説明

除去可能硬化部材を備えた伝達増進配送カテーテルおよびその使用法

近位開口および遠位端壁を有する第一細長管状部材を含む哺乳類体の標的組織へ薬を配送するためのカテーテル。第一細長管状部材を貫通する一部を有する第二細長管状部材は遠位端壁を超える遠位端を有する。第一および第二管状部材は第一管状部材内に環状キャビティを形成している。前記強化部材は哺乳類体内の標的組織に対して遠位端の精確設置を促進するために環状キャビティ内に設置された少なくとも一部を有しかつ哺乳類体から第二細長管状部材を除去することなく、かかる設置後に環状キャビティから除去可能である。使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、更に具体的には伝達増進配送カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
伝達増進配送(convection enhanced delivery)、即ち、CEDは注入化合物の分配のための局所配送法である。CEDは、大きい流れを使用して大小の分子を標的、例えば、脳へ、定位位置に固定されたカテーテルを介して配送する。血液脳関門を回避しながら、CEDは腫脹および他の標的組織を治療薬に暴露でき、組織的副作用を低減するために組織的暴露を最小限にする。
【0003】
CEDによる局部薬配送の成功に大きな影響を与える多くの要因が考えられる。第一のそのような要因は注入カテーテルの外面に沿った逆流であり、これは、典型的には、カテーテルの相対的に大きい直径および高注入量により発生する。第二要因は、空気の侵入、およびカテーテル設置後に系を分離および再結合することにより生じる圧力ピークである。第三要因は、カテーテル設置の解剖学的精度、および注入器の脳脊髄液区画への漏出阻止である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特記なし
【発明の概要】
【0005】
哺乳類体の標的組織に薬を配送するためのカテーテルは、近位開口および遠位端壁を有する第一細長管状部材を含む。一部を有する第二細長管状部材は、第一管状部材を貫通しかつ第一管状部材の遠位端壁を超えて伸長した遠位端を有する。第一および第二管状部材は第一管状部材内に環状キャビティを形成する。強化部材は、哺乳類体内の標的組織に対して遠位端の精確設置を促進するために少なくとも一部が前記環状キャビティ内に設置され、かつ哺乳類体から第二細長管状部材を除去することなく、かかる設置後に環状キャビティから除去可能である。更に、その使用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の伝達増進配送カテーテルを有するカテーテル装置の平面図である。
【図2】図1の伝達増進配送カテーテルの強化部材の平面図である。
【図3】図2の線3−3に沿った図2の強化部材の端面図である。
【図4】伝達増進配送カテーテル内の第一位置もしくは作業位置に強化部材を有する図1のカテーテル装置の概略図である。
【図5】伝達増進配送カテーテルから除去された強化部材を第二位置に有する図4と同様の概略図である。
【図6】伝達増進配送カテーテルから除去した強化部材が第三もしくは分割位置にある、図4と同様の概略図である。
【図7】強化部材を伴わない図4と同様の概略図である。
【図8】本発明の強化部材の他の実施形態である。
【図9】本発明の伝達増進配送カテーテルの他の実施形態の平面図である。
【図10】図9の伝達増進配送カテーテルの遠位端の拡大図である。
【図11】図10の線11−11に沿った図9の伝達増進配送カテーテルの断面図である。
【図12】図10の線12−12に沿った図9の伝達増進配送カテーテルの断面図である。
【図13】図10の線13−13に沿った図9の伝達増進配送カテーテルの断面図である。
【図14】図10の線14−14に沿った図9の伝達増進配送カテーテルの断面図である。
【図15】強化部材を除去した注入装置に利用される図9の伝達増進配送カテーテルの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のカテーテルは、哺乳類体、好適には、脳内に一時的または永久的に移植するために専用CEDカテーテルとして役立つ。図1に示された本発明のカテーテル装置21の一実施形態は、主カテーテル管の管孔26、好適には細長い中央孔もしくは通路内でマイクロ(micro)注入カテーテル管24もしくは第二細長管状部材を案内する主カテーテル管23もしくは第一細長管状部材を有するカテーテル22を含む。マイクロ注入カテーテル管24は、同様に、中央孔もしくは通路27を有する。主管23は、好適には主管の長軸に垂直に延在する平坦な少なくとも一つの端壁29を有する遠位先端28を有する。マイクロ注入管の遠位先端31は主管を貫通し、かつ好適には主管に対して同心に設置され、主管23の中央管26の内径はマイクロ注入カテーテル管24の外径よりも幅広いもしくは大きく、主管とマイクロ注入管の遠位先端との間に管状キャビティもしくは空間を形成している。単一管孔を有する両管23および24は、管23および24の管孔が連通しないように、主カテーテル管23の遠位端28で連結され、かつ主カテーテル管の管孔26は管23および24の連結部位で閉鎖終端している。マイクロ注入管の遠位端は主カテーテル管を経て主カテーテル管を超えて伸長し、カテーテルの外面に沿った流体の逆流を低減するのに適したショルダもしくは段32をカテーテルチップに形成する。更に詳細には、マイクロ注入管24の遠位先端もしくは遠位端31は主管23の端壁29に接着剤もしくは溶接等の適宜手段により固定され、かつかかる端壁の遠位方向へ伸長する。
【0008】
カテーテルの主管23は、プラスチック等の適宜材料、好適にはポリマーブロックアミド、または脂肪族ポリエーテルポリウレタンから形成され得る。主管23は、主管の遠位端28が処理される組織の近傍にあるときに主管の近位先端もしくは近位端33が哺乳類体の外側になりカテーテルの操作員によるアクセスが可能になる長さを有する。一好適実施形態において、主管23は、200mmから300mmの範囲、好適には略270mmの長さを有し、名目壁厚は0.15から1.00mmの範囲、好適には略0.5mmであり、内径は0.5から1.25mmの範囲そして好適には略1.00mm、外径は1.00から1.75mmの範囲そして好適には略1.50mmである。主管23は、適宜硬度を有してよく、一好適実施形態において、83ショア硬度Aから40ショア硬度Dの範囲の硬度を有する。マイクロ注入管24はいプラスチック等の適宜材料、好適にはポリイミドにより形成されてよく、かつ適宜寸法であってよい。一好適実施形態において、マイクロ注入管は略600mmの長さを有し、名目壁厚は0.05から0.60mmの範囲、好適には略0.48mm、内径は0.08から0.25mmの範囲そして好適には略0.12mm、外径は0.30から0.70mmの範囲そして好適には略0.60mmである。一好適実施形態において、マイクロ注入管の遠位先端もしくは遠位端31は主管23の遠位端28を超えて伸長、距離は4から15mmの範囲であり好適には略5mmである。
【0009】
スケール(図示せず)は、好適には、外科医または他の作業員によるカテーテル22の処置すべき哺乳類体の脳組織等の組織内で正確な深さへの設置を可能にするために主管23の外面36上に設置される。更に、主カテーテルの材料は、好適には、設置に先行して計画された前進深さまでマーク付けするために滅菌マーカによりーマーク付けできる材料が好適である。
【0010】
設置時にカテーテルの安定性を増進しかつ設置時に所望軌道上にカテーテルを維持促進するために、カテーテルは更に強化部材4(図1−3参照)を含む。強化部材もしくは強化要素は、好適には、処置のためにカテーテルを設置した後に除去可能である。一好適実施形態において、強化部材もしくは分割カニューレ41は、主管23とマイクロ注入管24の遠位先端との間に形成された環状キャビティ内に除去可能に設置される管状部材42の形態である。この強化部材は、図3に示されたように、円形断面の分割カニューレとして示され、かつ更に詳細には主管内の環状キャビティの断面に類似の断面を有する。一実施形態において、分割カニューレの管状部材42は、図2−3に示されたように、相互に対して180°の角度にある二つの所定長手破線43を有し、その材料は管状部材42を二部、即ち第一および第二の細長い部分46および47に分離できる薄さである。図3に示されたように、細長部分、もしくは細長部、の各々は、半円形断面を有する。図示されていない他の実施形態において、分割カニューレ41の管状部材は金属テープで形成され、テープの長手側を分離する非常に小さい隙間を有する管に形成される。その隙間の反対側には所定の破線がテープに形成される。
【0011】
中央管孔48は、分割カニューレを貫通しかつマイクロ注入管24の遠位先端31の一部を受ける寸法および形状に形成される。一好適実施形態において、分割カニューレ41は250から350mmの範囲、好適には略305mmの長さを有し、名目壁厚は略0.2mm、内径は0.40から0.80mmの範囲、好適には略0.70mmであり、外径は略0.9mmである。分割カニューレの近位端51は主管の近位端33および主管内の環状キャビティの開口の近位まで伸長して、カテーテル22が処置のために哺乳類体内に適正に設置されるときに操作員によるアクセスを可能にする。分割カニューレの近位端は、操作員による把持を容易にするような寸法および形状に形成され、かつ一好適実施形態において分割管孔1の第一および第二細長部46および47の各々の近位端51は、半円形中央およびかかる細長部の近位部から近位へかつ半径方向外方へ伸長するフィンもしくはハンドル52を具備する。分割カニューレの第一および第二細長部の各々は、Phynox(商品名)として既知のコバルトクロミウムニッケル合金等の任意適宜材料から形成できる。フィンもしくはウイング42はプラスチック等の任意適宜材料により形成され得る。
【0012】
カテーテル装置(catheter system)21は、更に、標的組織およびその近くに配送する所定量の適宜薬を含有する。かかる供給はマイクロ注入カテーテル管24の近位端に流体により連結される注射器56の形態、例えば、ルアロックアダプタ(luer lock adapter)57による。
【0013】
カニューレ処置におけるカテーテルの作用および使用において、カテーテルの遠位端28は処置される標的組織内にマイクロ注入管の遠位端31が設置されるまで脳組織へ前進させる。マイクロ注入管24は標的組織の中心へ隣接組織または中間組織を介して伸長する。端壁または段は中間組織に当接する。カテーテルの設置後に、分割カニューレ41の細長部46および47の近位端51上に設けられたフィンもしくはハンドル52を操作員が近位へ引っ張ると共に、カテーテルの主管を操作員の他方の手または他の適宜手段により所定位置に保持する。分割カニューレ41は、図5に示されたように主管23の環状キャビティから近位へ完全に引っ張られると、図6に示されたように半分に分裂もしくは分割し、そのようにして分割カニューレの第一および第二細長部46および47の各々は、図7に示されたようにマイクロ注入管24から半径方向へ引き離され、そしてカテーテル22から除去される。カテーテルのマイクロ注入管24は、例えばカテーテルのマイクロ注入管の近位端に取り付けたルアロックアダプタ57を介して、注射器56または他の適宜注入源に連結維持される。
【0014】
薬は注射器または他の供給源からマイクロ注入管24の中央通路もしくは管孔27を介して標的組織へ配送される。カテーテルの主管23の端壁29と標的組織との係合は、後方へ移動する、または端壁の遠位へ伸長するマイクロ注入管24の遠位端31の外部に沿って近位へ移動する薬が、カテーテル22の主管23の外部筒状面もしくは外面35に沿って更に近位へ移動することを阻止する。
【0015】
上述の分割カニューレ41の使用は、注射器56を含む完全に準備されたカテーテル装置21の設置を、注射器または他の注入源56とカテーテル22との間の再連結処置を伴うことなく、可能にし、それにより装置21への空気の侵入および圧力ピークの危険を低減する。マイクロ注入管24への空気侵入の危険を減少することにより、カテーテル22および本発明の方法は、標的組織における気泡の発生を抑制する。かかる気泡は、望ましくなく、例えば標的組織への薬のアクセスを遮断しかつ標的組織からカテーテル22の外面36に沿って薬を逆流させることにより、標的組織への薬の配送を低下させる。
【0016】
カテーテル22の設置手続きが完了しかつ分割カニューレ1がカテーテル2から除去された後に、主管23およびマイクロ注入管24の遠位先端31を含む、カテーテルの遠位先端28は可撓性である。このことはカテーテルの転位の危険を最小限にしかつ患者の頭蓋骨上のカテーテル22の皮下固定を可能にする。
【0017】
本発明の強化部材の他の実施形態が図8に示されている。図8に示された強化部材もしくは分割カニューレ61は、分割カニューレ41の細長部46および47に実質的類似の第一および第二の細長部62および63を含む。ハンドルとして作用する第一および第二保護管66および67が分割カニューレの第一および第二細長部62および63の近位端に接合または固定される。保護管、即ちハンドル66および67は、それぞれプラスチック等の任意適宜材料により形成される。
【0018】
本発明のカテーテル装置の他の実施形態が図9−15に示されている。マイクロ注入カテーテル管もしくは第一細長管状部材77、およびマイクロ注入カテーテル管77の筒状外面の外側にガイドカテーテル管もしくは第二細長管状部材78を有する伝達増進配送カテーテル76は、図9および10に示されている。マイクロ注入カテーテル管77は近位先端81および遠位先端82を有し、かつ近位先端81から遠位先端82へ長手方向に延在する中央管孔もしくは通路83を有する。同様に、ガイドカテーテル管78は、近位先端86、遠位先端87、および近位先端86から遠位先端87へ長手方向に延在する中央管孔もしくは通路88を有する。マイクロ注入カテーテル管88は、好適には、ガイドカテーテル管78に対して同心に設置され、ガイドカテーテル管78の直径はマイクロ注入カテーテル管88の外径よりも幅広くもしくはし大きく、図4に示されたようにマイクロ注入カテーテル管とガイドカテーテル管との間に環状キャビティもしくは空間を形成する。単一管孔を有する二つの管77および78は、両管77および78の管孔が連通することなくかつガイドカテーテル管の管孔88が遠位端壁89で閉鎖して終端して連結部位を形成するように、ガイドカテーテル管78の遠位先端もしくは遠位端87で連結される。更に具体的には、マイクロ注入カテーテル管の遠位端82は、図10および11に示されたようにTecoflex(登録商標)等の任意適宜充填材91によりガイドカテーテル管の端壁89に固定される。遠位充填材91は、例えば、2mmの適宜長さにわたって延在する。遠位充填材の第一部91aは適宜長、例えば略1mmにわたって延在し、かつガイドカテーテル管にマイクロ注入カテーテル管を固定し、かつ遠位充填材の第二部91bは、図10に示されたように、適宜長、例えば略1mmにわたって延在しガイドカテーテル管78を超えて遠位方向に伸長する。
【0019】
ガイドカテーテル管はプラスチック等の任意適宜材料、好適にはTecoflex(登録商標)により形成できる。カテーテルのマイクロ注入管はプラスチック等の任意適宜材料により形成され得る。一好適実施形態において、マイクロ注入カテーテル管77の壁は、図11−14に示されたように層状構造であり、ポリイミド等の任意適宜材料により形成される第一層もしくは内層もしくはライナ(liner)92、および保護管としてポリエーテルアミド等の任意適宜材料で形成される第二層もしくは外層93を含む。管状内層ライナ92は、近位端82からカテーテルチップ94の遠位端へマイクロ注入カテーテル管の長手に延在する。外層もしくは保護管93は、図10に示されたように、ガイドカテーテル管の端壁89を通って遠位充填部91bの遠位端へ遠位方向に伸長する。二層92および93間の環状スペースは、ポリイミドにより形成され近位充填材とも呼ぶ第三層により充填されるが図示されておらず、マイクロ注入カテーテル管77の近位端81で10から30mmの範囲の適宜長さ、好適には略15mmにわたって延在する。マイクロ注入カテーテル管の中央部もしくは主部は、二端81および82間に、環状空間を形成する付加的第三層を伴わない(図示せず)。マイクロ注入カテーテルの遠位先端または遠位端82に、溶融石英等の適宜材が、内外層92と93間の第三層もしくは管96として挿入される。中間層96は5から20mmの範囲で全長にわたって、好適には略12mmにわたって延在する。中間層96の長手の略半分は、外層93の遠位端の遠位方向へ伸長して、図9および10に示されたように、マイクロ注入カテーテル管77のカテーテルチップ94を形成する。マイクロ注入カテーテル管の遠位端82における溶融石英の中間層96としての使用は、十分な強度をカテーテルチップに付与してコンパクトまたは弾性組織への侵入を向上させる。
【0020】
マイクロ注入管77の遠位先端82は遠位充填材91と共にガイドカテーテル管78の遠位端87を介して伸長する。マイクロ注入カテーテル管77および遠位充填材91の両者の遠位端前で終端することにより、ガイドカテーテル管は、第一段もしくは第一環状端面97aを形成し、マイクロ注入カテーテル管77のカテーテルチップ94の遠位端から距離は5から15mmの範囲、好適には略6mmである。第一環状端面97は、遠位充填材91の筒状外面からガイドカテーテル管78の筒状外面までの半径方向の寸法が0.50から0.70mmの範囲でありかつ好適には略0.61mmである。マイクロ注入管77のカテーテルチップ94は、図10に示されたように、遠位充填材91と保護管93の共通遠位端へ伸長する。マイクロ注入カテーテル管の遠位端前で終端することにより、遠位充填材および保護管は一緒に二段または第二環状端面98aを形成し、マイクロ注入カテーテル管77の遠位端からの距離は4から14mmの範囲、そして好適には略5mmである。好適には第二環状端面98は、中間層96の筒状外面から遠位充填材の筒状外面までの半径方向の寸法が0.40から0.60mmの範囲でありかつ好適には略0.53mmである。カテーテルのチップにおける第一および第二段は、共に、カテーテル76の外面に沿った流体の逆流を低減しかつ組織への外傷を最小限にするように設計される。カテーテル76のチップの完成した二段設計は図9および10に示されている。
【0021】
カテーテル76は、マイクロ注入カテーテル管の遠位端82が処置組織の近傍にあるときにカテーテル76の近位端が哺乳類体の外部にあるような長さを有し、ガイドカテーテル管78の近位端86およびマイクロ注入カテーテル管77の近位端81に操作員が容易にアクセスできるように形成される。一好適実施形態において、マイクロ注入カテーテル管77は、略312mmの長さを有し、壁の名目厚が全体で略0.48mmであり、内径が略0.12mmでありかつ外径が略0.60mmである。一好適実施形態において、マイクロ注入カテーテル管の保護管93の全長は302から308mmの範囲にあり、カテーテルチップ94は、4から10mmの範囲、そして好適には略5mmにわたって管93による保護を受けない。かかる好適実施形態において、保護管は略0.24mmの名目壁厚、略0.12mmの内径、および略0.36mmの外径を有する。ガイドカテーテル管78は任意適宜寸法であってよい。一好適実施形態において、ガイドカテーテル管は略270mmの長さ、略0.5mmの名目壁厚、略1.00mmの内径、および略1.50mmの外径を有する。壁要素もしくはマイクロ注入カテーテル管の層、およびガイドカテーテル管の壁厚は図11−14に断面で示されている。
【0022】
ラジオオパークスケール(radio opaque scale)101が、好適には、図11および14に示されたように、ガイドカテーテル管78の外面上に設けられ、外科医もしくは他の作業員による処置組織内、例えば、哺乳類体の脳組織内の正確深度への設置を可能にする。更に、ガイドカテーテル管78の材料は、好適には、かかる設置前に先行して計画された深度にマーク付けするために滅菌マーカーペンによるマーク付けに適したものである。ラジオオパークスケールは、カテーテル移植後に脳組織を撮像するコンピュータ断層撮影(CT)により視覚化でき、外科医または作業員によるカテーテル76の精確な場所の決定を可能にする。
【0023】
設置時にカテーテル76の安定性を増進し、かつかかる設置時の所望軌道上でのカテーテルの維持を助けるために、カテーテルは近位端もしくは近位先端107を有する強化部材106を更に含んでよい。強化部材もしくは強化要素106は、処置のためにカテーテルを設置した後に、好適には除去される。一好適実施形態において、強化部材は、図9、10および14に示されたように、マイクロ注入カテーテル管77とガイドカテーテル管78管に形成された環状キャビティ内に取外し可能に設置される。強化部材もしくは中空スタイレット(stylet)106は円形断面を有し、かつ更に具体的にはガイドカテーテル管78の管孔88の断面に近い断面を有する。一実施形態において、中空スタイレット106は、ステンレススチールまたはスタイレット106の折れを防止しかつカテーテル76に剛性を付与する管を形成できる他の同様材料により形成される。中央管孔(図示せず)が中空スタイレット106を貫通しかつマイクロ注入管77の一部を受けるように採寸かつ形成される。中空スタイレット106の外径は、カテーテル設置時に摩擦嵌めにより中空スタイレット106を保持するキャビティを提供する中空の一部をガイドカテーテル管78が摺動自在に収容できるものである。一好適実施形態において、中空スタイレット106は、略305mmの長さ、略0.2mmの名目壁厚、略0.7mmの内径、および略0.9mmの外径を有する。中空スタイレット106の近位端107はガイドカテーテル管77の近位端86から、即ちマイクロ注入カテーテル管とガイドカテーテル管との間の環状キャビティの開口の近位端から、略25mm近位方向へ伸長し、そのようにしてカテーテル76が処置すべき哺乳類体内に適正に設置されるとき操作員によるアクセスを可能にする。中空スタイレット106の近位端107は操作員による把持を容易にする寸法および形状で形成れる。
【0024】
カニューレ手続きにおけるカテーテル76の作用と使用について、空気を除去するために含塩物をカテーテルに充填しかつマイクロ注入カテーテル管77および中空スタイレット106を図15に示されたように適宜キャップ付き閉鎖コネクタ108、例えばペンシルバニア州、ベツレヘムのB Braun Medical Inc.により製作されたPerifi(登録商標)コネクタに連結した後に、カテーテルの遠位端を、マイクロ注入管77の遠位先端82が処置すべき標的組織に設置されるまでに脳組織へ前進させる。マイクロ注入管のカテーテルチップ94は、標的組織の中心へ隣接もしくは中間組織を介して侵入させる。カテーテル76の遠位端での第一および第二端面97および98は中間組織に当接させる。カテーテルの設置後に、クリック−閉鎖コネクタ(click-to-close connector)108を開放かつ除去されて、中空スタイレット106が操作員によってマイクロ注入カテーテル管77上で近位方向へ引っ張られ、他方でカテーテルのガイドカテーテル管78が操作員の他方の手または他の適宜手段により保持されるようにする。中空スタイレット106が、ガイドカテーテル管78とマイクロ注入カテーテル管77との間で環状キャビティから近位方向へ完全に引っ張られると、中空スタイレット106はマイクロ注入カテーテル管から引き離されてカテーテルから除去される。カテーテルのマイクロ注入管は含塩物装填コネクタ(saline primed connector)108に再連結され蓋をされ、空気の侵入が阻止される。三点固定は、患者の頭蓋骨上でのカテーテル76の皮下固定を可能にしかつその領域は薬注入の初期まで適正に包帯される。
【0025】
適宜注入源または注射器111の形態の供給源、およびカテーテル76との使用に適した注入システム112が図15に示されている。一好適実施形態において、薬装填注入装置112は薬局で準備され、カリフォルニア州、サンクレメントのICU Medical, Inc.で製作されたCLAVE(登録商標)等の適宜気密コネクタ113により注射器111に連結されたマイクロボア注入管112に取り付けたコネクタ108により形成される。注入システム112は適宜マイクロ注入ポンプ(図示せず)上にボーラス投与システム(bolus system)を使用することにより形成される。一旦形成されると、注入システム112は、既存のクリック−閉鎖コネクタの除去によりカテーテル76へ連結されかつかかるコネクタを注入システム112に取り付けた薬装填クリック−閉鎖コネクタ108で置換する。
【0026】
適宜薬が注射器111からマイクロ注入管77の中央通路もしくは管孔83を介して標的組織へ配送れる。カテーテル76の遠位端における第一および第二端面97および98の二段設計は、カテーテルチップ94に沿って後方もしくは近位方向へ移動する薬が、カテーテルのガイドカテーテル管78の外面に沿って更に近位へ移動することを阻止するバリアを形成する。
【0027】
上述の中空スタイレット106の利用は、装填されたクリック−閉鎖コネクタ108に閉鎖位置で連結された完全に装備されたカテーテル76の設置を可能にし、それによりそのシステム内の空気侵入および圧力ピークの危険を低減する。カテーテル76が適正に位置決めされた後のコネクタ108の除去は、空気侵入の危険を増大することなく行うことができる。これはマイクロ注入カテーテル管77の小さい管孔内の毛細管圧が高くかつマイクロ注入カテーテル管77のチップが組織により閉塞することによる。マイクロ注入管77への空気侵入の危険性を減少することにより、本発明によるカテーテル76および方法は標的組織内の気泡の発生を阻止する。かかる気泡は望ましくなく、例えば、標的組織への薬のアクセスを妨害しかつ薬を標的組織からカテーテル76の外面に沿って逆流させることにより、標的組織への薬の配送を低下させる。
【0028】
カテーテル76の設置処理が完了しかつ中空スタイレット106がカテーテルから除去された後の、マイクロ注入管24は可撓性である。このことは、カテーテル転位の危険を最小限にし、かつカテーテルの捩じれまたは破損を伴うことなく患者の頭蓋骨上にカテーテルの皮下固定を可能にする。
【0029】
本発明の脳内カテーテルの主課題は、脳組織内の所定標的領域に予測可能および再現可能薬を分配することである。カテーテル設置の高精度、およびカテーテルの外面に沿った逆流を最小限にするための専用設計は、かかる課題の達成を促進する。予測外薬分配に通じる注入ライン内の気泡を回避するために、注入ラインはカテーテルの実際の設置手続き前に形成される。実際のカテーテル設置後の位置は、典型的には、例えばCTまたは磁気共鳴映像法(MRI)により証明されるので、カテーテル材料はかかるCTおよびMRIスキャンで可視可能になるように選択される。本装置は、カテーテル管、好適には主カテーテル管、およびマイクロ注入カテーテル管、目的物を設置するための強化部材、およびPerifix(登録商標)コネクタ、または他の適宜アダプタをカテーテル装置(system)の近位端に含む。注入注射器または他の注入源、コネクタ、および連結配管が好適には市場で利用可能である。カテーテルは、位置決め前に形成される計画MRIスキャンに基づいて定位に設置される。精確な位置決めを促進するために、定位計画およびナビゲーションソフトウエアが使用できる。
【0030】
上記説明から理解されるように、本発明の好適カテーテルは、カテーテルに沿った逆流を阻止するために段付き遠位形態を有する。更に、好適カテーテルは、閉鎖ループ、または空気侵入を回避するためにカテーテル設置前に充填かつ形成され得る外見上閉鎖ループ注入システムを有する。更に、本発明のカテーテルおよび方法は、カテーテル設置の解剖学的精度を設置時に強化部材を利用することにより向上させる。設置精度は、患者の局部生体構造および組織特性に基づいて各カテーテルの周りの予定分配量の可視化を可能にする適宜定位計画ソフトウエアの使用により更に改善され得る。更に、トボテカン等の活性治療剤へのガドジアミド等のMRIトレーサの添加は、リアルタイムにおける薬分配の能動的モニタを可能にする。本発明の特に好適方法において、トボテカン(およびガドジアミド)のリボソーム製剤は脳内の延長滞留時間に関係し、従って無トボテカンに対して腫瘍の著しい長期薬暴露に関係する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位開口および遠位端壁を有する第一細長管状部材、供給源に連結できるように構成された第二細長管状部材、および強化部材を含み、
第二細長管状部材は第一細長管状部材を貫通する一部、および前記遠位端壁を超える遠位端を有し、
第一および第二管状部材は第一管状部材内に環状キャビティを形成し、
前記強化部材は、哺乳類体内の標的組織に対して遠位端の精確設置を促進するために環状キャビティ内に設置された少なくとも一部を有し、かつ哺乳類体から第二細長管状部材を除去することなく、かかる設置後に環状キャビティから除去可能である、哺乳類体の標的組織に供給源から薬を配送するためのカテーテル。
【請求項2】
前記遠位端は5から15mmの範囲の距離にわたり端壁から伸長している、請求項1のカテーテル。
【請求項3】
前記強化部材は、第一および第二細長部から形成され、第一および第二細長部は、標的組織への薬の配送を向上させるために供給源から第二細長管状部材の分離を伴うことなく第一および第二細長管状部材から前記強化部材の除去を可能にするために相互から分離可能である、請求項1のカテーテル。
【請求項4】
第二細長管状部材の遠位端は剛性である、請求項1のカテーテル。
【請求項5】
近位開口および遠位端壁を有する第一細長管状部材、供給源に連結できるように構成された第二細長管状部材、および強化部材を含み、
第二細長管状部材は第一細長管状部材を貫通する一部、および前記遠位端壁を超える遠位端を有し、
前記強化部材は、標的組織に対して遠位端の精確設置を促進するに第一および第二細長管状部材の少なくとも一つにより除去可能に担持され、かつ標的組織への薬の配送を向上させるために設置後に前記供給源からの第二細長管状部材の分離を伴うことなく第一および第二細長管状部材から分離可能である、哺乳類体の標的組織に供給源から薬を配送するためのカテーテル。
【請求項6】
前記強化部材は第二細長管状部材の少なくとも一部の周りに延在する、請求項5のカテーテル。
【請求項7】
供給源に連結できるように構成された細長管状部材、および
標的組織に対して遠位端の精確設置を促進するために細長管状部材により除去可能に担持された強化部材を含み、
前記細長管状部材は標的組織へ薬を配送するように構成された遠位端を有し、
前記強化部材は標的組織への薬の配送を向上させるために供給源から前記細長管状部材を分離することなく設置後に前記細長管状部材から摺動自在に除去可能である、哺乳類体の標的組織へ供給源から薬を配送するためのカテーテル。
【請求項8】
前記強化部材は、前記細長管状部材の少なくとも一部の周りに延在する、請求項7のカテーテル。
【請求項9】
前記細長管状部材の遠位端は剛性である、請求項7のカテーテル。
【請求項10】
剛性でありかつ遠位先端を有するカテーテルを提供し、
前記遠位先端を哺乳類体の中間組織を介して標的組織に隣接する位置へ前進させ、
哺乳類体内へのカテーテルの設置後にカテーテルの剛性を低下させ、
カテーテルを介して薬を標的組織へ導入することを含み、
カテーテルの剛性の低下が標的組織への薬の配送時に遠位先端の移動を最小限にする、哺乳類体の中間組織を超えて設置された薬を標的組織へ配送する方法。
【請求項11】
剛性の低下は、カテーテルから強化部材を除去することを含む、請求項10の方法。
【請求項12】
遠位先端、および前記遠位先端に剛性を付与するために遠位先端に連結された強化部材を有するカテーテルを用意し、
カテーテルを供給源に連結し、
前記遠位先端を哺乳類体の中間組織を介して標的組織に隣接する位置へ前進させ、
哺乳類体からカテーテルを引き出すことなくカテーテルの遠位先端から前記強化部材を除去し、かつ
カテーテルを介して標的組織へ薬を導入することを含み、
哺乳類体からカテーテルを引き出すことなくカテーテルの遠位先端から前記強化部材を除去することが薬による標的組織の処置を向上させる、哺乳類体の中間組織を超えて設置された薬を標的組織へ供給源から配送する方法。
【請求項13】
前記除去することが供給源からカテーテルの分離を伴うことなくカテーテルの遠位先端から強化部材を除去することを含む、請求項12の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−527280(P2010−527280A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508622(P2010−508622)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/064011
【国際公開番号】WO2008/144585
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509316604)メドジェネシス セラピューティクス インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】