説明

陽極酸化処理装置およびその陰電極

【課題】被処理物に対して遠くない距離範囲に陰電極を効率良く配置し、処理槽の収容スペース無駄にせずに陰電極の比表面積を拡張し、処理能力を向上できる陽極酸化処理装置を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる物品11の被処理表面に陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理装置は、電解処理液10を貯留する処理槽1と、前記処理槽内に配設された陰電極2と、前記被処理表面が前記電解処理液に浸漬されるように前記物品を支持する支持手段3と、前記物品と前記陰電極との間に極短時間の正電圧印加と電荷除去を交互に反復するための電源装置4と、を備え、前記陰電極2が、前記被処理表面11と交差する方向に延在する複数の電極表面を含む立体構造物で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被処理物に対して陽極酸化処理を行なうための装置およびそれに使用する陰電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムやアルミニウム合金からなる部材、例えば、内燃機関のピストンやシリンダ、油空圧ピストンおよびシリンダを始め、各種外装部品や構造部品などには、それらの耐食性や耐摩耗性の向上、あるいは着色を目的として、陽極酸化処理を施して部材表面に陽極酸化皮膜(アルマイト)を形成することが行われている。
【0003】
この陽極酸化処理は、被処理物を電解処理液に浸漬した状態で、該被処理物(陽極)と陰電極との間に直流電圧を印加する直流陽極酸化処理が一般的であったが、本発明者らは、極短時間の正電圧印加による陽極酸化と皮膜電荷除去を繰り返す処理によって、合金成分に影響されず高速かつ高品質な陽極酸化皮膜を形成する処理方法を見出した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4075918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の直流陽極酸化処理では、被処理物の表面積に対して過大な電流を投入すると焼けを生じる問題があるため、投入電流が3A/dm程度に制限されており、陰電極の表面積を大きくしても膜厚や皮膜性状に違いは見られず、被処理物と陰電極の距離を変えても膜厚変化は僅かであった。
【0006】
これに対し、極短時間の正電圧印加による陽極酸化と皮膜電荷除去を繰り返す陽極酸化処理では、電荷除去によって被処理物の昇温が抑制されるため、被処理物の表面積に対し大きな電流を投入可能であり、処理時間を短縮しつつ膜厚や皮膜性状を向上するためには、陰電極の表面積を可及的に大きくする必要がある。
【0007】
しかし、図3(c)(d)に示すように、被処理物11と同等の幅w(42mm)を有する陰電極21(比較例1)と約3倍の幅3w(120mm)を有する陰電極22(比較例2)を用いて、極短時間の正電圧印加による陽極酸化と皮膜電荷除去を繰り返す陽極酸化処理を行う実験によって、図8および表2に比較例1,2として示されるように、被処理物の大きさ以上に陰電極を拡幅しても厚膜化に特段の寄与がなく、却って処理槽内の収容スペースが無駄になることが判明した。これは、上記比較例2における陰電極22の拡張部分が被処理物11から遠い位置にあることや、被処理物11に対して陰面となる陰電極の背面では、拡張部分を迂回して被処理物に至る導電経路が長いため電流密度が低下し、電極面として有効に機能せず、陰電極の拡張分が相殺されることによると考えられる。
【0008】
一方、極短時間の正電圧印加による陽極酸化と皮膜電荷除去を繰り返す陽極酸化処理では、陰電極板の電極面が被処理物に正対しない配置、例えば、陰電極が被処理物と交差する垂直方向に配置されていても、膜厚にばらつきを生じることがなく、実用的な処理が可能であるということを本発明者らは見出した。図7および表1は、その実験結果を示している。実験では、図2(b)に示すように、被処理物11の両側に平行に配置された幅w(21mm)の陰電極21と、図2(a)に示すように、被処理物11の両側に垂直に配置された幅w/4(5mm)の陰電極20を用い、他の条件は同じにして、極短時間の正電圧印加による陽極酸化と皮膜電荷除去を繰り返す陽極酸化処理を行なった。
【表1】

【0009】
その結果、被処理物11と交差する垂直方向に配置され陰電極20は、平行に配置された陰電極21の1/4以下の幅であるにも拘わらず、同等の膜厚を有する陽極酸化皮膜が得られた。この実験結果は、平面視において垂直配置された陰電極20、すなわち、被処理物に対して突出する形状の陰電極20は、被処理物11に対して陰面となる電極面が生じず、陰電極20の両面が電極面として有効に機能することを示している。しかも、薄い電極板は、被処理物11の幅の範囲内に、したがって被処理物11から遠くならない距離の範囲内に多数を積層配置できるので、さらに電極面積を増加させる余地があることを示している。
【0010】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、被処理物に対して遠くない距離範囲に陰電極を効率良く配置し、処理槽の収容スペース無駄にせずに陰電極の比表面積を拡張し、処理能力を向上できる陽極酸化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる物品の被処理表面に陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理装置であって、電解処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に配設された陰電極と、前記被処理表面が前記電解処理液に浸漬されるように前記物品を支持する支持手段と、前記物品と前記陰電極との間に極短時間の正電圧印加と電荷除去を交互に反復するための電源装置と、を備えるものにおいて、前記陰電極が、前記被処理表面と交差する方向に延在する複数の電極表面を含む立体構造物で構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の好適な態様では、前記陰電極を構成する前記立体構造物が、略平行に配置された複数の電極板部と該各電極板部を相互に剛体結合する結合部とを含む。また、前記陰電極を構成する前記立体構造物が、金属メッシュであるかまたは金属メッシュを含んでも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の陽極酸化処理装置は、上記構成により、陰電極を、被処理物に対して遠くない距離範囲にかつ被処理物に対して実質的な陰面を生じないようにスペース効率良く配置して陰電極の表面積を拡張でき、厚膜化および皮膜品質を向上するうえで有利であるとともに、陰電極を立体構造物としたことにより、個々の電極表面を薄板状に形成しつつ容易に剛性を確保でき、電極の設置および支持構造を簡素化できる利点もある。
【0014】
特に、前記陰電極を構成する前記立体構造物が、略平行に配置された複数の電極板部と該各電極板部を相互に剛体結合する結合部とを含む態様は、多数の薄い電極板部に剛性を確保するのに有利であるとともに、陽極酸化処理で生じた熱を処理液に効率よく放出できる利点もある。
【0015】
また、前記陰電極を構成する前記立体構造物が、金属メッシュであるかまたは金属メッシュを含む態様では、金属メッシュを構成する線材と各線材間の隙間によって、陰電極の配置方向に依らず大きな表面積が得られ、電解処理液との良好な接触が得られる。また、金属メッシュは、被処理物の形状に合わせて変形させることができ、被処理物に対して遠くない距離範囲にスペース効率良く配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】陽極酸化処理装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】(a)は本発明の基礎となる陰電極配置、(b)は従来の陰電極配置を示す概略的平面図である。
【図3】(a)(b)は本発明の第1および第2実施形態の各陽極酸化処理装置、(c)(d)は比較例1および2を示す概略的平面図である。
【図4】(a)は本発明第3実施形態の陽極酸化処理装置、(b)は比較例3を示す概略的平面図である。
【図5】本発明第4実施形態の陽極酸化処理装置を示す概略的平面図である。
【図6】本発明第5実施形態の陽極酸化処理装置を示す概略的平面図である。
【図7】本発明の基礎になる陰電極配置および従来の陰電極配置による陽極酸化処理によって得られた膜厚を示すグラフである。
【図8】実施例1、2および比較例1、2の各陽極酸化膜厚を示すグラフである。
【図9】実施例3および比較例3の各陽極酸化膜厚を示すグラフである。
【図10】(a)〜(c)は本発明の第6〜第8実施形態に係る陰電極を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、陽極酸化処理装置の基本構成を示している。図において、陽極酸化処理装置は、電解処理液10を貯留する処理槽1、該処理槽1内に配設された陰電極2、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被処理物11を電解処理液10に浸漬される位置に支持する支持手段3、被処理物11と陰電極2との間に、極短時間の正電圧印加と電荷除去を交互に反復するための電源装置4などで構成されている。電源装置4は、商用周波数の一次交流電源に接続されたプラス側直流電源およびマイナス側直流電源、これらの直流電源から供給される直流電圧・電流をスイッチングして所定のパルス電圧もしくは交番電圧を出力するインバータ装置などを含む。
【0018】
電解処理液10は、希硫酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸等が挙げられるが、これらに限定されないジプロトン酸浴、ジプロトン酸浴+有機酸の混酸浴、アルカリ浴等、通常の陽極酸化処理に使用される処理液を用いることができる。アルカリ浴は、アルカリ土類金属の金属化合物を含んでも良い。また、アルカリ浴には、任意選択的にホウ化物、または、フッ化物を含めることもできる。陰電極2の材質は特に限定されるものではなく、炭素板、チタン板、ステンレス板、鉛板、白金板など、従来、陽極酸化処理に用いられる陰電極を使用可能である。
【0019】
本発明に係る陽極酸化処理装置は、陰電極2の構造および配置に特徴があり、陽極酸化処理装置の基本構成は各実施形態に共通であるため、以下、陰電極の構造および配置について説明する。
【0020】
図3(a)は、本発明に係る第1実施形態の陽極酸化処理装置を示す概略的平面図であり、図において、陽極酸化処理装置は、被処理物11を挟んでその両側に対向配置された陰電極102を備えている。図には、1つの被処理物11に対して割り当てられた一対の陰電極102からなる1ユニットのみ概略的に示されているが、生産ベースでの装置では、多数の被処理物11および多数対の陰電極102(ユニット)が横方向に並設され、同時に処理される。これらは、図3では省略されているが、図1に示したような処理槽1内の電解処理液10に浸漬された状態で支持されている。この点については以下の各実施形態も同様である。
【0021】
各陰電極102は、被処理物11と交差する方向に延在する平行に配置された4つの平板状の電極板部121と、各電極板部121を被処理物11と反対側の端部で相互に剛体結合する結合部122とで構成され、上下方向に一様な断面形状をなす立体構造物(102)を形成している。各電極板部121と結合部122とは一体に構成されても良いし、別部材で構成した後にボルトなどの結合手段で二次的に剛体結合されても良いが、何れの場合も、結合部122が陽極酸化処理に寄与する電極材で構成されることが好ましい。
【0022】
この第1実施形態の陰電極102は、結合部122も含めれば、図3(c)に示す比較例1の陰電極21と同じ幅wにおいて、約5倍の表面積を有しており、各電極板部121の厚さを考慮しない前提において、先述した被処理物11に対する陰面を除いた有効表面積は、比較例1の陰電極21の9倍にもなる。しかも、これらの有効電極表面が、全て被処理物11と同じ幅wの内側に配置され、したがって、被処理物11から遠くない所定距離範囲内に配置されている。
【0023】
図3(b)は、本発明に係る第2実施形態の陽極酸化処理装置を示している。第2実施形態の陰電極202は、上記第1実施形態の陰電極102と基本的に同構造であるが、同じ幅wの結合部222で剛体結合された7つの平板状の電極板部221を備えているので、上記第1実施形態の陰電極102の約1.6倍、比較例1の陰電極21の約8倍の表面積を有し、有効表面積は、第1実施形態の陰電極102の約1.7倍、比較例1の陰電極21の実に約15倍に達しており、相対的に高い集積度となっている。
【0024】
図4(a)は、本発明に係る第3実施形態の陽極酸化処理装置を示しており、該陽極酸化処理装置では、被処理物11を挟んでその両側に平行に配置された一対の陰電極302を1ユニットとしている。第3実施形態の各陰電極302は、被処理物11と同じ幅wの金属メッシュで構成されている。
【0025】
陰電極302に利用可能な金属メッシュとしては、例えば、経緯の金属線材が緻密に織成された畳織網などの織網、金属線材を編成し圧縮してなるメッシュなどが好適である。開口率の高いエキスパンドメタルのような金属メッシュは単独で使用することはできないが、複数枚積層するか、他の金属メッシュと積層されて立体構造物を構成する形態で利用可能であり、その場合、網目は、立体構造物の内層部に電解処理液10を導入する通路として機能することになる。
【0026】
第3実施形態の陽極酸化処理装置では、金属メッシュ(302)自体の構造において被処理物11と交差する方向に延在する電極表面を含むので、被処理物11に対する陰電極302の配置は任意で良い。したがって、図示例では、被処理物11に対して平行に配置されているが、他の実施形態と同様に、被処理物11と交差する方向に配向されかつ相互に平行に配置された複数の金属メッシュ(302)で構成されても良く、さらにそれらが金属メッシュまたは他の部材からなる結合部で相互に結合されていても良い。
【実施例】
【0027】
次に、上記第1〜第3実施形態の陽極酸化処理装置を用いて以下のような比較実験を行ない、本発明の効果を検証した。
【0028】
(実施例1および2)
図3(a)および(b)に示す第1および第2実施形態に基づいて、電極板部121,221の幅(長さ)および積層方向の幅wを42mmとして、それぞれ4枚(実施例1)および7枚(実施例2)の電極板部121,221と、1枚の結合部122,222とを有するチタン製の陰電極102,202を作製した。これらの陰電極102,202を、図1に示した陽極酸化処理装置に適用し、被処理物11にアルミ合金(AC8A)製の試験片を用いて、電解処理液(10vol%硫酸)に浸漬した状態で、投入電圧30V、正電圧印加時間30μs、周期100μsにて、被処理物11と陰電極102,202との間に正電圧印加と電荷除去を交互に反復する陽極酸化処理を5分間行ない、得られた陽極酸化皮膜の膜厚を測定した。なお、膜厚の測定は、試験片を切断しその断面写真から測定範囲における皮膜部分の断面積を求め、該皮膜断面積を測定範囲の表面に沿った長さで除算する方法で行なった。
【0029】
また、比較例として、図3(c)(d)に示すように、同じ幅w(42mm)の単板からなるチタン製の陰電極21(比較例1)、および、約3倍の幅3w(120mm)を有する単板からなるチタン製の陰電極22(比較例2)を、それぞれ同じ被処理物11に対して平行に配置し、他は同条件として陽極酸化処理を行ない、それぞれ膜厚を測定した。
【0030】
実験結果を表2およびグラフ(図8)に示す。実施例1では膜厚10.6μm、実施例2では膜厚13.0μmの陽極酸化皮膜が得られた。したがって、比較例1の膜厚8.0μmに対して実施例1では+32.5%、実施例2では+62.5%の顕著な厚膜化を達成できたと言える。一方、比較例2では、殆ど同程度の膜厚8.3μmしか得られず、単に陰電極の面積を拡張しても厚膜化に特段の寄与がないばかりか、装置の設置面積を考慮した実用的な処理効率は低下すると言える。
【表2】

【0031】
(実施例3)
図4(a)に示す第3実施形態に基づき、ステンレス製の編成圧縮メッシュ(線径500μm)により幅wが150mmの陰電極302を作製した。この陰電極302を、図1に示した陽極酸化処理装置に適用し、被処理物11にアルミ合金(ADC12)製の試験片を用い、電解処理液(10vol%硫酸)に浸漬した状態で、投入電圧40V、正電圧印加時間30μs、周期100μsにて、被処理物11と陰電極302との間に正電圧印加と電荷除去を交互に反復する陽極酸化処理を行ない、得られた陽極酸化皮膜の膜厚を前記同様の方法で測定した。また、比較例3として、図4(b)に示すように、同じ幅w(150mm)のチタン製平板からなる陰電極21を用い、他は同条件として陽極酸化処理を行ない、膜厚を測定した。
【0032】
実験結果を表3およびグラフ(図9)に示す。実施例3では膜厚15.8μmの陽極酸化皮膜が得られ、比較例3の膜厚13.5μmに対して+17%の厚膜化を達成している。数値上、実施例1および2に比べれば厚膜化の度合いは小さいが、実施例3の金属メッシュ製の陰電極302は、複数枚を積層した立体構造物や、実施例1および2のような直交配置の立体構造物として有効表面積を増加させる余地があることを考慮すべきである。
【表3】

【0033】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0034】
例えば、図5に示す第4実施形態では、第1実施形態と同様に4つの電極板部421とそれらを相互に剛体結合する結合部422で構成された一対の陰電極402を、被処理物11の両側に、各電極板部421が水平になるように対向配置する場合を示している。この態様でも、ほぼ同程度の有効電極面積を確保することができ、陰電極の垂直配置/水平配置は、被処理物や被処理面の形状などに応じて適宜選択できる。
【0035】
また、図6に示す第5実施形態では、6つの電極板部521が屈曲部522(結合部)を介して相互に剛体結合された陰電極502を示している。この態様では、被処理物11に対して陰面となる電極面によって、電極板部521の枚数当たりの有効電極面積の増分は第1実施形態に若干劣るものの、1枚の金属板の曲げ加工だけで剛性面でも優れた陰電極の立体構造を構成できる利点がある。
【0036】
さらに、図10(a)〜(c)は、各電極板部(621,721,821)を剛体結合する結合部(622,722,822)の異なる実施形態を示している。
【0037】
図10(a)に示す第6実施形態の陰電極602は、垂直配置された8枚の電極板部621が、水平配置された7層の結合部622で剛体結合された格子状の立体構造物で構成されており、この実施形態では、各結合部622の電極板として機能するので、有効電極面積を確保するうえで有利であるとともに、剛性面でも優れた陰電極の立体構造を構成できる。
【0038】
さらに、図10(b)に示す第7実施形態の陰電極702では、各電極板部721が上下2箇所に配置された結合部材722で剛体結合され、また、図10(c)に示す第8実施形態の陰電極802では、各電極板部821が、それらに貫通するパイプ状またはロッド状の結合部材822で剛体結合されている。これらの結合部材722,822は、電極面積の増加には寄与しないが、溶接やボルト止めなどによって、比較的容易に陰電極の立体構造を構成でき、かつ、陰電極602,702,802を貫通して被処理物に向かう電解処理液10の流れを形成し、排熱を図るうえで有利である。
【符号の説明】
【0039】
1 処理槽
2,102,202,302,402,502,602,702,802 陰電極
3 支持手段
4 電源装置
10 電解処理液
11 被処理物
102,202,302,402,502,602,702,802 陰電極
121,221,421,521,621,721,821 電極板部
122,222,422,522,622 結合部
722,822 結合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる物品の被処理表面に陽極酸化皮膜を形成するための陽極酸化処理装置であって、電解処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に配設された陰電極と、前記被処理表面が前記電解処理液に浸漬されるように前記物品を支持する支持手段と、前記物品と前記陰電極との間に極短時間の正電圧印加と電荷除去を交互に反復するための電源装置と、を備えるものにおいて、
前記陰電極が、前記被処理表面と交差する方向に延在する複数の電極表面を含む立体構造物で構成されていることを特徴とする陽極酸化処理装置。
【請求項2】
前記陰電極を構成する前記立体構造物が、略平行に配置された複数の電極板部と該各電極板部を相互に剛体結合する結合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化処理装置。
【請求項3】
前記陰電極を構成する前記立体構造物が、金属メッシュであるかまたは金属メッシュを含むことを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載された立体構造物で構成されていることを特徴とする陽極酸化処理用陰電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−248535(P2010−248535A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95854(P2009−95854)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)