説明

防爆型秤

【課題】電池交換が簡単な防爆型秤を提供する。
【解決手段】表示器60の取付け部材40は、表示器60の背面に接する当接板41を備え、表示器60は、背面に防爆構造の電池ボックス67を備え、表示器60の背面及び当接板41は、2以上の異なる箇所で相互に係合する複数の係合手段を有し、一つの係合手段66は、当接板41に押圧力を与えて表示器60の背面と当接板41との相対移動を阻止するとともに、押圧力が弱まれば相対移動を許容する係合を行い、その他の係合手段43,44、62、63は、表示器60の背面と当接板41とが一方向に相対移動したときに係合し、反対方向に相対移動したときに解除される係合を行う、ことを特徴とする。この防爆型秤は、当接板41に対する押圧力を緩めて表示器60と当接板41とを相対移動させれば、表示器41と当接板41との係合を解除することができるので、表示器60の取り付け、取り外しが簡単である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆構造を有する秤に関し、その電池交換を容易にしたものである。
【背景技術】
【0002】
爆発性雰囲気の生じる可能性がある場所(危険場所)で使用する電気機器は、厚生労働省が定めた防爆構造基準や国際基準に準拠した技術基準に適合していることが求められる。
こうした危険場所で使用する電気機器には、下記特許文献1に記載されているように、データの送受信を赤外線通信で行うなど、火花の発生を避ける対策が採られている。
危険場所で使用する防爆型秤の場合、電線を通じて外部から給電すると、ショートによる火花の危険性を伴うため、通常、防爆構造の電池ボックスに電池を収納し、これを電源として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−228221公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池は消耗し、いずれは新しい電池と交換しなければならないが、電池交換時にも火花の生じる危険性があるため、従来は、防爆型秤全体を非危険場所に持ち出し、そこで電池交換を行った後、防爆型秤を再び危険場所に持ち込んでいる。
この電池交換作業は、防爆型秤が軽量であれば苦にならないが、台秤のような大型で重い秤では、大きな負担になる。
また、防爆型秤から電池ボックスを取り外し、非危険場所に持ち出して電池交換を行うことも行われているが、この場合、構造が複雑化し、高コストになりやすい。
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、電池交換が簡単な防爆型秤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、載荷台上の被計量物の重量を表示器に表示する防爆型秤であって、
表示器を取り付ける取付け部材が、表示器の背面に接する当接板を備え、
表示器は、背面に、防爆構造の電池ボックスを備え、
表示器の背面及び当接板は、2以上の異なる箇所で相互に係合する複数の係合手段を有し、
一つの係合手段は、当接板に押圧力を与えて表示器の背面と当接板との相対移動を阻止するとともに、押圧力が弱まれば相対移動を許容する係合を行い、
その他の係合手段は、表示器の背面と当接板とが一方向に相対移動したときに係合し、反対方向に相対移動したときに解除される係合を行う、
ことを特徴とする。
この防爆型秤は、当接板に対する押圧力を緩めて表示器と当接板とを相対移動させれば、表示器と当接板との係合を解除することができるので、表示器の取り付け、取り外しが簡単である。防爆型秤の電池を交換するときは、表示器のみを防爆型秤から外して非危険場所で電池ボックスの電池を交換し、その後に、表示器を防爆型秤に取り付けることができる。
【0006】
また、本発明の防爆型秤では、当接板は、
一つの係合手段を構成するために、横方向の辺に設けられたV字形状の切欠きと、該切欠きのV字形状の底部から下方に延びる溝とを有し、
その他の係合手段を構成するために、円形の貫通孔と、該貫通孔の円の底部から下方に延びるU字状の溝とを有し、
表示器の背面は、
一つの係合手段を構成するために、切欠きの位置に対応させて設けられた螺子孔を有し、
その他の係合手段を構成するために、貫通孔の位置に対応させて設けられた第1の拡大頭部を備える突起物を有し、
螺子孔に第2の拡大頭部を備える螺子を螺合して当接板に押圧力が与えられることを特徴とする。
こうした構成により、当接板に対して押圧力を加えていれば、全ての係合手段が係合状態を保つので、表示器と当接板との安定した係合が得られる。また、当接板に対する押圧力を弱めて表示器と当接板との相対移動を可能にすれば、全ての係合手段の係合が解除されるので、表示器を容易に取り外すことができる。
【0007】
また、本発明の防爆型秤では、切欠きの底部から延びる溝の幅が、螺子の軸部の径よりも大きく、且つ、第2の拡大頭部の径よりも小さく、円形の貫通孔の径が、第1の拡大頭部の径よりも大きく、貫通孔の円の底部から延びるU字状の溝の幅が、突起物の径よりも大きく、且つ、第1の拡大頭部の径よりも小さいことを特徴とする。
こうした条件を満たすことにより、当接板に対する押圧力を緩めて表示器と当接板との係合を解除することが可能になる。
【0008】
また、本発明の防爆型秤では、当接板は、表示器の側に突出した突起を有し、当接板に押圧力を与えた時、突起が支点になって当接板が弾性変形することを特徴とする。
当接板にバネ弾性の反発力が生じるので、螺子の緩みが防止できる、
【発明の効果】
【0009】
本発明の防爆型秤は、表示器を簡単に取り付けたり、取り外したりできるため、防爆型秤の電池交換が必要なときには、表示器のみを防爆型秤から外して非危険場所で電池ボックスの電池を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る防爆型秤の外形図
【図2】図1の防爆型秤を別な角度から見た図
【図3】図1の防爆型秤のブロック図
【図4】図1の防爆型秤における表示器の取り付け構造を示す平面図
【図5】図4の表示器取り付け構造の分解斜視図
【図6】図4の表示器取り付け構造での動作変化を説明する図
【図7】図4の表示器取り付け構造の断面図
【図8】表示器での電池交換の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る防爆型秤を示している。この秤は、基台20の上に荷重検出部(不図示)を介して載荷台(計量皿)21を載せ、載荷台21から延出した基台20の部分に支柱22を立設し、この支柱22上に、取付け部材40を介して、表示器60を取り付けている。
図3は、この防爆型秤のブロック図を示している。重量測定器50は、荷重検出部であるロードセル51と、ロードセル51から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部52とを有し、表示器60は、デジタル化された信号を用いて表示のための信号処理を行うDSP部61と、表示器60及び重量測定器50の電源となる電池を保持する電池ホルダ67と、赤外線による通信で計量データを外部出力する赤外線通信部68とを有している。重量測定器50と表示器60との間は、支柱22内に配線された4芯シールド線53で接続されている。
【0012】
図4は、表示器60が取付け部材40に取り付けられた状態を示し、図5は、表示器60と取付け部材40とが分離された状態を示している。取付け部材40は、表示器60の裏面に当接する横長形状の当接板41を有している。この当接板41には、上辺にV字形状の切欠き42が形成されており、また、切欠き42の位置を頂点とする二等辺三角形の等角の位置に二つの貫通孔43、44が形成されている。また、切欠き42から下方に下った、前記二等辺三角形の対称軸線上に、表示器60の側に突出した突起45が設けられている。
V字形状の切欠き42は、図6(a)に示すように、V字形状の底部から下方に延びる溝46を有している。また、貫通孔43、44は、大径の円と、その円の底部から下方に延びるU字状の溝47を有している。
【0013】
一方、表示器60は、その裏面に防爆構造の電池ボックス67を具備し、また、貫通孔43、44に対応する位置に突起物62、63を有し、切欠き42に対応する位置に螺子孔64を有している。図7の断面図に示すように、突起物62、63は、頭部が拡大された螺子62の軸部分に円筒リング65を嵌め、この螺子62を、円筒リング65が露出するように表示器60の螺子孔に捩じ込んで形成されている。
また、表示器60の螺子孔64には、拡大頭部を有する蝶螺子66が螺合される。
当接板41のV字形状切欠き42に連通する溝46の幅は、蝶螺子66の軸部の径よりも大きく、蝶螺子66の拡大頭部の径よりも小さい。また、貫通孔43、44の大径円の径は、突起物62、63の拡大頭部の径より大きく、大径円の底部から下方に延びるU字状の溝47の幅は、突起物62、63の円筒リング65の径よりも大きく、突起物62、63の拡大頭部の径よりも小さい。
【0014】
取付け部材40の当接板41に表示器60を取り付けるときは、図6(a)に示すように、表示器60の突起物62、63の拡大頭部を貫通孔43、44の大径円に差し込み、次に、表示器60を押し下げて、図6(b)に示すように、突起物62、63の円筒リング65部分を貫通孔43、44のU字状溝47の箇所に移動させる。(このように、表示器60の突起物62、63と当接板41の貫通孔43、44との係合は、当接板41と表示器60との相対移動により係合または解除されるものであり、請求項1で言う「その他の係合手段」に相当している。)
突起物62、63が貫通孔43、44のU字状溝47の位置に移動すると、表示器60の螺子孔64は、切欠き42に連通する溝46の位置に来る。この螺子孔64に蝶螺子66を螺合し、蝶螺子66を締め付けて、蝶螺子66の拡大頭部と表示器60との間に当接板41をしっかりと固定する。(この螺子孔64と蝶螺子66との係合は、請求項1で言う「一つの係合手段」に相当し、この係合により、当接板41と表示器60との相対移動が阻止され、それにより「その他の係合手段」の係合関係も維持される。)
このとき、図7に示すように、当接板41の支点45が表示器60の裏面に接触し、そのため、螺子孔64の位置では、表示器60と当接板41との間に多少の間隔が開くことになるが、蝶螺子66の締め付けにより、当接板41が弾性変形して、この間隔が狭まる。
当接板41の弾性変形で生じたバネ力は、蝶螺子66の緩みを防止する。
【0015】
一方、取付け部材40の当接板41から表示器60を取り外すときは、表示器60が当接板41に対して移動できる状態になるまで蝶螺子66の締め付けを緩める。表示器60が移動可能になれば、図6(b)の状態から表示器60を持ち上げて図6(a)の状態に移し、突起物62、63を貫通孔43、44から抜くようにして表示器60を取付け部材40から取り外す。
【0016】
図8は、防爆型秤から取り外した表示器60を非危険場所に運んで電池交換を行う状況を示している。防爆構造の電池ボックスの蓋70は、ネジ止めされているため、このネジ71を外し、蓋70を取り除いて電池72を交換する。
このように、この防爆型秤では、蝶螺子66により当接板41に加えている押圧力を緩めれば、後は、当接板41に対して表示器60をスライドさせて当接板41と表示器60との係合を解除することができる。従って、表示器60の取り外しや取り付けが簡単にでき、電池交換が苦にならない。
なお、ここで示した構成は、本発明の一例であり、本発明は、それだけに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の防爆型秤は、電池交換が簡単であり、各種の爆発性雰囲気の中でも安全に使用することができる。
【符号の説明】
【0018】
20 基台
21 載荷台
22 支柱
40 取付け部材
41 当接板
42 切欠き
43 貫通孔
44 貫通孔
45 突起
46 溝
47 溝
50 重量測定器
51 ロードセル
52 AD変換部
53 4芯シールド線
60 表示器
61 DSP部
62 突起物
63 突起物
64 螺子孔
65 円筒リング
66 蝶螺子
67 電池ホルダ
68 赤外線通信部
70 蓋
71 ネジ
72 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載荷台上の被計量物の重量を表示器に表示する防爆型秤であって、
前記表示器を取り付ける取付け部材が、前記表示器の背面に接する当接板を備え、
前記表示器は、背面に、防爆構造の電池ボックスを備え、
前記表示器の背面及び当接板は、2以上の異なる箇所で相互に係合する複数の係合手段を有し、
一つの係合手段は、前記当接板に押圧力を与えて前記表示器の背面と前記当接板との相対移動を阻止するとともに、前記押圧力が弱まれば前記相対移動を許容する係合を行い、
その他の係合手段は、前記表示器の背面と前記当接板とが一方向に相対移動したときに係合し、反対方向に相対移動したときに解除される係合を行う、
ことを特徴とする防爆型秤。
【請求項2】
請求項1に記載の防爆型秤であって、
前記当接板は、
前記一つの係合手段を構成するために、横方向の辺に設けられたV字形状の切欠きと、該切欠きのV字形状の底部から下方に延びる溝とを有し、
前記その他の係合手段を構成するために、円形の貫通孔と、該貫通孔の円の底部から下方に延びるU字状の溝とを有し、
前記表示器の背面は、
前記一つの係合手段を構成するために、前記切欠きの位置に対応させて設けられた螺子孔を有し、
前記その他の係合手段を構成するために、前記貫通孔の位置に対応させて設けられた第1の拡大頭部を備える突起物を有し、
前記螺子孔に第2の拡大頭部を備える螺子を螺合して前記当接板に押圧力が与えられることを特徴とする防爆型秤。
【請求項3】
請求項2に記載の防爆型秤であって、
前記切欠きの底部から延びる溝の幅が、前記螺子の軸部の径よりも大きく、且つ、前記第2の拡大頭部の径よりも小さく、
前記円形の貫通孔の径が、前記第1の拡大頭部の径よりも大きく、前記貫通孔の円の底部から延びるU字状の溝の幅が、前記突起物の径よりも大きく、且つ、前記第1の拡大頭部の径よりも小さいことを特徴とする防爆型秤。
【請求項4】
請求項1に記載の防爆型秤であって、前記当接板は、前記表示器の側に突出した突起を有し、前記当接板に押圧力を与えた時、前記突起が支点になって前記当接板が弾性変形することを特徴とする防爆型秤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−13467(P2012−13467A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148396(P2010−148396)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(390041346)新光電子株式会社 (38)