説明

除塵装置

【課題】 除塵機能を低下させることなく除塵ロールによるワークの巻き上がりを防止する。
【解決手段】 送材ベルト13よりも幅の小さい複数の除塵ロール22がワーク搬送方向に間隔を空けた3本の回転軸28A、28B、28Cに分かれて支持され、異なる回転軸の除塵ロール22がワークの幅方向に連なるように配されている。したがって、幅方向全体に亘って連続する1個の除塵ロールをワークに接触させる場合に比べると、ワークに対する除塵ロール22の接触面積、即ち除塵用粘着面29によるワークの巻き上げ力が小さくなる。よって、除塵用粘着面29の粘着力を低下させなくても、ワークの巻き上がりが防止される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント基板などのワークの表面に付着した塵を除去する方法を改良した除塵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、プリント基板に印刷処理を施す直前にそのプリント基板の表面に付着した塵を除去する場合や、樹脂材に研磨処理を施す直前にその樹脂材の表面に付着した塵を除去する場合のように、ワークの表面に付着した塵を除去するための除塵装置としては、次のようなものが公知である。
【0003】これは、水平に並べられて回転する多数の送りロールからなる搬送機構、または、ロール間に水平に掛け渡した送材ベルトからなる搬送機構によって一方向に搬送されるワークの通過領域に、外周面を粘着面とした除塵ロールを設けて構成される。ワークが搬送されると、そのワークに対して粘着面を接触させて除塵ロールが回転し、その粘着面の粘着力によりワークの表面に付着している異物を除去するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の除塵装置では、除塵ロールがその軸方向(ワーク搬送方向を横切る方向)の全長に亘ってワークの表面に粘着面を接触させるようになっているため、粘着面の粘着力が強い場合やワークが柔らかい材質のものである場合には、ワークが粘着面の粘着力により除塵ロールに巻き上げられて搬送面から浮き上がってしまう虞がある。そこで、その対策として粘着面の粘着力を弱くすることも考えられるが、このようにすると除塵機能が低下するという不具合が生じることになる。
【0005】本願発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、除塵機能を低下させることなく除塵ロールによるワークの巻き上がりを防止することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、ワークを搬送する搬送機構と、外周が粘着面となった除塵ロールとを備え、搬送されるワークに対して粘着面を接触させて除塵ロールを回転させることによりそのワークの表面の異物を除去するものにおいて、粘着面を、ワークの搬送方向を横断する方向において複数に分割すると共に搬送方向に沿って前後に複数列設け、前後に異なる列の各粘着面がワークを横断するように連なるように配置したところに特徴を有する。
【0007】請求項2の発明は、請求項1の発明において、除塵ロールはワークの搬送方向を横断する方向において分割して複数個設けられ、ワークの搬送方向における上流側の列の除塵ロール同士の間に下流側の列の除塵ロールを割り込ませて配置した構成としたところに特徴を有する。請求項3の発明は、請求項2の発明において、ワーク搬送方向上流側の除塵ロールとこの上流側の除塵ロールの間に割り込ませた下流側の除塵ロールとによって構成される除塵ロール群をワーク搬送方向に沿って2群並べて設け、ワーク表面における上流側の除塵ロール群が接触しない領域に下流側の除塵ロールが接触するように双方の除塵ロール群を配置したところに特徴を有する。
【0008】請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明において、搬送されるワークに対して最後に接触する粘着面の粘着力を他の粘着面の粘着力よりも小さくしたところに特徴を有する。
【0009】
【発明の作用及び効果】請求項1の発明においては、搬送されるワークに対して、まず最も上流側の列の粘着面が接触し、その後、下流側の列の粘着面が順次に接触するようになる。異なる列の粘着面はワークを横断するように連なって配置されているため、上流側の粘着面が接触しなかった部分に対して下流側の粘着面が接触するようになり、最終的にワークの全ての領域に亘って粘着面が接触することになる。また、各列の粘着面はワーク搬送方向を横断する方向に分割されているから、ワークに対する粘着面の接触面積が小さく抑えられている。これは、個々の粘着面による粘着力が大きくても、複数の粘着面によってワークを巻き上げようとする力が小さく抑えられることを意味する。このように、本発明によれば、除塵機能を低下させることなく除塵ロールによるワークの巻き上がりを防止することができる。
【0010】請求項2の発明においては、ワークの搬送領域を横断する方向に視たとき、ワークに対して先に接触する上流側の粘着面の円弧に沿った斜め上方に向かう回転経路と、その下流側の粘着面の円弧に沿った斜め下方に向かう回転経路とが交差している。したがってワークは、上流側の粘着面によって斜め上方へ巻き上げられたとしても、その巻き上げ途中で下流側の粘着面によって斜め下方へ押さえ込まれて正規の搬送経路に戻るように矯正される。このように、ワークが巻き上げられたとしてもその巻き上げを確実に解除できるため、高い除塵機能と確実な巻き上げ防止機能とを両立させることができる。しかも、上流側の除塵ロールの間に下流側の除塵ロールが割り込まない場合に比べると、ワーク搬送方向において除塵ロールを配置するために必要な長さが短くて済み、省スペース化を図ることができる。
【0011】請求項3の発明においては、除塵ロール群における上流側の除塵ロールと下流側の除塵ロールと間には双方の除塵ロールの干渉回避のために軸方向に隙間が空けられ、この隙間の部分がワークに対して非接触となる。しかし、上流側の除塵ロール群における非接触領域に対して、下流側の除塵ロール群の各除塵ロールが接触するため、ワークの表面における全ての領域に亘って粘着面を接触させて確実に除塵することができる。
【0012】請求項4の発明においては、ワークに対して最後に接触する粘着面の粘着力を小さくしたことにより、その最後の粘着面がワークを巻き上げるという虞がなくなる。したがって、ワークは巻き上げられることなく粘着面による除塵領域を確実に通過することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
<実施形態1>以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図6を参照して説明する。全体的構成は図1に示すように、ハウジング100内においてワークWの搬送機構10の上方に除塵機構20を設けると共に除塵機構20の上方に剥離機構40を設けた構造になっている。
【0014】<搬送機構10>まず、搬送機構10について述べる。ハウジング100の内部においては、駆動ロール11と従動ロール12が設けられているとともに、この両ロール11、12の間に無端状の送材ベルト13が掛け回されており、これによってベルトコンベア形式の搬送機構10が構成されている。駆動ロール11が図示しないモータによって駆動されると、送材ベルト13が走行してその送材ベルト13に載置されたワークWが図1に矢線で示す方向(同図の右方向)へ搬送されるようになっている。
【0015】<除塵機構20>次に、除塵機構20について述べる。除塵機構20は、上記搬送機構10によるワークWの搬送方向において間隔を空けて配置した上流側(図1及び図2における左側)と下流側の2つの除塵ロール群21U、21Lを備えてなり、各除塵ロール群21U、21Lは、夫々、外径寸法と軸方向の幅寸法が同一の6個の除塵ロール22によって構成されている。各除塵ロール群21U、21Lにおける除塵ロール22の支持構造は次のようになる。送材ベルト13の両側には一対のエアシリンダ23がそのロッド23Aを上向きにして設けられ、その両ロッド23Aの上端にはブラケット24を介すことによって支持枠25が支持されている。支持枠25は上下両面が開放した方形状をなし、エアシリンダ23の作動により送材ベルト13の上方において昇降駆動されるようになっている。
【0016】また、送材ベルト13の両側には、ガイド筒26に上下動可能に案内された一対ずつの昇降バー27が設けられ、この昇降バー27の上端に支持枠25の四隅が連結されている。これにより、支持枠25が昇降の際に一定の姿勢に保たれるようになっている。支持枠25にはワークWの搬送方向を横切るように3本の回転軸28A、28B、28Cが支持されており、この3本の回転軸28A、28B、28Cは同じ高さでワーク搬送方向に沿って一定間隔を空けて配置されている。3本の回転軸28A、28B、28Cのうちの最も上流側に位置する回転軸28A(以下、第1回転軸という)には、3個の除塵ロール22が一体回転するように取り付けられ、中央に位置する回転軸28B(以下、第2回転軸という)には2個の除塵ロール22が一体回転するように取り付けられ、最も下流側に位置する回転軸28C(以下、第3回転軸という)には1個の除塵ロール22が一体回転するように取り付けられている。かかる除塵ロール22は、後述する機構により図1の反時計方向に回転駆動されるようになっている。
【0017】ここで除塵ロール22について説明すると、各除塵ロール22は、その外周に例えばウレタンゴム板(図示せず)を巻回して構成されている。ウレタンゴム板は化学構造としてはポリウレタンとして表されるもので比重は1.00〜1.30である。ウレタンゴム板の表面は粘着性を有しており、このウレタンゴム板の粘着性能により除塵ロール22の外周面は除塵用粘着面(本発明の構成要件である粘着面)29となっている。また、塵の粘着除去という観点からは、ウレタンゴム板の硬度は10〜30°であることが好ましく、本実施形態では、第1回転軸28Aの3個の除塵ロール22と第2回転軸28Bの2個の除塵ロール22については硬度30°のものを使用している。一方、第3回転軸28Cの1個の除塵ロール22については、第1回転軸28A及び第2回転軸28Bの5個の除塵ロール22よりも粘着性能の低いウレタンゴム板が用いられている。
【0018】これらの除塵ロール22の配置は次のようになる。図2に示すように、第1回転軸28Aの3個の除塵ロール22同士の間には、軸方向において除塵ロール22の幅寸法よりも少し大きい間隔が空けられている。第2回転軸28Bの2個の除塵ロール22は、第1回転軸28Aの除塵ロール22間の間隙に対応して配置され、且つその間隙内に部分的に割り込むように配置されている。したがって、第2回転軸28Bの除塵ロール22同士の間にも軸方向において除塵ロール22の幅寸法よりも少し大きい間隔が空けられている。さらに、第3回転軸28Cの1個の除塵ロール22は、第2回転軸28Bの除塵ロール22の間隙に対応して配置され、且つその間隙内に部分的に割り込むように配置されている。このように、異なる列(回転軸)の除塵ロール22がワークWを横断するように連なるように配置されている。
【0019】かかる配置とした除塵ロール群21U、21Lを回転軸28A、28B、28Cの軸方向(ワークWの搬送方向を横断する方向)に視ると、図6に拡大して示すように、上流側に位置する除塵ロール22の除塵用粘着面29に沿って斜め上方に向かう回転経路と、その下流側に位置する除塵ロール22の除塵用粘着面29の円弧に沿って斜め下方に向かう回転経路とが交差している。また、異なる回転軸の除塵ロール22同士の間には互いに軸方向に僅かな隙間S(図5に示す)が空けられていると共に、除塵ロール22と回転軸28A、28B、28Cとの間にもワーク搬送方向に僅かな隙間が空けられている。これにより、除塵ロール22同士の干渉、及び、除塵ロール22と回転軸28A、28B、28Cとの干渉が回避され、除塵ロール22が円滑に回転することができるようになっている。
【0020】上記除塵ロール群21U、21Lの基本的な構成は上流側のものも下流側のものも同じであるが、上流側の除塵ロール群21Uの除塵ロール22は、全体としてワーク搬送方向に向かって左側(図2における上側)寄りにずれて配置され、下流側の除塵ロール群21Lの除塵ロール22は、全体としてワーク搬送方向に向かって右側寄りにずれて配置されている。かかる配置としたことにより、図5に示すように、一方の除塵ロール群21U、21Lにおける除塵ロール22同士の軸方向の隙間Sに対して他方の除塵ロール群21U、21Lの除塵ロール22が互いに対応し合うようになる。即ち、ワークWの表面において上流側の除塵ロール群21U、21Lが接触できなかった領域に対し、下流側の除塵ロール群21U、21Lが接触するようになり、ワークWが双方の除塵ロール群21U、21Lを通過するればワークWの表面における全ての領域に亘って除塵ロール22の除塵用粘着面29が接触するようになっている。
【0021】除塵ロール22の回転駆動機構は次のようになる。上流側の除塵ロール群21U、21Lにおける3本の回転軸28A、28B、28Cのワーク搬送方向に向かって左側(図2の上側)の端部には、夫々、従動ギヤ30が一体回転するように取り付けられ、また、支持枠25の左外側面には、これら3個の従動ギヤ30に噛み合わされた2個の中間ギヤ31が回転自由に支持されており、かかるギヤ30、31の噛み合いにより3本の回転軸28A、28B、28C及び6個の除塵ロール22が同じ回転速度で同じ方向に連動回転するようになっている。一方、下流側の除塵ロール群21Lにおいても、上記の同様に、3個の従動ギヤ30と2個の中間ギヤ31との噛み合いにより、3本の回転軸28A、28B、28C及び6個の除塵ロール22が同じ回転速度で同じ方向に連動回転するようになっている。
【0022】また、ハウジング100に固定して設けたテーブル101においては、モータ32が取り付けられていてその出力軸32Aがクラッチ33を介して駆動ギヤ34に連結されていると共に、この駆動ギヤ34の下流側に位置させて連動ギヤ35が設けられている。駆動ギヤ34と連動ギヤ35には夫々プーリ36、37が固着されているとともに両プーリ36、37の間にはタイミングベルト38が掛け回されており、駆動ギヤ34と連動ギヤ35が同一速度で同方向に回転するようになっている。
【0023】駆動ギヤ34の斜め上方には、上流側の除塵ロール群21Uにおける第3回転軸28Cの従動ギヤ30が配置されており、連動ギヤ35の斜め上方には、下流側の除塵ロール群21Lにおける第1回転軸28Aの従動ギヤ30が配置されている。エアシリンダ23の作動により上流側の支持枠25が下降して除塵ロール22が送材ベルト13との間でワークWを挟み付ける高さに位置すると、従動ギヤ30が駆動ギヤ34に噛み合って除塵ロール22がワークの搬送速度と同じ周速度で回転駆動されるようになる。また、支持枠25が上昇することにより除塵ロール22がワークWから離間して後述する剥離ベルト41と接触する高さになると、従動ギヤ30が駆動ギヤ34から離間して回転自由状態となる。同様に、下流側の支持枠25が下降すると従動ギヤ30が連動ギヤ35と噛み合って除塵ロール22がワークWの搬送速度と同じ周速度で回転駆動され、上昇すると除塵ロール22が回転自由状態となる。
【0024】<剥離機構40>剥離機構40は、除塵機構20においてワークWから除塵ロール22に移し取られた塵を除塵ロール22から除去してその除塵能力を回復されるためのものである。剥離機構40は、後述する複数のロールに無端状の剥離ベルト41を掛け回した構成になる。剥離ベルト41は、伸び防止用のベルト状基材(図示せず)の外周側表面に特殊粘着エラストマーからなるベルト状粘着材(図示せず)を貼り付けた構造になり、かかる剥離ベルト41の外周面は剥離用粘着面42となっている。この剥離用粘着面42の粘着力は除塵ロール22の除塵用粘着面29よりも強く、両粘着面29、42が密着すると除塵用粘着面29上の付着物が剥離用粘着面42に移し取られるようになっている。また、剥離用粘着面42上の付着物は水で擦り洗いすることによって容易に除去することができ、これによって、剥離用粘着面42の粘着性能が保たれるようになっている。
【0025】上流側及び下流側の除塵ロール群21U、21Lにおける各回転軸28A、28B、28Cの除塵ロール22の真上には、夫々、押えロール43が設けられている。これらの押えロール43は、除塵ロール22が上昇してワークWと非接触状態となったときにその除塵ロール22に剥離ベルト41の剥離用粘着面42を接触させる高さに設定されている。押えロール43のワーク搬送方向における上流側には、押えロール43よりも高い位置に配置してテンションロール44が設けられている。このテンションロール44に対して剥離ベルト41はその剥離用粘着面42を接触させつつ掛け回されるが、テンションロール44の外周には例えばシリコンゴム板(図示せず)が巻回されていて、このシリコンゴム板に剥離用粘着面42が密着しても粘着しないようになっている。
【0026】テンションロール44のさらにワーク搬送方向上流側の位置には水洗装置45が設けられている。水洗装置45はテンションロール44よりも低い高さに支持された水洗用ロール46を備えている。水洗用ロール46の下側には水洗用タンク47が設けられており、水洗用タンク47内においては、図示しない注水口から注水される状態で洗浄水48が一定量貯留されるようになっている。また、水洗用タンク47内には、図示しないモータにより駆動される例えばナイロン製の洗浄用回転ブラシ49が洗浄水48中に漬かる状態で支持されており、この洗浄用回転ブラシ49が回転しながら剥離ベルト41の剥離用粘着面42を擦るようになっている。
【0027】水洗用ロール46の上方には水切り装置50が設けられている。水切り装置50は、ハウジング100に固定して設けた上下2つの水切り用受けロール51と、この両水切り用受けロール51に対してエアシリンダ52により押圧される上下2つの水切り用押えロール53とを備えてなり、水切り用受けロール51と水切り用押えロール53との間で剥離ベルト41が挟み付けられて水切りされるようになっている。これらのロール51、53は芯筒(図示せず)の外周に筒形のスポンジ(図示せず)を装着したものであり、スポンジは、親水性高分子であるポリビニルアルコールを原料とし、極微細な連続気孔により優れた吸水及び保水能力を有すると共に柔軟性及び耐摩耗性を備えた材料からなっている。なお、スポンジの目は、下側の水切り用ロール51、53が粗く、上側の水切り用ロール51、53が細かくなっている。
【0028】かかる水切り装置50の上方には乾燥装置55が設けられている。乾燥装置55を構成する箱状の乾燥炉56の一端の下面には入口孔57が形成され、他端の側面には出口孔58が形成されている。乾燥炉56の内部における入口孔57の近くには第1転向ロール59が設けられに、乾燥炉56の外部における出口孔58の近くには第2転向ロール60が設けられている。乾燥炉56内には、剥離ベルト41の基材の表面及び剥離用粘着面42に向けて上下両側から熱風を吹きつける2つのブロア61が設けられている。
【0029】そして、図示しないモータによって回転駆動される第1転向ロール59と第2転向ロール60の回転力により、剥離ベルト41は、押さえロール43と除塵ロール22との間、テンションロール44、水洗装置45、水切り装置50、乾燥装置55を順に通る経路で循環走行するようになっている。上記剥離機構40においては、後述するように除塵ロール22がワークWの塵を除塵用粘着面29に移し取って除塵を行った後、除塵ロール22が上昇して剥離ベルト41に密着しつつ転動すると、除塵用粘着面29上の塵が剥離用粘着面42の強い粘着力によって剥離ベルト41に移し取られ、もって除塵ロール22の徐塵能力(除塵用粘着面29の粘着力)が回復する。除塵ロール22から塵を移し取った剥離ベルト41は、水洗装置45において洗浄用回転ブラシ49で擦られることにより塵を除去された後、水切り装置50において水切り用ロール51、53に水分を殆ど吸収され、最後に乾燥装置55においてブロア61からの熱風により完全に乾燥される。これにより、剥離ベルト41は粘着能力を回復し、再び除塵ロール22に付着している塵の除去を行う。以上によって除塵ロール22と剥離ベルト41の粘着能力を回復させるようになっている。
【0030】次に本実施形態の作用について述べる。上面に塵の付着したワークWを搬送機構10によって搬送して上流側の除塵ロール群21Uと下流側の除塵ロール群21Lの下を順に通過させると、これらの除塵ロール22の除塵用粘着面29をワークWの上面に粘着させることによりワークWから塵を除去する。この間、搬送されるワークWに対して、最初に上流側の除塵ロール群21Uの第1回転軸28Aの3個の除塵ロール22が接触し、次にこれよりも下流側に位置する5本の回転軸28A、28B、28Cの除塵ロール22が順に接触していることになる。これらの除塵ロール22は、ワークWの幅方向(除塵ロール22の軸方向)の全体に亘って連続しているのではなくて分断して設けられているが、各回転軸28A、28B、28Cの除塵ロール22は、夫々、他の回転軸28A、28B、28Cの除塵ロール22に対して互いに軸方向に位置をずらせて配置されているため、各回転軸28A、28B、28Cを通過する毎にワークW上において除塵ロール22の接触が済んだ領域(除塵が済んだ領域)が順に広がっていく。そして、最後にワークWが下流側の除塵ロール群21Lの第3回転軸28Cの除塵ロール22を通過すると、ワークWの全体に亘る全ての領域に除塵ロール22が接触することになる。したがって、ワークWの上面に対してもれなく除塵が行われる。
【0031】尚、ワークWに対して除塵が行われている間、双方の除塵ロール群21U、21LはワークWと接触する下降位置に常時待機させていてもよく、ワークWの搬送位置に合わせて各除塵ロール群21U、21Lを昇降させるようにしてもよい。除塵ロール群21U、21Lを常時下降位置に待機させておく場合には、一定時間経過後に一旦ワークWの搬送を停止し、除塵ロール群21U、21Lを上昇させることにより剥離機構40によって除塵能力の回復を図るようにする。また、除塵ロール群21U、21LをワークWの搬送に合わせて昇降させる場合には、ワークWを間隔を空けて搬送する必要があるが、除塵ロール群21U、21Lが昇降する毎に除塵動作と粘着力の回復動作とが交互に行われるため、連続運転することが可能となる。
【0032】さて、一般に除塵ロール22をワークWの上面に粘着させて除塵を行う場合にはワークWが除塵用粘着面29の粘着力によって上方へ巻き上げられることがあるが、本実施形態ではそのようなワークWの巻き上がりの防止または巻き上げられたワークWの矯正が行われるようになっている。例えばワークWの幅が広くて送材ベルト13の幅全体に亘って配置された状態で搬送される場合には、そのワークWに対する除塵ロール22の接触領域がワークWの幅全体に亘って連続するのではなく幅方向において複数に分断された状態となる。即ち、本実施形態では除塵ロール22が軸方向(ワークWの幅方向)に分割して設けられているため、除塵ロールがワークの幅全体に亘って連続して接触する場合に比べると、ワークWに対する除塵用粘着面29の接触面積が小さく抑えられている。これは、除塵用粘着面29による巻き上げ力が小さく抑えられていることを意味しており、したがって、本実施形態においては除塵用粘着面29によるワークWの巻き上げが防止されている。
【0033】しかし、ワークWが薄いものである場合や柔らかい材質のものである場合には、除塵用粘着面29によるワークWの巻き上げが発生することもある。しかし、本実施形態では、除塵ロール群21U、21Lを軸方向に視たときにワーク搬送方向に隣接する列の除塵用粘着面29同士が重なるようにしてある。したがって、図6(a)に示すようにワークWが除塵用粘着面29に巻き上げられても、そのワークWの巻き上げられた先端縁が下流側の除塵用粘着面29に対して斜めに当たり、図6(b)に示すようにワークWは座屈することなく上流側の除塵用粘着面29から剥がされて下方へ押さえ込まれ、正規の搬送経路に戻されるようになる。
【0034】上述の過程では、下流側になるほどワークWに対する除塵ロール22の粘着面積が小さくなると共に、幅方向における除塵ロール22の配置領域が狭まるようになっているため、ワークWの搬送が進むにつれて除塵ロール22による巻き上げ力が小さくなっていく。しかも、下流側に位置する除塵ロール22を急に少なくするのではなくて1個ずつ少なくなるようにしてあるから、巻き上げられたワークWを戻す機能が大きく低下しないようになっている。これにより、巻き上げられたワークWを確実に戻して円滑に除塵ロール22の下を通過させることができるようになっている。
【0035】尚、第3回転軸28Cの除塵ロール22については、これよりも下流側に除塵ロール22が存在しないのであるが、この第3回転軸28Cに設けた除塵ロール22は1個だけであり、且つその除塵用粘着面29の粘着力は十分に小さく設定されているから、ワークWを巻き上げる力は殆どない。したがって、ワークWは送材ベルト13から浮き上がらずに第3回転軸28Cの除塵ロール22を通過することができる。
【0036】このように、本実施形態によれば、除塵用粘着面29によるワークWの巻き上げ防止が図られているとともに、仮にワークWが巻き上げられたとしてもそのワークWを正常な状態に矯正するようにしているから、ワークWに対する円滑な搬送と除塵を確実に行うことができる。しかも、巻き上げ防止のために除塵用粘着面29の粘着能力を低下させる必要がないから、高い除塵能力を発揮することができる。
【0037】<実施形態2>次に、本発明を具体化した実施形態2を図7を参照して説明する。本実施形態は、上記実施形態1において除塵ロールの配置を変更したものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。上記実施形態1では上流側と下流側に分かれた2つの除塵ロール群21U、21Lを設けたのに対し、本実施形態2では1つの除塵ロール群71にまとめられ、この除塵ロール群71を構成する複数の除塵ロール72と押え込みロール74は1つの支持枠(図示せず)によりワークWの搬送方向において6列に等間隔に分かれて支持されている。
【0038】除塵ロール72の配置は次のようになる。まず、最も上流側(図7における左側)の回転軸(以下、第1回転軸という)73Aにおいては4個の除塵ロール72が軸方向に間隔を空けて配置され、その下流側に隣接する回転軸(以下、第2回転軸という)73Bにおいては3個の除塵ロール72が同じく軸方向に間隔を空けて配置され、第2回転軸73Bの除塵ロール72が第1回転軸73Aの除塵ロール72の間に割り込んでいる。
【0039】この第1回転軸73Aと第2回転軸73Bの除塵ロール72同士の間には軸方向に6カ所の隙間Sが空いているが、そのうちの両端の2カ所の隙間Sに対応する2個の除塵ロール72が第4回転軸73Dに設けられている。この除塵ロール72を第3回転軸73Cではなく第4回転軸73Dに設けたのは第2回転軸73Bの除塵ロール72との干渉を避けるためである。第3回転軸73Cには、第2回転軸73Bの除塵ロール72に巻き上げられたワークWを押さえ込むための2個の押え込みロール74が第2回転軸73Bの除塵ロール72の間に割り込ませて設けられている。
【0040】第5回転軸73Eには、第1回転軸73Aと第2回転軸73Bの除塵ロール72の隙間Sのうちの中央の4カ所の隙間に対応する4個の除塵ロール72が設けられている。この除塵ロール72を第4回転軸73Dではなく第5回転軸73Eに設けたのは第3回転軸73Cの押え込みロール74との干渉を回避するためである。第6回転軸73Fには、第5回転軸73Eの除塵ロール72によって巻き上げられたワークWを押さえ込むための2個の押え込みロール74が、第4回転軸73Dの除塵ロール72と対応するように設けられている。この第6回転軸73Fの押え込みロール74の間には第5回転軸73Eの4個の除塵ロール72が割り込んだ状態となっている。尚、押え込みロール74の外周面は粘着力を弱くした除塵用粘着面としてもよく、全く粘着力のない面としてもよい。
【0041】本実施形態2においても、除塵ロール72の除塵用粘着面によるワークWの巻き上げ防止が図られているとともに、仮にワークWが巻き上げられたとしてもそのワークWを正常な状態に矯正するようにしているから、ワークWに対する円滑な搬送と除塵を確実に行うことができる。しかも、巻き上げ防止のために除塵用粘着面の粘着能力を低下させる必要がないから、高い除塵能力を発揮することができる。
【0042】<他の実施形態>本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では最後にワークに接触する除塵ロールの除塵用粘着面の粘着力を小さくするようにしたが、本発明によれば、外周面を粘着力のない非粘着面とした押さえロールをワークに対して最後に接触するように設けるようにしてもよい。この場合にも、ワークを巻き上げずに除塵ロールによる除塵領域を通過させることができる。
【0043】(2)上記実施形態では各除塵ロール群において上流側の列の除塵ロールの間に下流側の列の除塵ロールを割り込ませるように配置したが、本発明によれば、上流側の除塵ロールの間に下流側の除塵ロールを割り込ませないように配置するようにしてもよい。かかる構成において、上流側と下流側の除塵ロールの間隔が狭い場合やワークの剛性が高い場合には、たとえワークが巻き上げられてもそのワークの先端が低いうちに下流側の除塵ロールに当たって下に押さえ込まれるようになるため、ワークは大きく巻き上げられることなく除塵ロールによる除塵領域を通過することができる。尚、上流側と下流側の除塵ロールの間隔が広い場合やワークが柔らかい場合には、各列の除塵用粘着面毎に巻き上がりを防止する必要があるため、同時に接触する除塵用粘着面の総面積を小さくするか、各除塵用粘着面の粘着力を弱めることが望ましい。
【0044】(3)また、上記(2)のように上流側の列の除塵ロールの間に下流側の列の除塵ロールを割り込ませないように配置した場合には、上流側の除塵ロール同士の軸方向の間隔寸法よりも下流側の除塵ロールの軸方向の寸法を長くしてもよい。このようにすると、1つの除塵ロール群だけでワークの表面の全領域に亘って除塵用粘着面を接触させることができるため、1つの除塵ロール群を設けるだけで済むようになり、省スペース化を図ることができる。
【0045】(4)軸方向全長に亘って均一外径のロールに、外周面が除塵用粘着面となる複数枚のウレタンゴム板を軸方向に分割した複数位置に巻回して1個の除塵ロールを構成してもよい。このようにしても、軸方向に分割された複数の粘着面を設けることができる。
(5)除塵ロールの除塵用粘着性表面を構成する材料としては、ウレタンゴムに限らず、他の粘着性材料であってもよい。なお、ウレタンゴムとする場合には、ワークに付着する塵の材質や大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0046】(6)各列における軸方向の除塵用粘着面の長さや分割数、除塵用粘着面の列の数については、上記実施形態に示したものに限定されることはなく、ワークの寸法、ワークに付着する異物の量、粘着力の強さ等の除塵条件に応じて適切に設定することができる。
(7)上記実施形態ではベルトコンベア形式の搬送機構としたが、本発明によれば、複数本の送りロール11を平行に並べて同速度で連動回転するようにしたローラコンベアを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の正面図
【図2】実施形態1の平面図
【図3】実施形態1における除塵ロールの昇降機構をあらわす部分正面図
【図4】実施形態1における除塵ロールの回転駆動機構をあらわす部分正面図
【図5】実施形態1における除塵ロールの配置をあらわす平面図
【図6】実施形態1におけるワークの巻き上がりを矯正する動作をあらわす部分拡大正面図
【図7】実施形態2における除塵ロールの配置をあらわす平面図
【符号の説明】
W…ワーク
10…搬送機構
21U、21L…除塵ロール群
22…除塵ロール
29…除塵用粘着面(粘着面)
71…除塵ロール群
72…除塵ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワークを搬送する搬送機構と、外周が粘着面となった除塵ロールとを備え、搬送される前記ワークに対して前記粘着面を接触させて前記除塵ロールを回転させることによりそのワークの表面の異物を除去するものにおいて、前記粘着面を、前記ワークの搬送方向を横断する方向において複数に分割すると共に前記搬送方向に沿って前後に複数列設け、前後に異なる列の各粘着面が前記ワークを横断するように連なるように配置したことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】 除塵ロールはワークの搬送方向を横断する方向において分割して複数個設けられ、前記ワークの搬送方向における上流側の列の除塵ロール同士の間に下流側の列の除塵ロールを割り込ませて配置したことを特徴とする請求項1記載の除塵装置。
【請求項3】 ワーク搬送方向上流側の除塵ロールとこの上流側の除塵ロールの間に割り込ませた下流側の除塵ロールとによって構成される除塵ロール群をワーク搬送方向に沿って2群並べて設け、ワーク表面における上流側の除塵ロール群が接触しない領域に下流側の除塵ロールが接触するように双方の除塵ロール群を配置したことを特徴とする請求項2記載の除塵装置。
【請求項4】 搬送されるワークに対して最後に接触する粘着面の粘着力を他の粘着面の粘着力よりも小さくしたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の除塵装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平10−5707
【公開日】平成10年(1998)1月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−163452
【出願日】平成8年(1996)6月24日
【出願人】(000210377)アミテック株式会社 (7)