説明

除雪機

【課題】 オーガを昇降させる電動油圧シリンダの耐久性を十分に確保することができるとともに、より円滑に除雪作業ができる。
【解決手段】 除雪機の制御部は、オーガハウジング26aの全昇降量Siと全昇降時間Tu,Tdとから求められる単位時間当たりの昇降量Cu,Cdを、定数として予め設定する定数設定手段と、オーガハウジングの上昇時において下限位置Pd1を昇降時間Tcの計測開始点と設定する上昇時の計時開始点設定手段と、下降時において上限位置Pu1を昇降時間の計測開始点と設定する下降時の計時開始点設定手段と、昇降操作部材の昇降操作に応じて、対応する計測開始点からの昇降時間を計測するタイマ手段と、昇降時間に定数を乗算することで現時点の昇降位置Psを推定する昇降位置推定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行輪を備えるとともに除雪用のオーガを備えた、自力走行する形式の除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
オーガを備えた除雪機においては、除雪作業の状況に応じてオーガの高さを変える方式を採用している。除雪機を移動するときにはオーガの下面を高くしたほうが能率良く移動できる。一方、除雪するときにはオーガの下面を低くしたほうが効率良く除雪できる。さらに、除雪するときには路面の凹凸に合せてオーガの高さを変えることが多い。このようなオーガの高さを人力で変更するには作業者の負担が大きい。
【0003】
作業者の負担を軽減するために、動力によってオーガの下面を昇降させるものがあり、このようなオーガ式除雪機に関しては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平4−194109号公報(第1−3図)
【0004】
特許文献1に示す従来のオーガ式除雪機を、次の図12に基づいて説明する。
図12は従来のオーガ式除雪機の側面図である。従来のオーガ式除雪機200は、クローラ201を備えた走行フレーム202に、オーガハウジング203を備えた機体204を昇降可能に取付け、この機体204の前部を昇降調整装置205によって昇降するようにした、自力走行形式の作業車両である。オーガハウジング203はオーガ206を備える。
操縦部207に備えたオーガ昇降操作レバー208を前後に操作し、制御装置(図示せず)を介して昇降調整装置205を伸縮させることにより、機体204並びにオーガハウジング203を昇降させることができる。昇降調整装置205にはシリンダ装置を採用している。
【0005】
昇降調整装置205にシリンダ装置を採用した場合には、シリンダを駆動する駆動源が必要である。例えば、油圧シリンダを採用した場合には油圧シリンダの他に別置きの油圧装置を備えることになるので、大型になる。特に、除雪機200が小型の場合に油圧シリンダを採用したのでは、シリンダ配置スペースの点において不利である。
【0006】
昇降調整装置205を小型にするには、電動油圧シリンダを採用することが考えられる。電動油圧シリンダは、電動モータにて発生させた油圧でピストンを伸縮させる型式のシリンダであり、シリンダに電動モータや油圧装置を組込んであるので、比較的小型である。操作スイッチをオン・オフ操作して電動モータを制御することで、ピストンを伸縮させてオーガ6を昇降させる。
【0007】
除雪するときには路面209の凹凸に合せてオーガハウジング203の高さを変えることが多いので、電動油圧シリンダの作動頻度は多い。このようなことから電動モータの負担は大きく、モータ内の発熱が進む。これに対して連続使用の電動モータを採用することも考えられるが、高価であり除雪機のコストアップの要因となる。
そこで、モータの過熱に対する保護のためにサーモブレーカを設けることが考えられる。モータ内の発熱が進み一定以上の温度になったときに、電動モータに内蔵したサーモブレーカは、モータへの通電回路を遮断する。
【0008】
しかしながら、作動したサーモブレーカは熱が下がるまで通電回路を復帰しないので、復帰時間がかかる。しかも、サーモブレーカの作動設定温度を低く設定した場合には、モータへの通電回路を頻繁に遮断する。サーモブレーカの作動設定温度を高く設定した場合には、遮断頻度は減少するものの、遮断したときの復帰時間が大きい。より円滑に除雪作業ができるようにするには、サーモブレーカの作動頻度を低減させることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、オーガを昇降させる電動油圧シリンダの耐久性を十分に確保することができるとともに、より円滑に除雪作業ができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、走行輪を備えた走行フレームに、オーガを備えたオーガハウジングを昇降可能に取付け、このオーガハウジングをオーガハウジング昇降機構によって昇降するようにし、このオーガハウジング昇降機構が、電動モータにて発生させた油圧でピストンを伸縮させる型式の電動油圧シリンダであり、昇降操作部材の操作信号を受けた制御部にて電動モータを制御することでピストンを伸縮させるようにした除雪機において、
制御部が、
オーガハウジングが下限位置と上限位置との間で昇降する全昇降量と、この全昇降量だけ昇降するのに必要な全昇降時間と、から求められる単位時間当たりの昇降量を、定数として予め設定しておく定数設定手段と、
オーガハウジングの上昇時において下限位置を昇降時間の計測開始点と設定する上昇時の計時開始点設定手段と、
オーガハウジングの下降時において上限位置を昇降時間の計測開始点と設定する下降時の計時開始点設定手段と、
昇降操作部材の昇降操作に応じて、それぞれ対応する計測開始点からの昇降時間を計測するタイマ手段と、
得られた昇降時間に定数を乗算することで現時点の昇降位置を推定する昇降位置推定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、制御部に次の上限リセット手段及び下限リセット手段を備えていることを特徴とする。
上限リセット手段は、現時点の昇降位置の値が上限位置を上回ったという条件と、昇降操作部材を下降操作したという条件とを満たしたときに、現時点の昇降位置を上限位置の値にリセットするものである。
下限リセット手段は、現時点の昇降位置の値が下限位置を下回ったという条件と、昇降操作部材を上昇操作したという条件とを満たしたときに、現時点の昇降位置を下限位置の値にリセットするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、位置センサを設けることなく、オーガハウジングの昇降高さを常時検出することができる。このため、除雪機の部品数を削減することができる。
しかも、位置センサを設けていないにもかかわらず、オーガハウジングの下限位置及び上限位置で、電動モータを停止させることができる。この結果、電動油圧シリンダに過大な負荷が作用することを極力低減することができるので、電動油圧シリンダの耐久性を十分に確保することができる。
さらには、位置センサが無いので、雪や水滴等の影響を受けることなく、オーガハウジングの昇降高さを確実に検出することができる。
さらにまた、電動モータに内蔵されたサーモブレーカを作動させることなく、電動モータを速やかに停止させることができる。復帰時間が長いサーモブレーカに依存せずに、時間で制御するようにしたので、電動モータを再始動させるまでの時間が短くてすむ。サーモブレーカの復帰時間を気にすることなく除雪作業を続行することができるので、より円滑に除雪作業をすることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、オーガハウジングを上昇させることで、現時点の昇降位置の値が上限位置を上回ったときには、下降操作をしたときに、現時点の昇降位置を下限位置の値にリセットする。オーガハウジングを下降させるときに、上限位置から起算して昇降位置を求めることができる。
また、オーガハウジングを下降させることで、現時点の昇降位置の値が下限位置を下回ったときには、上昇操作をしたときに、現時点の昇降位置を上限位置の値にリセットする。オーガハウジングを上昇させるときに、上限位置から起算して昇降位置を求めることができる。
このようにすれば、何らかの理由によってオーガハウジングの昇降速度が低下した場合であっても、現時点の昇降位置を正確に求めることができる。従って、オーガハウジングの昇降位置を常に適切に把握することができるので、より一層円滑に除雪作業をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。
図1は本発明に係る除雪機の側面図である。図2は本発明に係る除雪機のエンジン、電動モータ、除雪機構、クローラベルト周りの模式的平面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、除雪機10は、左右のクローラベルト11L,11Rを備えた走行フレーム12に、除雪作業部13並びにこの除雪作業部13を駆動するエンジン14を備えた車体フレーム15を昇降可能に取付け、車体フレーム15の前部をオーガハウジング昇降機構16によって昇降するようにし、さらに、走行フレーム12の後部から後方上部へ左右2本のハンドル17L,17Rを延し、これらのハンドル17L,17Rの先端にグリップ18L,18Rを設けた自走式除雪機である。
【0016】
作業者は、除雪機10に連れて歩行しながら、ハンドル17L,17Rで除雪機10を操作することができる。
走行フレーム12及び車体フレーム15の組合せ構造は機体19を構成することになる。走行フレーム12は、走行輪としての駆動輪23L,23R並びに転動輪24L,24Rを備える。この例では、左右のハンドル17L,17R間に操作ボックス41、制御部28、バッテリ29を上からこの順に配置した。
【0017】
除雪作業部13は、車体フレーム15の前部に取付けたオーガハウジング26a、オーガハウジング26aと一体のブロアケース26b、オーガハウジング26aに備えたオーガオーガ31、ブロアケース26bに備えたブロア32及びシュータ33からなる。
【0018】
エンジン14は、除雪動力伝達機構34を介して除雪作業部13を駆動する除雪用駆動源である。除雪動力伝達機構34は、エンジン14のクランクシャフト35に電磁クラッチ50を介して取付けたシャフト側プーリ36、伝動ベルト37、オーガ側プーリ38を取付けた回転軸39からなる。
エンジン14の動力は、クランクシャフト35→電磁クラッチ50→シャフト側プーリ36→伝動ベルト37→オーガ側プーリ38→回転軸39の経路でオーガ31及びブロア32に伝わる。オーガ31で掻き集めた雪を、ブロア32によってシュータ33を介して遠くへ飛ばすことができる。
【0019】
図2は、左右のクローラベルト11L,11Rの駆動源(走行用駆動源)を左右の電動モータ21L,21Rとし、左右のクローラベルト11L,11Rの後部に左右の走行輪としての駆動輪23L,23Rを配置し、左右のクローラベルト11L,11Rの前部に転動輪24L,24Rを配置した状態を示す。
【0020】
左右の電動モータ21L,21Rは、走行動力伝達機構22L,22Rを介して左右のクローラベルト11L,11Rに動力を伝達するものである。左右の走行動力伝達機構22L,22Rは、それぞれ電動モータ21L,21Rに一体的に組込んだ減速機であり、この減速機の出力軸を左右の駆動輪用車軸としたものである。
左の電動モータ21Lの駆動力で、左の走行動力伝達機構22L並びに左の駆動輪23Lを介して左のクローラベルト11Lを駆動することができる。右の電動モータ21Rの駆動力で、右の走行動力伝達機構22R並びに右の駆動輪23Rを介して右のクローラベルト11Rを駆動することができる。
【0021】
図1において、26cはオーガハウジング26aの後下端に備えたスクレーパ、26dは充電用発電機、26eは照明ランプ、26fはカバー、26gはクローラベルト付勢部材である。図2において、25は転動輪用車軸である。
【0022】
また、エンジン14から突出したクランクシャフト35に発電機用プーリ27aを取付け、この発電機用プーリ27aから充電用発電機26dに取付けた発電機側プーリ27bにVベルト27cをかけることで、クランクシャフト35の回転をVベルト27cを介して充電用発電機26dに伝えることができる。
【0023】
図3は図1の3矢視図であり、操作部40の斜視図を示す。
操作部40は、左右のハンドル17L,17Rの間に設けた操作ボックス41と、グリップ18Lの近傍で左のハンドル17Lに設けた走行準備レバー43並びに左の旋回操作レバー44Lと、グリップ18Rの近傍で右のハンドル17Rに取付けた右の旋回操作レバー44Rと、とからなる。
走行準備レバー43は、除雪機10を走行可能状態にするレバーである。
【0024】
操作ボックス41は、ハンドル17L,17Rに渡した操作ケース45と、操作ケース45に被せた操作パネル46とからなる。
上記図1を参照しつつ説明すると、操作ケース45には、電磁クラッチ50をオン・オフ切換えするオーガスイッチ(クラッチスイッチ)45Aと、メインスイッチ(キースイッチ)45Bと、エンジン14を始動するときに使用するチョークノブ45Cと、ランプ26eを点灯させる点灯ボタン45Dと、上昇表示灯141及び下降表示灯142とを備える。
【0025】
操作パネル46は、オーガハウジング昇降機構16を操作する昇降操作レバー46Aと、シュータ33の向きを変えるシュータ操作レバー46Bと、エンジン14の回転数を制御するスロットルレバー46Cと、電動モータ21L,21Rを制御する前後進速度調節レバー76とを備える。
【0026】
昇降操作レバー46Aは、手を放したときに図に示す中立位置へ自動復帰するレバー機構である。昇降操作レバー46Aを図に示す中立位置から後方(図の手前)に昇降操作することで、オーガハウジング昇降機構16のピストンを伸張させることができる。昇降操作レバー46Aを図に示す中立位置から前方に昇降操作することで、オーガハウジング昇降機構16のピストンを退縮させることができる。
なお、47aはパネル本体部、47bはカバー部、48は前後進速度調節レバー76をガイドするガイド孔である。
【0027】
図4は本発明に係る走行フレーム、車体フレーム、フレーム昇降機構周りの分解図である。走行フレーム12は左右のサイドメンバ61,61と、前部クロスメンバ62並びに後部クロスメンバ63と、後部クロスメンバ63に取付けた左右のサイドブラケット64,64と、後部クロスメンバ63の中央部に取付けたセンタブラケット65とからなる。
左右のサイドメンバ61,61の後部は、電動モータ21L,21Rを取付けるとともに、電動モータ21L,21Rのモータ軸に直結した駆動輪用車軸を回転可能に支持したものである。左右のサイドブラケット64,64は上方へ延び、その上端部に左右貫通した支持孔64a,64aを有する。
【0028】
車体フレーム15は、左右のサイドメンバ71,71と、左右のサイドメンバ71,71間に掛け渡した駆動部設置台72と、駆動部設置台72の前部中央に取付けたアーム73とからなる。左右のサイドメンバ71,71は後部に、左右貫通した被支持孔71a,71aを有する。
支持孔64a,64a及び被支持孔71a,71aに2つの支持ピン74(この図では1つのみ示す。)を嵌合することで、走行フレーム12の後部に車体フレーム15の後部を上下スイング可能に取付けることができる。走行フレーム12は、車体フレーム15を介してオーガハウジング26a(図1参照)を上下スイング可能に取付けることになる。この結果、走行フレーム12に対してオーガハウジング26aは昇降可能である。
【0029】
オーガハウジング昇降機構16は、シリンダ81からピストン(ロッド)82が進退可能なアクチュエータである。このアクチュエータは、電動モータ85(図2参照)にて図示せぬ油圧ポンプから発生させた油圧によって、ピストン82を伸縮させる型式の電動油圧シリンダである。電動モータ85は、オーガハウジング昇降機構16のシリンダ81の側部に一体に組込んだ、昇降用駆動源である。
【0030】
オーガハウジング昇降機構16は、一端(シリンダ81の下部)をセンタブラケット65にピン83にて昇降可能に取付けるとともに、他端(ピストン82の先端部)をアーム73にピン84にて昇降可能に取付けたものである。車体フレーム15の前部をオーガハウジング昇降機構16によって昇降(上下スイング)させることができる。
【0031】
次に、上記構成の除雪機10の作用を図5に基づき説明する。
図5(a),(b)は本発明に係る除雪機の作用図である。
図5(a)は、オーガハウジング昇降機構16のピストン82を最も縮めた状態を示す。このときには車体フレーム15の前部、オーガハウジング26a並びにオーガ31は最も下がった状態になる。このときのオーガハウジング26aにおける下面の昇降位置(高さ)は下限位置Pd1にある。オーガハウジング26aの昇降位置が下限位置Pd1よりも下がることはない。
図5(b)は、オーガハウジング昇降機構16のピストン82を最も伸ばした状態を示す。このときには車体フレーム15の前部、オーガハウジング26a並びにオーガ31は最も上がった状態になる。このときのオーガハウジング26aにおける下面の昇降位置(高さ)は上限位置Pu1にある。オーガハウジング26aの昇降位置が上限位置Pu1よりも上がることはない。
【0032】
このように、昇降操作レバー46A(図3参照)を前後に操作してオーガハウジング昇降機構16のピストン82を伸縮させることにより、車体フレーム15の前部、オーガハウジング26a並びにオーガ31を昇降させることができる。
除雪機10を移動するときには、オーガハウジング26aの下面並びにオーガ31の下面を高くして能率良く移動することができる。除雪するときには、オーガハウジング26aの下面並びにオーガ31の下面を低くして効率良く除雪することができる。さらに除雪するときには、路面Grの凹凸に合せてオーガハウジング26a並びにオーガ31の高さを変えることができる。
なお、昇降操作レバー46Aを中立位置にセットすると、オーガハウジング昇降機構16のピストン82はその時点の長さを維持し、車体フレーム15の前部、オーガハウジング26a並びにオーガ31の昇降位置を維持させる。
【0033】
図6は本発明に係る制御部周りの電気回路図である。
電気回路90は、制御部28に昇降スイッチ100を接続するとともに、バッテリ29にメインスイッチ45Bを介して制御部28、オーガ上昇用リレー120、オーガ下降用リレー130、上昇表示灯141、下降表示灯142を接続した構成である。121,131はリレーの励磁コイルである。
昇降スイッチ100は、昇降操作レバー46Aにスイッチ機構101を組込んだ「昇降操作部材」であり、制御部28を介してオーガハウジング昇降機構16の電動モータ85を操作することができる。
【0034】
昇降スイッチ100の操作とスイッチ作用の関係は次の通りである。
昇降操作レバー46Aが図に示す停止位置(中立位置)Neにあるときに、可動接点102は第1固定接点103並びに第2固定接点104のどちらにも接触しない。このため、昇降スイッチ100はオフであり、停止信号(操作スイッチオフ信号)を発する。
【0035】
昇降操作レバー46Aを停止位置Neから後方に昇降、すなわち上昇位置Upに昇降させたときに、可動接点102は第1固定接点103に接触する。このため、昇降スイッチ100はオンになり、上昇位置信号(上昇操作スイッチオン信号)を発する。
昇降操作レバー46Aを停止位置Neから前方に昇降、すなわち下降位置Dwに昇降させたときに、可動接点102は第2固定接点104に接触する。このため、昇降スイッチ100はオンになり、下降位置信号(下降操作スイッチオン信号)を発する。
【0036】
制御部28は、昇降スイッチ100の操作信号(停止信号、上昇位置信号、下降位置信号)を受けて電動モータ85を制御することで、オーガハウジング昇降機構16のピストン82を伸縮制御する。
【0037】
制御部28は、具体的には次の(1)〜(5)の制御をすることになる。
(1)昇降スイッチ100の昇降スイッチ100の停止信号を受けているときに、オーガ上昇用リレー120並びにオーガ下降用リレー130をオフにする。
(2)昇降操作レバー46Aを上昇側Upに昇降操作したときの上昇位置信号を受けて、オーガ上昇用リレー120をオンにする。
(3)昇降操作レバー46Aを下降側Dwに昇降操作したときの下降位置信号を受けて、オーガ下降用リレー130をオンにする。
(4)オーガ上昇用リレー120をオンに制御しているとき、すなわち電動モータ85を正転(上昇側に回転)させているときに、上昇表示灯141を点灯させる。
(5)オーガ下降用リレー130をオンに制御しているとき、すなわち電動モータ85を逆転(下降側に回転)させているときに、下降表示灯142を点灯させる。
【0038】
電動モータ85並びに電動モータ85の保護用のサーモブレーカ86は、オーガ上昇用リレー120とオーガ下降用リレー130との間に介在している。従って、電動モータ85も昇降スイッチ100によって制御されることになる。
サーモブレーカ86は、電動モータ85の過熱保護のために電動モータ85に内蔵した保護部材である。このようなサーモブレーカ86は、昇降スイッチ100を連続的に操作したり頻繁に断続操作することで電動モータ85が一定温度まで発熱(過熱)したときに電動モータ85への通電回路を遮断するものである。
【0039】
より具体的には次の通りである。昇降操作レバー46Aが停止位置Neにあるという条件のときには、オーガ上昇用リレー120並びにオーガ下降用リレー130はオフである。このときには、オーガ上昇用リレー120とオーガ下降用リレー130との間に介在している電動モータ85は停止する。
昇降操作レバー46Aを上昇側Upに昇降操作することで、昇降スイッチ100の可動接点102が第1固定接点103に接触したという条件を満足したときに、オーガ上昇用リレー120はオンになる。この結果、電動モータ85は正転する。
昇降操作レバー46Aを下降側Dwに昇降操作することで、昇降スイッチ100の可動接点102が第2固定接点104に接触したという条件を満足したときに、オーガ下降用リレー130はオンになる。この結果、電動モータ85は逆転する。
【0040】
次に、上記構成の除雪機10の制御形態を図7に基づき説明する。
図7(a),(b)は本発明に係る除雪機の制御形態を示す制御作用図である。図7(a)は、オーガハウジング26aが最も下がった下限位置Pd1にあることを示し、上記図5(a)に対応させて表した模式図である。図7(b)は、オーガハウジング26aが最も上がった上限位置Pu1にあることを示し、上記図5(a)に対応させて表した模式図である。
【0041】
オーガハウジング26aが下限位置Pd1と上限位置Pu1との間で昇降する全昇降量はSiである。全昇降量Siは、図5に示すオーガハウジング昇降機構16におけるピストン82の最大ストロークによって決まる。
【0042】
オーガハウジング26aが下限位置Pd1から上限位置Pu1までの全昇降量Siを上昇Upするのに必要な、全昇降時間(すなわち、全上昇時間)はTuである。例えば、Tu=7secである。全昇降量Siと上昇時の全昇降時間Tuとから求められる単位時間当たりの昇降量のことを、「上昇時の定数Cu」と言うことにする。また、Cu=1.0とする。なお、オーガハウジング昇降機構16(図5参照)によってオーガハウジング26aが上昇する上昇速度は、一定であると考えることにする。
【0043】
オーガハウジング26aの上昇時においては、下限位置Pd1を昇降時間Tcの計測開始点とする。上昇時に、下限位置Pd1からの昇降時間Tc(すなわち、上昇時間)を計測し、得られた昇降時間Tcに上昇時の定数Cuを乗算することで、現時点の昇降位置Ps、すなわち高さPsを推定することができる。つまり、「Ps=Pd1+(Tc×Cu)」であり、この結果を図7(a)の表で示した。
【0044】
例えば、下限位置Pd1から上昇するときに、図7(a)の表に示すように、上昇開始時点の昇降時間Tcは0secである。上昇に伴って昇降時間Tcは増大する。上限位置Pu1まで上昇したときの昇降時間Tcは7secとなる。その時々の昇降時間Tcに、上昇時の定数Cuを乗算することで、昇降時間Tcに対応する昇降位置Psが判る。
【0045】
また、オーガハウジング26aが上限位置Pu1から下限位置Pd1までの全昇降量Siを下降Dwするのに必要な、全昇降時間(すなわち、全下降時間)はTdである。例えば、Td=5.6secである。下降Dwする場合には、上昇Upする場合に比べてオーガハウジング昇降機構16に加わる負荷が小さいから、TdはTuよりも小さくてすむ。
全昇降量Siと下降時の全昇降時間Tdとから求められる単位時間当たりの昇降量のことを、「下降時の定数Cd」と言うことにする。Tu=7secに対してTd=5.6secなので、Cu=1.0に対してCd=1.25となる。なお、オーガハウジング昇降機構16(図5参照)によってオーガハウジング26aが下降する下降速度は、一定であると考えることにする。
【0046】
オーガハウジング26aの下降時においては、上限位置Pu1を昇降時間Tcの計測開始点とする。下降時に、上限位置Pu1からの昇降時間Tc(すなわち、下降時間)を計測し、得られた昇降時間Tcに下降時の定数Cdを乗算することで、現時点の昇降位置Ps、すなわち高さPsを推定することができる。つまり、「Ps=Pu1−(Tc×Cd)」であり、この結果を図7(b)の表で示した。
【0047】
例えば、上限位置Pu1から下降するときに、図7(b)の表に示すように、下降開始時点の昇降時間Tcは0secである。下降に伴って昇降時間Tcは増大する。下限位置Pd1まで下降したときの昇降時間Tcは5.6secとなる。その時々の昇降時間Tcに、上昇時の定数Cuを乗算することで、昇降時間Tcに対応する昇降位置Psが判る。
【0048】
ところで、上述のように、オーガハウジング26aの全昇降量Siは、上記図5に示すオーガハウジング昇降機構16におけるピストン82の最大ストロークによって決まる。このため、オーガハウジング26aの昇降位置Psが下限位置Pd1よりも下がることはない。また、昇降位置Psが上限位置Pu1よりも上がることはない。
【0049】
本発明では、計測された昇降時間Tcに基づいて、現時点の昇降位置Psを推定するものである。これに対して、実際には昇降作動時の環境等の影響によって、オーガハウジング26aの昇降速度は多少変動し得る。このため、制御部28(図6参照)では、昇降位置Psが下限位置Pd1や上限位置Pu1に到達したと判断した場合であっても、現実にはまだ到達していないことがあり得る。到達する前に図5に示すオーガハウジング昇降機構16の電動モータ85を停止させたのでは、オーガハウジング26aが途中で止ってしまう。
【0050】
この点を考慮して、下限位置Pd1よりも小さい一定の下限制限値Pd2、及び、上限位置Pu1よりも大きい一定の上限制限値Pu2を設定した。
下限制限値Pd2及び上限制限値Pu2は、オーガハウジング26aの実際の下限位置Pd1や上限位置Pu1に対して、一定の許容値を加えた架空の値である。例えば、図7(b)に示すように、下限位置Pd1=0に対して下限制限値Pd2=−2.5とする。また、図7(a)に示すように、上限位置Pu1=7に対して上限制限値Pu2=9とする。昇降位置Psが下限制限値Pd2又は上限制限値Pu2に到達したと判断した場合に、電動モータ85を自動的に停止させればよい。
【0051】
このようにして、オーガハウジング26aが上限位置Pu1まで上昇してから一定時間を経過した後、及び、オーガハウジング26aが下限位置Pd1まで下降してから一定時間を経過した後に、電動モータ85を自動的に停止させることによって、ピストン82をその位置で維持させる。この結果、オーガハウジング26aを現実の上限位置Pu1又は下限位置Pd1で確実に停止させることができる。
【0052】
次に、上記図6に示す制御部28をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図8〜図11に基づき説明する。この制御フローは、例えばメインスイッチ45Bをオンにしたときに制御を開始し、メインスイッチ45Bをオフにしたときに制御を終了する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。以下、図6及び図7を参照しつつ説明する。
【0053】
図8は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その1)である。
ST01;初期設定をする。具体的には各フラグをFp=0、Fmu=0、Fmd=0、Fhs=0とするとともに、昇降位置値Ps=2にセットし、操作サイクル数Sc=0にリセットする。
ST02;昇降スイッチ100のスイッチ信号を読み込む。
【0054】
ST03;昇降スイッチ100のスイッチ信号に基づいて昇降操作レバー46Aを上昇側に操作したか否かを調べ、YESならST04に進み、NOならST08に進む。
ST04;昇降位置書換えフラグFpが「0」であるか否かを調べ、YESならST05に進み、NOなら出結合子A1に進む。
ST05;上昇時の昇降位置Ps(位置カウント値Ps)が、予め設定された一定の上限位置Pu1に達したか、すなわちPu1まで増大したか否かを調べ(Ps≧Pu1)、YESならST06に進み、NOなら出結合子A1に進む。上限位置Pu1は例えば「+7」である。
ST06;上昇時の昇降位置Ps=5にセットする。
ST07;初期合わせの開始時点ではなくなったので、昇降位置書換えフラグFp=1に反転させた後に、出結合子A1に進む。
【0055】
ST08;昇降スイッチ100のスイッチ信号に基づいて昇降操作レバー46Aを下降側に操作したか否かを調べ、YESならST09に進み、NOなら出結合子A1に進む。
ST09;昇降位置書換えフラグFpが「0」であるか否かを調べ、YESならST10に進み、NOなら出結合子A1に進む。
ST10;下降時の昇降位置Ps(位置カウント値Ps)が予め設定された一定の下限基準値Pd1に達したか、すなわちPd1まで減少したか否かを調べ(Ps≦Pd1)、YESならST11に進み、NOなら出結合子A1に進む。下限基準値Pd1は例えば「±0」である。
ST11;下降時の昇降位置Ps=5にセットする。
ST12;初期合わせの開始時点ではなくなったので、昇降位置書換えフラグFp=1に反転させた後に、出結合子A1に進む。
【0056】
図9は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その2)であり、上記図8の出結合子A1及び本図の入結合子A1を経てST21に進んだことを示す。
【0057】
ST21;昇降スイッチ100のスイッチ信号に基づいて昇降操作レバー46Aを上昇側に操作したか否かを調べ、YESならST22に進み、NOならST31に進む。
ST22;現時点の昇降位置Psが予め設定された一定の下限位置Pd1以上であるか否かを調べ(Ps≧Pd1)、YESならST24に進み、NOなら現時点の昇降位置の値Psが下限位置Pd1を下回ったと判断してST23に進む。
ST23;現時点の昇降位置Psを下限位置Pd1の値にリセット(Ps=Pd1)した後に、ST27に進む。
【0058】
ST24;操作サイクル数Scが予め設定された一定の基準操作サイクル数Soに達したか否かを調べ、YESならST25に進み、NOならST27に進む。基準操作サイクル数Soは例えば「5」である。
ST25;昇降位置Psが、予め設定された一定の上限制限値Pu2に達したか、すなわちPu2まで増大したか否かを調べ(Ps≧Pu2)、YESならST26に進み、NOならST27に進む。なお、上限制限値Pu2は上限位置Pu1よりも大きい(Pu2>Pu1)。上限制限値Pu2は例えば「+9」である。
ST26;上昇出力フラグFmu=0にした後に、出結合子A2に進む。
ST27;上昇出力フラグFmu=1にした後に、出結合子A2に進む。
【0059】
ST31;昇降スイッチ100のスイッチ信号に基づいて昇降操作レバー46Aを下降側に操作したか否かを調べ、YESならST32に進み、NOならST41に進む。
ST32;現時点の昇降位置Psが予め設定された一定の上限位置Pu1以下であるか否かを調べ(Ps≦Pu1)、YESならST34に進み、NOなら現時点の昇降位置の値Psが上限位置Pu1を上回ったと判断してST33に進む。
ST33;現時点の昇降位置Psを上限位置Pu1の値にリセット(Ps=Pu1)した後にST37に進む。。
【0060】
ST34;操作サイクル数Scが予め設定された一定の基準操作サイクル数Soに達したか否かを調べ、YESならST35に進み、NOならST37に進む。
ST35;昇降位置Psが、予め設定された一定の下限制限値Pd2まで減少したか否かを調べ(Ps≦Pd2)、YESならST36に進み、NOならST37に進む。なお、下限制限値Pd2は下限基準値Pd1よりも小さい(Pd2<Pd1)。下限制限値Pd2は例えば「−2.5」である。
ST36;下降出力フラグFmd=0にした後に、出結合子A2に進む。
ST37;下降出力フラグFmd=1にした後に、出結合子A2に進む。
【0061】
ST41;上昇出力フラグFmu=0にした後に、ST42に進む。
ST42;下降出力フラグFmd=0にした後に、出結合子A2に進む。
【0062】
図10は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その3)であり、上記図9の出結合子A2及び本図の入結合子A2を経てST51に進んだことを示す。
【0063】
ST51;上昇出力フラグFmu=1であるか否かを調べ、YESならST52に進み、NOならST54に進む。
ST52;電動モータ85をオーガ上昇側に回転(正転)させる。具体的には、図6のオーガ上昇用リレー120だけをオンにする。
ST53;上昇表示灯141をオン(点灯)にした後に、ST59に進む。
【0064】
ST54;下降出力フラグFmd=1であるか否かを調べ、YESならST55に進み、NOならST57に進む。
ST55;電動モータ85をオーガ下降側に回転(逆転)させる。具体的には、図6のオーガ下降用リレー130だけをオンにする。
ST56;下降表示灯142をオンにした後に、ST59に進む。
ST57;電動モータ85を停止させる。具体的には、各リレー120,130をオフにする。
ST58;上昇表示灯141及び下降表示灯142をオフ(消灯)にした後に、ST59に進む。
【0065】
ST59;ハーフサイクルフラグFhs=1であるか否かを調べ、NOならST60に進み、YESならST61に進む。
ST60;上昇出力フラグFmu=1であるか否かを調べ、YESならST61に進み、NOなら出結合子A3に進む。
ST61;下降出力フラグFmd=1であるか否かを調べ、NOならST62に進み、YESならST63に進む。
ST62;ハーフサイクルフラグFhs=1に反転した後に、出結合子A3に進む。
ST63;操作サイクル数Scを1回加算する(Sc=Sc+1)。
ST64;ハーフサイクルフラグFhs=0に反転した後に、出結合子A3に進む。
【0066】
図11は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その4)であり、上記図10の出結合子A3及び本図の入結合子A3を経てST71に進んだことを示す。
【0067】
ST71;上昇出力フラグFmu=1であるか否かを調べ、YESならST72に進み、NOならST73に進む。
ST72;上昇時における現在の昇降位置Psを求めた後に、出結合子A4及び図8の入結合子A4を経てST02に戻る。より具体的には、次の(1)式によって昇降位置Psを求める。
Ps=Ps+(Tm×Cu) ・・・・・・ (1)
但し、Tm;一定時間
Cu;上昇時の定数(Cu=1.0)
【0068】
なお、図8〜図11に示す全制御フローを1回繰り返す時間、すなわち、1サイクルの周期は一定時間Tmに相当する。このため、「ST72」を通過する周期は一定時間Tmに相当する。一定時間Tmは、例えば10mmsec(ミリ秒)である。一定時間Tmに上昇時の定数Cuを乗算した値は、昇降位置の変化量ΔPsである。
「ST72」を通過する毎に、直前の昇降位置Psに変化量ΔPsを加算することで、現在の昇降位置Psを求めることができる。
【0069】
ST73;下降出力フラグFmd=1であるか否かを調べ、YESならST74に進み、NOなら出結合子A4及び図8の入結合子A4を経てST02に戻る。
ST74;下降時における現在の昇降位置Psを求めた後に、出結合子A4及び図8の入結合子A4を経てST02に戻る。より具体的には、次の(2)式によって昇降位置Psを求める。
Ps=Ps−(Tm×Cd) ・・・・・・ (2)
但し、Tm;一定時間
Cd;下降時の定数(Cd=1.25)
一定時間Tmに下降時の定数Cdを乗算した値は、昇降位置の変化量ΔPsである。「ST74」を通過する毎に、直前の昇降位置Psから変化量ΔPsを減算することで、現在の昇降位置Psを求めることができる。
【0070】
ここで、以上の説明をまとめると、次の通りである。
図1及び図6に示すように、除雪機10は、走行輪23L,23Rを備えた走行フレーム12に、オーガ31を備えたオーガハウジング26aを昇降可能に取付け、このオーガハウジング26aをオーガハウジング昇降機構16によって昇降するようにし、このオーガハウジング昇降機構16が、電動モータ85にて発生させた油圧でピストン82を伸縮させる型式の電動油圧シリンダであり、昇降操作部材100の操作信号を受けた制御部28にて電動モータ85を制御することでピストン82を伸縮させるようにしたものである。
【0071】
本発明の制御部28は定数設定手段151、上昇時の計時開始点設定手段152U、下降時の計時開始点設定手段152D、タイマ手段153及び昇降位置推定手段154を備えたことを特徴とする。
【0072】
定数設定手段151は、ST72,ST74からなり、オーガハウジング26aが下限位置Pd1と上限位置Pu1との間で昇降する全昇降量Si(図7参照)と、この全昇降量Siだけ昇降するのに必要な全昇降時間Tu,Td(図7参照)と、から求められる単位時間当たりの昇降量を、定数Cu,Cdとして予め設定しておくものである。
【0073】
上昇時の計時開始点設定手段152Uは、ST21,ST23及びST27の集合からなり、オーガハウジング26aの上昇時において(ST21,ST27)下限位置Pd1を昇降時間Tc(図7参照)の計測開始点と設定する(ST23)ものである。
【0074】
下降時の計時開始点設定手段152Dは、ST31,ST33及びST37の集合からなり、オーガハウジング26aの下降時において(ST31,ST37)上限位置Pu1を昇降時間Tc(図7参照)の計測開始点と設定する(ST33)ものである。
【0075】
タイマ手段153は、ST21,ST31,ST71〜ST74の集合からなり、昇降操作部材100の昇降操作に応じて(ST21,ST31,ST71,ST73)、それぞれ対応する計測開始点Pd1,Pu1からの昇降時間Tc(図7参照)を計測する(ST72,ST74)ものである。
【0076】
昇降位置推定手段154は、ST72,ST74からなり、得られた昇降時間Tc(図7参照)に定数Cu,Cdを乗算することで現時点の昇降位置Psを推定するものである。
【0077】
ところで、上記ST72で求めた「昇降位置Ps=Ps+(Tm×Cu)」は、図7(a)に示す「Tc×Cu」で求めた値に相当する。また、上記ST74で求めた「昇降位置Ps=Ps−(Tm×Cd)」は、図7(b)に示す「Tc×Cd」で求めた値に相当する。Tmが微小の一定時間であるのに対し、Tcは累積時間(経過時間)である。
従って、ST72及びST74は、昇降時間Tc(図7参照)を計測するタイマ手段153の一部であると言うことができる。
【0078】
制御部28をこのように構成することで、位置センサを設けることなく、オーガハウジング26aの昇降位置Ps(昇降高さPs)を常時検出することができる。このため、除雪機10の部品数を削減することができる。
しかも、位置センサを設けていないにもかかわらず、オーガハウジング26aの下限位置Pd1及び上限位置Pu1で、電動モータ85を停止させることができる。この結果、電動油圧シリンダ16に過大な負荷が作用することを極力低減することができるので、電動油圧シリンダ16の耐久性を十分に確保することができる。
【0079】
さらには、位置センサが無いので、雪や水滴等の影響を受けることなく、オーガハウジング26aの昇降位置Psを確実に検出することができる。
さらにまた、電動モータ85に内蔵されたサーモブレーカ86を作動させることなく、電動モータ85を速やかに停止させることができる。復帰時間が長いサーモブレーカ86に依存せずに、時間で制御するようにしたので、電動モータ85を再始動させるまでの時間が短くてすむ。サーモブレーカ86の復帰時間を気にすることなく除雪作業を続行することができるので、より円滑に除雪作業をすることができる。
【0080】
さらには、図8において、ST01及びST03〜ST07の集合は、上昇時の昇降位置初期合わせ手段161Uを構成する。ST01及びST08〜ST12の集合は、下降時の昇降位置初期合わせ手段161Dを構成する。
【0081】
メインスイッチ45Bをオンにする等により、制御部28が制御を開始した時点においては、制御部28はオーガハウジング26aの昇降位置Psを認識していない。オーガハウジング26aが下限位置Pd1と上限位置Pu1との間で昇降するのに、全昇降時間Td,Tuだけかかる。例えば、上昇時はTu=7sec、下降時はTd=5.6secである。このため、全昇降時間Tuに相当する時間だけオーガハウジング26aを上昇又は下降させれば、初期の位置合わせを確実に行うことができる。そこで、初期においては、オーガハウジング26aの昇降位置Psが現実にどこにあろうと、全昇降時間Tuに相当する時間7secだけオーガハウジング26aを上昇又は下降させ続けるようにした。
【0082】
具体的には、初期の昇降位置Ps=2にセットし(ST01)、上昇又は下降に応じて昇降位置Psが下限位置Pd1又は上限位置Pu1に達したときには(ST05,ST10)、1回だけ昇降位置Ps=5にセットする(ST06,ST11)。このようにすることで、全昇降時間Tuに相当する時間7secだけオーガハウジング26aを上昇又は下降させ続ける。この結果、昇降位置Psを、下限位置Pd1又は上限位置Pu1に設定することができる。
【0083】
以上の説明から明らかなように、上昇時・下降時の昇降位置初期合わせ手段161U,161Dは、制御部28が制御を開始した直後、すなわち初期におけるオーガハウジング26aの昇降位置Psを、下限位置Pd1又は上限位置Pu1に設定するものである。このようにすることで、現時点の昇降位置Psを正確に求めることができる。
【0084】
さらには、図9において、ST21〜ST23の集合は、下限リセット手段162Dを構成する。ST31〜ST33の集合は、上限リセット手段162Uを構成する。
【0085】
下限リセット手段162Dは、現時点の昇降位置の値Psが下限位置Pd1を下回ったという条件(ST22)と、昇降操作部材100を上昇操作したという条件(ST21)とを満たしたときに、現時点の昇降位置Psを下限位置の値Pd1にリセットする(ST23)ものである。
上限リセット手段162Uは、現時点の昇降位置の値Psが上限位置Pu1を上回ったという条件(ST32)と、昇降操作部材100を下降操作したという条件(ST31)とを満たしたときに、現時点の昇降位置Psを上限位置の値Pu1にリセットする(ST33)ものである。
【0086】
オーガハウジング26aを上昇させることで、現時点の昇降位置の値Psが上限位置Pu1を上回ったときには、下降操作をしたときに、現時点の昇降位置Psを下限位置の値Pd1にリセットする。オーガハウジング26aを下降させるときに、上限位置Pu1から起算して昇降位置Psを求めることができる。
また、オーガハウジング26aを下降させることで、現時点の昇降位置の値Psが下限位置Pd1を下回ったときには、上昇操作をしたときに、現時点の昇降位置Psを上限位置の値Pu1にリセットする。オーガハウジング26aを上昇させるときに、上限位置Pu1から起算して昇降位置を求めることができる。
【0087】
何らかの理由によってオーガハウジング26aの昇降速度が低下した場合であっても、現時点の昇降位置Psを正確に求めることができる。従って、オーガハウジング26aの昇降位置Psを常に適切に把握することができるので、より一層円滑に除雪作業をすることができる。
【0088】
さらには、図9及び図10において、ST25、ST26、ST51及びST57の集合は、上限停止手段163Uを構成する。ST35、ST36、ST51及びST57の集合は、下限停止手段163Dを構成する。
【0089】
上限停止手段163Uは、現時点の昇降位置の値Psが上限制限値Pu2に達したという条件(ST25)で、オーガ上昇側に回転している電動モータ85を停止させて(ST26,ST51,ST57)、オーガハウジング26aの上昇を停止するものである。
下限停止手段163Dは、現時点の昇降位置の値Psが下限制限値Pd2まで減少したという条件(ST35)で、電動モータ85を停止させて(ST36,ST54,ST57)、オーガハウジング26aの下降を停止するものである。
このようにすることで、オーガハウジング26aの下限位置Pd1及び上限位置Pu1で、電動モータ85を確実に停止させることができる。
【0090】
さらには、図9及び図10において、ST24、ST34、ST59〜ST64の集合は、極低温初期対応手段164を構成する。
極低温初期対応手段164は、オーガハウジング26aの上昇操作及び下降操作をカウントし(ST59〜ST64)、一定のカウント数に達したという条件(ST24,ST34)を満たすまでは、上限停止手段163U及び下限停止手段163Dの作動を停止させるものである。
【0091】
当然のことながら、除雪機10は寒冷地で使用するものである。オーガハウジング昇降機構16で使用するオイルは、低温時において高粘度である。このため、ピストン82の進退速度が比較的小さいので、オーガハウジング26aの昇降速度も緩慢にならざるを得ない。従って、上限停止手段163Uや下限停止手段163Dが作動したのでは、オーガハウジング26aが昇降途中で停止してしまう。
【0092】
これに対して、極低温初期対応手段164を設けたので、オーガハウジング26aを一定の昇降回数だけ繰り返すまでは、作業者の意志で上限位置Pu1や下限位置Pd1まで昇降させることができる。オーガハウジング26aの昇降を繰り返しているうちに、オーガハウジング昇降機構16で使用するオイルは暖められるので、粘度も低下する。この結果、ピストン82の進退速度も通常時の速度になるので、オーガハウジング26aの昇降速度を通常時の速度にすることができる。その後は、より適切な昇降速度でオーガハウジング26aを昇降させることができる。
【0093】
なお、本発明は実施の形態では、昇降操作部材100は、昇降操作レバー46Aにスイッチ機構101を組込んだ構成に限定されるものではなく種々の構成があり、例えば、上昇操作用及び下降操作用の2個の押しボタン式スイッチの構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の除雪機10は、オーガハウジング26aをオーガハウジング昇降機構16によって昇降するようにし、このオーガハウジング昇降機構16を、電動モータ85にて発生させた油圧でピストン82を伸縮させる型式の電動油圧シリンダで構成し、昇降操作部材100の操作信号を受けた制御部28にて電動モータ85を制御することでピストン82を伸縮させるようにしたものにおいて、位置センサを設けることなくオーガハウジング26aの昇降位置を求めるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る除雪機の側面図である。
【図2】本発明に係る除雪機のエンジン、電動モータ、除雪機構、クローラベルト周りの模式的平面図である。
【図3】図1の3矢視図である。
【図4】本発明に係る走行フレーム、車体フレーム、フレーム昇降機構周りの分解図である。
【図5】本発明に係る除雪機の作用図である。
【図6】本発明に係る制御部周りの電気回路図である。
【図7】本発明に係る除雪機の制御形態を示す制御作用図である。
【図8】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その1)である。
【図9】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その2)である。
【図10】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その3)である。
【図11】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その4)である。
【図12】従来のオーガ式除雪機の側面図である。
【符号の説明】
【0096】
10…除雪機、12…走行フレーム、15…車体フレーム、16…オーガハウジング昇降機構(電動油圧シリンダ)、23L,23R…走行輪(駆動輪)、26a…オーガハウジング、28…制御部、31…オーガ、82…ピストン、85…電動モータ、100…昇降操作部材(操作スイッチ)、151…定数設定手段、152U…上昇時の計時開始点設定手段、152D…下降時の計時開始点設定手段、153…タイマ手段、154…昇降位置推定手段、162U…上限リセット手段、162D…下限リセット手段、Cd…下降時の定数、Cu…上昇時の定数、Pd1…下限位置、Pd2…下限制限値、Ps…現時点の昇降位置、Pu1…上限位置、Pu2…上限制限値、Si…全昇降量、Tc…昇降時間(カウント時間)、Td…下降時の全昇降時間、Tm…一定時間、Tu…上昇時の全昇降時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行輪を備えた走行フレームに、オーガを備えたオーガハウジングを昇降可能に取付け、このオーガハウジングをオーガハウジング昇降機構によって昇降するようにし、このオーガハウジング昇降機構が、電動モータにて発生させた油圧でピストンを伸縮させる型式の電動油圧シリンダであり、昇降操作部材の操作信号を受けた制御部にて前記電動モータを制御することでピストンを伸縮させるようにした除雪機において、
前記制御部は、
前記オーガハウジングが下限位置と上限位置との間で昇降する全昇降量と、この全昇降量だけ昇降するのに必要な全昇降時間と、から求められる単位時間当たりの昇降量を、定数として予め設定しておく定数設定手段と、
前記オーガハウジングの上昇時において前記下限位置を昇降時間の計測開始点と設定する上昇時の計時開始点設定手段と、
前記オーガハウジングの下降時において前記上限位置を昇降時間の計測開始点と設定する下降時の計時開始点設定手段と、
前記昇降操作部材の昇降操作に応じて、それぞれ対応する前記計測開始点からの前記昇降時間を計測するタイマ手段と、
得られた昇降時間に前記定数を乗算することで現時点の昇降位置を推定する昇降位置推定手段と、を備えていることを特徴とした除雪機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記現時点の昇降位置の値が前記上限位置を上回ったという条件と、前記昇降操作部材を下降操作したという条件とを満たしたときに、現時点の昇降位置を前記上限位置の値にリセットする上限リセット手段と、
前記現時点の昇降位置の値が前記下限位置を下回ったという条件と、前記昇降操作部材を上昇操作したという条件とを満たしたときに、現時点の昇降位置を前記下限位置の値にリセットする下限リセット手段と、
を備えていることを特徴とした請求項1記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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