説明

陸上競技用踏切板

【課題】耐久性を低下させることなく、取付けと取外しが容易である踏切板を供することを目的とする。
【解決手段】直方体からなる陸上競技用踏切板1の本体の前後の面に複数個ずつの溝3a,3bを設け、この溝3a,3bはいずれも同一形状であり、かつ左右対称及び前後対称に設けられる。これによれば、踏切板1の前面に設けられた溝3aに指を掛止することができるため滑り難くなり、踏切板1の取付け及び取外しが容易となる。また踏切板本体の左右対称かつ前後対称に溝3a,3bを設けかつ溝3a,3bの形状がいずれも同一であるため、踏切りや湿気による外力が均等に分散するため耐久性への影響が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、走幅跳及び三段跳等の陸上競技に使用する踏切板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば走幅跳及び三段跳では、踏切板が砂場の助走路側に助走路及び砂場の表面と同じ高さに埋めてあり、この踏切板の砂場側の端を踏切線として計測の基準としている。
【0003】
上記踏切板は、日本陸上競技連盟競技規則により、木または他の強固な材質でつくられた直方体のもので、長さ1.220m、幅0.200m、厚さ0.100mとされている。
【0004】
従来の陸上競技用踏切板21は木製であり、図3に示すように、表面をウレタン35で舗装したトラックの下地24(例えばコンクリート)に埋設された踏切板ボックス25に設けられたレベル調整用モルタル33の上に、踏切板ボックス用ジャッキ31で固定され、このような状態で矢示する方向で競技に使用される。上記踏切板ボックス25には、砂場側を前側、助走路側を後側とした場合、踏切板21の前側にスパイクの痕跡等によってファールを判定するファール判定ゴム板27が角材からなる踏切板ボックス用固定台29の上に固定される。
【0005】
競技終了後は踏切板ボックス25からファール判定ゴム板27、踏切板ボックス用固定台29、踏切板ボックス用ジャッキ31及び踏切板21を取外し、蓋(図示せず)をすることで上面を走路として使用することができる。
【0006】
このように、踏切板21は使用の度に取付けと取外しが繰り返されるが、従来の踏切板21は単に直方体に形成されているのみであったため滑りやすく取付け及び取外しが困難であった。
【特許文献1】特開2003−205060号公報
【特許文献2】特開2002−346018号公報
【0007】
そこで、手持部として踏切板に溝を設けることが考えられるのであるが、踏切板は競技者の踏切による衝撃を受けるため高い耐久性を要求されるので、単に踏切板に溝を設けるだけでは溝を設けた部分の耐久性が低下してしまい望ましくなかった。さらにこの場合、コンクリートを通して滲み出す地中からの水分や、保管中における大気中の水蒸気による膨張等の影響も不均一に受けるため、歪みやすく亀裂が発生しやすくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記欠点を解決し、耐久性を低下させることなく、取付けと取外しが容易である踏切板を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本願発明による陸上競技用踏切板は、
直方体からなる本体の前後の面に複数個ずつの溝を設け、該溝はいずれも同一形状であり、かつ左右対称及び前後対称に設けられることを特徴とする。
また、上記溝が踏切板本体の両端部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように、本願発明による踏切板によれば、踏切板の前面に設けられた溝に指を掛止することができるため滑り難くなり、踏切板の取付け及び取外しが容易となる。また踏切板本体の左右対称かつ前後対称に溝を設けかつ溝の形状がいずれも同一であるため、踏切りや湿気による外力が均等に分散するため耐久性への影響が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による陸上競技用踏切板をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0012】
1は直方体からなる木製の踏切板であり、溝3が前面及び後面にぞれぞれ2ヶ所ずつ形成される。該溝3の形成位置は、短手(厚さ)方向については、図1(A)に示すように、芯方向に寄せ、長手(長さ)方向においては、図1(B)に示すように、中央付近を避けて両端部に左右対称に形成される。前面に形成された溝3aと後面に形成された溝3bとは、踏切板1を前後に分割する仮想面に対し面対称となる。
【0013】
上記個々の溝3のサイズは前記した所定大の踏切板1に対し、例えば、各々高さ30mm、幅100mm、奥行き30mmであり、使用者の手が引っかかりやすくなっている。
【0014】
上記踏切板1は図2に示すように踏切板ボックス5に設置される。該踏切板ボックス5は表面をウレタン15で舗装したトラックの下地4に埋設され、底部にはレベル調整用モルタル13が設けられる。上記踏切板1は該レベル調整用モルタル13上に載置される。該踏切板1は踏切板ボックス5の前方に生ずる空間に設けられる踏切板ボックス用ジャッキ11により踏切板ボックス5の後側に固定される。上記踏切板ボックス5の前側には上記踏切板ボックス用ジャッキ11を覆い隠すように踏切板ボックス用固定台9が載置され、該踏切板ボックス用固定台9の上にはファール判定ゴム板7が着脱可能に載置される。上記踏切板1はこの状態で競技に使用される。なお、図2(B)において矢印は競技者の走行方向を示す。
【0015】
踏切板1の取付けの際には、作業者は踏切板1の溝3に指を入れ支えることができるため、取付設置作業が踏切板ボックス5内にて迅速容易かつ支承状態を確認しながら安全に行なうことができる。
【0016】
競技後の取外し作業は、まず踏切板ボックス用固定台9及びファール判定ゴム板7を取外す。すると、踏切板1の前面が露出するから、踏切板ボックス用ジャッキ11をゆるめて取外し、その後上記踏切板1に設けられた溝3aに手を引掛け該踏切板1を簡便かつ安全に取外すことができる。
【0017】
溝3は前面の溝3a及び後面の溝3bがいずれも同一形状であり、かつ踏切板1に左右対称及び前後対称に設けられるから、踏切時の衝撃力や湿気による外力が均等に分散するため耐久性への影響が低い。
【0018】
本願発明は上記した実施の形態に限定されない。例えば、溝の形状自体は任意であり、直方体に限られず、手を掛止できる形状であれば例えば半円柱状や三角柱状であってもよい。また該溝の角には丸みをもたせてもよく、この場合、角にかかっていた力が分散するため耐久性が高くなる。
【0019】
また、溝の数、位置は任意である。溝の位置に関しては、踏切板の中央付近は競技者が踏切る割合が高く特に負荷がかかりやすいので、踏切板の中央付近を避けることが望ましい。
【0020】
また、使用例として踏切板と踏切板ボックス用固定台とが一つの空間に収められるボックス型を例示したが、踏切板のみを収めるための踏切板用金具と踏切板ボックス用固定台及びファール判定ゴム板のみを収めるためのファール判定ゴム受金具とを別々に設けたシンダー型であっても使用可能である。この場合、踏切板の溝が踏切板用金具のフレームより上になるため該溝に手をかけて取付け、取外しが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願発明は陸上競技の走幅跳及び三段跳に活用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)は本願発明による踏切板の実施の形態を示した正面図、(B)は(A)の平面図、(C)は(A)の右側面図、(D)は(B)のD−D断面図である。
【図2】(A)は本願発明による踏切板の使用例を示す平面図、(B)は(A)の縦断面図である。
【図3】は従来の踏切板の使用例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 踏切板
3a 溝
3b 溝
4 下地
5 踏切板ボックス
7 ファール判定ゴム板
9 踏切板ボックス用固定台
11 踏切板ボックス用ジャッキ
13 レベル調整用モルタル
15 ウレタン
21 踏切板
24 下地
25 踏切板ボックス
27 ファール判定ゴム板
29 踏切板ボックス用固定台
31 踏切板ボックス用ジャッキ
33 レベル調整用モルタル
35 ウレタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上競技用踏切板において、直方体からなる本体の前後の面に複数個ずつの溝を設け、該溝はいずれも同一形状であり、かつ左右対称及び前後対称に設けられることを特徴とする陸上競技用踏切板。
【請求項2】
上記溝が踏切板本体の両端部に設けられることを特徴とする請求項1記載の踏切板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−194396(P2008−194396A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35539(P2007−35539)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(391018374)株式会社ニシ・スポーツ (7)