説明

隠蔽はがき

【課題】 個人情報等の秘匿情報を確実に隠蔽することができ、隠蔽情報を覗き見ることを防止でき、また隠蔽部を剥がして、隠蔽された情報を確認する手間がかからない隠蔽はがきを提供することを目的とする。
【解決手段】 はがき基材と隠蔽基材とが、折り線を挟んで折り返し可能に連接され、前記はがき基材は秘匿情報記入欄を設けたはがき本体部をなし、前記隠蔽基材には少なくとも前記秘匿情報記入欄を被覆可能な隠蔽部が積層されてなる隠蔽はがきにおいて、前記隠蔽部は、前記隠蔽基材上に、少なくとも剥離層と、樹脂転写層と、特定波長の光照射により、有色から無色へと可逆的に色彩が変色する変色インキ層と、粘着層とが積層されて形成されており、前記樹脂転写層は、前記秘匿情報記入欄側に前記粘着層とともに転写された際に、前記はがき本体部から実質的に剥離不可能な程度の脆弱性を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽はがきに関し、更に詳しくは、秘匿情報記入欄を設けたはがき本体部と、該はがき本体部に折り線を挟んで連設され、該折り線の折返しで少なくとも前記秘匿情報記入欄を被覆可能な隠蔽部とからなる隠蔽はがきに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、個人情報等が記載された郵送物を送る際に個人情報を隠蔽するためのラベルが使用されており、例えば、特許文献1にあるように、返信用ハガキ等に個人情報を記載し、その個人情報を覆うように隠蔽ラベルを貼付することにより、隠蔽可能となる。その返信用ハガキを受け取ったものは、記載された個人情報を確認するために、隠蔽ラベルを剥離する必要があるため、数量が多い場合には、隠蔽ラベルを剥離するだけでも大変な手間となっている。
【0003】
また、剥離した返信用ハガキは、大量にデータ処理する業者では、イメージスキャナー等で読取りをする必要があるので、その返信用ハガキに貼付されていた隠蔽ラベルを必ず剥離する必要がある。近年の個人情報保護の高まりから、ハガキ等に記載された個人情報を、隠すために、隠蔽ラベルの需要は高まっている状況にある。
【0004】
この状況下で、隠蔽ラベルの隠蔽性や、情報を隠蔽するラベル貼付後の改ざん防止性などを改良するために、提案がなされている。例えば、特許文献2には、はがき本体部と、折り線を挟んで、隠蔽部を連接した隠蔽はがきで、その隠蔽部を隠蔽基材上に、剥離層、樹脂転写層、変色インキ層、粘着層を設け、その変色インキ層として、加熱により有色(赤色)から透明に変色することが開示されている。
【0005】
しかし、上記の隠蔽はがきは、温度という日常で一般的に得やすいエネルギーにより、色彩が変化するために、第三者でも容易にエネルギーを加え、隠蔽している情報を覗き見ることができてしまう問題があった。また、特許文献2では、変色インキ層が、加熱する条件の他に、光を当てることにより、可逆的に変色するものであってもよいと記載しているが、具体的な内容が示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4073997号公報
【特許文献2】特開2010−58318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、個人情報等の秘匿情報を確実に隠蔽することができ、第三者が隠蔽情報を覗き見ることを防止でき、また隠蔽部を剥がして、隠蔽された情報を確認する手間がかからない隠蔽はがきを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、はがき基材と隠蔽基材とが、折り線を挟んで折り返し可能に連接され、前記はがき基材は秘匿情報記入欄を設けたはがき本体部をなし、前記隠蔽基材には少なくとも前記秘匿情報記入欄を被覆可能な隠蔽部が積層されてなる隠蔽はがきにおいて、前記隠蔽部は、前記隠蔽基材上に、少なくとも剥離層と、樹脂転写層と、特定波長の光照射により、有色から無色へと可逆的に色彩が変色する変色インキ層と、粘着層とが積層されて形成されており、前記樹脂転写層は、前記秘匿情報記入欄側に前記粘着層とともに転写された際に、前記はがき本体部から実質的に剥離不可能な程度の脆弱性を有することを特徴とする構成とする。これにより、上記の隠蔽はがきは、特定波長の光が照射されると、変色インキ層は有色から無色へと可逆的に色彩が変化するので、個人情報等の秘匿情報を隠蔽した状態から、隠蔽情報を認識できるようになる。また、隠蔽ラベルを剥がす手間がなく、特定波長の光を照射するだけで、隠蔽情報を認識できる。
【0009】
また、本発明は、前記の変色インキ層に対し、波長365nm又は405nmの光照射により、色彩が無色から有色へ変化し、該色彩が変化した変色インキ層に波長532nmの光照射により、該色彩が有色から無色に変化することを特徴とする構成とする。この隠蔽はがきを室内放置で観察すると、変色インキ層は無色であるが、特定波長光として、365nm又は405nmの波長光を照射すると、その変色インキ層が無色から有色に変色して、個人情報等の秘匿情報を確実に隠蔽することができる。つまり、本発明の隠蔽はがきにおける隠蔽部の変色インキ層は、紫外線である波長365nm又は405nmの光を照射して、該変色インキ層の色彩が無色から有色へ変化して、確実に隠蔽性を有した状態である。その状態から、特殊な光源を使用して特定の波長である532nmの波長光を照射した時にだけ、変色した変色インキ層が元の無色に変化して、隠蔽されていた情報が認識できるようになり、非常にセキュリティ性の高い隠蔽はがきである。
【0010】
また、前記の変色インキ層は、バリウムマグネシウムケイ酸塩をフォトクロミック材料として含有することを特徴とする構成とする。これにより、特定波長光として、365nm又は405nmの波長光を照射すると、その変色インキ層が無色からピンク色に変わる。また、その変色した状態の変色インキ層に特定波長光として、532nmの波長光を照射すると、変色した変色インキ層が元の無色に変化し、隠蔽していた情報を読み取ることが可能となり、実用性が高いものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の隠蔽はがきは、上記構成をとることにより、個人情報等の秘匿情報を確実に隠蔽することができ、第三者が隠蔽情報を覗き見ることを防止でき、非常にセキュリティ性の高いものである。また、隠蔽部を剥がして、隠蔽された情報を確認する手間がかからなく、非常に実用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の隠蔽はがきである一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の隠蔽はがきの使用方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の隠蔽はがき1である一つの実施形態を示す。図1(1)は、隠蔽はがき1を表面側(宛名面側)から見た平面図であり、図1(2)は、隠蔽はがき1を裏面側から見た平面図である。また図1(3)は、図1(2)に示す矢印A−A´に沿って切断した断面図である。図示した隠蔽はがき1は、はがき本体部2と、隠蔽部3とを有する矩形のシート状の部材である。
【0014】
はがき本体部2は、はがきとして使用される矩形の部分であり、図1(1)に示すように、表面2aには、宛名欄や切手欄等を有し、裏面2b側には、情報を記入可能な秘匿情報記入欄5を有する。このはがき本体部2は、上質紙等の紙類が使用される。はがき本体部2には、折り線4となるミシン目を介して、隠蔽部3が連接して設けられている。秘匿情報記入欄5は、はがき本体部2の裏面2bの少なくとも一部に設けられた筆記又は印字可能な領域であり、鉛筆やボールペン等の筆記具による手書きや、インクジェット記録や熱転写記録などの印字記録等によって情報を記入可能な領域である。図1では、秘匿情報記入欄5には、はがき本体部2の裏面2bの隠蔽部3に近接する領域に形成されている
【0015】
上記の秘匿情報記入欄5には、第三者に対して秘匿する情報、例えば、この隠蔽はがき1が通信販売等の申し込みの際に利用されるはがきである場合、購入希望者である差出人の住所や氏名等の個人情報や、申し込み商品の番号や支払い方法に関する情報(銀行の口座番号やクレジットカードのカード番号等)が記入可能である。
【0016】
隠蔽部3は、隠蔽基材7と、その隠蔽基材7に積層された剥離層8と、樹脂転写層9と、変色インキ層10と、粘着層11と、剥離シート12とを順に積層している。尚、隠蔽基材7は折り線4を介して、はがき本体部であるはがき基材6が連接した形態である。したがって、はがき基材6と隠蔽基材7は同一基材で、折り線4を境にて区分された構成である。
【0017】
隠蔽基材7は、隠蔽部3の基材となる部材であり、はがき本体部2の構成要件であるはがき基材6の長辺の延長方向に、折り線4となるミシン目を介して連続して設けられ、はがき本体部2と同一の上質紙等により構成される。この隠蔽基材7は、折り線4であるミシン目に沿ってはがき本体部2の裏面2b上に重ねるように、折り曲げた場合に、秘匿情報記入欄5の全域を被覆して、記入された情報を十分隠蔽することが可能な大きさを有する。隠蔽基材7は、図1(3)に示すように、使用前の状態(隠蔽はがき1を折り線4であるミシン目に沿って折らない状態)で、秘匿情報記入欄5と同一平面となる面である隠蔽基材の裏面7bに、剥離層8、樹脂転写層9、変色インキ層10、粘着層11、剥離シート12が積層されている。
【0018】
上記のはがき本体部を構成するはがき基材6は、光源等に隠蔽はがき1を透かした場合に、秘匿情報記入欄5の情報が視認可能となることを防ぐために、はがき基材の表面2a(6a)で、秘匿情報記入欄5の上に相当する位置に地紋等を印刷して形成することが好ましい。
【0019】
以下に、本発明の隠蔽はがきを構成する各層について、詳しく説明する。
(はがき基材、隠蔽基材)
隠蔽はがきのはがき基材6(隠蔽基材7)として、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、または基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)を使用することができる。
【0020】
例えば、厚さが20〜300μmのものが好ましい。上記の基材の中でも、紙類が特に好ましい。それは、折り線で折って重ねて、粘着層で秘匿情報記入欄を含むはがき本体部の裏面2bと接着させる際の折適性、接着適性が良好であるからである。また、基材の秘匿情報記入欄と重なる面(はがき基材及び隠蔽基材)に、光源などに隠蔽はがきを透かした場合、秘匿情報記入欄の情報が視認可能になることを防止するため、地紋などの印刷を施すことが好ましい。
【0021】
(剥離層)
剥離層8は、隠蔽基材の裏面7b上に、形成される層であり、隠蔽部3をはがき本体部2に対し、接着した状態から剥離可能にする剥離性を有する層であり、例えば、剥離性に優れたアクリル樹脂、シリコーン樹脂、弗素樹脂、シリコーン或いは弗素で変性した各種の樹脂から構成することができる。上記剥離層は、例えば、乾燥時で0.1〜2g/m2程度の厚みで印刷して形成することが好ましい。印刷方式としては、平板印刷、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。
【0022】
(樹脂転写層)
樹脂転写層9は、剥離層上にアクリル樹脂などからなる紫外線硬化型樹脂等を印刷して形成することができる。樹脂転写層は、変色インキ層及び秘匿情報記入欄を、透視して認識できるように、透明性を有する層である。樹脂転写層は、秘匿情報記入欄側に粘着層とともに転写された際、はがき本体部から実質的に剥離不可能な程度の脆弱性を有したものである。すなわち、隠蔽部が粘着層により、折り線で折られて、はがき本体部に接着した状態から、粘着層をはがき本体部から剥離しようとすると、樹脂転写層自体が破壊(凝集破壊)して、元の状態に戻らないので、第三者の情報の改ざんを防止できる。このような樹脂転写層は、上記の剥離層と同様の印刷方式で、乾燥時で10〜50g/m2程度の厚みで形成することが好ましい。
【0023】
(変色インキ層)
変色インキ層10は、特定波長の光照射により、可逆的に色彩が変化する層であり、フォトクロミック材料がバインダー樹脂により保持された層として構成することができる。フォトクロミック材料とは、光の作用により状態の異なる2つの異性体を可逆的に生成する分子又は分子集合体を含む材料を言う。このフォトクロミック材料は、光照射により、色のみならず屈折率、誘電率、酸化/還元電位など様々な物性が可逆的に変化する。尚、上記の異性体とは分子式は同一だが構造が異なる分子、またはそのような分子からなる化合物のことである。
【0024】
このようなフォトクロミック材料としては、ジアリールエテン系化合物、スピロピラン系化合物等の公知の材料が使用できる。本発明では、特にフォトクロミック材料として、金属酸化物が耐久性に優れる点で好ましく用いられ、特にバリウムマグネシウムケイ酸塩(BaMgSiO4)が好ましく用いられる。このフォトクロミック材料は、詳しくは水素を約5%程度含有したアルゴン雰囲気中(還元雰囲気中)で調整したバリウムマグネシウムケイ酸塩であり、さらに、該調整したバリウムマグネシウムケイ酸塩に鉄(Fe)の元素を添加して、色彩の変化を大きくすることができる。
【0025】
上記の還元雰囲気中で調整したバリウムマグネシウムケイ酸塩は、365nm又は405nmの波長光を照射すると、無色からピンク色に変化する。但し、405nmの波長光を照射すると、薄いピンク色になり、365nmの波長光を照射すると、濃いピンク色に変わるので、照射する光の波長で色の濃度を制御することができる。また、上記のピンク色の状態から、532nmの波長光を照射すると、無色に戻り、可逆的な変化となり、さらに、また無色の状態から、上記の365nm又は405nmの波長光を照射すると、ピンク色に変わり、上記の変化が繰り返し行なえる。
【0026】
変色インキ層は、上記のフォトクロミック材料を、各種の印刷方式に応じたバインダー樹脂(ビヒクル)に分散させ、必要に応じて各種の添加剤、溶剤を加えて、印刷用インキを調整し、その印刷用インキを用いて印刷形成することができる。印刷方式としては、平板印刷、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷などが挙げられる。また、変色インキ層の印刷用インキとして、電子線または紫外線(UV)硬化型インキを用いることができ、無機フォトクロミック材料、(UV)反応性モノマー、(UV)反応性オリゴマー、光重合開始剤等を配合することにより調製することができる。また、変色インキ層は酸化重合型インキも使用することができる。
【0027】
上記の反応性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの単官能モノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートなどの二官能モノマーが挙げられる。また、反応性オリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル系重合開始剤を挙げられる。ラジカル系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。通常はこれらのラジカル系光重合開始剤を混合して用いることが通常である。例えば市販品としてBASFジャパンのIirgacure等が使用できる。
【0028】
変色インキ層の厚さは、特に限定されるものではないが、乾燥時で1g/m2以上であり、5g/m2以上20g/m2以下が好ましい。その厚さが1g/m2未満の場合、変色インキ層として、色彩の変化が十分に確認できない傾向になり好ましくない。また一方で、厚さが20g/m2を越えると、色彩変化は十分であるが、無色の状態の印刷部が認識されやすく、偽造防止性に劣り、また無駄なインキを使用することになり、コスト高となる。
【0029】
(粘着層)
粘着層11は、隠蔽部をはがき本体部に貼付するために、必要なもので、各種の粘着剤(接着剤)から構成することができる。例えば、アクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂等が例示され、また、α−シアノアクリレート系、シリコーン系、マレイミド系、スチロール系、ポリオレフィン系、レゾルシノール系、ポリビニルエーテル系、シリコーン系等の接着剤等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー等の熱可塑性エラストマー、又は反応ホットメルト性樹脂等を使用してもよい。
【0030】
上記の粘着層は、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷などの印刷方式で、その厚さを乾燥時で4g/m2〜50g/m2とすることが好ましい。また、粘着層を被着体(対象物である秘匿情報が設けられたはがき本体部)と変色インキ層を設けた隠蔽基材との十分な接着性を有し、その粘着層から剥離することが困難であることが好ましい。無理やりに、隠蔽部を剥がそうとすると、はがき本体部や転写樹脂層が破壊する程度の接着性を有した粘着層が特に好ましい。
【0031】
(剥離シート)
剥離シート12は、通常使用される剥離紙である、グラシン紙の如き高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙又は上質紙等の原紙に目止め層を設けたものの他に、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、もしくはポリプロピレン樹脂フィルム等をフッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等により離型処理して得た離型性フィルムが使用される。また、クラフト紙又は上質紙等にポリエチレン等の合成樹脂をラミネートしたポリラミ紙等に、溶剤型あるいは無溶剤型のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等からなる剥離剤を乾燥質量が0.05〜3g/m2程度になるように塗布後、熱硬化や電子線あるいは紫外線硬化等によって剥離剤層を形成したものが適宜使用される。隠蔽はがきは、この剥離シートを剥離し、その剥離された隠蔽部の粘着層を利用して、秘匿情報記入欄5を含むはがき本体部に、隠蔽部が貼着される。
【0032】
図2は、本発明の隠蔽はがきの使用方法を説明する概略図であり、図2(1)に示すように、秘匿情報記入欄5を設けたはがき本体部2と、該はがき本体部2に折り線4を挟んで、隠蔽部3が連設し、該隠蔽部3は、隠蔽基材7上に、剥離層8と、樹脂転写層9と、特定波長の光照射により、有色から無色へと可逆的に色彩が変色する変色インキ層10と、粘着層11と、剥離シート12が積層された構成である。
【0033】
図2(1)の状態から、図2(2)に示すように、差出人が秘匿情報記入欄5に必要な情報を、ボールペン等を使用し筆記して記入する。記入後に、差出人は剥離シート12を粘着層11から剥離する。次に、図2(3)に示すように、折り線4に沿って、基材を折り、隠蔽部3(隠蔽基材7)をはがき本体部2の裏面(2b、6b)側へ、秘匿情報記入欄5を被覆するように折り重ねる。このとき、樹脂転写層9と変色インキ層10と粘着層11とは、はがき本体部2の秘匿情報記入欄5上に転写された状態となっており、図2(4)に示すように、剥離シート12側と隠蔽基材7側とが、樹脂転写層9と剥離層8との間で剥離する。
【0034】
図2(4)の状態から、図2(5)に示すように、秘匿情報記入欄5は、転写された樹脂転写層9、変色インキ層10及び粘着層11に覆われた状態となっており、変色インキ層10を有色(例えば、ピンク色)の状態にしているので、秘匿情報記入欄5に記載された情報が隠蔽され、その情報を目視することができない。(例えば、図2(1)で示される隠蔽はがき1は、予め365nmの光照射により、変色インキ層の色彩が無色から有色(ピンク色)に変化させておく。)尚、隠蔽部3(隠蔽基材7及び剥離層8を折り線4に沿って、切り取った状態を示しているが、隠蔽部3を切り取らなくてもよい。
【0035】
そして、図2(6)に示すように、受取人は、粘着層11、変色インキ層10、樹脂転写層9に覆われた秘匿情報記入欄5に、波長532nmの光照射を行なうことにより、変色インキ層10の色彩が有色から無色に変化して、受取人は、秘匿情報記入欄5に記載された情報を視認することができる(図2(7)参照)。仮に、変色インキ層が無色の状態で、第三者に秘匿情報記入欄5を盗み見られることがあっても、樹脂転写層9をはがき本体部2から剥離しようとすると、樹脂転写層9が、その脆弱性によって修復不能に破壊されるので、樹脂転写層9及び変色インキ層10、粘着層11を剥離して秘匿情報記入欄5の情報を改ざんすることができない。従って、悪意ある第三者による情報の改ざんを防止できる。さらに、隠蔽部3を一旦剥離すると、はがきに再貼付することが不可能であるので、受取人は受取人以外の何者かが隠蔽部3を剥離したことを検知でき、悪用防止性が高い。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
はがき基材(はがき基材及び隠蔽基材)として、王子製紙(株)製の上質紙(64g/m2、商品名OK55)を用い、該基材の一方の面へ、図1に示すように、シリコーン系樹脂を主成分とした剥離層用インキにより、グラビア印刷で、乾燥時で1g/m2の厚みで、剥離層8を印刷して形成した。その剥離層の上に、アクリル系樹脂を主成分とした紫外線硬化型インキ(DICグラフィック(株)製、商品名UV BF SG メジウム)を用いて、オフセット印刷により、樹脂転写層9を乾燥時で20g/m2の厚みで、形成した。
【0037】
上記の樹脂転写層の上に、下記の変色インキ層用インキにより、凸版印刷で、乾燥時で8g/m2の厚みで、変色インキ層10を形成した。尚、以下のインキ配合などにおける部は、全て質量基準である。
【0038】
フォトクロミック材料として、水素を約5%程度含有したアルゴン雰囲気中(還元雰囲気中)で調整したバリウムマグネシウムケイ酸塩を5部、ロジン変性フェノール樹脂30部、アマニ油25部、高沸点芳香族ナフタ15部を混合混練して、変色インキ層用インキを製造した。このフォトクロミック材料は、365nm又は405nmの波長光を照射すると、無色からピンク色に変化し、上記のピンク色の状態から、532nmの波長光を照射すると、無色に戻り、この可逆的な変化を繰り返し行なえる。
【0039】
上記の変色インキ層10の上に、アクリル系樹脂の粘着剤(接着剤)を用いて、乾燥状態で20g/m2の厚さになるように、グラビア印刷で、粘着層11を形成し、その粘着層11を覆うように、以下に示す剥離シート12を積層させて、実施例1の隠蔽はがき1を作製した。
剥離シート12は、上質紙(45g/m2)にポリエチレンの合成樹脂をラミネートしたポリラミ紙のポリエチレンの面に、溶剤型のシリコーン樹脂からなる剥離剤を乾燥質量が2g/m2になるように塗布、乾燥させたものを使用した。
【0040】
但し、上記の剥離シートを積層する前に、変色インキ層に365nmの波長光を照射して、変色インキ層の色彩をピンク色にしておいた。尚、図1に示すように、はがき本体部2のはがき基材6の表面6aに、郵便番号の枠及び切手貼付位置の枠を、赤色インキで使用しオフセット印刷で予め形成しておく。さらに、はがき基材6の裏面6b(上記の剥離層8、樹脂転写層9、変色インキ層10、粘着層11の設けている基材面)に、隠蔽情報記入欄の枠を、灰色インキを用い、オフセット印刷で、予め形成しておいた。また、はがき基材6と隠蔽基材7を区分けする折り線4をミシン加工により形成しておいた。
【0041】
上記の隠蔽はがきの隠蔽情報記入欄に、個人が自身の個人情報(氏名、生年月日、既婚、未婚の区別等)を手書きで記入し、その記入した情報を隠蔽するために、図2に示すように、隠蔽部3の剥離シート12を剥がし、折り線4に沿って、隠蔽部3を折ることで、該記入した情報を覆うように粘着層11により、隠蔽部3をはがき本体部2に貼り付けた。そして、その状態で、隠蔽はがきを、切手を貼り、宛先の郵便番号、住所、氏名を記載し、郵送した。その結果、郵送途中に各種環境下におかれても、そのはがきの宛先である個人が、隠蔽はがきの折られた隠蔽部の隠蔽基材7をはがきから剥離して、隠蔽情報記入欄5の上に、粘着層11、変色インキ層10、樹脂転写層9が積層されたものを得た。(図2(5)参照)そして、はがきが届けられた個人が予め知らせされていたとおり、変色インキ層がピンク色で隠蔽し、秘匿情報が視認できない状態から、532nmの波長光を照射して、変色インキ層が無色に変化して、その隠蔽されていた情報を読み取ることができた。
【0042】
したがって、上記の隠蔽はがきは、変色インキ層が有色になっているので、郵送途中に秘匿情報が盗み見られることがない。また万一、第三者が樹脂転写層9をはがき本体部2から剥離しようとすると、樹脂転写層9が、その脆弱性によって修復不能に破壊されるので、樹脂転写層9及び変色インキ層10、粘着層11を剥離して秘匿情報記入欄5の情報を改ざんすることができない。従って、悪意ある第三者による情報の改ざんを防止できた。さらに、隠蔽部3を一旦剥離すると、はがきに再貼付することが不可能であるので、受取人は受取人以外の何者かが隠蔽部3を剥離したことを検知でき、悪用防止性が高いものであった。また、上記の隠蔽はがきは、従来の秘匿情報に隠蔽ラベルを貼り付けて、そのラベルを剥がして、隠蔽されていた情報を確認する際のラベルを剥がす手間がかからないものであり、実用性の高いものであった。
【符号の説明】
【0043】
1 隠蔽はがき
2 はがき本体部
3 隠蔽部
4 折り線
5 秘匿情報記入欄
6 はがき基材
7 隠蔽基材
8 剥離層
9 樹脂転写層
10 変色インキ層
11 粘着層
12 剥離シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
はがき基材と隠蔽基材とが、折り線を挟んで折り返し可能に連接され、前記はがき基材は秘匿情報記入欄を設けたはがき本体部をなし、前記隠蔽基材には少なくとも前記秘匿情報記入欄を被覆可能な隠蔽部が積層されてなる隠蔽はがきにおいて、前記隠蔽部は、前記隠蔽基材上に、少なくとも剥離層と、樹脂転写層と、特定波長の光照射により、有色から無色へと可逆的に色彩が変色する変色インキ層と、粘着層とが積層されて形成されており、前記樹脂転写層は、前記秘匿情報記入欄側に前記粘着層とともに転写された際に、前記はがき本体部から実質的に剥離不可能な程度の脆弱性を有することを特徴とする隠蔽はがき。
【請求項2】
前記の変色インキ層に対し、波長365nm又は405nmの光照射により、色彩が無色から有色へ変化し、該色彩が変化した変色インキ層に波長532nmの光照射により、該色彩が有色から無色に変化することを特徴とする請求項1に記載する隠蔽はがき。
【請求項3】
前記の変色インキ層は、バリウムマグネシウムケイ酸塩をフォトクロミック材料として含有することを特徴とする請求項1または2に記載する隠蔽はがき。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−59913(P2013−59913A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199794(P2011−199794)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】