説明

雄側端子金具

【課題】 金属板材の曲げ加工によって低コストで製造できながら、強度向上も図ることができる雄側端子金具を提供する。
【解決手段】 雄側端子金具20は、例えば銅合金製板材を曲げ加工してつくられ、バレル部30と、雌側端子金具に挿入される接触突部40と、これらの間に位置する角筒部50とを一体に有している。角筒部50は天井壁部52と上下に重なる重合板部53を備え、その重合板部53の先端から接触突部40の根本部分内に侵入する補強板部54が一体に延出している。従って、接触突部40の強度を確保することができ、外力によって不用意に変形することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性の金属板材を曲げ加工して形成される雄側端子金具に関し、特にその補強を図ったものに関する。
【0002】
【従来の技術】この種の雄側端子金具として、図9に示す構造が公知である。これは、図示しない電線を固着するためのバレル部1と、図示しない雌側端子金具に挿入される接触突部2と、そのバレル部1と接触突部2との間に位置する角筒部3とを、銅合金板等の金属板材の曲げ加工によって一体に形成したものである。ここで、角筒部3は金属板材を箱形に曲げ加工してなり両端が突き合わせ状態となっており、接触突部2は断面U字型の溝形をなすように曲げ加工して形成されている。このような雄側端子金具は、金属板材の曲げ加工により製造できるから、安価に製造できるという利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記構造の雄側端子金具では、接触突部2が内部を空洞にした溝形形状であるから、ここに強い外力が作用すると、その基部から変形し易いという問題があった。接触突部の強度を高めるには、これを角柱状の金属ピンによって製造することもできるが、すると金属板材製のバレル部と一体化するためにカシメや溶接等の付加工程が必要になるから、コストアップを招く。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、金属板材の曲げ加工によって低コストで製造できながら、強度向上も図ることができる雄側端子金具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る雄側端子金具は、電線を固着するためのバレル部と、雌側端子金具に挿入される接触突部とを、導電性の金属板材を曲げ加工することにより一体に形成したものにおいて、接触突部よりもバレル側の位置から接触突部の基部に沿って延びる補強部を一体に延出させたところに特徴を有する。
【0006】また、請求項2の発明に係る雄側端子金具は、電線を固着するためのバレル部と、雌側端子金具に挿入される接触突部とを、導電性の金属板材を曲げ加工することにより一体に形成し、接触突部は金属板材を少なくとも基部において溝形に曲げ加工して形成したものにおいて、接触突部よりもバレル側の位置から接触突部の基部の内部に突出する補強部を一体に延出させたところに特徴を有する。さらに、請求項3の発明に係る雄側端子金具は、請求項1又は請求項2のものにおいて、接触突部よりもバレル側に位置して金属板材を側面部において重なる角筒状に形成し、その重なり部分の先端から補強部を一体に延出させたところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】請求項1の雄側端子金具によれば、接触突部の基部に補強部が沿って延びる構造となるから、その補強部によって接触突部の基部が補強され、接触突部に外力が作用してもその変形を防止することができる。また、その補強部は金属板材の一部を使って形成されるから、ほとんどコスト増大要因とはならず、依然として安価に製造できる。請求項2の雄側端子金具によれば、接触突部の溝形状の内部に補強部が位置するから、より確実に補強することができる。
【0008】また、請求項3の雄側端子金具では、接触突部の基部側に角筒部分が形成されることになるから、端子全体の強度が高まり、その角筒部分の構成要素を利用して上記補強部を形成できるから、合理的である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1ないし図8を参照して説明する。
【0010】図1は本発明に係る雄側端子金具20をコネクタハウジング10に収容した状態を示す。コネクタハウジング10には、例えば図示左側にフード部11が形成されるとともに、そのフード部11内に開口するキャビティ12が上下2段に形成されている。キャビティ12内には雄側端子金具20を係止するための係止突起13が突設されるとともに、フード部11側の端部に貫通孔14を備えた隔壁部15が形成されている。
【0011】次に、雄側端子金具20について詳述すると、これは例えば銅合金製板材を曲げ加工して、電線70を固着するためのバレル部30と、図示しない雌側端子金具に挿入される接触突部40と、これらの間に位置する角筒部50とを一体に有するように製造されており、その角筒部50には保護カバー60が装着されている。
【0012】上記保護カバー60は、雄側端子金具20を構成する銅合金よりも剛性が高い例えばステンレス鋼の板材を曲げ加工して角筒状に形成したもので、雄側端子金具20の角筒部50に嵌合された状態で係止片61を折り曲げて雄側端子金具20に固定されている。また、この保護カバー60の上面にはランス62が切り起し状に形成され、雄側端子金具20がキャビティ12内に挿入されると、このランス62が前記コネクタハウジング10の係止突起13と係合することで雄側端子金具20がコネクタハウジング10内に固定されている。なお、ランス62の先端両側には下向きに補強片63が一体に曲げ形成されてランス62の係合強度を高めるようになっている。また、ランス62の側方には保護縦壁64が保護カバー60から一体に延設され、これにてランス62の下方空間に電線等が進入してランス62を引っかけて過剰な変形に至らせることを防止するようになっている。
【0013】さて、雄側端子金具20の前記接触突部40は、角筒部50の先端側を先細のテーパ状に絞るような形態で連続的に形成され、一側面側を開放した断面U字型の溝形状をなしており(図8参照)、その先端は先細となるように曲げ加工されている。
【0014】一方、図3及び図7に示すように、前記角筒部50は、図示した右側壁部51の上端から天井壁部52の下側に入り込んで上下に重なる重合板部53を備え、その重合板部53の先端から、前記接触突部40の根元部分内に進入する補強板部54が一体に延出している(図1参照)。この補強板部54は接触突部40を溝形に曲げ加工する際に根元部分に挟み込まれて接触突部40と一体化されている。また、角筒部50の天井壁部52のうち接触突部40に連なる部分には、上記補強板部54を側方から押さえ込むように押さえ片55が曲げ形成され、これにて補強板部54の抜け止め及び接触突部40の基部の補強が図られている。
【0015】なお、雄側端子金具20のバレル部30には、電線70を絶縁被覆ごとカシメ固定するインシュレーションバレル31と、その先端側に位置して電線70の芯線71をカシメ固定するワイヤバレル32とが形成されている。
【0016】以上の構成とした本実施形態によれば、接触突部40が金属板材を曲げ加工して形成されたものでありながら、その根元部分に補強板部54が挟まれているので、中身の金属ピンと同等な強度が確保でき、外力によって接触突部40が不用意に曲がり変形してしまうことを確実に防止できる。もちろん、以上の構成を全て金属板材の曲げ加工により製造できるから、製造コストも低廉である。
【0017】また、特に本実施形態では接触突部40の基部に角筒部50を形成し、その角筒部50の重合板部53から補強板部54を一体に延出する構造であるから、接触突部40の基部の補強を図りながら、その一部を利用して補強板部54を構成することができるという利点が得られる。
【0018】<他の実施形態>本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0019】(1)上記実施形態では、雄側端子金具20に保護カバー60を嵌合する構成としたが、これは必須ではなく省略することができる。その場合には、例えば角筒部50にランスを切り起し形成してもよく、或いは、コネクタハウジング側に設けた樹脂ランスが係合する係合孔を形成するようにしてもよい。
(2)上記実施形態では接触突部40の全体を溝形に加工したが、これに限られず、全体或いは先端側を潰すようにプレス加工してもよく、要は接触突部40の基部に補強部が設けられていればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の雄側端子金具をコネクタハウジングに収容した状態の縦断面図
【図2】本発明の雄側端子金具を示す斜視図
【図3】同じく雄側端子金具の縦断面図
【図4】同じく保護カバーを取り除いた雄側端子金具の斜視図
【図5】同じく雄側端子金具の側面図
【図6】同じく雄側端子金具の平面図
【図7】同じく雄側端子金具の図5のA−A線に沿う縦断面図
【図8】同じく雄側端子金具の図5のB−B線に沿う縦断面図
【図9】従来の雄側端子金具を示す斜視図
【符号の説明】
20…雄側端子金具
30…バレル部
40…接触突部
50…角筒部
54…補強板部(補強部)
70…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電線を固着するためのバレル部と、雌側端子金具に挿入される接触突部とを、導電性の金属板材を曲げ加工することにより一体に形成したものにおいて、前記接触突部よりも前記バレル側の位置から前記接触突部の基部に沿って延びる補強部を一体に延出させたことを特徴とする雄側端子金具。
【請求項2】 電線を固着するためのバレル部と、雌側端子金具に挿入される接触突部とを、導電性の金属板材を曲げ加工することにより一体に形成し、前記接触突部は前記金属板材を少なくとも基部において溝形に曲げ加工して形成したものにおいて、前記接触突部よりも前記バレル側の位置から前記接触突部の前記基部の内部に突出する補強部を一体に延出させたことを特徴とする雄側端子金具。
【請求項3】 接触突部よりもバレル側に位置して前記金属板材を側面部において重なる角筒状に形成し、その重なり部分の先端から前記補強部を一体に延出させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の雄側端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平10−40986
【公開日】平成10年(1998)2月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−197943
【出願日】平成8年(1996)7月26日
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)