説明

隅棟の葺上工法

【課題】隅棟を葺き上げるときに生ずる瓦の廃材量を少なくした瓦葺き工法を提供する。
【解決手段】JIS A 5208に規定するF型の桟瓦1と、斜めにプレカットして成形した隅棟瓦6と、桟瓦1の1/3及び2/3の瓦幅で成形した調整瓦9a、9bを用いて4.5/10勾配の屋根の瓦葺きを上下三段の瓦を一パターンにした繰り返しにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカットした隅棟瓦を用いて行う瓦葺き工法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すような寄せ棟屋根の瓦葺きを行う際には一般に、軒の長さLを測って、その中央Cから隅棟まで瓦の割り付けを行ったのちに桟瓦を葺き、隅棟の棟際では、桟瓦を隅棟に合わせて斜めにカットして使用し、残りは廃材としている。
【0003】
具体的には図2に示すように、桟瓦1を軒に沿って葺いたのち、隅棟の桟瓦1を隅棟2に合わせて斜めにカットしており、隅棟2を越えた点線で示す部分Aは廃材としているが、図示するような場合では、棟際の最左端の桟瓦1では、その大部分が廃材となり、この廃材が軒の左右で同量生ずるようになる。廃材量が多く出る場合には、廃材量を少なくするために、従来は目算にて瓦1を葺く位置を割り付けしたポイントよりもずらして割り振りし、瓦葺きを行っている。図3は、その一例を示すもので、この場合の点線で示す廃材量は、図2に示すものよりも少なくなっている。
【0004】
図4は、JIS A 5208に規定するF形で例示される瓦を用いて4.5/10勾配の寄せ棟屋根について上下三段の瓦を一パターンにして瓦葺きをした例を示すもので、隅棟2に葺かれた瓦1が隅棟2に沿って斜めに切断されるようになっている。すなわち図5eの実線で示す瓦1eは、図4に示す軒側の隅棟瓦として用いられ、図5d及び図5cの実線で示す瓦1d、1cは、図4に示す二段目の隅棟瓦として用いられるものである。また図5b及び図5aの実線で示す瓦1b、1aは図4に示す三段目の隅棟瓦として用いられ、各瓦1a、1b、1c、1d、1eにおいて、点線部分が廃材となる部分を示している。
【0005】
このほか、斜めにカットされた隅棟瓦の大きさは変えないで、桟瓦を所要の幅にカットして調整する試みもなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示す瓦葺きでは、図5に示す瓦の点線部分が廃材となるが、この廃材はできるだけ少なくすることが望まれる。
斜めにカットした一定の大きさの隅棟瓦を用いて瓦葺きを行い、瓦の割り振りで一枚の瓦幅より小さな端数が出るときには、瓦を所要の幅にカットして調整瓦として用いる従来の方法も瓦をカットすることにより廃材が出ることには変わりがないし、何よりもカットした部分が屋根瓦面に表われて、目に付き見映えが悪い、という難点がある。
【0007】
本発明の目的は、隅棟瓦を葺く際、瓦をカットしなくてもよいか、カットするにしても生ずる廃材量を極力少なくした瓦葺き工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、JIS A 5208に規定する図6に示すような働き長さと働き幅のF形の瓦1を用い、かつ該瓦の1/3及び2/3幅の調整瓦を用いて4.5/10の屋根勾配で瓦葺きを行うと、上下三段の瓦を一パターンにした繰り返しで瓦葺きを行うことができることを見出した。なお、図6において、4は瓦の重ね代を示す。
【0009】
本発明は、この知見に基づいてなされたもので、
請求項1に係わる発明は、斜めにプレカットして成形した隅棟瓦と、幅を異にして成形した複数の調整瓦を用い、軒に沿って桟瓦を葺いたのち、隅棟瓦を葺く際、該隅棟瓦が隅棟より必要量以上出入りするときには、一ないし複数の桟瓦の代わりに一ないし複数の調整瓦を組込んで葺くことを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明における桟瓦がJIS A 5208に規定するF形の瓦で、調整瓦の瓦幅が上記瓦の1/3及び2/3幅であり、瓦葺きが4.5/10の屋根勾配に対して行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係わる発明によると、桟瓦を所要の幅にカットして使用する必要がなく、隅棟瓦をカットするにしても桟瓦をカットするよりも廃材量が少なくなる。また一つ又は幅の異なる複数の調整瓦を組合せることにより瓦をカットする必要がなくなれば、カットする手間が省けて廃材も出なくなり、カット部分が屋根瓦面に表われて目に付き、見映えが損なわれるといった問題を生ずることもない。
【0011】
請求項2に係わる発明によると、桟瓦はもとより隅棟瓦をカットする必要がないか、カットするにしてもカット量が僅かですみ、廃材量がより少なくなるばかりでなく、上下三段の瓦を一パターンにした繰り返しで瓦葺きを行うことができ、隅棟瓦を用いて行う瓦葺きが容易となり、しかも工期を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図7は、図4と同じく4.5/10勾配の寄せ棟について上下三段の瓦を一パターンにして瓦葺きをした例を示すもので、各段にはJIS A 5208に規定するF型の桟瓦1と、図8に示す斜めにプレカットし、切り代7を設けて成形した隅棟瓦6と、図9に示すように桟瓦1の1/3及び2/3の瓦幅の調整瓦9a、9bが用いられる。
【0013】
瓦葺きは軒の一方の隅棟に隅棟瓦6を葺き、ついで軒に沿って上記桟瓦1を順に葺いていく。4.5/10勾配の屋根では、上記桟瓦1がぴったりと収まって葺かれるか、収まらない場合でも桟瓦1の1/3又は2/3の瓦幅の調整瓦9a又は9bを用いることにより収まるようになる。その後、他方の隅棟に隅棟瓦6が葺かれる。このとき隅棟瓦6が隅棟より若干はみ出すようなことがあっても切り代7の範囲内に収まっている。二段目も同様にして葺かれるが、この場合、一段目とは異なる調整瓦9b又は9aが用いられるか、或いは一段目とは異なって調整瓦が用いられない。三段目も同様で、調整瓦を用いるにしても一段目及び二段目とは異なった調整瓦が用いられるか、或いは調整瓦を用いた一段目及び二段目とは異なって調整瓦は用いられない。四段目以降は以上のような一から三段目までを一パターンにした繰返しで瓦葺きが行われる。
【0014】
図7に示す実施形態においては、図示するように隅棟瓦6がほぼ揃うようにして各段の瓦に一ないし複数の調整瓦9a、9bが組込まれる。そして隅棟2に沿って切り代7の範囲内でカットされる。切り代7は瓦幅を調整するために設けられるもので、切り代7を全てカットした場合でも出る廃材量は、図5a〜図5eに示すものの廃材に比べほぼ8割減となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】寄せ棟屋根の概略図。
【図2】軒の隅棟に葺いた瓦の略図。
【図3】軒に葺いた瓦について示す略図。
【図4】隅棟に葺いた瓦について示す略図。
【図5】隅棟に葺かれる各瓦の平面図。
【図6】JIS A 5208に規定する瓦のサイズを示す図。
【図7】本発明の工法により葺いた瓦について示す図。
【図8】本発明の工法で用いる隅棟瓦の平面図。
【図9】本発明の工法で用いる調整瓦の平面図。
【符号の説明】
【0016】
1、1a、1b、1c、1d、1e・・桟瓦
2・・隅棟
6・・隅棟瓦
7・・切り代
9a、9b・・調整瓦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜めにプレカットして成形した隅棟瓦と、幅を異にして成形した複数の調整瓦を用い、軒に沿って桟瓦を葺いてから隅棟瓦を葺く際、該隅棟瓦が隅棟より必要量以上出入りするときには、一ないし複数の桟瓦の代わりに一ないし複数の調整瓦を組込んで葺くことを特徴とする隅棟の葺上工法。
【請求項2】
上記桟瓦がJIS A 5208に規定するF形の瓦で、調整瓦の瓦幅が上記瓦の1/3及び2/3幅であり、瓦葺きが4.5/10の屋根勾配に対して行われることを特徴とする請求項1記載の隅棟の葺上工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−183309(P2006−183309A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377123(P2004−377123)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(591091663)株式会社石州川上窯業 (8)