説明

防護衣および曇り除去構造

【課題】着用者が、全身を被覆するつなぎ服タイプの防護衣を着用し汚染地域を行動中に、視覚用窓部が着用者の呼気等で曇ったとしても、迅速かつ的確に、前記視覚用窓部の曇りを除去できる簡易な構造の防護衣を提供する。
【解決手段】本発明に係る防護衣900は、着用者の頭部を被覆する頭部被覆部110を有するとともに、前記頭部被覆部110に前記着用者が周囲を認識できる視覚用窓部150を有する防護衣であって、前記視覚用窓部150の周辺に形成されたポケット口210と、その開口端部が前記ポケット口210と一体的に接合されている袋状のポケット本体部220と、を有し、前記着用者が前記ポケット口210から手を挿入して前記ポケット本体部220で前記視覚用窓部150の内側面に生じた曇りを拭うことができる曇り除去部200を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護衣及び曇り除去構造に関する。より詳しくは、全身を被覆するつなぎ服タイプの防護衣、及び、その防護衣に取り付けられるポケット形状の曇り除去構造に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の搭乗員は、病原菌や有毒化学物質等により汚染された区域を飛行する際は、身体を病原菌等から保護するために、例えば、特許文献1に記載されるような感染防護衣を着用することがある。この感染防護衣は、全身を被覆するつなぎ服タイプの防護衣であり、搭乗員は頭部に設けられた透明な視覚用窓部を介して周囲を認識する。
【0003】
この感染防護衣を搭乗員が着用していると、搭乗員の呼気等が透明な視覚用窓部に吹きかかり、視覚用窓部の透明性が悪化して、搭乗員が周囲を認識しにくくなる。特許文献1記載の感染防護衣では、空気濾過装置により感染防護衣内部の空気の流通を考慮しているものの、搭乗員の呼気等によるマスクの透明性悪化を改善することは十分ではなく、さらには空気濾過装置を設けることによる製造コスト高や重量増加等の問題がある。
【0004】
一方、架空配電線工事等の高圧活線作業において、作業者の安全向上及び作業環境の改善を図るために、作業者は、例えば、特許文献2に記載されるような全身を被覆するつなぎ服タイプの活線作業用防護服を着用する。作業者は、頭部を被覆するヘルメットに形成された透明部を介して周囲を認識する。
【0005】
この活線作業用防護服を作業者が着用していると、作業員の呼気等がヘルメットの透明部に吹きかかり、透明性が悪化して、作業員が周囲を認識しにくくなる。特許文献2記載の活線作業用防護服では、送風取り入れ口を設けることで活線作業用防護服内部の空気の流通を考慮しているものの、上述した感染防護衣と同様に、透明性悪化の改善の困難性、製造コスト高、重量増加等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−002545号公報
【特許文献2】特開平10−280211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、着用者が、全身を被覆するつなぎ服タイプの防護衣を着用し、着用者の頭部を被覆する頭部被覆部に形成された視覚用窓部が着用者の呼気等で曇ったとしても、迅速かつ的確に、視覚用窓部の曇りを除去できる簡易な構造の防護衣、及び、そのような防護衣に取り付けられる曇り除去構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の第一の観点に係る防護衣は、
着用者の頭部を被覆する頭部被覆部を有するとともに、前記頭部被覆部に前記着用者が周囲を認識できる視覚用窓部を有する防護衣であって、
前記視覚用窓部の周辺に形成されたポケット口と、その開口端部が前記ポケット口と一体的に接合されている袋状のポケット本体部と、を有し、前記着用者が前記ポケット口から手を挿入して前記ポケット本体部で前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができる曇り除去部を有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記ポケット口が、前記頭部被覆部の左右の側面部にそれぞれ形成されている、ことも可能である。
【0010】
また、前記ポケット口が、前記頭部被覆部の頭頂部に形成されている、ことも可能である。
【0011】
また、前記ポケット本体部の内側面の先端部に、前記着用者の指を挿入して前記指をかけることができるリング部を有する、ことも可能である。
【0012】
また、前記ポケット本体部は、前記ポケット口から前記頭部被覆部の外側に突出、若しくは、前記ポケット口から前記頭部被覆部の内側に没入可能である、ことも可能である。
【0013】
また、前記ポケット本体部の外側面に、吸湿性部材が取り付けられている、ことも可能である。
【0014】
また、前記吸湿性部材は、前記ポケット本体部に対して交換可能である、ことも可能である。
【0015】
また、前記ポケット本体部の外側面に、前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができるワイパー部材が取り付けられている、ことも可能である。
【0016】
また、前記ワイパー部材は、ゴム製である、ことも可能である。
【0017】
また、前記ワイパー部材は、前記ポケット本体部に対して交換可能である、ことも可能である。
【0018】
また、前記ポケット口から前記ポケット本体部の内側面の先端部までの深さは、前記着用者の指を挿入できる深さである、ことも可能である。
【0019】
また、その一方の端部が前記ポケット本体部の内側面に固着され、その他方の端部は前記ポケット口から露出しており、前記着用者が前記他方の端部を操作することで、前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りの掻き取り操作をする、操作アーム部を有する、ことも可能である。
【0020】
また、前記操作アーム部は、略棒状のアーム本体を有し、
前記アーム本体の、前記ポケット口から露出している前記他方の端部に、前記着用者が把持する、前記アーム本体よりも幅広形状の把持部を有する、ことも可能である。
【0021】
また、前記防護衣は、細菌乃至ウィルスの前記着用者への感染を防護する感染防護衣、化学薬品の前記着用者への汚染を防止する化学防護衣、若しくは、放射線の前記着用者への被爆を防止する放射線防護衣のいずれかである、ことも可能である。
【0022】
また、上記目的を達成するため、この発明の第二の観点に係る曇り除去構造は、
着用者の頭部を被覆する頭部被覆部に形成され、前記着用者が周囲を認識できる視覚用窓部、の周辺に形成されたポケット口と、
その開口端部が前記ポケット口と一体的に接合されている袋状のポケット本体部と、を有し、
前記着用者が前記ポケット口から手を挿入して前記ポケット本体部で前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の防護衣によれば、頭部被覆部に形成された視覚用窓部が着用者の呼気等で曇ったとしても、迅速かつ的確に視覚用窓部の曇りを簡易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る防護衣の外観を説明する図である。
【図2】実施形態1に係る防護衣を着用者が着用している状態を上方から説明する図である。
【図3】着用者が曇り除去部を使用して視覚用窓部の曇りを除去するようすを説明する図であり、そのうち(a)はポケット口に手を近づける図であり、(b)はポケット口に手を挿入する図であり、(c)はポケット本体で視覚用窓部をぬぐう図である。
【図4】ポケット本体部をポケット口から頭部被覆部の外側に突出させるようすを説明する図である。
【図5】ポケット本体部に吸湿性部材が設けられているようすを説明する図である。
【図6】ポケット本体部にワイパー部材が設けられているようすを説明する図である。
【図7】頭部被覆部の一方の側面にポケット口が形成されているようすを説明する図である。
【図8】頭部被覆部の頭頂部にポケット口が形成されているようすを説明する図である。
【図9】操作アーム部が設けられているようすを説明する図である。
【図10】操作アーム部が設けられているようすを上方から説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態に係る防護衣900を、図面を参照して説明するが、これらの実施形態は本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る防護衣900は、図1に示されるように、頭部被覆部110と、胴体被覆部120と、腕被覆部130と、脚被覆部140と、手袋300と、足被覆部400と、を有して構成される。
【0027】
頭部被覆部110と、胴体被覆部120と、腕被覆部130と、脚被覆部140と、は一体的に隙間無く接合されており、防護衣900はつなぎ服タイプである。頭部被覆部110は袋状であり、図2に示されるように着用者700の頭部全体を被覆する。
【0028】
図1に示されるように、腕被覆部130の袖先には、緊締手段としてのリング状ゴム131が設けられている。リング状ゴム131が、着用者700の手首を緊締し、これにより気密性が高められる。
【0029】
手袋300は、着用者700の両手にはめられる。手袋300は、着用者700の手の掌、甲、指、手首を被覆する。着用者700は、手袋300の着脱口部310の中に腕被覆部130の袖先をいれながら、手袋300をはめる。
【0030】
手袋300の着脱口部310にはリング状ゴム311が設けられている。リング状ゴム311は、腕被覆部130の上から着用者700の手首を緊締し、これにより気密性が向上する。
【0031】
図1に示されるように、脚被覆部140の袖先には、緊締手段としてのリング状ゴム141が設けられている。リング状ゴム141が、着用者700の足首を緊締し、これにより気密性が高められる。脚被覆部140は着用者700の脚を被覆し、脚とは、足首から、脛、膝、腿までをいう。
【0032】
足被覆部400は、着用者700の両足にはめられる。着用者700は、足被覆部400の着脱口部410の中に脚被覆部140の裾先をいれながら、足被覆部400をはめる。足被覆部400は着用者700の足を被覆し、足とは、脚末梢端である接地部足底から足首に至るまでをいう。
【0033】
足被覆部400の着脱口部410にはリング状ゴム411が設けられている。リング状ゴム411が、脚被覆部140の上から着用者700の脚を緊締し、これにより気密性が向上する。
【0034】
胴体被覆部120には、図示されていないスライドファスナが設けられている。防護衣900を着用する際には、このスライドファスナのスライダーを下げて身体を防護衣900内部に入れる。そしてスライダーを上げて密閉性を確保する。
【0035】
なお、防護衣900が、例えば航空機搭乗員用感染防護衣である場合は、着用者700は救命胴衣や飛行ヘルメット等の装備品を着用したままで、防護衣900を着用する。そのため、袋状の頭被覆部110は、例えば、着用者700の頭部を飛行ヘルメットを装着したまま収容できるサイズである。
【0036】
頭部被覆部110には、着用者700が周囲を認識できる視覚用窓部150と、着用者700の呼吸を可能とするマスク呼吸器190と、曇り除去部200と、が形成されている。
【0037】
視覚用窓部150は、例えば長方形であり、着用者700が周囲を認識できるように透明性を有している。ここで透明性を有しているとは、完全に透明であるか、若しくは、着用者700が周囲から差し込む日光等を遮光するために半透明である場合も含まれる。視覚用窓部150は、着用者700が周囲を認識しやすいように、例えば、頭部被覆部110の前方向かつ中央部に形成されている。視覚用窓部150は、例えば、ポリカーボネートなどの透明プラスチックで形成される。
【0038】
マスク呼吸器190は、外気が例えばウイルス等で汚染されていても新鮮な空気を吸入できるように、図示されていないフィルタ等を有しており、該フィルタを介して、着用者700は呼吸することができる。
【0039】
曇り除去部200は、図1に示されるように、視覚用窓部150の周辺に形成されたポケット口210と、その開口端部がポケット口210と一体的に接合されている袋状のポケット本体部220と、を有する。
【0040】
ポケット口210は、図1及び図2に示されるように、頭部被覆部110の左右の側面部にそれぞれ形成されている。ここで、頭部被覆部110の左右の側面部とは、頭部被覆部110における、視覚用窓部150のそれぞれの左右両端部から斜め後方45度までの範囲における部分をいう。なお、図2は、着用者700が防護衣900を着用した様子を垂直上方から説明する図であり、理解を促進させるために、着用者700や曇り除去部200は実線で記載する。
【0041】
本実施形態では、図2に示されるように、曇り除去部200のポケット口210は、例えば斜め前方45度付近に形成されている。
【0042】
ポケット口210は、着用者700の手を挿入することができるような大きさの開口である。ポケット口210は、例えば円形の開口であるが、これに限定されず、楕円形の開口等、着用者700が手を挿入することができる形状であるならば特定の形状に限定されない。
【0043】
ポケット本体部220は、ポケット口210からポケット本体部210の内側面の先端部までの深さが、例えば、着用者700の指を挿入できる深さ(即ち、着用者700の指の長さ)である。ポケット本体部220の深さをこのように構成することで、着用者700は手をポケット口210から挿入し、指でポケット本体部220を操作して、曇りが生じている視覚用窓部150の内面を拭うことができる。なお、ポケット本体部220の内側面とは、後述するように、ポケット本体部220をポケット口210から頭部被覆部110の内側に没入させた場合における、袋状のポケット本体部220の内側の面をいう。
【0044】
ポケット本体部220の内側面の先端部には、着用者700の指をかけることができるリング部230が形成されている。リング部230は、例えば、着用者700の指を一本挿入して、指をかけることができる大きさの直径であるが、これに限定されず、着用者700の指を複数本挿入して、指をかけることができる大きさの直径とすることも可能である。
【0045】
防護衣900は、例えば、細菌乃至ウィルスの着用者700への感染を防護する感染防護衣、若しくは、化学薬品の着用者700への汚染を防止する化学防護衣として利用できる。
【0046】
かかる場合、防護衣900を形成する生地は、例えば、ノーメックス等の難燃性生地やナイロン生地等と病原菌及び有毒化学物質に対して非透過性の多孔質フィルムをラミネートした生地や、同じく病原菌や有毒化学物質に対して非透過性のポリエチレンあるいはポリプロピレン等のスパンボンド不織布にコーティング加工等を施した生地である。また、これらの多孔質フィルムやスパンボンド不織布は、生物兵器の病原菌であるバクテリアやウィルス等(例えば、疽菌、コレラ菌、野兎病菌、Q熱、天然痘、ベネズエラ馬脳炎、エボラ熱、ボツリヌス菌毒素、ブドウ球菌性腸毒素等)や、化学兵器の薬剤である有毒化学物質(例えば、サリン、ソマン、VXガス、硫黄マスタード、蒸留マスタード、窒化マスタード、マスターゲン、ルイサイト、ホスゲン、シアン化水素、塩化シアン、アルシン等)は透過させにくい。さらには、これらの多孔質フィルムやスパンボンド不織布は湿気を透過させる材質であり、そのため着用者700が汗で蒸れにくい。なお、このような多孔質フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が、スパンボンド不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレンの連続性極細繊維を高熱で結合させたもの等を使用することができる。
【0047】
また、防護衣900は、放射線の着用者700への被爆を防止する放射線防護衣として利用することができる。かかる場合は、防護衣900は、アルファ線、ベータ線、中性子線、X線及びガンマ線の透過量を下げる放射線遮蔽素材で形成される。また、例えば、防護衣900を形成する生地の上に、ガドリニウム、硼素、リチウム、インジウム等を含有する放射線遮断物質を塗布することも可能である。
【0048】
次に、図3を参照しながら、着用者700が曇り除去部200を利用して、視覚用窓部150の内側面に生じた曇りを除去する場合の使用例を説明する。
【0049】
まず、図3(a)に示されるように、着用者700は、手袋300で覆われた左右の手を、頭部被覆部110の左右の側面部に形成されているポケット口210にそれぞれ近づける。
【0050】
次に、図3(b)に示されるように、着用者700は、左右のポケット口210の内部に、着用者700の指の背中が視覚用窓部150に対向するように、左右の手をそれぞれ挿入する。
【0051】
そして、図3(c)に示されるように、着用者700は、左右のポケット口210の内部に挿入した左右の手で、ポケット本体220を視覚用窓部150の内面に押しつけ、ポケット本体220で視覚用窓部150の内面をぬぐうようにして、視覚用窓部150の内面に生じた曇りを除去する。即ち、着用者700の指の背中でポケット本体220を視覚用窓部150に押しつけ、視覚用窓部150に生じた曇りを拭うのである。ここで指の背中とは、爪が存在する指の硬組織部である。
【0052】
なお、本実施形態では、着用者700の指の背中でポケット本体220を視覚用窓部150に押しつけ、視覚用窓部150に生じた曇りを拭っているが、このような使用形態に限定されることはない。着用者700の手の甲や、指の腹でポケット本体220を視覚用窓部150に押しつけ、視覚用窓部150に生じた曇りを拭うことも可能である。ここで指の腹とは、指紋が存在する指の軟組織部である。
【0053】
曇り除去部200が、図2に示されるように、頭部被覆部110の内部に収納されている場合(即ち、ポケット本体部220が、ポケット口210から頭部被覆部110の内側に没入している場合)は、着用者700が、ポケット本体部220の存在を煩わしく感じることもありうる。かかる場合は、図4に示されるように、ポケット口210からポケット本体部220を頭部被覆部110の外側に突出させることが可能である。これにより、着用者700は、防護衣900の使用時に、ポケット本体部220の存在につき、煩わされることはない。
【0054】
また、ポケット本体部220の内側面が湿気などにより湿った場合も、図4に示すように、ポケット口210からポケット本体部220を頭部被覆部110の外側に突出させることが可能である。これにより、ポケット本体部220の内側面を乾燥させることができる。
【0055】
一方、図4に示されるように、ポケット口210からポケット本体部220を頭部被覆部110の外側に突出させる場合、ポケット本体部220が着用者700の周囲に存在する障害物、突起物等に衝突することも考えられる。このようなおそれがある場合は、ポケット口210から頭部被覆部110の外側に突出させたポケット本体部220を、図2に示されるように、ポケット口210から頭部被覆部110の内側に没入させることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る防護衣900は、図5に示されるように、ポケット本体部220の外側面に吸湿性部材240が取り付けられている。ここで、吸湿性部材240における吸湿性とは、視覚用窓部150の内面に生じた水滴、水蒸気等による曇りを吸収することで、視覚用窓部150の内面に生じた曇りを除去できる性質をいう。また、ポケット本体部220の外側面とは、ポケット本体部220をポケット口210から頭部被覆部110の内側に没入させた場合における、袋状のポケット本体部220の外側の面をいう。
【0057】
吸湿性部材240は、例えば、布等で形成することができ、さらに具体的には、例えば、東洋紡機能繊維シルフローラ(Silflora)X(テン)を使用することができる。
【0058】
吸湿性部材240は、ポケット本体部220の外側面に接着剤等を使用することで固着させておくことができる。
【0059】
また、吸湿性部材240は、ポケット本体部220の外側面に対して交換可能に構成することも可能である。例えば、ポケット本体部220の外側面に面ファスナーのループを接着剤等で固着させておく。一方で、布製の吸湿性部材240の一方の面に面ファスナーのフックを接着剤等で固着させておく。そして、吸湿性部材240をポケット本体部220に対して取り付ける際には、吸湿性部材240の面ファスナーのフックとポケット本体部220の面ファスナーのループとを結びつけて係合させる。吸湿性部材240をポケット本体部220から取り外す際には、吸湿性部材240の面ファスナーのフックとポケット本体部220の面ファスナーのループとの係合をはずす。このようにして、面ファスナーを利用して、吸湿性部材240をポケット本体部220に対して交換可能に構成することができる。そのため、かかる構成によれば、仮に、吸湿性部材240が汚れたとしても、簡単に新しい吸湿性部材240に交換することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る防護衣900は、図6に示されるように、ポケット本体部220の外側面にワイパー部材250が取り付けられている。ワイパー部材250は、ゴム製であり、視覚用窓部150の内側面に生じた曇りを拭うことができる。
【0061】
ワイパー部材250の、視覚用窓部150の内側面に当接する当接部は、視覚用窓部150の内側面に生じた曇りを掻き取りやすいように、断面が略三角錐形状の掻き取り刃(エッジ)が形成されている。
【0062】
ワイパー部材250を形成するゴムは、弾力性を有するゴムが好ましく、例えば、NRゴム(天然ゴム)、CRゴム(クロロプレンゴム)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)等の合成ゴムを使用することができる。
【0063】
ワイパー部材250は、ポケット本体部220の外側面に接着剤等を使用することで固着させておくことができる。
【0064】
また、ワイパー部材250は、第2の実施形態と同様に面ファスナーを使用することで、ポケット本体部220の外側面に対して交換可能に構成することも可能である。面ファスナーを利用して、ワイパー部材250をポケット本体部220に対して交換可能に構成すれば、仮に、ワイパー部材250の弾性が失われて、水分を掻き取る効果が弱くなってきたとしても、簡単に新しいワイパー部材250に交換することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
第1及び第2の実施形態における防護衣900においては、ポケット口210は、頭部被覆部110の左右の側面部にそれぞれ形成されていた。しかしながら、本発明はそのような実施形態に限定されない。
【0066】
第3の実施形態に係る防護衣900は、図7に示されるように、ポケット口210は、頭部被覆部110の左右のいずれかの側面部のいずれか一方に形成されており、例えば、頭部被覆部110の左側の側面部にポケット口210を形成することができる。
【0067】
本実施形態では、着用者700は、ポケット口210の内部に、左手を挿入し、ポケット口210の内部に挿入した左手で、ポケット本体220を視覚用窓部150の内面に押しつけ、ポケット本体220で視覚用窓部150の内面をぬぐうようにして、視覚用窓部150の内面に生じた曇りを除去する。そのため、第1及び第2の実施形態における防護衣900よりも、ポケット口210からポケット本体部220の内側面の先端部までの深さを、より長く形成することが好ましい。例えば、ポケット口210からポケット本体部220の内側面の先端部までの深さを、着用者700の指の先端から手首付近までの長さとすることが好ましい。
【0068】
本実施形態では、ポケット口210を頭部被覆部110に一つだけ形成するので、防護衣900の構造を簡易化させ、製造コストを低減させることができる可能性がある。
【0069】
(第5の実施形態)
第1、第2及び第3の実施形態における防護衣900においては、ポケット口210は、頭部被覆部110の側面部に形成されていた。しかしながら、本発明はそのような実施形態に限定されない。
【0070】
第4の実施形態に係る防護衣900は、図8に示されるように、ポケット口210は、頭部被覆部110の頭頂部に形成されている。ここで、頭部被覆部110の頭頂部とは、頭部被覆部110における、視覚用窓部150の上端部から垂直頂点部までの範囲における部分をいう。
【0071】
本実施形態では、着用者700は、頭頂部にあるポケット口210の内部に、左手若しくは右手を挿入し、ポケット口210の内部に挿入したいずれかの手で、ポケット本体220を視覚用窓部150の内面に押しつけ、ポケット本体220で視覚用窓部150の内面をぬぐうようにして、視覚用窓部150の内面に生じた曇りを除去する。この第4の実施形態では、第3の実施形態と同様に、ポケット口210からポケット本体部220の内側面の先端部までの深さを、より長く形成することが好ましい。
【0072】
本実施形態では、防護衣900の構造を簡易化させるのみならず、ポケット口210を頭部被覆部110の頭頂部に形成することで、視覚用窓部150の上部付近に生じた曇りを除去しやすいという利点がある。
【0073】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る防護衣900は、図9に示されるように、着用者700が操作をすることでポケット本体部220を操作する、操作アーム部290が形成されている。
【0074】
操作アーム部290は、棒状のアーム本体で構成されており、例えば金属やプラスチック等で形成される。操作アーム部290の一方の端部291は、ポケット本体部の内側面に固着されている。操作アーム部290の他方の端部292は、ポケット口210から露出している。
【0075】
図10に示されるように、着用者700は、他方の端部292を操作することで、視覚用窓部150の内側面に生じた曇りの掻き取り操作をすることができる。
【0076】
図9に示されるように、操作アーム部290の他方の端部292には、棒状のアーム本体よりも幅広形状の把持部が形成されている。把持部は略楕円のリング形状であり、着用者700が把持し易い形状である。なお、把持部の形状は略楕円のリング形状に限定されず、着用者700が把持しやすいものであるならば、円柱状、直方体形状等の種々の形状が可能である。
【0077】
本実施形態のように、操作アーム部290を設ける構成によれば、ポケット口210から着用者700が指乃至手を挿入する必要がなくなるので、ポケット口210を比較的に幅狭に構成することができる。ポケット口210を幅狭に構成すれば、例えば、ポケット口210を幅広く形成するよりも防護衣900の気密性を上昇させることも可能である。また、操作者700は、操作アーム部290の他方の端部292を把持して操作するので、わずかな最小限の動きで視覚用窓部150の内側面に生じた曇りの掻き取り操作ができる。
【0078】
(その他の実施形態)
足被覆部400の接地面に滑り止め部材を設けることも可能である。滑り止め部材としては、例えば、発泡ウレタンからなる薄型のスポンジ板を足被覆部400の接地面に貼り付けることが可能である。また、例えば、ポリウレタン溶液を足被覆部400の接地面に塗布形成することも可能である。さらには、足被覆部400の接地面自体に複数の凸状突起を設け、足被覆部400の接地面の摩擦力を大きくすることも可能である。
このような滑り止め部材は、足被覆部400の接地面の全体に設けることも可能であるし、また、踵部分と土踏まず部分の両方若しくは一方に設けることも可能である。
【0079】
本発明の防護衣900は、生地の内面に抗菌・抗ウィルス材を印刷加工することが可能である。例えば酸化に弱いウィルス・菌の場合はスーパーオキサイド等を発生させる光触媒であるリン酸チタニアを抗菌・抗ウィルス材として用いることができる。また、ウィルス・菌の有する電荷と反対の電荷を帯びた帯電性部材を抗菌・抗ウィルス材として用いることもできる。
【0080】
防護衣900は使い捨てすることが好ましく、使用後は廃棄される。防護衣900は、汚染地域の飛行により汚染された可能性がある場合でも廃棄することが好ましい。また、防護衣900を経済的に使用するため、使い捨てとするのではなく、使用後は洗浄等することにより、複数回の連続使用も可能である。
【符号の説明】
【0081】
110 頭部被覆部
120 胴体被覆部
130 腕被覆部
140 脚被覆部
150 視覚用窓部
190 マスク呼吸器
200 曇り除去部
210 ポケット口
220 ポケット本体部
230 リング部
240 吸湿性部材
250 ワイパー部材
290 操作アーム部
300 手袋
310 着脱口部
400 足被覆部
410 着脱口部
700 着用者
900 防護衣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部を被覆する頭部被覆部を有するとともに、前記頭部被覆部に前記着用者が周囲を認識できる視覚用窓部を有する防護衣であって、
前記視覚用窓部の周辺に形成されたポケット口と、その開口端部が前記ポケット口と一体的に接合されている袋状のポケット本体部と、を有し、前記着用者が前記ポケット口から手を挿入して前記ポケット本体部で前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができる曇り除去部を有する、
ことを特徴とする防護衣。
【請求項2】
前記ポケット口が、前記頭部被覆部の左右の側面部にそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の防護衣。
【請求項3】
前記ポケット口が、前記頭部被覆部の頭頂部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の防護衣。
【請求項4】
前記ポケット本体部の内側面の先端部に、前記着用者の指を挿入して前記指をかけることができるリング部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項5】
前記ポケット本体部は、前記ポケット口から前記頭部被覆部の外側に突出、若しくは、前記ポケット口から前記頭部被覆部の内側に没入可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項6】
前記ポケット本体部の外側面に、吸湿性部材が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項7】
前記吸湿性部材は、前記ポケット本体部に対して交換可能である、
ことを特徴とする請求項6記載の防護衣。
【請求項8】
前記ポケット本体部の外側面に、前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができるワイパー部材が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項9】
前記ワイパー部材は、ゴム製である、
ことを特徴とする請求項8記載の防護衣。
【請求項10】
前記ワイパー部材は、前記ポケット本体部に対して交換可能である、
ことを特徴とする請求項8又は9記載の防護衣。
【請求項11】
前記ポケット口から前記ポケット本体部の内側面の先端部までの深さは、前記着用者の指を挿入できる深さである、
ことを特徴とする請求項2記載の防護衣。
【請求項12】
その一方の端部が前記ポケット本体部の内側面に固着され、その他方の端部は前記ポケット口から露出しており、前記着用者が前記他方の端部を操作することで、前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りの掻き取り操作をする、操作アーム部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項13】
前記操作アーム部は、略棒状のアーム本体を有し、
前記アーム本体の、前記ポケット口から露出している前記他方の端部に、前記着用者が把持する、前記アーム本体よりも幅広形状の把持部を有する、
ことを特徴とする請求項12記載の防護衣。
【請求項14】
前記防護衣は、細菌乃至ウィルスの前記着用者への感染を防護する感染防護衣、化学薬品の前記着用者への汚染を防止する化学防護衣、若しくは、放射線の前記着用者への被爆を防止する放射線防護衣のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の防護衣。
【請求項15】
着用者の頭部を被覆する頭部被覆部に形成され、前記着用者が周囲を認識できる視覚用窓部、の周辺に形成されたポケット口と、
その開口端部が前記ポケット口と一体的に接合されている袋状のポケット本体部と、を有し、
前記着用者が前記ポケット口から手を挿入して前記ポケット本体部で前記視覚用窓部の内側面に生じた曇りを拭うことができる、曇り除去構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−236523(P2011−236523A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108640(P2010−108640)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(390005393)藤倉航装株式会社 (40)
【出願人】(510128568)
【Fターム(参考)】