説明

除菌装置

【課題】長い時間に渡って除菌能力を維持できるマイクロプラズマ発生部、オゾン分解触媒部を備えた除菌装置を得る。
【解決手段】マイクロプラズマ発生部7を備え、マイクロプラズマ発生部7の除菌対象ガス流れ下流側にオゾン分解触媒部8を備え、マイクロプラズマ発生部7より上流側に、固形物分離部9を備えた第一ガス流路6aと並列に、第一ガス流路6aとは別に除菌対象ガスが流れる第二ガス流路6bを設け、第二ガス流路6bに燃焼部2を備え、除菌対象ガスが第一ガス流路6aを流れる第一状態、第二ガス流路6bを流れる第二状態で、それぞれ、マイクロプラズマ、燃焼熱で除菌可能に構成され、第二状態において、燃焼部2から排出される排ガスをオゾン分解触媒部8及びマイクロプラズマ発生部7に流して、オゾン分解触媒部8及びマイクロプラズマ発生部7を再生する再生運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラズマ発生部を備え、当該マイクロプラズマ発生部の除菌対象ガス流れ下流側にオゾン分解触媒部を備えた除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、除菌装置として、ストリーマ放電(特許文献1)、沿面放電(特許文献2、3)、グロー放電(特許文献4)、コロナ放電等の放電により、低温プラズマを発生させ、その低温プラズマの作用により、除菌を行うものが実用化されてきている。
【0003】
また、このような技術では、低エネルギーで効率よくプラズマを発生させ、かつ、居室空間内の空気と接触させる必要があるため、微小空間内で前記沿面放電を効率よく行い、低温プラズマを発生させる、いわゆるマイクロプラズマを利用した除菌装置が研究されている(特許文献3)。
【0004】
表面に誘電体膜が形成されるとともにプラズマ処理の対象となる流体が流通可能な貫通孔が厚み方向に複数形成された一対の電極板を、数十μm程度の間隔をあけて互いに略平行に配置されてなるプラズマ電極を備え、前記電極間に交流高電圧を印加することにより、電極間に放電プラズマを発生させ、放電プラズマにより生成した正イオンおよび負イオンを居室空間に送出し、これらのイオンが引き起こす化学反応により空気中の有害な化学物質や浮遊微生物を無害化すると考えられているものである。
【0005】
しかし、空気などの流体をプラズマと接触させ処理するために十分な流通性を確保するためには、放電電極間のギャップを広くとる必要があり、このようにすると、大きな放電エネルギーが必要になる。一方、放電エネルギーを小さくするためには、前記ギャップを小さくする必要があるが、小さなギャップで前記流体とプラズマとの接触性を確保するためには、前記流体を流通させるときに非常に大きな圧力差損が生じ、そのための特段の圧入手段等が必要とされ、圧損と、放電エネルギーの低減をともに解決することが主な課題として、種々検討されている。
【0006】
また、上述の放電技術によると、プラズマの発生とともに、前記電極間には不可避的にオゾンが発生することが知られている。上記電極において、オゾンが大量に発生すると、居室空間内にオゾンが漏洩し始め、前記居室空間内の人に悪影響を及ぼすおそれがあると考えられる。そこで、上記電極を備えたマイクロプラズマ発生部には、オゾン除去装置を設けるなどの対策が検討されている。
【0007】
そのため、上記マイクロプラズマ発生用の電極は、構造が複雑化して、メンテナンス効率を度外視して設計される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−346334号公報
【特許文献2】特開2006−122521号公報
【特許文献3】特開2009−078266号公報
【特許文献4】特開2002−336343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記電極を備えたマイクロプラズマ発生部に、居室空間内の空気を流通させると、前記電極周辺に前記居室空間内のダストが付着するなどして、前記マイクロプラズマ発生部のプラズマ発生効率が低下する場合があり、このような場合長期に渡って良好な運転状態を維持できない。
【0010】
また、発生したオゾンが居室空間に放出されるのを防止するために、マイクロプラズマ発生部の下流側にオゾン分解触媒(例えばMn触媒部)を設ける必要があるが、この種のオゾン分解触媒も、前記ダスト、その他の異物、化学物質等により経時劣化し、所定の寿命を設定してそのオゾン分解触媒を交換、再生する必要が生じる。
【0011】
そこで、本願の目的は、長い時間に渡って除菌能力を維持できるマイクロプラズマ発生部、オゾン分解触媒部を備えた除菌装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔構成〕
上記目的を達成するための本発明の除菌装置の特徴構成は、マイクロプラズマ発生部を備え、除菌対象ガスが流れるガス流路の前記マイクロプラズマ発生部より上流側に、固形物分離部を備えるとともに、前記マイクロプラズマ発生部の下流側に、オゾン分解触媒部を備え、前記固形物分離部、マイクロプラズマ発生部及びオゾン分解触媒部が備えられる第一ガス流路と並列に、第一ガス流路とは別に前記除菌対象ガスが流れる第二ガス流路を設けるとともに、前記第二ガス流路に燃焼部を備え、前記除菌対象ガスが前記第一ガス流路を流れる第一状態、前記第二ガス流路を流れる第二状態で、それぞれ、マイクロプラズマ、燃焼熱で除菌可能に構成されるとともに、前記第二状態において、燃焼部から排出される排ガスを前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部に流して、前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部を再生する再生運転を可能に構成してある点にある。
【0013】
〔作用効果〕
つまり、マイクロプラズマ発生部を備えるから、前記マイクロプラズマ発生部でプラズマが発生し、前記マイクロプラズマ発生部を流れる空気中に含まれる有害な化学物質や浮遊微生物を無害化することができる。
【0014】
また、当該マイクロプラズマ発生部の除菌対象ガス流れ下流側にオゾン分解触媒部を備えるから、前記マイクロプラズマ発生部においてオゾンが発生したとしても、そのオゾンを前記オゾン分解触媒部で分解除去することができる。そのため、前記マイクロプラズマ発生部で発生したオゾンによる悪影響が居室空間に及ぶのを防止することができる。
【0015】
ちなみに、前記オゾンは、オゾン分解触媒部で分解される際、活性酸素を発生しつつ酸素ガスとなるが、オゾンや活性酸素にも除菌能力があり、オゾン分解触媒部に達した空気中の有害な化学物質や浮遊微生物は、そのオゾン分解触媒部に達するまでの間にオゾンによっても分解され、かつ、オゾン分解処理部上でも活性酸素によってさらに分解除去されることになるので、効率的に空気中の有害な化学物質や浮遊微生物を無害化することができる。
【0016】
ここで、除菌対象ガスが流れるガス流路の前記マイクロプラズマ発生部より上流側に、固形物分離部を備えるから、前記マイクロプラズマ発生部に流れる除菌対象ガス中に混入するダストその他の菌に比して大きな固形物を前記除菌対象ガスから除去して、前記マイクロプラズマ発生部に流入するのを防止することができる。
【0017】
従って、除菌対象ガスを前記固形物分離部、マイクロプラズマ発生部及びオゾン分解触媒部が備えられる第一ガス流路に流通すると、その除菌対象ガスは、固形物分離部を介して、マイクロプラズマ発生部に達し、除菌対象ガス中の有害な化学物質や浮遊微生物を無害化するとともに、その際発生するオゾンを除去して、居室空間内を清浄化する空気清浄運転(第一状態)が可能となる。
【0018】
また、前記第一ガス流路と並列に、第一ガス流路とは別に前記除菌対象ガスが流れる第二ガス流路を設けるとともに、前記第二ガス流路に燃焼部を備えると、前記第二ガス流路に除菌対象ガスを流通したときに、前記除菌対象ガスは、前記燃焼部において燃焼させられ、その除菌対象ガスに含まれる有害な化学物質や浮遊微生物を無害化する燃焼除菌運転(第二状態)ができる。
【0019】
前記燃焼除菌運転における、燃焼部から排出される排ガスは、すでに除菌され、ダスト等も燃焼除去された高温のガスとなっている。そのため、前記排ガスを前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部に流すと、前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部を加熱し、これらに付着する有害な化学物質や浮遊微生物を加熱分解除去することができるとともに、逆洗することができ、再生する再生運転を行うことができる。
【0020】
そのため、前記マイクロプラズマ発生部には汚れが蓄積されにくくなるとともに、汚れによるプラズマ発生効率の定価等の悪影響が生じにくい。その與、前記マイクロプラズマ発生部を長寿命で使用することができるようになり。メンテナンスに要する労力、費用を削減することができた。
【0021】
〔構成〕
尚、前記固形物分離部としては、種々形態のものを採用することができるが、U字管部としてあると、好ましい。
【0022】
〔作用効果〕
すなわち、U字管部は、単純な形状で、前記第一流路の圧損を増加させにくく、かつ、前記マイクロプラズマ発生部に流入して問題になるような固形部を効率良く分離除去することができる。また、U字管部は、構造的に単純であるのでメンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】除菌装置の概略図である。
【図2】除菌装置の除菌運転時の流路を示す図である。
【図3】除菌装置の暖房運転時の流路を示す図である。
【図4】除菌装置の暖房除菌運転時の流路を示す図である。
【図5】除菌装置の再生運転時の流路を示す図である。
【図6】マイクロプラズマ発生部の全体構成を示す模式図である。
【図7】マイクロプラズマ発生部の要部分解斜視図である。
【図8】マイクロプラズマ発生部の電極板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の除菌装置として機能する暖房装置について説明する。
【0025】
本発明にかかる暖房装置1は、図1に示すように、暖房装置本体1a内部に燃焼部2を備えるとともに、送風機3を備え、前記送風機3を駆動することにより、前記暖房装置本体1aの吸気口4から吹出口5に通じる流路に除菌対象ガスとしての室内空気を流通させるガス流路6を設けて構成してある。
【0026】
前記ガス流路6は2つの流路に分岐して設けられ、一方(第一ガス流路6a)を、前記燃焼部2によらず除菌対象ガスを除菌する除菌運転可能に構成し、他方(第二ガス流路6b)を前記燃焼部の燃焼熱により除菌する暖房除菌運転可能に構成する。
【0027】
前記第一ガス流路6aは、前記吸気口4と前記吹出口5との間に後述のマイクロプラズマ発生部7を備え、そのマイクロプラズマ発生部7の除菌対象ガス流れ下流側に、後述のオゾン分解触媒部8を備え、除菌対象ガスが流れる第一ガス流路6aの前記マイクロプラズマ発生部7より上流側に、U字管部からなる固形物分離部9を備える。これにより、前記第一流路6aは、前記送風機3を駆動することにより、除菌対象ガスを吸気口4より取り入れ、固形物分離部9に通じてその除菌対象ガス中の固形物を分離した後、前記マイクロプラズマ発生部7に導き、そのマイクロプラズマ発生部7によって発生するマイクロプラズマにより前記マイクロプラズマ発生部7内に流通する空気を除菌するとともに、マイクロプラズマとともに発生するオゾンをオゾン分解触媒部8で分解除去し、前記送風機3に達し、吹出口5より排出される第一状態を実現する(図2参照)。
【0028】
他方、第二ガス流路6bには、前記燃焼部2を備え、前記送風機3を駆動すると、前記吸気口4からの除菌対象ガスを燃焼部2に通じ、燃焼熱により加熱するとともに除菌し、前記送風機3に達した除菌対象ガスが、吹出口5より排出される第二状態を実現する(図3参照)。
【0029】
即ち、図2に示す様に、燃焼部2を機能させず、前記送風機3を動作させると、第一状態のみを実現することができ、例えば、夏季にでも暖房なしに除菌運転を行うことができ、冬季には、図3に示すように、燃焼部2により暖房運転を行うことによって、前記燃焼部2の燃焼による除菌が行え、さらに、図4に示すように、燃焼部2で燃焼を行いつつ前記第一流路を開けて前記送風機3を動作させると、前記第一状態と第二状態を同時に実現し、第二流路6bに流通される除菌対象ガスを加熱しつつ除菌し、かつ、前記第一流路6aに流通される除菌対象ガスをマイクロプラズマ発生部7で除菌した後、加熱除菌された第二流路6bの除菌対象ガスと混合し、適度な温度として吹出口5から温風として吹き出す暖房除菌運転を行うことができる。
【0030】
また、前記第一流路6aの前記吸気口4および前記吹出口5には、開閉部材(順に第一、第二開閉部材10a.10bとする)が設けられ、前記第一流路6aの前記マイクロプラズマ発生部7と前記固形物分離部9との間には、マイクロプラズマ発生部7の上流側のガスを暖房装置本体1a外部に逃す逃し流路6cを設けるとともに、逃し流路開閉部材10cを設けてある(図1a参照)。
【0031】
上記各開閉部材10a,10b,10cを操作すると、図1bに示すように、吹出口および第一流路6aの吸気口4を封鎖した状態でかつ前記前記逃し流路6cを逃し流路開閉部材10cにより開状態として前記逃し流路6cを流通状態にすることができる。この状態では、前記第二流路6bに流入した除菌対象ガスは、送風機3に導かれ燃焼部2を通って前記第一流路6aに逆流する構成となる。前記第一流路6aに逆流した除菌対象ガスは、前記オゾン分解触媒部8、マイクロプラズマ発生部7を順に経由して前記逃し流路6cから暖房装置本体1a外部に排出される。そのため、第二流路6bから第一流路6aを逆流し逃し流路6cに至る上記流路(図1b参照)を構成した状態で、前記燃焼部2および前記送風機3を動作させると、前記除菌対象ガスは前記燃焼部2で加熱除菌された後、前記オゾン分解触媒部8、マイクロプラズマ発生部7を順に逆洗して再生する再生運転を行うことができる(図5参照)。尚、再生運転の際、前記逃し流路6cに流通するガスは、前記固形物分離部9を経由することなく暖房装置本体1aの外部に導くことができるので、前記第一流路にガスを逆流させる構成であっても、圧損は低く抑えられている。
【0032】
そのため、前記オゾン分解触媒部8、マイクロプラズマ発生部7を目詰まりさせにくくして、長寿命に使用することができるようになった。
【0033】
〔燃焼部〕
前記燃焼部2は、前記暖房装置本体1a内部に、上部が開口して前記第二流路6bに連通する燃焼室20を仕切って形成するとともに、前記燃焼室20内にガスバーナ21を設けて構成される。前記ガスバーナ21にはガス管、燃焼用空気供給部(図示省略)等が接続される。
【0034】
暖房装置1の運転が開始されると、送風機3が駆動され、室内の空気が吸引口から取り込まれる。ガスバーナ21は、ガス管から供給される燃料を燃焼用空気と混合し、点火されて燃焼を開始する。ここで、加熱される除菌対象ガスは約800℃に達し、加熱されると同時に除菌される。この除菌されたガスは、(予備希釈された後)(希釈ガスが第一流路を必ず通ることとしなければ、予備希釈用の流路を設けることも可能であると考えますが、現状設けておりません。)前記第一流路6aからのガスと混合され、適温(約200℃)に希釈され、吹出口から排出される構成となる。
【0035】
〔マイクロプラズマ発生部〕
マイクロプラズマ発生部7は、図6に示すように、第一流路6aを横断して互いに略平行に配置される一対の電極板70と、電極板70にプラズマ発生用の電圧を印加する高周波電源71とを備えて構成されるとともに、一対の電極板70の夫々に、除菌対象の流体である空気が通過可能な貫通孔70aを電極板70の厚み方向に形成して構成されている。また、電極板70の表面には誘電体膜が形成されている。高周波電源71と一対の電極板70のそれぞれとは電気配線により電気的に接続されている。そして、一対の電極板70間に高周波電源71から交流電圧を印加することで、一対の電極板70間にストリーマ形式の誘電体バリア放電を生起させ、マイクロプラズマを生成することができる。このマイクロプラズマにより生成された高速電子、各種活性ラジカル(N*,O*,OH*等)、強電界、紫外線が、一対の電極板70に形成された貫通孔70aを上流側から下流側へ向かって通過する空気を除菌する。
【0036】
電極板70は、大気圧中でマイクロプラズマを発生させるための電極として用いるため、高温での耐酸化性を有する各種のステンレス鋼で形成されたものを用いるのが好ましい。このようなステンレス鋼としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼(martensitic stainless steels)、フェライト系ステンレス鋼(ferritic stainless steels)、
オーステナイト系ステンレス鋼(austenitic stainless steels)、オーステナイト・フ
ェライト系ステンレス鋼(austenitic-ferritic stainless steels)、析出硬化系ステンレス鋼(precipitation hardening stainless steels)等がある。なお、ステンレス鋼以外の金属を用いて電極板70を形成しても良い。
【0037】
図6から図8に示すように、電極板70には空気が通過可能な貫通孔70aが厚み方向に複数形成されている。ここでは、貫通孔70aは、断面形状が円形であり、図8に示すように、平面視で六方格子(三角格子、60度千鳥)状に配置されている。複数の貫通孔70aは同一の孔径φを有しており、貫通孔70a間に位置する電極板部分に関し、隣接して配置される貫通孔70a間の最小離間長さsは、貫通孔70aによらず一定の値となっている。なお、複数の貫通孔70aの孔径φが同一でなく、孔径φが所定の範囲内で分布する構成としても好適である。また、複数の貫通孔70aの配置は六方格子状の配置に限られるものではなく、例えば、複数の貫通孔70aを正方格子状に配置したり、不規則に配置しても良い。
【0038】
ここで、電極板70の板厚t(図8参照)は、1mm以上とするのが好ましい。電極板70の厚みtが1mm未満の場合、電極板70の縁部近傍で両電極板間にわたって直接放電が発生するおそれがあるが、電極板70の板厚tを1mm以上に設定することで、電極板70の縁部近傍で両電極板間にわたって直接放電が発生することを抑制することができる。結果、一対の電極板70間に安定してマイクロプラズマを発生させることができる。なお、電極板70の板厚tの上限値は、製造コストの抑制や製造工程の簡素化の観点から定めたり、電極板70に形成する貫通孔70aの孔径φに基づいて定めると好適である。一般的に、板厚tより小さい孔径φの貫通孔70aを電極板70に形成するのは、製造工程を簡素化するという観点から望ましくない。そのため、電極板70の板厚tは、貫通孔70aの孔径φと同じ値としたり、貫通孔70aの孔径φより小さな値とすることが好ましく、電極板70の板厚tの上限値としては、例えば、1.5mm、2mm、或いは3mm程度とすることができる。なお、当然ながら、本発明は、電極板70の板厚tが1mm以上である構成に限定されるものではなく、厚さtが1mm未満の電極板70を備えてマイクロプラズマ発生部7を構成してもよい。
【0039】
また、電極板70に形成される貫通孔70aの孔径φは、1.5mm以上3mm以下とするのが好ましい。貫通孔70aの孔径φが1.5mm未満となると、電極板70の製造コストの上昇や、除菌対象の流体を貫通孔70aに流通させる際の圧力損失の上昇を招来するおそれがある。そこで、上記のように貫通孔70aの孔径φを1.5mm以上とすることで、電極板70に貫通孔70aを安定的に穿孔でき、製造コストの上昇を抑制することができる。また、圧力損失の上昇も抑制することができる。また、貫通孔70aの孔径φが3mmを超えると、除菌対象の流体がマイクロプラズマにより処理されずに電極板70に形成された貫通孔70aを通過する割合が高くなり、除菌性能が低下するおそれがある。そこで、貫通孔70aの孔径φを3mm以下とすることで、除菌対象の空気がマイクロプラズマにより処理されずに電極板70に形成された貫通孔70aを通過することが抑制され、除菌率の向上を図ることができる。なお、貫通孔70aの孔径φの上限値を3mmに替えて2mmとすると更に好ましい。また、当然ながら、本発明は、貫通孔70aの孔径φが1.5mm以上3mm以下である構成に限定されるものではなく、貫通孔70aの孔径φを1.5mm未満としたり3mmより大きな値としてもよい。
【0040】
マイクロプラズマ発生部7は、一対の電極板70間に誘電体バリア放電を生起させマイクロプラズマを発生させる。そのため、一対の電極板70の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面には誘電体膜(図示せず)を形成することになる。そこで、電極板70に隣接して配設される貫通孔70a間に位置する電極板70部分に関し、隣接して配設される貫通孔70a間の最小離間長さs(図8参照)は、少なくとも1mmとするのが好ましい。最小離間長さsが1mm未満の場合、電極板70の他方の電極板70に対向する面の面積が小さくなり、電極板70の表面に形成した誘電体膜が剥離しやすくなるおそれがある。しかし、上記のように最小離間長さsを設定することで、誘電体膜を形成する面の面積を十分に確保することができ、電極板70の表面に形成した誘電体膜が剥離することが抑制され、一対の電極板70間にマイクロプラズマを安定して発生させることができる。一方、最小離間長さsが大きくなるにつれて除菌対象の空気を貫通孔70aに流通させる際の圧力損失が大きくなるため、最小離間長さsの上限値は、許容できる圧力損失の大きさに応じて定めると好適である。例えば、最小離間長さsの上限値は、1.5mmや2mm程度とすることができる。なお、当然ながら、本発明は、最小離間長さsが1mm以上である構成に限定されるものではなく、最小離間長さsが1mm未満となる構成としてもよい。
【0041】
先にも述べたように、電極板70の表面には誘電体膜が形成されている。一対の電極板70間には、誘電体バリア放電を生起させるため、一対の電極板70の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面或いは双方の面には誘電体膜を形成することとなる。また、これらの面に加え、貫通孔70aの内周面にも誘電体膜を形成する構成としてもよい。このように誘電体膜を形成することで、一対の電極板70間に安定してマイクロプラズマを発生させることができる。誘電体膜の膜厚は、例えば、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。また、誘電体膜は、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、Y23、PbZrO3−PbTiO3、BaTiO3、TiO2、ZnO等や、これらの複合酸化物により構成することができる。
【0042】
また、一対の電極板70は、電極板70の周縁部に沿う形状の円環状のスペーサ(図示せず)を間に挟持した状態で互いに固定されている。このスペーサは一様の厚みを有しており、一対の電極板70は互いに略平行になるように配置される。よって、一対の電極板70間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さd(図6参照)は、このスペーサの厚みにより概ね定められる。一対の電極板70をこのように配設することで、一対の電極板70間に形成される空隙を板面に沿う方向において略均一にすることができ、誘電体バリア放電を均一に安定して発生させることが可能となっている。スペーサの厚みは、例えば、30μm以下の値から選択することができる。この時、上記の長さdも30μm以下となり、一対の電極板70間に印加する交流電圧の波高値を1000V程度と比較的低い値としても、マイクロプラズマを発生させることができる。この場合、一対の電極板間に波高値が1000V以上の交流電圧が印加される構成とすると好適である。このようなスペーサは、例えば、ポリエチレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の合成樹脂等の絶縁材料により形成することができる。
【0043】
なお、一対の電極板70の互いに対向する面の双方に誘電体膜が形成され、当該誘電体膜が電極板70の板面に直交する方向(厚み方向)に凹凸(例えば、5μm以上50μm以下の高低差を有する凹凸)を有する場合には、上記のスペーサを介さずに一対の電極板70を積層するように互いに固定する構成としても好適である。この場合、上記の凹凸により形成される間隙において誘電体バリア放電が生じるため、一対の電極板70間にマイクロプラズマを発生させることができる。
【0044】
なお、一対の電極板70は同じ構成のものであり、一対の電極板70は、板面に直交する方向からみて、双方の電極板70に形成された貫通孔70a同士が全体として互いに重なり合うように円周方向に位置決めされ、互いに固定されている。そのため、図6に示すように、除菌対象の空気は貫通孔70aの間を通過することができ、除菌対象の空気の流れを大きく阻害することなく一対の電極板70を厚さ方向に近接して配置することができる。その結果、マイクロプラズマを発生させるために一対の電極板70間に印加することが必要となる電圧の大きさを低く抑えることができ、少ない消費電力で効率的にマイクロプラズマ発生部7にマイクロプラズマを発生させることが可能な構成となっている。なお、当然ながら、一対の電極板70を、板面に直交する方向からみて、双方の電極板70に形成された貫通孔70a同士の一部のみが互いに重なり合うように円周方向に位置決めしたり、一対の電極板70を異なる構成の2枚の電極板70により構成してもよい。
【0045】
〔オゾン分解触媒部〕
オゾン分解触媒部8は、オゾン分解触媒フィルタを備えて構成されている。オゾン分解触媒フィルタは、例えば、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四三酸化鉄、酸化銅、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、及び炭酸銅の何れか一種又は複数種の組み合わせからなるオゾン分解触媒と、ハニカム状に構成された触媒担持用の構造体とから構成される。そして、マイクロプラズマ発生部7によりマイクロプラズマが形成される状態で、電極板70に形成された貫通孔70aを通過した除菌対象の空気がオゾン分解触媒部8の配設箇所を通過するように構成されている。具体的には、除菌対象の空気は、オゾン分解触媒フィルタを通過するように構成されている。なお、このようなオゾン分解触媒フィルタの構成は公知であるため、ここでは詳細な説明は省く。
【0046】
前記マイクロプラズマ発生部7において、一定の除菌効果が得られる程度の電圧を一対の電極板70間に印加すると、一対の電極板70間に発生するマイクロプラズマにより環境上の観点から無視できない程度の濃度のオゾンが生成されるが、マイクロプラズマにより発生したオゾンは、貫通孔70aを通過した除菌対象の空気とともにオゾン分解触媒部8に導かれる。
【0047】
オゾン分解触媒部8に導かれたオゾンは、上記のオゾン分解触媒フィルタにより無害な酸素分子に変化するため、オゾンが除菌部8の下流に流出することが抑制されている。しかも、オゾンは酸素分子に変化する過程で酸素原子として存在するため、オゾン分解触媒部8に導かれた空気は、当該酸素原子によっても除菌される。そのため、オゾン分解触媒部8を設けることで、マイクロプラズマを用いて流体の除菌を行う際にオゾンが発生するという課題を解決できるとともに、空気の除菌効果を高めることも可能となっている。
【0048】
〔その他〕
尚、前記燃焼部2の燃焼制御、送風機3,オゾン分解触媒部8、マイクロプラズマ発生部7の動作制御、ならびに、前記第一、第二開閉部材10a,10bおよび逃し流路開閉部材10cの開閉制御等の運転制御は前記暖房装置本体1a内部に設けられる制御部11
から一括して行われるものとする。また、除菌暖房運転中に吹出口5から排出されるガスの温度は、燃焼部2で加熱された第一流路6aのガスと、加熱されていない第二流路6bのガスとの混合により調節され、この際、前記第一開閉部材10aの開度調整が行われる。
【0049】
また、前記再生運転は、前記マイクロプラズマ発生部7の汚れが所定レベルに達したと考えられる時期に、冬季の暖房除菌運転停止後や、冬季以外の夜間に1時間程度行うことにより、マイクロプラズマ発生部7およびオゾン分解触媒部8の再生が可能となる。前記汚れが所定レベルに達したと考えられる時期は、暖房除菌運転や除菌運転の経過時間で判断しても良いし、汚れを光学的に検知するセンサに基づいて判断しても良く、前記制御部11に設けられる種々判定機構により判断される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の除菌装置によると、マイクロプラズマ発生部を長期にわたって性状に保つことができるので、長寿命の除菌装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 燃焼部
6a 第一ガス流路
6b 第二ガス流路
7 マイクロプラズマ発生部
8 オゾン分解触媒部
9 固形物分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプラズマ発生部を備え、当該マイクロプラズマ発生部の除菌対象ガス流れ下流側にオゾン分解触媒部を備えた除菌装置であって、
除菌対象ガスが流れるガス流路の前記マイクロプラズマ発生部より上流側に、固形物分離部を備えるとともに、
前記固形物分離部、マイクロプラズマ発生部及びオゾン分解触媒部が備えられる第一ガス流路と並列に、
第一ガス流路とは別に前記除菌対象ガスが流れる第二ガス流路を設けるとともに、前記第二ガス流路に燃焼部を備え、
前記除菌対象ガスが前記第一ガス流路を流れる第一状態、前記第二ガス流路を流れる第二状態で、それぞれ、マイクロプラズマ、燃焼熱で除菌可能に構成されるとともに、
前記第二状態において、燃焼部から排出される排ガスを前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部に流して、前記オゾン分解触媒部及び前記マイクロプラズマ発生部を再生する再生運転を可能に構成してある除菌装置。
【請求項2】
前記固形物分離部が、U字管部である請求項1記載の除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240044(P2011−240044A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116564(P2010−116564)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】