除染システム
【課題】例えば、NBC物質等の種々の汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる除染システム、を提供することを課題とする。
【解決手段】汚染物質(例えば、NBC(nuclear、biological、chemical)物質)で汚染された人体を除染する除染システム1であって、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される除染システム1とするものである。
【解決手段】汚染物質(例えば、NBC(nuclear、biological、chemical)物質)で汚染された人体を除染する除染システム1であって、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される除染システム1とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムに関する技術は公知となっている。前記種々の汚染物質には、例えば、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。N(nuclear)物質による汚染には、核兵器や原発事故等による放射能汚染がある。B(biological)物質による汚染には、生物兵器による天然痘ウイルスや炭素菌等の汚染がある。C(chemical)物質による汚染には、化学兵器によるサリンやマスタードガス等の汚染がある。
このような除染システムでは、テント内に配置されたシャワーから吐出される水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染する(特許文献1参照)。つまり、このような除染システムでは、水の水流によって汚染物質を人体から剥離するように洗い流して除染する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す除染システムでは、汚染物質で汚染された人体を確実に除染するためには、長時間に亙って水を人体に掛け続けることを要し、また、強い水流の水をシャワーから吐出させる必要があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる除染システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、アルカリ性の水によって前記汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記酸性のオゾン水または前記アルカリ性のオゾン水によって前記予備除染がおこなわれた人体を除染するように構成されるものである。
【0009】
請求項3においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、オゾン水を酸性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水を酸性にする、添加装置を備え、前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0010】
請求項4においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、原料水を酸性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水を酸性にする添加装置と、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0011】
請求項5においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、オゾン水をアルカリ性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする、添加装置を備え、前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0012】
請求項6においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、原料水をアルカリ性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水をアルカリ性にする添加装置と、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
即ち、本発明によれば、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る除染システムの除染部を示した斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図4】同じくブロック図。
【図5】同じくブロック図。
【図6】同じくブロック図。
【図7】同じくブロック図。
【図8】本発明の実施形態に係る除染方法を示したフロー図。
【図9】同じくフロー図。
【図10】本発明の実施形態に係る除染システムの再生部を示したブロック図。
【図11】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図12】除染される人を示した斜視図。
【図13】同じく斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施形態に係る除染システム1を図1から図13を用いて説明する。
除染システム1は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染するものである。前記種々の汚染物質には、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。
除染システム1は、図1に示すように、タンク2と、オゾン水生成装置3と、除染部4と、を備える。
【0017】
除染システム1のタンク2は、原料水(水)が溜められるものである。タンク2に溜められた原料水は、オゾン水生成装置3に供給される。
除染システム1のオゾン水生成装置3は、配管を介してタンク2に接続される。オゾン水生成装置3は、タンク2から供給される原料水からオゾン水を生成するものである。ここで、オゾン水とは、水にオゾン(O3)が溶解されてなるものである。
オゾン水生成装置3によって生成されたオゾン水は、温度調節装置によって、当該オゾン水を掛けられた人(除染される人)が冷た過ぎるまたは熱すぎる等と感じないような所定の温度に温度調節(例えば、26度〜40度に昇温また降温)されて、除染部4に供給される。
【0018】
除染システム1の除染部4では、汚染物質で汚染された人体の除染がおこなわれる。除染部4は、図1または図2に示すように、テント41と、シャワー42と、水受43と、すのこ44と、を有する。
【0019】
除染システム1における除染部4のテント41は、当該テント41内で立った状態で、汚染物質で汚染された人体の除染をおこなうことができるように構成される。
除染部4のテント41は、短時間で設営可能に構成される。除染部4のテント41は、例えば、エアーを吹込むことにより数分間内にドーム状の立体構造とすることができ、また、エアーを抜くことにより折畳むことができるようなエアーテントで構成される。
【0020】
除染システム1における除染部4のシャワー42は、配管を介してオゾン水生成装置3に接続されて、温度調節装置によって温度が調節されたオゾン水を吐出可能に構成される。
除染部4のシャワー42は、そのテント41内に配置される。除染部4のシャワー42は、そのオゾン水の吐出口がテント41の天井近傍に配置されて、除染対象である汚染物質で汚染された人体に向かって上方からオゾン水を吐出するように構成される。
除染システム1における除染部4の水受43は、テント41内に配置される。除染部4の水受43は、シャワー42から吐出されたオゾン水を受けて、当該オゾン水(除染に用いたオゾン水)を水受43の排水孔43aから排水するように構成される。
除染システム1における除染部4のすのこ44は、水受43の上に配置される。
除染システム1では、汚染物質で汚染された人は、除染部4のテント41内においてすのこ44の上に立った状態で、シャワー42から吐出されるオゾン水が掛けられる。
以上のようにして、除染システム1は、オゾン水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される。
【0021】
そして、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がB(biological)物質の場合には、B物質は、前記掛けられたオゾン水によって殺菌されることとなる。人体を汚染する汚染物質がC(chemical)物質の場合には、C物質は、前記掛けられたオゾン水によって分解されることとなる。
このように、B物質が殺菌され、また、C物質が分解されるので、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、B物質またはC物質で汚染された人体を短時間で除染することができ、且つ、強い水流を要さずにB物質またはC物質で汚染された人体を除染することができる。
したがって、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、汚染物質(B物質またC物質)で汚染された人体を容易に除染することができる。
【0022】
また、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がN(nuclear)物質の場合には、N物質は、オゾン水におけるコロイドを凝集する作用によって人体から剥離した後に凝集されることとなる。このため、除染システム1では、除染に用いたオゾン水の排水をろ過する際に、目の細かいフィルタを用いることなく、当該凝集されたN物質を容易に捕集することができ、当該排水からN物質を取除く処理をより容易におこなうことができる。
除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が抵抗性の弱いB物質の場合には、B物質は消毒されて無害化されるので、前記排水に含まれるB物質の消毒処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が抵抗性の強いB物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水されていく過程においてB物質の消毒が進行するので、前記排水に含まれるB物質のその後の消毒処理を容易におこなうことができる。
除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が易分解性のC物質の場合は、C物質は分解されて無害化されるので、前記排水に含まれるC物質の分解処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が難分解性のC物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水される過程においてC物質の分解が進行するので、前記排水に含まれるC物質のその後の分解処理を容易におこなうことができる。
したがって、除染システム1によれば、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、前記排水の処理を容易におこなうことができる。
なお、オゾンは短時間で酸素に戻るため、除染システム1では、前記排水に対するオゾンの中和処理は不要である。
【0023】
除染システム1は、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される。
汚染物質で汚染された人体を除染するオゾン水が酸性のオゾン水の場合には、当該オゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、前記酸性のオゾン水では、オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
また、汚染物質で汚染された人体を除染するオゾン水がアルカリ性のオゾン水の場合には、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
したがって、除染システム1によれば、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる。
【0024】
酸性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染する除染システム1の構成としては、以下のようなものがある。
【0025】
除染システム1は、図1に示すように、オゾン水を酸性にする添加物をオゾン水に添加する添加装置8aを備えて構成される。
除染システム1の添加装置8aは、オゾン水生成装置3の下流側に配置される。添加装置8aは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水にこれを酸性にする添加物を添加して、当該オゾン水を酸性にする。
前記オゾン水を酸性にする添加物としては、例えば、クエン酸、炭酸、塩酸、また、酢酸等がある。
【0026】
このように、除染システム1の添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされたオゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされたオゾン水では、当該オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
【0027】
また、除染システム1の添加装置8aは、図3に示すように、オゾン水生成装置3の上流側であって、タンク2の下流側に配置されてもよい。
このとき、添加装置8aは、タンク2からオゾン水生成装置3に供給される前の原料水にこれを酸性にする添加物を添加して、当該原料水を酸性にする。そして、オゾン水生成装置3は、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成する。
【0028】
このように、除染システム1の添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされた原料水から生成された酸性のオゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされた原料水から生成されたオゾン水では、当該オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
【0029】
アルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染する除染システム1の構成としては、以下のようなものがある。
【0030】
除染システム1は、図4に示すように、オゾン水をアルカリ性にする添加物をオゾン水に添加する添加装置8bを備えて構成される。
除染システム1の添加装置8bは、オゾン水生成装置3の下流側に配置される。添加装置8bは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水に添加物を添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする。
前記オゾン水をアルカリ性にする添加物としては、例えば、重曹、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石鹸(界面活性剤)、また、ヨウ化カリウム等がある。
【0031】
このように、除染システム1の添加装置8bによって添加物が添加されてアルカリ性にされたオゾン水では、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
【0032】
また、除染システム1の添加装置8bは、図5に示すように、オゾン水生成装置3の上流側であって、タンク2の下流側に配置されてもよい。
このとき、添加装置8bは、タンク2からオゾン水生成装置3に供給される前の原料水にこれをアルカリ性にする添加物を添加して、当該原料水をアルカリ性にする。そして、オゾン水生成装置3は、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成する。
【0033】
このように、除染システム1の添加装置8bによって添加物が添加されてアルカリ性にされた原料水から生成されたアルカリ性のオゾン水では、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
【0034】
除染システム1の添加装置8a・8bによって添加される添加物の量は、除染される人体に影響を及ぼさない範囲で任意のpHの酸性またはアルカリ性となるように、適宜決定できるものとする。
なお、常温において、オゾン水がpH9の場合には、その自己分解半減期は約2分であり、オゾン水がpH7の場合には、その自己分解半減期が約40分であり、オゾン水がpH5の場合には、その自己分解半減期が約120分である。
【0035】
除染システム1の除染部4は、まず、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記予備除染がおこなわれた人体(汚染物質で汚染された人体)の除染をオゾン水によっておこなうように構成してもよい。
前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう構成として、シャワー42からアルカリ性の水を吐出させて汚染物質で汚染された人にこれを掛けることによっておこなうものがある。また、前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう構成として、アルカリ性の水が溜められる水槽を設け、当該水槽に溜められたアルカリ性の水に汚染物質で汚染された人が浸かることによっておこなうものがある。
【0036】
前記アルカリ性の水は、例えば、除染システム1のタンク2から除染部4に配管を介して供給される前の原料水に添加物を添加することによってアルカリ性の水(原料水)とされて、除染部4に供給される。このとき、除染システム1は、図6に示すように、前記原料水への添加物の添加がタンク2の下流側に配置される添加装置8cによっておこなわれるように構成される。
前記水をアルカリ性にする添加物としては、例えば、重曹、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石鹸(界面活性剤)、また、ヨウ化カリウム等がある。
【0037】
このように、汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう水がアルカリ性の水の場合には、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を予備除染する効果が向上することとなる。
そして、除染システム1では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体についてオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をより確実に除染することができる。
【0038】
さらに、除染システム1の除染部4は、まず、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記予備除染がおこなわれた人体(汚染物質で汚染された人体)の除染を酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によっておこなわれるように構成してもよい。
このとき、除染システム1は、図7に示すように、オゾン水を酸性にする添加物を添加する添加装置8aまたはアルカリ性にする添加物を添加する添加装置8bがオゾン水生成装置3の下流側に配置されて構成される。添加装置8a・8bは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水に添加物を添加して、当該オゾン水を酸性またはアルカリ性にする。
このように、除染システム1では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体について、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をさらにより確実に除染することができる。
【0039】
次に、予備除染する工程を備える汚染物質で汚染された人体の除染方法における一連の動作について、図8を用いて説明する。
【0040】
図8に示すように、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)をおこなう。
前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)をおこなった後、ステップS2に移行する。
【0041】
次に、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体(アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体)の除染をおこなう工程(ステップS2)をおこなう。
このようにして、汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう。
【0042】
以上のように、汚染物質で汚染された人体の除染方法は、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)と、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS2)と、を備える。
このため、汚染物質で汚染された人体の除染方法では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体についてオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をより確実に除染することができる。
【0043】
また、予備除染する工程を備える汚染物質で汚染された人体の除染方法は、図9に示すように、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS2)に代えて、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS12)を備えるものとしてもよい。
このような汚染物質で汚染された人体の除染方法では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体について、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をさらにより確実に除染することができる。
【0044】
除染システム1は、除染部4のテント41内の気体をテント41外に排気可能に構成される。除染システム1は、除染部4のテント41内において下方向の気流が発生するように構成される。
除染部4のテント41は、図1乃至図7に示すように、その天井部に給気孔41a・41aが形成されるとともに、その側面の下部に排気孔41b・41bが形成されて構成される。除染部4のテント41の排気孔41b・41bには、それぞれ排気ファン47・47が設けられる。
そして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41の給気孔41a・41aから空気を給気するとともに、前記テント41内の気体を排気孔41b・41bからテント41外に排気する。
このようにして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41内において下方向の気流を発生させて、前記テント41内の気体をテント41外に排気する。
このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、テント41内で下方向の気流を発生させるともに、テント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。
【0045】
除染システム1における除染部4のテント41の排気孔41b・41b(排気ファン47・47)には、それぞれオゾン分解触媒48・48が設けられる。除染部4のオゾン分解触媒48は、前記除染部4のテント41の排気孔41bから排気されるオゾンガスを酸素に戻すことができるように構成される。
このように構成されることにより、除染システム1では、前記テント41内のオゾンガスをテント41外に排気する際に、当該オゾンガスが酸素に戻されることとなる。
また、除染システム1における除染部4のテント41の給気口と排気口とに、それぞれヘパフィルターを配置してもよい。
【0046】
除染システム1は、図1乃至図7に示すように、再生部5を備える。
除染システム1の再生部5では、前記排水(除染に用いたオゾン水の排水)が原料水に再生される。再生部5は、図10に示すように、粗フィルタ51と、活性炭吸着フィルタ52と、逆浸透膜浄化装置53と、汚れセンサ54と、を有する。
【0047】
除染システム1における再生部5の粗フィルタ51は、前記排水から粒径の大きい不純物(ゴミ、および、前記凝集されたN物質等)を取除くものである。
再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、粗フィルタ51の下流側に配置される。再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、前記粗フィルタ51で取除けなかった粒径の小さい不純物を前記排水から取除くものである。
再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、活性炭吸着フィルタ52の下流側に配置される。再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、前記活性炭吸着フィルタ52で不純物が取除かれた排水を、原料水として再利用できるような水質に浄化する。
再生部5の汚れセンサ54は、前記逆浸透膜浄化装置53によって浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)を検知するものである。
【0048】
このようにして、除染システム1の再生部5では、再生部5の粗フィルタ51および活性炭吸着フィルタ52によって前記排水から不純物が取除かれ、再生部5の逆浸透膜浄化装置53によって前記不純物が取除かれた排水が浄化され、再生部5の汚れセンサ54によって前記浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)が検知される。
そして、再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしている場合には、当該排水は、タンク2に供給されて原料水として再利用される(図1参照)。
【0049】
以上のようにして、除染システム1では、前記排水が、再生部5において原料水に再生されて、タンク2に供給されて再利用される。
このため、除染システム1では、多量の原料水を確保することを要さずに、汚染物質で汚染された人体の除染を多量におこなうことができる。
したがって、除染システム1によれば、原料水を確保(補給)することが困難な状態でも、汚染物質で汚染された多量の人体の除染をおこなうことができる。
【0050】
また、除染システム1では、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、再生部5における前記排水の原料水への再生を容易におこなうことができる。
【0051】
なお、除染システム1における再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしていない場合には、当該排水は、廃水として廃水槽6に供給される。
そして、前記廃水槽6に供給された廃水は、その下流側の廃水処理装置7で廃水処理(凝集されたN物質を取除く処理、B物質の消毒処理、または、C物質の分解処理)がおこなわれて、廃棄されることとなる。
【0052】
除染システム1の除染部4は、図11に示すように、(テント41、シャワー42、水受43、および、すのこ44等に代えて、)除染室45を有する構成としてもよい。
除染部4の除染室45は、配管を介してオゾン水生成装置3に接続されて、温度調節装置によって温度が調節されたオゾン水が除染室45内に溜められるように構成される。除染部4の除染室45は、汚染物質で汚染された人が除染室45内で立った状態で肩までオゾン水に浸ることができるように構成される。
【0053】
汚染物質で汚染された人に、ゴーグル9と口マスク10とをそれぞれ装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図12参照)。
また、汚染物質で汚染された人に、顔面を覆うようなガスマスク11を装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図13参照)。
このようにすることにより、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内または除染室45内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、汚染物質で汚染された人がオゾンガスを吸引する等によって影響を受けることなく、汚染物質の除染をおこなうことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 除染システム
2 タンク
3 オゾン水生成装置
4 除染部
5 再生部
8a 添加装置
8b 添加装置
8c 添加装置
41 テント
42 シャワー
45 除染室
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムに関する技術は公知となっている。前記種々の汚染物質には、例えば、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。N(nuclear)物質による汚染には、核兵器や原発事故等による放射能汚染がある。B(biological)物質による汚染には、生物兵器による天然痘ウイルスや炭素菌等の汚染がある。C(chemical)物質による汚染には、化学兵器によるサリンやマスタードガス等の汚染がある。
このような除染システムでは、テント内に配置されたシャワーから吐出される水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染する(特許文献1参照)。つまり、このような除染システムでは、水の水流によって汚染物質を人体から剥離するように洗い流して除染する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−250793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す除染システムでは、汚染物質で汚染された人体を確実に除染するためには、長時間に亙って水を人体に掛け続けることを要し、また、強い水流の水をシャワーから吐出させる必要があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる除染システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、アルカリ性の水によって前記汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記酸性のオゾン水または前記アルカリ性のオゾン水によって前記予備除染がおこなわれた人体を除染するように構成されるものである。
【0009】
請求項3においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、オゾン水を酸性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水を酸性にする、添加装置を備え、前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0010】
請求項4においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、原料水を酸性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水を酸性にする添加装置と、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0011】
請求項5においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、オゾン水をアルカリ性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする、添加装置を備え、前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【0012】
請求項6においては、汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、原料水をアルカリ性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水をアルカリ性にする添加装置と、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
即ち、本発明によれば、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係る除染システムの除染部を示した斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図4】同じくブロック図。
【図5】同じくブロック図。
【図6】同じくブロック図。
【図7】同じくブロック図。
【図8】本発明の実施形態に係る除染方法を示したフロー図。
【図9】同じくフロー図。
【図10】本発明の実施形態に係る除染システムの再生部を示したブロック図。
【図11】本発明の実施形態に係る除染システムの全体的な構成を示したブロック図。
【図12】除染される人を示した斜視図。
【図13】同じく斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施形態に係る除染システム1を図1から図13を用いて説明する。
除染システム1は、種々の汚染物質で汚染された人体を除染するものである。前記種々の汚染物質には、NBC(nuclear、biological、chemical)物質がある。
除染システム1は、図1に示すように、タンク2と、オゾン水生成装置3と、除染部4と、を備える。
【0017】
除染システム1のタンク2は、原料水(水)が溜められるものである。タンク2に溜められた原料水は、オゾン水生成装置3に供給される。
除染システム1のオゾン水生成装置3は、配管を介してタンク2に接続される。オゾン水生成装置3は、タンク2から供給される原料水からオゾン水を生成するものである。ここで、オゾン水とは、水にオゾン(O3)が溶解されてなるものである。
オゾン水生成装置3によって生成されたオゾン水は、温度調節装置によって、当該オゾン水を掛けられた人(除染される人)が冷た過ぎるまたは熱すぎる等と感じないような所定の温度に温度調節(例えば、26度〜40度に昇温また降温)されて、除染部4に供給される。
【0018】
除染システム1の除染部4では、汚染物質で汚染された人体の除染がおこなわれる。除染部4は、図1または図2に示すように、テント41と、シャワー42と、水受43と、すのこ44と、を有する。
【0019】
除染システム1における除染部4のテント41は、当該テント41内で立った状態で、汚染物質で汚染された人体の除染をおこなうことができるように構成される。
除染部4のテント41は、短時間で設営可能に構成される。除染部4のテント41は、例えば、エアーを吹込むことにより数分間内にドーム状の立体構造とすることができ、また、エアーを抜くことにより折畳むことができるようなエアーテントで構成される。
【0020】
除染システム1における除染部4のシャワー42は、配管を介してオゾン水生成装置3に接続されて、温度調節装置によって温度が調節されたオゾン水を吐出可能に構成される。
除染部4のシャワー42は、そのテント41内に配置される。除染部4のシャワー42は、そのオゾン水の吐出口がテント41の天井近傍に配置されて、除染対象である汚染物質で汚染された人体に向かって上方からオゾン水を吐出するように構成される。
除染システム1における除染部4の水受43は、テント41内に配置される。除染部4の水受43は、シャワー42から吐出されたオゾン水を受けて、当該オゾン水(除染に用いたオゾン水)を水受43の排水孔43aから排水するように構成される。
除染システム1における除染部4のすのこ44は、水受43の上に配置される。
除染システム1では、汚染物質で汚染された人は、除染部4のテント41内においてすのこ44の上に立った状態で、シャワー42から吐出されるオゾン水が掛けられる。
以上のようにして、除染システム1は、オゾン水を掛けることによって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される。
【0021】
そして、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がB(biological)物質の場合には、B物質は、前記掛けられたオゾン水によって殺菌されることとなる。人体を汚染する汚染物質がC(chemical)物質の場合には、C物質は、前記掛けられたオゾン水によって分解されることとなる。
このように、B物質が殺菌され、また、C物質が分解されるので、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、B物質またはC物質で汚染された人体を短時間で除染することができ、且つ、強い水流を要さずにB物質またはC物質で汚染された人体を除染することができる。
したがって、除染システム1によれば、水によって除染するものに比べて、汚染物質(B物質またC物質)で汚染された人体を容易に除染することができる。
【0022】
また、除染システム1では、人体を汚染する汚染物質がN(nuclear)物質の場合には、N物質は、オゾン水におけるコロイドを凝集する作用によって人体から剥離した後に凝集されることとなる。このため、除染システム1では、除染に用いたオゾン水の排水をろ過する際に、目の細かいフィルタを用いることなく、当該凝集されたN物質を容易に捕集することができ、当該排水からN物質を取除く処理をより容易におこなうことができる。
除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が抵抗性の弱いB物質の場合には、B物質は消毒されて無害化されるので、前記排水に含まれるB物質の消毒処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が抵抗性の強いB物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水されていく過程においてB物質の消毒が進行するので、前記排水に含まれるB物質のその後の消毒処理を容易におこなうことができる。
除染システム1では、人体を汚染する汚染物質が易分解性のC物質の場合は、C物質は分解されて無害化されるので、前記排水に含まれるC物質の分解処理が不要となる。人体を汚染する汚染物質が難分解性のC物質の場合には、オゾン水が掛けられてから排水される過程においてC物質の分解が進行するので、前記排水に含まれるC物質のその後の分解処理を容易におこなうことができる。
したがって、除染システム1によれば、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、前記排水の処理を容易におこなうことができる。
なお、オゾンは短時間で酸素に戻るため、除染システム1では、前記排水に対するオゾンの中和処理は不要である。
【0023】
除染システム1は、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される。
汚染物質で汚染された人体を除染するオゾン水が酸性のオゾン水の場合には、当該オゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、前記酸性のオゾン水では、オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
また、汚染物質で汚染された人体を除染するオゾン水がアルカリ性のオゾン水の場合には、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
したがって、除染システム1によれば、汚染物質で汚染された人体をより容易に除染することができる。
【0024】
酸性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染する除染システム1の構成としては、以下のようなものがある。
【0025】
除染システム1は、図1に示すように、オゾン水を酸性にする添加物をオゾン水に添加する添加装置8aを備えて構成される。
除染システム1の添加装置8aは、オゾン水生成装置3の下流側に配置される。添加装置8aは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水にこれを酸性にする添加物を添加して、当該オゾン水を酸性にする。
前記オゾン水を酸性にする添加物としては、例えば、クエン酸、炭酸、塩酸、また、酢酸等がある。
【0026】
このように、除染システム1の添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされたオゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされたオゾン水では、当該オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
【0027】
また、除染システム1の添加装置8aは、図3に示すように、オゾン水生成装置3の上流側であって、タンク2の下流側に配置されてもよい。
このとき、添加装置8aは、タンク2からオゾン水生成装置3に供給される前の原料水にこれを酸性にする添加物を添加して、当該原料水を酸性にする。そして、オゾン水生成装置3は、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成する。
【0028】
このように、除染システム1の添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされた原料水から生成された酸性のオゾン水は自己分解することが抑制されて、そのオゾン濃度が低下することが抑制されることとなる。このため、添加装置8aによって添加物が添加されて酸性にされた原料水から生成されたオゾン水では、当該オゾン水による汚染物質で汚染された人体を除染する効果が低下することが抑制されることとなる。
【0029】
アルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体を除染する除染システム1の構成としては、以下のようなものがある。
【0030】
除染システム1は、図4に示すように、オゾン水をアルカリ性にする添加物をオゾン水に添加する添加装置8bを備えて構成される。
除染システム1の添加装置8bは、オゾン水生成装置3の下流側に配置される。添加装置8bは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水に添加物を添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする。
前記オゾン水をアルカリ性にする添加物としては、例えば、重曹、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石鹸(界面活性剤)、また、ヨウ化カリウム等がある。
【0031】
このように、除染システム1の添加装置8bによって添加物が添加されてアルカリ性にされたオゾン水では、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
【0032】
また、除染システム1の添加装置8bは、図5に示すように、オゾン水生成装置3の上流側であって、タンク2の下流側に配置されてもよい。
このとき、添加装置8bは、タンク2からオゾン水生成装置3に供給される前の原料水にこれをアルカリ性にする添加物を添加して、当該原料水をアルカリ性にする。そして、オゾン水生成装置3は、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成する。
【0033】
このように、除染システム1の添加装置8bによって添加物が添加されてアルカリ性にされた原料水から生成されたアルカリ性のオゾン水では、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を除染する効果が向上することとなる。
【0034】
除染システム1の添加装置8a・8bによって添加される添加物の量は、除染される人体に影響を及ぼさない範囲で任意のpHの酸性またはアルカリ性となるように、適宜決定できるものとする。
なお、常温において、オゾン水がpH9の場合には、その自己分解半減期は約2分であり、オゾン水がpH7の場合には、その自己分解半減期が約40分であり、オゾン水がpH5の場合には、その自己分解半減期が約120分である。
【0035】
除染システム1の除染部4は、まず、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記予備除染がおこなわれた人体(汚染物質で汚染された人体)の除染をオゾン水によっておこなうように構成してもよい。
前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう構成として、シャワー42からアルカリ性の水を吐出させて汚染物質で汚染された人にこれを掛けることによっておこなうものがある。また、前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう構成として、アルカリ性の水が溜められる水槽を設け、当該水槽に溜められたアルカリ性の水に汚染物質で汚染された人が浸かることによっておこなうものがある。
【0036】
前記アルカリ性の水は、例えば、除染システム1のタンク2から除染部4に配管を介して供給される前の原料水に添加物を添加することによってアルカリ性の水(原料水)とされて、除染部4に供給される。このとき、除染システム1は、図6に示すように、前記原料水への添加物の添加がタンク2の下流側に配置される添加装置8cによっておこなわれるように構成される。
前記水をアルカリ性にする添加物としては、例えば、重曹、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、石鹸(界面活性剤)、また、ヨウ化カリウム等がある。
【0037】
このように、汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう水がアルカリ性の水の場合には、アルカリ性の洗浄効果によって汚染物質に汚染された人体を予備除染する効果が向上することとなる。
そして、除染システム1では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体についてオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をより確実に除染することができる。
【0038】
さらに、除染システム1の除染部4は、まず、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記予備除染がおこなわれた人体(汚染物質で汚染された人体)の除染を酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によっておこなわれるように構成してもよい。
このとき、除染システム1は、図7に示すように、オゾン水を酸性にする添加物を添加する添加装置8aまたはアルカリ性にする添加物を添加する添加装置8bがオゾン水生成装置3の下流側に配置されて構成される。添加装置8a・8bは、オゾン水生成装置3で生成されたオゾン水に添加物を添加して、当該オゾン水を酸性またはアルカリ性にする。
このように、除染システム1では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体について、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をさらにより確実に除染することができる。
【0039】
次に、予備除染する工程を備える汚染物質で汚染された人体の除染方法における一連の動作について、図8を用いて説明する。
【0040】
図8に示すように、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)をおこなう。
前記アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)をおこなった後、ステップS2に移行する。
【0041】
次に、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体(アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体)の除染をおこなう工程(ステップS2)をおこなう。
このようにして、汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう。
【0042】
以上のように、汚染物質で汚染された人体の除染方法は、アルカリ性の水によって汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこなう工程(ステップS1)と、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS2)と、を備える。
このため、汚染物質で汚染された人体の除染方法では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体についてオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をより確実に除染することができる。
【0043】
また、予備除染する工程を備える汚染物質で汚染された人体の除染方法は、図9に示すように、オゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS2)に代えて、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって汚染物質で汚染された人体の除染をおこなう工程(ステップS12)を備えるものとしてもよい。
このような汚染物質で汚染された人体の除染方法では、アルカリ性の水で予備除染がおこなわれた人体について、酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって除染がおこなわれるため、汚染物質で汚染された人体をさらにより確実に除染することができる。
【0044】
除染システム1は、除染部4のテント41内の気体をテント41外に排気可能に構成される。除染システム1は、除染部4のテント41内において下方向の気流が発生するように構成される。
除染部4のテント41は、図1乃至図7に示すように、その天井部に給気孔41a・41aが形成されるとともに、その側面の下部に排気孔41b・41bが形成されて構成される。除染部4のテント41の排気孔41b・41bには、それぞれ排気ファン47・47が設けられる。
そして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41の給気孔41a・41aから空気を給気するとともに、前記テント41内の気体を排気孔41b・41bからテント41外に排気する。
このようにして、除染システム1では、排気ファン47・47を動作させることによって、テント41内において下方向の気流を発生させて、前記テント41内の気体をテント41外に排気する。
このため、除染システム1では、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、テント41内の人が当該オゾンガスを吸引する等して影響を受けないうように、テント41内で下方向の気流を発生させるともに、テント41内のオゾンガスをテント41外に排気することができる。
【0045】
除染システム1における除染部4のテント41の排気孔41b・41b(排気ファン47・47)には、それぞれオゾン分解触媒48・48が設けられる。除染部4のオゾン分解触媒48は、前記除染部4のテント41の排気孔41bから排気されるオゾンガスを酸素に戻すことができるように構成される。
このように構成されることにより、除染システム1では、前記テント41内のオゾンガスをテント41外に排気する際に、当該オゾンガスが酸素に戻されることとなる。
また、除染システム1における除染部4のテント41の給気口と排気口とに、それぞれヘパフィルターを配置してもよい。
【0046】
除染システム1は、図1乃至図7に示すように、再生部5を備える。
除染システム1の再生部5では、前記排水(除染に用いたオゾン水の排水)が原料水に再生される。再生部5は、図10に示すように、粗フィルタ51と、活性炭吸着フィルタ52と、逆浸透膜浄化装置53と、汚れセンサ54と、を有する。
【0047】
除染システム1における再生部5の粗フィルタ51は、前記排水から粒径の大きい不純物(ゴミ、および、前記凝集されたN物質等)を取除くものである。
再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、粗フィルタ51の下流側に配置される。再生部5の活性炭吸着フィルタ52は、前記粗フィルタ51で取除けなかった粒径の小さい不純物を前記排水から取除くものである。
再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、活性炭吸着フィルタ52の下流側に配置される。再生部5の逆浸透膜浄化装置53は、前記活性炭吸着フィルタ52で不純物が取除かれた排水を、原料水として再利用できるような水質に浄化する。
再生部5の汚れセンサ54は、前記逆浸透膜浄化装置53によって浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)を検知するものである。
【0048】
このようにして、除染システム1の再生部5では、再生部5の粗フィルタ51および活性炭吸着フィルタ52によって前記排水から不純物が取除かれ、再生部5の逆浸透膜浄化装置53によって前記不純物が取除かれた排水が浄化され、再生部5の汚れセンサ54によって前記浄化された排水の浄化度合(汚れ度合)が検知される。
そして、再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしている場合には、当該排水は、タンク2に供給されて原料水として再利用される(図1参照)。
【0049】
以上のようにして、除染システム1では、前記排水が、再生部5において原料水に再生されて、タンク2に供給されて再利用される。
このため、除染システム1では、多量の原料水を確保することを要さずに、汚染物質で汚染された人体の除染を多量におこなうことができる。
したがって、除染システム1によれば、原料水を確保(補給)することが困難な状態でも、汚染物質で汚染された多量の人体の除染をおこなうことができる。
【0050】
また、除染システム1では、N物質が凝集され、B物質が消毒され、また、C物質が分解されるので、水によって除染するものに比べて、再生部5における前記排水の原料水への再生を容易におこなうことができる。
【0051】
なお、除染システム1における再生部5の汚れセンサ54によって検知された排水の浄化度合が所定の基準値を満たしていない場合には、当該排水は、廃水として廃水槽6に供給される。
そして、前記廃水槽6に供給された廃水は、その下流側の廃水処理装置7で廃水処理(凝集されたN物質を取除く処理、B物質の消毒処理、または、C物質の分解処理)がおこなわれて、廃棄されることとなる。
【0052】
除染システム1の除染部4は、図11に示すように、(テント41、シャワー42、水受43、および、すのこ44等に代えて、)除染室45を有する構成としてもよい。
除染部4の除染室45は、配管を介してオゾン水生成装置3に接続されて、温度調節装置によって温度が調節されたオゾン水が除染室45内に溜められるように構成される。除染部4の除染室45は、汚染物質で汚染された人が除染室45内で立った状態で肩までオゾン水に浸ることができるように構成される。
【0053】
汚染物質で汚染された人に、ゴーグル9と口マスク10とをそれぞれ装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図12参照)。
また、汚染物質で汚染された人に、顔面を覆うようなガスマスク11を装着させた状態で、除染システム1の除染部4で汚染物質の除染をおこなうようにしてもよい(図13参照)。
このようにすることにより、通常はオゾン水からはオゾンガスが気散しないが、仮に除染部4のテント41内または除染室45内においてオゾン水からオゾンガスが気散した場合においても、汚染物質で汚染された人がオゾンガスを吸引する等によって影響を受けることなく、汚染物質の除染をおこなうことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 除染システム
2 タンク
3 オゾン水生成装置
4 除染部
5 再生部
8a 添加装置
8b 添加装置
8c 添加装置
41 テント
42 シャワー
45 除染室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項2】
アルカリ性の水によって前記汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記酸性のオゾン水または前記アルカリ性のオゾン水によって前記予備除染がおこなわれた人体を除染するように構成される、請求項1に記載の除染システム。
【請求項3】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
オゾン水を酸性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水を酸性にする、添加装置を備え、
前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項4】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
原料水を酸性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水を酸性にする添加装置と、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、
前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項5】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
オゾン水をアルカリ性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする、添加装置を備え、
前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項6】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
原料水をアルカリ性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水をアルカリ性にする添加装置と、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、
前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項1】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
酸性のオゾン水またはアルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項2】
アルカリ性の水によって前記汚染物質で汚染された人体の予備除染をおこない、次いで、前記酸性のオゾン水または前記アルカリ性のオゾン水によって前記予備除染がおこなわれた人体を除染するように構成される、請求項1に記載の除染システム。
【請求項3】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
オゾン水を酸性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水を酸性にする、添加装置を備え、
前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項4】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
原料水を酸性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水を酸性にする添加装置と、前記酸性にされた原料水から酸性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、
前記酸性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項5】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
オゾン水をアルカリ性にする添加物を前記オゾン水に添加して、当該オゾン水をアルカリ性にする、添加装置を備え、
前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【請求項6】
汚染物質で汚染された人体を除染する除染システムであって、
原料水をアルカリ性にする添加物を前記原料水に添加して前記原料水をアルカリ性にする添加装置と、前記アルカリ性にされた原料水からアルカリ性のオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、を備え、
前記アルカリ性のオゾン水によって前記汚染物質で汚染された人体を除染するように構成される、除染システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−36823(P2013−36823A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172426(P2011−172426)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000198330)株式会社IHIシバウラ (74)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000198330)株式会社IHIシバウラ (74)
【Fターム(参考)】
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