前記第1の実施の形態と、地下基礎構造体1の構造とその上部に構築されるPC人工地盤2の一部の構造を除いて、略同一であって、説明が重複するので同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。即ち、PC人工地盤2は、1段目の外周壁8の高さを地上から少なくとも18〜21m程度にすると共に、全体を外側に傾斜させた波返しの構造に形成したものである。そして、一段目と二段目の重層人工地盤9、9aとに渡って外周壁8を伸ばして形成し、三段目の重層人工地盤9bには、地上から少なくとも25m超える高さ位置に外周壁8bが取り付けられるのである。
【0027】
そして、PC人工地盤2の一階部分に相当する位置の外周壁8には、外部との開放部19が複数箇所に渡って形成されており、津波の侵入があってもそのまま通過する、要するに、開放高床型のPC人工地盤2としたものである。なお、この開放高床型のPC人工地盤2の上部に構築される高層集合住宅3についても前記第1の実施の形態と略同一の構成を有するものである。
【0028】
さらに、図6〜図8に示した第3の実施の形態について説明する。この実施の形態においては、高層住宅または、例えば、学校若しくは病院等の集合施設であって、これらの施設における建築構造物も、第1の実施の形態とほぼ同様に、地下基礎構造体1とその上部に構築されるPC人工地盤2とが適用されるのである。そして、地下基礎構造体1の構造についてはほぼ同一であり、説明が重複するので同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。但し、PC人工地盤2については円形または円筒状ではなく四角形状であって一部の構成部材が異なるので、その異なる部分について説明する。
【0029】
四角形状の地下基礎構造体1の上部に構築されるPC人工地盤2の複数の柱は、強度の高い制振PC柱20であって、該制振PC柱20間にはアーチラーメンPC構造のPC梁21が一体的に架設される。このようにアーチラーメンPC構造のPC梁21を使用することによって、柱間隔を広く取ることができるし、一段目と二段目の重層人工地盤9、9aも地下基礎構造体1と略同じ広さに形成できるので、PC人工地盤2における一階部分と二階部分の空間部を広くすることができる。因みに、制振PC柱20の間隔は、図8に示したように、例えば、8〜30mの範囲で設定され配設される。
【0030】
このように広く形成することによって、集合施設である2棟の学校や病院等、その他の高層建築物3が構築される。そして、高層建築物が学校である場合には、幼稚園、小学校、中学校までは、建築物の間の空間はグランドとして使用できるが、高等学校、専門学校、大学の場合は、校舎のみ使用でグランドについては、別の高台において専用のグランドを確保するようにすれば良い。そして、病院、介護施設、老人ホームその他の建築物であれば、建築物の間の空間は公園等として使用する。
【0031】
そして、PC人工地盤2で形成される一階部分と二階部分は、一部を商店街とし大半は駐車場として使用するものであるが、津波の侵入する方向から抜ける方向は開放状態にしたPC構造の高床型人工地盤である。なお、二段目の重層人工地盤9aまでの高さは20m以上である。
【0032】
次に、図9〜図12に示した第4の実施の形態について説明する。この実施の形態においても、前記実施の形態と同様に四角形の地下基礎構造体1とPC人工地盤2とで開放型のPC構造の高床型人工地盤を構成し、この高床型人工地盤の上部(屋上階)に高層集合住宅3が構築されるのであり、この点においては前記実施例と同じである。
【0033】
そして、地下基礎構造体1の上部に所要間隔で配設した複数の支柱10により一段目と二段目の重層人工地盤9、9aを強固に支持してPC人工地盤2が構築される。これらの重層人工地盤9、9aは地下基礎構造体1と略同じ広さに形成されている。また、PC人工地盤2の高さについては、概ね20mを超えるものであって、好ましくは、25m以上とするものである。但し、建造物の構築場所の海岸からの位置(高さ)などによって適宜設定されるのであり、高さの数値についてはこだわるものではない。
【0034】
このように構築されたPC人工地盤2の一段目の重層人工地盤9が実質的な2階部分となり、二段目の重層人工地盤9aが3階(屋上階)となるのである。
そして、図10に示したように、地下基礎構造体1で形成される1階部分は主に住民用の駐車場22として区分して使用し、中央部には2階部分へ上がるためのスロープ23が設けられ、さらに2階および屋上階まで上がるための複数のエレベータ24が設けられている。
また、図11に示したように、2階部分については、中央部に下りのスロープ25が設けられると共に屋上階への階段26が設けられ、両側の略半分のスペース27、28が事務所または簡単な作業をする工場もしくは倉庫として使用できるように区分され、中央部側に業務用の駐車場29として区分されている。
【0035】
さらに、図12で示したように、PC人工地盤2の屋上階(3階)には、前記したように高層集合住宅3が向かい合わせて2棟構築されており、その中間部部分にはエントランスホール30が両側の集合住宅3と繋げて設けられ、一部において屋上庭園31や、生垣用の植木32を植えたり、周囲の空き地には芝生を植えたりするのであり、また、集合住宅3の屋上やベランダ等の日当たりの良い位置には、ソーラーパネル33を取り付けてエコ発電するようにする。このエコ発電は前記全ての実施例に係る集合住宅3でも同じである。
【0036】
次に、図13〜図14に示した第5の実施の形態について説明する。この実施の形態においては、前記第1の実施の形態と同様に円形状のPC人工地盤2の上に高層集合住宅3や低層住宅3a等を構築するものであるが、PC人工地盤2についての概ねの構成は同じであるが、外周回廊12,13について改良したものである。即ち、外周回廊12、13を螺旋状に形成して車両用の道路としたものであり、一方の回廊12を登り用とし、他方の回廊13を下り用として形成したものである。
【0037】
このように外周回廊12、13を螺旋状に形成して、車両がPC人工地盤2の屋上まで登り降りできるようにすることで、高層集合住宅3の住人に緊急事態が生じたときに、救急車が住宅3の直ぐ下まで乗り入れることができるのである。その他、住民にとって都合よく利用できる道路となるのである。
【0038】
このように一つの集落を形成するために、図15に示したように、集落として必要な各種の領域、即ち、居住用の高層集合住宅3を構築する住宅領域40と、病院や介護施設が建築される医療領域41、幼稚園から小・中学校までの低学年教育領域42、高校以上の高学年教育領域43、機械工業等の工場領域44、市場や海産物工場領域45、地方自治に係わる市町村の役所関係領域46、および警察と消防などの安全対策領域47などを区分けして、沿岸部48に近い平坦地に地下基礎構造体1とPC人工地盤2とで形成される高床型人工地盤を形成し、該高床型人工地盤の上部(屋上階)に必要な建造物を建築することによって耐震性は勿論であるが、液状化対策も万全で且つ巨大津波が発生しても高床型人工地盤によって被害を解消できるのである。
【0039】
本願発明のシステムにおいて、M7級を超える耐震性能と、20m以上の耐津波性能とを備え、全ての構造部材は少なくとも500年以上の耐久性能とするために、全ての構造部材を2時間以上の耐火性能を有するものとすること、及び人工地盤の耐荷重性能は、少なくとも2tf/m以上とし、好ましくは3tf/m以上とする。PC人工地盤を含むプレストレスコンクリート構造(PC構造)を主体として防錆技術を施すものとする。例えば、PC構造柱の外郭は錆びない防錆を施した鋼管、または錆びない鋼管でカバーする。PC構造柱は、基礎、柱脚部から水が浸透し易く錆が発生して耐久年月を著しく低下させることから、PC構造柱内の柱主筋、フープ筋、PC鋼材や地中梁、基礎、基礎スラブ及び杭の鉄筋やスターラップに予め防錆を施した防錆鉄筋、防錆PCストランドを使用する。
また、社会基礎整備として、例えば、集落に送電する電柱を不要とし、発電所・送電線事故による停電を無くし自家発電装置を備える。給排水設備配管を地下筐体内に配置し、地震、津波、地盤沈下などによる被害を受けないシステムを導入する。
なお、集落規模としては、例えば、1ha内に100戸〜200戸程度の単位で、又は、600人から1000人以上の街を形成し、安心と安全の生活環境と安定した職場とを近接させて設け、職・住近接型街造りのシステムとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るいずれの実施例においても、地下基礎構造体1とPC人工地盤2とで形成される高床型人工地盤を形成し、その上に集合住宅や学校または病院などの必要な建造物を構築するのであり、沿岸部における津波対策のみならず、河川の氾濫が予測される地域または領域においても適用できるのであり、津波や河川の氾濫などにおける水難対策として広く利用できる。
また、本発明の人工地盤の上部には、色々な施設、農業・漁業の市場、工業団地等を構築して広く利用することができる。
特に、本発明について前記各実施例において説明した種々の構成については、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、高床型人工地盤の上部に施設等の配置計画の変更が自在であるので、実施例に記載の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 地下基礎構造体
2 PC人工地盤
3 高層集合住宅(高層建築物)
3a 低層住宅
4 上水配管スペース
5 電気配管スペース
6 下水配管スペース
7 貯水槽または貯雪槽
8 外周壁
8a 二段目の外周壁
8b 三段目の外周壁
9 重層人工地盤
9a 二段目の重層人工地盤
9b 三段目の重層人工地盤
10 支柱
11 梁
12、13 外周回廊(車両用道路)
14 免震装置
15 柱
16 最下梁
17 広い階段
18 屋上階への階段
19 開放部
20 制振PC柱
21 PC梁
22、29 駐車場
23、25 スロープ
24 エレベータ
26 階段
27、28 スペース
30 エントランスホール 31
32 植木
33 ソーラーパネル
40 住宅領域
41 医療領域
42 低学年教育領域
43 高学年教育領域
44 工場領域
45 海産物工場領域
46 役所関係領域
47 警察と消防などの安全対策領域
48 沿岸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震による液状化や地盤沈下対策と沿岸部の巨大津波対策としてインフラ・社会基盤整備を行なって防災機能と集落としての自治機能とを備えた集合住宅街区システムであって、
集落としての所要領域に地下基礎構造体とPC人工地盤とで形成される高床型人工地盤を形成し、
該高床型人工地盤を集落として必要とする建造物毎に所要範囲内において所要間隔をもって形成して配置し、
該各高床型人工地盤上にそれぞれ設定された低層または高層建造物を構築して集落機能を付与したこと
を特徴とする防災機能と自治機能とを備えた集合住宅街区システム。
【請求項2】
前記高床型人工地盤上に、人工公園、緑地帯、総合運動場、駐車場、青果・魚市場や公共商業施設を配置されること
を特徴とする請求項1に記載の集合住宅街区システム。
【請求項3】
前記地下基礎構造体は、多数個のPC床版または筐体を隣接状態で一体的に結合させて所要高さで所要広さの略四角形状に形成したこと
を特徴とする請求項1乃至2に記載の集合住宅街区システム。
【請求項4】
前記地下基礎構造体には、上下水配管スペース、電気配管スペース、貯水槽または貯雪槽が設けられていること
を特徴とする請求項1乃至3に記載の集合住宅街区システム。
【請求項5】
前記PC人工地盤は、少なくとも2層の重層人工地盤で形成されること
を特徴とする請求項1に記載の集合住宅街区システム。
【請求項6】
前記PC人工地盤は、城塞型または開放型とからなること
を特徴とする請求項1または5に記載の集合住宅街区システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−251343(P2012−251343A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123688(P2011−123688)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【特許番号】特許第4871418号(P4871418)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(000170772)黒沢建設株式会社 (57)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)