説明

階段昇降装置

【課題】 座席に利用者が腰掛けてシートベルトを着装し、安定した搭乗状態によって搬送運転される階段昇降装置を得る。
【解決手段】 階段1の昇降方向に沿って案内レール2を設け、案内レール2に案内されて昇降する座席4を設ける。また、駆動機10を有する駆動機構12を階段1の昇降方向に沿って設けて座席4を係合し、駆動機10の動作によって座席4を昇降駆動する。そして、座席4に設けたシートベルトを利用者が着装したときに動作する着装検出手段を設けて、着装検出手段の動作を介して駆動機10を付勢する制御回路を設ける。これによって、座席4に腰掛けた利用者がシートベルト不着装のときは座席4が昇降運転されず、不安定な搭乗状態により搬送される不具合を防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、利用者が搭乗する座席が階段の昇降方向に沿って移動する階段昇降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の階段昇降装置として、例えば特開2000−26047号公報に示された構成がある。すなわち、階段に設けられて階段の昇降方向に沿って案内レールが配置され、この案内レールに案内されて昇降する座席が設けられる。また、階段の下端部に駆動機が設けられて、駆動機に係合されて座席に連結された牽引機構により座席を昇降運転するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の階段昇降装置では、座席に利用者が腰掛けた状態で駆動機が付勢されて座席が昇降運転される。このときに、座席にシートベルトが設けられていないので、利用者が身体障害者、幼児等である場合に不安定な搭乗姿勢によって搬送されたり、シートベルトが設けられていても不着装のまま利用者が搬送されたりするという問題点があった。
【0004】この発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、座席に利用者が腰掛けてシートベルトを着装することによって、搬送運転される階段昇降装置を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明に係る階段昇降装置においては、階段に設けられて階段の昇降方向に沿って配置された案内レールと、この案内レールに案内されて昇降する座席と、駆動機が装備されて座席に係合され階段の昇降方向に沿って設けられて、駆動機の動作によって座席を昇降駆動する駆動機構と、座席に設けられたシートベルトが着装されたときに動作する着装検出手段と、この着装検出手段の動作を介して駆動機を付勢する制御回路とが設けられる。
【0006】また、この発明に係る階段昇降装置においては、一側が座席に、他側は案内レールに移動可能に係合された案内具に設けられて、案内レールの傾斜角度に対する座席の姿勢を調整する装着姿勢調整機構が設けられる。
【0007】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1〜図4は、この発明の実施の形態の一例を示す図で、図1は斜視図、図2は図1の座席を拡大して示す斜視図、図3は図1における案内レールに対する座席の係合状態を拡大して示す正面図、図4は図1の階段昇降装置における要部電気回路図である。図において、1は階段、2は案内レールで、階段1の幅方向の縁部に設けられて階段1の昇降方向に沿って配置されている。3は案内レール2に移動可能に係合した案内具、4は案内具3の上側に対向して配置された座席である。
【0008】5は装着姿勢調整機構で、座席4の下面から下方に突設されて案内レール2の長手に沿う一端側が案内具3に枢着された調整板6、調整板6の反枢着点側に貫通して設けられて枢着点を中心とする円弧状をなす調整溝孔7、案内具3から突出して設けられて調整溝孔7に重合して配置された締結板8並びに締結板8、調整溝孔7に挿通されたボルト及びこのボルトの挿通端にねじ込まれたナットからなる締結具9によって構成されている。
【0009】10は巻胴11が設けられ階段1の下端部に設置された駆動機、12は駆動機構で、階段1の上端側に枢着された滑車13及び一端が座席4に設けられた連結具14に連結されて滑車13に巻掛けられ他端は巻胴11に巻掛けられたロープからなる可撓条体15によって構成されている。16は座席4に設けられた座席操作盤、17は階段1の下端部に設けられた下側操作盤、18は階段1の上端部に設けられた上側操作盤である。
【0010】19はシートベルトで、通電性の可撓条体からなり一端が座席4の背板上部の案内レール2の長手に沿う一端部に連結されている。20は掛止具からなる着装検出手段で、座席4の案内レール2の長手に沿う他端部の座板に設けられて、対向したシートベルト19の端部が掛止されることによってシートベルト19の着装を検出する。21は運転リレー、21aは運転リレー21の常開接点、22は着装検出手段20の動作を介して駆動機10を付勢する制御回路、+−は制御電源である。
【0011】上記のように構成された階段昇降装置において、階段1に案内レール2が据付けられて案内具3を介して座席4が装備される。このときに、装着姿勢調整機構5によって、座席4の座板が水平姿勢に配置される位置で、締結具9によって調整溝孔7を介して調整板6、締結板8の相互が締結される。そして、座席4に利用者が腰掛けてシートベルト19が着装され、着装検出手段20の掛止具にシートベルト19の端部が掛止されると、それの常開接点が閉成する。
【0012】次いで、座席操作盤16、下側操作盤17又は上側操作盤18が操作されると、操作された操作盤の常開接点が閉成する。これによって、+−16、17、18のいずれか−21−−の回路によって運転リレー21が付勢されて、それの常開接点21aが閉成する。そして、+−20−21a−10−−の回路によって駆動機10が付勢される。
【0013】これにより、駆動機10が動作して巻胴11が回転し駆動機構12の可撓条体15が巻き取られるか、または巻き戻されて座席4が所要の方向へ昇降して、座席4上の利用者が階段1の一方の端部から他方の端部へ搬送される。このような構成によって、座席4に利用者が腰掛けてシートベルト19が着装されない状態では、着装検出手段20の常開接点が閉成せず、すなわち着装検出手段20が動作しないので座席4が昇降することはない。
【0014】このため、身体障害者、幼児等である利用者が座席4に腰掛けて不安定な搭乗姿勢によって搬送される不具合の発生を未然に防ぐことができ、階段昇降装置の利用を容易化することができる。また、案内具3に座席4が装着姿勢調整機構5を介して装着されるので、一定仕様の階段昇降装置によって傾斜角度の異なる階段1に対して容易に対応することができ、階段昇降装置の生産性が向上し製造費を節減することができる。
【0015】実施の形態2.図5は、この発明の他の実施の形態の一例を示す図で、駆動機構を概念的に示す前述の図1相当図である。なお、図5の他は前述の図1〜図4の実施の形態と同様に階段昇降装置が構成されている。図において、図1〜図4と同符号は相当部分を示し、10は巻胴11が設けられ階段1の上端部に設置された駆動機、12は駆動機構で、一端が座席4に連結され他端は巻胴11に巻掛けられたロープからなる可撓条体15によって構成されている。
【0016】上記のように構成された階段昇降装置においても、着装検出手段20の動作を介して駆動機10を付勢する制御回路22及び座席4の座板を案内具3に傾斜角度を調整して締結する装着姿勢調整機構5が設けられる。したがって、詳細な説明を省略するが図5の実施の形態においても図1〜図4の実施の形態と同様な作用が得られる。
【0017】実施の形態3.図6も、この発明の他の実施の形態の一例を示す図で、駆動機構を概念的に示す前述の図1相当図である。なお、図6の他は前述の図1〜図4の実施の形態と同様に階段昇降装置が構成されている。図において、図1〜図4と同符号は相当部分を示し、10は駆動綱車23が設けられ階段1の下端部に設置された駆動機、12は駆動機構で、階段1の上端側に枢着された滑車13並びに無端状をなし滑車13及び駆動綱車23に巻掛けられて一側が案内具3に連結されたロープからなる可撓条体15によって構成されている。
【0018】上記のように構成された階段昇降装置においても、着装検出手段20の動作を介して駆動機10を付勢する制御回路22及び座席4の座板を案内具3に傾斜角度を調整して締結する装着姿勢調整機構5が設けられる。したがって、詳細な説明を省略するが図6の実施の形態においても図1〜図4の実施の形態と同様な作用が得られる。
【0019】
【発明の効果】この発明は以上説明したように、階段に設けられて階段の昇降方向に沿って配置された案内レールと、この案内レールに案内されて昇降する座席と、駆動機が装備されて座席に係合され階段の昇降方向に沿って設けられて、駆動機の動作によって座席を昇降駆動する駆動機構と、座席に設けられたシートベルトが着装されたときに動作する着装検出手段と、この着装検出手段の動作を介して駆動機を付勢する制御回路とを設けたものである。
【0020】これによって、座席に利用者が腰掛けてシートベルトが着装されない状態では着装検出手段が動作しないので、駆動機は消勢されたままになり座席が昇降運転されることはない。このため、身体障害者、幼児等である利用者が座席に腰掛けて不安定な搭乗姿勢によって搬送される不具合の発生を未然に防ぐことができ、階段昇降装置の利用を容易化する効果がある。
【0021】また、この発明に係る階段昇降装置においては、一側が座席に、他側は案内レールに移動可能に係合された案内具に設けられて、案内レールの傾斜角度に対する座席の姿勢を調整する装着姿勢調整機構を設けたものである。
【0022】これによって、座席に利用者が腰掛けてシートベルトが着装されない状態では着装検出手段が動作しないので、駆動機は消勢されたままになり座席が昇降運転されることはない。このため、身体障害者、幼児等である利用者が座席に腰掛けて不安定な搭乗姿勢によって搬送される不具合の発生を未然に防ぐことができ、階段昇降装置の利用を容易化する効果がある。また、案内レールに係合して案内具に装着姿勢調整機構を介して座席が装着されるので、一定仕様の階段昇降装置によって傾斜角度の異なる階段に対して容易に対応することができ、階段昇降装置の生産性が向上し製造費を節減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す斜視図。
【図2】 図1の座席を拡大して示す斜視図。
【図3】 図1における案内レールに対する座席の係合状態を拡大して示す正面図。
【図4】 図1の階段昇降装置における要部電気回路図。
【図5】 この発明の実施の形態2を示す図で、駆動機構を概念的に示す前述の図1相当図。
【図6】 この発明の実施の形態3を示す図で、駆動機構を概念的に示す前述の図1相当図。
【符号の説明】
1 階段、2 案内レール、3 案内具、4 座席、5 装着姿勢調整機構、10 駆動機、12 駆動機構、19 シートベルト、20 着装検出手段、22 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 階段に設けられて上記階段の昇降方向に沿って配置された案内レールと、この案内レールに案内されて昇降する座席と、駆動機が装備されて上記座席に係合され上記階段の昇降方向に沿って設けられて、上記駆動機の動作によって上記座席を昇降駆動する駆動機構と、上記座席に設けられたシートベルトが着装されたときに動作する着装検出手段と、この着装検出手段の動作を介して上記駆動機を付勢する制御回路とを備えた階段昇降装置。
【請求項2】 一側が座席に、他側は案内レールに移動可能に係合された案内具に設けられて、上記案内レールの傾斜角度に対する上記座席の姿勢を調整する装着姿勢調整機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の階段昇降装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2002−120982(P2002−120982A)
【公開日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−314826(P2000−314826)
【出願日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】