説明

防音エンクロージャの設置方法及び装置

【課題】防音エンクロージャの設置に要する手間を削減すると同時に高い防音性能を達成できるようにする。
【解決手段】組立工場にて、共通台板1とその上に設置したガスタービン発電装置の機器をすべて覆うことができる防音エンクロージャ12を製作する。防音エンクロージャ12を、共通台板1とその上の機器を覆うように配置した状態にて、共通台板1に対し搬送用固定治具17を介し仮固定して防音エンクロージャ12と共通台板1を一体化する。防音エンクロージャ12と共通台板1を搬送して設置場所へ配置する。次いで、防音エンクロージャ12と共通台板1とを基礎2上に固定する。防音エンクロージャ17を共通台板1に仮固定している搬送用固定治具17を取り外して共通台板1から切り離された防音エンクロージャ12で共通台板1とその上の機器を完全に覆う状態とし、外部への騒音の放出を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を発生する機器の周りに防音用のエンクロージャを設置するための防音エンクロージャの設置方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ガスタービン発電装置のような騒音を発生する機器を機器設置現場に据え付けるようにする場合、一般に、基礎側に設置するH形鋼等からなる共通台板(架台)の上面に、上記ガスタービン発電装置を構成するガスタービン、減速機、発電機等の機器を設置するようにし、更に、下方が開放された直方体状の防音エンクロージャを、上記ガスタービン、減速機、発電機等を覆うように設置して、外部へ放出される騒音を低減させるようにしている。
【0003】
この種の防音エンクロージャを設置する従来の方法としては、図5にその一例の概略を示す如く、共通台板1と、該共通台板1の上面に設置してある上記ガスタービン発電装置のガスタービン、減速機、発電機等の機器(図示せず)の全体を防音エンクロージャ3で上方から覆うように、実際の設置現場での現地工事により防音エンクロージャ3を組み立てて、共通台板1と機器の全体を該防音エンクロージャ3の中に収納させた状態にし、この状態で防音エンクロージャ3を基礎2の床上に支持させて設置するようにしたものが提案されている。
【0004】
又、上記防音エンクロージャを設置するための別の方法としては、図6及び図7(イ)(ロ)に示す如く、組立工場において、共通台板1上にガスタービン発電装置のガスタービン、減速機、発電機等の機器(図示せず)を設置し、又、中空角パイプ製の梁材5と柱材6により形成した骨格構造に、パネル材7を張り付けて上記共通台板1と同様の平面形状を備えた防音エンクロージャ4を製作し、更に、該防音エンクロージャ4を、組立工場にて、上記共通台板1に設置してあるガスタービン等の各種機器を上方から覆うよう配置した後、該防音エンクロージャ4の下端部の複数個所を、上記共通台板1の外周縁部上側面に、防振ゴム9を備えた防振支持部材8を介し取り付けて、共通台板1と防音エンクロージャ4とを一体化するようにし、このようにして組立工場にて予め一体化させた上記共通台板1と防音エンクロージャ4を、一緒に車両等を用いて機器設置場所へ搬送し、基礎2上に台板1を固定することにより防音エンクロージャ4を設置するようにしたものも提案されている。
【0005】
更に、上記共通台板1と、該共通台板1に防振支持部材8を介し取り付けてある防音エンクロージャ4を一体化して搬送する際に、防音エンクロージャ4が振れて上記防振支持部材8の防振ゴム9に負担をかけないようにするために、搬送時には、共通台板1に対して、防音エンクロージャ4を、図示しない搬送用ブラケットを介して強固に固定するようにすることも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−138909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載されている図5に示す1つの方法のように、現地工事で共通台板1とその上の機器全体を防音エンクロージャ3の中に収納させた状態に組み立てて、機器設置現場に固定された共通台板1の回りの基礎2上に、防音エンクロージャ3の下端部を固定して設置する場合には、組立工場に比して設備の整っていない環境下で組み立て作業を行わなければならず、品質面やコスト面で問題が生じると共に、防音エンクロージャ3の組立作業に多くの労力と時間を要し、工期が長くなるという問題がある。
【0008】
一方、図6及び図7(イ)(ロ)に示すように、組立工場にて、共通台板1上に防音エンクロージャ4を配置して、該防音エンクロージャ4を、防振ゴム9を備えた防振支持部材8を介して共通台板1上に取り付けて支持させた後、該共通台板1と防音エンクロージャ4を一体化して機器設置現場へ搬送して基礎2上に共通台板1を設置する方法の場合は、上記防音エンクロージャ4を、設備の整った組立工場で製作できるため、上述したように現地工事で防音エンクロージャ3を組み立てる場合に生じていた如き品質面やコスト面の問題を解決できると共に、工期の短縮化を図ることができる。しかし、たとえ防振ゴム9を備えた防振支持部材8を介在させているとしても、共通台板1から防振支持部材8を経て防音エンクロージャ4へ伝達される固体振動を完全に遮断することは難しい。そのために、ガスタービン発電装置を設置する場合に従来要求されていた如き機測1mで85dB(騒音レベル)程度の騒音保障値を満足させることはできるが、最近多く要求されるようになってきている機測1mで75dB(騒音レベル)という騒音保障値を満足させることは難しいというのが実状である。
【0009】
又、特許文献1に記載されている共通台板1上に防音エンクロージャ4を設置するようにしたものでは、共通台板1の外側面部を防音エンクロージャ4で覆うことができないので、共通台板1が外部に露出して、該共通台板1の振動によりH形鋼の窪み部によって反響音が発生する。そのため、遮音材10を設け、更に、カバー11で遮音材10を覆い隠すことが必要とされている。
【0010】
なお、特許文献1には、共通台板1と、該共通台板1に防振支持部材8を介し取り付けてある防音エンクロージャ4を一体化して搬送する際に、共通台板1に対し防音エンクロージャ4を強固に固定する考えは示されているが、これは、搬送時に、防音エンクロージャ4が振れて該防音エンクロージャ4と共通台板1との間に介在させてある防振支持部材8の防振ゴム9に負担がかからないようにするためのものであって、共通台板1の所要の設置場所への設置後に、防音エンクロージャ4を共通台板1より完全に分離させる考えは全く示されておらず、示唆すらされるものではない。
【0011】
そこで、本発明は、防音エンクロージャの設置に要する手間の削減、工期の短縮化を図ることができ、更に、防音エンクロージャの防音性能の更なる向上化を図ることができる防音エンクロージャの設置方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、台板とその上面に設置された機器の全体を覆うようにして該台板に保持させた防音エンクロージャを、上記台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置する防音エンクロージャの設置方法や、台板とその上面に設置された機器の全体を覆うようにした防音エンクロージャを、上記台板に仮固定して、該台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置し、上記台板への仮固定は解除する防音エンクロージャの設置方法とする。
【0013】
又、台板とその上面に設置された機器の全体を覆って収納させた防音エンクロージャを、上記台板に保持させて該台板と一体に搬送できるようにし、且つ上記防音エンクロージャを機器設置現場に設置できるようにした構成を有する防音エンクロージャの設置装置とする。
【0014】
更に、上記防音エンクロージャの設置装置において、防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと台板との間に着脱可能に介在させて、該防音エンクロージャと台板を一体に搬送できるようにした構成としたり、防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと、上記台板に取り付けて防音エンクロージャを貫通させて外方へ突出させた台板吊り金具との間に着脱可能に介在させて、該防音エンクロージャと台板を一体に搬送できるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)台板とその上面の機器全体を覆うようにして該台板に保持させた防音エンクロージャを、上記台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置する防音エンクロージャの設置方法としたり、台板とその上面の機器全体を覆うようにした防音エンクロージャを、上記台板に仮固定して、該台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置し、上記台板への仮固定は解除する防音エンクロージャの設置方法としてあるので、設備の整った組立工場にて防音エンクロージャを製作できると共に、該防音エンクロージャの台板に対する相対位置を保持したまま機器設置現場へ搬入して設置できるため、防音エンクロージャの品質を高めることができる。
(2)上記(1)により、上記台板にサポートを取った配管を、防音エンクロージャに貫通させて配設する場合であっても、組立工場にて、防音エンクロージャの所定位置に予め配設しておくことができ、このことによっても防音エンクロージャの品質を高いものとすることができる。
(3)設置後の防音エンクロージャは、台板とは縁が切られているため、固体振動の伝達を遮断することができると共に、基礎上にて上記所要機器を台板ごと覆っているため、防音性能の向上化を図ることができる。
(4)防音エンクロージャは、組立工場で予め製作して台板と一緒に機器設置現場へ搬送できるため、該防音エンクロージャの設置に要する手間を削減できて、工期の短縮化を図ることができる。
(5)台板とその上面の機器全体を覆って収納させた防音エンクロージャを、上記台板に保持させて該台板と一体に搬送できるようにし、且つ上記防音エンクロージャを機器設置現場に設置できるようにした構成を有する防音エンクロージャの設置装置とすることにより、上記(1)に示した如き防音エンクロージャの設置方法を実施することができる。 (6)防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと台板との間に着脱可能に介在させた構成とすることにより、搬送用固定治具を取り外すことにより防音エンクロージャの台板への仮固定を解除して、該防音エンクロージャを台板より容易に絶縁することができる。
(7)防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと、上記台板に取り付けた台板吊り金具との間に着脱可能に介在させた構成とすることにより、搬送用固定治具の台板側からの取り外しを、台板吊り金具の台板からの取り外しにより行うことができ、このため、上記搬送用固定治具の取り外しに要する手間をより削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3は本発明の実施の一形態を示すもので、ガスタービン発電装置の設置に適用する場合について説明する。
【0018】
組立工場にて、H形鋼等からなる共通台板1上に、ガスタービン発電装置を構成するガスタービン、減速機、発電機等の機器(図示せず)を設置する。又、中空角パイプ製の梁材13と柱材14により形成した骨格構造にパネル材15を張り付け、更に、該パネル材15の内面に、たとえば、ロックウールのような遮音材16を張り付けてなる防音エンクロージャ12を、上記共通台板1よりもやや大きな平面形状、具体的には、上記共通台板1の周りを、たとえば、全周に亘り300mm程度の隙間を隔てて取り囲むことができるようなサイズとして製作する。更に、組立工場において、上記防音エンクロージャ12を、上記共通台板1とその上面に設置されているガスタービン、減速機、発電機等の機器のすべてを完全に上方から覆うよう配置して、共通台板1とガスタービン、減速機、発電機等の機器全体を防音エンクロージャ12に収納させるようにすると共に、上記防音エンクロージャ12の下端部の周方向所要個所(図では6個所)と、共通台板1の外周縁部のそれぞれ対応する個所との間を、仮固定するために搬送用固定治具17で着脱自在に連結して、防音エンクロージャ12を共通台板1に一定間隔で保持させ、共通台板1を一体として搬送できるようにする。
【0019】
詳述すると、上記組立工場で製作された防音エンクロージャ12を、上面にガスタービン発電装置の必要機器が設置してある共通台板1に仮固定して、一体に搬送できるようにするための搬送用固定治具17は、図1(イ)(ロ)に示す如く、一端側の下端部に水平な台板取付座18を有すると共に、他端側の側部に垂直なエンクロージャ取付座19を有してなり、上記エンクロージャ取付座19を、防音エンクロージャ12を構成する所要個所の柱材14の下端部内面に、ボルト20により着脱可能に取り付けるようにし、上記台板取付座18を、共通台板1の、たとえば、幅方向の外周縁部所要個所の上面に、ボルト21により着脱可能に取り付けるようにしてある。これにより、上記防音エンクロージャ12を、上記搬送用固定治具17を介して共通台板1に支持させると同時に強固に固定して、上記共通台板1と防音エンクロージャ12とを、一体化して搬送できるようにすると共に、搬送時に振動や多少の衝撃等が作用しても、上記共通台板1と防音エンクロージャ12との相対位置にずれが生じる虞を防止できるようにしてある。一方、上記各ボルト20及び21を外すようにすれば、上記搬送用固定治具17を、防音エンクロージャ12及び共通台板1のいずれからも取り外すことができて、共通台板1と防音エンクロージャ12との縁を切ることができるようにしてある。
【0020】
更に、上記共通台板1のたとえば、幅方向の外周縁部の複数個所(図では4個所)には、外方へ所要寸法突出するように台板吊り金具22が、ボルト23により取り外し可能に取り付けてある。一方、上記防音エンクロージャ12の下端部には、上記共通台板1に取り付けた台板吊り金具22にそれぞれ対応する個所に、開口部24が設けてあり、該各開口部24を通して上記共通台板1の台板吊り金具22を、防音エンクロージャ12の外方へ突出させるようにしてある。上記台板吊り金具22は、図1(イ)に二点鎖線で示す如く、クレーンの如き搬送装置25の吊り索25aを掛けるようにしてあり、搬送装置25により共通台板1と防音エンクロージャ12を一緒に搬送できるようにしてある。上記防音エンクロージャ12の各開口部24には、蓋24aが開閉可能に備えてあり、図2(ハ)に示す如く、不要時には蓋24aを閉塞できるようにしてある。
【0021】
なお、図示してないが、上記防音エンクロージャ12の所要個所には、共通台板1上に設けてあるガスタービン発電装置のガスタービンの排気ライン、燃料供給ライン、冷却媒体の循環ライン等の各種配管や、発電機からの出力ケーブル、あるいは、ガスタービン発電装置の制御等のための各種ケーブル等を通すようにしてあり、上記ガスタービンの排気ラインのような熱応力が作用するような個所には、適宜ベローズ等を介して外部との取り合いを行うようにしてある。又、ガスタービン発電装置の各種機器のメンテナンスを行うための扉付きの開口部が所要個所に設けてある。又、すべての図は説明の便宜上わかり易く示しているものであり、共通台板1の長さ、幅及び高さ寸法、共通台板1と防音エンクロージャ12との隙間、防音エンクロージャ12を構成する各梁材13及び柱材14の太さ寸法、パネル材15の厚み寸法、防音エンクロージャ12の長さ、幅及び高さ寸法、搬送用固定治具17のサイズ等、各部の大きさは、いずれも実際の寸法を反映するものではない。
【0022】
本発明により防音エンクロージャ12の設置を行うときには、先ず、図1(イ)(ロ)、図2(イ)(ロ)及び図3に示す如く、組立工場等において、設置対象となるガスタービン発電装置のガスタービン、減速機、発電機等の機器を共通台板1上に設置して組み付けた後、該共通台板1とその上面のガスタービン発電装置の機器のすべてを覆うように上方から防音エンクロージャ12を被せる。次いで、共通台板1と防音エンクロージャ12との間に搬送用固定治具17を介在させて、該共通台板1に防音エンクロージャ12を仮固定し、両者を一体化させる。この仮固定は、搬送用固定治具17の一端側を防音エンクロージャ12にボルト20で取り付けると共に、他端側を共通台板1にボルト21で取り付けることにより行う。この際、共通台板1と防音エンクロージャ12との間は作業員が入り得る隙間があるので、仮固定作業は容易にできる。
【0023】
その後、図1(イ)に二点鎖線で示す如く、防音エンクロージャ12の開口部24を通して外部へ突出させた台板吊り金具22にクレーンの如き搬送装置25からの吊り索25aを掛けて吊ることにより共通台板1と防音エンクロージャ12を持ち上げて、そのまま車両(図示せず)に積載し、ガスタービン発電装置の設置場所の近傍位置まで搬送した後、共通台板1と防音エンクロージャ12を吊って車両より降ろし、所定の設置場所となる基礎2上に配置する。
【0024】
次に、共通台板1と防音エンクロージャ12をそれぞれ基礎2に固定することによって防音エンクロージャ12の設置を行い、しかる後、基礎2から共通台板1、搬送用固定治具17を経て防音エンクロージャ12へ振動が伝播することを断つため、防音エンクロージャ12に仮固定している各搬送用固定治具17をすべて取り外して共通台板1と防音エンクロージャ12とを絶縁させるようにして防音エンクロージャ12の設置を完了させるようにする。この際、仮固定の取り外しは、ボルト20,21を外して、図1(ハ)に示す如く、搬送用固定治具17を、防音エンクロージャ12と共通台板1とから取り外すことによって行う。なお、上記搬送用固定治具17を防音エンクロージャ12に対して取り付けているボルト20を弛める際には、たとえば、上記防音エンクロージャ12の下側に、所要の厚み寸法を備えた受け部材26を配設しておくことにより、上記ボルト20に作用している防音エンクロージャ12の荷重を抜くようにすればよい。これにより、上記防音エンクロージャ12は、共通台板1より完全に分離されると共に、該共通台板1上に設けられているガスタービン発電装置の各種機器を、共通台板1ごと完全に覆った状態にて設置場所の基礎2上に配置されることになる。
【0025】
又、上記共通台板1に取り付けてある台板吊り金具22は、ボルト23を外すことにより図2(ハ)に示す如く取り外した後、防音エンクロージャ12の開口部24を蓋24aで閉塞させて、騒音が外部へ漏れないようにする。なお、上記共通台板1及び防音エンクロージャ12の基礎2への固定は、搬送用固定治具17や台板吊り金具22の取り外し後に行うようにしてもよい。
【0026】
このように、本発明の防音エンクロージャの設置方法によれば、設備の整った組立工場にて防音エンクロージャ12を製作できると共に、該防音エンクロージャ12の共通台板1に対する相対位置を保持したまま機器設置現場の基礎2上へ搬送して設置できるため、防音エンクロージャ12の品質を高めることができる。したがって、たとえば、上記のように共通台板1上に、ガスタービン発電装置のガスタービン、減速機、発電機等の機器を設ける場合に、該共通台板1にサポートを取った配管(図示せず)を、防音エンクロージャ12を内外方向に貫通するよう配設する場合であっても、上記組立工場等にて、該配管を防音エンクロージャ12の所定位置に予め配設しておくことができる。しかも、機器設置現場に設置された上記防音エンクロージャ12は、共通台板1に対し所要の隙間を隔てて完全に分離されていて、該共通台板1からの固体振動の伝達を遮断でき、且つ基礎2上にて、ガスタービン発電装置を共通台板1ごと完全に覆っているため、防音性能を高めることができる。又、品質の高い上記防音エンクロージャ12を製作できることに伴い、図6及び図7(イ)(ロ)に示した如き従来の防音エンクロージャ4に比して、使用するパネル材15の厚みを薄くしても、十分な防音性能を得ることが可能になる。これにより、本発明の設置方法により設置する防音エンクロージャ12では、図6及び図7(イ)(ロ)に示した如き従来の防音エンクロージャ4では達成することが困難であった機測1mで75dB(騒音レベル)という騒音保障値を満足させることが可能になる。
【0027】
更に、上記防音エンクロージャ12は、基礎2上に、直接的に設置されるものであるため、図6及び図7(イ)(ロ)に示した防音エンクロージャ4と共通台板1との間に介在させている防振支持部材8の防振ゴム9のように経時劣化する部材を必要とせず、防音エンクロージャ4のメンテナンスに要する手間を削減することも可能になる。
【0028】
次に、図4(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示した実施の形態と同様の構成において、組立工場にて、共通台板1と防音エンクロージャ12を一体化させて搬送できるようにするために防音エンクロージャ12を共通台板1に仮固定させるときに、防音エンクロージャ12と共通台板1との間に、仮固定のための搬送用固定治具17を介在させるようにしたことに代えて、搬送用固定治具17aを、防音エンクロージャ12と台板吊り金具22との間に介在させて、防音エンクロージャ12の強度部材である柱材14に対してはボルト20により着脱可能に取り付けると共に、共通台板1の台板吊り金具22に対してはボルト29により着脱可能に取り付けて、防音エンクロージャ12を台板吊り金具22に仮固定させるようにしたものである。
【0029】
具体的に説明すると、上記搬送用固定治具17aは、上部に水平方向に所要寸法延びる強度部材となるアングル形状のエンクロージャ取付座27を備えて、該エンクロージャ取付座27の長手方向両端部を、それぞれ防音エンクロージャ12の柱材14に、パネル材15を挟持した状態でボルト20により着脱可能に取り付けることができるようにしてあり、又、上記エンクロージャ取付座27の下側面に、防音エンクロージャ12の外側で上記台板吊り金具22の突出部分を挟持できるように2枚のプレート状の吊り金具取付部28を所要間隔を隔てて下向きに取り付けて備え、該吊り金具取付部28の下端部を、上記台板吊り金具22の突出部分を挟むよう位置させて、ボルト29により固定できるようにしてある。これにより、上記搬送用固定治具17aのエンクロージャ取付座27を防音エンクロージャ12に、又、上記吊り金具取付部28を台板吊り金具22にそれぞれボルト止めすることにより、上記防音エンクロージャ12の共通台板1に対する相対位置を、上記搬送用固定治具17a及び台板吊り金具22を介して強固に固定して保持できるようにしてある。
【0030】
なお、上記搬送用固定治具17aの吊り金具取付部28の台板吊り金具22への取り付け位置は、該吊り金具取付部28を台板吊り金具22に取り付けた状態であっても、台板吊り金具22をクレーンの如き搬送装置25の吊り索25a(図1(イ)参照)により吊る作業、及び、該台板吊り金具22を共通台板1に取り付けているボルト23を外して、台板吊り金具22を共通台板1より取り外す作業のいずれにも支承が生じないような位置に設定してある。その他の構成は図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示した実施の形態と同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0031】
本実施の形態によれば、上記防音エンクロージャ12を搬送用固定治具17aを介して台板吊り金具22に、あるいは搬送用固定治具17a及び台板吊り金具22を介して共通台板1に仮固定させるようにするので、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示した実施の形態と同様に、防音エンクロージャ12を共通台板1と一緒に所要の設置場所へ搬送させることができる。その後、上記搬送用固定治具17aの取り外しを行うときには、ボルト20を外して搬送用固定治具17aのエンクロージャ取付座27を防音エンクロージャ12より取り外した状態にて、ボルト23を外して台板吊り金具22を共通台板1から取り外すようにすることにより、上記搬送用固定治具17aと台板吊り金具22を一緒に取り外すことができる。これにより、搬送用固定治具17aと台板吊り金具22の取り外しに要する手間をより削減することが可能になる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示す実施の形態における搬送用固定治具17は、共通台板1と防音エンクロージャ12との相対位置を強固に位置固定でき、且つ必要に応じて取り外すことができるようにしてあれば、共通台板1及び防音エンクロージャ12への取付方法、取付個所、設置個数、形状等は自在に設定してよい。又、図4の実施の形態における搬送用固定治具17aは、該搬送用固定治具17a及び台板吊り金具22を介して共通台板1と防音エンクロージャ12との相対位置を強固に位置固定でき、且つ少なくとも防音エンクロージャ12への取付側を必要に応じて取り外すことができるようにしてあれば、防音エンクロージャ12及び台板吊り金具22への取付方法、取付個所、設置個数、形状等は自在に設定してよい。共通台板1及び防音エンクロージャ12のサイズや形状は、設置すべき機器のサイズや形状に合わせて適宜変更してよい。又、防音エンクロージャ12を共通台板1の周りを覆うよう配置するときに該防音エンクロージャ12が共通台板1に対し非接触状態となるようにしてあれば、上記防音エンクロージャ12と共通台板1との間に形成させる隙間の寸法は、300mmより適宜増減させるようにしてもよい。更に、本発明は、防音エンクロージャにて周りを覆うことにより騒音の放出を抑制することが望まれる機器であれば、コンプレッサー等、ガスタービン発電装置以外のいかなる機器の周りに防音エンクロージャを設置する場合にも適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の防音エンクロージャの設置方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は防音エンクロージャを共通台板に搬送用固定治具を介し仮固定する状態を示す概略切断正面図、(ロ)は(イ)における搬送用固定治具の部分の拡大図、(ハ)は防音エンクロージャと共通台板を設置場所へ搬送した後に搬送用固定治具を取り外した状態を示す(イ)に対応する図である。
【図2】図1の装置を示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は(イ)のA−A方向矢視拡大図、(ハ)は防音エンクロージャと共通台板を設置場所に搬送した後に台板吊り金具を取り外した状態を示す(ロ)に対応する図である。
【図3】図1の切断平面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は防音エンクロージャと台板吊り金具との間に搬送用固定治具を介在させた状態を示す切断側面図、(ロ)は(イ)のB−B方向矢視図である。
【図5】従来実施されている防音エンクロージャの設置方法の概要を示す斜視図である。
【図6】近年提案されている防音エンクロージャの設置方法の概要を示す斜視図である。
【図7】図6における防振支持部材を拡大して示すもので、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)のC−C方向矢視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 台板(共通台板)
2 基礎
12 防音エンクロージャ
17,17a 搬送用固定治具
18 台板取付座
19 エンクロージャ取付座
20 ボルト
21 ボルト
22 台板吊り金具
24 開口部
24a 蓋
27 エンクロージャ取付座
28 吊り金具取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台板とその上面に設置された機器の全体を覆うようにして該台板に保持させた防音エンクロージャを、上記台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置することを特徴とする防音エンクロージャの設置方法。
【請求項2】
台板とその上面に設置された機器の全体を覆うようにした防音エンクロージャを、上記台板に仮固定して、該台板と一緒に機器設置現場へ搬送して基礎側に設置し、上記台板への仮固定は解除することを特徴とする防音エンクロージャの設置方法。
【請求項3】
台板とその上面に設置された機器の全体を覆って収納させた防音エンクロージャを、上記台板に保持させて該台板と一体に搬送できるようにし、且つ上記防音エンクロージャを機器設置現場に設置できるようにした構成を有することを特徴とする防音エンクロージャの設置装置。
【請求項4】
防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと台板との間に着脱可能に介在させて、該防音エンクロージャと台板を一体に搬送できるようにした請求項3記載の防音エンクロージャの設置装置。
【請求項5】
防音エンクロージャを台板に仮固定して保持させる搬送用固定治具を、上記防音エンクロージャと、上記台板に取り付けて防音エンクロージャを貫通させて外方へ突出させた台板吊り金具との間に着脱可能に介在させて、該防音エンクロージャと台板を一体に搬送できるようにした請求項3記載の防音エンクロージャの設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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