説明

防音管部材

【課題】容易に取り付け可能で、一度取り付けた後も容易に脱着可能な防音管部材を提供する。
【解決手段】防音管部材20が保護する配管10を配置し、この配管10の側面側に、防音層30を配置する。次に、防音管部材20の側面であって当接部に接する位置に配置された当接部48を保持部によって係止することで、外層40に有する当接部が当接した状態に保持する。こうすることにより、防音層30を有する外層40が配管10の周囲に固定されるため、配管保護材20を容易に配管10に取り付けることができる。また、防音管部材20は接着剤等で配管10に接着されることなく、保持部により当接部を接触した状態に保持することで配管の側面側に配置しているため、容易に取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配管の周囲に防音材を配置することで、配管内で生じる音を防音する方法が知られている。例えば、特許文献1には、粘着層、吸音層、遮音層及び湾曲層を備えた配管防音材が開示されている。
【特許文献1】特許第3390322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした配管防音材を用いると、湾曲層が配管防音材の内面を配管に沿うように湾曲しているため、湾曲した配管に配管防音材を容易に取り付けることができる。しかしながら、特許文献1に記載の配管防音材では、配管に配管防音部材を粘着層で接着するため、一度取り付けると取り外しが困難であるという問題点がある。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、容易に取り付け可能な防音管部材であって、一度取り付けた後であっても容易に取り外し可能な防音管部材を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の防音管部材は、少なくとも一部が当接して開閉自在な当接部と、該当接部を接触した状態に保持する保持部と、を有し、配管、継手又は集合管の側面を覆う外層と、前記外層の内面に配置される防音層と、を備えている。
【0007】
この防音管部材では、防音層を内面に取り付けた外層を、配管、継手又は集合管の側面側に配置し、外層に有する当接部を保持部で接触した状態に保持する。こうすることにより、防音層を有する外層が配管の周囲に配置されるため、防音層を含む防音管部材を容易に配置することが可能となる。また、防音管部材は接着剤又は粘着剤で配管に接着しておらず、かつ外層の当接部を開閉自在に接触した状態に保持しているので、容易に取り外すことができる。
【0008】
本発明の防音管部材において、前記防音層の内周は、前記配管、継手又は集合管の外周よりも長くしてもよい。また、本発明の防音管部材において、前記配管、継手又は集合管と前記防音層との間に空気層を有していてもよい。こうすれば、防音層と配管、継手又は集合管との間の空気により、配管の防音性をより高めることができる。
【0009】
本発明の防音管部材において、前記防音層は、筒状であり、前記外層の断面は、配管、継手又は集合管の側面を覆う多角筒状であってもよい。また、本発明の防音管部材において、前記外層と前記防音層との間に空隙を有していてもよい。このとき、筒状の防音層は外層の側面と接することになるが、外層の各辺付近と防音層との間には空気を有する空隙が発生する(図7の52参照)。この空隙に存在する空気によって、配管の防音性をより高めることができる。
【0010】
本発明の防音材の配置方法は、少なくとも1部が当接して開閉自在な当接部と、該当接部を接触した状態に保持する保持部と、を有し、配管、継手又は集合管の側面を覆う筒状の外層と、前記筒状の外層の内面に配置された防音層とを備えた防音管部材を配置する方法であって、(a)前記配管、継手又は集合管の側面側に前記防音層を巻回する工程と、(b)前記防音層の外側に前記外層を配置する工程と、を含む、防音管部材の配置方法である。
【0011】
なお、この防音管部材の配置方法に、上述したいずれかの防音管部材の機能を実現するような工程を追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態の防音管部材の構成を説明するための説明図である。
【0013】
本実施の形態の防音管部材20は、図1に示すように、円筒状の防音層30と防音層30より直径の大きな円筒状の外層40とを備えている。防音層30は、外層40の内面に粘着剤又は接着剤によって接着されている。このとき、防音層30の内周は配管10の外周よりも長く形成されている。このため、防音層30を配管10の側面側に配置すると、配管10と防音層30との間には空気層50が形成されることになる。なお、防音層30と外層40との固定可能な形成方法は粘着剤や接着剤に限定されるものではなく、公知の種々の様態を選択することが可能である。また、この固定は着脱可能にしてもよい。さらに、図1は、配管10、防音層30、外層40の一部を例示したものであり、大きさは特に限定されるものではない。
【0014】
防音層30は、図1に示すように、遮音層32と吸音層34とからなる。遮音層32と吸音層34とは防音管部材20の外側からこの順番で配置される。なお、吸音層32と遮音層34との間には、接着層又は粘着層を設けてもよい。また、遮音層は、必ずしも吸音層と遮音層の組み合わせである必要はなく、吸音層に対して、遮音層、制振層、防振材層の中から選択される1又は2以上の層を積層した2層以上のものであってもよい。
【0015】
遮音層32は、配管10内で発生した騒音を防音層30外部へ伝播するのを効果的に抑制する機能を有する。このような機能を有する遮音層32としては、高分子を基材とするシート材が用いられる。遮音層32の材料としては、特に限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、又は塩化ビニル単独で重合した樹脂のほか、塩化ビニル単量体と共重合し得る単量体のうち少なくとも1種以上とランダム共重合又はブロック共重合して得られる塩化ビニル共重合樹脂、例えば酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、あるいは塩化ビニル共重合体とグラフト共重合し得る樹脂とグラフト共重合して得られる塩化ビニルグラフト共重合樹脂、例えばエチレン−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリウレタン−塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂を挙げることができる。
【0016】
また、この遮音層32には、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、酸化鉄、酸化亜鉛、グラファイトなどのフィラーを充填してもよい。こうすることで、遮音性の改善を図ることができる。尚、フィラーは、十分な遮音性を確保しながらも、この遮音層32の機械的強度が低下することがないように、50〜95重量%の充填量で充填することが好ましい。またフィラーの充填することで、遮音性の改善以外に遮音層32の粘性の調整、配合コストの低減化も図ることができる。
【0017】
吸音層34は、配管10内に発生した給排水騒音などの騒音を効果的に吸音するとともに、耐火性をも有する。このような機能を有する吸音層34としては、グラスウール又はグラスファイバーシートが好適である。
【0018】
このグラスウール又はグラスファイバーシートは、シート内に入射した音(空気伝播音)がこのシートの構成繊維間で衝突を繰り返しながら通過する過程において、粘性摩擦等により熱エネルギーに変換する作用を奏し、この結果、吸音層34内に入射した音を減衰する機能を発揮する。
【0019】
グラスウール又はグラスファイバーの製造方法は、特に限定するものではなく、従来からある火炎法、遠心法等の公知の方法によって製造される。この場合、シート形態の安定化を図る目的で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びフェノール樹脂などの集束剤を添加してもよい。
【0020】
外層40は、図1に示すように、円筒状であり、外層40の上面から下面に向かって連続した当接部48を有している(図2(C)参照)。この当接部48と対向する位置には、略U字型又はΩ型に形成された保持部46が備えられている。この保持部46は、当接部48が互いに閉じる方向に付勢されている。すなわち、当接部48を開く方向に力を加えた場合には、開くことができるが、手を離せば当接された状態で保持される。
【0021】
また、外層40の材料としては、特に限定されるものではないが、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビリニデン(PVDC)、フッ化ビリニデン(PVDF)、アクリル樹脂等の合成高分子が好ましい。なお、これらを単独で用いてもよく、2以上を組み合わせて用いても良い。こうすれば、上記例示した硬質の材料で外層40が形成されるため、外部から力が加えられた場合であっても、防音層30が押圧又は圧縮されることを防ぎ、防音効果の減衰を防ぐことができる。
【0022】
図2(A)に示すように、防音管部材が保護する配管10に対し、図2(B)に示すように、この配管10の側面側に、防音層30を巻回する。防音層30を巻回する方法は特に限定されるものではなく、例えば、配管10の上又は下から筒状の防音層30を被せても良いし、防音シートを配管10の側面に配置した後、端部を接続して筒状の防音層30を形成しても良いし、あらかじめ、後述する外層40に取り付けておいても良い。
【0023】
次に、図2(C)に示すように、当接部48が離れた状態の外層40を防音層30の側面側より近づけ、防音層30の側面に配置し、当接部48を互いに接触させる。このとき、保持部46によって当接部48が係止されるため、外層40の二つの当接部48が当接した状態で保持される(図2(D)参照)。なお、防音管部材20は、図示しない床面や支持部材、他の防音管部材等によって軸方向を支持される。
【0024】
一方、防音管部材20を取り外す場合には、互いの当接部48を互いに遠ざける方向に外力を加える。このとき、保持部46が係止する力以上の力を加えれば、互いの当接部48の距離が離れ、この距離が防音層30の外周の直径より大きくなれば、防音管部材20を防音層30の側面方向にスライドすることで、防音管部材20を取り外すことができる。すなわち、一度取り付けた後であっても、容易に防音管部材20を取り外すことができる。なお、外層40に防音層30が剥がすのが困難な接着剤で取り付けられている場合には、防音層30は外層40と同様の当接部を設けて、同時に防音層30も開裂させて取り外すことになる。
【0025】
以上詳述した本実施の形態の防音管部材20によれば、当接部48を接触させることによって、容易に配管に取り付けることができる。このとき、当接部48間は接着されていないため、当接部48を離間することにより、防音管部材20を容易に取り外すこともできる。したがって、防音層30が劣化した場合においても、防音層30のみを交換して再利用することが可能になる。
【0026】
また、防音層30の内周は配管10の外周よりも長いため、防音層30と配管10との間に空気層50を備えることができる。したがって、防音層30と配管10とが接触している場合に比べて、配管の防音性をより高めることができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
また、保持部46としては、図3に示すように、可塑性の薄膜を用いても構わない。また、保持部46は必ずしも当接部と対向する側に設ける必要はなく、図3に示すように、当接部48側に左爪42、右爪44を設け、左爪42及び右爪44側に、それぞれ雄ボタン及び雌ボタン、ボルトとナット、マジックテープ(登録商標)等を用いて固定保持させてもよい。また、両面テープや可剥性の接着剤を保持部として用いて閉塞状態を確保しても構わない。さらに凹部と凸部とを当接部に設けて違いに咬み合わせられるようにしてもよい。上述した例に限定されることなく、当接部48を当接した状態を保持できるものであれば、様々な態様をとることができる。
【0029】
さらに、好ましい形態として、図4に示すように、この当接部48と対向する位置に、ヒンジ46(本発明の、保持部に相当する)を設けても良い。このヒンジ46にはねじりコイルばねを用いて、左爪42及び右爪44を接触させる方向に力が働くように設けて、左爪42及び右爪44を操作することにより二つの当接部48を開くことができ、手を離せば、当接させた状態で保持することができる。
【0030】
また、上述した実施形態では、端部から防音部材が露出しているが、図5に示すように、端部を外層で覆うように形成してもよい。
【0031】
上述した実施の形態では、外層40は、一方側のみが開閉するものとしたが、図6に示すように、左外層部材62と右外層部材64とを互いに咬合させてもよい。こうすれば、左外層部材62と右外層部材64とが咬合することにより、外層40が配置される。また、左外層部材62と右外層部材64との咬合を外すことにより、容易に防音管部材20を取り外すことができる。このため、この場合も上述した実施の形態と同様の効果が得られる。なお、ここでは、左外層部材62と右外層部材64との2種の部材を咬合させるものとしたが、これらの部材は2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合、咬合部は、当接部と保持部との両方の機能を有するものとなる。
【0032】
上述した実施の形態では、円筒状の防音層40及び円筒状の外層30を用いたが、図7に示すように、外層30は六角筒状であっても良いし、他の多角筒状(例えば、三角筒、四角筒、五角筒、七角筒、八角筒など)であってもよい。こうすることにより、多角筒状の各頂点内側の近傍付近と防音層40との間に空隙52が生じるため、より防音性を高めることができる。
【0033】
上述した実施の形態では、防音層40は耐火性も有することとしたが、耐火性を有しなくても良い。また、この態様を採用した場合において、防音層40に加えて、断熱材を含む耐火層を有するものとしてもよい。こうすれば、防音層40が耐火性を有しない場合であっても、防音管部材20に耐火性を備えさせることができる。
【0034】
このとき用いる断熱材としては、グラスウール、ロックウール、グラスファイバー、シリカファイバー、セラミックファイバー、金属ファイバー、アルミナファイバー、カーボンファイバーから選択される1種または2種以上からなるシート材が使用してもよい。これらの素材は、断熱材として優れ、令8区画で要求される耐火性能を十分に満足させることができることに加え、吸音性能も備えているので、好適な素材であるといえる。
【0035】
上述した実施の形態では、外層30と防音層40とを粘着剤又は接着剤で固定するものとしたが、外層30と防音層40とを固定できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、雄ボタンと雌ボタンとで固定するものとしてもよいし、防音層40の外面の一部に凹部を設け外層30の内面に設けたフックにかけて固定するものとしても良いし、両面テープやマジックファスナー(登録商標)を用いても良い。
【0036】
上述した実施の形態では、すべて配管を用いて説明したが、これらに限定するものではなく、継手や集合管にも取り付けることができるように、それぞれ継手や集合管に適合するように形状を変更しても構わない。例えば、図9に示すように、継手及び集合管に取り付ける場合には、図8aに示すように、枝管を接続した状態で枝管接続部を覆うことができるように側方に枝管開口部を設けてもよい。また、継手に取り付ける場合には、図8bに示すように必ずしも円柱状に作製する必要はなく、一方の端部と他方の端部との直径が異なる円筒状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る実施の形態の防音管部材の構成を説明するための説明図。
【図2】本発明に係る実施の形態の防音管部材の取り付け方法を説明するための説明図。
【図3】本発明に係る他の実施の形態の構成を説明するための説明図。
【図4】本発明に係る他の実施の形態(2)の構成を説明するための説明図。
【図5】本発明に係る他の実施の形態(3)の構成を説明するための説明図。
【図6】本発明に係る他の実施の形態(4)の構成を説明するための説明図。
【図7】本発明に係る他の実施の形態(5)の構成を説明するための説明図。
【図8】本発明に係る他の実施の形態(6)の構成を説明するための説明図。
【図9】本発明に係る他の実施の形態(6)の構成を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0038】
10 配管、20 防音管部材、30 防音層、40 外層、42 左爪、44 右爪、46 ヒンジ、48 当接部、50 空気層、52 空隙、62 左外層部材、64 右外層部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が当接して開閉自在な当接部と、該当接部を接触した状態に保持する保持部と、を有し、配管、継手又は集合管の側面を覆う外層と、
前記外層の内面に配置される防音層と、
を備えた防音管部材。
【請求項2】
前記防音層の内周は、前記配管、継手又は集合管の外周よりも長い、
請求項1に記載の防音管部材。
【請求項3】
配管、継手又は集合管に嵌めたときに、前記配管、継手又は集合管と前記防音層との間に空気層を有する、
請求項1又は2に記載の防音管部材。
【請求項4】
前記防音層は、筒状であり、
前記外層は、配管、継手又は集合管の側面を覆う多角筒状である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音管部材。
【請求項5】
前記外層と前記防音層との間に空隙を有する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防音管部材。
【請求項6】
少なくとも1部が当接して開閉自在な当接部と、該当接部を接触した状態に保持する保持部と、を有し、配管、継手又は集合管の側面を覆う筒状の外層と、前記筒状の外層の内面に配置された防音層とを備えた防音管部材を配置する方法であって、
(a)前記配管、継手又は集合管の側面側に前記防音層を巻回する工程と、
(b)前記防音層の外側に前記外層を配置する工程と、
を含む、防音管部材の配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−299773(P2009−299773A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154378(P2008−154378)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】