説明

階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置

【課題】階段に据え付けるスペースを縮小化する要請に応えることができる階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置を提供する。
【解決手段】上位側ガイドレール30と下位側ガイドレール20との間に、上位側ガイドレールの内部空間S1で第1の回転支点軸34を介して一端側が上下方向へ回転可能に連結され、下位側ガイドレールの内部空間S2で第2の回転支点軸38を介して他端側が上下方向へ回転可能に連結されて、第1の回転支点軸を中心として、上位側ガイドレールの延長方向となる倒伏位置と、上位側ガイドレールの上面を越えて他端側が突出する起立位置との間で回転可能な回転リンクRを設け、回転リンクと第1の回転支点軸及び/又は第2の回転支点軸との連結部分に、下位側ガイドレールを下位側ガイドレールの延長方向における下方側へスライドさせて上位側ガイドレールから離間させるスライド機構Hを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、階段昇降用のガイドレールにおいて、下端部分である下位側ガイドレールを、その上位側となる上位側ガイドレールの上側に折り畳むための折り畳み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、体の不自由な人や老人を乗せて昇降する階段昇降機を階段の傾斜に沿って昇降させるガイドレールに関し、該ガイドレールを下部付近で上位側ガイドレールと下位側ガイドレールとに分離して、下位側ガイドレールを上方へ回動させて折り畳み可能な折り畳み式のガイドレールが開示されている。
【0003】
特許文献1の折り畳み式のガイドレールでは、支点軸によって、上位側ガイドレールの下端部に固着された支点板と下位側ガイドレールの上端部に固着された支点板とを回動自在に連結している。階段昇降機を使用しないときは、下位側ガイドレールが通路に延びて通路を通行する人の邪魔になることを防止するため、支点軸によって下位側ガイドレールを回動させて上位側ガイドレールの上に折り畳むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の折り畳み式のガイドレールでは、上記の支持板や支点軸を含む回動連結装置が、上位側ガイドレールの側面や下位側ガイドレールの側面からそれぞれ突き出して設けられていた。
【0006】
したがって、階段昇降機のガイドレールを階段に据え付けるためには、上位側及び下位側の各ガイドレールの幅寸法に加えて、各ガイドレールから回動連結装置が突き出す寸法も確保しなければならなかった。一方、近年は、階段昇降機のガイドレールを階段に据え付けた状態で階段の通行幅をより広げるために、該ガイドレールを階段に据え付けるスペースを縮小化することが望まれている。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、階段に据え付けるスペースを縮小化する要請に応えることができる階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置は、階段昇降用のガイドレールにおいて、下端部分である下位側ガイドレールを、その上位側となる上位側ガイドレールの上側に折り畳むための折り畳み装置であって、前記上位側ガイドレールと前記下位側ガイドレールとの間に、前記上位側ガイドレールの内部空間で第1の回転支点軸を介して一端側が上下方向へ回転可能に連結されると共に、前記下位側ガイドレールの内部空間で第2の回転支点軸を介して他端側が前記上下方向へ回転可能に連結されて、前記第1の回転支点軸を中心として、前記上位側ガイドレールの延長方向となる倒伏位置と、前記上位側ガイドレールの上面を越えて前記他端側が突出する起立位置との間で回転可能な回転リンクを設ける一方、前記回転リンクと前記第1の回転支点軸及び/又は前記第2の回転支点軸との連結部分に、前記下位側ガイドレールを該下位側ガイドレールの延長方向における下方側へスライドさせて前記上位側ガイドレールから離間させるスライド機構を設けて、前記スライド機構によって前記上位側ガイドレールから前記下位側ガイドレールを離間させた後、該下位側ガイドレールを上方へ跳ね上げて前記回転リンクを前記起立位置へ回転させることで、前記下位側ガイドレールを前記上位側ガイドレールの上側に折り畳み可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記回転リンクを、前記上位側ガイドレールと前記下位側ガイドレールとが延長状となる状態で両端部が上向きとなる略U字状としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記スライド機構は、前記略U字状とした前記回転リンクの一端側もしくは前記他端側のいずれかに貫設されて、前記第1の回転支点軸もしくは前記第2の回転支点軸を係止して前記下方側へ案内する長孔を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、前記上位側ガイドレールの内部空間に固定されて前記第1の回転支点軸を介して前記回転リンクの一端側を連結する回転リンク保持部材と、前記下位側ガイドレールの内部空間に固定され、前記第2の回転支点軸が軸支されて前記第1の回転支点軸もしくは前記第2の回転支点軸が前記長孔に案内されることにより前記下方側へ移動可能なスライド部材と、前記下位側ガイドレールを前記上位側ガイドレールに接続する接続位置で前記スライド部材を前記回転リンク保持部材に係止可能な係止機構と、を備え、前記係止機構は、前記回転リンク保持部材に向けて前記スライド部材に突設された第1係止突起と、前記回転リンク保持部材に設けられて前記第1係止突起が係入可能な係止孔と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4において、前記下位側ガイドレールの側面に第2係止突起を形成すると共に、該下位側ガイドレールの幅方向を横断して貫通する貫通孔を形成し、前記階段側に、前記下位側ガイドレールを、前記接続位置で該下位側ガイドレールの延長方向に保持する下位側ガイドレール保持部材を備え、前記下位側ガイドレール保持部材には、前記第2係止突起を係止させる係止部を形成すると共に、前記貫通孔に連通し前記下位側ガイドレールと前記下位側ガイドレール保持部材とを連結する連結ピンを着脱自在に挿通させる連結ピン挿通孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置によれば、下位側ガイドレールを上位側ガイドレールから離間させた上で該上位側ガイドレールの上側に折り畳むための装置が、上位側及び下位側のガイドレールの側面から突き出すことがない。これにより、階段昇降機用のガイドレールを階段に据え付ける際に、前記上位側及び下位側ガイドレールを配置するスペースと別個に下位側ガイドレールを折り畳むための装置を配置するスペースが不要となる。よって、折り畳み可能な階段昇降機用ガイドレールを階段に据え付けるスペースを縮小化する要請に応えることができる。
請求項2の発明によれば、回転リンクを前記起立位置に配置した際には、前記他端側を上位側ガイドレールの延長方向と平行な方向へ配置させることが可能になる。これにより、前記他端側に連結された第2の回転支点軸を中心として、下位側ガイドレールを、前記他端側の配置方向(上位側ガイドレールの延長方向)に沿って、上位側ガイドレールの上側に折り畳み易くすることができる。
請求項3の発明によれば、回転リンクの一端側もしくは他端側のいずれかに貫設された長孔によって、第1の回転支点軸もしくは第2の回転支点軸を前記下方側へ案内させることに伴って、前記回転リンクにより上位側ガイドレールと下位側ガイドレールとが連結された状態で、前記第1もしくは前記第2の回転支点軸の前記下方側への移動量に応じて、上位側ガイドレールから下位側ガイドレールを離間させることができる。
請求項4の発明によれば、前記接続位置では、係止孔に第1係止突起が係止されることにより、前記下位側ガイドレールと前記上位側ガイドレールとを心合わせする位置決めが可能になる。これにより、前記接続位置では、下位側ガイドレールと上位側ガイドレールとの突き合わせ面において、下位側ガイドレールと上位側ガイドレールとの間に、上下方向のずれや左右方向のずれが生じることを防止できる。
請求項5の発明によれば、係止部に第2係止突起を係止させると共に、連結ピンにより、下位側ガイドレールを下位側ガイドレール保持部材に連結することによって、下位側ガイドレールを、前記接続位置で下位側ガイドレール保持部材に固定することができれば、下位側ガイドレールが該下位側ガイドレールの延長方向における下方側へスライドすることを防止できる。これにより、下位側ガイドレールが、前記下方側へ落下する事故を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の階段昇降機の要部斜視図である。
【図2】同階段昇降機のガイドレールを構成する下位側ガイドレール及び上位側ガイドレールの内部構造の第1説明図である。
【図3】同内部構造の第2説明図である。
【図4】スライド機構の概略斜視図である。
【図5】同スライド機構においてスライド部材が回転リンク保持部材から離れた状態を示す図である。
【図6】下位側ガイドレール保持部材の概略斜視図である。
【図7】上位側ガイドレールから下位側ガイドレールを離間させた状態を示す図である。
【図8】第1及び第2回転支点軸を回転中心として回転リンク及びスライド部材が回転した状態を示す図である。
【図9】下位側ガイドレールが上位側ガイドレールの上側に折り畳まれた状態の要部側面図である。
【図10】下位側ガイドレールが上位側ガイドレールの上側に折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、図1ないし図10を参照しつつ説明する。図1に示す階段昇降機1では、階段2の右側部に、階段2の傾斜に沿った長手方向へガイドレール10が設けられている。ガイドレール10によって、いす形の昇降機3が前記長手方向に案内されて昇降動する。
【0016】
ガイドレール10は、図1及び図2に示すように、下位側ガイドレール20と、上位側ガイドレール30とによって構成されている。下位側ガイドレール20は、上記の長手方向における下方側(ガイドレール10の下端部分)に位置し、上位側ガイドレール30は、下位側ガイドレール20に隣接して前記長手方向における上位側に位置する。なお、階段2の傾斜に沿った長手方向は、本発明の上位側ガイドレールの延長方向及び下位側ガイドレールの延長方向の一例である。
【0017】
図1の状態では、上位側ガイドレール30から下位側ガイドレール20が離間せず、下位側ガイドレール20が上位側ガイドレール30に接続されている。図1の状態では、下位側ガイドレール20の下方端部が、階段2よりも下方の通路の床面Fから浮いている。このとき、後述するように、下位側ガイドレール20は、下位側ガイドレール保持部材40に固定されている。
【0018】
図2及び図3には、各ガイドレール20、30の概略内部構造を示した。図示するように、上位側ガイドレール30の内部空間S1には、回転リンク保持部材31が固定されている。図3及び図4に示すように、回転リンク保持部材31の側面には、ブラケット32がネジ止めされている。ここでは、ブラケット32のネジ孔を、回転リンク保持部材31のネジ孔及び内部空間S1に立設された縦壁K1に設けたネジ孔に連通させる。続いて、該連通させたネジ孔に、ネジ33、33を取り付ける。これにより、回転リンク保持部材31が、ブラケット32を介し、内部空間S1の縦壁K1に固定される。
【0019】
図3及び図4に示すように、回転リンク保持部材31には、第1回転支点軸34によって、略U字形状に成形された回転リンクRの一端側(前記長手方向における上位側)が軸支されている。回転リンクRの一端側は、上位側ガイドレール30と下位側ガイドレール20とが延長状となる状態で、上向きとなるように成形されている。後述するように、上位側ガイドレール30から下位側ガイドレール20を離間させたときは、回転リンクRは、その一端側が第1回転支点軸34によって回転リンク保持部材31に支えられながら上下方向へ回転可能となる。
【0020】
図2及び図3に示すように、下位側ガイドレール20の内部空間S2には、スライド部材35が収容されている。スライド部材35の側面には、ブラケット36がネジ止めされている。内部空間S2には、上記の内部空間S1と同様に、縦壁K2が立設されている。ここでは、ブラケット36のネジ孔を、スライド部材35のネジ孔及び内部空間S2に立設された縦壁K2のネジ孔に連通させる。続いて、該連通させたネジ孔に、ネジ37、37を取り付ける。これにより、スライド部材35が、ブラケット36を介し、内部空間S2の縦壁K2に固定される。
【0021】
図3及び図4に示すように、回転リンクRの他端側には、長孔Hが貫設されている。長孔Hは、前記長手方向へ長い形状となるように前記他端側に形成されている。回転リンクRの他端側は、回転リンクRの一端側と同様に、上向きとなるように成形されている。スライド部材35には、第2回転支点軸38によって、上記の回転リンクRの他端側(前記長手方向における下方側)が軸支されている。回転リンクRは、前記一端側が回転リンク保持部材31に軸支され前記他端側がスライド部材35に軸支されることにより、上位側ガイドレール30と下位側ガイドレール20との間に連結される。第2回転支点軸38は、前記長孔H内に遊嵌され、該長孔Hに沿って、前記長手方向の下方側へスライド可能である。このため、第2回転支点軸38が軸支されたスライド部材35や該スライド部材35が固定された下位側ガイドレール20も、前記下方側へスライド可能となる。なお、長孔Hは、本発明のスライド機構の一例である。
【0022】
図5に示すように、スライド部材35の端面には、複数(ここでは3つ)の第1係止突起39Aが形成されている。第1係止突起39Aは、円柱形状を有し、スライド部材35の上下方向に並んで、該スライド部材35の端面から回転リンク保持部材31に向けて突出している。
【0023】
また、回転リンク保持部材31には、上記の第1係止突起39Aと対向する位置に、複数(ここでは3つ)の係止孔39Bが形成されている。各係止孔39Bには、これらに対向する第1係止突起39Aが収容可能である。本実施形態では、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30から離間させずに該上位側ガイドレール30と接続した位置(以下、接続位置という。)で、各係止孔39Bの内壁に、第1係止突起39Aが係止される。これにより、接続位置では、スライド部材35の端面が回転リンク保持部材31の端面と平行になるように、スライド部材35が回転リンク保持部材31に係止可能となる。なお、第1係止突起39A及び係止孔39Bは、本発明の係止機構の一例である。
【0024】
図2及び図6に示すように、下位側ガイドレール20の右側の外側面には、第2係止突起21が突設されている。図6には、下位側ガイドレール20の右側側部の一部のみを図示し、その他の部分の図示を省略した。第2係止突起21は、円柱形状を有し、後述するように、下位側ガイドレール保持部材40の係止凹部47B(図6参照。)に係止可能である。
【0025】
加えて、下位側ガイドレール20の左右の外側面には、一対の開口部22、22(図6参照。)が形成されている。一対の開口部22は、上記の内部空間S2(図2及び図3参照。)と連通する。一対の開口部22及び内部空間S2によって、下位側ガイドレール20の幅方向を横断して貫通する貫通孔が形成される。後述するように、接続位置では、一対の開口部22、22に、連結ピン50(図6参照。)が挿通される。
【0026】
さらに、図2に示すように、下位側ガイドレール20の下端部の右側の外側面には、操作レバー23が、前記外側面から斜め上方に向けて延設されている。後述するように、下位側ガイドレール20を、上位側ガイドレール30の上側に向けて回転させる際に、操作者によって、操作レバー23が引き上げられる。
【0027】
図6に示す下位側ガイドレール保持部材40は、接続位置で、上記の階段2の傾斜に沿った長手方向へ、下位側ガイドレール20を固定するために用いられる。図1に示すように、下位側ガイドレール保持部材40は、階段2の踏板上の側部に固定されている。図6に示すように、下位側ガイドレール保持部材40は、固定ブラケット41と、レール支持ブラケット取付部材42(42A、42B)と、レール支持ブラケット43とを備えている。
【0028】
固定ブラケット41には、複数のアンカーボルト取付孔41Aが貫設されている。各アンカーボルト取付孔41Aに、アンカーボルト(図示せず。)を取り付けることにより、固定ブラケット41は前記踏板上に固定される。
【0029】
レール支持ブラケット取付部材42A、42Bは、上記の長手方向に所定の対向間隔を置いて、段違いになるように、固定ブラケット41に立設されている。レール支持ブラケット取付部材42A、42Bの段違い寸法は、階段2の傾斜に合わせて設定されている。
【0030】
レール支持ブラケット43は、固定ボルト取付孔44と、調整長孔45と、係合溝47と、連結ピン挿通孔48と、下位側ガイドレール支持延設部49とを備えている。固定ボルト取付孔44は、レール支持ブラケット43の他端側に形成され、調整長孔45は、レール支持ブラケット43の一端側に形成されている。
【0031】
図6に示すように、固定ボルト取付孔44を介し、ナットによって、ボルト44Aがレール支持ブラケット取付部材42Aに締着されることにより、レール支持ブラケット43の他端側がレール支持ブラケット取付部材42Aに固定される。加えて、調整長孔45に沿ってボルト45Aを移動させ、ナットによって、ボルト45Aを調整長孔45に引っ掛ける位置を調整して、該ボルト45Aをレール支持ブラケット取付部材42Bに締着することで、レール支持ブラケット43の一端側がレール支持ブラケット取付部材42Bに固定される。その結果として、レール支持ブラケット43が、階段2の傾斜角度に合わせた傾斜角度で、両レール支持ブラケット取付部材42A、42Bに据え付けられる。
【0032】
係合溝47は、第2係止突起摺動面47Aと、係止凹部47Bとを有する。第2係止突起摺動面47Aは、レール支持ブラケット43の側面の上端部に、上記の長手方向に平行となるように、該長手方向の上位側へ向けて延設されている。係止凹部47Bは、その断面がU字形状であって、第2係止突起摺動面47Aの先端部に設けられている。上述した接続位置で、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30に接続するときは、第2係止突起摺動面47Aによって、上記の第2係止突起21が、前記上位側へ摺動可能に案内された後に、接続位置で、係止凹部47Bに係止可能となる。なお、係止凹部47Bは本発明の係止部の一例である。
【0033】
連結ピン挿通孔48、48は、レール支持ブラケット43の左右の側面の上方中央付近に形成されている。一対の連結ピン挿通孔48、48は、下位側ガイドレール支持延設部49(図6参照。)にそれぞれ連通する。下位側ガイドレール支持延設部49内には、上記の下位側ガイドレール20が収容される。接続位置では、下位側ガイドレール20の開口部22、22を、連結ピン挿通孔48、48に対向するように位置決めでき、連結ピン挿通孔48、48が開口部22、22と連通する。
【0034】
連結ピン挿通孔48、48が開口部22、22と連通した状態で、連結ピン挿通孔48、48(開口部22、22)に連結ピン50を挿通させると、下位側ガイドレール20は、連結ピン50を介してレール支持ブラケット43に連結される。連結ピン50の先端部には、ロールピン(図示せず。)によって、図6に示すハンドル51が、該連結ピン50と一体になるように軸支されている。ハンドル51は、ロールピンを支点として、レール支持ブラケット43の側面と平行になるように折り畳み可能とされている。
【0035】
連結ピン挿通孔48、48(開口部22、22)に連結ピン50を挿通させた後には、ハンドル51を、レール支持ブラケット43の側面と平行になるように折り畳む。これにより、連結ピン挿通孔48、48(開口部22、22)に連結ピン50が挿通された状態が保持されて、下位側ガイドレール20が、連結ピン50を介してレール支持ブラケット43に固定される。
【0036】
次に、図4ないし図10を用い、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30の上側に折り畳む動作を説明する。下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30の上側に折り畳む前に、階段昇降機1の操作者は、下位側ガイドレール20の折り畳み動作に支障がない位置に、上記の昇降機3(図1参照。)を移動させる。
【0037】
上記の接続位置では、上述しかつ図4に示したように、スライド部材35の端面が回転リンク保持部材31の端面と平行になるように、スライド部材35が回転リンク保持部材31に係止されている。これにより、スライド部材35が固定された下位側ガイドレール20と、回転リンク保持部材31が固定された上位側ガイドレール30とを心合わせして接続する位置決めがされている。
【0038】
加えて、上記の接続位置では、図6に示すように、下位側ガイドレール20の第2係止突起21が係止凹部47Bに係止すると共に、連結ピン50を介して、下位側ガイドレール20が、レール支持ブラケット43に固定される。これにより、下位側ガイドレール20が、前記長手方向における下方側へスライドすることが防止されている。
【0039】
操作者は、上記のように昇降機3を移動させた後に、接続位置で、上記のロールピンを支点として、ハンドル51を、連結ピン50の延長方向と平行になる位置へ復帰するように移動させる。その後、操作者は、ハンドル51を手で持って、図6に示した連結ピン挿通孔48、48及び開口部22、22から、連結ピン50を抜き取る。
【0040】
続いて、操作者は、手で上記の操作レバー23を持って、下位側ガイドレール20を前記下方側へ引き下げると、第2係止突起21が、係止凹部47Bとの係止を解除して第2係止突起摺動面47Aを前記下方側へ摺動する。その際には、図5に示すように、係止孔39Bに対する第1係止突起39Aの係止状態が解除され、スライド部材35が、回転リンク保持部材31から離れる。このとき、スライド部材35に軸支された第2回転支点軸38が、長孔Hに沿って前記下方側へ案内される。操作者は、第2回転支点軸38の外周面が長孔Hの終端に接するまで、該下位側ガイドレール20を、前記下方側へ引き下げる。このようにして、図7に示すように、上位側ガイドレール30から下位側ガイドレール20が離間する。なお、図7では、下位側ガイドレール保持部材40の図示を省略した。
【0041】
その後、操作者は、手で操作レバー23を持って、下位側ガイドレール20を、上位側ガイドレール30に向けて該下位側ガイドレール20の上方へ跳ね上げる。その際には、回転リンクRが、第1回転支点軸34を回転中心として回転リンク保持部材31に支えられながら、上位側ガイドレール30の長手方向となる倒伏位置から、図8に示すように、該回転リンク保持部材31と略直角になる位置まで、下位側ガイドレール20の上方向へ回転可能となる。このため、回転リンクRの他端側が軸支されたスライド部材35も、回転リンクRの他端側が前記上方向へ回転することにより、前記略直角になる位置まで移動する。これに伴って、スライド部材35が固定された下位側ガイドレール20が、上位側ガイドレール30と略直交する位置(以下、略直交位置という。)に起立可能になる。略直交位置では、回転リンクRの他端側が、上位側ガイドレール30の上面を越えて該上面から突出している。なお、図8では、第1係止突起39A及び係止孔39Bの図示を省略した。本実施形態の略直交位置は、本発明の起立位置の一例である。
【0042】
さらに、操作者が、手で操作レバー23を持って、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30に引き付ける際には、回転リンクRの他端側が、前記上位側ガイドレール30の長手方向と平行な方向に配置されている。このような状態から、操作者が、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30に引き付けると、スライド部材35が、第2回転支点軸38を回転中心として回転リンクRに支えられながら、図8及び図9に示すように、回転リンク保持部材31に向けて略直角(約90度)回転可能となり、回転リンク保持部材31及び回転リンクRの他端側と略平行になる位置に配置される。これに伴って、図9及び図10に示すように、スライド部材35が固定された下位側ガイドレール20も、前記略直交位置から、該下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30の上側に折り畳む位置(以下、折り畳み位置という。)に向けて回転する。その結果として、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30の上側に折り畳むことができる。
【0043】
折り畳み位置では、上位側ガイドレール30に取り付けられたバンド60(図9参照。)を、各ガイドレール30、20を跨いで各ガイドレール30、20の外周に巻き付ける。その後に、バンド60の端末部を、下位側ガイドレール20に取り付けられたバンド連結部61に嵌着させる。これにより、折り畳み位置で、上位側ガイドレール30に下位側ガイドレール20を固定できる。
【0044】
<本実施形態の効果>
本実施形態の階段昇降機1では、上記の長孔Hが、下位側ガイドレール20の内部空間S2に収容された回転リンクRの他端側に設けられている。階段昇降機1では、長孔Hを用い、上位側ガイドレール30から下位側ガイドレール20を離間させた上で、該上位側ガイドレール30の内部空間S1に位置する第1回転支点軸34を回転中心として、上述したように、下位側ガイドレール20を、上記の略直交位置に起立させることができる。
その後に、前記スライド部材35に軸支された第2回転支点軸38を回転中心として、上述したように、下位側ガイドレール20を、略直交位置から上位側ガイドレール30の上側に折り畳むことができる。
このため、下位側ガイドレール20を上位側ガイドレール30から離間させた上で該上位側ガイドレール30の上側に折り畳むための装置(各回転支点軸34、38、回転リンクR、長孔H、スライド部材35)が、各ガイドレール20、30の側面から突き出すことがない。
これにより、各ガイドレール20、30を階段2の傾斜に沿って設ける際に、各ガイドレール20、30を配置するスペースとは別個に下位側ガイドレール20を折り畳むための装置を配置するスペースが不要となる。よって、折り畳み可能なガイドレール10(各ガイドレール20、30)を階段2に設けるスペースを縮小化する要請に応えることができる。
【0045】
また、上述したように、スライド部材35に軸支された第2回転支点軸38が、長孔Hに沿って前記長手方向における下方側へ案内されることにより、第2回転支点軸38の外周面が長孔Hの終端に接するまで、下位側ガイドレール20を前記下方側へスライド可能となる。このため、回転リンクRにより上位側ガイドレール20と下位側ガイドレール30とが連結された状態で、第2回転支点軸の下方側へのスライド距離に応じて、上位側ガイドレール30から下位側ガイドレール20を離間させることができる。
【0046】
さらに、上述したように、回転リンクRを略直交位置に起立させた際には、前記他端側を上位側ガイドレール30の長手方向と平行な方向に配置させることが可能になる。これにより、前記他端側にスライド部材35を軸支する第2回転支点軸38を回転中心として、スライド部材35(下位側ガイドレール20)を、前記他端側の配置方向(上位側ガイドレール30の長手方向)に沿って、上位側ガイドレール30の上側に折り畳み易くすることができる。
【0047】
加えて、上述し図6に示したように、接続位置では、下位側ガイドレール20が、レール支持ブラケット43に固定され、前記下位側へスライドすることが防止されている。このため、下位側ガイドレール20が、接続位置から前記下方側へ落下する事故を防止できる。
【0048】
さらに加えて、接続位置では、上述の如く、下位側ガイドレール20と上位側ガイドレール30とを心合わせして接続する位置決めがされている。これにより、接続位置では、下位側ガイドレール20と上位側ガイドレール30との突き合わせ面において、下位側ガイドレール20と上位側ガイドレール30との間に、上下方向のずれや左右方向のずれが生じることを防止できる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができる。上述した実施形態では、ガイドレール10を階段2の右側部に設けたが、これに代えて、ガイドレール10を階段2の左側部に設けた上で、該ガイドレール10によって、昇降機3を昇降動させるようにしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、回転リンクRの他端側に長孔Hが貫設されているが、これに代えて、回転リンクRの一端側に長孔を貫設した上で、該長孔Hに沿って上記の下方側へ第1回転支点軸34をスライド可能にすると共に、第2回転支点軸38によって、回転リンクRの他端側をスライド部材35に軸支してもよい。これにより、前記下方側へ第1回転支点軸34をスライドさせることに伴って、スライド部材35を前記下方側へスライドさせることができる。
【0051】
さらに、上述した実施形態では、回転リンクRを略U字形状に成形したが、これに代えて、回転リンクRの形状として、例えば、側面視で長方形等のような各ガイドレール20、30内に収容可能な適宜の形状を採用してもよい。
【0052】
加えて、上述した実施形態では、第2係止突起21や第1係止突起39Aの形状として、円柱形状を採用したが、これに代えて、例えば角柱形状等を採用し、第2係止突起21を係止凹部47Bに係止させたり、第1係止突起39Aを係止孔39Bに係止させてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・階段昇降機、2・・階段、3・・昇降機、10・・ガイドレール、20・・下位側ガイドレール、21・・第2係止突起、30・・上位側ガイドレール、34・・第1回転支点軸、35・・スライド部材、38・・第2回転支点軸、39A・・第1係止突起、39B・・係止孔、40・・下位側ガイドレール保持部材、47・・係合溝、47B・・係止凹部、48・・連結ピン挿通孔、50・・連結ピン、H・・長孔、R・・回転リンク、S1・・上位側ガイドレールの内部空間、S2・・下位側ガイドレールの内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段昇降用のガイドレールにおいて、下端部分である下位側ガイドレールを、その上位側となる上位側ガイドレールの上側に折り畳むための折り畳み装置であって、
前記上位側ガイドレールと前記下位側ガイドレールとの間に、前記上位側ガイドレールの内部空間で第1の回転支点軸を介して一端側が上下方向へ回転可能に連結されると共に、前記下位側ガイドレールの内部空間で第2の回転支点軸を介して他端側が前記上下方向へ回転可能に連結されて、前記第1の回転支点軸を中心として、前記上位側ガイドレールの延長方向となる倒伏位置と、前記上位側ガイドレールの上面を越えて前記他端側が突出する起立位置との間で回転可能な回転リンクを設ける一方、
前記回転リンクと前記第1の回転支点軸及び/又は前記第2の回転支点軸との連結部分に、前記下位側ガイドレールを該下位側ガイドレールの延長方向における下方側へスライドさせて前記上位側ガイドレールから離間させるスライド機構を設けて、
前記スライド機構によって前記上位側ガイドレールから前記下位側ガイドレールを離間させた後、該下位側ガイドレールを上方へ跳ね上げて前記回転リンクを前記起立位置へ回転させることで、前記下位側ガイドレールを前記上位側ガイドレールの上側に折り畳み可能としたことを特徴とする階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置。
【請求項2】
前記回転リンクを、前記上位側ガイドレールと前記下位側ガイドレールとが延長状となる状態で両端部が上向きとなる略U字状としたことを特徴とする請求項1に記載の階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置。
【請求項3】
前記スライド機構は、
前記略U字状とした前記回転リンクの一端側もしくは前記他端側のいずれかに貫設されて、前記第1の回転支点軸もしくは前記第2の回転支点軸を係止して前記下方側へ案内する長孔を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置。
【請求項4】
前記上位側ガイドレールの内部空間に固定されて前記第1の回転支点軸を介して前記回転リンクの一端側を連結する回転リンク保持部材と、
前記下位側ガイドレールの内部空間に固定され、前記第2の回転支点軸が軸支されて前記第1の回転支点軸もしくは前記第2の回転支点軸が前記長孔に案内されることにより前記下方側へ移動可能なスライド部材と、
前記下位側ガイドレールを前記上位側ガイドレールに接続する接続位置で前記スライド部材を前記回転リンク保持部材に係止可能な係止機構と、を備え、
前記係止機構は、
前記回転リンク保持部材に向けて前記スライド部材に突設された第1係止突起と、
前記回転リンク保持部材に設けられて前記第1係止突起が係入可能な係止孔と、を有することを特徴とする請求項3に記載の階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置。
【請求項5】
前記下位側ガイドレールの側面に第2係止突起を形成すると共に、該下位側ガイドレールの幅方向を横断して貫通する貫通孔を形成し、
前記階段側に、前記下位側ガイドレールを、前記接続位置で該下位側ガイドレールの延長方向に保持する下位側ガイドレール保持部材を備え、
前記下位側ガイドレール保持部材には、前記第2係止突起を係止させる係止部を形成すると共に、前記貫通孔に連通し前記下位側ガイドレールと前記下位側ガイドレール保持部材とを連結する連結ピンを着脱自在に挿通させる連結ピン挿通孔を形成したことを特徴とする請求項4に記載の階段昇降機用ガイドレールの折り畳み装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−131990(P2011−131990A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292880(P2009−292880)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)
【Fターム(参考)】