説明

陽電子放出コンピュータ断層撮影装置

【課題】高計数率時にもイベントデータ量の調整を適切に行うことができる陽電子放出コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【解決手段】実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、バッファと、調整部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。バッファは、検出器の出力信号に基づき生成されたイベントデータを記憶する。調整部は、消滅放射線を検出するイベントの高計数率時に、バッファから読み出すイベントデータの量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学イメージング装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影(PET(Positron Emission computed Tomography))装置が知られている。PET装置による撮影においては、陽電子放出核種で標識された化合物や放射性医薬品が被検体に投与される。投与された化合物や放射性医薬品は被検体内を移動し、陽電子放出核種が、被検体内の生体組織に取り込まれる。この陽電子放出核種が陽電子を放出し、放出された陽電子は、電子と結合して消滅する。このとき、陽電子は、一対の消滅放射線(ガンマ線、消滅ガンマ線とも称する)をほぼ反対方向に放出する。一方、PET装置は、被検体の周囲にリング状に配置された検出器を用いて消滅放射線を検出し、検出結果から同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成した同時計数情報を用いて逆投影処理による再構成を行い、PET画像を生成する。
【0003】
ところで、PET装置は、検出結果から同時計数情報を生成する過程において、検出器の出力信号に基づきデータ(以下、イベントデータ)を生成し、生成したイベントデータを後段の処理に向けて転送する。この転送や後段の処理にはハードウェアの制限が伴うため、通常、PET装置は、イベントデータを記憶するバッファを備えることで、転送するイベントデータ量を調整する。もっとも、単位時間に多数の消滅放射線が検出される高計数率時には、適切な調整が行われないこともある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、P.190-191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高計数率時にもイベントデータ量の調整を適切に行うことができる陽電子放出コンピュータ断層撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置は、検出器と、バッファと、調整部とを備える。検出器は、消滅放射線を検出する。バッファは、検出器の出力信号に基づき生成されたイベントデータを記憶する。調整部は、消滅放射線を検出するイベントの高計数率時に、バッファから読み出すイベントデータの量を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るフィードバック回路による処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る読み出し回路による処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第2の実施形態におけるブロック間の同期を説明するための図である。
【図7】図7は、第2の実施形態におけるブロック間の同期を説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る代表イベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第2の実施形態におけるブロック間の同期の他の手法を説明するための図である。
【図11】図11は、第2の実施形態の他の手法に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、第3の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、第3の実施形態に係る書き込み回路による処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、第4の実施形態におけるブロック間の同期を説明するための図である。
【図15】図15は、第4の実施形態に係る代表イベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、第4の実施形態に係るイベントデータ収集部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置を図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態に係るPET装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るPET装置100は、架台装置10及びコンソール装置16を有する。
【0010】
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器モジュール14とを有する。また、架台装置10は、撮影口となる空洞を有する。天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23による制御の下、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動部13は、天板11を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0011】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出される消滅放射線を検出する。図1に示すように、検出器モジュール14は、架台装置10において、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように複数配置される。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る検出器モジュール14を説明するための図である。検出器モジュール14は、フォトンカウンティング(photon counting)方式、アンガー型の検出器であり、図2に示すように、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube))142と、ライトガイド143とを有する。
【0013】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射した消滅放射線を可視光(以下、シンチレーション光)に変換し、変換したシンチレーション光を出力する。シンチレータ141は、例えばNaI(Sodium Iodide)、BGO(Bismuth Germanate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)などのシンチレータ結晶によって形成され、図2に示すように、2次元に配列される。光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を増倍して電気信号に変換する。図2に示すように、光電子増倍管142は、複数配置される。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば光透過性に優れたプラスチック素材などによって形成される。
【0014】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0015】
このように、検出器モジュール14は、被検体Pから放出された消滅放射線をシンチレータ141によってシンチレーション光に変換し、変換したシンチレーション光を光電子増倍管142によって電気信号(以下、検出器信号)に変換することで、被検体Pから放出された消滅放射線を検出する。
【0016】
ところで、第1の実施形態において、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に、イベントデータ収集部15を有する。例えば、第1の実施形態において、1検出器モジュール14が、1ブロックである。このため、検出器モジュール14は、それぞれ、イベントデータ収集部15を有する。なお、1ブロックと検出器モジュール14との数の対応関係は任意である。また、イベントデータ収集部15については後に詳細に説明する。
【0017】
図1に戻り、コンソール装置16は、同時計数情報生成部17と、画像再構成部18と、システム制御部19と、データ記憶部20と、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23とを有する。なお、コンソール装置16が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0018】
入力部21は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボードなどであり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部19に転送する。表示部22は、操作者によって参照されるモニタなどであり、システム制御部19による制御の下、PET画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御する。
【0019】
データ記憶部20は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。例えば、データ記憶部20は、架台装置10から転送されたイベントデータ、同時計数情報生成部17によって生成された同時計数情報、画像再構成部18によって再構成されたPET画像などを記憶する。なお、データ記憶部20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどによって実現される。
【0020】
同時計数情報生成部17は、イベントデータ収集部15によって収集されたイベントデータを用いて同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数情報生成部17は、データ記憶部20に格納されたイベントデータを読み出し、陽電子から放出された一対の消滅放射線が同時に計数されたイベントデータのペアを検索する。また、同時計数情報生成部17は、検索したイベントデータのペアを同時計数情報として生成し、生成した同時計数情報をデータ記憶部20に格納する。
【0021】
画像再構成部18は、PET画像を再構成する。具体的には、画像再構成部18は、データ記憶部20に格納された同時計数情報を投影データとして読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、PET画像を再構成する。また、画像再構成部18は、再構成したPET画像をデータ記憶部20に格納する。
【0022】
システム制御部19は、架台装置10及びコンソール装置16を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部19は、PET装置100における撮影を制御する。
【0023】
なお、上述した同時計数情報生成部17、画像再構成部18、及びシステム制御部19の各部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路によって実現される。
【0024】
続いて、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15について詳細に説明する。図3は、第1の実施形態に係るイベントデータ収集部15の構成を示すブロック図である。図3に示すように、イベントデータ収集部15は、A/D(Analog/Digital)変換器15aと、クロック15bと、書き込み回路15cと、リングバッファ15dと、クロック15eと、カウンタ15fと、フィードバック回路15gと、読み出し回路15hとを有する。
【0025】
ここで、第1の実施形態に係るリングバッファ15dは、図3に示すように、n個のバッファ領域を有するリングバッファである。また、図3に示すように、カウンタ15fが、計数率情報15pを生成する。計数率情報15pは、検出器信号15jの計数率(単位時間に計数された検出器信号15jの数)を示す。また、フィードバック回路15g及び読み出し回路15hは、計数率情報に基づき高計数率時を判定し、高計数率時であると判定すると、リングバッファ15dが有するn個のバッファ領域のうち一部のバッファ領域からイベントデータ15kを読み出す。例えば、読み出し回路15hは、高計数率時には、バッファ領域1からバッファ領域iに格納されたイベントデータ15kのみを読み出す。以下、各部の動作を説明する。
【0026】
A/D変換器15aは、検出器信号15jの入力を受け付け、イベントデータ15k及びパルス信号15lを出力する。具体的には、A/D変換器15aは、アナログデータである検出器信号15jの入力を受け付けると、デジタルデータに変換してイベントデータ15kを生成し、生成したイベントデータ15kをリングバッファ15dに出力する。なお、このイベントデータ15kには、消滅放射線の検出位置(例えばシンチレータ141の識別情報など)、エネルギー値(例えば検出器信号15jの強度など)、及び検出時間(例えば絶対時刻、撮影開始からの経過時間など)が含まれる。
【0027】
また、A/D変換器15aは、検出器信号15jの入力を受け付けると、1つのパルス信号15lを生成し、生成したパルス信号15lをカウンタ15fに出力する。なお、A/D変換器15aは、時間の経過とともに複数の検出器信号15jの入力を受け付けるが、入力を受け付ける毎に1つのパルス信号15lを生成する。
【0028】
クロック15bは、クロック信号15mを発生し、発生したクロック信号15mを書き込み回路15cに出力する。書き込み回路15cは、クロック信号15mの入力を受け付け、クロック信号15mに同期するように、書き込み信号15nをリングバッファ15dに出力する。また、書き込み回路15cは、リングバッファが有する各バッファ領域に対して順にイベントデータ15kが書き込まれるように、書き込み信号15nを出力する。例えば、書き込み回路15cは、10ns毎に、「バッファ領域1へ書き込み」、「バッファ領域2へ書き込み」、といった書き込み信号15nを出力する。
【0029】
リングバッファ15dは、n個のバッファ領域を有するリングバッファである。リングバッファ15dは、イベントデータ15k及び書き込み信号15nの入力を受け付け、書き込み信号15nに従って、イベントデータ15kを各バッファ領域に対して順に格納する。例えば、リングバッファ15dは、10ns毎に、バッファ領域1、バッファ領域2、のように、各バッファ領域に順にイベントデータ15kを格納する。なお、リングバッファ15dは、バッファ領域nまでイベントデータ15kを格納すると、再びバッファ領域1からイベントデータ15kを格納する。
【0030】
クロック15eは、クロック信号15oを発生し、発生したクロック信号15oをカウンタ15fに出力する。カウンタ15fは、クロック信号15o及びパルス信号15lの入力を受け付け、単位時間に入力されるパルス信号15lの数を計数し、計数率情報15pを生成する。また、カウンタ15fは、生成した計数率情報15pをフィードバック回路15gに出力する。
【0031】
フィードバック回路15gは、計数率情報15pの入力を受け付け、計数率情報15pに基づき制御信号15qを生成し、生成した制御信号15qを読み出し回路15hに出力する。図4は、第1の実施形態に係るフィードバック回路15gによる処理手順を示すフローチャートである。
【0032】
図4に示すように、フィードバック回路15gは、計数率情報15pの入力を受け付けると(ステップS101、Yes)、計数率情報15pが示す計数率が閾値を超過するか否かを判定する(ステップS102)。閾値を超過する場合(ステップS102、Yes)、フィードバック回路15gは、高計数率時であることを示す制御信号15qを生成する(ステップS103)。一方、閾値を超過しない場合(ステップS102、No)、フィードバック回路15gは、通常時であることを示す制御信号15qを生成する(ステップS104)。そして、フィードバック回路15gは、ステップS103又はステップS104において生成した制御信号15qを、読み出し回路15hに出力する(ステップS105)。
【0033】
読み出し回路15hは、制御信号15qの入力を受け付け、制御信号15qに基づき読み出し信号15rを生成し、生成した読み出し信号15rをリングバッファ15dに出力する。図5は、第1の実施形態に係る読み出し回路15hによる処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
図5に示すように、読み出し回路15hは、制御信号15qの入力を受け付けると(ステップS201、Yes)、高計数率時であることを示す制御信号15qであるか否かを判定する(ステップS202)。高計数率時であることを示す制御信号15qである場合(ステップS202、Yes)、読み出し回路15hは、バッファ領域1からバッファ領域iに格納されたイベントデータ15kのみを読み出す読み出し信号15rを生成する(ステップS203)。一方、通常時であることを示す制御信号15qである場合(ステップS202、No)、読み出し回路15hは、バッファ領域1からバッファ領域n全てに格納されたイベントデータ15kを読み出す読み出し信号15rを生成する(ステップS204)。そして、読み出し回路15hは、ステップS203又はステップS204において生成した読み出し信号15rを、リングバッファ15dに出力する(ステップS205)。
【0035】
リングバッファ15dは、読み出し信号15rの入力を受け付け、読み出し信号15rに従って、イベントデータ15kを後段のデータ処理15iに向けて出力する。このイベントデータ15kは、読み出し信号15rに従って読み出しの量が調整された後のイベントデータ15kである。すなわち、高計数率時、リングバッファ15dは、読み出し信号15rに従って、バッファ領域1からバッファ領域iに格納されたイベントデータ15kのみを出力する。一方、通常時、リングバッファ15dは、読み出し信号15rに従って、バッファ領域1からバッファ領域n全てに格納されたイベントデータ15kを出力する。このように、リングバッファ15dから出力されるイベントデータ15kは、読み出し信号15rに従って読み出しの量が調整された後のイベントデータ15kである。なお、リングバッファ15dがイベントデータ15kを出力するタイミングは、例えば、想定し得る高計数率の最大値において、n個のバッファ領域全てにイベントデータ15kが格納されるタイミングなどである。
【0036】
上述したように、第1の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時に、リングバッファから読み出すイベントデータの量を調整する。具体的には、PET装置100は、計数率情報に基づき高計数率時を判定し、高計数率時であると判定すると、リングバッファが有する複数のバッファ領域のうち一部のバッファ領域からイベントデータを読み出す。このようなことから、第1の実施形態によれば、高計数率時にもイベントデータ量の調整を適切に行うことができる。
【0037】
なお、第1の実施形態においては、バッファ領域1からバッファ領域iに格納されたイベントデータ15kのみを読み出す手法を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、n個のバッファ領域のうち、バッファ領域1、バッファ領域3、バッファ領域5のように、間欠的に選択されたバッファ領域i個からイベントデータ15kを読み出す手法でもよい。読み出されないイベントデータ15kが適宜分散されることになる。
【0038】
また、第1の実施形態においては、高計数率時に、固定的にi個のバッファ領域からイベントデータ15kを読み出す手法を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、計数率に応じて読み出すバッファ領域の数を変化させる手法でもよい。変化させることにより、その時々の計数率に応じて、イベントデータ量の調整を最適に行うことができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態に係るPET装置100は、第1の実施形態の手法を基本としつつ、各ブロックにおけるイベントデータの量の調整が全ブロック間で同期するように制御する。
【0040】
第2の実施形態において、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、例えば、1検出器モジュール14が、1ブロックである。図6及び図7は、第2の実施形態におけるブロック間の同期を説明するための図である。図6に示すように、第2の実施形態においては、被検体Pの周囲をリング状に取り囲む検出器モジュール14のうち、例えば左サイドの検出器モジュール14を代表検出器モジュール14とする。代表検出器モジュール14は、代表イベントデータ収集部15´を有する。また、他の検出器モジュール14は、イベントデータ収集部25を有する。そして、代表イベントデータ収集部15´が、制御信号15qを他のイベントデータ収集部25に送信する。他のイベントデータ収集部25は、代表イベントデータ収集部15´から送信された制御信号15qに従って、リングバッファから読み出すイベントデータの量を調整する。
【0041】
ここで、ブロック間を同期させるためには、全ての検出器モジュール14において制御信号15qの到着が同時であることが望ましい。このため、図7に示すように、代表イベントデータ収集部15´からの距離に応じて遅延時間の異なる遅延回路を挿入する。すなわち、代表イベントデータ収集部15´には、最も遅延時間の大きい遅延回路を挿入する。また、他のイベントデータ収集部25には、代表イベントデータ収集部15´からの距離が遠くなればなるほど遅延時間が小さくなるように、遅延回路を挿入する。なお、遅延時間には、事前のキャリブレーション時に求めた値を設定すればよい。また、代表イベントデータ収集部15´のリングバッファ15dは、他のイベントデータ収集部25のリングバッファ25dよりも容量を大きくするなどしてもよい。
【0042】
図8は、第2の実施形態に係る代表イベントデータ収集部15´の構成を示すブロック図である。なお、図8において、図3を用いて説明したイベントデータ収集部15と同様に動作する部については、図3で用いた符号と同じ符号を付す。
【0043】
図8に示すように、代表イベントデータ収集部15´は、フィードバック回路15gと読み出し回路15hとの間に遅延回路15´sを有する。すなわち、フィードバック回路15gは、生成した制御信号15qを直接読み出し回路15hに出力するのではなく、遅延回路15´sを経由するように読み出し回路15hに出力する。また、フィードバック回路15gは、制御信号15qを他のイベントデータ収集部25に向けて転送する。
【0044】
図9は、第2の実施形態に係るイベントデータ収集部25の構成を示すブロック図である。なお、A/D変換器25aは、図3のA/D変換器15aと同様に動作し、クロック25bは、図3のクロック15bと同様に動作し、書き込み回路25cは、図3の書き込み回路15cと同様に動作する。リングバッファ25dは、図3のリングバッファ15dと同様に動作し、読み出し回路25hは、図3の読み出し回路15hと同様に動作し、後段データ処理25iは、図3の後段データ処理15iと同様に動作する。
【0045】
図9に示すように、イベントデータ収集部25は、読み出し回路25hの前段に遅延回路25sを有する。代表イベントデータ収集部15´から送信された制御信号15qは、遅延回路25sを経由して読み出し回路25hに出力される。
【0046】
上述したように、第2の実施形態に係るPET装置100は、各ブロックにおけるイベントデータの量の調整が全ブロック間で同期するように制御するので、イベントデータ量の調整を最適に行うことができる。
【0047】
すなわち、ある検出器モジュール14のある一つのバッファ領域に格納されているイベントデータは例えば10ns間のイベントデータであるので、他の検出器モジュール14においても同期して調整を行っていれば、全ブロック間で同じ番号のバッファ領域のデータを破棄ことになる。言い換えると、ある10ns間のイベントデータを全ブロックにおいて破棄することが可能であり、結果として、ペアとなり得るイベントデータを一緒に破棄することが可能である。
【0048】
仮にイベントデータを無作為に破棄すると、n個のイベントデータを破棄した場合、ペアのイベントデータとしてはn2個破棄することになる。このため、画質という観点においてイベントデータを十分に有効活用することができず、アーチファクトのある画像を出力してしまうおそれがある。一方、第2の実施形態によれば、ペアのイベントデータとともに破棄されるので、イベントデータを十分に有効活用することができる。
【0049】
なお、第2の実施形態においては、代表の検出器モジュール14が他の検出器モジュール14に制御信号15qを送信する手法を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、検出器モジュール14の外部に代表のフィードバック回路を設け、各検出器モジュール14が、代表のフィードバック回路との間で計数率情報や制御信号を送受信する手法でもよい。
【0050】
図10は、第2の実施形態におけるブロック間の同期の他の手法を説明するための図である。図10に示すように、例えば、代表のフィードバック回路35gを設け、各イベントデータ収集部35は、個々に生成した計数率情報35pを代表のフィードバック回路35gに送信する。代表のフィードバック回路35gは、各イベントデータ収集部35から送信された計数率情報35pに基づき高計数率時であるか否かを判定し、高計数率時であることを示す制御信号35q又は通常時であることを示す制御信号35qを生成する。そして、代表のフィードバック回路35gは、生成した制御信号35qを各検出器モジュール14に送信する。なお、全ての検出器モジュール14において制御信号35qの到着が同時であることが望ましいことは上述の通りであり、このため、フィードバック回路35gからの距離に応じて遅延時間の異なる遅延回路を挿入する。
【0051】
図11は、第2の実施形態の他の手法に係るイベントデータ収集部35の構成を示すブロック図である。なお、A/D変換器35aは、図3のA/D変換器15aと同様に動作し、クロック35bは、図3のクロック15bと同様に動作し、書き込み回路35cは、図3の書き込み回路15cと同様に動作する。リングバッファ35dは、図3のリングバッファ15dと同様に動作し、クロック35eは、図3のクロック15eと同様に動作し、カウンタ35fは、図3のカウンタ15fと同様に動作する。読み出し回路35hは、図3の読み出し回路15hと同様に動作し、後段データ処理35iは、図3の後段データ処理15iと同様に動作する。
【0052】
図11に示すように、イベントデータ収集部35は、読み出し回路35hの前段に遅延回路35sを有する。フィードバック回路35gから送信された制御信号35qは、遅延回路35sを経由して読み出し回路35hに出力される。また、カウンタ35fは、計数率情報35pをフィードバック回路35gに向けて転送する。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。第3の実施形態に係るPET装置100は、バッファの空き容量を示すバッファ空き情報に基づき高計数率時を判定し、バッファに書き込むイベントデータの量を調整することで、バッファから読み出すイベントデータの量を調整する。
【0054】
図12は、第3の実施形態に係るイベントデータ収集部45の構成を示すブロック図である。図12に示すように、イベントデータ収集部45は、A/D変換器45aと、クロック45bと、書き込み回路45cと、バッファ45dと、クロック45eと、読み出し回路45fと、バッファ空き検出回路45gとを有する。
【0055】
第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。図12に示すように、イベントデータ収集部45は、バッファ空き検出回路45gを有する。バッファ空き検出回路45gは、バッファ45dの空き容量を監視する。具体的には、バッファ空き検出回路45gは、WP(Write Pointer)45qの入力を書き込み回路45cから受け付け、また、RP(Read Pointer)45rの入力を読み出し回路45fから受け付ける。そして、バッファ空き検出回路45gは、WP45q及びRP45rに基づいて、バッファ空き情報45mを生成し、生成したバッファ空き情報45mを書き込み回路45c及び読み出し回路45fに出力する。
【0056】
読み出し回路45fは、クロック信号45oの入力を受け付け、クロック信号45oに従って読み出し信号45pを生成する。また、読み出し回路45fは、バッファ空き情報45mによってバッファ45dにイベントデータ45jが格納されていないことを認識すると、読み出しを行わない。
【0057】
ここで、第3の実施形態においては、書き込み回路45cが、バッファ45dに書き込むイベントデータの量を調整する。具体的には、書き込み回路45cは、パルス信号45kの入力を受け付けることにより、バッファ45dに書き込むイベントデータ45jが存在することを認識する。一方、書き込み回路45cは、バッファ空き情報45mの入力も受け付け、バッファ空き情報45mに基づき高計数率時を判定する。そして、書き込み回路45cは、高計数率時であるか否かに応じて、イベントデータ45jの書き込みを制御する。図13は、第3の実施形態に係る書き込み回路45cによる処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
図13に示すように、書き込み回路45cは、バッファ空き情報45mの入力を受け付けると(ステップS301、Yes)、バッファ空き情報45mが示すバッファの空き容量が、1/4以上であるか否かを判定する(ステップS302)。1/4以上である場合(ステップS302、Yes)、書き込み回路45cは、さらに、1/2以上であるか否かを判定する。1/2以上である場合(ステップS303、Yes)、書き込み回路45cは、パルス信号45kによって認識するイベントデータ45jの全てをバッファ45dに書き込むように書き込み信号45nを生成する(ステップS304)。
【0059】
一方、1/4以上であるが(ステップS302、Yes)、1/2以上でない場合(ステップS303、No)、書き込み回路45cは、パルス信号45kによって認識するイベントデータ45jのうち、2回に1回のイベントデータ45jを書き込むように書き込み信号45nを生成する(ステップS305)。
【0060】
一方、1/4以上でない場合(ステップS302、No)、書き込み回路45cは、パルス信号45kによって認識するイベントデータ45jのうち、3回に1回のイベントデータ45jを書き込むように書き込み信号45nを生成する(ステップS306)。
【0061】
そして、書き込み回路45cは、ステップS304又はステップS305又はステップS306において生成した書き込み信号45nを、バッファ45dに出力する(ステップS307)。すると、バッファ45dは、書き込み信号45nに従って、A/D変換器45aから入力を受け付けたイベントデータ45jを書き込んだり、あるいは、破棄したりする。
【0062】
上述したように、第3の実施形態に係るPET装置100は、高計数率時に、バッファから読み出すイベントデータの量を調整する。具体的には、PET装置100は、バッファ空き情報に基づき高計数率時を判定し、高計数率時であると判定すると、バッファに書き込むデータの量を調整することで、バッファから読み出すデータの量を調整する。
【0063】
なお、第3の実施形態においては、バッファの空き容量に応じてバッファに書き込むイベントデータの量を変化させる手法を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、バッファの空きがあるか否かに応じて、固定的に定められた間隔でイベントデータを書き込む書き込み信号を生成する手法でもよい。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。第4の実施形態に係るPET装置100は、第3の実施形態の手法を基本としつつ、各ブロックにおけるイベントデータの量の調整が全ブロック間で同期するように制御する。
【0065】
第4の実施形態において、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、例えば、1検出器モジュール14が、1ブロックである。図14は、第4の実施形態におけるブロック間の同期を説明するための図である。図6を用いて説明したように、第4の実施形態においても、被検体Pの周囲をリング状に取り囲む検出器モジュール14のうち、例えば左サイドの検出器モジュール14を代表検出器モジュール14とする。代表検出器モジュール14は、代表イベントデータ収集部45´を有する。また、他の検出器モジュール14は、イベントデータ収集部55を有する。そして、代表イベントデータ収集部45´が、バッファ空き情報45mを他のイベントデータ収集部55に送信する。他のイベントデータ収集部55は、代表イベントデータ収集部45´から送信されたバッファ空き情報45mに従って、バッファに書き込むイベントデータの量を調整する。
【0066】
ここで、ブロック間を同期させるためには、全ての検出器モジュール14においてバッファ空き情報45mの到着が同時であることが望ましい。このため、図14に示すように、代表イベントデータ収集部45´からの距離に応じて遅延時間の異なる遅延回路を挿入する。すなわち、代表イベントデータ収集部45´には、最も遅延時間の大きい遅延回路を挿入する。また、他のイベントデータ収集部55には、代表イベントデータ収集部45´からの距離が遠くなればなるほど遅延時間が小さくなるように、遅延回路を挿入する。なお、遅延時間には、事前のキャリブレーション時に求めた値を設定すればよい。
【0067】
図15は、第4の実施形態に係る代表イベントデータ収集部45´の構成を示すブロック図である。なお、図15において、図12を用いて説明したイベントデータ収集部45と同様に動作する部については、図12で用いた符号と同じ符号を付す。
【0068】
図15に示すように、代表イベントデータ収集部45´は、バッファ空き検出回路45gと書き込み回路45cとの間に遅延回路45´sを有する。すなわち、バッファ空き検出回路45gは、生成したバッファ空き情報45mを直接書き込み回路45cに出力するのではなく、遅延回路45´sを経由するように書き込み回路45cに出力する。また、バッファ空き検出回路45gは、バッファ空き情報45mを他のイベントデータ収集部55に向けて転送する。
【0069】
図16は、第4の実施形態に係るイベントデータ収集部55の構成を示すブロック図である。図16に示すように、イベントデータ収集部55は、書き込み回路55cの前段に遅延回路55sを有する。代表イベントデータ収集部45´から送信されたバッファ空き情報45mは、遅延回路55sを経由して書き込み回路55cに出力される。
【0070】
ここで、バッファ空き情報45mが、例えば4ビットの情報である場合などには、遅延回路55sを入れたとしても、ブロック間で十分に同期することが難しいとも考えられる。このような場合には、書き込み回路55cにおけるバッファ空き情報45mの確認タイミングを所定間隔毎にする。例えば、書き込み回路55cは、クロック信号55lの10クロック毎に、バッファ空き情報45mを確認する。このように、確認タイミングを所定間隔毎とすれば、例えば4ビットの情報が各ブロックに非同期に到着したとしても、確認タイミングは同期し、書き込み回路55cによる書き込みの制御は、同期することになる。なお、例えば各ブロック間でデータを送受信するバスの本数を増やすことで、例えば4ビットの情報を一度に到着させる手法でもよい。
【0071】
上述したように、第4の実施形態に係るPET装置100は、各ブロックにおけるイベントデータの量の調整が全ブロック間で同期するように制御するので、イベントデータ量の調整を最適に行うことができる。
【0072】
なお、実施形態は、上述した第1〜第4の実施形態に限られるものではない。例えば、第1〜第4の実施形態においては、バッファから読み出すイベントデータの量の調整は、検出器モジュールが有するイベントデータ収集部内において実行される処理として説明したが、これに限られるものではない。例えば、図1に示すコンソール装置16側においても同様に、高計数率時の課題は生じ得る。この場合には、例えば、第1の実施形態で述べたリングバッファを用いた制御や、第3の実施形態で述べた書き込み時の制御などを、同様に適用することができる。
【0073】
また、第2の実施形態や第4の実施形態においては、代表の検出器モジュールを左サイドの検出器モジュールとした。これは、複数の検出器モジュールのうち、高い計数率となる検出器モジュールは、両サイドである可能性が高いからである。したがって、右サイドの検出器モジュールを代表の検出器モジュールとしてもよい。また、他の検出器モジュールを代表の検出器モジュールとしてもよい。
【0074】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のPET装置によれば、消滅放射線を検出するイベントの高計数率時に、バッファから読み出すイベントデータの量を調整するので、高計数率時にもイベントデータ量の調整を適切に行うことができる。この結果、高計数率時にも十分な画質を担保することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
15 イベントデータ収集部
15d リングバッファ
15g フィードバック回路
15h 読み出し回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消滅放射線を検出する検出器と、
前記検出器の出力信号に基づき生成されたイベントデータを記憶するバッファと、
前記消滅放射線を検出するイベントの高計数率時に、前記バッファから読み出すイベントデータの量を調整する調整部と
を備えたことを特徴とする陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記検出器は、複数のブロックに区分けされ、
前記バッファ及び前記調整部は、ブロック毎に備えられるものであって、
各ブロックにおけるイベントデータの量の調整が全ブロック間で同期するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記バッファは、複数のバッファ領域を有するものであって、
前記出力信号の計数率を示す計数率情報を生成する生成部をさらに備え、
前記調整部は、前記計数率情報に基づき高計数率時を判定し、高計数率時であると判定すると、前記バッファが有する複数のバッファ領域のうち一部のバッファ領域から前記イベントデータを読み出すことを特徴とする請求項1又は2に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記計数率に応じて前記一部のバッファ領域の数を変化させることを特徴とする請求項3に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記バッファの空き容量を示すバッファ空き情報を生成する空き情報生成部をさらに備え、
前記調整部は、前記バッファ空き情報に基づき高計数率時を判定し、高計数率時であると判定すると、前記バッファに書き込むイベントデータの量を調整することで、該バッファから読み出すイベントデータの量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記バッファの空き容量に応じて前記バッファに書き込むイベントデータの量を変化させることを特徴とする請求項5に記載の陽電子放出コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−189391(P2012−189391A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52020(P2011−52020)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】