説明

陶磁器製手形

【課題】額縁に入れて飾られた状態でも、手の輪郭とともに掌部や指部の表面の様子を実物と略同様に周囲から鑑賞し易いようにした陶磁器製手形を提供する。
【解決手段】この陶磁器製手形1は、人体の手を実物と略同様の大きさや形状に模して隆起させた掌部11と指部12を有しており、掌部11と指部12の背後側に所定の厚さでもって設けられ、掌部11と指部12より外側の部分13aの表面が略平坦であり、周縁部13bが大略円形状であって起伏が設けられている基部13を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な陶磁器製手形に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体の手を、実物と略同様の大きさや形状に模した手形は、額縁に入れて記念物として飾られることが普及している。このような手形のうち広く普及しているのは、墨やインクなどを手の表面に塗り、紙に押し付けて製作する平面的なものや、粘土のような可塑性と粘性を有する板状の生地に手を押しつけて形を取り、乾燥処理及び熱処理を行って固定化する立体的なものなどである。
【0003】
特許文献1、2には、このような粘土を用いて製作したものであって、改良した立体的な陶磁器製手形が記載されている。より具体的には、特許文献1では、墨やインクなどを手の表面に付け紙に押し付けて版下を製作し、版下からその白色部分を透光部とするフィルムを製作し、このフィルムに光硬化性樹脂を重ねて露光し光硬化性樹脂からマスクを製作している。そして、すでに焼成した陶磁器板の表面にマスク貼り付け、ブラスト機により研磨材の微粒子をマスク上から吹き付けて手形の部分を削り取っている。これにより、手形の輪郭を垂直に切り立たせて、はっきりとなるようにしている。特許文献2では、シャモットの微粉末に樹脂系接着剤を添加した板状の生地に手を押しつけて形を取り、乾燥及び素焼をし、本焼釉薬掛をし、焼成することにより陶磁器製手形を製作している。これにより、乾燥及び焼成により収縮を少なくし寸法精度を高くしようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−35198号公報
【特許文献2】実用新案登録第3063045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の立体的な陶磁器製手形は、手形の部分が凹んだものであるので、額縁に入れて飾られた状態では、実物と略同様の大きさや形状に模した手の輪郭は程良く鑑賞できるものの、実物と略同様の大きさや形状に模した掌部や指部の表面の様子は凹凸関係が逆であることもあいまって周囲から十分に鑑賞できるとは言い難いものであった。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、額縁に入れて飾られた状態でも、手の輪郭とともに掌部や指部の表面の様子を実物と略同様に周囲から鑑賞し易いようにした陶磁器製手形を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の陶磁器製手形は、人体の手を実物と略同様の大きさや形状に模して隆起させた掌部と指部を有しており、該掌部と指部の背後側に所定の厚さでもって設けられ、掌部と指部より外側の部分の表面が略平坦である基部を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の陶磁器製手形は、請求項1に記載の陶磁器製手形において、前記基部の周縁部は、大略円形状であって起伏が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の陶磁器製手形によれば、隆起した掌部と指部が、基部の略平坦な外側部分の内側に形成されているので、額縁に入れて飾られたとき、手の輪郭とともに掌部や指部の表面の様子を広い範囲で実物と略同様に周囲から鑑賞し易いようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る陶磁器製手形の外観を示す斜視図である。
【図2】同上の陶磁器製手形を額縁に入れて飾ったときの例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る陶磁器製手形1は、土を固めて焼いた陶磁器により形成される手形である。この陶磁器製手形1は、図1に示すように、人体の手を、実物と略同様の大きさや形状に模して隆起させた掌部11と指部12を有しており、掌部11と指部12の背後側に所定の厚さでもって設けられ、掌部11と指部12より外側の部分(外側部分)13aの表面が略平坦である基部13を有している。ここで、基部13の厚さは、例えば、約1cm程度とすることができる。また、基部13の表面からの掌部11と指部12の最大の高さは、全ての人の手に対して、手の輪郭とともに掌部や指部の表面の様子を実物と略同様なものとして再現可能なように、例えば、約1.5cm程度までとすることができる。
【0012】
陶磁器製手形1は、以下のようにして製作可能である。まず、可塑性と粘性を有する石膏板を用意し、これに手を押しつけて手形の型を形成する。そして、この石膏板の乾燥と余分な箇所の削除を行って手形の型を完成させる。次に、完成した石膏板の手形の型に、陶磁器の材料である水を加えた粘土等を充填する。これにより、陶磁器製手形1の掌部11と指部12となる部分が形成できる。次に、水を加えた粘土等を石膏板に所定の厚さだけ更に堆積させる。これにより、陶磁器製手形1の基部13となる部分が形成できる。そして、これを少し乾燥した後、石膏板から陶磁器製手形1の部分を取り外す。次に、陶磁器製手形1の部分を例えば、約2週間程度、自然乾燥させる。自然乾燥の後、例えば約800℃程度で素焼きし、その後、釉薬がけを行い、例えば約1250℃程度で本焼きを行う。
【0013】
本願発明者の実験によると、陶磁器製手形1は実物の手のサイズよりも収縮し易い傾向にあるが、粘土等の粉末の選択やその他の製作条件の管理により、収縮を約10%程度未満にすることも可能である。
【0014】
また、陶磁器製手形1の基部13の周縁部13bは、特に形状が限定されるものではないが、陶磁器製手形1の材料である水を加えた粘土等を石膏板に堆積させた際に陶工の手でもって容易に、陶磁器製手形1にふさわしい形状の創作が可能である。例えば、図1に示すように、正面視において、大略円形状の周縁部13bに起伏を設けて、陶磁器製手形1の重厚感を増すようにすることができる。
【0015】
このような立体的な陶磁器製手形1を額縁に入れて飾ると、隆起した掌部11と指部12が略平坦な外側部分13aの内側に形成されているので、手の輪郭とともに掌部11や指部12の表面の様子を広い範囲で実物と同じように周囲から鑑賞し易い。また、陶磁器製手形1は、陶磁器製なので、親しみ易い質感が有って経年劣化がない。
【0016】
陶磁器製手形1は、親しい人の手を模したものであると、生存しているときであっても故人になってからも、その人を身近に感じることができる。なお、図2に示すように、台紙を陶磁器製手形1に設けて、題字や名前や日付などを書けるようにしておくのが良い。台紙には、故人になってからその人の享年を書き加えることもできる。
【0017】
以上、本発明の実施形態に係る陶磁器製手形について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 陶磁器製手形
11 陶磁器製手形の掌部
12 陶磁器製手形の指部
13 陶磁器製手形の基部
13a 陶磁器製手形の基部の外側部分
13b 陶磁器製手形の基部の周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の手を実物と略同様の大きさや形状に模して隆起させた掌部と指部を有しており、該掌部と指部の背後側に所定の厚さでもって設けられ、掌部と指部より外側の部分の表面が略平坦である基部を有していることを特徴とする陶磁器製手形。
【請求項2】
請求項1に記載の陶磁器製手形において、
前記基部の周縁部は、大略円形状であって起伏が設けられていることを特徴とする陶磁器製手形。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−201563(P2012−201563A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68884(P2011−68884)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(511077890)
【出願人】(511077904)
【出願人】(511077915)
【出願人】(511077926)