説明

防音材とその製造方法及びレールの防音構造

【課題】耐候性及び電気絶縁性に優れ軽量で高高度の防音材によってレールから発生する騒音を低減することができる防音材とその製造方法及びレールの防音構造を提供する。
【解決手段】防音材10A,10Bは、内側吸音材10aと外側吸音材10bとによって騒音を低減する部材であり、レール6aの左右側面との間に各々隙間をあけてまくらぎ2に着脱自在に装着されており、レール6aの振動によってこのレール6aから放射する騒音を低減する。内側吸音材10aは、外側吸音材10bよりも軽い軽量吸音材であって、吸音性に優れた高性能の無機質繊維系、金属繊維系、有機発泡系又はこれらの任意の組み合わせにて形成し、外側吸音材10bは、内側吸音材10aよりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であって、無機質粒子を樹脂結合剤で結合した無機質粒子結合材を用いて形成するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内側吸音材とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材とによって騒音を低減する防音材とその製造方法、及びレールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレールの防音構造は、ゴム又は合成樹脂とモルタルとの混合物からなるモルタル系制振材をレール腹部に接着している(例えば、特許文献1参照)。このような従来のレールの防音構造では、レール上を車両が通過するときにこのレールから発生する振動をモルタル系制振材によって抑制し、レールからの騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52-109206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道では、レールの両側側面にそれぞれ継目板を固定し、このレールの継目部分をこれらの継目板によって連結するレールの継目構造が採用されている。このようなレールの継目構造では、レールの端部同士の接続部に隙間(継目遊間)が形成されているため、鉄道車両の車輪がレールの継目部分を通過するときに衝撃が発生し、レールが振動することによって転動騒音が発生する。
【0005】
従来のレールの防音構造では、モルタル系制振材を接着剤によってレール腹部に固定する必要がある。このため、従来のレールの防音構造では、レールの継目部分に継目板を覆うようにモルタル系制振材を接着剤によって固定すると、レールの交換時や点検時などにモルタル系制振材をレールの継目部分から簡単に取り外すことができず、交換作業や点検作業が困難になる問題点がある。また、従来のレールの防音構造では、制振効果を高めるためにはモルタル系制振材を厚くする必要があり、厚みが増すと重量も増加するため、モルタル系制振材を接着剤によってレールの継目部分に強固に固定することができない問題点がある。
【0006】
この発明の課題は、耐候性及び電気絶縁性に優れ軽量で高高度の防音材によってレールから発生する騒音を低減することができる防音材とその製造方法及びレールの防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図5及び図11に示すように、内側吸音材(10a)とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材(10b)とによって騒音を低減する防音材であって、前記内側吸音材は、前記外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、前記外側吸音材は、前記内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であることを特徴とする防音材(10A,10B)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の防音材において、前記多孔質吸音材は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材であることを特徴とする防音材である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の防音材において、前記内側吸音材は、無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の吸音材であることを特徴とする防音材である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材において、図12、図13、図15及び図16に示すように、前記外側吸音材から外部に放射する騒音を遮る遮音材(10e)を備えることを特徴とする防音材である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の防音材において、前記遮音材は、音源と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側の表面に接合されていることを特徴とする防音材である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材において、図17及び図18に示すように、前記内側吸音材から前記外側吸音材に伝わる騒音を遮る遮音材(10e)を備えることを特徴とする防音材である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の防音材において、前記遮音材は、前記内側吸音材と前記外側吸音材との間に埋め込まれることを特徴とする防音材である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の防音材において、前記遮音材は、合成樹脂系又はゴム系の遮音材であることを特徴とする防音材である。
【0015】
請求項9の発明は、図5、図6、図11及び図12〜図19に示すように、内側吸音材(10a)とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材(10b)とによって騒音を低減する防音材(10A,10B)の製造方法であって、前記内側吸音材は、前記外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、前記外側吸音材は、前記内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であり、前記軽量吸音材の表面を前記多孔質吸音材によって被覆する被覆工程(#100)を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材によって前記軽量吸音材の表面を被覆する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、前記無機質粒子と前記樹脂結合剤とを混合して成形用型内の前記軽量吸音材の周囲に充填し、この樹脂結合剤を硬化させて前記無機質粒子結合材によってこの軽量吸音材の表面を被覆する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0018】
請求項12の発明は、請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の軽量吸音材を前記多孔質吸音材によって被覆する工程を含むことを特徴としている防音材の製造方法である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、図12〜図16に示すように、前記被覆工程は、前記外側吸音材(10b)から外部に放射する騒音を遮る遮音材(10e)によってこの外側吸音材の表面を被覆する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0020】
請求項14の発明は、請求項13に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、音源と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側の表面に前記遮音材を接合する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0021】
請求項15の発明は、請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、図17〜図19に示すように、前記被覆工程は、前記内側吸音材から前記外側吸音材に伝わる騒音を遮る遮音材によってこの内側吸音材の表面を被覆する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0022】
請求項16の発明は、請求項15に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、前記内側吸音材と前記外側吸音材との間に前記遮音材を埋め込む工程を含むことを特徴とする防音材の被覆方法である。
【0023】
請求項17の発明は、請求項13から請求項16までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、前記被覆工程は、合成樹脂系又はゴム系の遮音材によって前記外側吸音材を被覆する工程を含むことを特徴とする防音材の製造方法である。
【0024】
請求項18の発明は、図1、図4、図5、図7、図10及び図11に示すように、レール(6A,6B)の振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材(10A,10B)を備え、前記防音材は、前記レールの側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減することを特徴とするレールの防音構造(9)である。
【0025】
請求項19の発明は、請求項18に記載のレールの防音構造において、図12、図13、図15及び図16に示すように、請求項4から請求項8までのいずれか1項に記載の遮音材(10e)を備え、前記遮音材は、前記レールの側面と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側のこの外側吸音材の表面を被覆すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【0026】
請求項20の発明は、請求項19に記載のレールの防音構造において、図12及び図13に示すように、前記遮音材は、前記外側吸音材と同じ高さであることを特徴とするレールの防音構造である。
【0027】
請求項21の発明は、請求項19に記載のレールの防音構造において、図15及び図16に示すように、前記遮音材は、構造物の構築を制限する軌道上の限界である建築限界(L)の範囲内で前記外側吸音材よりも高いことを特徴とするレールの防音構造である。
【0028】
請求項22の発明は、請求項18に記載のレールの防音構造において、図17及び図18に示すように、請求項7又は請求項8に記載の遮音材(10e)を備え、前記遮音材は、前記レールに近い側の内側吸音材の表面とは反対側の表面を被覆するように、この内側吸音材と前記外側吸音材との間に埋め込まれることを特徴としているレールの防音構造である。
【発明の効果】
【0029】
この発明によると、耐候性及び電気絶縁性に優れ軽量で高高度の防音材によってレールから発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図2】図1のII方向から見た側面図である。
【図3】図1のIII方向から見た側面図である。
【図4】図1のIV方向から見た正面図である。
【図5】図1のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。
【図8】図7のVIII方向から見た側面図である。
【図9】図7のIX方向から見た側面図である。
【図10】図7のX-X線で切断した状態を示す断面図である。
【図11】図7のXI-XI線で切断した状態を示す断面図である。
【図12】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。
【図13】この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
【図14】この発明の第3実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。
【図15】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。
【図16】この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
【図17】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。
【図18】この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
【図19】この発明の第4実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。
【図20】この発明の実施例及び比較例に係る防音材の吸音率の変化を示すグラフである。
【図21】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の振動加速度の時間波形を示すグラフである。
【図22】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の振動速度のFRPの結果を示すグラフである。
【図23】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音の時間波形を示すグラフである。
【図24】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音のFRPの結果を示すグラフである。
【図25】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音レベル値を示すグラフである。
【図26】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の騒音レベルピーク値の走行速度依存性を示すグラフである。
【図27】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の速度40km/hにおける1/3オクターブバンド分析を示すグラフである。
【図28】この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の騒音レベル値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図2は、図1のII方向から見た側面図である。図3は、図1のIII方向から見た側面図である。図4は、図1のIV方向から見た正面図である。図5は、図1のV-V線で切断した状態を示す断面図である。なお、図1〜図5では、左右一対のレールのうち一方のレールのみを図示し、他方のレールについては図示を省略している。
【0032】
図4及び図5に示す車輪1は、図1〜図3に示すレール6A,6Bと回転接触する部材である。車輪1は、レール頭部6aの頭頂面6dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面1aと、脱輪を防止するために車輪1の外周部に連続して形成されたフランジ面1bとを備えている。
【0033】
図1〜図3に示すまくらぎ2は、レール6A,6Bを支持する支持体(支承体)である。まくらぎ2は、左右のレール6A,6Bを固定して軌間を正確に保持し、レール6A,6Bから伝達される列車荷重を道床3に分散させるために、図2及び図3に示すようにレール6A,6Bと道床3との間に設置されている。図1〜図3に示すまくらぎ2は、レール6A,6Bに対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)であり、緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)である。まくらぎ2は、レール6A,6Bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール6A,6Bを離散的に支持している。
【0034】
図2及び図3に示す道床3は、まくらぎ2を支持し路盤に荷重を分散し伝達する構造体である。道床3は、バラスト3aによって構成されたバラスト道床であり、バラスト3aはまくらぎ2と路盤との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。
【0035】
図1及び図5に示すレール締結装置4は、レール6A,6Bをまくらぎ2に締結する装置である。レール締結装置4は、図5に示すように、レール6A,6Bとまくらぎ2との間に挿入されてこれらを電気的に絶縁する弾性体の軌道パッド4aと、レール6A,6Bのレール底部6bの底部上面6e及び底部側面6gを押さえ付けるナイロン製のクリップ4bと、このクリップ4bを底部上面6eに押し付ける薄板ばね鋼の押さえ板ばね4cと、まくらぎ2に埋め込まれた図示しない埋込栓の雌ねじ部と噛み合う締結ボルト4dと、この締結ボルト4dに装着されて押さえ板ばね4cを締め付ける締結ナット4eと、この締結ナット4eと押さえ板ばね4cとの間に挟み込まれる座金4fなどを備えるナブラ型締結装置である。レール締結装置4は、レール6A,6Bをまくらぎ2に押さえ板ばね4cによって締結して、鉄道車両が通過する際に発生する振動を軌道パッド4aによって吸収する。
【0036】
図1に示す継目構造5は、レール6A,6Bの継目部分の両側に継目板7A,7Bを固定して、この継目部分を継目板7A,7Bによって連結する構造である。継目構造5は、例えば、一対の継目板7A,7Bをレール腹部6cに当てて継目板ボルト8a及びナット8bによって組み立て、レール端部を突き合せて接続した普通継目である。継目構造5には、レール6A,6Bの温度伸縮をある程度吸収するために、レール6A,6Bの継目部分の接続部に所定の適正値で隙間(継目遊間)が設定されている。継目構造5は、レール6A,6Bと、継目板7A,7Bと、締結部材8などを備えている。
【0037】
図1〜図5に示すレール6A,6Bは、鉄道車両の車輪1を支持し案内してこの鉄道車両を走行させる部材である。レール6A,6Bは、いずれも同一構造であり端部が直角に切断された状態で間隔をあけて突き合わされている。レール6A,6Bは、図4及び図5に示すように、レール頭部6aと、レール底部(フランジ部)6bと、レール腹部(ウェブ部)6cなどを備えている。レール頭部6aは、鉄道車両の車輪1と接触する部分であり、車輪1を直接支持する頭頂面(頭部上面)6dなどを備えている。レール底部6bは、まくらぎ2上に設置されて取り付けられる部分であり、レール締結装置4のクリップ4bによって押さえ付けられる底部上面6eと、まくらぎ2上に設置される底部下面6fと、レール底部6bの左右の側面部分を構成する底部側面6gなどを備えている。レール腹部6cは、レール頭部6aとレール底部6bとを繋ぐ部分であり、レール頭部6aに作用する輪重及び押圧をレール底部6bに伝達する。レール腹部6cは、継目板7A,7Bを取り付ける腹部側面6hなどを備えている。
【0038】
図1及び図4に示す継目板7A,7Bは、レール6A,6Bの継目部分におけるレール腹部6cの両側面に継目板ボルト8aによって固定されてレール6A,6Bを接続する部材である。継目板7A,7Bは、レール頭部6aの上首部(顎部)と対向する頭部7aと、レール底部6bの上部と対向する底部7bと、頭部7aと底部7bとを繋ぐ腹部7cなどを備えている。
【0039】
図1及び図4に示す締結部材8は、レール6A,6Bの継目部分の両側に継目板7A,7Bを締結する部材である。締結部材8は、継目板ボルト8aとナット8bなどを備えている。継目板ボルト8aは、レール6A,6Bと継目板7A,7Bとを締結するためのボルトであり、レール6A,6B及び継目板7A,7Bの長さ方向に所定の間隔をあけて形成された貫通孔に挿入される。ナット8bは、継目板ボルト8aに装着される部材であり、継目板ボルト8aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が形成されている。
【0040】
図1〜図5に示す防音構造9は、レール6A,6Bの振動によって発生する騒音を低減する構造である。防音構造9は、図1〜図5に示す防音材10A,10Bと、図4に示す防音材10Cと、図1〜図3及び図5に示す固定部材11A,11Bと、図4に示す固定部材11Cなどを備えている。防音構造9は、レール6A,6B上を車両が通過するときに発生する振動によってこのレール6A,6Bから放射する転動騒音を低減する。
【0041】
図1〜図5に示す防音材10A,10Bは、内側吸音材10aとこの内側吸音材10aの表面を被覆する外側吸音材10bとによって騒音を低減する部材である。防音材10A,10Bは、図1、図4及び図5に示すように、レール6A,6Bの側面との間に隙間をあけてまくらぎ2に着脱自在に装着されており、レール6A,6Bの振動によってこのレール6A,6Bから放射する騒音を低減する。防音材10A,10Bは、レール6A,6Bからの騒音を遮る遮音板として機能するとともにこの騒音を吸収する吸音板としても機能し、防音材10Aはレール6A,6Bの外側に配置されており、防音材10Bはレール6A,6Bの内側に配置されている。防音材10A,10Bは、図4に示すように、レール6A,6Bの継目部分の両側面と防音材10A,10Bの内側側面との間に所定の隙間をあけて、図1に示すようにレール6A,6Bの長さ方向に沿ってレール6A,6Bと平行に配置されている。防音材10A,10Bは、図5に示すように、レール6A,6B及びレール締結装置4から離間して電気的に絶縁されており、レール6A,6Bの継目部分を跨ぐように取り付けられた軟銅線からなる図示しないレールボンドからも離間して電気的に絶縁されている。防音材10A,10Bは、鉄道車両が安全に走行するために建築物などが入ってはならない軌道上に確保された空間である建築限界を超えない範囲内に配置されている。図4及び図5に示すように、防音材10Aはレール頭部6aの頭頂面6dと同じ高さになるように配置されており、防音材10Bはレール頭部6aの頭頂面6dよりも僅かに低くなるように配置されている。防音材10A,10Bは、レール6A,6Bの中心から内側及び外側に略同じ長さだけ離れてそれぞれ配置されている。防音材10A,10Bは、図4及び図5に示すように、長さ方向と直交する平面で切断したときの断面が略L字状の部材であり、レール6A,6Bの外側及び内側のいずれの側にも装着可能なように高さ、長さ、幅及び厚さなどが同一寸法に形成されている。防音材10A,10Bは、図5に示すように、内側吸音材10aと外側吸音材10bなどを備えており、全体の重量を軽減するために重い外側吸音材10bの内部に軽い内側吸音材10aを充填している。防音材10A,10Bには、図5に示す固定部材11A,11Bの締結ボルト11bが貫通する貫通孔が形成されている。
【0042】
図5に示す内側吸音材10aは、外側吸音材10bよりも軽い軽量吸音材である。内側吸音材10aは、表面が外側吸音材10bによって被覆されており、外側吸音材10bの内部に充填されている。内側吸音材10aは、外側吸音材10bによって完全に吸収されずにこの外側吸音材10bを通過する騒音を吸収する。内側吸音材10aは、例えば、吸音性に優れた高性能の無機質繊維系、金属繊維系、有機発泡系又はこれらの任意の組み合わせからなる軽量吸音材である。このような無機質繊維系の吸音材としては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどであり、金属繊維系の吸音材としてはアルミニウム繊維、ステンレス繊維又は鉄系合金繊維などであり、有機発泡系の吸音材としてはゴムスポンジ、プラスチックフォーム、ウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレン、ポリウレタンフォーム、発泡ポリスチロール又は天然高分子多孔質体などである。内側吸音材10aとしては、グラスウール、グラスファイバ又はロックウールなどの無機質繊維をフェノール樹脂などで結合し成形した軽量で吸音性能に優れた軽量吸音材が特に好ましい。
【0043】
図1〜図5に示す外側吸音材10bは、内側吸音材10aよりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材である。外側吸音材10bは、内側吸音材10aよりも重い吸音材であり、列車の走行に伴って舞い上がった小石やこの列車から落下した着氷雪などが衝突しても破損しないような硬度を有する多孔質吸音材である。外側吸音材10bは、図3及び図4に示すように、垂直吸音部10cと水平吸音部10dなどを備えている。垂直吸音部10cは、レール腹部6c及び腹部7cとの間に空間を形成するように、レール腹部6c及び腹部7cと対向して垂直方向に伸びた部分である。水平吸音部10dは、レール頭部6a及び頭部7aとの間に隙間を形成するように、この垂直吸音部10cの上端から90°屈曲しこの垂直吸音部10cと一体に水平方向に伸びた部分である。外側吸音材10bは、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材である。
【0044】
無機質粒子としては、例えば、パーライト、珪石粉砕物、珪砂、石灰石粉砕物、砂利、鉱物繊維製造時に発生する粒状物(ショット)、陶磁器粉砕物、ガラスの粉砕物又はこれらの任意の組み合わせからなる混合物などである。無機質粒子は、平均粒径が0.5よりも小さいと微細な気孔を有する成型体しか得られず、吸音特性が好ましくなく、保水性が大きくなって雨水を浴びると長時間吸音性能が低下するため、平均粒径が0.5〜3mm程度のものが好ましい。
【0045】
樹脂結合剤としては、例えば、遮光性無機顔料及びシランカップリング剤を含有する有機結合剤などである。このような樹脂結合剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はこれらの任意の組み合わせからなる反応性樹脂又は熱硬化性樹脂などの樹脂バインダである。シランカップリング剤としては、一般式R(SiOR')3で示されるシラン化合物である。ここで、式中Rは、樹脂結合剤の官能基と反応して化学結合を生じる有機基であり、例えばエポキシ基、アミノ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基などを表し、R'はメチル基、エチル基などの低級アルキル基を表す。エポキシ樹脂又はフェノール樹脂からなる一般的な樹脂結合剤を使用する場合には、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの有機基Rとしてエポキシ基又はアミノ基を有するものである。遮光性無機質顔料としては、ベンガラ、酸化チタン、酸化クロムなどであり、少量の添加で高度の遮光性を発揮し、使用する樹脂結合剤に対して有害な作用を及ぼさず、かつ、耐候性が良いものである。
【0046】
無機質粒子結合材の配合比率は、無機質粒子100重量部を基準にして樹脂結合剤が2〜10重量部、シランカップリング剤が0.02〜0.2重量部、無機質顔料が0.05〜3重量部とすることが好ましい。無機質粒子結合材は、樹脂結合剤中のシランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解して生じたシラノールが無機質粒子の表面のシリカ、金属酸化物、セラミックスなどと反応して化学結合を生じるとともに、シランカップリング剤中のエポキシ基、アミノ基、メタクリル基などが樹脂結合剤中の官能基と反応して結合を生じる。その結果、無機質粒子結合材は、無機質粒子と樹脂結合剤との間にシランカップリング剤による橋架け構造が形成されるため結合が強固になる。無機質粒子結合材は、樹脂結合剤の配合比率や無機質粒子を成形用型に充填するときの圧縮の程度によって気孔率が変化するため、吸音性能の観点から約30〜50%の気孔率の成形体が得られるように成形条件が選定され製造される。
【0047】
図4に示す防音材10Cは、防音材10Aと道床3との間の間隙部から放射される騒音を低減する部材である。防音材10Cは、防音材10Aの下縁部と道床3の上面との間の隙間を塞ぐように、防音材10Aの外側側面に着脱自在に装着される下部スカートである。防音材10Cは、例えば、バラスト3aの表面の凹凸に沿って密着するような柔軟で可撓性及び電気絶縁性を有するニトリルゴム(NBR)製のシートである。防音材10Cには、図4に示す固定部材11Cが貫通する貫通孔が形成されている。
【0048】
図1〜図3及び図5に示す固定部材11Aは、防音材10Aをまくらぎ2に着脱自在に固定する部材であり、固定部材11Bは防音材10Bをまくらぎ2に着脱自在に固定する部材である。固定部材11A,11Bは、レール6A,6B及びレール締結装置4と電気的に絶縁するように、図5に示すようにレール6A,6B及びレール締結装置4から離間してレール締結装置4よりも外側に配置されている。固定部材11A,11Bは、支持部材11aと、締結ボルト11b,11cと、締結ナット11d,11eと、座金11f,11gと、防振材11h,11iなどを備えており、固定部材11Aは防振材11jを備えているが、固定部材11Bはこの防振材11jを備えていない。
【0049】
図5に示す支持部材11aは、防音材10A,10Bを支持する部材である。支持部材11aは、一方の端部に接合部11kを備え、他方の端部に接合部11mを備えている。接合部11kは、防音材10A,10Bの外側吸音材10bと接合する部分であり、この接合部11kには締結ボルト11bが貫通する貫通孔が形成されている。接合部11mは、防振材11iと接合する部分であり、この接合部11mには締結ボルト11cが貫通する貫通孔が形成されている。支持部材11aは、防音材10A,10Bの外側吸音材10bをそれぞれ挟み込むようにこの外側吸音材10bの外側側面と内側側面とに配置されており、外観が略L字状の山形鋼などのアングル材である。支持部材11aは、防音材10Aをまくらぎ2の水平面に取り付ける側の接合部11k,11mについては直角に屈曲しているが、防音材10Bをまくらぎ2の傾斜面に取り付ける側の接合部11k,11mについては互に鋭角又は鈍角に屈曲している。
【0050】
締結ボルト11bは、支持部材11aの接合部11kを固定する部材であり、締結ボルト11cは支持部材11aの接合部11mを固定する部材である。締結ボルト11cの外周部には、まくらぎ2に埋め込まれた電気絶縁性を有する埋込栓の雌ねじ部と噛み合う雄ねじ部が形成されている。締結ナット11dは、締結ボルト11bと噛み合う部材であり、締結ボルト11bに装着されて支持部材11aの接合部11kを外側吸音材10bに押し付けて締結する。締結ナット11eは、締結ボルト11cと噛み合う部材であり、締結ボルト11cに装着されて支持部材11aの接合部11mをまくらぎ2に押し付けて締結する。座金11fは、締結ナット11dと接合部11kとの間に挟み込まれる部材であり、座金11gは締結ナット11eと防振材11hとの間に挟み込まれる部材である。防振材11h〜11jは、防音材10A,10Bとまくらぎ2との間で伝播する振動を低減する部材であり、防振材11hは座金11gと接合部11mとの間に挟み込まれており、防振材11iは接合部11mとまくらぎ2との間に挟みこまれており、防振材11jは防音材10Aとまくらぎ2との間に挟み込まれている。防振材11h,11iは、電気絶縁性を有する柔軟な板状の防振ゴムなどであり、これらの防振材11h,11iには締結ボルト11cが貫通する貫通孔が形成されている。防振材11jは、電気絶縁性を有するゴム発泡体などであり、防音材10Aの下縁部とまくらぎ2の上面との間の隙間を埋める隙間埋め材である。
【0051】
図4に示す固定部材11Cは、防音材10Cを防音材10Aに着脱自在に固定する部材である。固定部材11Cは、防音材10Aの外側吸音材10bの外側側面に取り付けられており、外側吸音材10bの雌ねじ部と噛み合う雄ねじ部を有する止めねじ又はボルトなどである。
【0052】
次に、この発明の第1実施形態に係る防音材の製造方法について説明する。
図6は、この発明の第1実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。
図6に示す被覆工程#100は、軽量吸音材の表面を多孔質吸音材によって被覆する工程であり、混合工程#110と、充填工程#120と、硬化工程#130などを含む。混合工程#110は、無機質粒子と樹脂結合剤とを混合する工程である。混合工程#110では、シランカップリング剤と無機質顔料とを添加した樹脂結合剤を用意し、この樹脂結合剤と無機質粒子とを撹拌混合して、この無機質粒子の表面に樹脂結合剤を均一に付着させる。充填工程#120は、樹脂結合剤が付着した無機質粒子を成形用型内の軽量吸音材の周囲に充填する工程である。充填工程#120では、図1〜図5に示す防音材10A,10Bと内形が同一形状の成形用型内にこの成形用型の内面と間隔をあけて軽量吸音材を配置し、樹脂結合剤が付着した無機質粒子をこの軽量吸音材の表面と成形用型の内面との間に充填する。硬化工程#130は、樹脂結合剤を硬化させる工程である。硬化工程#130では、樹脂結合剤の硬化条件に応じて成形用型を加熱しこの樹脂結合剤を硬化させる。硬化工程#130では、例えば、樹脂結合剤がエポキシ樹脂であるときには80℃で12時間以上保持してエポキシ樹脂を硬化させて、軽量吸音材の表面を無機質粒子結合材によって被覆する。
【0053】
次に、この発明の第1実施形態に係るレールの防音構造の作用を説明する。
図1〜図3に示す継目部分の前後のレール6A,6B上を図4及び図5に示す車輪1が通過すると、レール6A,6Bの継目部分から騒音が発生し、防音材10A,10Bがこの騒音を遮るとともに防音材10A,10Bがこの騒音を吸収する。防音材10A,10Bの外側吸音材10bが多孔質吸音材であるため、この外側吸音材10bの内部では粒子間の隙間が連通しており多孔質の気孔構造が形成されている。このため、レール6A,6Bから外部に放射する騒音が外側吸音材10bの気孔内に進入すると、外側吸音材10b内を騒音が伝播する過程で空気粘性抵抗によって音の振動エネルギーの一部が熱エネルギーとして損失する。また、外側吸音材10bから内側吸音材10aに進入する騒音がこの内側吸音材10aによって吸収されて、レール6A,6Bから外部に放射される騒音が吸収され減衰する。
【0054】
この発明の第1実施形態に係る防音材とその製造方法及びレールの防音構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、内側吸音材10aが外側吸音材10bよりも軽い軽量吸音材であり、外側吸音材10bが内側吸音材10aよりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材である。その結果、重い外側吸音材10bの内部に軽い内側吸音材10aが充填されているため、防音材10A,10B全体の重量が軽くなってまくらぎ2への着脱が容易になり、取り扱いが簡単になって作業性を向上させることができる。また、車両の走行に伴って小石などが舞い上がり防音材10A,10Bの表面に衝突したり、車両に付着した氷塊が落下して防音材10A,10Bの表面に衝突したりしても、外側吸音材10bが硬いため防音材10A,10Bが破損するのを防ぐことができる。さらに、鉄道軌道のような自然環境が厳しく屋外の使用条件下であっても、外側吸音材10bが耐候性及び電気絶縁性を有するため鉄道軌道用防音材として防音材10A,10Bを長期間使用することができる。
【0055】
(2) この第1実施形態では、外側吸音材10bの多孔質吸音材が無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材である。このため、無機質粒子結合材の主材粒子として珪砂などの安価な材料を使用することによって、防音材10A,10Bを低コストで製造することができる。また、無機質粒子結合材が幅広い周波数範囲で良好な吸音性能を有するとともに優れた強度と耐候性も有するため、レール6A,6Bから外部に放射する騒音を低減することができる。さらに、外側吸音材10bが耐候性を有するため紫外線の大部分を遮断して樹脂結合剤が劣化するのを遅らせ、長期間にわたって初期物性を保持することができる。
【0056】
(3) この第1実施形態では、内側吸音材10aが無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の吸音材である。このため、外側吸音材10bに比べて内側吸音材10aが軽くなり、防音材10A,10B全体の軽量化を図ることができる。また、外側吸音材10bから内側吸音材10aに進入する騒音をこの内側吸音材10aによって吸収することができる。
【0057】
(4) この第1実施形態では、内側吸音材10aが外側吸音材10bよりも軽い軽量吸音材であり、外側吸音材10bが内側吸音材10aよりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であり、この軽量吸音材の表面をこの多孔質吸音材によって被覆する被覆工程#100を含む。このため、軽量で着脱作業が容易な防音材10A,10Bを簡単に製造することができる。また、従来のセラミックス系の吸音材などに比べて内部を刳り貫き軽量化を図るような煩雑で手間のかかる作業を省略することができる。
【0058】
(5) この第1実施形態では、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材によって前記軽量吸音材の表面を被覆する工程を含む。このため、耐候性に優れ硬質の無機質粒子結合材によって軽量吸音材の表面を被覆して軽量吸音材を保護することができるとともに、無機質粒子結合材を中抜きして軽量吸音材を詰め込むことで防音材10A,10Bの重量を軽減することができる。
【0059】
(6) この第1実施形態では、無機質粒子と樹脂結合剤とを混合して成形用型内の軽量吸音材の周囲に充填し、この樹脂結合剤を硬化させて無機質粒子結合材によってこの軽量吸音材の表面を被覆する工程を含む。このため、成形用型を使用して無機質粒子結合材の内部に軽量吸音材を簡単に充填し、型成形によって防音材10A,10Bを短時間に製造することができる。
【0060】
(7) この第1実施形態では、無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の軽量吸音材を多孔質吸音材によって被覆する工程を含む。このため、多孔質吸音材から軽量吸音材に進入する騒音を吸音性能の優れた軽量吸音材によって吸収することができる。
【0061】
(8) この第1実施形態では、防音材10A,10Bがレール6A,6Bの側面との間に隙間をあけて騒音を低減する。このため、レール6A,6Bと防音材10A,10Bとの間の空間に騒音を閉じ込めることができるとともに、防音材10A,10Bの外側吸音材10bからの放射音の音響インピーダンスを低減させて、レール6A,6B自体の放射音パワーを減少させ防音効果を向上させることができる。また、レール6A,6Bの側面と防音材10A,10Bとの間に間隙部が形成されるため、レール6A,6Bの状態を間隙部から目視で簡単に確認することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図7は、この発明の第2実施形態に係るレールの防音構造の平面図である。図8は、図7のVIII方向から見た側面図である。図9は、図7のIX方向から見た側面図である。図10は、図7のX-X線で切断した状態を示す断面図である。図11は、図7のXI-XI線で切断した状態を示す断面図である。以下では、図1〜図5に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図7〜図11に示す防音材10A,10Bは、図1〜図5に示す防音材10A,10Bとは異なり、スラブ版12に着脱自在に装着されている。スラブ版12は、レール6A,6Bを支持する支持体(支承体)である。スラブ版12は、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなる軌道スラブであり、有道床軌道の保守作業を軽減するために道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種であるスラブ軌道区間において、路盤コンクリートとレール6A,6Bとの間に設置されている。
【0064】
図7〜図10に示す固定部材11Aは、防音材10Aをスラブ版12に着脱自在に固定する部材であり、固定部材11Bは防音材10Bをスラブ版12に着脱自在に固定する部材である。固定部材11A,11Bは、図7〜図10に示す取付部材11nと、図7〜図9に示す締結ボルト11pと、締結ナット11qと、座金11rと、図8及び図9に示す防振材11sと、図8、図9及び図11に示す防振材11tなどを備えている。取付部材11nは、防音材10A,10Bをスラブ版12に着脱自在に取り付ける部材である。取付部材11nは、図7に示すように、平面形状が略L字状に形成された板状の鋼板であり、スラブ版12と防振材11iとの間に挟み込まれている。図7〜図9に示す締結ボルト11pは、取付部材11nをスラブ版12に固定する部材であり、締結ボルト11pの外周部にはスラブ版12に埋め込まれた図示しない埋込栓の雌ねじ部と噛み合う雄ねじ部が形成されている。締結ナット11qは、締結ボルト11pと噛み合う部材であり、締結ボルト11pに装着されており、座金11rは締結ナット11qと防振材11sとの間に挟み込まれる部材である。図8、図9及び図11に示す防振材11s,11tは、防音材10A,10Bとスラブ版12との間で伝播する振動を低減する部材である。図8及び図9に示す防振材11sは、座金11rと接合部11mとの間に挟み込まれている。防振材11sは、電気絶縁性を有する柔軟な板状の防振ゴムなどであり、防振材11sには締結ボルト11pが貫通する貫通孔が形成されている。図8、図9及び図11に示す防振材11tは、防音材10A,10Bの下縁部とスラブ版12の上面との間の隙間を埋める隙間埋め材であり、電気絶縁性を有するゴム発泡体などである。
【0065】
図7及び図10に示すレール締結装置13は、レール6A,6Bをスラブ版12に締結する装置である。レール締結装置13は、図10に示すように、タイプレート13aと、締結ばね13bと、締結ボルト13c,13eと、締結ナット13d,13fと、軌道パッド13gと、調節パッキン13hと、調整鋼板13iと、絶縁板13jと、座金13kと、ばね座金13mと、平座金13n,13pと、絶縁カラー13qと、カバープレート13rなどを備えている。タイプレート13aは、レール6A,6Bとスラブ版12との間に挿入されてレール6A,6Bの横方向の移動を規制する部材であり、締結ばね13bはレール6A,6Bのレール底部6bの底部上面6eを押さえ付けて締結する部材である。締結ボルト13cは、締結ばね13bを締め付ける部材であり、締結ナット13dはこの締結ボルト13cに締結される部材である。締結ボルト13eは、スラブ版12に埋め込まれた埋込栓の雌ねじ部と噛み合ってタイプレート13aをスラブ版12に固定する部材であり、締結ナット13fはこの締結ボルト13eに締結される部材である。軌道パッド13gは、レール6A,6Bとスラブ版12との間に挿入する絶縁性の弾性体であり、調節パッキン13hはレール6A,6Bとスラブ版12との間に挿入してレール6A,6Bの上下位置を調節する部材である。調整鋼板13iは、スラブ版12とタイプレート13aとの間に挿入されてレール6A,6Bの上下位置を調整する部材であり、絶縁板13jはスラブ版12と調整鋼板13iとの間に挿入されてこれらの間を電気的に絶縁する部材であり、座金13kは締結ばね13bと締結ナット13dとの間に挟み込まれる部材である。ばね座金13mは、締結ナット13fの緩みを防止する部材であり、平座金13nは締結ナット13fとばね座金13mとの間に挟み込まれる部材であり、平座金13pはばね座金13mと絶縁カラー13qとの間に挟み込まれる部材である。絶縁カラー13qは、レール6A,6Bとスラブ版12とを電気的に絶縁する部材であり、平座金13pとカバープレート13rとの間に挿入されており、カバープレート13rはタイプレート13aと絶縁カラー13qとの間に挿入される部材である。レール締結装置13は、レール底部6bとタイプレール13aとの間に軌道パッド13gを挟み込み、締結ばね13bによってレール6A,6Bをスラブ版12に締結して、鉄道車両が通過する際に発生する振動を吸収する。この第2実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0066】
(第3実施形態)
図12は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。図13は、この発明の第3実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
図12及び図13に示す防音材10A,10Bは、遮音材10eを備えており、遮音材10eは外側吸音材10bから外部に放射する騒音を遮る部材である。遮音材10eは、音源と対向する側(音源に近い側)の外側吸音材10bの表面(垂直吸音部10c)とは反対側(音源から遠い側)の表面に接合されている。遮音材10eは、レール6の側面と対向する側の外側吸音材10bの表面(正面)とは反対側(レール6から遠い側)のこの外側吸音材10bの表面(背面)を被覆するように、この外側吸音材10bの背面と略同一の大きさに形成されており、この外側吸音材10bに装着されている。遮音材10eは、この遮音材10eの上縁部が外側吸音材10bの水平吸音部10dと一致するように、外側吸音材10bと同じ高さで形成されている。遮音材10eは、合成樹脂系又はゴム系の遮音材であり、遮音性及び電気絶縁性を有する不透明、透明又は半透明の硬質樹脂製又は硬質ゴム製の遮音板である。このような遮音板としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエステル、エポキシ、ポリエチレン又はポリスチレンなどの硬質樹脂板、スチレンブタジエン系ゴム又はエボナイトなどの硬質ゴム板などが好ましい。遮音材10eは、厚みが2mmを下回ると遮音性能が低下し、厚みが10mmを超えると軌道上に敷設するときに制約となるため、厚みを2〜10mm程度に形成することが好ましい。遮音材10eは、例えば、常温でヤング率が通常のゴムの2倍以上の50MPa以上であることが好ましい。遮音材10eは、外側吸音材10bの背面に接着剤などによって貼り付け固定するときには、外側吸音材10bとの間に接着材層が形成されている。この接着材層としては、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系などの反応型接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、変性アクリル樹脂系などのエマルジョン型接着剤、クロロプレンやシリコンなどの合成ゴム型接着剤、エラストマー系、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系などのホットメルト型接着剤などによって形成することが好ましい。
【0067】
次に、この発明の第3実施形態に係る防音材の製造方法について説明する。
図14は、この発明の第3実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。以下では、図6に示す工程と同一の工程については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図14に示す被覆工程#100は、図12及び図13に示す遮音材10eによって外側吸音材10bを被覆する工程を含み、図14に示すように接合工程#140を含む。接合工程#140は、図12及び図13に示すように、音源と対向する外側吸音材10bの表面とは反対側の表面(背面)に遮音材10eを接合する工程である。接合工程#140では、硬化工程#130後の無機質粒子結合材の背面に接着剤を塗布しこの無機質粒子結合材の背面と遮音材10eの一方の表面とを接着剤によって接合し、無機質粒子結合材に遮音材10eを積層する。
【0068】
この発明の第3実施形態に係る防音材とその製造方法及びレールの防音構造には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、外側吸音材10bから外部に放射する騒音を遮音材10eが遮る。また、この第3実施形態では、外側吸音材10bから外部に放射する騒音を遮る遮音材10eによってこの外側吸音材10bの表面を被覆する工程を被覆工程#100が含む。このため、外側吸音材10bによって吸収されずにこの外側吸音材10bから外部に放射しようとする騒音を遮音材10eによって遮り、防音材10A,10Bの遮音性能をより一層向上させることができる。
【0069】
(2) この第3実施形態では、音源と対向する側の外側吸音材10bの表面とは反対側の表面に遮音材10eが接合されている。また、この第3実施形態では、音源と対向する側の外側吸音材10bの表面とは反対側の表面に遮音材10eを接合する工程を含む。このため、外側吸音材10bに簡単に遮音材10eを装着して防音材10A,10Bの遮音性能をより一層向上させることができる。また、外側吸音材10bの吸音材上面10dには遮音材10eが接合されていないため、防音材10Aとレール6A,6Bとの間の隙間から沿線の高所空間に向かって放射する騒音をこの吸音材上面10dによって吸収することができる。
【0070】
(3) この第3実施形態では、遮音材10eが合成樹脂系又はゴム系の遮音材である。また、この第3実施形態では、合成樹脂系又はゴム系の遮音材10eによって外側吸音材10bを被覆する工程を含む。このため、外側吸音材10bから外部に放射する騒音を安価で簡単な構造の遮音材10eによって容易に遮ることができる。
【0071】
(4) この第3実施形態では、レール6A,6Bの側面と対向する側の外側吸音材10bの表面とは反対側のこの外側吸音材10bの表面を遮音材10eが被覆する。このため、レール6A,6Bから外部に放射する騒音をより一層低減することができる。
【0072】
(5) この第3実施形態では、遮音材10eが外側吸音材10bと同じ高さである。このため、外側吸音材10bの表面から外部に放射する騒音を遮音材10eによって広範囲で遮ることによって騒音を低減することができる。
【0073】
(第4実施形態)
図15は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。図16は、この発明の第4実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
図15及び図16に示す建築限界Lは、構造物の構築を制限する軌道上の限界であり、鉄道車両が安全に走行するために建築物などが入ってはならない軌道上に確保された空間である。防音材10Aは、図15及び図16に示すように、図12及び図13に示す防音材10Aとは異なり、遮音材10eが建築限界Lの範囲内で外側吸音材10bよりも最大で20mm程度高く形成されている。一方、防音材10Bは、図15及び図16に示すように、図12及び図13に示す防音材10Bと同様に遮音材10eが外側吸音材10bと同じ高さで形成されている。
【0074】
この発明の第4実施形態に係る防音材とその製造方法及びレールの防音構造には、第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第4実施形態では、遮音材10eが建築限界Lの範囲内で外側吸音材10bよりも高い。このため、防音材10Aとレール6A,6Bとの間の隙間から沿線の高所空間に向かって放射する騒音を、外側吸音材10bの吸音材上面10dから突出する遮音材10eによって遮り、この沿線の高所空間における騒音をより一層低減することができる。
【0075】
(第5実施形態)
図17は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材をまくらぎに装着した状態を示す縦断面図である。図18は、この発明の第5実施形態に係るレールの防音構造における防音材をスラブ版に装着した状態を示す縦断面図である。
図17及び図18に示す遮音材10eは、内側吸音材10aから外側吸音材10bに伝わる騒音を遮る部材である。遮音材10eは、音源に近い側の内側吸音材10bの表面(正面)とは反対側(音源から遠い側)の表面(背面)を被覆するようにこの内側吸音材10aの裏面に接合されている。遮音材10eは、外側吸音材10bから内側吸音材10bに雨水が浸入するのを防ぐために、この内側吸音材10aの背面とともに上面も被覆するようにこの内側吸音材10aの背面及び上面に接合されている。遮音材10eは、内側吸音材10aの背面及び上面と略同一の大きさに形成されており、長さ方向と直交する平面で切断したときの断面が略L字状の薄板状の部材である。遮音材10eは、内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間に埋め込まれており、これらの内側吸音材10a及び外側吸音材10bと一体に形成されている。遮音材10eは、内側吸音材10aの背面及び上面に接着剤などによって貼り付け固定するときには、内側吸音材10aとの間に接着材層が形成されている。
【0076】
次に、この発明の第4実施形態に係る防音材の製造方法について説明する。
図19は、この発明の第4実施形態に係る防音材の製造方法を説明するための工程図である。
図19に示す被覆工程#100は、図17及び図18に示す遮音材10eによって内側吸音材10aを被覆する工程を含み、図19に示すように埋設工程#150を含む。埋設工程#150は、図17及び図18に示すように、内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間に遮音材10eを埋め込む工程である。埋設工程#140では、軽量吸音材の背面及び上面に接着剤を塗布しこの軽量吸音材の背面及び上面と遮音材10eの一方の表面とを接着剤によって接合し、軽量吸音材に遮音材10eを積層する。充填工程#120では、図17及び図18に示す防音材10A,10Bと内形が同一形状の成形用型内にこの成形用型の内面と間隔をあけて、遮音材10eが接合された軽量吸音材を配置し、樹脂結合剤が付着した無機質粒子をこの軽量吸音材の表面及び遮音材10eの表面と成形用型の内面との間に充填する。硬化工程#130では、例えば、樹脂結合剤がエポキシ樹脂であるときには80℃で12時間以上保持してエポキシ樹脂を硬化させて、軽量吸音材の表面及び遮音材10eの表面を無機質粒子結合材によって被覆し、軽量吸音材と無機質粒子結合材との間に遮音材10eが埋設される。
【0077】
この発明の第4実施形態に係る防音材とその製造方法及びレールの防音構造には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、内側吸音材10aから外側吸音材10bに伝わる騒音を遮音材10eが遮る。また、この第4実施形態では、内側吸音材10aから外側吸音材10bに伝わる騒音を遮る遮音材10eによってこの内側吸音材10aの表面を被覆する工程を被覆工程#100が含む。このため、内側吸音材10aによって吸収されずにこの内側吸音材10aから外側吸音材10bに向かう騒音を遮音材10eによって遮り、外側吸音材10bから外部に放射する騒音を低減することができる。
【0078】
(2) この第4実施形態では、内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間に遮音材10eが埋め込まれている。また、この第4実施形態では、内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間に遮音材10eを埋め込む工程を含む。このため、内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間に簡単な工程で遮音材10eを埋め込むことによって、防音材10A,10Bの遮音性能をより一層向上させることができる。
【0079】
(3) この実施形態では、レール6A,6Bに近い側の内側吸音材10aの表面とは反対側の表面を遮音材10eが被覆するように、この内側吸音材10aと外側吸音材10bとの間にこの遮音材10eが埋め込まれている。このため、レール6A,6Bから外部に放射する騒音をより一層低減することができる。
【実施例】
【0080】
次に、この発明の実施例について説明する。
(吸音性能に関する試験結果)
レールからの放射音を低減するためには、レール側に吸音材料を配置し、この吸音材料の外側に遮音材料を配置することが有効であると考えられる。そこで、内層に電気絶縁性を有する無機質粒子結合材を備え、外層に電気絶縁性を有する高分子材料製の遮音板(厚さ:3mm、材質:アクリル、色:白色、商品名:住友化学株式会社製のスミペックス(SUMIPEX)、品番:E064)を備える実施例に係る防音材を試作した。内層の無機質粒子結合材は、ケイ砂を少量(全体の4mass%程度)のエポキシ樹脂で結合した多孔質材であり、吸音性能を有することが確認されている。主材に高強度及び高耐久性材のケイ砂を用い、結合材にも高分子材料としては高強度なエポキシ樹脂を用いているため、無機質粒子結合材は吸音材の中では高い強度及び耐久性を有することが期待される。また、実施例では、軽量化及び吸音性能の向上を目的として、図5、図11、図12、図13及び図15〜図18に示すように、無機質粒子結合材の内部に一般的な吸音材であるグラスウールを配置した。
【0081】
図20は、この発明の実施例及び比較例に係る防音材の吸音率の変化を示すグラフである。
図20に示す縦軸は、垂直入射吸音率であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、吸音率の極大値は、厚さ50mmの場合に転動音の大きな周波数成分である1kHz付近となることが過去の試験結果から確認されている。このため、図20に示す実施例は、厚さ12.5mmの2枚の無機質粒子結合材の間に厚さ25mmのグラスウールを挿入し、無機質粒子結合材とグラスウールとを組合わせた合計厚さ50mmの防音材である。比較例は、厚さ50mmの無機質粒子結合材のみからなる防音材である。実施例に係る防音材は、グラスウールを内部に配置するため、比較例に係る防音材に比べて重量が約35%減少している。図20に示すグラフは、内径約90mm、長さ約1mの円筒内にスピーカで定在波を発生させて、2伝達関数法(2マイクロ法)によって実施例及び比較例に係る防音材の垂直入射吸音率を測定したときの測定結果である。図20に示すように、比較例に係る防音材は1kHz付近に吸音率の極大値を有しているが、実施例に係る吸音材は比較例に比べて全周端数帯で吸音率が高く、特に1kHz以下の低周波側で吸音率が高く、吸音性能が向上することが確認されれた。また、実施例に係る防音材は、2kN以上の耐荷重性を有することを確認しており、実施例に係る防音材に保守作業者が工具を持って頻繁に乗っても破損しない強度を有することが確認された。さらに、財団法人鉄道総合技術研究所の日野土木実験所内の試験スラブ軌道のレール継目部に実施例に係る防音材を試験的に敷設しアナログ絶縁抵抗計を用いて電気絶縁性能の測定を行った。その結果、実施例に係る防音材は、常態において電気絶縁性能を保持するとともに、散水後も防音材表面の水分が速やかに流出し、この状態においても電気絶縁性能を示すため、絶縁継目間の電気絶縁性に支障がないことが確認された。
【0082】
(衝撃加振に関する試験結果)
日野土木実験所内の試験スラブ軌道のレール継目部に実施例に係る防音材を設置し、インパルスハンマーを用いて衝撃加振試験を実施した。実施例に係る防音材を設置しない場合(以下、現状レールという)及び実施例に係る防音材を設置した場合(以下、防音材設置という)について、インパルスハンマー(リオン株式会社製、形式:PH61)によってレールを加振したときのレール近傍の騒音を測定した。測定対象は、レールの外側(外軌側レール)の振動加速度及び放射音とし、加振点はレールの外側の継目近傍で中央付近のレール頭頂面とし、加振方向は鉛直方向とした。衝撃加振に際して加振力をインパルスハンマー、振動加速度を圧電型ピックアップ(リオン株式会社製、形式:PV94)、放射音を普通騒音計(リオン株式会社製、形式: NL04)によって測定した。振動加速度の測定点は、加振点直下のレール底部(以下、振動加速度測定点V1という)及び防音材設置時の遮音板(外層)の中央位置(以下、振動加速度測定点V2という)とした。放射音測定点は、レール長手方向に関して継目部の中心位置、直角方向に関して軌道中心から2m離れた位置で高さの異なる2点とした。2点の高さは、レールレベルから約0.45m上方(以下、放射音測定点S1という)と、レールレベル(以下、放射音測定点S2という)とした。これらの測定点位置は、これまでの鉄道沿線騒音の測定において標準的な測定点位置に相当するものである。加振力、振動加速度及び放射音は、いずれも多チャンネル分析器(リオン株式会社製、形式:SA01)を用いて周波数重み特性FLAT、時定数FASTで収集及び解析した。振動加速度は、時間波形を記録して時間微分及び周波数解析し、加振力で正規化して振動速度の周波数応答関数(Frequency Response Function(FRF))を求めた。また、放射音についても放射音圧の時間波形を記録して周波数解析し、さらに加振力で正規化してFRFを求めた。FRFの解析周波数領域は、振動速度、放射音ともに100Hz〜10kHzとし、この範囲の帯域総和値(A.P.)値を求めた。なお、振動速度及び放射音ともにFRFの結果は、dB値で求めたがその基準(0dB)を振動速度:1(m/s)/N、放射音:2ラ10-5Pa/Nとした。衝撃加振試験は、メンテナンス製と音響性能のバランスの中で適正な構造を求める目的のもと、レールと防音材との隙間による放射音の影響、レールの内側の防音材の有無による影響及び構造の簡素化を検討するため、以下の表1に示す試験条件で実施した。ここで、表1に示す内軌側は、レールの内側に防音材を設置した場合であり、外軌側はレールの外側に防音材を設置した場合である。
【0083】
【表1】

【0084】
図21は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の振動加速度の時間波形を示すグラフである。図22は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の振動速度のFRPの結果を示すグラフである。なお、FRPの試験結果については、現状レールと防音材設置ともに10回加振した際の算術平均値を求めた。
図21に示す縦軸は、振動加速度/加振力((m/s2)/N)であり、横軸は時間(ms)である。図22に示す縦軸は振動速度のFRP(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。図21及び図22に示す現状レールは、防音材を設置しなかった場合の試験結果であり、防音材設置(V1)は表1に示す試験No.1の振動加速度測定点V1における試験結果であり、防音材設置(V2)は表1に示す試験No.1の振動加速度測定点V2における試験結果である。図21に示す時間波形は、振動加速度を加振力の最大値で正規化した値である。試験結果より、現状レールと試験No.1の振動加速度測定点V1での振動加速度を比較すると、時間波形、FRFともに防音材の設置前後の差は小さく、防音材を設置したことによるレール振動への影響は小さいことが認められた。一方、防音材設置時の遮音板(外層)の振動加速度測定点V2の振動は、防音材が軌道スラブに防振ゴムを介して防振支持する構造であるため、振動加速度測定点V1の振動と比較して、時間波形、FRFともに顕著に小さくなっていることが認められた。この結果より、レールの振動時においても防音材自体は振動が小さく、それ自体からの放射音の影響は無視できる程度小さいものであることが確認された。
【0085】
図23は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音の時間波形を示すグラフである。図24は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音のFRPの結果を示すグラフである。
図23に示す縦軸は、放射音圧/加振力(Pa/N)であり、横軸は時間(ms)である。図24に示す縦軸は放射音圧のFRP(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。図23及び図24に示す現状レールは、防音材を設置しなかった場合の試験結果であり、防音材設置後は表1に示す試験No.1の試験結果であり、図23に示す時間波形は放射音圧を加振力の最大値で正規化した値である。図7に示すように、放射音測定点S1では防音材を設置したことによって加振直後より低減することが確認された。また、図8に示すように、防音材を設置したことによって放射音の低減周波数域は、約1kHz以上の範囲であることが確認された。その結果、レールが衝撃加振された際に発生する放射音に対して、防音材が主として高周波数範囲で低減効果を有することが確認された。
【0086】
図25は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の放射音レベル値を示すグラフである。
図25に示す縦軸は、放射音レベルのA.P.値 (dB)であり、横軸は表1に示す試験No.である。図25に示すように、放射音測定点S1の場合と放射音測定点S2の場合のそれぞれについて、現状レールの放射音レベルのA.P.値と各試験No.の放射音レベルのA.P.値とを比較すると、防音材を設置したことによる放射音の低減効果が確認された。同時に、放射音測定点S1の場合の放射音低減量と放射音測定点S2の場合の放射音低減量とを比較すると、放射音測定点S1の場合のほうが放射音低減量が大きく、防音材の効果はより下方の受音点で高いことが確認された。その結果、レールと防音材との間の隙間からレールからの放射音が漏れ、上方の受音点では音響伝搬経路において漏れの量が増加し、騒音低減量が減少するものと予測された。レールと防音材との間の隙間の影響について、隙間が100mmと150mmの場合を比較すると、100mmの場合の放射音低減量が大きく、隙間が狭い方がより放射音低減効果が向上することが確認された。高分子材料製の遮音板を有する場合と有さない場合の衝撃加振試験結果を以下の表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示すように、放射音測定点S2の場合について、現状レール、遮音板のない防音材及び遮音板のある防音材の放射音レベルのA.P.値を比較すると、遮音材がある防音材のほうが放射量低減量が大きく、遮音材を有することによる放射音の低減効果が確認された。
【0089】
(モーターカーによる走行試験結果)
車両走行時のレール継目部における防音材の騒音低減効果を確認するため、日野土木実験所内の試験バラスト軌道のレール継目部においてモーターカー走行試験を実施した。日野土木実験所のモーターカー走行軌道においては軌道スラブ上に適切な継目箇所が無いため、バラスト軌道上に防音材を設置し、防音材を設置しなかったときの発生騒音と比較した。試験で使用した防音材は、スラブ軌道用のものとは固定方法が異なるが材質及び構造はスラブ軌道用のものとほぼ同様である。騒音測定点は、衝撃加振試験におけるレール近傍点の放射音測定点S2と同じ位置に設定し、普通騒音計を用いて周波数重み特性A、時定数FASTで騒音を測定した。測定結果について、多チャンネル分析器(リオン株式会社製、形式:SA01)を用いて走行時のレベルピーク値(全帯域値)を求めるとともに、そのピーク値において20Hzから10kHzの範囲で1/3オクターブバンド分析を行った。走行試験は、モーターカーの機器からの音の影響を極力減らすために、モーターによる加速をしていない走行状態(惰行)で実施し、モーターカーを20〜40km/hの範囲でレール継目部を一定速度で惰行走行させて実施した。
【0090】
図26は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の騒音レベルピーク値の走行速度依存性を示すグラフである。
図26に示す縦軸は、騒音レベル(dB)であり、横軸はモーターカー速度(m/s)である。図26に示すグラフは、表1に示す試験No.1の試験結果である。その結果、防音材の騒音低減量は速度依存性を有し、速度40km/hでは防音材の騒音低減効果が約1.5dB程度であることが確認された。また、速度40km/hを越える営業線の速度領域では防音材による騒音低減効果が1.5dBを越えるものと予測された。
【0091】
図27は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の速度40km/hにおける1/3オクターブバンド分析を示すグラフである。
図27に示す縦軸は、騒音レベル(dB)であり、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)である。図27に示すように、防音材を設置した場合及び防音材を設置しなかった場合のいずれについても、騒音は250Hz付近と500Hz〜1kHzの付近の2つのピークを有している。ここで、過去の測定事例より、500Hz〜1kHz付近のピークはレールからの放射音の寄与が大きく、250Hz付近のピークはまくらぎなどのレール以外の部位からの放射音の寄与が大きいことが確認されている。このため、500Hz〜1kHz付近のレールからの放射音を防音材によって約2.5dB程度で騒音レベルを低減可能であり、防音材による騒音低減効果が確認された。また、1/3オクターブバンド分析結果から、走行速度が低速度の場合は250Hz付近のピークが大きく、速度の増加に伴って500Hz〜1kHz付近のピークの大きさが増加する傾向が確認された。このため、速度の増加に伴ってレールからの放射音の寄与が大きくなることが推定された。その結果、防音材の騒音低減効果は、速度依存性を有することが確認され、モーターカーの走行速度(最大約40km/h)と営業線の走行速度(大都市通勤線を考慮すると80〜130km/h)との差を考慮すると、営業線の速度領域において実用的な騒音低減効果を示すことが確認された。
【0092】
図28は、この発明の実施例に係る防音材を設置した場合と設置しなかった場合の騒音レベル値を示すグラフである。
図28に示す縦軸は、騒音レベル(dB)であり、横軸は表1に示す試験No.である。図28に示すグラフは、40km/hでの騒音レベル測定値をパワー平均したものである。その結果、防音材を設置した場合には、防音材を設置しなかった場合に比べて騒音レベルが低下しており、防音材による騒音低減効果が確認された。
【0093】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、バラスト3aによって構成された有道床軌道を例に挙げて説明したが、橋梁上に敷設された軌道などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、継目構造5が普通継目である場合を例に挙げて説明したが普通継目以外の継目構造についてもこの発明を適用することができる。例えば、継目部分の両側と継目板との間に絶縁材を挟み込みこの継目部分を電気的に絶縁して接続する絶縁継目、継目部分の両側に継目板を絶縁性の接着材によって接着してこの継目部分を電気的に絶縁して接続する接着絶縁継目、又は継目部分を伸縮自在に接続する伸縮継目などについてもこの発明を適用することができる。
【0094】
(2) この実施形態では、支持体がまくらぎ2又はスラブ版12である場合を例に挙げて説明したが、他の支持体についてもこの発明を適用することができる。例えば、レール6A,6Bをそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支持体についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、レール6A,6Bの継目部分の側面との間に隙間をあけて防音材10A,10Bを配置する場合を例に挙げて説明したが、継目部分以外のレール6A,6Bの側面との間に隙間をあけて防音材10A,10Bを配置する場合についても、この発明を適用することができる。
【0095】
(3) この実施形態では、レール締結装置4,13から防音材10A,10Bを離間させて配置する場合を例に挙げて説明したがこのような配置に限定するものではない。例えば、レール締結装置4,13と干渉しないように防音材10A,10Bの外側吸音材10bの一部を切り欠いたり、外側吸音材10bを電気絶縁性の高分子材料によって被覆したりして、レール締結装置4,13に防音材10A,10Bを接近させて配置することもできる。また、この実施形態では、レール6A,6Bの内側及び外側に防音材10A,10Bをそれぞれ1枚ずつ配置する場合を例に挙げて説明したが、防音材10A,10Bを複数枚に分割してそれぞれをボルトなどの締結部材によって連結及び分離可能な構造にすることもできる。さらに、この発明の実施形態では、固定部材11A,11Bによって防音材10A,10Bをまくらぎ2又はスラブ版12に固定する場合を例に挙げて説明したが、防音材10A,10Bをまくらぎ2又はスラブ版12の表面に接着することによって固定することもできる。
【0096】
(4) この第1実施形態では、レール締結装置4がナブラ型締結装置である場合を例に挙げて説明したが、締結ばねなどを使用する通常のレール締結装置についてもこの発明を適用することができる。また、この第1実施形態では、防音材10Aの下縁部と道床3の上面との間の隙間を防音材10Cによって塞ぐ場合を例に挙げて説明したが、これらの間の隙間をバラスト3aによって塞ぎ防音材10Cを省略することもできる。さらに、この第2実施形態では、レール締結装置13がタイプレート式のレール締結装置である場合を例に挙げて説明したが、タイプレート13aを使用せずにスラブ版12にレール6A,6Bを締結する直結式のレール締結装置についてもこの発明を適用することができる。
【0097】
(5) この第3実施形態及び第4実施形態では、外側吸音材10bの背面を遮音材10eによって被覆する場合を例に挙げて説明したが、外側吸音材10bの少なくとも一部を遮音材10eによって被覆することもできる。例えば、外側吸音材10bの背面の一部を遮音材10eによって被覆したり、外側吸音材10bの上面の全部又は一部を遮音材10eによって被覆したりすることもできる。また、この第5実施形態では、内側吸音材10aの背面及び上面を遮音材10eによって被覆する場合を例に挙げて説明したが、内側吸音材10aの少なくとも一部を遮音材10eによって被覆することもできる。例えば、内側吸音材10aの背面の全部又は一部を遮音材10eによって被覆したり、内側吸音材10aの上面の全部又は一部を遮音材10eによって被覆したりすることもできる。
【符号の説明】
【0098】
1 車輪
2 まくらぎ
3 道床
4 レール締結装置
5 継目構造
6A,6B レール
6a レール頭部
6b レール底部
6c レール腹部
7A,7B 継目板
8 締結部材
9 防音構造
10A,10B,10C 防音材
10a 内側吸音材
10b 外側吸音材
10e 遮音材
11A,11B,11C 固定部材
11a 支持部材
11b,11c 締結ボルト
11d,11e 締結ナット
11f,11g 座金
11h,11i,11j 防振材
11k,11m 接合部
11n 取付部材
11p 締結ボルト
11q 締結ナット
11r 座金
11s,11t 防振材
12 スラブ版
13 レール締結装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側吸音材とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材とによって騒音を低減する防音材であって、
前記内側吸音材は、前記外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、
前記外側吸音材は、前記内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であること、
を特徴とする防音材。
【請求項2】
請求項1に記載の防音材において、
前記多孔質吸音材は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材であること、
を特徴とする防音材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の防音材において、
前記内側吸音材は、無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の吸音材であること、
を特徴とする防音材。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材において、
前記外側吸音材から外部に放射する騒音を遮る遮音材を備えること、
を特徴とする防音材。
【請求項5】
請求項4に記載の防音材において、
前記遮音材は、音源と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側の表面に接合されていること、
を特徴とする防音材。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材において、
前記内側吸音材から前記外側吸音材に伝わる騒音を遮る遮音材を備えること、
を特徴とする防音材。
【請求項7】
請求項6に記載の防音材において、
前記遮音材は、前記内側吸音材と前記外側吸音材との間に埋め込まれること、
を特徴とする防音材。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の防音材において、
前記遮音材は、合成樹脂系又はゴム系の遮音材であること、
を特徴とする防音材。
【請求項9】
内側吸音材とこの内側吸音材の表面を被覆する外側吸音材とによって騒音を低減する防音材の製造方法であって、
前記内側吸音材は、前記外側吸音材よりも軽い軽量吸音材であり、
前記外側吸音材は、前記内側吸音材よりも硬く耐候性及び電気絶縁性を有する多孔質吸音材であり、
前記軽量吸音材の表面を前記多孔質吸音材によって被覆する被覆工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、無機質粒子を樹脂結合剤によって結合して成形された無機質粒子結合材によって前記軽量吸音材の表面を被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、前記無機質粒子と前記樹脂結合剤とを混合して成形用型内の前記軽量吸音材の周囲に充填し、この樹脂結合剤を硬化させて前記無機質粒子結合材によってこの軽量吸音材の表面を被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、無機質繊維系、金属繊維系又は有機発泡系の軽量吸音材を前記多孔質吸音材によって被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項13】
請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、前記外側吸音材から外部に放射する騒音を遮る遮音材によってこの外側吸音材の表面を被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、音源と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側の表面に前記遮音材を接合する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項15】
請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、前記内側吸音材から前記外側吸音材に伝わる騒音を遮る遮音材によってこの内側吸音材の表面を被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、前記内側吸音材と前記外側吸音材との間に前記遮音材を埋め込む工程を含むこと、
を特徴とする防音材の被覆方法。
【請求項17】
請求項13から請求項16までのいずれか1項に記載の防音材の製造方法において、
前記被覆工程は、合成樹脂系又はゴム系の遮音材によって前記外側吸音材を被覆する工程を含むこと、
を特徴とする防音材の製造方法。
【請求項18】
レールの振動によって発生する騒音を低減するレールの防音構造であって、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の防音材を備え、
前記防音材は、前記レールの側面との間に隙間をあけて前記騒音を低減すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項19】
請求項18に記載のレールの防音構造において、
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の遮音材を備え、
前記遮音材は、前記レールの側面と対向する側の前記外側吸音材の表面とは反対側のこの外側吸音材の表面を被覆すること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項20】
請求項19に記載のレールの防音構造において、
前記遮音材は、前記外側吸音材と同じ高さであること、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項21】
請求項19に記載のレールの防音構造において、
前記遮音材は、構造物の構築を制限する軌道上の限界である建築限界の範囲内で前記外側吸音材よりも高いこと、
を特徴とするレールの防音構造。
【請求項22】
請求項18に記載のレールの防音構造において、
請求項7又は請求項8に記載の遮音材を備え、
前記遮音材は、前記レールに近い側の内側吸音材の表面とは反対側の表面を被覆するように、この内側吸音材と前記外側吸音材との間に埋め込まれること、
を特徴とするレールの防音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図28】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−248888(P2010−248888A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235023(P2009−235023)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年6月1日 財団法人研友社発行の「鉄道総研報告 2009年6月 第23巻第6号」に発表、平成21年7月11日 社団法人日本機械学界主催の「第19回環境工学総合シンポジウム2009」において文書をもって発表、平成21年8月1日 財団法人研友社発行の「Railway Research Review 2009年8月 第66巻第8号」に発表
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】