説明

防草キャップ及びこれを使用した緑化工法

【課題】植生植物を植え込んで施工した防草キャップ(育苗ポット)が緑化すべき施工面から長期間浮き上がらないようにすることができて周囲を汚損することもなく、施工面の緑化を確実に行うことのできる防草キャップを提供すること。
【解決手段】緑化すべき施工面10上に敷設した防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10の地中に埋め込まれて、内部に植生植物が植え込まれる防草キャップ30であって、前記地中に埋め込まれることになる筒部31と、この筒部31の上端に一体的に形成されて、マット開口部21の周囲を被って、筒部31の周囲に防草マット20との重なり部分を積極的に形成することになるつば部32と、このつば部32と防草マット20との固定を行う浮き上がり防止手段40である接着剤40bとを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面などの緑化を防草しながら行う防草キャップ、及びこれを使用した緑化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種法面や新規造成地等の施工面においては、その緑化を積極的に行って、法面等の美化と土砂の流亡を防止することが行われている。この緑化には、その法面の周囲環境に合わせた植生植物が選定されるが、ある程度の管理を行わないと、施工した緑化植物が、そうではない雑草に負けて絶えてしまい、元の雑草が繁茂した法面になってしまう。
【0003】
このような緑化自体も、また緑化した植物の後管理も非常に労力の掛かるものであるから、これらの労力をできるだけ少なくするような工夫が、例えば特許文献1等の種々な手段によって行われている。
【特許文献1】特開平11−229385号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に提案されている「緑化工法」は、「平坦な公園緑地、又は傾斜した路肩、造成地等の法面に植え付けた植物を成長、繁茂させて地面を被覆することにより、自然光、風雨等による地面の侵食及び崩落を防止して保護安定化を図るとともに、緑化により景観を維持・向上させる緑化工法を提供する」ことを目的としてなされたもので、図7に示すように、「シートを地面上に敷設し、地面に打ち込むのに適した強度と尖った下部とを有する苗木を植え付けた育苗ポットを所定の間隔をあけた配置でシートの上から土中に打ち込み固定する」という手段を採用しているものである。
【0005】
この特許文献1の緑化工法では、図7に示すように、「地面に打ち込むのに適した強度と尖った下部とを有する育苗ポットを土中に打ち込み固定する」ものであるから、「地面の侵食及び崩落を防止して保護安定化を図るとともに、緑化により景観を維持・向上させる」ことができるものと考えられる。
【0006】
しかしながら、この特許文献1の「育苗ポット」は、「尖った下部を有する」だけであって土に対する抵抗になるものが何もないため、例えば大量に降った雨が上や周囲を流れたり、犬が走り回っただけでも施工面から簡単に浮き上がってしまい、「シート」や地面との間に隙間を形成し易いと考えられる。
【0007】
よく知られているように、雑草は「根絶やし」しないと再び再生してくるものである。例えば、図8の(a)に示すように、育苗ポットを用いないでシートに形成したマット開口部(21)から植生植物の苗を植え付けた場合は勿論、図8の(b)に示すように、育苗ポットを使用してその周囲をシートによって覆うようにした場合も、雑草は、穴または隙間からその芽や根茎を延ばし、植生植物の周りに繁茂することになる。
【0008】
従って、特許文献1に示されたような工法において使用される「育苗ポット」が浮き上がってしまって、シートとの間に隙間ができてしまうと、この隙間から雑草が繁茂し易くなると考えられる。
【0009】
一方、シート上は、施工後長年に亘って雑草の繁茂はないが、それと同時に植生植物の繁茂もないから、このシートの表面がいつまでも人の目について、周囲環境の美化には全くならないことになる。
【0010】
このような人工的なシート上も、植生植物による緑化が行えると、非常によいと考えられるが、そのようなシート上の緑化も行える植生植物として、近年「地被植物」が注目されてきている。「地被植物」は、株元から「匍匐茎」を周囲に延ばし、さらにこの匍匐茎の節目から根を出して増殖するものであり、匍匐茎からの根が十分活着できる環境であれば、他の雑草の繁茂を抑制するシート上であっても、十分生育しかつ繁茂し得る可能性を有している。現在、法面等の施工面を緑化する地被植物として注目されているのが、ヒメイワダレソウである。
【0011】
しかしながら、このような有望と考えらる地被植物であっても、一般的に背丈が短く、比較的柔らかいものであるし、しかも匍匐茎が十分延び得る環境でないと、十分な繁茂は期待できない。つまり、他の雑草を完全に抑えてやらないと、ヒメイワダレソウを代表とする地被植物の施工面上での繁茂は期待できない。
【0012】
そこで、本発明者等は、ヒメイワダレソウを代表とする地被植物等の植生植物を植え込んだ「育苗ポット」が浮き上がないようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0013】
すなわち、本発明の第1目的は、植生植物を植え込んで施工した防草キャップ(育苗ポット)が緑化すべき施工面から長期間浮き上がらないようにすることができて周囲を汚損することもなく、施工面の緑化を確実に行うことのできる防草キャップを、簡単な構造によって提供することにある。
【0014】
また、本発明の第2目的は、防草マットの隙間を完全に無くすことができて、防草効果を確実にすることのできる防草キャップを、簡単な構成によって提供することにある。
【0015】
そして、本発明の第3目的は、本発明に係る防草キャップを採用しながら、防草効果が高くて、施工が簡単な緑化工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「緑化すべき施工面10上に敷設した防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10の地中に埋め込まれて、内部に植生植物が植え込まれる防草キャップ30であって、
前記地中に埋め込まれることになる筒部31と、この筒部31の上端に一体的に形成されて、マット開口部21の周囲を被って、筒部31の周囲に防草マット20との重なり部分を積極的に形成することになるつば部32と、このつば部32と防草マット20との固定を行う浮き上がり防止手段40である接着剤40bとを備えたことを特徴とする防草キャップ30」
である。
【0017】
すなわち、この請求項1に係る防草キャップ30は、図1に示すように、施工面10に形成した苗床用穴11内に埋め込まれることになる筒部31と、この筒部31に一体化した浮き上がり防止手段40である接着剤40bとにより構成したものである。勿論、この防草キャップ30は、後述する緑化工法を実施するに当たっても有用となるものであり、種々な材料によって形成できるものであるが、後述する最良形態のものでは、天然繊維や、パルプ繊維あるいは生分解性樹脂等の自然分解性材料によって一体的に形成したものである。
【0018】
この請求項1に係る防草キャップ30は、除草を行った後の施工面10について、図3に示すようにして全面に防草マット20を敷設し、この防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、図1に示すように、施工面10内、つまり地中に埋め込まれるものである。
【0019】
この防草キャップ30を施工面10内に埋め込むに当たっては、図4に示すように、防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10に対して苗床用穴11を手堀りで形成することもよいが、この苗床用穴11は、図6に示すような穴開け杭60を使用して形成してもよいものである。
【0020】
なお、防草マット20は、図3中にも示すように、運搬や保管が便利なように、一定幅の長尺なものを巻回してあるが、これを施工面10上に展開して行くにあたって、その幅方向について重なるようにし、重なった部分は、杭や接着剤等によって隙間ができないように接合される。
【0021】
この敷設された防草マット20には、図3〜図5に示すように、マット開口部21が多数形成してある。これらの各マット開口部21からは、施工面10内に、図1に示すように、本発明に係る防草キャップ30が埋め込まれるのであり、これにより、図5に示すように、防草キャップ30以外が防草マット20表面から露出されないようになされるのである。
【0022】
本発明に係る防草キャップ30の筒部31は、防草マット20のマット開口部21から地中に挿入する部分であり、図1にも示すように、まだ幼いポット苗状態の植生植物50の根または根茎52を保護するものである。勿論、後述する最良形態の筒部31は天然繊維等の自然分解性材料によって一体的に形成したものであるから、その内外への水の流通を可能にするとともに、筒部31外の施工面10中に残っている雑草の根等の侵入を阻止するものともなっている。
【0023】
また、この筒部31は、合成樹脂や、最良形態のように天然繊維や、パルプ繊維あるいは生分解性樹脂等の自然分解性材料によって一体的に形成したもので所定の剛性を有するから、次に述べるつば部32の保持は勿論、防草マット20のマット開口部21から地中に挿入されたり打ち込まれたりする際の衝撃に十分耐え得るものとなっている。
【0024】
一方、つば部32は、筒部31と同様に、合成樹脂や、最良形態のように天然繊維や、パルプ繊維あるいは生分解性樹脂等の自然分解性材料によって一体的に形成したものであり、防草マット20に形成されているマット開口部21より十分大きく広がったものである。そして、この防草キャップ30が施工された後には、図1及び図5に示すように、マット開口部21の周囲を被って、筒部31の周囲に防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成するのである。
【0025】
以上の結果、当該防草キャップ30のつば部32によって、防草マット20の各マット開口部21の周囲にある部分が、図5中の点線にて示すように、重なり部21aとなれば、この重なり部21aによって、図1に示すように、施工面10中にある雑草の芽または根茎が延びてくることはない。何故なら、雑草が生育するには「光」が必要なのであるが、防草マット20につば部32との重なり部21aが存在すれば光が遮断されて、施工面10中に入る余地は全くなく、仮に雑草の根等が施工面10中に残っていたとしても、この雑草が伸びてくることはないからである。
【0026】
そして、この請求項1の防草キャップ30においては、図1に示すように、防草キャップ30のつば部32と防草マット20との間に浮き上がり防止手段40を配置したものであり、この浮き上がり防止手段40はつば部32の防草マット20上に対する固定を行うものである。
【0027】
この浮き上がり防止手段40は、つば部32の防草マット20上に対する固定を行うものであれば、例えば目串や、防草マット20上から専用装置によって打ち込まれるステープル等何であってもよいが、後述する最良形態では、接着剤40bとしている。この接着剤40bとしては、文字通り接着剤であってもよいが、例えば両面接着剤付きシートであってもよい。
【0028】
このような浮き上がり防止手段40が、つば部32と防草マット20とを固定していれば、防草キャップ30の施工面10からの浮き上がりが防止されるとともに、防草マット20自体の固定も行えるものとなっている。また、仮に、筒部31が先に腐食してしまってつば部32のみが残存したとしても、残存したつば部32は防草マット20上にしっかりと固定されたままとなり、この残存したつば部32が風に吹かれてあらぬ場所に飛散して、周囲を汚損することもないのである。
【0029】
従って、この請求項1の防草キャップ30は、浮き上がり防止手段40の存在、つまり防草キャップ30のつば部32と防草マット20自体の固定を行う接着剤40bの存在によって、施工面10からの抜け止めが果たされており、植生植物50を植え込んで施工した防草キャップ30が緑化すべき施工面10から長期間浮き上がらず、植生植物50の保護と防草効果を有していて、施工面10の緑化を確実に行えるとともに、防草マット20自体の固定も行えるものとなっている。また、この請求項1の防草キャップ30は、防草マット20との隙間をつば部32との重なり部21aによって完全に無くすことができて、防草効果を確実にするものとなっている。
【0030】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の防草キャップ30について、
「少なくとも筒部31を自然分解型の材料によって形成したこと」
である。
【0031】
すなわち、この請求項2に係る防草キャップ30では、少なくとも筒部31を、天然繊維や、パルプ繊維あるいは生分解性樹脂等の自然分解型の材料によって形成したものであり、この筒部31自体を植生植物50の肥料とすることができるのである。それだけでなく、この請求項2に係る防草キャップ30は、防草キャップ30のつば部32と防草マット20との間に浮き上がり防止手段40を配置して、この浮き上がり防止手段40によってつば部32の防草マット20上に対する固定を行うものでもあったから、仮に、筒部31が先に腐食してしまってつば部32のみが残存したとしても、残存したつば部32は防草マット20上にしっかりと固定されたままとなり、この残存したつば部32が風に吹かれてあらぬ場所に飛散することもないのである。
【0032】
そして、この請求項2に係る防草キャップ30において、天然繊維によって一体的に形成した筒部31は、所定の剛性を有するから、つば部32の保持は勿論、上述した地中への挿入や打ち込みに十分耐え得るものとなっている。
【0033】
従って、この請求項2に係る防草キャップ30は、請求項1に係る防草キャップ30と同様な機能を発揮する他、筒部31自体を植生植物50の肥料とすることができ、残存したつば部32が仮にあったとしても、このつば部32をあらぬ場所に飛散させることもない。
【0034】
そして、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、
「緑化すべき施工面10上に、その除草を行った後に防草マット20を敷設し、
この防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10の地中に埋め込まれることになる筒部31と、これに取り付けた浮き上がり防止手段40と、筒部31の上端に一体的に形成したつば部32とを備えた防草キャップ30を埋め込むにあたって、筒部31の周囲につば部32と防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成しながら、この防草キャップ30のつば部32によって、マット開口部21の周囲の防草マット20を被うとともに、
この防草マット20とつば部32との固定を接着剤40bにより行うことにより、防草キャップ30の筒部31内以外の施工面10を露出させないようにして、
防草キャップ30の筒部31内に植生植物を植栽するようにしたことを特徴とする緑化工法」
である。
【0035】
すなわち、この請求項3に係る緑化工法は、上記請求項1〜請求項2に係る防草キャップ30を積極的に使用するものであり、図1に示すように、例えばヒメイワダレソウを代表とする地被植物を植生植物50として、この植生植物50を、緑化すべき法面等の施工面10全体に植生しようとするものであり、まず、図2に示すように、施工面10の除草を行うのである。
【0036】
除草を行った後の施工面10について、図3に示すようにして、全面に防草マット20を敷設し、この防草マット20に多数形成した各マット開口部21から施工面10上に防草キャップ30を埋め込むのである。なお、防草マット20は、図3中にも示すように、運搬や保管が便利なように、一定幅の長尺なものを巻回してあるが、これを施工面10上に展開して行くにあたって、その幅方向について重なるようにし、重なった部分は、杭や接着剤等によって隙間ができないように接合される。
【0037】
この敷設された防草マット20には、図3〜図5に示すように、マット開口部21が多数形成してある。これらの各マット開口部21からは、地中に、前述してきた防草キャップ30が埋め込まれるのである。
【0038】
埋め込まれた防草キャップ30には、浮き上がり防止手段40が設けてあるから、この浮き上がり防止手段40によって、防草キャップ30の、施工面10からの抜けが防止されるのである。浮き上がり防止手段40が接着剤40bであって、その係止爪43が筒部31に係合する場合も、またこの係止爪43が防草マット20に係止する場合も、この接着剤40bの存在によって、防草キャップ30の施工面10からの抜けが防止されることは前述した通りである。勿論、この浮き上がり防止手段40が、つば部32と防草キャップ30との間の固定を行う接着剤40bである場合には、この接着剤40bの存在によって、防草キャップ30の施工面10からの抜けが防止されることは前述した通りである。
【0039】
この防草キャップ30を地中に埋め込むに当たっては、図4に示すように、防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10に対して苗床用穴11を手堀りで形成することもよいが、この苗床用穴11は、図5に示すような穴開け杭60を使用して形成してもよいものであることは前述した通りである。
【0040】
また、この防草キャップ30がつば部32を有している場合には、このつば部32によって、図1及び図5に示すように、防草マット20の、マット開口部21の周囲部分が被われる。これにより、防草キャップ30の筒部31内以外の施工面10が露出されないようになされる。
【0041】
つまり、この請求項3の緑化工法では、各防草キャップ30の筒部31の周囲に、図1及び図5に示すように、つば部32と防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成するようにしているから、図8に示したような隙間は長年にわたって形成されないことになり、雑草の生育に必要な光が防草マット20下に入らず、雑草が伸び出す余地がなくなるのである。
【0042】
ここで、防草キャップ30そのものをパルプやジュート等の天然繊維を材料として形成すれば、全体が雨や露を含んだときしなやかになり、そのつば部32は防草マット20の重なり部21a上に自然に垂れ重なって隙間を形成することがない。それだけでなく、この防草キャップ30は、植生植物50ヒメイワダレソウを代表とする地被植物が繁茂する頃には、自然に分解生分解して植生植物50の肥料になるか、施工面10の一部となってしまうから、何等問題とはならない。
【0043】
さて、以上のようにすれば、この防草マット20とつば部32との間には、図5にも示すように、重なり部21aが形成されるが、この重なり部21aにおける防草マット20とつば部32との間の固定を、接着剤40bを使用するにより行うのである。勿論、この接着剤40bは、前述したように、文字通りの接着剤だけでなく、粘着面を両面に有する所謂「両面接着テープ」であってもよい。以上のようにすることにより、防草キャップ30の筒部31内以外の施工面10を露出させないようにするのである。
【0044】
以上のようにして、各防草キャップ30のつば部32と防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成した後には、当該防草キャップ30の筒部31内に植生植物50を植栽すれば、この緑化工法は完了する。
【0045】
従って、この請求項3に係る緑化工法は、本発明に係る防草キャップ30を採用しながら、防草効果が高くて、施工が簡単な工法となっているのである。
【発明の効果】
【0046】
以上の通り、本発明に係る防草キャップ30においては、
「緑化すべき施工面10上に敷設した防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10の地中に埋め込まれて、内部に植生植物が植え込まれる防草キャップ30であって、
前記地中に埋め込まれることになる筒部31と、この筒部31の上端に一体的に形成されて、マット開口部21の周囲を被って、筒部31の周囲に防草マット20との重なり部分を積極的に形成することになるつば部32と、このつば部32と防草マット20との固定を行う浮き上がり防止手段40である接着剤40bとを備えたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、植生植物50を植え込んで施工した防草キャップ30が緑化すべき施工面10から長期間浮き上がらないようにすることができて、施工面10の緑化を確実に行うことができるのである。
【0047】
また、本発明に係る緑化工法によれば、
「緑化すべき施工面10上に、その除草を行った後に防草マット20を敷設し、
この防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10の地中に埋め込まれることになる筒部31と、これに取り付けた浮き上がり防止手段40と、筒部31の上端に一体的に形成したつば部32とを備えた防草キャップ30を埋め込むにあたって、筒部31の周囲につば部32と防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成しながら、この防草キャップ30のつば部32によって、マット開口部21の周囲の防草マット20を被うとともに、
この防草マット20とつば部32との固定を接着剤40bにより行うことにより、防草キャップ30の筒部31内以外の施工面10を露出させないようにして、
防草キャップ30の筒部31内に植生植物を植栽するようにしたことを特徴とする緑化工法」
にその特徴があり、これにより、本発明に係る防草キャップ30を採用しながら、防草効果が高くて、施工が簡単な緑化工法を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態に基づいて説明すると、図1及び図5には、本発明に係る緑化工法の施工後の様子が、本発明に係る防草キャップ30を中心に示してある。
【0049】
この緑化工法では、簡単に言えば、図2に示したような草刈りをした施工面10上に、マット開口部21を有する防草マット20を図3に示したように敷設し、このマット開口部21から施工面10に形成した苗床用穴11内に、浮き上がり防止手段40を施しながら防草キャップ30を埋め込み、この防草キャップ30の筒部31内に、図4に示したように植生植物50を植え付けるのである。
【0050】
この植生植物50としては、特に限定されるものではないが、前述したように、ヒメイワダレソウを代表とする「地被植物」が適している。「地被植物」は、株元から「匍匐茎」を周囲に延ばし、さらにこの匍匐茎の節目から根を出して増殖するものであり、匍匐茎からの根が十分活着できる環境であれば、他の雑草の繁茂を抑制する防草マット20上であっても、十分生育しかつ繁茂し得るものである。
【0051】
この防草キャップ30を地中に埋め込むに当たっては、図4に示したように、防草マット20に多数形成した各マット開口部21から、施工面10に対して苗床用穴11を手堀りで形成することもよいが、この苗床用穴11は、図6に示したような穴開け杭60を使用して形成してもよいものである。
【0052】
この穴開け杭60は、図6に示したように、その先端(下端)を尖らせるとともに、その外径を筒部31の内径とほぼ同じとなるようにしてあり、これを槌等によって施工面10に打ち込むことにより、施工面10に苗床用穴11を簡単に形成できるものである。勿論、このような穴開け杭60を使用することにより、防草キャップ30に合わせた大きさの苗床用穴11を形成することができるだけでなく、緑化のための施工作業を効率的に行えることになる。
【0053】
また、この穴開け杭60によって形成された苗床用穴11の内面は、手堀によって形成したそれに対して十分な固さを有しているから、本発明に係る防草キャップ30の挿入が簡単に行える。
【0054】
防草マット20は、施工面10上に直接敷設されるものであり、施工面10上になる裏面マットと、この裏面マット上に一体化した表層マットとからなるものであるが、図4にも示したように、植生植物50の栽培に適した間隔で多数のマット開口部21が形成される。このマット開口部21は、防草マット20自体を切り取った穴であってもよいが、防草マット20に切込を入れて、この切込を広げたものであってもよい。
【0055】
この防草マット20の裏面マットは、地中に対する表面側からの通水性と遮光性とを有するものであり、例えば天然繊維を使用して、目の細かい不織布や薄いマット状にしたものである。一方、この裏面マット上に一体化される表層マットは、例えば天然繊維を使用して、目の細かい不織布や薄いマット状にしたものであり、植生植物50の匍匐茎51への給水を許容するための保水性を備えたものである。これらの裏面マットや表層マットを、天然繊維を材料として構成したのは、天然繊維は施工面10中のバクテリアによって生分解して土に還るため、当該緑化工法を施工した周囲環境に悪影響を与えないからである。
【0056】
また、以上の防草マット20に形成した各マット開口部21から地中に埋め込まれる防草キャップ30は、本最良形態では古紙を再生して得られるパルプ等の天然繊維を主体として一体的に形成したものであり、図1に示したように、地中に埋め込まれることになる筒部31と、この筒部31の上端に一体的に形成したつば部32とから構成したものである。
【0057】
これらの筒部31やつば部32は、図5に示した最良形態では平面視丸形状のものとしたが、平面視四角形状のものとして実施してもよい。勿論、この防草キャップ30は、これを多数重ねることができるようにするために、その筒部31を先窄み形状のものにするとよい。
【0058】
各防草キャップ30の筒部31上に一体的なつば部32は、当該防草キャップ30を防草マット20のマット開口部21内に挿入したとき、このマット開口部21の周囲にある防草マット20上を被うものであり、筒部31の周囲に防草マット20との重なり部分21aを積極的に形成するものである。つまり、この防草キャップ30のつば部32は、防草マット20との間に、光が入り込む隙間を絶対に形成しないようにするものであり、防草マット20と重なって防草マット20に重なり部21aを積極的に形成することになるものである。
【0059】
このつば部32は、筒部31とともに紙パルプ等の天然繊維を材料として形成したものであるから、雨や露を含めば柔らかくなって、防草マット20の重なり部21a上に完全に密着し得るような形状に馴染むことになる。つまり、施工後の遮光性を自然に十分なものとなるものである。なお、このつば部32は、防草キャップ30が地中に打ち込まれる際に槌が当たることがあるため、上述した筒部31のように補強リブを形成しなければならないかもしれないという危惧があったが、補強リブを形成したり波状に形成すると却って筒部31から折れやすくなるため、平面的なもので十分であった。
【0060】
本発明の緑化工法で採用している植生植物50は、ヒメイワダレソウを代表とする地被植物であるが、この地被植物の他の例としては、例えばクローバーを代表とする芝草類、スイカズラ、ヘデラ、ツルニチニチソウを代表とするのツル性植物等がある。中でも、ヒメイワダレソウやシバザクラは、匍匐茎51を十分伸ばす性質を有することから、例えば道路や線路の法面を施工面10とする場合に非常に適している。
【0061】
そして、図1には、本発明に係る防草キャップ30を施工した例が示してあるが、この防草キャップ30においては、防草キャップ30のつば部32と防草マット20との間に浮き上がり防止手段40を配置したものであり、この浮き上がり防止手段40の実質的なものは接着剤40bである。つまり、この浮き上がり防止手段40である接着剤40bは、防草キャップ30のつば部32を、防草マット20上に対して固定するものである。
【0062】
この浮き上がり防止手段40である接着剤40bは、つば部32の防草マット20上に対する固定を行うものであれば何であってもよく、両面接着剤付きシートであってもよいものである。
【0063】
このような浮き上がり防止手段40が、つば部32と防草マット20とを固定していれば、防草キャップ30の施工面10からの浮き上がりを防止するし、仮に、筒部31が先に腐食してしまってつば部32のみが残存したとしても、残存したつば部32を防草マット20上にしっかりと固定することになって、周囲を汚損することもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、新規造成地は勿論のこと、既に雑草が生い茂っている道路や線路の法面等を代表とする施工面にも適用できるものであるから、既成施工面の管理あるいは養生にも適用できて、施工面管理を容易にすることもできるものである。
【0065】
また、本発明が実施されれば、防草マット20や防草キャップ30として、古紙や燃やすしかなかった天然資源を大量に使用できることになり、所謂ゴミ処理問題も解決できるものである。しかも、これらの防草マット20や防草キャップ30は生分解して土に還るから、周辺環境に悪影響を与えることもないのである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る防草キャップの施工後の様子を示すもので、図5中の1−1線に沿ってみた縦断面図である。
【図2】施工面上の雑草刈りを行っている様子を示す斜視図である。
【図3】施工面上に防草マットを敷設している様子を示す斜視図である。
【図4】防草マットに形成してあるマット開口部に防草キャップを挿入したり、この防草キャップ中に植生植物を植栽したりしている様子を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る工法を施工した後の部分平面図である。
【図6】施工面に穴開け杭を使用して苗床用穴を形成している様子を示す部分縦断面図である。
【図7】従来技術を示す部分斜視図である。
【図8】従来技術の施工後の様子を示すもので、(a)は苗ポットを使用していない場合の縦断面図、(b)は苗ポットを使用している場合の縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 施工面
11 苗床用穴
20 防草マット
21 マット開口部
21a 重なり部
30 防草キャップ
31 筒部
32 つば部
33 係止穴
40 浮き上がり防止手段
40b 接着剤
50 植生植物
51 匍匐茎
52 根または根茎
60 穴開け杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑化すべき施工面上に敷設した防草マットに多数形成した各マット開口部から、前記施工面の地中に埋め込まれて、内部に植生植物が植え込まれる防草キャップであって、
前記地中に埋め込まれることになる筒部と、この筒部の上端に一体的に形成されて、前記マット開口部の周囲を被って、前記筒部の周囲に防草マットとの重なり部分を積極的に形成することになるつば部と、このつば部と前記防草マットとの固定を行う浮き上がり防止手段である接着剤とを備えたことを特徴とする防草キャップ。
【請求項2】
少なくとも前記筒部を自然分解型の材料によって形成したことを特徴とする請求項1に記載の防草キャップ。
【請求項3】
緑化すべき施工面上に、その除草を行った後に防草マットを敷設し、
この防草マットに多数形成した各マット開口部から、前記施工面の地中に埋め込まれることになる筒部と、前記筒部の上端に一体的に形成したつば部とを備えた防草キャップを埋め込むにあたって、前記筒部の周囲に前記つば部と防草マットとの重なり部分を積極的に形成しながら、この防草キャップの前記つば部によって前記マット開口部の周囲の防草マットを被うとともに、 この防草マットとつば部との固定を接着剤により行うことにより、前記防草キャップの筒部内以外の前記施工面を露出させないようにして、
前記防草キャップの筒部内に植生植物を植栽するようにしたことを特徴とする緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17888(P2009−17888A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245364(P2008−245364)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【分割の表示】特願2008−144155(P2008−144155)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000226747)日新産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】