説明

雄性不稔性ユリの稔性回復方法

【課題】 雄性不稔性ユリを花粉親としても使用できるとともに、葯壁が形成されるが葯が裂開しないいわゆる機能性雄性不稔を誘導し、雄性不稔系統の育成効率化と、雄性不稔性ユリの雄ずいにおける段階的な形態形成を誘導する手段を提供する。
【解決手段】 「秋田プチホワイト」などの雄性不稔性ユリを高温条件下で栽培し、稔性を回復させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄性不稔性ユリの稔性回復方法、及びこの方法によって稔性を回復したユリ、並びにこのユリを用いた雄性不稔性ユリの育種方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユリ属(Lilium)は世界に約130種が分布するが、東アジアは遺伝資源中枢のひとつである。日本には固有種が9種と中国、シベリアなどの大陸にも分布する6種の合計15種の野生種が自生している。(Motoo Shimizu(1987)The Lilies of Japan; Species and Hybrids)、日本では野生種そのものの鑑賞価値が高く、山野から採取して鑑賞に供していたため、約30年前までほとんど交雑育種がなされてこなかった。また、欧米においても、他の花きに比べるとユリの品種改良の歴史は比較的浅く、1940年代からようやく本格化した(浅野義人(1982) 育種学最近の進歩 23:48-57)。ユリ園芸種は、英国王立園芸協会により、交雑親を基に8つの交雑群に分類され(1964)、その中の1群であるアジアティックハイブリッドは、多くの栽培種が含まれる最も大きな交雑群である。
【0003】
ユリの葯は他の花きの葯と比べると相対的に大きく、裂開すると多くの花粉が飛散し、衣服に付着すると汚れが目立つので、ユリの花粉を嫌う消費者が多い。そのため、日本の生花店では開花したユリの花から葯を手作業によって取り除き店頭に並べている。柴田らは花粉が飛散しないユリの作出を目標に品種改良を行い、白花の小輪で斑点が極めて少なく、花糸の先端に葯を形成しない雄性不稔性のアジアティックハイブリッドユリ「秋田プチホワイト」を育成した(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】平成12年度研究成果選シリーズ5頁(農林水産省農林水産技術会議事務局)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雄性不稔性ユリの育種では、育種母本に雄性不稔性ユリを用いることで効率的に雄性不稔性系統を育成することが可能であるが、現在のところ、雄性不稔性ユリでは花粉が形成されないため、子房親にのみ使うことに限定され、花粉親に用いることができないので、育種の自由度が制限されている状況である。
【0006】
雄性不稔性ユリの稔性を回復させ、花粉形成を可能にできれば、その雄性不稔性ユリを子房親としてだけでなく、花粉親としても使用できるようになり、雄性不稔性系統の育成効率は飛躍的に向上する。本発明は、このような技術的背景の下になされたものであり、雄性不稔性ユリの稔性を回復させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、雄性不稔性ユリを高温条件下において栽培することにより、そのユリの稔性を回復できることを見出した。
【0008】
雄性不稔性植物の稔性回復については、イネやトウモロコシなどにおいて、温度や日長等環境条件によって稔性が回復する場合のあることが明らかになっている。特にイネでは温度によって稔性が回復する温度感応性雄性不稔性を利用して、中国においては1代雑種種子の生産が広く行われている。しかし、イネやトウモロコシ等の温度感応性雄性不稔は、高温においては雄性不稔を維持し、低温においては稔性回復する場合が大半で、高温によって稔性が回復する雄性不稔性は高等植物においてはほとんど知られていない。
【0009】
本発明は、以上のような知見に基づき完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供するものである。
【0011】
(1)雄性不稔性ユリを高温条件下で栽培することを特徴とする雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【0012】
(2)雄性不稔性ユリが、ユリ品種「秋田プチホワイト」又は「秋田プチホワイト」を育種母本として育種された雄性不稔性ユリであることを特徴とする(1)記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【0013】
(3)高温条件下での栽培が、連続的に又は間欠的に29℃以上の温度となる環境下での栽培であることを特徴とする(1)又は(2)記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【0014】
(4)高温条件下で栽培する時期が、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【0015】
(5)高温条件下で栽培する期間が、5日以上であることを特徴とする(4)記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【0016】
(6)(1)乃至(5)のいずれか記載の方法によって稔性を回復したユリ。
【0017】
(7)(6)記載のユリを花粉親とする交配を行うことを特徴とする雄性不稔性ユリの育種方法。
【0018】
(8)葯を形成しないユリを高温条件下で栽培することを特徴とする機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【0019】
(9)葯を形成しないユリが、ユリ品種「秋田プチホワイト」又は「秋田プチホワイト」を育種母本として育種された葯を形成しないユリであることを特徴とする(8)記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【0020】
(10)高温条件下で栽培する時期が、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間であることを特徴とする(8)又は(9)記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【0021】
(11)高温条件下で栽培する期間が、5日以上であることを特徴とする(10)記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【0022】
(12)(8)乃至(11)のいずれか記載の方法によって作出された機能的雄性不稔性ユリ。
【発明の効果】
【0023】
本発明により雄性不稔性ユリの稔性を回復させることが可能になる。これにより、雄性不稔性ユリを花粉親として使用することができるようになり、効率的な雄性不稔系統の育成が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の雄性不稔性ユリの稔性回復方法は、雄性不稔性ユリを高温条件下で栽培することを特徴とするものである。
【0026】
この稔性回復方法の対象とするユリは、雄性不稔性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ユリ品種「秋田プチホワイト(品種登録番号:第11418号)」や「秋田プチホワイト」を育種母本として育種された雄性不稔性ユリなどを対象とすることができる。また、「秋田プチホワイト」以外の雄性不稔ユリ品種を対象としてもよく、そのようなユリ品種としては、「秋田プチクリーム」、「秋田プチレモン」「秋田プチゴールド」などを挙げることができる。
【0027】
「高温条件下で栽培する」とは、一般的な栽培方法ではユリが遭遇しないような高い温度条件下で連続的に又は間欠的に栽培することをいう。具体的な温度は稔性の回復がみられる温度であれば特に限定されないが、通常、29℃以上であり、好適には、31℃以上である。高温条件下での栽培は、高温になるような人為的な処理(例えば、保温、加温など)によって行ってもよく、また、ユリが高温に遭遇するように球根の植付け時期を調整することによって行ってもよい。
【0028】
高温条件下で栽培する時期は、稔性の回復がみられる時期であれば特に限定されないが、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間が好ましい。高温条件下での栽培は、ユリの生育過程全期間にわたって行ってもよく、また、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間だけ行ってもよい。更に、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間の特定の期間だけ行うことも可能である。この場合、高温条件下での栽培期間は5日以上であることが好ましい。
【0029】
以上のような方法によって稔性を回復したユリは、遺伝的に雄性不稔という形質を保持しつつ、その個体自体は花粉を形成するので、雄性不稔系統育種のための花粉親として使用することができる。
【0030】
以上の稔性回復方法を応用することによって、商品価値の高いユリを作出することも可能である。雄性不稔性ユリ品種「秋田プチホワイト」は葯を形成しないが、上述した高温条件下での栽培により葯を形成するようになり、稔性を回復する。この稔性を回復する温度よりもやや低い温度条件で栽培すると、葯は形成されるが、その葯は裂開しないという稔性個体と不稔性個体の中間的な形態(いわゆる機能的雄性不稔)を示すユリが出現する。
【0031】
「秋田プチホワイト」は品種の特徴として雄ずいに葯がなく、また、市販の一般的なユリにおいては手作業により葯が取り除かれ、花粉による衣服などの汚損を防いでいる。しかし、これらのユリの花器は、葯がないために立体感ならびに存在感に欠けることが問題とされることがあり、ユリ以外の他の花との市場における競争力の相対的な低下も危惧されている。上述した機能的雄性不稔性ユリは、この「秋田プチホワイト」の花器のかかる外観上の問題を解消し、さらに花粉が飛散しないという優れた性質を付加することになる。
【実施例】
【0032】
〔実施例1〕
「秋田プチホワイト」の花芽分化の開始時期と花芽発達経過を明らかにするために、花芽を実体顕微鏡で観察した。
【0033】
2002年11月3日に露地圃場から掘り上げて球周14〜16cmに選別した球根を1球ずつ5寸の素焼き鉢に定植し、当日露地圃場に素焼き鉢ごと直接埋めた。そのまま自然状態で越冬させた後、3月から5〜10日置きに掘り上げて花芽分化の発達経過を観察した。
【0034】
観察を開始した3月3日はまだ積雪があったが、掘りあげて生長点を観察した。なお、積雪は4月10日まであったが、出芽は、すでに3月30日に始まっていた。しかし、この出芽の時点では花芽分化は認められなかった。その後、出芽長が約6cmとなった4月15日〜25日の間に花芽分化が始まった。花芽分化を開始して、約1カ月後には花器が完成し5月20日には出蕾を肉眼で確認した(表1)。開花の開始日は、6月23日であった。
【0035】
これらの観察から、「秋田プチホワイト」の花芽分化タイプは、大川の分類(Ohkawa, K(1989) J.Japan.Soc.Hort. Sci 57(4):655-661)における、春に発芽後間もなく花芽分化を開始する2a型であった。
【0036】
【表1】

【0037】
〔実施例2〕
「秋田プチホワイト」を異なる温度条件下において栽培し、その生育状態や稔性を比較した。球根は、2001年11月に露地圃場に定植、2002年7月に摘花して肥大を促した球根を使用した。2002年11月3日に掘上げた球根を、直ちに側面に通風用の小穴をあけた段ボール箱(30cm×22cm×22cm)の中に黒色のビニールを敷き、湿らせたバーミキュライトを充填して置床した。11/13〜12/25まで暗黒下1℃において6週間予冷し、その後12/26から-2℃で冷凍保存した。球周は12〜14cmの球根を揃えた。
【0038】
冷凍貯蔵した球根を2002年2月26日から12℃暗黒下の冷蔵庫で段ボール箱に入れたまま5日間解凍し、1〜1.5cmに出芽した球根を4寸素焼き鉢にプラグミックス(Scotts-Sierra Horticultural Products Company):赤玉土の1:1混合土を床土にして1球ずつ定植し、直ちに、グロースキャビネットに搬入した。グロースキャビネットは高温区(昼温:32℃/夜温:25℃)、中温区(昼温:25℃/夜温:18℃)、および低温区(昼温:18℃/夜温:11℃)の3区を設定して、開花するまで継続的に観察した。なお、いずれの区も、蛍光灯によって14時間日長条件下とし、光強度は最上位葉の上面において256μmol/m2/sであり、相対湿度は70%に調節した。
【0039】
開花までの到花日数は高温区が最も短く、中温区が高温区よりも3日ほど長く、低温区は高温区よりも約3週間長かった。開花した時点での草丈は低温区と中温区が同程度であり、高温区は他の2区に比べて低かった。ただし、高温区では、出蕾までは順調に生育したが、出蕾後に8株中3株においてブラスチングが発生し開花しなかった。花数と葉数は低温区と中温区とではほぼ同じであったが、高温区において一株あたりの花数は中温区、低温区よりも約6個少なく、葉数は約9枚多かった。低温区では花弁の斑点の数は極めて少なかったが、処理温度の上昇に伴い斑点の数の増加も認められた(表2)。
【0040】
高温区においてのみ、開花に至った小花の全てに葯が形成された(表2)。形成された葯は裂開して花粉が露出した(図1)。中温区において開花した小花は、花糸の先端が湾曲して黄色に着色したが、花粉の形成は全く観察されなかった(図2)。低温区においては花糸の先端は尖り、葯の形成は観察されなかった(図3)。
【0041】
このことから「秋田プチホワイト」は高温区において葯が形成され、しかも花粉も形成することが明らかになった。
【0042】
【表2】

【0043】
〔実施例3〕
高温区で処理した「秋田プチホワイト」の形成された葯の中の花粉を用いて発芽試験及び花粉稔性調査を行った。花粉発芽試験の培地はBrewbaker and Kwack の培地(100mg/l Boric acid 300mg/l Ca(NO3)24H2O 200mg/l MgSO47H2O 100mg/l KNO3)に20%ショ糖及び0.8%の寒天培地を加えて、23℃の恒温器において24時間培養した後に顕微鏡観察を行いを発芽率を算出した。花粉稔性の調査は、形成された花粉をラクトフェノールコットンブルー液によって染色し、着色した花粉を稔性花粉として計数した。また蛍光顕微鏡下において蛍光染色による核の観察を行った。さらに開花直後の花粉をカーボン蒸着して、走査型電子顕微鏡(SEM)によって外部形態を観察した。
【0044】
培地上で24時間後の発芽率は58.6%であったが、発芽後には発芽管の伸長も観察された。ラクトフェノールコットンブルー染色による花粉稔性調査では、子房親品種「アポロ」の染色率より約10%低かった(表3)。蛍光顕微鏡観察では、花粉粒の中に精核と栄養核が認められた(図4)。また、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、これらの花粉が、楕円形で発芽溝を1本持ち、しかも表面構造が網目状であるといったユリ花粉の一般的な特性を兼ね備えていることが確認された(図5)。「秋田プチホワイト」の形成された花粉を市販品種に交配するとさく果が形成され、受精能力を持つことも確認された(図6)。これらのことから、高温により回復した葯の中に形成された花粉は稔性を回復していることが確認できた。
【0045】
【表3】

【0046】
〔実施例4〕
「秋田プチクリーム」、「秋田プチレモン」、「秋田プチゴールド」の3品種を実施例2と同様に栽培し、生育経過を観察した(表4)。
【0047】
「秋田プチクリーム」は中温区と高温区とにおいて、「秋田プチレモン」は高温区において花粉の形成が観察された。「秋田プチゴールド」は、この実験では、いずれの温度区においても花粉は形成されなかった。
【0048】
【表4】

【0049】
〔実施例5〕
秋田プチホワイトの葯が高温区において形成されたことを踏まえて、植物体が高温に感応する時期を特定するため以下の実験を行った。
【0050】
2003年11月から冷蔵、冷凍貯蔵した球周12〜14cmの「秋田プチホワイト」の球根を、解凍し、5寸プラスチック鉢に3球ずつ植え込み、人工気象器内で栽培した。人工気象器内の温度条件は、下記表5に示す3種類の実験区を設定した。温度条件以外の環境条件は、14時間日長、光源は蛍光灯で、光強度は256μmol/m2/sとなるようにした。
【0051】
【表5】

【0052】
高温処理を出芽時から1週間行った区では葯が形成されず、出蕾から1週間同処理を行った株では葯が回復した。出蕾1週後より1週間高温処理した区においては33.3%で葯が形成した(表6)。また、葯が回復した株のなかには、すべての花で葯が回復せずに、葯が回復した花と葯が形成されない花、花糸の先端が黄色に着色して湾曲する花が混在した花序も認めれらた(図7)。葯の回復の頻度も、一花のうち6本の雄ずい全てが葯を回復する花から、1本〜5本だけ葯を回復する花が観察された。これらの花器においては、まず外花被において葯が形成され、さらに内花被においても葯が形成される規則性が観察された(図8)。
【0053】
【表6】

【0054】
〔実施例6〕
高温処理による葯の形成の誘導に日長時間が及ぼす影響を調べるため以下の実験を行った。
【0055】
2003年11月から冷蔵、冷凍貯蔵した球周12〜14cmの「秋田プチホワイト」の球根を、解凍し、5寸プラスチック鉢に3球ずつ植え込み、人工気象器内で栽培した。人工気象器内の日長時間は、1)12時間、2)10時間、3)8時間の3種類の実験区を設定した。日長以外の環境条件は、32/25℃(昼温/夜温)、光源は蛍光灯で、光強度は256μmol/m2 /sとなるようにした。
【0056】
実験の結果、いずれの日長条件でも葯の形成が観察されたため、葯の形成に日長は直接的な影響はないと思われた(表7)。
【0057】
【表7】

【0058】
〔実施例7〕
栽培中の高温が葯の形成に与える影響を精査するために、解凍した球根を、プラスチック鉢に植え込み、27℃〜32℃まで1℃ごとに6段階の温度に設定した人工気象器において、全生育期間栽培を行い開花状況を調査した。
【0059】
温度以外の環境条件は、日長14時間、蛍光灯で光強度は256μmol/m2/s、相対湿度70%に設定した。
【0060】
葯の形成は温度の上昇に伴い、形態的に識別できるいくつかの段階が観察された(表8)。すなわちユリの花は6本の雄しべを持つが、27℃では葯が形成されることはあっても、6本すべての雄ずいに葯が形成されることはなく、1〜4本の雄しべのみが回復した。また、その際、左右の葯嚢のうち片方の葯嚢にのみ花粉が形成される例が多かった(図9及び図10)。28℃では全ての花で葯が回復したが、6本の雄しべの葯のうち左右の葯嚢ともに発達して花粉が形成された完全な葯は約2割であった。29℃では、全ての花の6本の雄しべに左右の葯嚢からなる葯が発達し、花粉が形成されたが、これらの葯は全く裂開しなかった。30℃では、約3割の葯において、また31℃以上の場合は全ての葯が裂開し花粉が露出した。
【0061】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】高温区において栽培された「秋田プチホワイト」の写真。
【図2】中温区において栽培された「秋田プチホワイト」の写真。
【図3】低温区において栽培された「秋田プチホワイト」の写真。
【図4】「秋田プチホワイト」の花粉の蛍光顕微鏡写真。
【図5】「秋田プチホワイト」の花粉の走査型電子顕微鏡写真。
【図6】高温処理により形成した「秋田プチホワイト」の花粉を用いて得られたユリのさく果を示す写真。
【図7】高温処理によって葯が形成された「秋田プチホワイト」の写真。第一花(図中のa)には葯が形成されているが、第二花(図中のb)には葯は形成されていない。
【図8】高温処理によって葯が形成された「秋田プチホワイト」の写真。図中の数は、葯を形成した雄ずいの数を示す。
【図9】28℃において栽培された「秋田プチホワイト」の葯の表(左図)と裏(右図)の写真。片方の葯嚢だけが発達している。
【図10】図9に示した葯の断面を示す写真(左図)、花粉を形成しなかった葯の断面を示す写真(右図)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄性不稔性ユリを高温条件下で栽培することを特徴とする雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【請求項2】
雄性不稔性ユリが、ユリ品種「秋田プチホワイト」又は「秋田プチホワイト」を育種母本として育種された雄性不稔性ユリであることを特徴とする請求項1記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【請求項3】
高温条件下での栽培が、連続的に又は間欠的に29℃以上の温度となる環境下での栽培であることを特徴とする請求項1又は2記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【請求項4】
高温条件下で栽培する時期が、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【請求項5】
高温条件下で栽培する期間が、5日以上であることを特徴とする請求項4記載の雄性不稔性ユリの稔性回復方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法によって稔性を回復したユリ。
【請求項7】
請求項6記載のユリを花粉親とする交配を行うことを特徴とする雄性不稔性ユリの育種方法。
【請求項8】
葯を形成しないユリを高温条件下で栽培することを特徴とする機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【請求項9】
葯を形成しないユリが、ユリ品種「秋田プチホワイト」又は「秋田プチホワイト」を育種母本として育種された葯を形成しないユリであることを特徴とする請求項8記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【請求項10】
高温条件下で栽培する時期が、雄ずい分化期から雌ずい分化期までの間であることを特徴とする請求項8又は9記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【請求項11】
高温条件下で栽培する期間が、5日以上であることを特徴とする請求項10記載の機能的雄性不稔性ユリの作出方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項記載の方法によって作出された機能的雄性不稔性ユリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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