説明

階段材

【課題】 階段のリフォームに際して、あるいは、新築であっても、合板等で下地を予め造っている階段においても、施工容易、外観上も優れ、強度も充分にある階段材を開発・提供することにある。
【解決手段】 下地材を施工した上に化粧材を貼着する階段材において、踏板材1と断面形状がL字状の段鼻材2とをそれぞれ設け、踏板材と段鼻材との接合部に係止・固定手段3を設けたもので、係止・固定手段が、凹と凸の実3a,3b構造を有し、凹部側の実の下部には釘・木ねじYを打つことのできる平坦面3cを形成し、凸部側の実の下部には前記平坦面分の切り欠き3dを設けた階段材。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,住宅等の階段材に関する。
【0002】
【従来の技術】住宅の階段は長年の使用によって次第に傷や汚れが付き、老朽化が進行する。ところが、階段は土台や外壁等と異なり、漏水や結露等に起因する腐朽や、白蟻の被害を受ける事は比較的少なく、強度面では低下が殆ど無いにも関わらず、表面の化粧材部分のみの傷や汚れが付く場合が大半である。
【0003】リフォームを行なう際には、階段全体を新品に交換するか、サンディングによって老朽化した塗料や傷を削り落とし、新たに塗装しなおす方法が行なわれてきた。しかし、通常、化粧材(化粧単板)の厚さは0.5mm以下(最も薄いものでは0.2mm)の場合が大半なので、サンディングと再塗装は困難である。
【0004】また、仮に再塗装が可能だとしても程度が異なる多くの傷を完全に除去するのは困難である。その上、組み立てた状態での作業は、作業性が悪く、使用する塗料は工場塗装のような均質かつ強固な塗装は望めない。従って、結果として、リフォーム後の仕上がりや耐久性は新築時の工場塗装には遠く及ばない例が大半である。
【0005】そこで、階段本体は手をつけずに、この上に薄い板状の化粧材を貼着して新たな化粧層を作り、リフォームする方法が行なわれるようになってきた。各種方法が考えられ、プラスチック製や木製のL型形状で、踏板全面を被覆するものが多い。この方法では、工場で加工塗装された部材をフィニッシュネイル、両面テープ、接着剤等の簡単な手段で貼着するだけで、新たな化粧層が形成される。極めて短時間で施工が完了し、仕上がりも比較的良好である。
【0006】しかし、この方法は次のような問題点がある。
a.下地処理が面倒リフォームする階段は、使用中に手入れ用ワックス、皮脂、各種汚れ、傷等によって、一種の離型性の層が形成され、接着剤や粘着テープ等が付き難くなっているのが一般的である。これらの「難接着層」は溶剤での拭き取りやサンディング等の手段を充分に行なえば理論上は除去可能であるが、実際には手間がかかり、多量の埃や溶剤臭等が発生するので、完全な作業は極めて困難であり、なかなか充分には行なえない。
【0007】b.固定が不十分下地処理が不十分なままで接着を行なうと、使用中に剥離し、引っかかりを生じて、最悪の場合は昇降中に階段から転落する恐れもある。接着剤や粘着テープ等は先に述べたように接着性が問題なので、より強固に固定するには、木ネジを多数使用するのが最も確実である。表面から木ネジの頭が見えるので、実際には使用は困難である。釘の頭が見え難いフィニッシュネイルもあるが、木ネジに比較して固定強度が格段に低く、それだけ固定も不十分である。
【0008】c.見栄えが悪い完全な固定には、木ネジや釘等の手段も併用することが望ましいが、通常は化粧面に露出してしまうので、多くは取り付ける事が出来ない。又、釘の頭が見え難いフィニッシュネイルもあるが、化粧面にピンホールが残ってしまう上に、固定強度が低く、それだけ固定も不十分である。また、踏板と段鼻程度を隠蔽するだけの簡単な構造のものが多いが、踏込がそのままなので不十分である。
【0009】d.再利用は不可能いずれの場合も両面テープや釘等再利用の不可能な固定手段で半永久固定されるので、数年内に再び破損した場合には再度の交換は不可能に近い。又、撤去した踏板も釘や接着剤が分離困難な状態で混在しているので再利用は困難である。
【0010】e.様々な寸法への対応が困難従来木造住宅では、柱と芯々間距離を基本のモジュールとして採用しているので、階段の幅は様々である。従って、階段の各戸に合わせた現場合わせに近い寸法が必要である。しかし、現場毎に完全に合わせるのは困難である。例えば、廻り踏板とこれ以外の部分とでは長さと幅が異なるので、一体型だと幾つかの型が必要である。
【0011】f.段鼻の交換が困難段鼻(踏板の端)は角なので傷が付きやすく、昇降時には必ず踏みつけられるので摩耗・損傷し易い。(例:駅やオフィスビルの階段では、段鼻用滑り止め材が摩滅・破損している場合が多い)しかし、踏板と完全一体化していると段鼻だけの交換は極めて困難である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、階段のリフォームに際して、あるいは、新築であっても、合板等で下地を予め造っている階段においても、施工容易、外観上も優れ、強度も充分にある階段材を開発・提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】階段のリフォーム、あるいは新築であっても合板等で下地を構成した階段を目的として、薄い板状の踏板と蹴込板、それにこれらを繋ぐ段鼻という3つの部材で既設階段上に貼着して完全に覆ってしまう。こうすることで、極めて安価かつ簡単に階段が完成する。
【0014】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に従って、詳述すると、下地材を施工した上に化粧材を貼着する階段材において、踏板材(1)と断面形状がL字状の段鼻材(2)とを、それぞれ別個に設け、踏板材(1)と段鼻材(2)との接合部に係止・固定手段(3)を設けたことを特徴とする階段材から構成されるものである。尚、(X)は旧階段、あるいは、新築であっても、合板等で下地材を構成している階段である。
【0015】そして、踏板材(1)と段鼻材(2)との接合部の係止・固定手段(3)が、凹実(3a)と凸実(3b)の実構造を有し、凹実(3a)側の実の下部には釘・木ねじを打つことのできる平坦面(3c)を形成し、凸実側の実の下部には前記平坦面分の切り欠き(3d)を設けたものである。
【0016】さらに、踏板材(1)と段鼻材(2)との接合部に係止・固定手段(3)が、凹実(3a)と凸実(3b)の実構造を有し、凹部側の実の下部には釘・木ねじ(Y)を打つことのできる平坦面(3c)を形成し、該平坦面の先端部に突起条(3e)を設け、凸部側の実の下部には前記平坦面(3c)分の切り欠き(3d)の後端部には、前記突起に適合する凹溝(3f)を設けたことを特徴とするものである。
【0017】そして、段鼻材(2)は、その垂直部に浅い凹溝(4)を設けたものである。この浅い凹溝(4)は、既設の階段材に向けて、無頭釘(Z)を打ち込むフィニッシュネイル打ち用溝である。
【0018】尚、段鼻材(2)には、滑り止め用の複数条の浅溝を設けてもよく、また、(5)は、蹴込板であり、(6)はベルベットファスナーである。
【0019】また、段鼻材(2)は、他の樹種を使用してアクセントとしたり、特別に滑りにくい塗装としたりも可能であり、塗装の耐久性や仕上がり感は、工場で生産可能なので均質で良好な材の提供ができ、将来、破損して再び同様の階段を施工する場合も、組み立てと逆の手順で撤去可能である。さらに、幅の大きな廻り階段へも展開可能であり、段鼻材(2)は、長尺に製造し、適当に切断して使用すればよく、一方、踏板材(1)の平面は床材と同じような板状なので、製造は容易である。
【0020】
【発明の効果】この発明によると、既存階段の踏板、蹴込板を隙間無く覆うような構造としており、踏板材(1)と段鼻材(2)との係止・固定手段(3)が、実接合であり、しかも、実の雌の平坦面(3c)を利用して釘・木ネジ等で強固に下地材に固定される結果、釘・木ネジ等は後から取り付ける段鼻材(2)によって隠蔽されるので見栄えが良く、しかも、実の雌の下部ならば多数取り付けられるので極めて強固な固定が可能である。
【0021】しかも、下地材は既存の階段が基本となっており、既存の階段を撤去する必要が無く、施工でき、また、合板等で階段下地を作ってしまえば新築でも施工可能であり、平坦面(3c)を形成し、該平坦面の先端部に突起条(3e)を設け、凸部側の実の下部には前記平坦面(3c)分の切り欠きの後端部には、前記突起に適合する凹溝(3f)を設けることにより、段鼻材(2)が外れにくい構造であり、一層固定が強固になる。
【0022】さらに、段鼻材(2)には、その水平部に浅い凹溝(4)を設けており、該凹溝からフィニッシュネイルで固定することにより、固定の跡が目立ち難い。即ち、フィニッシュネイルは通常の釘が表からはっきり判る直径3〜5mmの釘の頭が丸見えなのに対して、直径1mm程度のピンホールしか見えない。しかも、凹溝(4)を設けて、この小さな穴が目立たないようにしてある。
【0023】また、従来の既設階段を解体し、新階段を施工するに要する時間に比較して施工時間は約1/3で可能であり、既設階段に直接貼着できるる上に、釘、木ネジ、フィニッシュネイル、接着剤、両面テープ等いずれの方法でも固定が可能であり、併用すればより強固に施工可能である。接着剤や両面テープ等の下地の影響が大きな方法だけに頼らなくても済むので、下地の処理は簡単である等の極めて有益なる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例であり、(a)は、その施工前部、(b)は完成図である。
【図2】この発明の他の実施例であり、(a)は、その施工前部、(b)は完成図である。
【図3】この発明の他の実施例であり、(a)は、その施工前部、(b)は完成図である。
【図4】この発明の他の実施例を示す一部欠截斜視図である。
【符号の説明】
1 踏板材
2 段鼻材
3 係止・固定手段
3a 凹実
3b 凸実
3c 平坦面
3d 切り欠き
3e 突起条
3f 突起に適合する凹溝
4 凹溝
5 蹴込板
6 ベルベットファスナー
X 旧階段あるいは合板等の下地材で構成した階段
Y 釘・木ねじ
Z フィニッシュネイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下地材を施工した上に化粧材を貼着する階段材において、踏板材と断面形状がL字状の段鼻材とをそれぞれ設け、踏板材と段鼻材との接合部に係止・固定手段を設けたことを特徴とする階段材。
【請求項2】 踏板材と段鼻材との接合部に係止・固定手段が、凹と凸の実構造を有し、凹部側の実の下部には釘・木ねじを打つことのできる平坦面を形成し、凸部側の実の下部には前記平坦面分の切り欠きを設けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の階段材。
【請求項3】 踏板材と段鼻材との接合部に係止・固定手段が、凹と凸の実構造を有し、凹部側の実の下部には釘・木ねじを打つことのできる平坦面を形成し、該平坦面の先端部に突起条を設け、凸部側の実の下部には前記平坦面分の切り欠きの後端部には前記突起に適合する凹溝を設けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項記載の階段材。
【請求項4】 段鼻材は、その水平部に浅い凹溝を設けたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の階段材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−41731(P2003−41731A)
【公開日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−227381(P2001−227381)
【出願日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)