説明

除草作業機

【課題】除草輪によって苗を傷めることなく株元の両側及び株間の除草を行うと共に、走行負荷を低減した除草作業を能率よく行うことができる除草作業機を提供する。
【解決手段】苗の株際を除草する株際除草部を、作業機体の前側又は後側に備えた除草作業機であって、前記株際除草部を、弾力性を有する線材42を放射方向に突設した左右一対の除草輪を株際の田面に接地回転可能に配設すると共に、上記左右の除草輪を、苗の株元を通過させる苗通過間隔から、上方に向けてV字状に拡開させて配設し、且つ除草輪の苗通過間隔側の側面に、回転中心から線材42の長さ中途部を覆う円盤状の線材カバー50を設けることにより、苗の葉先側と線材42の中途部との苗接触を規制し回転する線材42の先端で株際の除草を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植付け後に圃場の雑草を除去する除草作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付けられた苗が活着した水田で、作業機体の前後方向に配置された、苗の条間を除草する2連田車と苗の株際を除草する株際除草部とによって、水田に生える雑草を湛水状態で除去する水田用の除草機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
この除草機は、先行する2連田車の前後の田車によって条間の雑草を除草し、苗の株元の周囲に生えている株際の雑草を株際除草部で除草する際に、先端部を圃場内に挿入されて苗の株側を挟み込むように互いに内向きに屈曲形成された左右の弾性線材からなるレーキによって除草するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4526991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される除草機は、走行時にレーキは地中に挿入された左右のレーキ先端で株際の土と共に雑草を引っ掻くようにして除草作業を行うため、苗条の曲がりや蛇行運転等によって、レーキ中心部から一側に大きく外れる苗に対して強く接当するので、苗の押倒し並びに腰折れや根を傷付ける等の損傷を生じ易く、また同時に他側では除草作用が不十分になることから除草漏れが生じ易い等の欠点がある。
さらに上記構造のレーキからなる株際除草部は、レーキ先端に大きな地中抵抗を受けるので、特に多条苗列の除草を行う大型の除草作業機とする場合には、除草抵抗が大きくなり走行負荷を増大し除草作業能率も低下させる等の課題がある。
一方、上記課題を解決するために、株際除草部を、弾力性を有する線材を放射方向に突設した左右一対の除草輪を苗の株際の田面に接地回転可能に配設し、且つ、左右の除草輪を、苗の株元を通過させる苗通過間隔から上方に向けてV字状に拡開させて構成すると、苗の損傷を防止しながら回転する線材の先端で株際の除草を行うことができる。然しこの場合には、苗が大きく葉先が側方に向けて嵩張ったり傾倒していると、葉先が回転する線材の基部側(中途部)に接触し易くなると共に、長期の使用に伴い線材が苗通過間隔側(株際側)に向けて曲がり変形を生ずるとき、葉先が曲がった線材に絡みつく等の不具合を伴う等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の除草作業機は、第1に、苗の株際を除草する株際除草部38,39を、作業機体の前側又は後側に備えた除草作業機1において、
前記株際除草部38,39を、弾力性を有する線材42を放射方向に突設した左右一対の除草輪35を株際の田面に接地回転可能に配設すると共に、
上記左右の除草輪35を、苗の株元を通過させる苗通過間隔から、上方に向けてV字状に拡開させて配設し、
且つ除草輪35の苗通過間隔側の側面に、回転中心から線材42の長さ中途部を覆う円盤状の線材カバー50を設けることにより、
苗の葉先側と線材42の中途部との苗接触を規制し回転する線材42の先端で株際の除草を行うように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、株際除草部を、弾力性を有する線材を放射方向に突設した左右一対の除草輪を株際の田面に接地回転可能に配設すると共に、左右の除草輪を、苗の株元を通過させる苗通過間隔から、上方に向けてV字状に拡開させて配設し、且つ除草輪の苗通過間隔側の側面に、回転中心から線材の長さ中途部を覆う円盤状の線材カバーを設けることにより、除草輪を線材の先端を株元に近接させて接地回転させ、隣接する苗の間に線材を入り込ませながら株間の除草を確実に行なわせることができる。また除草輪が苗の株際両側で接地回転するとき、苗の葉先側と線材の中途部との苗接触を線材カバーが規制しながら、弾力性を有して回転する線材の先端で株際の除草を、苗を傷めることなくスムーズに行う。また接地回転する除草輪は、除草抵抗を軽減することができるので、走行負荷を低減した除草作業を能率よく行うことを可能にする。
さらに、除草輪は、線材が長期の使用により苗際側に向けて曲がり変形をした場合に、線材カバーが線材の中途部に接当して線材先端の苗際側への大きな突出を規制するので、線材の先端と葉先との絡みつきを防止した除草性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】除草機の側面図である。
【図2】除草機の平面図である。
【図3】除草作業機の要部の全体背面図である。
【図4】田車と除草輪の側面図である。
【図5】除草輪の作用を示す側面図である。
【図6】第2実施形態に関わる除草輪の側面図である。
【図7】第2実施形態の除草輪を備えた除草作業機の要部背面図である。
【図8】第2実施形態の除草輪の平面図である。
【図9】第3実施形態の除草輪を備えた除草作業機の要部背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1,図2において符号1は、在来の乗用田植機と同様の走行機体である。この走行機体1は左右の前輪2及び後輪3を備え、該前輪2及び後輪3は圃場(水田)に植え付けられている8条分の苗条N1,N2,N3,N4,N5,N6,N7,N8を跨いで移動することができる。そして、走行機体1の後部に対し、後述する除草作業機16を装着することにより除草機として使用される。
【0009】
走行機体1の前部には、エンジンルームを覆うボンネット4が設けられている。ボンネット4の後方には操縦部6が設けられている。操縦部6には座席7が設けられている。座席7の前方にはフロント操作パネル8が設けられている。フロント操作パネル8にはステアリングハンドル9や主変速レバー11等が備えられている。
【0010】
走行機体1の後部には昇降リンク機構12が設けられている。該昇降リンク機構12は油圧シリンダ13の伸縮動作によって上下昇降駆動される。該昇降リンク機構12の終端部に設けられるヒッチホルダ14を介して除草作業機16が着脱可能に取り付けられている。
【0011】
ヒッチホルダ14には、ローリング自在にブラケット15が取り付けられている。該ブラケット15には、走行機体1の幅方向(左右方向)の角パイプからなるツールバーとしてのローリングフレーム17が取り付けられている。また上記ブラケット15には、下部に延出した支持部材18が取り付けられている。
【0012】
上記支持部材18には図1,図2に示されるように、センタフロート19が上下昇降自在に取り付けられている。センタフロート19は、走行機体1に設けられる従来公知の油圧感知機構のセンサ(センサフロート)として兼用して使用される。これにより油圧感知機構が構成されて田面の湛水状態や土質に応じた除草作業機16の高さ調節を自動的に行うことができる。
【0013】
上記ローリングフレーム17には、複数の支持杆20が上下位置調節可能に垂下して取り付けられている。左右の最外側に位置する支持杆20の内側に隣接する支持杆20には、サイドフロート21が上下揺動可能に取り付けられている。このサイドフロート21はセンタフロート19の左右両側において、前輪2及び後輪3の後方に配置しており、前後輪2,3の車輪跡を消しながら整地を行う。
【0014】
上記ブラケット15側にはブラケットアーム24が後方に向かって取り付けられており、該ブラケットアーム24に支持杆26が上下位置調節可能に垂下して取り付けられている。該支持杆26には図4に示すように、支持ブラケット22を介して回転式の除草手段である前後の田車23F,23Rが1組の田車(2連式田車)として設けられている。
【0015】
ローリングフレーム17側の他の支持杆20には、図1〜図3に示すように、支持ブラケット22を介して回転式の除草手段である前後の田車23F,23Rが1組の田車(2連式田車)として設けられている。全ての田車23F,23Rは、走行機体1の進行方向に対する横軸を中心として自由回転する。全ての田車23F,23Rは田面との接地抵抗によって回転し、この回転により従来同様に除草を行う。尚、モータ等の駆動源によって田車23F,23Rを回転駆動させることもできる。これにより除草作業機16は、上記前後の田車23F,23Rによる2連式田車によって2度掛けの除草を行うことができる。支持杆20,26の高さ調節によって各2連式田車は田車23F,23Rの高さが同時に調節される。
【0016】
中央の2連式田車27は、センターフロート19の真後に配置されている。該田車27は植え付けられた中央の苗条との条間に位置して除草を行う。上記中央の2連式田車27の両側に位置する2連式田車28,29は、中央の2連式田車27の右側に隣接する苗条N5とN6との条間と、中央の2連式田車27の左側に隣接する苗条N4とN3との間の条間に位置して除草を行う。
【0017】
左右のサイドフロート21の外側に位置する2連式田車31,32は、左側のサイドフレーム21の外側に隣接する苗条N2とN1との条間と、右側のサイドフレーム21の外側に隣接する苗条N7とN8との条間に位置して除草を行う。
【0018】
中央の2連式田車27は、他の2連式田車28,29,31,32に比較して後方に位置し、センタフロート19を前後方向に避けている。中央の2連式田車27以外の2連式田車28,29,31,32は、サイドフロート21の側方に位置している。また走行機体1との連結状態で除草作業機16は、中央の2連式田車27以外の2連式田車28,29,31,32を走行機体1に近接させている。
【0019】
上記ローリングフレーム17の左右両側には、後方に向かって支持フレーム(機体フレーム)33が取り付けられている。両支持フレーム33には、3つの横方向の取付けバー34,36,37が前後に所定間隔を介して取り付けられている。各取付けバー34,36には、除草手段の第1実施形態に関わる左右一対の除草輪35によって構成される、前部側の株際除草部38と後部側の株際除草部39が前後調節及び高さ調節可能に取り付けられている。
【0020】
前方側の取付けバー34に取り付けられた株際除草部38は、植え付けられた苗条N2,N3,N6,N7に対応して配置されている。中間位置の取付けバー36に取り付けられた株際除草部39は、植え付けられた苗条N4,N5に対応して配置されている。後方側の取付けバー37には、本除草作業機16を接地姿勢で支持するスタンド41が上下移動自在に取り付けられている。
【0021】
次に、除草作業機16の上記除草輪35について図1〜図5を参照し説明する。この除草輪35は輪体軸支孔を有するボス部35aの外周に、ナイロン等のプラスッチック材又は鋼線からなり一定の弾力性と可撓性を有する複数本の線材42を束ねた状態で疎間隔に植設されている。そして、除草輪35はそのボス部35aが、輪体アーム43の下部面に内向きに突設される輪軸44に回転自在に軸支される。輪体アーム43はその上部を、取付部46を有する前記取付けバー34,36の背面に対し、除草輪35が後方下部に位置するように取付けることができる。
【0022】
また実施形態の各輪体アーム43は、その取付け基部を取付けバー34,36の背面に対し弾性部材45を介して取付けている。これにより輪体アーム43は弾性部材45により除草輪35を弾性力を有して支持するので、除草輪35が例えば田面に存在する大きな凸面に至るとき、該除草輪35はその接地回転抵抗が大きくなることに伴い、弾性部材45の弾性力に抗して上動し、且つ凹面に至るとき、該除草輪35はその接地回転抵抗が小さくなることに伴い、弾性部材45の弾性力によって下動するため、田面形状に倣って線材42に無理な曲げを生ずることなく精度の高い除草をすることができる。尚、上記のような除草輪35の弾性支持手段は、取付部46に弾性部材45を設けることなく、輪体アーム43が弾性力を有する構成にしてもよい。
【0023】
図4で示すように取付部46は、支持フレーム33に前後方向の位置決めを調節可能に嵌挿されるホルダ47と、該ホルダ47に上下方向の位置決めを可能とするように嵌挿される支持杆48と、該支持杆48の上部にブラケット49を介して取付け角度を調節自在に取付けられる取付けバー36,(34)とから構成される。これにより輪体アーム43はそのブラケット部を、上記取付けバー34,36の背面に対し、前記弾性部材45を挟持した状態でボルト49aによって着脱自在に取付けられる。
【0024】
上記構成により除草輪35を軸支する左右の輪体アーム43は、中途部をく字状に屈曲させた屈曲部を内向きに対向させた状態で、両者の上部側をステー52によって連結することにより一体化される。そして、左右で対をなす各除草輪35は、前記取付けバー34及び取付けバー36の所定位置に対し、上記左右の輪体アーム43がボルト49aによって締着される。 この構成において、前記輪軸44はその軸心が輪体アーム43の下部内面に対し、背面視で直交させると共に、平面視で図8に示すように前方に傾斜させて突設している。これにより左右の輪体アーム43に突設される輪軸44に各ボス部35aを介して軸支される左右の除草輪35は、図3で示すように背面視において上方に向けて拡開するV字状をなすと共に、図8で示すように平面視で前方に向けて拡開するV字状をなす株際除草部38,39を構成する。また各株際除草部38,39は、左右の除草輪35の株際側の線材42が、田面側で苗を通過させるに適正な3〜5cm程度の苗通過間隔に保持している。
【0025】
そして、上記左右の除草輪35は、相対向する側面即ち前記株際側の側面に、回転中心から線材42の長さ中途部を覆うことができる円盤状の線材カバー50を設けることにより、回転する線材42の中途部の苗側方向への曲がりを規制して株際の除草を行うようにしている。この線材カバー50は円盤の外径が線材42の長さの半分程度を覆う大きさで、中心側をボス部35aに接当させた状態で複数のボルト51によって着脱自在に取付けている。
【0026】
これにより各除草輪35が除草回転するとき、線材カバー50は線材42と共に回転し、当該線材42の基部側と苗の葉先側との接触を防止しながら、滑らかな平坦面又は皿状の曲面によって苗を損傷することなく後方に誘導案内をする。また線材カバー50は線材42が長期の使用によって苗際側に向けて内向き変形している場合に、線材42の中途部に接当しているので、線材42の先端と苗との接触を防止するように規制するため、苗との絡みつきを防止する。
【0027】
上記各株際除草部38,39の左右の除草輪35は、各苗通過間隔内に各対応する苗条N2,N3,N6,N7と苗条N4,N5の苗の株元を位置させた状態で通過させることができ、且つ左右の線材42の先端部を苗の両株際の圃場内(田面)に突入させることができる。そして、走行機体1の前進走行に伴い各除草輪35は、線材42が田面に突入する地中抵抗により接地回転し、ボス部35aの軸方向に突設される線材42の先端集合幅(除草幅)において、苗の株際の除草を後述するように行うことができる。このとき各苗条で前後方向に隣接する苗の間(株間)の除草も同時に行うことができる。
【0028】
以上のように構成される除草作業機16を走行機体1の後部に備えた除草機は、センタフロート19及びサイドフロート21が田面に接地するように除草作業機16を下降させ、走行機体1を走行させることによって、2連田車27,28,29,31,32と、株際除草部38,39によって除草作業を行う。このとき各条間は対応する2連田車27,28,29,31,32によって、株間は各苗条N2,N3,N4,N5,N6,N7に対応する株際除草部38,39によって分担し、それぞれ1度の走行で2度掛けの除草を効率よく行うことができる。
【0029】
このとき株際除草部38,39は、各2連田車27,28,29,31,32では除草不能とされる苗際及び株間に対して、弾力性を有する線材42を束ねて突設した除草輪35が、苗を傷めることなく除草精度を高めた除草作業を効率よく行う。また各除草輪35は図3,図4で示すように、田車23F,23Rによって耕され除草直後の柔らかい除草田面と、苗の株元との間に形成される田面(株際)に接地して回転駆動されるため、従来のレーキによるものより除草抵抗を軽減することができ、走行負荷を低減した除草作業を能率よく行うことができる。
【0030】
即ち、図5で示すように矢印方向に接地回転する除草輪35は、上方に位置し伸直状態にある線材42は回転によって接地すると、田面への突入抵抗により弾力性に抗して矢印A方向(反回転方向)に撓み、輪軸44の略直下において撓み量が最大になる。次いで、この線材42は、回転により地中抵抗が少なくなることに伴い、自身の弾力性によって地中で伸直方向に復帰動しながら、田面から抜け出るとき抵抗が解除されることによって、矢印B方向(回転方向)に向けて急速的に反転(バネ反転)する。
【0031】
これにより株元の側方及び株間に生えている株際の雑草は、線材42の反回転方向撓みによって地中に押し込まれるので沈み除草される。また押し込まれなかった雑草並びに前記田車23F,23Rによる除草田面から浮遊してきた雑草等は、地中で弾力性により伸直状に戻る線材42に引っ掛けられて、矢印B方向へ反転する撓み力によって上方に跳ね上げられ、湛水面に浮遊状態になって除草される。尚、水面に浮遊状態になった雑草は、その成長が阻害されやがて枯れるため除草されることになる。
【0032】
また上記のように除草作用を行う各株際除草部38,39の左右の除草輪35は、上方に向けてV字状をなすように配設されているため、苗が成長して繁茂した圃場の除草作業を行う場合においても、苗を傷めることなく精度の高い除草を行うことができる。 即ち、V字状をなすように配設される左右の除草輪35は、線材42の先端を隣接する苗の間に容易に入り込ませて前記した除草作業を行うため、株間の除草をより確実に行うことができる。また弾力性を有しながら粗間隔に突設されている線材42は、株元に接触したとしても、前後及び側方に向けて曲がると共に回転によって速やかに接触を解除するので、除草時の株元の損傷を容易に回避することができる。このため左右の除草輪35の苗通過間隔を狭めることもでき、除草漏れを抑制した精度の高い除草を能率よく行うことができる。
【0033】
また背丈が大きく成長し且つ葉茎部が広がった状態の苗であっても、上方をV字状に拡開している除草輪35は、葉茎部との強い接触を回避することができる。また葉茎部が線材42に接触したとしても、可撓性を有し粗間隔に突設され且つ外向き傾斜姿勢の線材42は、接触方向の他方向(下向き)に容易に撓むことができるため、除草輪35の回転に伴う葉茎部の押し倒しや、苗の引き抜き等を防止する。
【0034】
また左右の除草輪35は、平面視において前方に向けてV字状に拡開させ対抗する左右の線材回転軌跡の前方間隔を拡開しているので、前進に伴う各苗列の各苗の葉先に対する接触を回避した状態で、前記苗通過間隔に至る苗の苗際除草を行うことができる。このとき苗の葉先が除草輪35の後方に至るに従い平面視で近接する線材42の基部側に接触しようとしても、葉先はこの部に設置されている線材カバー50に接触するので、線材42との接触を防止されて線材42に絡みつくことなく後方に向けてスムーズに誘導される。
【0035】
即ち、実施形態の左右の除草輪35は、株際側の側面で、回転中心から線材42の長さ中途部を覆う円盤形状の線材カバー50を設けているので、苗の葉先と線材42の撓みにくい中途部との苗接触を規制しながら、回転する線材42の先端で株際の除草を行う。
従って、上記のように線材カバー50を有する除草輪35からなる各株際除草部38,39は、苗が成長して繁茂している圃場や、苗列の曲がりが大きい圃場の除草作業を行う場合においても、背丈が高く葉先が側方に向けて嵩張ったり傾倒している苗を傷めることなく、苗際の除草を線材42の苗接触を懸念することなく能率よくスムーズに行うことができる。
【0036】
また長期の使用において除草輪35は、線材42が苗際側に向けて曲がり変形をする場合に、線材カバー50が線材42の中途部に接当していることにより、線材先端の苗際側への大きな突出を規制するので、苗通過間隔を著しく狭めて苗を損傷することなく、且つ線材42の先端と葉先との絡みつきを防止した、除草輪35の除草性能を長期にわたり維持することができる等の特徴がある。
【0037】
次に、除草輪35の第2実施形態について図6,図7を参照し説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。この除草輪35はボス部35aの軸支基部側(外側)に接地駆動部材55を設けることにより、該接地駆動部材55が地中に突入したとき、その剛性により接地抵抗を効率よく受けて除草輪35の回転駆動を促進させる。これにより除草輪35は、軟弱な湛水田であってもスリップ等を生ずることなく、線材42による除草作用を促進して除草効率をより向上させることができる。
【0038】
図示例の接地駆動部材55は、側面視において線材42の回転軌跡と略同じか又はそれよりやや径大な直径の円板に対し、外周側から星型状をなすように切欠した形状にすることにより、略等間隔な突起部56を有するスターホイルとしている。 これにより図7で示すように、傾斜姿勢で回転する除草輪35の外側寄りに配設されるスターホイル55は、苗の株元から離間した側で地中により深く突入するので、スリップを抑制した除草輪35の接地回転をよりスムーズにすることができる。
【0039】
また線材42に接地回転駆動をさせるための強い弾性力を必要としないので、線材42の柔軟性を高めることもでき、苗との接触を優しくすることができる等の利点がある。尚、接地駆動部材55は、上記のようなスターホイルに限ることなく、例えば剛性の高い複数本の線材をボス部35aの外周に放射状に突設する構成にしてもよい。
【0040】
次に、図9を参照し除草輪35の第3実施形態について説明する。この除草輪35は、前記第1実施形態のものと同様な構成において、ボス部35aの外周及びその軸方向に突設される線材42を、背面視において軸方向先端側(内側)の線材42から徐々に短くすることにより、除草輪35の除草幅の線材先端が田面と略平行状をなすようにしている。 これによれば、第1実施形態のものに比し、除草輪35の除草幅をより広くした除草を行うことができる。また内側の線材42と外側の線材42とが田面に同時的に突入するので、個々の線材42の初期撓みが抑制されるため、それだけ接地抵抗を高めることができ除草輪35の接地回転をスムーズにすることができる等の特徴がある。尚、この場合の除草輪35に対しても接地駆動部材55を設けてもよいものである。
【0041】
尚、この実施形態では4輪型の走行機体1に除草作業機16を装着したが、これに限ることなく、作業機体に所望数の田車23F,23Rと株際除草部38,(39)とを配設した除草作業機16にすることにより、例えば、2輪又は1輪型の走行機体1の後側或いは前側に装着した除草機にすることもできる。また上記除草作業機16は作業機体に手押し型のハンドルを設けることにより人為走行式の除草機にすることができる。さらに、除草作業機16は、田車23F,23Rの構造を図示例の鉄板製に限定することなく、例えば実施形態のものと同様な線材42を植設してなる回転ブラシ輪にしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 走行機体
16 除草作業機
33 機体フレーム
35 除草輪
38,39 株際除草部
42 線材
50 線材カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の株際を除草する株際除草部(38),(39)を、作業機体の前側又は後側に備えた除草作業機(1)において、
前記株際除草部(38),(39)を、弾力性を有する線材(42)を放射方向に突設した左右一対の除草輪(35)を株際の田面に接地回転可能に配設すると共に、
上記左右の除草輪(35)を、苗の株元を通過させる苗通過間隔から、上方に向けてV字状に拡開させて配設し、
且つ除草輪(35)の苗通過間隔側の側面に、回転中心から線材(42)の長さ中途部を覆う円盤状の線材カバー(50)を設けることにより、
苗の葉先側と線材(42)の中途部との苗接触を規制し回転する線材(42)の先端で株際の除草を行うように構成したことを特徴とする除草作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−42683(P2013−42683A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181562(P2011−181562)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】