説明

階段昇降機

【課題】壁側及び通路側に配置された対となるガイドローラ及びサイドローラが、それぞれ同じ高さに配置されると、昇降体フレームの上階側先端が階段1段目にかかる割合が多くなる。
【解決手段】上階側及び下階側の通路側ガイドローラ16b,17bを、上階側及び下階側の壁側ガイドローラ16a,17aに対して、それぞれ上方に配置し、かつ3個のサイドローラ18a,19a,19bを、上階側における壁側に1個、下階側において壁側及び通路側に各一個配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の傾斜に沿って昇降する階段昇降機に係り、詳しくは、集合住宅や個人住宅のような狭い階段に用いる階段昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障害者や高齢者等、歩行の困難な人々が着座する椅子を備えた昇降体をガイドレールに沿って昇降する階段昇降機があり、該階段昇降機は、ガイドレールに案内されるガイドローラが幅方向(壁側および通路側)同じ高さに配置されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記階段昇降機として、図10ないし図13に示すものが知られており、該階段昇降機101は、図10及び図11に示すように、階段Sに沿って設置されたガイドレール102と、座面等からなる椅子部110が取付けられた昇降体103と、を備える。昇降体103は、ガイドローラ部111及びモータ等からなる駆動部112を有し、該駆動部112によって駆動されるピニオン(又はスプロケット)がガイドレール102に施設されるラック(又はラック用ローラチェーン)と噛合して、ガイドレール102に沿って昇降するようになっている。
【0004】
上記昇降体103は、図12に示すように、同形状の板状部材からなる壁側フレーム板115a及び通路側フレーム板115bを有するフレーム115を備え、壁側フレーム板115a及び通路側フレーム板115bの下部に、上階側並びに下階側ガイドローラ対116,117及び上階側並びに下階側サイドローラ対118,119からなるガイドローラ部111が配置されている。上記上階側及び下階側の各ガイドローラ対116,117及びサイドローラ対118,119は、互いに対となるガイドローラ116a,116b及び117a,117b、並びにサイドローラ118a,118b及び119a,119bが同じ高さに配置されると共に、壁側フレーム板115a及び通路側フレーム板115bの内側に回転自在に支持されている。壁側フレーム板115a及び通路側フレーム板115bの上階側には、上階側への移送の際に障害物を検出する略々矩形状の障害物検出板125が取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−127201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の階段昇降機101は、上階側並びに下階側ガイドローラ対116,117及び上階側並びに下階側サイドローラ対118,119のそれぞれ対となるローラが、同じ高さに配置されているため、壁側フレーム板115aと通路側フレーム板115bが同形状となっており、フレーム115が、高さ方向に亘って同じ幅からなる正面視矩形状に構成されている。
【0007】
このため、図13に示すように、通路側フレーム板115bを有するフレーム115が、階段1段目S1の上方にかかる(側面視でオーバラップ)割合が多くなり、通路側フレーム板115b及び障害物検出板125が階段通路にかかりやすい構造となっている。この場合、階段昇降機101が下階側で待機している状態にあって、昇降体103の一部が階段通路となる階段1段目S1に重なることになり、階段通路面積が狭くなってしまう。特に火災等の非常時に際して、昇降体103が階段の通行の妨げとなり、安全上の問題となる虞がある。
【0008】
図10に示すように、昇降体103が下階待機時において、フレーム115が階段1段目S1にかかると、建築基準法上、有効階段幅Lは、階段Sの階段幅Fから昇降体103のフレーム幅分減算されることとなり、有効階段幅Lが75cm以上でないと階段昇降機101は設置することができない(建築基準法施行令23条1及び3参照)。このため、従来の階段昇降機は、建築基準法上、それを設置し得る階段の割合が少なく、階段昇降機の適用範囲が限られている。
【0009】
なお、上記建築基準法により、10cm以下の手すり等(ガイドレール、フレームも含む)は有効階段幅から減算されないが、一般にフレームは10cm以上である。
【0010】
そこで、本発明は、通路側フレームの上階側下部を削減することで昇降体が階段1段目にかからないようにして、もって上述課題を解決した階段昇降機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、階段(S)の傾斜に沿って施設されるガイドレール(2)と、前記ガイドレール(2)に案内されるガイドローラ部(11)及び駆動部(12)を有する昇降体(3)と、を備え、前記昇降体(3)を前記ガイドレール(2)に沿って移送する、階段昇降機(1)において、
前記ガイドローラ部(11)は、前記昇降体(3)の階段上階側に配置される上階側ローラ対(16)と階段下階側に配置される下階側ローラ対(17)とを有し、
前記上階側及び下階側ローラ対(16,17)は、それぞれ、回転軸(C)を移送方向の垂直面に直交する方向にして、前記昇降体(3)のフレーム(15)に回転自在に支持され、かつ前記回転軸(C)の軸方向に所定間隔隔てて配置される1対のガイドローラからなり、
前記1対のガイドローラは、通路側に位置するガイドローラ(16b,17b)が壁側に位置するガイドローラ(16a,17a)に対して所定量(A)上方に配置されて、前記通路側及び壁側のガイドローラ(16b,17b,16a,17a)が、それぞれ、前記ガイドレール(2)の高さの異なる位置に配置されたガイド面(22,23)に案内される、
ことを特徴とする階段昇降機にある。
【0012】
例えば図4を参照して、前記ガイドローラ部(11)は、それぞれ、回転軸(D)を移送方向の水平面に直交する方向にして、前記フレーム(15)に回転自在に支持される3個のサイドローラ(18a,19a,19b)を有し、
前記3個のサイドローラ(18a,19a,19b)は、上階側における壁側に1個(18a)、下階側において壁側及び通路側に各1個(19a,19b)が配置されてなる。
【0013】
例えば図6を参照して、前記フレーム(15)の上階側に、前記昇降体(3)の上階側への移送に際して障害物を検出する障害物検出手段(25)を設け、
前記障害物検出手段(25)は、前記障害物を検出して移動する際の移動部分(B)が、側面視において、前記上階側ローラ対(16)の壁側ガイドローラ(16a)とオーバラップするように配置されてなる。
【0014】
例えば図9を参照して、前記障害物検出手段(25)は、それぞれ上部を支点として前記フレーム(15)に回動自在に支持された上側障害物検出板(25a)と下側障害物検出板(25b)とを有し、
前記下側障害物検出板(25b)の下部分が、側面視において、前記上階側ローラ対(16)の壁側ガイドローラ(16a)とオーバラップするように配置されてなる。
【0015】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明によると、上階側及び下階側ローラ対の、通路側に位置するガイドローラを壁側に位置するガイドローラに対して所定量上方に配置して、昇降体下部の階段通路側への突出量を削減したので、階段1段目に昇降体がかかり難い構成とすることができ、階段通路面積を狭めることがなく、階段昇降機の適用範囲を広くすることができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によると、上階側ローラ対の通路側ガイドローラの前方にサイドローラを配置しないことにより、昇降体下部の通路側のフレームを省いたので、階段1段目にフレームがかかり難い構成とすることができ、階段通路面積を狭めることがなく、階段昇降機の適用範囲を広くすることができる。また、上階通路側のサイドローラを省いても、前記3個のガイドローラが、通路側に位置するガイドローラを壁側に位置するガイドローラに対して所定量上方に配置することと相俟って、階段昇降機の横荷重を確実に受けることができ、振動等を抑えて、昇降体の移送を支障なく行うことができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によると、フレームの上階側に障害物検出手段を、その障害物を検出して移動する際の移動部分が、側面視において、前記上階側ローラ対の壁側ガイドローラとオーバラップするように設け、上階方向の移送時の安全を確保しつつ上階方向への障害物検出手段の突出量を少なくしたので、階段1段目に昇降体がかかり難い構成とすることができ、階段通路面積を狭めることがなく、階段昇降機の適用範囲を広くすることができる。
【0019】
請求項4に係る本発明によると、障害物検出手段を分割構造とし、その下側障害物検出板が、側面視において、前記上階側ローラ対の壁側ガイドローラとオーバラップすることができ、さらに上階方向への障害物検出手段の突出量を少なくしたので、階段1段目に昇降体がかかり難い構成とすることができ、階段通路面積を狭めることがなく、更に階段昇降機の適用範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る階段昇降機を示す平面図。
【図2】その正面図。
【図3】その昇降体が階段1段目にかからないことを示す拡大側面図。
【図4】本発明の実施の形態に係る昇降体を示す斜視図。
【図5】上記昇降体及びガイドレールを示す図であり、(a)はサイドローラの配置を示す平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図6】昇降体の上階側への突出量の削減を示す右側面図。
【図7】ガイドレールの傾斜角度が低い場合の昇降体を示す正面図。
【図8】ガイドレールの傾斜角度が高い場合の昇降体を示す正面図。
【図9】障害物検出板を2枚に分割した実施の形態を示す正面図。
【図10】従来技術による階段昇降機を示す平面図。
【図11】その正面図。
【図12】その昇降体を示す斜視図。
【図13】その昇降体が階段1段目にかかることを示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。階段昇降機1は、図1ないし図3に示すように、階段Sの側壁Wに沿って配置されたガイドレール2と、該ガイドレール2に装着されて上下昇降する昇降体3と、を備えている。上記昇降体3は、座席5、足置き台6、背もたれ7、及び肘掛け9からなる椅子部10が取付けられると共に、ガイドローラ部11及びモータ等からなる駆動部12を有し、該駆動部12によって駆動されるピニオン(又はスプロケット)がガイドレール2に施設されるラック(又はラック用ローラチェーン)と噛合して、ガイドレール2に沿って昇降する。上記昇降体3は、上記座席5に腰掛けた状態で肘掛け9に設けたスイッチ13を操作し上記駆動部12を起動させることにより、座席5に座った状態で階段Sの昇降が行える。
【0022】
なお、上記座席5、足置き台6、肘掛け9を折りたたみ式とし、それらを連動させて、立ったままでも足置き台を折りたたんだり下ろしたりすることが可能な構造としてもよい。
【0023】
本実施の形態の階段昇降機1は、後述するように昇降体3が階段Sの階段1段目S1にかかり難い構造となっており(図3参照)、階段Sの建築基準法上の有効階段幅Lは、図1に示すように、レール幅Rが10cmより大きい場合には、階段Sの階段幅Fからレール幅Rを減算して算出される。なお、レール幅Rを10cm以下として、有効階段幅Lを階段幅Fと等しくすることも可能である。
【0024】
上記昇降体3は、図4及び図5に示すように、フレーム15を備えており、該フレーム15は、板状部材からなる壁側フレーム板15aと、該壁側フレーム板15aに比して所定量下方に短い通路側フレーム板15bと、を有する。上記壁側フレーム板15a及び通路側フレーム板15bは、その上部に所定間隔を空けて3枚の細長の連結プレート15c、その下部に幅広の下部プレート15dが架設されて、互いに平行になるように連結・固定されている。上記下部プレート15dの幅方向略々中央からは、上記壁側及び通路側フレーム板15a,15bと平行に、下方に中央フレーム板15eが突設され、該中央フレーム板15eは、上記下部プレート15dに対して、壁側フレーム板15aよりは短く、通路側フレーム板15cよりは長く下方に延出している。上記壁側フレーム板15a、通路側フレーム板15b、及び中央フレーム板15eは、下階側から上階側に向かって先細り形状で湾曲しており、壁側フレーム板15b及び中央フレーム板15eの先端湾曲面は、側面視において、上記ガイドレール2の上面2aを頂点としている(図5(b)参照)。
【0025】
上記ガイドローラ部11は、階段上階側に配置される上階側ローラ対16、階段下階側に配置される下階側ローラ対17、及び後述する3個のサイドローラを有し、上記フレーム15の下部に配置されている。上記上階側ローラ対16及び下階側ローラ対17は、それぞれ、回転軸Cを移送方向の垂直面に直交する方向にして、上記回転軸Cの軸方向に所定間隔隔てて配置される1対のガイドローラからなる。
【0026】
上階側ローラ対16の壁側ガイドローラ16a及び通路側ガイドローラ16bは、それぞれ、上記壁側フレーム板15a及び中央フレーム板15eの下部で、かつ各フレーム板15a,15bの内側に向くように上記回転軸Cが回転自在に支持されて、上記通路側ガイドローラ16bは、上記壁側ガイドローラ16aに対して所定量A上方に配置される。上記下階側ローラ対17も、上記上階側ローラ対16と同様に、壁側ガイドローラ17a及び通路側ガイドローラ17bは、それぞれ、上記壁側フレーム板15a及び中央フレーム板15eの下部で、かつ各フレーム板15a,15eの内側に向くように上記回転軸Cが回転自在に支持されて、上記通路側ガイドローラ17bは、上記壁側ガイドローラ17aに対して所定量A上方に配置される。
【0027】
上記壁側フレーム板15aの、上記上階側及び下階側ローラ対の壁側ガイドローラ16a,17aの前方には、サイドローラ18a,19aの回転軸Dを軸支する略々断面コ字状のコ字状プレート20a,21aが通路側に突設され、上記中央フレーム板15eの、上記下階側ローラ対17の壁側ガイドローラ17bの前方には、サイドローラ19bの回転軸Dを軸支するコ字状プレート21bが壁側に突設されている。上記コ字状プレート20a,21a,21bには、移送方向の水平面に直交するように上記回転軸Dを持つ3個のサイドローラ18a,19a,19bがそれぞれ回転自在に取り付けられており、上記サイドローラ18a,19a,19bが接触しないように、上記壁側フレーム板15a,中央フレーム板15e及びコ字状プレート20a,21a,21bの上記サイドローラ18a,19a,19bとの隣接位置には、矩形の孔が設けられている。
【0028】
上記ガイドレール2は、直線形状の型材からなり、階段Sの傾斜角に沿って壁面W側に施設されており、壁側及び通路側に長手方向全長に亘ってガイド面22,23が形成されている。該ガイド面22,23は、外方が開放した断面コ字形状からなり、通路側ガイド面23は、壁側ガイド面22に対して上記所定量A上方に配置されている。なお、上記通路側ガイド面23は、断面コ字形状ではなく、外方及び上方が開放した断面L字形状としてもよい。
【0029】
上記ガイドレール2は、上記壁側フレーム板15a,中央フレーム板15e,下部プレート15dによって囲まれて、上記壁側ガイド面22には上記壁側ガイドローラ15a,16aが、上記通路側ガイド面23には上記通路側ガイドローラ15b,16bが、それぞれ嵌入される。上記壁側ガイドローラ16a,17a及び通路側ガイドローラ16b,17bは、それぞれ、上記ガイド面の上面,下面及び垂直面と接して、上記ガイドレール2を挟持する。通路側サイドローラ19bは、上記壁側サイドローラ18a,19aよりも移送方向の水平面に対して所定量上方に位置し、上記通路側サイドローラ19bは上記通路側ガイド面23の垂直面と、上記壁側サイドローラ18a,19aは上記壁側ガイド面22の垂直面と転接している。
【0030】
上記フレーム15の上階側には、図4に示すように、上記昇降体の上階側への移送に際して障害物を検出する障害物検出手段である障害物検出板25が配置され、該障害物検出板25は、上部を支点として上記フレーム15に回動自在に支持される。上記障害物検出板25は、側面視上記ガイドレール2の上面2aを頂点として上記フレーム15に沿うようなアール形状となっており、正面視において、上記壁側フレーム板15aと通路側フレーム板15bの間の幅と略々等しい又はそれより広い略々矩形状から上記ガイドレール2の部分を切り欠いた略々L字状をなしている。上記障害物検出板25は、上記通路側ガイド面23に対応する凸部25aを有し、該凸部25aは、上階側の障害物から上階側ローラ対16の通路側ガイドローラ16bを保護している。
【0031】
上記障害物検出板25は、図5(b)及び図6に示すように、障害物と衝突した際には下階方向に所定量退避移動して、側面視において、少なくともその移動部分Bが上記上階側ローラ対16の壁側ガイドローラ16aとオーバラップするように配置される(図5(b)参照)。
【0032】
本実施の形態は以上のような構成からなるので、階段昇降機1は、座面5に座って上記肘掛け9に設けたスイッチ13をオンにすると、モータ等からなる駆動部が回転し、不図示のピニオンに伝達される。そして、該ピニオンがガイドレール2のラックに噛合することにより、昇降体3はガイドレール2に沿って移送される。
【0033】
この際、昇降体,椅子部,座面5に腰掛けた人の縦荷重は、上記上階側ローラ対16及び下階側ローラ対17を介して、上記ガイドレール2に設けられた壁側ガイド面22の上面及び通路側ガイド面23の下面に作用するモーメントとして受けられる。また、昇降体3に作用する横荷重は、上記上階側ローラ対16,下階側ローラ対17,及びサイドローラ20a,21a,21bを介して、上記ガイド面22,23の垂直面に受けられる。上記横荷重は、サイドローラ20a,21a,21bのみによってだけではなく、上記ガイドレール2のガイド面22,23に嵌入される上記上階側ローラ対16及び下階側ローラ対17にも作用するので、上階側ローラ対16の通路側ガイドローラ16bの前方にはサイドローラを配置しなくても足りる。
【0034】
なお、階段昇降機に作用する重力荷重Fは、ガイドレールの傾斜角度に対して鉛直方向の荷重(縦荷重)FsinΘ及び該ガイドレールの水平方向の荷重(横荷重)FcosΘに分解でき、該横荷重FcosΘはその作用点がサイドローラとずれているため、基本的には上階壁側サイドローラ18aと下階通路側サイドローラ19bによってモーメントを受ける。階段角度及び荷重条件によってはFcosΘの値が小さくなると、下階壁側サイドローラ19aに力がかかるようになる場合があるが、上階通路側ガイドローラ16bの前方には力が作用することがなく、そこにサイドローラを配置しなくとも階段昇降機の安定走行に支障となることはない(図5(c)参照)。
【0035】
上記上階側ローラ対16の通路側ガイドローラ16bが壁側ガイドローラ16aに対して所定量A上方に配置されていること、上記上階側の通路側ガイドローラ(図12の118b参照)が省かれていることが相俟って、フレーム15の通路側フレーム板15bの下方が短く形成されている。これにより、上記障害物検出板25は、通路側フレーム板15bと干渉することなく、その下部が下階側に後退して延出される。よって、図6に示すように、側面視において、上記壁側フレーム板15aよりも上記障害物検出板25が下階側に削減量Pだけ階段1段目S1へのかかり代を削減することができ、本階段昇降機1を適用し得る階段を拡大することができる。
【0036】
また、上階側への移送に際して、障害物を障害物検出板25が検出した場合には、障害物検出板25が所定量下階側に退避移動して不図示のスイッチがオン入力され、不図示の制御部によって上記駆動部12が停止されて、上記昇降体3の移送を停止する。上記障害物検出板25はガイドレール2の上面を頂点とするアール形状をなしていて、かつ障害物を検出して退避移動する際の移動部分Bが上記上階側ローラ対16の壁側ガイドローラ16aとオーバラップするように配置されているので、図7及び図8に示すように、階段Sの蹴上げ高さの低い傾斜角度が緩やかな階段であっても蹴上げ高さの高い傾斜角度が急な階段であっても、階段1段目S1にかかりにくくなっている。
【0037】
ついで、図9に沿って、外の実施の形態について説明するが、本実施の形態は、昇降体3において、上記障害物検出板25を分割構造としたものである。上記第1の実施の形態と重複する部分については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
階段昇降機1の昇降体3は、上階側に、上側障害物検出板25aと、下側障害物検出板25bとを有する。上記上側障害物検出板25aは、上部を支点としてフレーム15に回動自在に支持されて、側面視において、その下端がガイドレール2の上面2aとほぼ一致する。上記下側障害物検出板25bは、側面視において、上記ガイドレール2の上面2aとほぼ一致する位置に支点を有し、上記中央フレーム板15e及び通路側フレーム板15bに回動自在に支持される。
【0039】
中央フレーム板15eは、側面視において、上階側先端下部が直線となるように先細り形状で、上記第1の実施の形態における中央フレーム板15eよりも下方への突出量が少ない(図6参照)。上記障害物検出板25aは、正面視において、上記壁側フレーム板15aと通路側フレーム板15bの間の幅と略々等しい又はそれより広い略々矩形状をなし、上記障害物検出5bは、正面視において、上記中央フレーム板15eと通路側フレーム板15bの間の幅と略々等しい又はそれより広い略々矩形状をなしている。
【0040】
上記上側障害物検出板25a及び下側障害物検出板25bは、全体として、側面視において、ガイドレール2の上面2aを頂点とする先細りのアール形状となっているが、下側障害物検出板25bの上部の支点位置においてその曲率が変更されて、下側障害物検出板25bの下部が上記上階側ローラ対16の壁側ガイドローラ16aとオーバラップするように配置されている。
【0041】
本実施の形態は以上のような構成からなるので、上階方向への移送に際して、上階側に障害物がある場合には、上記上側障害物検出板25a又は下側障害物検出板25bと障害物が衝突し、不図示のスイッチがオン入力される。そして、不図示の制御部によって上記駆動部12が停止されて、上記昇降体3の移送を停止する。
【0042】
上側障害物検出板25a及び下側障害物検出板25bは、側面視において、全体としてガイドレール2の上面2aを頂点とするアール形状となっており、さらに下側障害物検出板25bの支点位置でアールの曲率が変更されて、より下階側に退避する方向に下側障害物検出板25bが延出しているので、上記壁側フレーム板15aよりも削減量P上階側への突出量を削減することができる。これによって、障害物検出板を1枚板とする構造よりも階段1段目S1へのかかり代を更に削減することができる。
【0043】
なお、1枚板の障害物検出版を、側面視において、レール上面から曲率を変更するように屈曲させて、上階側への障害物検出版の突出量を削減するように構成してもよい。
【0044】
また、上記階段昇降機1は、直線の階段だけでなく、そのガイドレールの傾斜角度が変わらなければ螺旋階段にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 階段昇降機
2 ガイドレール
3 昇降体
11 ガイドローラ部
12 駆動部
16 上階側ローラ対
17 下階側ローラ対
16a,16b,17a,17b ガイドローラ
18a,19a,19b サイドローラ
22,23 ガイド面
25 障害物検出手段(障害物検出板)
25a 上側障害物検出板
25b 下側障害物検出板
A 所定量
B 移動部分
S 階段
S1 階段1段目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の傾斜に沿って施設されるガイドレールと、前記ガイドレールに案内されるガイドローラ部及び駆動部を有する昇降体と、を備え、前記昇降体を前記ガイドレールに沿って移送する、階段昇降機において、
前記ガイドローラ部は、前記昇降体の階段上階側に配置される上階側ローラ対と階段下階側に配置される下階側ローラ対とを有し、
前記上階側及び下階側ローラ対は、それぞれ、回転軸を移送方向の垂直面に直交する方向にして、前記昇降体のフレームに回転自在に支持され、かつ前記回転軸の軸方向に所定間隔隔てて配置される1対のガイドローラからなり、
前記1対のガイドローラは、通路側に位置するガイドローラが壁側に位置するガイドローラに対して所定量上方に配置されて、前記通路側及び壁側のガイドローラが、それぞれ、前記ガイドレールの高さの異なる位置に配置されたガイド面に案内される、
ことを特徴とする階段昇降機。
【請求項2】
前記ガイドローラ部は、それぞれ、回転軸を移送方向の水平面に直交する方向にして、前記フレームに回転自在に支持される3個のサイドローラを有し、
前記3個のサイドローラは、上階側における壁側に1個、下階側において壁側及び通路側に各1個が配置されてなる、
請求項1記載の階段昇降機。
【請求項3】
前記フレームの上階側に、前記昇降体の上階側への移送に際して障害物を検出する障害物検出手段を設け、
前記障害物検出手段は、前記障害物を検出して移動する際の移動部分が、側面視において、前記上階側ローラ対の壁側ガイドローラとオーバラップするように配置されてなる、
請求項1又は2記載の階段昇降機。
【請求項4】
前記障害物検出手段は、それぞれ上部を支点として前記フレームに回動自在に支持された上側障害物検出板と下側障害物検出板とを有し、
前記下側障害物検出板の下部分が、側面視において、前記上階側ローラ対の壁側ガイドローラとオーバラップするように配置されてなる、
請求項3記載の階段昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−23295(P2013−23295A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156518(P2011−156518)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000207425)大同工業株式会社 (45)
【Fターム(参考)】