説明

除雪機

【課題】除雪作業において、後進操作を行うと所定時間後に除雪部の駆動が停止することにより、無駄なエネルギー消費や騒音を抑え、操作性を向上させた除雪機を提供する。
【解決手段】走行クラッチ66の断接、除雪クラッチ68の断接及び変速レバー54の変速位置を検知する手段と、除雪クラッチ68を断接するアクチュエータ57とを制御部52に接続することにより、除雪作業時に後進に変速すると所定時間後に除雪クラッチ68を「断」とするように制御する。さらに、他の操作を行わずに前進に変速すると除雪クラッチ68を「接」とするように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除雪機の操作性の改良技術に関し、詳しくは、除雪作業時において、後進操作したときに除雪部の駆動を停止させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
除雪機は、走行する機体の前部に除雪部が設けられ、該除雪部はオーガケース内に螺旋状のオーガを回動可能に横架し、該オーガケースの左右中央後部にブロアハウジングを設けてブロアを収納し、該ブロアハウジングの上部にシュートを配置している。そして、除雪作業時はオーガを回転させながら除雪機本体が前進することによって、前方の雪を掻き込みブロアハウジング内に送り、さらに、ブロアの回転により雪を撥ね飛ばすようにしている。
【0003】
このような除雪機において、前後進を繰り返して除雪作業を行うことがあり、除雪機を後進させる場合には、路面の雪が邪魔になって後進が困難となることがあるので、後進時には自動的に除雪部を傾動させる等で該オーガを路面から上昇させる制御技術が公知となっている(例えば、「特許文献1」、「特許文献2」参照)。
【特許文献1】特許第2896686号公報
【特許文献2】特許第3738960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記「特許文献1」「特許文献2」では、除雪機を後進させるときに自動的にオーガが上昇するように制御するものであるが、オーガクラッチを接続している限り、後進時も該オーガは回動し続ける。しかし上記の通り、除雪作業での後進時はオーガの回動は必ずしも必要ではないので、不要な回動を伴っての作業が繰り返されることとなり、それが長時間蓄積されるとエネルギー面で非効率である。かといって後進の度に手動でオーガクラッチを切断するのは作業者の操作が煩雑となり、作業効率を下げることとなる。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために、オーガの回動が不要な時は自動的に該オーガの回動を停止させ得る制御装置を具備した除雪機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、走行部の前部に、掻込オーガやブロア等を配置した除雪部を備え、該除雪部の入力軸とエンジンとの間に動力の断接を可能とするクラッチを有する除雪機において、走行クラッチの断接を検知する手段と、除雪クラッチの断接を検知する手段と、変速レバーの変速位置を検知する手段と、除雪クラッチを断接するアクチュエータとを、それぞれ制御部と接続し、除雪作業時に、後進速に変速して後進すると、所定時間後に除雪クラッチを「断」とするように制御することとしたものである。
【0008】
請求項2においては、前記制御部に時間設定器を接続し、後進変速後に除雪クラッチを「断」するまでの時間を変更可能としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、除雪作業時に後進操作すると、後進開始から所定時間後に除雪部の駆動が停止されるので、無駄なエネルギーの消費を抑えることができ、騒音も低下することができる。また、後進操作時に、除雪クラッチレバーを操作することなく除雪部の駆動を停止でき、操作性を向上でき、作業者の負担を軽減できる。
【0011】
請求項2においては、前進と後進を交互に行って除雪する作業の場合、その後進に要する時間に合わせて設定器を設定することで、前後進の間隔が短い場合には除雪部を停止することなく効率良く除雪作業ができ、間隔が長い場合には無駄なエネルギーの消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
図1は除雪機の全体的な構成を示した斜視図、図2は除雪機の概略平面図、図3は制御ボックスの平面図、図4は本発明の一実施例に係る制御ブロック図、図5は本発明の一実施例に係る制御フロー図、図6は駆動部のスケルトン図である。
【0013】
まず、本発明の一実施例における、除雪機10の全体構成について、図1及び図2により説明する。なお、図1に示す矢印Aの方向は、除雪機10の進行方向を示すものとし、この進行方向に向かって左右を決定するものとする。
図1、図2、図6に示すように、除雪機10は、機体前部に配設される除雪部20と、該除雪部20の後方に配設される駆動部30と、該駆動部30の下方に配設されるクローラ式の走行部40と、駆動部30の後方であって機体後部に配設される運転操作部50で構成される。
【0014】
除雪部20には、機体フレーム11の前部にブロアハウジング21が連設され、該ブロアハウジング21の前方にオーガハウジング22が連設されている。該ブロアハウジング21にはブロア(図示なし)が内設されている。該オーガハウジング22には掻込オーガ23が内設されており、該掻込オーガ23の回転軸たるオーガ軸69が該オーガハウジング22内の左右方向となるように軸支されている。該オーガ軸69は駆動軸(除雪部入力軸)20aと垂直方向に連結されており、該駆動軸20aの回動を掻込オーガ23の回動へと伝達する。このように構成される除雪部20において、掻込オーガ23によってオーガハウジング22の左右略中央方向へ掻き込まれた雪は、ブロアによって上方へ跳ね飛ばされ、投雪シュータ24によってその方向がガイドされて、任意の方向へ排出される。
【0015】
図4、図6に示すように、駆動部30はエンジン31を備え、該エンジン31の出力軸31aと前記除雪部20の駆動軸20aとの間に除雪クラッチ68が配置され、該除雪クラッチ68はアクチュエータ57により断接可能としている。つまり、出力軸31a上に駆動プーリ62を固設し、駆動軸20a上に入力プーリ63を固設し、該駆動プーリ62と入力プーリ63との間にベルトを巻回し、該ベルトをテンションプーリにより付勢することで動力を伝達可能とし、ベルトテンション式の除雪クラッチ68を構成している。前記テンションプーリはシリンダ等より構成したアクチュエータ57により作動され、該アクチュエータ57は制御部52(図4)と接続されている。
また、運転操作部50の操行ハンドル53に除雪クラッチレバー56が配置され、該除雪クラッチレバー56にはその回動を検知する手段56aが設けられ、該除雪クラッチ検知手段56aは制御部52と接続されている。こうして、該除雪クラッチレバー56を握って「入」位置に回動することによりアクチュエータ57を作動させて除雪クラッチ68を「入」として除雪部20を駆動可能としている。なお、この除雪クラッチ68は電磁クラッチでも、ベルトテンション式や歯車摺動式等の機械的な構造を有するクラッチでもよく、電磁クラッチで構成した場合には、アクチュエータはソレノイドであり、ベルトテンション式や歯車摺動式等の機械的クラッチの場合は、アクチュエータとしてモータまたはシリンダ等が使用される。
また、該エンジン31の出力軸31a上に走行駆動プーリ64が固設され、機体フレーム11内に収納した走行変速装置70の走行入力軸74上には走行入力プーリ65が固設され、該走行駆動プーリ64と走行入力プーリ65の間にベルトを巻回し、テンションプーリで付勢して緊張することによりエンジン31の動力を変速装置70に伝達可能とし、ベルトテンション式の走行クラッチ66を構成している。前記テンションプーリはシリンダ等のアクチュエータ67の作動により付勢され、走行クラッチ66を断接可能としている。該走行クラッチ66は操行ハンドル53に設けた走行クラッチレバー75を回動することにより「入」「切」可能としている。該走行クラッチレバー75の操作は検知手段75aに検知され、制御部52と接続され、走行クラッチの断接を検知するようにしている。但し、前記走行クラッチ66はワイヤ等を介して走行クラッチレバー75と接続して、手動で操作する構成とすることもできる。そして、変速装置70により変速した後の動力が後述する走行部40に伝達される。なお、本実施例では該変速装置70はノークラッチ式の無段変速装置を採用している。さらに、エンジン31にはエンジン回転数を検出するセンサ59が配置され、制御部52に入力される。
【0016】
走行部40は、左右一対の駆動輪41、遊転輪42、駆動輪41と遊転輪42に巻き掛けられてなるクローラ43で構成され、前記エンジン31の動力が変速装置70により変速された後に駆動軸44を介して駆動輪41に伝えられる。変速装置70では変速操作及び前後進切換が可能であり、その操作は運転操作部50に設けた変速レバー54により操作可能としている。なお、本実施例では走行部40の駆動源を前記エンジンとしたが、電動モータを駆動源とするものでもよく、同様に除雪の駆動部30についての駆動源を電動モータとするものでもよい。
【0017】
運転操作部50には、機体フレーム11の両側後部より斜め後上方に操向ハンドル53が突出するように配設され、平面視にて両操向ハンドル53間に制御ボックス51が配設されている。該制御ボックス51には、前記制御部52の他、前進・後進の走行速度を調節する変速レバー54や、除雪部20の昇降を制御する昇降レバー55や、シュータ24の旋回または昇降回動を操作するレバー71や、エンジン31の回転数が適正値であるかどうかを報知するランプ58、自動・手動切換スイッチ72等が配置されている。
【0018】
前記ランプ58及び回転数センサ59は制御部52と接続され、作業時において、前記エンジン31の回転数が適正回転数である場合に点灯するように構成している。具体的には、エンジン31の回転数をセンサ59により検知し、除雪クラッチレバー56が「入」状態にある時に、回転数が作業に適している回転数、例えば2700(rpm)〜3000(rpm)でランプ58が点灯するようにしている。また、車速が大きい等で負荷が大きくなり、作業効率が悪くなる2700(rpm)未満の低回転になればランプ58は点滅し、さらに車速が小さい等で負荷が小さくなり、回転数が3000(rpm)を超えるとランプ58が消灯するようにしている。なお、エンジン31に発電機を装着し、該発電機で発電される電圧が作業適正回転数以上の電圧となったときにランプ58が点灯する構成とすることもできる。
【0019】
このように構成することにより、作業時において、ランプ58が点灯していれば、適正回転であると容易に判断できる。また、消灯していると車速が不足していると判断できるので、変速レバーの操作により車速を増加させることができる。あるいは点滅していると負荷がかかり過ぎていると判断できるので、車速を低下させることができるのである。従って、作業者はエンジン回転数による出力状態、つまり、最も除雪作業の効率が良くなる車速状態であることをランプ58の点灯により瞬時に把握しながら除雪作業を行える。即ち、仮に作業者が除雪作業に長けた者でなく、エンジン音等からは負荷状態が判断できなくても、エンジン回転数をランプ58の点灯状態で確認することで、適正な負荷状態で作業を進めることができるのである。
【0020】
さらに、投雪シュータ24から排出される雪を跳ね飛ばす際にも、前記ランプ58の点灯状態を目安にすることができる。雪を遠くに跳ね飛ばすには、適正な負荷状態よりも若干車速を落とし、負荷の軽い状態で作業を行うことが望まれる。この場合も、該除雪ランプ58の点灯・点滅を確認することで、容易に作業を進めることができるのである。
【0021】
そして、本発明は除雪作業時において、後進させる場合には、後進操作の所定時間後に除雪部の駆動を停止するようにしている。
即ち、走行部と機体または除雪部の間に除雪部20を昇降させるためのアクチュエータとして昇降シリンダ73が配置され、本実施例では油圧シリンダにより構成している。また、前記変速レバー54には操作位置を検知する手段54aが配置され、除雪部の昇降レバー55にも操作位置を検知する手段55aが配置され、それぞれ制御部52と接続されている。この検知手段はスイッチやポテンショメータ等により構成することができ、限定するものではない。また、制御部52には設定器60が接続され、後進走行時から設定時間後に除雪クラッチ68を「断」とするようにしている。つまり、前進と後進を短時間で繰り返して除雪作業する場合があるので、後進操作の毎に除雪部20の駆動が停止されると、再度作業を行う時に定格回転数まで上昇しない場合があり、作業能率が低下してしまうので、その後進距離等に合わせて停止させるまでの時間を設定器60により任意に設定できるようにしている。
さらに、選択スイッチ61が制御部52と接続され、該選択スイッチ61は後進操作を検知すると昇降シリンダ73を駆動して除雪部20を上昇させるか、させないかを選択できるようにしている。つまり、前進と後進を繰り返す作業では後進毎に除雪部が上昇してしまうと、下降させるのに時間を要して作業能率が低下してしまうので、後進操作しても除雪部を下げたままとして、次の除雪作業を速やかにできるようにしている。また更に、エンジン回転数を調節するスロットルを操作するアクチュエータを制御部52と接続することで、後進時にはエンジン回転数を低下させるように構成することもできる。つまり、後進操作後の設定時間経過した時に、後進走行にのみ必要なエンジン回転数に低下させるのである。この場合除雪部の駆動停止に加えて、更に、エネルギーの損失を低下し、騒音も低下することができる。
【0022】
以上に述べた制御部52による制御を次に述べる。図5は本発明の一実施例に係る除雪機10の操作フロー図である。
走行クラッチ66が「接」となって走行状態であり(S1)、除雪クラッチ68が「接」とされて(S2)、作業状態である時、変速レバー54が前進速から後進速に変速されると(S3)、制御部52に備えるタイマーが作動されてカウントが開始され(S4)機体は後進する。前記タイマーの時間が設定器60により設定した設定時間Tが経過すると(S5)、除雪クラッチが「断」とされて、掻き込みオーガ23及びブロワの回転が停止される(S6)。前記設定時間Tが経過するまでの間に変速レバー54を回動して前進または中立に変速されると(S7)、タイマーがリセットされて(S8)作業状態が維持される。但し、タイマーは別構成とすることなく、制御部52のクロックにより同等の作用をさせることもできる。
【0023】
なお、前記自動・手動切換スイッチ72を手動にすると、後進時に除雪クラッチ68は「断」とされず、また、前記選択スイッチ61を後進時に除雪部上昇を選択した場合には、変速レバー54を後進に変速したと同時に昇降シリンダ73が作動されて、除雪部20を上昇する。このとき昇降レバー55を操作することで、任意に下降させることができる。
【0024】
以上により、除雪部20の駆動が不要な後進時において、連続的に前後進を繰り返さないような時には、除雪部の駆動を停止させることで、エネルギー面での無駄な損失を減少させることができ、また、騒音も低減できる。さらに、比較的長時間の後退や後進してからの一旦停止等のときに、除雪クラッチの切断操作や前進走行切り替え後の接続操作といった手動作業を行う必要がなくなることで使用者の負担を軽減させ、さらには作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】除雪機の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】除雪機の概略平面図。
【図3】制御ボックスの平面図。
【図4】本発明の一実施例に係る制御ブロック図。
【図5】本発明の一実施例に係る制御フロー図。
【図6】駆動部のスケルトン図。
【符号の説明】
【0026】
10 除雪機
20 除雪部
22 オーガハウジング
23 掻込オーガ
30 駆動部
31 エンジン
40 走行部
50 運転操作部
51 制御ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の前部に、掻込オーガやブロア等を配置した除雪部を備え、
該除雪部の入力軸とエンジンとの間に動力の断接を可能とするクラッチを有する除雪機において、
走行クラッチの断接を検知する手段と、除雪クラッチの断接を検知する手段と、変速レバーの変速位置を検知する手段と、除雪クラッチを断接するアクチュエータとを、それぞれ制御部と接続し、除雪作業時に、後進速に変速して後進すると、所定時間後に除雪クラッチを「断」とするように制御することを特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記制御部に時間設定器を接続し、後進変速後に除雪クラッチを「断」とするまでの時間を変更可能とした請求項1に記載した除雪機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−7980(P2008−7980A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177365(P2006−177365)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】