説明

階段保護部材、階段仕上材と階段保護部材との組合せ及び階段構造

【課題】工事等の必要な期 間に応じ、階段仕上材の汚染や破損等を十分に防止出来ると共に、階段の安全な昇降を可能にする階段保護部材を提供する。
【解決手段】 階段マット保護材1等の階段保護部材を提供する。階段マット保護材1等は、階段の踏板3上で、階段マット5等の階段仕上材上に載置され、階段マット5等の上面を覆う踏面部1Aを備える。階段マット保護材1等は、必要に応じてか又は予め、階段マット5等との間で積層体を構成し、階段構造2を形成する事が出来る。階段マット保護材1等は、階段マット5等との間でのずれ及び滑りが防止され得るように、階段マット5等及び階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定され、階段マット5等の汚れ及び破損が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の工事期間中等にも、階段仕上材、特に階段マットが汚れたり傷付いたりする事が無く、階段マットの保護養生が行え、何度も繰返し使用が出来、簡単に着脱出来、階段マットに密接し、ずれたり、滑る事の無い、工事業者、資材搬入業者等も安全に昇降する事が出来る、階段保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物は完成近くになると様々な工事業者、工事関係者が出入りし、特に階段は必ず工事業者等の全員が1日に何回も昇降を繰り返す通行頻度の高い部位となる。ところが、従来、階段の仕上面専用の保護材は無く、階段仕上材の保護養生は、各工事現場で独自に様々に行われている。階段の踏面の仕上材としては、階段マット等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−88760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状では、工事期間中等において、階段仕上材の保護に用いられるものは、養生シート等の厚手のフィルム、段ボール、合板等であり、これらをガムテープやクラフトテープ、養生テープ等で止めて、階段仕上材が保護養生される。かかる方法は、何れも、養生シート等の保護材を階段仕上材上に直接テープ止めするものであり、階段仕上材にテープの粘着材が付着したり、両端の踏面や踏面裏、蹴込み、桁等とテープ固定するので、固定面積が小さくなり、固定度が低かったりする為、階段仕上材との間でずれを止める事が出来難い。
【0004】
これらの保護養生は、初期には特に問題は無いが、数日経過すると、ダンボールやフィルム等では、到る所で破損が生じ、滑り易く、つまずき易くなり、場合によっては、合板やダンボール等が階段の段鼻部よりも先端側に出てしまい、極めて危険な状況になる事が多い。しかも、床等の広い面積を一度に養生シートで養生するのでは無く、階段が複雑な形状である事と、階段仕上材としての階段マットには直接テープ等を貼る事が出来無い事等から、かなりの手間をかけて養生されているが、昇降頻度が高い為、短期間で危険な状態になり易い。
【0005】
工事現場は、屋外から資材の搬入があり、屋外は芝生や踏石等の工事がまだ為されてい無い状況である事が多く、雨天時等では特にぬかるんでいる事もあって、濡れた土の付着した土足で昇降する為、特にフィルムは滑り易く危険であり、ダンボールは濡れると破損し易く危険である。その為、現場担当者が何回も養生をやり直す必要があり、階段は1段ずつ養生が必要となって、手間がかかるだけで無く、その際等に階段仕上材も汚れ易い。つまり、屋内の床等に用いられる養生シートはスリッパ等の上履きに履き替えれば歩行等での破損は生じ難く、平坦な場所での歩行は比較的安全である。しかし、階段は歩行が不安定になり易く、土足で、しかも同じ位置を踏まれる頻度が必然的に多く、破損し易い条件が元来そろっている。この様に、階段保護材の必要性は高いものの、階段には階段専用の保護材が作られておらず、かかる現実に目を向けて、安全な保護材を提供しようとする者はいなかった。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に着目し、工事等の必要な期間に応じ、階段仕上材の汚染や破損等を十分に防止出来ると共に、階段の安全な昇降を可能にする階段保護部材を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、階段の階段仕上材上に載置される階段保護部材であって、前記階段仕上材の上面を覆う踏面部を備えており、前記階段仕上材との間でのずれ及び滑りが防止され得るように、前記階段仕上材及び前記階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定され、前記階段仕上材の汚れ及び破損が防止される、階段保護部材、階段仕上材と階段保護部材との組合せ及びかかる階段保護部材が用いられている階段構造に係るものである。
【0008】
本発明者は、階段仕上材を保護し、安全な昇降を可能にする保護材について、種々の試作、検討を繰り返した。その結果、階段保護部材が具備すべき点は、
(1)階段仕上材(又は階段マット)が施工された後、必要に応じて、これを被覆保護し、階段仕上材を汚れや破損等からガード出来る形状及び強度を有する点、
(2)階段仕上材と階段保護部材とが、ずれたり、滑ったりする事無く密接し、安全性に優れる点。
(3)階段保護部材がそれ自体、着脱可能な固定方法で階段仕上材又は階段の踏板に固定され、何回も再使用を可能にする点
である事を見出し、これらを具備する階段保護部材の作製を経て、本発明に至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、階段仕上材を必要に応じて階段保護部材により十分に保護する事が出来、その際の安全な昇降をより一層確実に提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、工事期間中等において、予め施工されている階段仕上材の汚染、破損等を防止するという目的を、階段仕上材との間で積層体を構成する事が出来る階段保護部材による最小の構成で、工事業者、資材搬入業者等の様々な昇降状態における安全性を損なわずに実現する。
【0011】
本発明の階段保護部材は、形状等、特に制限され無いが、階段仕上材(特に、階段マット)の上面を覆う踏面部を備えている。階段マット以外の階段の踏面を被覆する様に構成する事も出来る。階段マット等の階段仕上材との間で積層体を構成するのが良く、階段保護部材と階段仕上材との組合せとして構成しても良い。階段保護部材は、階段仕上材の外形より1周り大きく作るのが良く、これによって階段仕上材全体を被覆する事が出来る。
【0012】
階段保護部材は、固定手段等、特に制限され無いが、階段仕上材、踏板等に固定すれば良く、それで、階段仕上材の外周やその側面をも被覆出来、ずれが生じ難くなる。階段保護部材は、階段仕上材上に固定される様に、固定部を備える事が出来る。
【0013】
固定手段としては、嵌合等、係止等、嵌設、嵌装、嵌挿、嵌着、嵌通、嵌入、嵌脱、遊嵌等、係合、係着、係入等、遊挿等の固定方法や着脱方法を用いる事が出来、階段仕上材、階段保護部材、階段の蹴込み、踏板、桁等の間で、嵌め合せたり、挟み込んだり、挿入したりして、これらの手段を用いる事が出来る。
【0014】
例えば、階段仕上材の上面又は側面、踏板等を利用した凹部と凸部の嵌合、ピン等を使った物理的固定、再剥離型両面テープによる固定等々で固定出来、着脱可能で再使用可能なら特に制約は無い。又、例えば、階段仕上材と階段保護部材には、互いを固定する固定部を設ける事が出来る。又、階段仕上材に凹部又は凸部を設け、階段保護部材が階段仕上材の前記凹部又は凸部と嵌合等する逆形状の凸部又は凹部を有していれば、階段仕上材と前記階段保護部材とを凹部及び凸部の少なくとも一方によって密接させる事が出来る。
【0015】
又、階段仕上材と階段の蹴込みとの間に空間部を形成する場合には、階段保護部材は、この空間部に挿入出来る蹴込み部を突起等として備える事が出来る。階段仕上材と階段の蹴込みとの間に蹴込み部を挟み込む事により、階段保護部材を階段仕上材上に固定する事が出来る。
【0016】
階段保護部材は、材質等、特に制限され無いが、弾性体からなるのが良く、かかる場合には、ゴムやエラストマーの単体や併用でも、ゴムやプラスチックの併用等であっても良い。階段仕上材や踏板が、老化防止剤や可塑剤等の移行により変色その他の悪影響を与えられなければ良く、非加硫タイプでも充分に使用出来る。
【0017】
安全面では、階段仕上材の上面と階段保護部材の下面(裏面)とでずれたり、滑ったりすると危険なので、その両者の間は密接している方が良く、更には、階段保護部材の下面が階段仕上材の上面の凹凸部等の模様と逆形状の凹凸部等の模様を一部又は全面に形成してあると、互いの凹凸を嵌合させる事が出来、容易にずれたり、滑ったり出来無くなり、安全性が増す。
【0018】
更に、階段保護部材は階段の段鼻を覆う段鼻部を設ける事が出来、この段鼻部に踏面部と異なる、出来るだけ目立った色で、例えば、線状、帯状に、目印を設けておけば、踏み外し事故等も発生し難くなるので、安全性はより一層向上する。又、段鼻部表面、踏面部、共に溝部、凹凸部等、これらを用いる模様、更には凸部表面の微細な凹凸部等の滑り止め加工を施す事で、濡れても滑り難いノンスリップ性が付与される。
【0019】
又、階段保護部材の段鼻部は、蹴込み部との間で、階段仕上材を挟み込む様にして、階段仕上材上に階段保護部材を固定する事が出来る。又、階段保護部材において、階段の幅方向の両端部、階段の桁側等に突出部を設け、これらの突出部の間で階段仕上材を挟み込む事で、階段仕上材上に階段保護部材を固定する事が出来る。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を順に説明する。
本発明では、階段自体は、特に制約は無く、屋内屋外を問わず広く種々のものを用いる事が出来る。又騒音の少なさから言うと、階段桁や踏板は出来る丈、曲げ剛性が大きいものが良く、階段桁では、鋼板厚8mmと同程度以上の曲げ剛性を有する桁が良く、踏板は無機質板が良い。一方、本願は、騒音低減に関する発明では無いので、前記のものは、用いる階段でより良い階段と考えれば良い。本発明においては、階段仕上材を施工後、如何にして工期終了までの期間、階段仕上材を美しく、傷付き難い状態に保つと共に、階段保護部材により安全性が損われない様にする事と、階段保護部材が着脱可能で、何回も階段保護部材として再使用出来るものであれば、階段等には、特に制限が無い。
【0021】
階段仕上材としては、代表的には、前述の様な階段マットを挙げる事が出来るが、特に制限されず、種々の構造、形状のものを用いる事が出来る。例えば、階段仕上材には、踏板等も包含され、弾性体からなるものだけではなく、コンクリート等、種々の材料からなるものも包含される。また、踏面の先端(段鼻等)に埋め込まれる滑り留め(ノンスリップ等)でも良く、滑り留め、耐久性の向上、美観等の諸機能を果たす踏板等も含まれる。
【0022】
階段保護部材の材質としては、前述した様に、各種ゴムやエラストマーやプラスチックを単独で又は併用して用いれば良く、それらを積層して用いても良い。これらの材料は伸縮するので、凹部への砂等の汚れが取れ易く、汚れを水洗等で容易に落とす事が出来る。又、場合によっては、階段仕上材との密着性を増す目的で、階段保護部材の裏面側を発泡体から構成しても良い。又、加硫は必ずしも必要で無く、非加硫で用いても良い。これには、特に1分子中にハードセグメントとソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーから得られたものが、加硫工程無しで、加硫物と類似の粘弾性挙動を示すので、都合が良い。階段保護部材として避けるべきものは、階段仕上材を汚染したり、劣化させたりするものである。
【0023】
階段保護部材は、階段仕上材及び/又は踏板に嵌合出来る様な構造や、ピン等で物理的に固定する方法、再剥離粘着テープを用いて固定すれば良い。又、これらの固定は、容易に着脱可能で、かつ、踏板や階段仕上材に損傷を与えないものであれば、特に固定方法に制約は無い。
【0024】
階段保護部材は階段仕上材を被覆する様に用いるので、階段仕上材と階段保護部材との接触面は密接して、ずれや、滑りに抵抗出来る様に使用する方が高い安全性を発揮する。更に安全性を向上させる為には、階段仕上材が表面に凹凸を有する様にし、階段保護部材がこれとは逆形状の凹凸を裏面の一部又は全体的に有する様にすると、凹凸が互いに嵌合出来、密接度が増す為、ずれや滑りはより一層起こり難くなり、安全性がより一層高くなる。
【0025】
他に、段鼻部に踏面部と明瞭に判別出来る色で、例えば、線状や帯状等の目印を設けると、階段先端部が明瞭になる為、踏み外し事故が生じ難くなる。JIS−C−7614により、踏み面の輝度(a)と段鼻部目印の輝度(b)から輝度比(a/b)を、踏面部と段鼻部の輝度比で1.5以上にする事が一つの目安となる。線状や帯状の部分は、ゴム生地を別に用意し、加硫成型時に同時成型しても良く、別々に成型し後から貼付ける、或いは、嵌合する方法でも良い。
【0026】
更に、階段保護部材の表面に、凹凸や溝や凸部、更に凸部に細かい凹凸を設ける事で、特に水に濡れた時、水膜を連続して形成せず、ノンスリップ効果が高くなる。凹凸部の凸部面に細かな凹凸部を設ける意味は、多量の水は凹部に排出されるが、凸部に細かな凹凸を設ける事で、凸部に残った少量の水分により形成される水膜の連続性が断たれる為、濡れても滑り難くなると考えられる。水に濡れるときの滑りの目安は、JIS−a−1407の濡れた時の床滑り抵抗係数(A)と乾燥時の床滑り抵抗係数(B)の比(A/B)が0.7以上あれば濡れても滑り難いと判断出来る。
【0027】
上記の様な階段保護部材は工期終了と共に取り外し、表面の汚れを除去し、損傷度をチェックして、悪い物は取り換えておく事で、何回でも安心して別の階段の階段保護部材として再使用出来、見た目も良く、安全に工事をする事が出来、ゴミも発生しないので、環境にも良い。又、損傷により取り替えの必要なメーカーに送り返せば、メーカーはこれを粉末ゴムとし、再度階段保護部材の原料の一部として使えば永久にリサイクル出来るものである。
【0028】
階段保護部材の周囲及びその内部の空間厚みは、階段仕上材の凸部厚みの±20%が適切であり、特に厚みが厚くなると、密着性が徐々に悪化し、ずれが生じたり、滑り易くなったりするので好ましくなく、逆に薄くなると、下部隙間から汚れが入り込み易くなり、汚れのおそれが高まる。
【0029】
階段保護部材の長辺方向の両端(階段の昇降方向から見て左右の端部、階段両側)の側面に多くの穴を設けると、密着性が増して、汚れ難くなる。これは、階段両側の手すり近くを歩く人が、多く穴から得られるクッションを利用する事による為と思われる。
【0030】
又、縦横方向(階段の昇降方向から見て前後方向)では正確に寸法合わせをして、隙間無しであっても良いが、5〜20mm位の余裕がある方が、施工上容易であり、この程度の余裕は、保護特性やずれ、滑り等に対する悪影響を生じさせ無い。逆に、20mmを超えた大きいサイズでは、踏板からのはみ出し等が生じる危険性があり、材料のコストアップとなるだけで、あまりメリットは生じ無い。
【0031】
又、階段保護部材の踏面部の厚みは、選択したポリマーによって最適厚みは自ずと上下するし、何回の繰り返し使用を想定して設計するかにもより、粘弾性体が容易に損傷を受け無い点と現場への搬入搬出時の重量とを考慮して決定すれば良く、通常2〜5mm厚を想定すれば良い。
【0032】
又、階段仕上材は、用いる現場によって、一定の長さとは限ら無いので、その様な場合の対応としては、階段保護部材を、予め、2分割、3分割出来る構造とする事が出来る。又、分割等の場合、互いの階段保護部材を重ね合わせて用いても良い。重ね合わせによって生じる凹凸は、養生シートやダンボール等の破損に比べ、安全性の問題は殆ど生じさせない様にする事が出来る。更に、分割等の場合、互いの階段保護部材の重ね合わせ部分を工夫する事で、より一層簡単に対応出来る。例えば、2分割等の分割の場合、互いの階段保護部材を重ね合わせて用いれば、種々の長さに対応出来、この場合、重ね合わせ部において、階段保護部材の重ね合わせ部の裏面で、階段仕上材の凹部に嵌め込む凸部を設け無いものを用意する。又、重ね合わせ使用に限られ無いが、嵌め込み凸部を、例えば、一状の長辺方向の階段仕上材凹部にのみ嵌合するタイプのものとすれば、スムーズな対応が出来、ずれや滑りを十分に防止出来る。2分割、3分割の階段保護部材も、継目をテープ止めで対応すれば、再使用の時にも、異なる長さの階段仕上材にも対応が出来る。
【0033】
図面を参照して、本発明をより一層詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1の階段マット保護材が階段マットの全面を被覆した踏面平面図である。図2は図1のA−A線断面図である。図3は図2の踏板、蹴込み付近の階段マットと階段マット保護材の拡大図である。図4は実施例2の階段マット保護材を示す平面図であり、(a)は実施例2の蹴込み付き踏板に階段マットを貼り付けた上から被覆した平面図であり、(b)は(a)の○印部の拡大平面図である。図5は図4に用いた階段マット保護材の裏面図である。図6は本発明の実施例2に用いた階段マット表面と階段マット保護材の裏面の接した部分の断面図である。図7は蹴込み一体化踏板に階段マットを貼り、その上に階段マット保護材の3分割品を固定した平面図である。図8は図7の階段マット保護材の3分割品をバラバラにして裏面を上に向けた平面図であり、(a)は図7の右側のものであり、(b)は図7の中央のものであり、(c)は図7の左側のものである。
【0034】
図1〜3は1例の階段マット保護材1(階段保護部材)を用いる階段構造2の一部を示す図である。踏板3と蹴込み4とが一体となった無機質PC板の階段である。蹴込み4との間に10mmの空間を空けて、長辺方向両端各25mmの空間を空けて、階段マット5(階段仕上材)が踏板3上に貼られている。階段マット5には、破線で示した段鼻部6が付いている。階段マット保護材1は、踏面部1A、段鼻部1Bを備え、階段マット5の全体を被覆しおり、実線で示してある。以下、同じ参照符号は、同様の構成物を指す。
【0035】
この様に、階段マット保護材1等の階段保護部材は、階段の踏板3上で、階段マット5等の階段仕上材上に載置され、階段仕上材の上面を覆う踏面部1Aを備える。階段保護部材は、必要に応じてか又は予め、階段仕上材との間で積層体を構成し、階段構造2を形成する事が出来る。階段保護材は、階段仕上材との間でのずれ及び滑りが防止され得る様に、階段仕上材及び階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定され、階段仕上材の汚れ及び破損が防止される。
【0036】
階段マット保護材1は、その踏面部1Aが階段マット5上にあり、蹴込み部1Cが蹴込み4と階段マット5との間に隙間が無い様に入れられている。階段マット保護材1の長さ方向両端(桁側)の突出部1D,1Eは、各々階段マット5の側面を覆い、片側に2箇所ずつ、固定ピン7で、階段マット5と階段マット保護材1の長さ方向両端部1D,1Eに予め設けた穴を介して固定されている。
【0037】
図2は図1のA−A線断面を示した図である。図2に詳細に示す様に、踏板3は蹴込み4と一体化した無機質PC板であり、段鼻部6付き階段マット5が粘着両面テープ8で踏板3に貼付けられている。階段マット5は、段鼻部6、踏面共に、凹部9と凸部10が設けられ、その上に階段マット保護材1が設けられている。階段マット保護材1の表面も凹凸面はあるが、図2では省略する。階段マット保護材1の段鼻部1Bには踏面部1Aと異なる色で明瞭な目印1Fが線状に設けられている。
【0038】
図3は図2の踏板3と蹴込み4の部分近くを詳細に示すもので、階段構造2において、階段と階段マット5と階段マット保護材1を拡大する図である。階段マット5の蹴込み側側面と蹴込み4との間には、空間部が形成され、階段マット保護材1には、この空間部に対向する部分に、蹴込み部1Cが形成されており、ここが階段マット5と階段マット保護材1とを固定する嵌合固定部となっている。
【0039】
この図では、階段マット5の表面と階段マット保護材1の裏面の状況が明らかになる。階段マット5の凹部9、凸部10、階段マット保護材1の裏面の凸部11、凹部12が設けられており、及び階段マット5の表面の凹部9及び凸部10が階段マット保護材1の裏面の凸部11及び凹部12と各々連続して嵌合部が形成され、ずれ難く、滑り難い密接状態となっている。階段マット保護部材の表面には、凹部13及び凸部14が形成され、凸部14の表面には、更に細かな凹凸15が形成されている。階段マット保護材1の蹴込み部1Cには、帯状の突出部16を設ける事が出来、これに対応する凹部を階段マット5に設ける事によって、より一層十分な固定が可能になる。
【0040】
図4〜6は他の例の階段保護部材21及び階段構造22を示すもので、蹴込み4と一体成型の踏板3上に、階段マット25を貼り、その上に階段マット保護材21を設ける、階段構造22の一部の平面図である。階段マット25は、踏板3の長辺両端と蹴込み4側を少し残して貼られる。階段マット保護材21を取り付けると、蹴込み4側は隙間無く、長辺両端はわずかに踏板3が見える状態になる。蹴込み4と反対面には階段マット25の段鼻部6があり、その上に階段マット保護材21の段鼻部21Bがある。図1のものと同様に、階段保護部材21は、踏面部21A、蹴込み部21C、長さ方向両端部21D,21E等を有する。
【0041】
図4(b)は図4(a)の○印部の拡大図である。階段マット25が破線で示され、蹴込み4側の階段マット25の2本の破線の間、蹴込み4側から内側の破線までは、階段マット保護材21の嵌合凸部21Fが入る嵌合凹部26を示している。長さ方向端部付近の階段マット25と階段マット保護材21には各々固定ピンを挿入する穴26が設けられている。
【0042】
図5は階段マット保護材21の裏面を示す図である。蹴込み側には階段マット25の嵌合部26に入る嵌合突起21Fが長さ方向に伸びている。蹴込み側の反対側には段鼻部21Bがあり、階段マット保護材21の裏面は−状、┬状、+状の突起21G,21H,21Jが部分的に設けられ、階段マット25の凹凸の凹部に嵌まり、ずれや滑りを防止する様になっている。
【0043】
図6は階段マット25の表面と階段マット保護材21の裏面とが合わせられた部分の一部を拡大する断面図である。階段マット25の凹部29に階段マット保護材21の裏面の凸部21J等が嵌合し、階段マット保護材21の裏面凸部21Jと階段マット25の凹部29との間には、わずかな隙間30がある。階段マット25の凸部31には細かな凹凸32があり、階段マット保護材21の裏面、特に、凸部21J等の間の凹部と密接しているが、この凹部には、細かな凹凸は必ずしも設ける必要は無い。階段マット25は下部に粘着両面テープ8があり、踏板3に貼り付けられる様になっている。階段マット保護材21の表面は凹部33を有し、凹部33の間の凸部34には更に細かな凹凸35が形成されている。
【0044】
図7は更に他の例の階段マット保護材41及び階段構造42を示し、蹴込み44を一体化した踏板3上に、破線で示された階段マット45が取り付けられ、その上を階段マット保護材41が被覆している事を示す平面図である。図1、図4等の階段マット保護材と同様であるが、階段マット保護材41は2箇所の継目46があり、両側部分と中央部分とに3分割されている。
【0045】
図8(a)〜(c)は階段マット保護材41の3分割部材各々の裏面図である。階段マット保護部材41は2つの端部材47,48及び1つの中央部材49からなる。図8(a)及び(c)のものは、階段マット保護材41の長さ方向両端の端部材47,48であり、図8(b)のものは中央部材49である。
【0046】
階段マット保護材47,48,49は、蹴込み側と桁側の踏板に接する部分が断面略L字状に突出しており、蹴込み側では、階段マット保護材47,48,49の嵌合用突起47F、48F,49Fとなり、線状に形成されてある。桁側の突出部47D、48Eは、端部材47,48のみに設けられる。階段マット保護材47,48,49には、段鼻部47B,48B,49Bも設けられている。
【0047】
踏面部47A,48A,49Aの裏面には、各々階段マット45の凹部に嵌合される一状の突起51が部分的にあり、端部材方向からの長さ調整用重ね合せ部には突起は設けられておらず、他の階段で再利用する際、端部材47,48と中央部材49との継目部分を重ね合わせる事によっても突起による凹凸が生じない様になっている。
【実施例】
【0048】
以下、図面を参照し、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図1〜3に示す様な階段保護部材を施工する。
無機質PC板の蹴込み一体型踏板(50mm厚×255mm幅×1000mm長さ、蹴込高さ145mm)を階段桁(12mm厚)にボルト固定した階段13段に、階段マット(7mm厚×250mm幅×950mm長さ)を両面粘着テープで貼り付ける。この際、踏板長辺両側の踏板が25mmずつ露出して残り、蹴込み側の踏板が10mm露出して残る様に取り付ける。
【0049】
次に、階段マット保護材(踏面:3mm厚×265mm幅×980mm長さ、周辺部空間高さ7.5mm、短辺方向で階段マットとの隙間1mm、長辺方向で階段マットとの隙間各5mm)を階段マットの上にセットし、長辺方向両端各2カ所へ、PP(ポリプロピレン)製固定ピンを押し込み固定する。蹴込み側で、階段マット側の蹴込みと階段マットとの間の凹部に、階段マット保護材の蹴込み部として設ける凸部の線状の嵌合部を押し込んで固定する。階段マット保護材の裏面全面には、階段マット凹部に嵌合する凸部を設ける。
【0050】
施工は一人で作業し、階段保護部材の施工について総合計作業時間計り、結果を表1に示す。又、階段マット保護材の施工後、歩行昇降試験を行い、歩行感、ずれ感覚、滑り感覚、視認性、及びかけ足昇降感覚試験を行い、男女各5名ずつで評価する。又、10Lの水を散布した状態で、歩行及びかけ足での昇降感覚試験を男女各5名ずつで行う。結果を表1に併せて示す。又、階段マット保護材、及び階段マットの耐久性を見るために、金槌を階段マット保護材の3カ所/段に高さ1mから落下させた後、階段マット保護材を13段分取り外し、その合計時間を計り、結果を表1に示す。又、金槌落下部の階段マットの損傷度を点検し、結果を表1に傷数/39箇所の値で示す。同時に階段マットの汚れ度も点検する。
【0051】
(実施例2)
図4〜6に示す様な階段保護部材を施工する。
実施例1に用いる階段に取り付けたままの状態のもので、実施例1で用いる階段マットに対し、階段マット保護材(踏面4mm×265mm幅×990mm長さ、周辺部空間高さ8.5mm、短辺方向で階段マットとの隙間無し、長辺方向で階段マットとの隙間各10mm)を、階段マット保護材の長辺両端と蹴込み側の下面に両面粘着テープ貼り、固定する。この例は固定ピンや階段マット保護材側の蹴込み側側面の凸部は予め削り取って固定には用いない。
【0052】
一人作業で13段分施工し、階段マット保護材の取り付け作業時間の合計を算出し、結果を表1に示す。次に、実施例1と同様に、歩行とかけ足昇降試験を行い、歩行感、ずれ感覚、滑り感覚、視認性について、男女各5名ずつ計10人による乾燥時と濡れ時のアンケートを行い、それらの結果を表1に併せて示す。又、金槌を、階段マット保護材の上1mから落下させる。落下は3箇所/段とし、13段全部行い、落下部の階段マットの損傷度を点検し、結果を表1に傷数/39箇所で示す。同時に13段の階段マット保護材の取り外し時間を計り、結果を表1に示す。このときには、取り外し作業者以外の者が階段マットの汚れ度も点検する。
【0053】
(実施例3)
図7及び8に示す様な階段保護部材を施工する。
実施例1に用いる階段マットを再度使用し、階段マット保護材としては、実施例1に用いるのと同じものを2枚で1段分の3分割階段マット保護材を使用する。1枚の階段マット保護材の両端30cmずつ切断し、もう1枚から両端を含まない様に450mmの長さで切り、中央の階段マット保護材とする。このとき、予め、裏面の凸部は、図8に示す様に一状の凸部のみになる様に削り取る。両端の階段マット保護材を上にして、各々30mmづつ重ね合わせてガムテープで固定する。階段マット保護材は両面粘着テープで踏板に固定し、蹴込み部において階段マットと嵌合させ、両端は2カ所づつ固定ピンで固定する。
【0054】
実施例1と同様に、階段マット保護材の取付時間の合計を行い、歩行とかけ足昇降テストを行い、歩行感、ずれ感覚、滑り感覚、視認性について、男女各5名ずつの計10人のアンケートを、乾燥時と濡れた時の両方で調査する。金槌を1m高さから33箇所/段に落下させ、13段分の39箇所の損傷をチェックする。13段分の階段マット保護材を取り外し、その作業時間を計る。又、階段マットの汚れ度もチェックする。それらの結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1を参照し、実施例の結果について説明する。
実施例1は、階段マットと階段マット保護材を、蹴込み側の嵌合と両端のピン固定のみで固定する場合のものである。階段マット保護材の取り付けも容易で、27分で13段分が完了している。又、取り外しも13段分で22分であり、非常に簡単に着脱出来る事が判る。階段マット保護材の歩行やかけ足での昇降テスト及び乾燥時と濡れた時の昇降テストもほぼ良好な結果で、ずれや滑りが全く無い事が判る。金槌の落下でも、階段マット及び階段マット保護材共に、損傷は全く発生し無いし、汚れも全く無い。
【0057】
実施例2は、階段マット保護材の蹴込み側の嵌合が無い様に凸部を削り取り、固定ピンでの固定も行っていないものである。但し、階段マット保護材は、蹴込み側と両端のみを踏板と両面粘着テープのみで固定した場合のものであり、階段マット保護材の裏面の凸部は図5に示す様に多くの凸部を削り取ってある。階段マット保護材の取り付け時間は33分であり、実施例1より少し長くなったが、1段当り3分もかかっていない。取り外し時間も31分で、これも実施例1には及ば無いものの、作業性は特に問題は無いと思われる。歩行感、視認性等は特に問題は無く、乾燥と濡れた場合も差が無い。ずれ感覚、滑り感覚は、全員が無しとしており、良好である。金槌の落下でも、階段マット、階段マット保護材共に、何れの部位も損傷は発生せず、階段マットの汚れも生じ無い。
【0058】
実施例3は、階段マット保護材を3分割した場合であり、固定は、蹴込側に嵌合部、両端に固定ピン各2カ所で階段マットに固定するもので、更に、踏板にも両面粘着テープで固定し、3分割の継目2カ所はガムテープで固定しているものである。又、裏面は図8に示す様に実施例2より更に少なくなっている。階段マット保護材を13段取り付けるのに42分とやや多くかかっているが、踏板と階段マットの両方に固定し、かつ継目を処理する為であり、1段当り4分以内で処理出来ており、特に問題にならない。逆に、取り外しも36分であり、1段当りでは3分以内で、これも作業性での問題は無い事が判る。歩行感、視認性も特に問題は無く、乾燥と濡れた時の差は生じ無い。特に、ずれ感覚、滑り感覚では、全員が全条件で、無しの回答をしており、非常に良好である事が判る。金槌落下の損傷は、階段マット、階段マット保護材共に39箇所中1箇所も発生していない。
【0059】
以上の結果から分かる様に、本発明によれば、取り付け、取り外しが容易に行え、ずれ感覚、滑り感覚等の問題は全く感じず、歩行感、視認性もほぼ満足出来る階段構造が提供出来る。本発明の階段保護部材は、金槌の落下による損傷も、階段マット及び階段マット保護材共に発生させず、階段マットの汚れも発生させず、階段マット等の階段仕上材の保護材としての役目は充分果たすものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の階段保護材は、工事期間中、改装期間中等、必要に応じ、階段仕上材の汚れ、破損等を有効に防止する事が出来、着脱も比較的簡便で、昇降時の安全性にも十分に配慮出来、天候、重量、昇降回数等、様々な状況において問題なく適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の1例の階段保護部材によって得られる階段構造の一部を上から見る上面図である。
【図2】図1の階段構造をA−A線で切断して見る断面図である。
【図3】図2の階段構造の蹴込付近の拡大図である。
【図4】(a)は本発明の他の例の階段保護部材の上面図であり、(b)は(a)の○印部分の拡大図である。
【図5】図4の階段保護部材の裏面図である。
【図6】図4の階段保護部材の嵌合部分を部分的に拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の更に他の例の階段保護部材の上面図である。
【図8】(a)は図7の階段保護部材の右側部分の裏面図であり、(b)は図7の階段保護部材の中央部分の裏面図であり、(c)は図7の階段保護部材の左側部分の裏面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 階段マット保護材
1A 踏面部
1B 段鼻部
2 階段構造
3 踏板
4 蹴込み
5 階段マット
6 階段マットの段鼻部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の階段仕上材上に載置される階段保護部材であって、前記階段仕上材の上面を覆う踏面部を備えており、前記階段仕上材との間でのずれ及び滑りが防止され得るように、前記階段仕上材及び前記階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定され、前記階段仕上材の汚れ及び破損が防止される、階段保護部材。
【請求項2】
前記階段保護部材が固定部を備えており、前記階段保護部材が前記固定部によって前記階段仕上材上に固定される、請求項1記載の階段保護部材。
【請求項3】
前記階段仕上材に凹部又は凸部が設けられており、前記階段保護部材が前記階段仕上材の前記凹部又は凸部と逆形状の凸部又は凹部を有しており、前記階段仕上材と前記階段保護部材とが凹部及び凸部の少なくとも一方によって密接する、請求項1又は2記載の階段保護部材。
【請求項4】
前記階段保護部材が階段の段鼻を覆う段鼻部を備えており、前記段鼻部が前記踏面部とは異なる色の目印を有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の階段保護部材。
【請求項5】
前記踏面部及び前記段鼻部の少なくとも1方の表面に、溝部、凹凸部、及び凸部表面の微細な凹凸部からなる群より選ばれる滑り止め加工が施されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の階段保護部材。
【請求項6】
階段上で用いる階段仕上材と階段保護部材との組合せであって、前記階段保護部材が前記階段仕上材の上面を覆う踏面部を備えており、前記階段保護部材が、前記階段仕上材との間でのずれ及び滑りが防止され得るように、前記階段仕上材及び前記階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定され、前記階段仕上材の汚れ及び破損が防止される、階段仕上材と階段保護部材との組合せ。
【請求項7】
階段と、前記階段の踏板上の階段仕上材とを備える階段構造であって、前記階段仕上材上に階段保護部材が載置されており、前記階段保護部材が前記階段仕上材の上面を覆う踏面部を備えており、前記階段保護部材が、前記階段仕上材及び前記階段の踏板のいずれか1方又は双方に着脱可能に固定されており、前記階段仕上材と前記階段保護部材との間でのずれ及び滑りが防止されており、前記階段仕上材の汚れ及び破損が防止されている、階段構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−132162(P2007−132162A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328636(P2005−328636)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)