説明

除雪装置用昇降機構および該機構を用いた除雪装置

【課題】トラック等の車輌に取り付けて使用できるとともに、除雪についての種々の機能を有する除雪装置を提供する。
【解決手段】略円弧状の板体を有する雪押し板と、該雪押し板とフレーム保持体間に回動可能に位置するフレームと、フレーム保持体と雪押し板間に位置し、伸縮可能であるとともにその伸縮位置選択が可能であるアームとを有し、一方、トラック荷台上に固定される枠体と、該枠体上面に固定されるとともにプーリーを軸支したプーリー支持体と、トラック前部下部に固定されるフレーム保持体と、プーリーを軸支するとともにフレーム保持体にその下部が固定される支柱と、枠体上面と支柱上部側面に各端部が固定される一対のステーと、枠体に近接して配置されるウインチと、該ウインチと各プーリー間に掛け渡されるロープとを備えるとともに、該ロープ端を適宜支持部材にて雪押し板に取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラック等に装備して使用する除雪装置用昇降機構および該機構を用いた除雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の除雪機や除雪装置が利用されているが、そのいずれもが除雪のための単独機械・装置であり、本発明にて示すように、トラック等の車輌に装備して用いる除雪装置は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
降雪地域の冬季には降り積もった雪の除排雪が必要となる。この除排雪のためのものとしては、手動式と機械式に大別され、手動式のものとしてはスコップや手押し型除雪具(通称スノーダンプ)などがあり、手軽に使用できるがその除雪能力は大きくはない。
エンジンを備えた機械式の除雪装置は、その除雪能力は大きいが購入・維持のためのコストが大きく、夏季においては不使用のためその保管場所が必要となる。
一方、荷物運搬用車輌としてトラックが多用されているが、あくまでも運搬用に利用されるのみである。本発明は、以上のような従来からの除雪機・装置に関わる課題を解決するために発明されたもので、トラック等に装備して利用することができ、その着脱も可能であり、手軽な使用ができるとともにその除雪能力も大なる新規かつ有用なる装置を提供することを目的として開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は、以下の構成とした。
その一つは、トラック荷台上に固定される枠体と、該枠体上面に固定されるとともにプーリーを軸支したプーリー支持体と、トラック前部下部に固定されるフレーム保持体と、プーリーを軸支するとともにフレーム保持体にその下部が固定される支柱と、枠体上面と支柱上部側面に各端部が固定される一対のステーと、枠体に近接して配置されるウインチと、該ウインチと各プーリー間に掛け渡されるロープとを備えたことを特徴とする除雪装置用昇降機構である。
他の一つは、略円弧状の板体を有する雪押し板と、該雪押し板とフレーム保持体間に回動可能に位置するフレームと、フレーム保持体と雪押し板間に位置し、伸縮可能であるとともにその伸縮位置選択が可能であるアームとを有し、一方、トラック荷台上に固定される枠体と、該枠体上面に固定されるとともにプーリーを軸支したプーリー支持体と、トラック前部下部に固定されるフレーム保持体と、プーリーを軸支するとともにフレーム保持体にその下部が固定される支柱と、枠体上面と支柱上部側面に各端部が固定される一対のステーと、枠体に近接して配置されるウインチと、該ウインチと各プーリー間に掛け渡されるロープとを備えるとともに、該ロープ端を適宜支持部材にて雪押し板に取り付けたことを特徴とする除雪装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明は下記の効果を有する。
1.トラックに取り付けて使用するので、新規に除雪機を購入せずに除雪できる。
2.各部材は着脱可能のため、夏季などの不使用時にはトラックから取り外して保管でき、その保管スペースも小ですむ。
3.各部材の取り外しにて一般のトラックとしての使用・走行が可能である。
4.雪押し板の昇降とその角度調整が可能であり、単なる雪押しのみならず、雪積み、雪すくい、雪の引き寄せなどの作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1は鉄製中空角体を接合して四角枠状に形成してなる枠体で、トラックの荷台前部に位置する既存の枠部分に接合され、この枠部分よりやや上方にその上縁が位置している。2はプーリー支持体で、平板をコ字形に折曲し、その折曲下端を下方にして別の長方形平板上に接合したものである。このプーリー支持体の側面中央近傍には貫通孔が穿設され、この貫通孔内に軸3が挿入保持される。4は第1プーリーで、円柱外周にU形の溝を有するとともにその中央に孔を有し、この孔内に前記の軸3が挿入保持される。
このプーリーの孔内径に比べて軸3の外径はやや小さく、従って、軸3に対してプーリー4は回転自由である。このプーリー支持体の下部平板部には4個所の孔が穿設され、また、前記の枠体上面中央と両端近傍にも同様配置にて雌ネジが刻設され、図5に示すように枠体1にプーリー支持体はボルトにて螺着される。
5は支柱で、その下方を斜方に形成した一対の細長鉄板を接続短板にて接続して形成される。この支柱上方には前記のプーリー支持体と同様構成にて第2プーリー6が軸支され、そのやや下方に一対の雌ネジが刻設される。また、斜方部分側面に孔が穿設される。
【0007】
7はステーであり、左右一対が設けられる。このステーは細長中空角体で、その一端近傍下面には四角形の小板体8が固着され、この小板体に孔が穿設される。また、ステー他端側面はステー側面に対し斜方に切断された面を有している。この斜方面の反対側側面に貫通孔が穿設される。このステーは図1に示すように、左右対称に、その一端は枠体1の上面に、他端は支柱上部側面に孔を介して各々螺着される。
9は箱状のウインチ箱で、枠体に接して配置固定され、その内部には市販の電動ウインチ10が装備される。11は鋼製のロープで、その一端はウインチの巻き取りドラムに固定され、ウインチ箱の上部の孔を通って第1プーリーと第2プーリーに掛け渡され、下方に伸びて後述のロープ保持板に係止される。
12はフレーム保持体である。このフレーム保持体は、中空角体と平板を適宜に接合した平面視略四角形の物体で、その前面には5対の取り付け板13〜15が位置し、この取り付け板の側面には貫通孔が穿設される。また、フレーム保持体はトラック前方下部に適宜に螺着されるが、この螺着のための部材・孔が適宜に設けられる。フレーム保持体の中央の取り付け板13には前記した支柱5の下部が軸支される。
以上の枠体1〜取り付け板15までの構成にて除雪装置用昇降機構が構成される。
【0008】
次ぎに、除雪装置部について説明する。
図において、20は鉄板製の雪押し板である。この雪押し板は略円弧形板体の両側に略半円形板体を接合して形成され、この円弧形板体外面適所に、有孔のロープ保持板21、一対の有孔のフレーム保持板22、同じく一対の有孔のアーム保持板23が各々接合して設けられる。24はフレームである。このフレームは中空角体を接合して四角枠状とし、その対角線上に補強部材を接合して形成され、適所に孔が穿設され、これらの孔とフレーム保持体の取り付け板14の孔、そしてフレーム保持板の孔を一致させて軸支される。
25は円筒形の外アームで、その両端近傍に孔が穿設される。26は内アームで、その側面に一定間隔にてピン保持孔27が穿設される。この内アーム外径は外アーム内径よりやや小さく、従って内アームは外アーム内をスライド可能である。また、外アームの一端近傍の孔は前記取り付け板15の孔と一致させて軸支される。内アームの一端の孔はアーム保持板の孔と一致して軸支され、外アームの孔は内アームの選択した孔と一致させて略円柱形のピン28が挿入され、外アームに対する内アームの位置が規制される。
以上の構成から除雪装置部が構成される。
【0009】
本発明を使用するには、まず図16〜図17に示すように各部材等をトラックに取り付け、次ぎに除雪装置部を取り付けて準備が完了する。そして、除雪をしようとする場所に置いてトラックを走行させると雪押し板が雪を押して雪積個所へと雪を移動させることができる。またウインチ操作にてロープを巻き上げることにて雪押し板の昇降ができる。
すなわち、ロープ巻き上げにて2個のプーリーを介して雪押し板に上昇力が加わり、フレームはフレーム保持体に軸支されているので、この軸支部分を回動中心として雪押し板は上方へ回動し、地面に対するその傾斜角を変えながら上方へと移動する。
また、外アームのピンを抜くことにて内アームはスライド可能となるので、この内アームに穿設されているピン保持孔の一つを選択して外アームの孔に一致させてピンを挿入することで、全アーム長が変化し、フレームに対する雪押し板の角度を変えることができる。
以上のことから、本発明では除雪に関わる以下の作業ができる。
1.雪押し作業
雪押し板を地面に対しほぼ垂直としてトラック走行により、雪を前方へ移動させる。
2.雪すくい作業
アーム長を短くして雪押し板を斜方上向きとし、この雪押し板を堆積した雪中に押し入れた後、ウインチ操作にてこの雪押し板とその内部の雪を上方へ持ち上げる。
3.雪積み作業
第2項の雪すくい作業の後、トラックを移動させて任意の場所にて雪押し板を降下させて雪を落とすことができる。またアーム変化にて高い位置での雪落としも可能である。
4.雪引き寄せ作業
雪押し板を第1項のごとく地面近傍に位置させ、この雪押し板を積雪の前方に位置させてトラックを後退させることにて雪を後方に移動させる。
【0010】
この作業は特に方形の場所の隅に溜まった雪の移動に便利である。つまり、トラックは直角移動が不能のため、円弧形に動くが、これでは隅部分の雪は移動できない。それで、雪押し板を少し持ち上げ、希望の位置に移動させてから雪押し板を地面近傍まで下げて上述の雪引き寄せを行い、雪すくい作業にてこの雪を雪押し板内に移動させ、トラック移動にて雪を任意の場所に移動させることができる。
以上、本発明について記したが、本発明はトラック等の車輌に装備して利用でき、またその着脱が可能なところにその特徴を有するものである。従来は既述のように単独の除雪機であるため、用途の転用ができず、また不使用時にはそれなりの保管場所が必要となるものであった。しかし本発明では取り外してトラックとしての利用ができ、取り付けて除雪装置としての利用の双方が可能である。さらに雪押し板の昇降とその角度変化が可能なので、既述の種々の除雪作業が可能となったのである。
なお、取り外し時において、ウインチと枠体はそのまま残した状態でトラックの一般走行が可能である。本例示では外アームに対する内アームの移動と位置設定は手動方式としたが、アームに油圧シリンダーなどの油圧機器を用いることで運転席からの操作も可能である。また、フレームやアームの長さを長くすることで雪押し板の可動範囲を広げることができる。
本発明では第2プーリーをトラックの屋根上方に位置させており、このフレーム長さの変化にも十分対応することができる。なお、電動ウインチには電源コード(図示略)が接続され、運転席からの操作が可能である。また、各軸支個所の軸へは割ピンなどが適宜に使用され、軸の脱落が防止される。
以上のごとく、本発明にて有用なる除雪装置用の昇降機構と該機構を用いた除雪装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の除雪装置用昇降機構の平面図(トラック取り付け時)
【図2】本発明の除雪装置用昇降機構の正面図(トラック取り付け時)
【図3】本発明の枠体の正面図(プーリー支持体取り付け時)
【図4】本発明の枠体の右側面図(プーリー支持体取り付け時)
【図5】本発明の要部構造説明図
【図6】本発明の要部構造説明図
【図7】本発明の要部構造説明図
【図8】本発明の支柱の平面図
【図9】本発明の支柱の正面図
【図10】本発明のステーの平面図
【図11】本発明のステーの正面図
【図12】本発明のフレーム保持体の拡大平面図
【図13】本発明のフレーム保持体の拡大正面図
【図14】本発明の除雪装置の要部構造説明図(平面視)
【図15】本発明の除雪装置の要部構造説明図(正面視)
【図16】本発明の平面図(トラック取り付け時)
【図17】本発明の正面図(トラック取り付け時)
【符号の説明】
【0012】
1 枠体
2 プーリー支持体
3 軸
4 第1プーリー
5 支柱
6 第2プーリー
7 ステー
8 小板体
9 ウインチ箱
10 電動ウインチ
11 ロープ
12 フレーム保持体
13 取り付け板
14 取り付け板
15 取り付け板
20 雪押し板
21 ロープ保持板
22 フレーム保持板
23 アーム保持板
24 フレーム
25 外アーム
26 内アーム
27 ピン保持孔
28 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラック荷台上に固定される枠体と、該枠体上面に固定されるとともにプーリーを軸支したプーリー支持体と、トラック前部下部に固定されるフレーム保持体と、プーリーを軸支するとともにフレーム保持体にその下部が固定される支柱と、枠体上面と支柱上部側面に各端部が固定される一対のステーと、枠体に近接して配置されるウインチと、該ウインチと各プーリー間に掛け渡されるロープとを備えたことを特徴とする除雪装置用昇降機構。
【請求項2】
略円弧状の板体を有する雪押し板と、該雪押し板とフレーム保持体間に回動可能に位置するフレームと、フレーム保持体と雪押し板間に位置し、伸縮可能であるとともにその伸縮位置選択が可能であるアームとを有し、一方、トラック荷台上に固定される枠体と、該枠体上面に固定されるとともにプーリーを軸支したプーリー支持体と、トラック前部下部に固定されるフレーム保持体と、プーリーを軸支するとともにフレーム保持体にその下部が固定される支柱と、枠体上面と支柱上部側面に各端部が固定される一対のステーと、枠体に近接して配置されるウインチと、該ウインチと各プーリー間に掛け渡されるロープとを備えるとともに、該ロープ端を適宜支持部材にて雪押し板に取り付けたことを特徴とする除雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−321550(P2007−321550A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180416(P2006−180416)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(506223738)
【Fターム(参考)】