説明

防雷設備

【課題】放散ワイヤの破損を防止することができる傘型の電荷放散器を備えた防雷設備を提供する。
【解決手段】電荷放散器10Aを接地導線4を介して地面に接地する防雷設備において、電荷放散器10Aは、地面または建築物に立てた金属柱の先端から傘形状に延びる複数のアーム12と、各アーム12を横断するように渦巻状に配置した放散ワイヤ13と、隣り合うアーム12間に設けられ、放散ワイヤ13を横断するように配置した線材14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中にイオンを放散して空中電界を緩和し、建築物等を落雷から保護する防雷設備に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電した雷雲の接近により雷雲と地面との間に電界が形成され、その電界強度が高まっていくと、ついには大気絶縁の破壊に至り、雷雲と大地の間に放電が起こる。これが落雷である。この落雷から保護しようとする建築物またはその周辺に、電荷放散器を備えた防雷設備を設けて、雷雲下部と逆の極性の電荷(イオン)を上空に放散することにより建築物上空の電界を緩和して落雷の発生を遅らせる防雷設備が知られている。
【0003】
従来の電荷放散器を備えた防雷設備としては、この種の電荷放散器には短い金属線を一定間隔で長い別の金属線に固定したもの(以下、放散ワイヤと呼ぶ)が使われている。このような防雷設備は、放散ワイヤを落雷から保護しようとする建築物の屋上に配置し、かつ、その放散ワイヤを接地導線により接地することにより落雷から建築物を保護するものである。
【0004】
ところで、電荷放散器を建築物に設置する従来の方法は、建築物などの最上部に取付用ブラケットを介して設置するが、鉄塔など最上部の面積が小さい場所では、必要数量の放散ワイヤを設置することができなかった。そこで、設置面積の小さい場所に設置できるようにした防雷設備として、特許文献1に記載のように、傘型の電荷放散器を備えたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5043527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の傘型の電荷放散器を備えた防雷設備は、屋外に設置するものであるため、風、着氷や着雪などによって起こる自励振動などにより放散ワイヤが破損するおそれがあった。
【0007】
本発明は、放散ワイヤの破損を防止することができる傘型の電荷放散器を備えた防雷設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電荷放散器を導線を介して地面に接地する防雷設備において、前記電荷放散器は、前記地面または建築物に立てた柱の先端から傘形状に延びる複数のアームと、前記各アームを横断するように渦巻状または略同心円状に配置した放散ワイヤと、隣り合う前記アーム間に設けられ、前記放散ワイヤを横断するように配置した線材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放散ワイヤの破損を防止することができる傘型の電荷放散器を備えた防雷設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は地面に立てた金属柱に電荷放散器を設置した防雷設備を示す概略図、(b)は建築物に立てた金属柱に電荷放散器を設置した防雷設備を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係る防雷設備に備えられた電荷放散器の外観を示す一部省略斜視図である。
【図3】(a)は第1実施形態に係る電荷放散器における放散ワイヤと線材との接合部を示す平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】第1実施形態に係る電荷放散器における放散ワイヤと線材との接合部の変形例を示す平面図である。
【図5】第1実施形態に係る電荷放散器の放散ワイヤの変形例を示す概略図である。
【図6】第2実施形態に係る防雷設備に備えられた電荷放散器の外観を示す一部斜視図である。
【図7】(a)は第2実施形態に係る電荷放散器の放散ワイヤと線材との接合部を示す平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図8】第2実施形態に係る電荷放散器の線材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る防雷設備1について図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る防雷設備1は、金属柱2(柱)、接地導線4(導線)、接地部5、電荷放散器10(10A,10B)を備えて構成されている。この電荷放散器10(イオン放散器またはイオナイザともいう)は、地面に立てた金属柱2の先端に固定され、接地導線4(導線)を介して地面に設けられた接地部5と接続されている。また、防雷設備1は、図1(b)に示すように、建築物3に立てた金属柱2(柱)の先端に電荷放散器10を設ける構成としてもよい。
【0012】
(第1実施形態)
図2に示すように、第1実施形態に係る電荷放散器10Aは、傘形状を呈するものであり、支柱11(柱)に固定された8本のアーム12と、放散ワイヤ13と、線材14とを備えている。なお、アーム12の本数は、8本に限定されるものではなく、7本以下であっても、9本以上であってもよい。なお、図2は、放散ワイヤ13の図示を一部省略している。
【0013】
支柱11は、鉛直方向に延びる円柱状の支持部11aと、この支持部11aの上端に固定されるリング部11bと、を有している。支持部11aの下端部は、金属柱2(図1参照)の上端部に固定されている。リング部11bは、8角柱の筒状に形成され、その外面に前記アーム12が固定される。なお、支持部11aおよびリング部11bは、例えば、ステンレス製のもので形成されている。
【0014】
アーム12は、ステンレスなどの導電性を有する材料で形成され、リング部11bの外面から湾曲しながら降下するように傘形状を呈するように延びて形成されている。また、各アーム12は、等間隔となるように配置されている。なお、アーム12は、強度を確保するために複数の鋼材が組み合わされた構造を有している。また、図2では、アーム12の表側の部分を太い実線で示し、内側の部分を細い実線で示している。また、図示していないが、隣り合うアーム12間を剛性を有する金属製の部材(例えば、棒状のもの)で接続するようにしてもよい。
【0015】
放散ワイヤ13は、ステンレス製の金属線からなるワイヤ部13aに複数の突針部13b(突出部)が等間隔に形成されたものである。突針部13bは、V字形状を呈し、V字形状の屈曲部分(鋭角部分)がワイヤ部13aに固定され、それぞれの自由端が略上向きとなるように配置されている。なお、ワイヤ部13aと突針部13bとは、レーザー溶接などによって互いに固定されている。
【0016】
また、放散ワイヤ13は、各アーム12を横断するように配置され、かつ、渦巻き形状を呈するように配置されている。また、放散ワイヤ13は、隣り合うアーム12間において、上下に位置する放散ワイヤ13の間隔S(図2参照)がほぼ等間隔になるように構成されている。また、放散ワイヤ13は、接地導線4(図1参照)と複数個所(単一箇所であってもよい)において接続されている。
【0017】
なお、本実施形態では、1本の放散ワイヤ13によって、渦巻き形状を呈するように配置した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、複数本の放散ワイヤを用いて、略同心円状に等間隔に配置するものであってもよい。なお、アーム12と放散ワイヤ13とが交差する部分は、溶接または所定の金具などによって固定されている。また、本実施形態では、リング部11bの上部においても、放散部13sが配置されている。このように放散部13sによって放電させる領域を増やすことにより、放電効果を高めることができる。
【0018】
線材14は、例えばステンレスなどの材料で形成され、間隔を置いて配置された放散ワイヤ13を横断するように配置されている。また、線材14は、隣り合うアーム12とアーム12とのほぼ中間に位置するように配置されている。
【0019】
図3(a)に示すように、線材14は、放散ワイヤ13のワイヤ部13aに平行な水平部14aと、ワイヤ部13aに垂直な垂直部14bと、が交互に配置されるジグザグ形状を呈している。また、各水平部14aの長さは同じである。また、各垂直部14bの長さは、隣り合う放散ワイヤ13の間隔とほぼ同じである。
【0020】
このように構成された線材14は、その水平部14aと放散ワイヤ13のワイヤ部13aとがコネクタ15を介して互いに固定されるようになっている。なお、図2では、コネクタ15の図示を省略している。
【0021】
コネクタ15は、例えば金属製のものであり、図3(b)に示すように、断面略C字形状を呈し、切欠き部分から線材14(水平部14a)およびワイヤ部13aを挿入後にかしめることで線材14と放散ワイヤ13とが互いに固定される。
【0022】
なお、線材14は、図2および図3(a)に示す形状に限定されるものではなく、図4に示すように、コ字形状の線材24A,24Bを反転させながら配置し、線材24Aの水平部24aおよび線材24Bの水平部24bと、放散ワイヤ13のワイヤ部13aと、をコネクタ25によって固定するようにしてもよい。なお、コネクタ25は、前記したコネクタ15と同様に金属製のもので、かしめることによって固定することができる。
【0023】
以上説明したように、第1実施形態に係る電荷放散器10Aでは、地面または建築物3に立てた金属柱2の先端から傘形状に延びる複数のアーム12と、各アーム12を横断するように渦巻状に配置した放散ワイヤ13と、隣り合うアーム12間に設けられ、放散ワイヤ13を横断するように配置した線材14と、を備えている。これによれば、線材14を放散ワイヤ13に固定することで放散ワイヤ13の間隔が大きく変動するのを抑制することができるので、自励振動などによって放散ワイヤ13が大きく振動して、放散ワイヤ13が損傷するのを防止できる。
【0024】
また、第1実施形態によれば、線材14を、放散ワイヤ13に平行な水平部14aと、放散ワイヤ13に直交する垂直部14bとが交互に形成されたジグザグ形状にすることで、線材14を放散ワイヤ13にかしめることによって固定する際にかしめる箇所を減らすことが可能になり、製造工程を簡略化することができる。ちなみに、第1実施形態では1箇所であるが、後記する第2実施形態では4箇所必要になる。なお、線材24の場合も同様に、かしめる箇所を減らすことが可能になる。
【0025】
また、第1実施形態によれば、線材14を、放散ワイヤ13に平行な水平部14aと、放散ワイヤ13に直交する垂直部14bとが交互に形成されるジグザグ形状にすることで、放散ワイヤ13の横方向(放散ワイヤ13のワイヤ部13aに沿う方向)の拘束範囲R(図3(a)参照)を広く確保することができるので、自励振動などによる放散ワイヤの振動をより効果的に抑制できる。
【0026】
また、第1実施形態によれば、放散ワイヤ13がV字状の突針部13bを備えているので、突針部13bの取付箇所を増やすことができ、放電効果を向上させることが可能になる。ちなみに、V字状の突針部13bとすることにより、アーム12を横断する放散ワイヤ13の間隔を狭めることができるので、後記する図4に示す直線状の突針部13cに比べて突針部13bの取付箇所を増やすことができる。
【0027】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、図5に示すように、例えば、放散ワイヤ13の変形例として、V字状の突針部13bに替えて直線状の突針部13cを備えた放散ワイヤ13Aとしてもよい。なお、突針部13cとワイヤ部13aとは、レーザー溶接などで互いに固定される。
【0028】
また、前記した実施形態では、線材14,24を金属製の材料で形成することを例に挙げて説明したが、金属製に限定されるものではなく、剛性を有するものであれば、樹脂製のものであってもよい。また、コネクタ15についても、金属製のものでかしめる構成に限定されず、樹脂製のもので嵌合させる構成であってもよい。
【0029】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態に係る電荷放散器10Bは、第1実施形態に係るジグザグ形状の線材14,24に替えて線材34としたものである。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、図6についても、図2と同様に、放散ワイヤ13の図示を一部省略している。
【0030】
線材34は、例えば、ステンレスなどの導電性の材料で形成され、隣り合うアーム12間において、間隔を置いて配置された放散ワイヤ13を横断するように配置されている。また、線材14は、隣り合うアーム12とアーム12との中間に位置するように配設されている。
【0031】
図7(a)に示すように、放散ワイヤ13と線材34とが交差する部分は、金属製のコネクタ35によって互いに固定される。このコネクタ35は、平面視において略十字形状を呈し、一対の第1かしめ部35a,35aと、一対の第2かしめ部35b、35bと、を有し、互いに一体に形成されている。第1かしめ部35a,35aによって放散ワイヤ13が固定され、第2かしめ部35b,35bによって線材34が固定されるようになっている。
【0032】
図7(b)に示すように、第1かしめ部35aは、断面略C字形状を呈し、切欠き部分から放散ワイヤ13を挿入した後にかしめることで放散ワイヤ13を固定する。また、図示していないが、第2かしめ部35bについても同様にして線材34を固定する。
【0033】
以上説明したように、第2実施形態に係る電荷放散器10Bでは、第1実施形態と同様に、線材34によって放散ワイヤ13の間隔が大きく変動するのを抑制することができるので、自励振動などによって放散ワイヤ13が大きく振動して、放散ワイヤ13が損傷するのを防止できる。
【0034】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、図7に示すように、線材34に替えて、放散ワイヤ44としてもよい。この放散ワイヤ44は、放散ワイヤ13と同様のものであり、ワイヤ部44aに複数のV字状の突針部44bを間隔を置いて固定したものである。
【0035】
このように、放散ワイヤ44を備えた電荷放散器10Bによれば、突針部13b,44bの設置領域を増やすことができるので、突針部13bのみの場合よりも放電効果を向上させることができる。
【0036】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、V字状の突針部13b,44bに替えて、直線状の突針部(突出部)としてもよい。
【0037】
また、前記した実施形態では、線材14,24,34,44がステンレスなどの金属製の材料で形成した場合を例に挙げて説明したが、金属製に限定されるものではなく、剛性を有し、放散ワイヤ13が大きく変動するのを防止できるものであればよく、例えば樹脂製のもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 防雷設備
2 金属柱(柱)
3 建築物(構造物)
4 接地導線(導線)
10A,10B 電荷放散器
11 支柱(柱)
12 アーム
13,13A 放散ワイヤ
13a ワイヤ部
13b,13c 突針部(突出部)
14,24,34 線材
14a,24a,24b 水平部
14b 垂直部
15,25,35 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面または構造物に設置され、導線を介して接地される電荷放散器を備えた防雷設備において、
前記電荷放散器は、
前記地面または前記構造物に立てた柱の先端から傘形状に延びる複数のアームと、
前記各アームを横断するように渦巻状または略同心円状に配置した放散ワイヤと、
隣り合う前記アーム間に設けられ、前記放散ワイヤを横断するように配置した線材と、を備えることを特徴とする防雷設備。
【請求項2】
前記線材は、前記放散ワイヤに平行な水平部と、前記放散ワイヤに直交する垂直部とが交互に形成されるジグザグ形状であることを特徴とする請求項1に記載の防雷設備。
【請求項3】
前記線材は、放散ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の防雷設備。
【請求項4】
前記放散ワイヤは、V字状の突出部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防雷設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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