説明

防錆ライナー紙

【課題】 多層塗工とすることで、硫化水素ガス除去効果に優れた防錆層が得られるようにする。
【解決手段】 シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工して得られた防錆層を有するようにして、硫化水素ガスの除去効果に優れた多孔質珪酸塩鉱物を含む防錆層を有する防錆ライナー紙が得られるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば金属製品の包装等に用いられる防錆ライナー紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、段ボールケースから発生する硫化水素ガスにより、内容物である銅・銀等の金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品が変色するところから、当該変色を防止するために優れた硫化水素ガス除去効果を発揮する防錆層を紙面に形成するという技術が従来から良く知られている。この場合、塗工機により、ガス吸着性防錆剤または気化性防錆剤を紙面に塗工・含浸させたり(特許文献1参照)、抄紙段階で防錆剤を内添することで紙面または紙内部に防錆層を形成する(特許文献2参照)こととされていた。
【0003】
【特許文献1】特開平5−17886号公報。
【0004】
【特許文献2】特開平11−315492号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、塗工機により防錆層を形成する場合、通常単層塗工では塗工量が制限されるという難点があり、抄紙段階で防錆剤を内添することにより防錆層を形成する場合、防錆層が紙面表面に形成されないことがあり、防錆効果が不十分となるおそれがある。
【0006】
本願発明者は、鋭意努力の結果、シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工することにより、硫化水素ガス除去効果に優れた防錆層が得られることに着目し、本願発明を完成するに至ったのである。
【0007】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、多層塗工とすることで、硫化水素ガス除去効果に優れた防錆層が得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工して得られた防錆層を有するようにしている。
【0009】
上記のようにしたことにより、硫化水素ガスの除去効果に優れた多孔質珪酸塩鉱物を含む防錆層を有する防錆ライナー紙が得られることとなる。このようにして得られた防錆ライナー紙を用いて、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品を包装した場合、紙から発生する硫化水素ガスが多孔質珪酸塩鉱物に吸着除去され、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品の変色を効果的に防止することができる。ちなみに、ここで得られる防錆層は、30分の短時間で、100ppm以上の高濃度硫化水素ガスを除去することができる。
【0010】
本願発明の防錆ライナー紙において、前記多孔質珪酸塩鉱物の平均粒径を、2.0〜5.0μmの範囲に設定することもできる。そのようにした場合、粒子間が密になり、吸着面積が大きくなるという作用効果が得られる点で望ましい。
【0011】
また、本願発明の防錆ライナー紙において、前記各防錆層を、前記塗工剤を2.0〜6.0g/m2dry塗工することにより得られるものとすることもできる。そのようにした場合、吸着効果が安定している点で望ましい。
【0012】
さらに、本願発明の防錆ライナー紙において、前記防錆層を、印刷機における印刷ユニットを用いて形成されるものとすることもできる。そのようにした場合、オンラインに塗工できるユニットを複数もっている印刷機を使用することで、1工程で多層塗工ができることとなり、生産性が大幅に向上する。しかも、印刷層と防錆層あるいは防錆層と防湿・耐油・防カビ・抗菌等の他機能を有する層とを1工程で同時に提供することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工して得られた硫化水素ガスの除去効果に優れた防錆層を有するようにして、硫化水素ガスの除去効果に優れた多孔質珪酸塩鉱物を含む防錆層を有する防錆ライナー紙が得られるようにしたので、このようにして得られた防錆ライナー紙を用いて、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品を包装した場合、紙から発生する硫化水素ガスが多孔質珪酸塩鉱物に吸着除去され、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品の変色を効果的に防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本願発明の好適な実施の形態について説明する。
【0015】
本願発明の防錆ライナー紙は、シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工して得られた防錆層を有している。
【0016】
上記多孔質珪酸塩鉱物としては、チャバザイト、モルデナイト、エリオナイト、ホージャサイト、クリノプチロライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、オメガ型ゼオライト等の天然または合成のゼオライト、クリストバライト、セピオライト、モンモリロナイト、キシロタイル、ラフリナイト、パリゴルスカイト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト、ハイドロキシアパタイト等が採用できるが、ここでは、例えばライオナイトSF:ライオン(株)製(シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの中性粉体)が採用されており、その平均粒径は、2.0〜5.0μmの範囲に設定するのが望ましい。そのようにした場合、粒子間が密になり、吸着面積が大きくなるという作用効果が得られる。
【0017】
また、上記ウレタン系エマルジョンとしては、アデカボンタイターHUXシリーズ:旭電化工業(株)製、JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造(株)製等が採用できるが、ここでは、JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造(株)製が採用されている。各防錆層は、前記塗工剤を2.0〜6.0g/m2dry塗工することにより得られるものとするのが望ましい。そのようにした場合、吸着効果が安定するという作用効果が得られる点で望ましい。
【0018】
上記のようにしたことにより、硫化水素ガスの除去効果に優れた多孔質珪酸塩鉱物を含む防錆層を有する防錆ライナー紙が得られることとなる。このようにして得られた防錆ライナー紙を用いて、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品を包装した場合、紙から発生する硫化水素ガスが多孔質珪酸塩鉱物に吸着除去され、金属メッキ製品および樹脂加工製品、繊維加工製品の変色を効果的に防止することができる。ちなみに、ここで得られる防錆層は、30分の短時間で、100ppm以上の高濃度硫化水素ガスを除去することができる。
【0019】
本願発明の防錆ライナー紙における防錆層は、印刷機における印刷ユニットを用いて形成される。そのようにした場合、オンラインに塗工できるユニットを複数もっている印刷機を使用することで、1工程で多層塗工ができることとなり、生産性が大幅に向上する。しかも、印刷層と防錆層あるいは防錆層と防湿・耐油・防カビ・抗菌等の他機能を有する層とを1工程で同時に提供することもできる。
【0020】
次いで、本願発明を、下記に示す実施例1〜4および比較例1〜5に基づいて詳述する。なお、本願発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
実施例1
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は2.0g/m2dryとした。
【0022】
実施例2
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は3.0g/m2dryとした。
【0023】
実施例3
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は5.0g/m2dryとした。
【0024】
実施例4
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で9重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は2.0g/m2dryとした。
【0025】
実施例5
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で8.5重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は2.0g/m2dryとした。
【0026】
実施例6
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に3回行い、塗工量は6.0g/m2dryとした。
【0027】
比較例1
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ライオナイトSF:ライオン株式会社製、平均粒径:2〜5μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に1回行い、塗工量は0.5g/m2dryとした。
【0028】
比較例2
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に活性炭粉末(和光純薬工業株式会社製、平均粒径:5μm)を固形分で40重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に3回行い、塗工量は6.0g/m2dryとした。
【0029】
比較例3
スチレンアクリル樹脂(目止めワニス:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ケスモン10N:東亞合成株式会社製、平均粒径:0.9μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は2.0g/m2dryとした。
【0030】
比較例4
スチレンアクリル樹脂(目止めワニス:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ケスモン10N:東亞合成株式会社製、平均粒径:10μm)を固形分で10重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は2.0g/m2dryとした。
【0031】
比較例5
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ケスモン10N:東亞合成株式会社製、平均粒径:10μm)を固形分で20重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は4.0g/m2dryとした。
【0032】
比較例6
ウレタン樹脂(JW224アクワエコートRSメジウム:東洋インキ製造株式会社製)に多孔質珪酸塩(ザオバタックSAG:大和化学工業株式会社製、平均粒径:10μm)を固形分で15重量%含有させた塗工剤をフレキソ印刷機を用いて紙基材(JKライナー:大王製紙株式会社製、米坪220g/m2)に塗工し、乾燥して防錆ライナー紙を得た。塗工は紙基材の表面に2回行い、塗工量は4.0g/m2dryとした。
【0033】
上記実施例1〜6および比較例1〜6について、下記の項目を測定して評価した。結果は表1に示した。
【0034】
<評価方法>
試料(65mm×65mmに裁断したもの)と硫化水素ガス1L(150ppm)をテドラーバッグに封入し、室温(26.5℃)環境下に静置する。静置30分後、1時間後、3時間後のテドラーバッグ内の硫化水素濃度を検知管で測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
上記結果によれば、ウレタン系樹脂エマルジョンに多孔質珪酸塩を混合して形成された防錆層は、高濃度の硫化水素ガスに対しても優れた吸着除去効果を持ち、2.0〜6.0g/m2dryの塗工範囲で安定した吸着除去効果を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ、アルミナ、金属酸化物で合成された多孔質珪酸塩鉱物をウレタン系樹脂エマルジョンに混合した塗工剤を多層塗工して得られた防錆層を有することを特徴とする防錆ライナー紙。
【請求項2】
前記多孔質珪酸塩鉱物の平均粒径を、2.0〜5.0μmの範囲に設定したことを特徴とする請求項1記載の防錆ライナー紙。
【請求項3】
前記各防錆層を、前記塗工剤を2.0〜6.0g/m2dry塗工することにより得られるものとしたことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の防錆ライナー紙。
【請求項4】
前記防錆層を、印刷機における印刷ユニットを用いて形成されるものとしたことを特徴とする請求項1、2および3のいずれか一項記載の防錆ライナー紙。

【公開番号】特開2006−52501(P2006−52501A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235194(P2004−235194)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】