説明

階段

【課題】 階段下への雨水落下を防止する。水受部材の設置作業を簡略化する。
【解決手段】 水受部材4が、ササラ桁2の傾斜方向Aに複数に分割される。水受部材4はササラ桁2の外側方Cを覆う左右一対の側板部4Aと、段板3の下方を覆う底板部4Bとからなる。底板部4Bの傾斜上流A1側に、水受部材4の内方に向かって且つ先端部にいく程水平方向Dに対して下り傾斜状となるように折り曲げられた上折板部5を設け、底板部4Bの傾斜下流A2側に上折板部5と略平行に且つ同一方向に折り曲げられて上折板部5に係止されるフック部7を備えた下折板部6を設ける。上段側の水受部材4の下折板部6と下段側の水受部材4の上折板部5とを重ね合わせてフック部7にて係止することで各水受部材4を相互に連結する。各水受部材4内に雨水が下折板部6と上折板部5とを乗越えて流下する排水路8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建築物の屋外に設置される階段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋外階段の下の外観を良くするために、屋外床の屋外側端部と軒天井の軒先との間をカバーで覆った構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、例えばアパートの外階段のように屋外に設置される階段では、踏面に溜まる雨水を踏面の両側に設けた溝や水勾配により流下させて排水しているのが一般的である。
【0004】
しかしながら、段板の踏面の両側に排水用の溝を形成した場合でも、少し激しい雨が降ると、踏面の中央にも雨水の流れができてしまい、踏面自体が雨水の排水路となってしまい、滑べり易くなり、雨天時の歩行の安全性を確保できないものであった。また歩行した際に踏面上の雨水によって靴等の履物が濡れてしまったり、跳ね上がった雨水でズボンの裾も濡れ易くなるという不具合もあった。
【0005】
そこで、本発明者らは、本発明に至る過程で、階段の段板3から垂れ落ちる雨水を受けて排水処理するための水受部材4’を考えた。この水受部材4’は、図5のように、段板3の傾斜方向Aに複数に分割されていると共に、各水受部材4’の傾斜下流に位置する下折板部6’を斜め下方に折り曲げ、この下折板部6’の上に下段の水受部材4’の上端縁4aを載置することで、雨水を水受部材4’内に沿って流下させるようにした。
【0006】
ところが上記の水受部材4’の連結構成では、上段の水受部材4’内の雨水が、図5の矢印A方向だけでなく、図5の矢印Bのように上段の水受部材4’の下折板部6’と下段の水受部材4’の上端縁4aとの隙間から漏れ出る可能性がある。また、上下の水受部材4’相互をビス、ボルト等を用いて連結する必要があり、現場作業が困難になるなどの問題もある。
【特許文献1】特開平2−272121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、降雨時に階段の下方のスペースに雨水が落下することを防止できると共に、階段下のスペースの有効利用を促進でき、しかも、施工現場での水受部材の設置作業を大幅に簡略化でき、さらに、水受部材同士の連結が容易であり、そのうえ屋外階段の排水処理を簡単な構造でしかも確実に行なうことができ、雨天時における歩行の安全性等を十分に向上させることができる階段を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にあっては、傾斜した状態で取り付けられる左右一対のササラ桁2の間に複数の段板3が所定間隔で取り付けられた階段本体1と、段板3よりも下方位置でササラ桁2の略全長に亘って傾斜状態で設置される水受部材4とを備え、階段本体1から垂れ落ちる雨水を水受部材4で受けて排水処理するようにした階段において、上記水受部材4は、ササラ桁2の傾斜方向Aに複数に分割されていると共に、各水受部材4は左右一対のササラ桁2の外側方Cをそれぞれ覆う左右一対の側板部4Aと、左右一対の側板部4Aの下端部間に架け渡されて段板3の下方を覆う底板部4Bとからなり、底板部4Bの傾斜上流A1側に、水受部材4の内方に向かって且つ先端部にいく程水平方向Dに対して下り傾斜状となるように折り曲げられた上折板部5が設けられ、底板部4Bの傾斜下流A2側に上折板部5と略平行に且つ同一方向に折り曲げられて上折板部5に係止されるフック部7を備えた下折板部6が設けられ、隣接する上段側の水受部材4の下折板部6と下段側の水受部材4の上折板部5とを重ね合わせてフック部7にて係止することで各水受部材4が相互に連結されると共に、各水受部材4内に雨水が下折板部6と上折板部5とを乗越えて流下する排水路8が形成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成とすることで、降雨時に建物外部の階段の下方のスペースに雨水が落下することを水受部材4にて防止できると共に、水受部材4からの排水が容易となり、しかも、従来はデッドスペースとなっていた階段下のスペースの有効利用を促進することができる。また、水受部材4をササラ桁2の傾斜方向Aに複数分割しているので、施工現場での設置作業を大幅に簡略化できる。さらに水受部材4同士の連結手段として、上折板部5と下折板部6とをフック部7にて係止することで、水受部材4を連結するにあたってネジ、ボルト等の固着具を必要としないため、施工が一層はかどる。また、水受部材4同士を連結するための上折板部5と下折板部6は、いずれも、先端部にいく程、水平方向Dに対して下り傾斜状に折り曲げられているため、排水路8の途中に上折板部5と下折板部6とが突出していても、雨水は上折板部5と下折板部6とを容易に乗越えて排水路8内をスムーズに流下できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る階段にあっては、降雨時に建物外部の階段の下方のスペースに雨水が落下することを水受部材にて防止しながら、水受部材からの排水が容易となる。また、従来はデッドスペースとなっていた階段下のスペースの有効利用を促進することができる。さらに、水受部材をササラ桁の傾斜方向に複数分割したので、施工現場での設置作業を大幅に簡略化でき、熟練作業者でなくとも誤りなく、短時間で能率よく施工することができる。さらに、水受部材同士の連結手段として、上折板部と下折板部とをフック部にて係止することで、水受部材を連結するにあたってネジ、ボルト等の固着具を必要としないため、施工が一層はかどり、工期の短縮化、低コスト化を一層図ることができると共に、水受部材同士を連結するための上折板部と下折板部は、いずれも、先端部にいく程、水平方向に対して下り傾斜状に折り曲げられているため、雨水は上折板部と下折板部とを容易に乗越えて排水路内をスムーズに流下できるようになり、そのうえ底板部の左右両端部は左右一対の側板部の下端部に連なっているので、水受部材の排水処理量が多量となり、従って、勢い良く雨水が降った場合も水受部材による排水機能が十分に発揮される結果、屋外階段の排水処理を簡単な構造でしかも確実に行なうことができ、雨天時における階段の歩行の安全性を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本実施形態の階段本体1は、図2に示すように、傾斜した状態で取り付けられる左右一対のササラ桁2(階段の側桁)の間に複数の段板3が所定間隔で取り付けられている。なお、段板3は、踏み板3aと蹴込み板3bとからなる。左右一対のササラ桁2は例えば断面コ字状の型材からなり、その傾斜上端が図1に示すように、踊り場52側の支柱51に固定され、傾斜下端が基礎コンクリート50側の支柱54に固定されている。図1中の10は欄干、11は手すりである。
【0013】
上記水受部材4は、図1に示すように、段板3よりも下方位置でササラ桁2の略全長に亘って傾斜状態で設置されて、段板3から垂れ落ちる雨水を受けて排水処理する働きをする。なお水受部材4の材質は特に問わず、木製、合成樹脂製、金属製など、いずれでもよい。
【0014】
本例の水受部材4は、ササラ桁2の傾斜方向Aに複数に分割されている。各水受部材4は同じ構造をしており、図2(a)に示すように、左右のササラ桁2の外側方Cをそれぞれ覆う左右一対の側板部4A,4Aと、側板部4A,4Aの下端部間に連なって段板3の下方を覆う扁平筐形状の底板部4Bとを備えている。側板部4Aの上端部には、ササラ桁2の上端面に支持される上部支持片12が設けられ、側板部4Aの下端部には、ササラ桁2の下端面よりも下方に配置される逆L形の取付片13が設けられている。一方、図2(a)(b)、図3に示すように、底板部4Bの左右両端部には、それぞれ、左右一対の立ち上がり片15が立設されると共に、各立ち上がり片15の上端から外側方Cに向けて鍔片14が折り返され、この鍔片14を上記側板部4Aの取付片13の下面に重ね合わせて、下方からビス等で止着することで、左右一対の側板部4Aと底板部4Bとが固着一体化されるようになっている。このビス等による側板部4Aと底板部4Bとの止着作業は、工場で予め行なう場合或いは現場で行なう場合のいずれでもよい。
【0015】
さらに図3に示すように、底板部4Bの傾斜上流A1側には上折板部5が折曲され、底板部4Bの傾斜下流A2側には下折板部6が折曲されている。図4は施工状態の水受部材4を示している。水受部材4の上折板部5は、水受部材4の内方に向かって且つ先端部にいく程水平方向Dに対して下り傾斜状となるように、底板部4Bに対して鋭角θ(例えば、約30°)に折り曲げられている。一方、下折板部6は、上折板部5と略平行に且つ同一方向に折り曲げられている。また、上折板部5(下折板部6も同様)の上端の高さHは、側板部4Aの上端とほぼ同じ高さとされ、雨水が上折板部5及び下折板部6を図4の矢印a方向に容易に乗越えるようにしている。さらに下折板部6の先端からはコ字状に折り返されたフック部7が延設されており、隣接する上段側の水受部材4の上折板部5の下面に下段側の水受部材4の下折板部6を重ねるようにして、フック部7を下折板部6の下面に引っ掛けて係止することで、各水受部材4が相互に連結されるようになっている。なおフック部7は、下折板部6側ではなく、上折板部5側に設けられてもよい。
【0016】
なお図3、図4中の16は水受部材4の剛性を高めるための山形状補強金物16である。この山形状補強金物16は排水路8内に配置されると共に、上折板部5(下折板部6も同様)と同じ角度で且つ同じ方向に傾斜した山形状をしており、雨水は図4の矢印a’方向に山形状補強金物16を乗越えて流下できるようになっている。つまり、各水受部材4の内側には、雨水が上折板部5と下折板部6とを乗越えて流下する排水路8が形成されている。なお、最上段の水受部材4の上折板部5は、例えば踊り場の階段裏軒天に面して配置されており、最下段の水受部材4の側板部4Aには、階段の基礎コンクリート50付近で開口する水抜き孔17(図1)が設けられている。
【0017】
しかして、段板3の下方に水受部材4を取り付けた状態では、左右一対のササラ桁2の外側方Cが水受部材4の側板部4Aにてそれぞれ閉塞され、各段板3の下方が水受部材4の底板部4Bにてそれぞれ閉塞される。これにより、降雨時に水受部材4内の排水路8を雨水が流下できるようになるので、建物外部の階段の下方のスペースに雨水が落下することを水受部材4にて防止できるようになり、結果、雨天時における階段の歩行の安全性を十分に向上させることができると共に、歩行した際に踏面上の雨水によって靴等の履物が濡れてしまったり、跳ね上がった雨水でズボンの裾も濡れ易くなるという不具合もなくなり、そのうえ従来はデッドスペースとなっていた階段下のスペースの有効利用を促進することができる。
【0018】
しかも、水受部材4同士を連結するための上折板部5と下折板部6は、いずれも、先端部にいく程、水平方向Dに対して下り傾斜状に折り曲げられているため、排水路8の途中に上折板部5と下折板部6とが突出していても、雨水は上折板部5と下折板部6とを容易に乗越えて排水路8内をスムーズに流下できるようになる。つまり、すべての水受部材4の内側に雨水が溜まることなく、下り傾斜した上折板部5と下折板部6を乗越えて、最下段の水受部材4まで流下でき、最終的に水抜き孔17(図1)から地面に残らず排水されるようになる。
【0019】
そのうえ底板部4Bの左右両端部は左右一対の側板部4Aの下端部に連なっているので、水受部材4の排水処理量が多量となり、段板3のみならずササラ桁2から垂れる雨水も受けることができ、これにより、勢い良く雨水が降った場合も水受部材4による排水機能が十分に発揮される結果、屋外階段の排水処理を簡単な構造でしかも確実に行なえるものとなる。なお、上折板部5と下折板部6とにそれぞれ排水用開口部を設け、雨水を該排水用開口部から流下させることも可能である。
【0020】
さらに、水受部材4をササラ桁2の傾斜方向Aに複数分割しているので、工場から現場への運搬が容易となり、しかも施工現場での設置作業を大幅に簡略化でき、熟練作業者でなくとも誤りなく短時間で能率よく施工することができる。そのうえ水受部材4同士の連結手段として、上折板部5と下折板部6との引っ掛け係止方式を採用しているので、水受部材4を連結するにあたってネジ、ボルト等の固着具を必要としないため、施工が一層はかどり、工期の短縮化、低コスト化を一層図ることができる。
【0021】
また本例では、ビスによる側板部4Aと底板部4Bとの止着部分(取付片13、鍔片14)が底板部4Bの左右両端の立ち上がり片15によって底板部4Aの下面よりも上方に突出しているため、止着部分に雨水が溜まりにくく、従って、ビス等で止着した場合でも、錆が発生しにくいなど、雨仕舞が良好になる利点もある。
【0022】
なお前記実施形態では水受部材4を板金製品としたが、例えば屋外階段の装飾性を高めて美観を向上させることができる合成樹脂製品で構成してもよい。
【0023】
本発明の水受部材4を備えた階段は、アパート等の低層建築物の外階段に限らず、陸橋などの屋外階段にも好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の水受部材を備えた階段の側面図である。
【図2】(a)は同上の水受部材の正面図、(b)は底板部の斜視図である。
【図3】同上の底板部の側面図である。
【図4】同上の底板部の連結状態を説明する側面図である。
【図5】本発明の参考図である。
【符号の説明】
【0025】
1 階段本体
2 ササラ桁
3 段板
4 水受部材
4A 側板部
4B 底板部
5 上折板部
6 下折板部
7 フック部
8 排水路
A ササラ桁の傾斜方向
A1 傾斜上流
A2 傾斜下流
Cササラ桁の外側方
D水平方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した状態で取り付けられる左右一対のササラ桁の間に複数の段板が所定間隔で取り付けられた階段本体と、段板よりも下方位置でササラ桁の略全長に亘って傾斜状態で設置される水受部材とを備え、階段本体から垂れ落ちる雨水を水受部材で受けて排水処理するようにした階段において、上記水受部材は、ササラ桁の傾斜方向に複数に分割されていると共に、各水受部材は左右一対のササラ桁の外側方をそれぞれ覆う左右一対の側板部と、左右一対の側板部の下端部間に架け渡されて段板の下方を覆う底板部とからなり、底板部の傾斜上流側に、水受部材の内方に向かって且つ先端部にいく程水平方向に対して下り傾斜状となるように折り曲げられた上折板部が設けられ、底板部の傾斜下流側に上折板部と略平行に且つ同一方向に折り曲げられて上折板部に係止されるフック部を備えた下折板部が設けられ、隣接する上段側の水受部材の下折板部と下段側の水受部材の上折板部とを重ね合わせてフック部にて係止することで各水受部材が相互に連結されると共に、各水受部材内に雨水が下折板部と上折板部とを乗越えて流下する排水路が形成されていることを特徴とする階段。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−9653(P2007−9653A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195478(P2005−195478)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】