説明

集光ユニット

【課題】複数の光学部材が非接着で固定されている集光ユニットを提供すること。
【解決手段】保持フレーム14,15により偏光変換部材2と伝搬部材4と合波部材5とを一体的に組合わせた光学部材群2〜5の両端側部が全周にわたって囲繞されて保持固定されるので、従来の光学部材間に塗布していた接着剤は不要となり、光学部材群2〜5の非接着固定の安定性および光学部材2〜5同士の密着性を高めた集光ユニット1を構成することができる。よって、従来の接着剤により光学部材群を固定していたときに散乱光により発生するおそれがある光学部材等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射した光を集光して出射する複数の光学部材でなる集光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1および2には、光変調したRGBの各色の光を合成する集光ユニット(プリズムユニット)が開示されている。特許文献1に記載の集光ユニットは、ダイクロイックプリズムと、LCDと、LCDプレートと、調整プレートと、下部ホルダと、上部ホルダとを備えている。LCDはLCDプレートに固定され、下部ホルダおよび上部ホルダは接着剤を介した接着によりダイクロイックプリズムに固定されている。そして、調整プレートは下部ホルダおよび上部ホルダに固定され、LCDが固定されたLCDプレートは調整プレートに接着剤を介した接着により固定されている。また、特許文献2に記載の集光ユニットは、プリズム型素子と、パネル型素子と、支持部材とを備えている。支持部材は接着剤を介した接着によりプリズム型素子に固定され、パネル型素子は支持部材に固定されている。
【0003】
また、特許文献3および4には、入射した偏向方向の異なる2つの光を重ね合わせて出射する複数のプリズム等の光学素子でなる集光ユニット(分割合波ユニット、レーザ集光プリズム)が開示されている。特許文献3に記載の集光ユニットは、位相差部と、伝搬部材と、合波部材とを備えている。位相差部は伝搬部材と接着剤を介した接着により固定され、合波部材は伝搬部材と接着剤を介した接着により固定されている。また、特許文献4に記載の集光ユニットは、偏光変換板と、第1プリズムと、第2プリズムとを備えている。偏光変換板は第1プリズムとスペーサ部材を介して接着剤による接着により固定され、第1プリズムは第2プリズムと別のスペーサ部材を介して接着剤による接着により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3360804号公報(段落0004,0005,0010〜0013、図1)
【特許文献2】特開2003‐156607号公報(段落0010〜0013,0015、図1)
【特許文献3】特開2007‐286481号公報(段落0031、図2)
【特許文献4】特開2009‐294396号公報(段落0035、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の各集光ユニットでは、複数の光学部材を接着剤による接着により固定しているため、接着ミス等により接着剤が光学部材からはみ出して硬化するおそれがある。そして、光源等からの光が光学部材からはみ出して硬化した接着剤に当たって散乱等した場合、該散乱光に照射された光学部材や周辺部材が発熱して熱膨張により位置ズレを起こしたり熱損傷してしまうおそれがある。また、光が集光ユニットから漏れた場合、その漏れ光が集光ユニット外部材等に照射され、熱損傷等してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、複数の光学部材が非接着で固定されている集光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔集光ユニット〕
(請求項1)本発明の集光ユニットは、光源から出射される所定幅の第1偏光方向の光を入射し、入射した光を幅方向に集光して出射する集光ユニットであって、前記光源から出射される光を入射して前記第1偏光方向とは異なる偏光方向である第2偏光方向の光に変換して出射する偏光変換部材と、該偏光変換部材に対し前記光の幅方向に並列配置され、前記光源から出射される光を入射して前記第1偏光方向のまま出射する伝搬部材と、前記第1偏光方向の光を透過すると共に前記第2偏光方向の光を反射する選択反射面および前記第2偏光方向の光を前記選択反射面に向かって全反射する全反射面が形成され、前記偏光変換部材および前記伝搬部材から出射される光を入射可能に配置され、前記偏光変換部材から出射される前記第2偏光方向の光を入射して前記全反射面にて全反射すると共に、前記伝搬部材から出射される前記第1偏光方向の光を前記選択反射面から入射し、全反射した前記第2偏光方向の光と入射した前記第1偏光方向の光とを前記選択反射面にて幅方向に集光して出射する合波部材と、一体的に組合わされた前記偏光変換部材と前記伝搬部材と前記合波部材とでなる光学部材群における前記光源からの光の出射方向および前記光の幅方向と直交する方向の両端側部に嵌め込まれることにより、該両端側部を全周にわたって囲繞して保持固定する保持フレームと、を備える。
【0008】
(請求項2)集光ユニットは、前記光学部材群における前記光の入射面および出射面以外の面の少なくとも一部と密接して前記光学部材群を保持する保持部材を備え、前記保持フレームは、前記保持部材を含む前記光学部材群の前記両端側部に嵌め込まれることにより、該両端側部を全周にわたって囲繞して保持固定するとよい。
【0009】
(請求項3)前記保持部材は、前記光源からの光の出射方向と平行な前記光学部材群における面と密接する保持プレートであるとよい。
【0010】
(請求項4)前記保持部材は、前記全反射面と密接する保持ブロックであるとよい。
【0011】
(請求項5)前記保持部材は、前記光を遮光する機能を有するとよい。
【0012】
(請求項6)前記保持部材は、前記光による発熱を冷却する機能を有するとよい。
【0013】
(請求項7)前記全反射面は、前記光の入射角が45°以下となるように形成されているとよい。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)本発明によると、保持フレームにより偏光変換部材と伝搬部材と合波部材とを一体的に組合わせた光学部材群の両端側部が全周にわたって囲繞されて保持固定される。このため、従来の光学部材間に塗布していた接着剤は不要となり、光学部材群の非接着固定の安定性および光学部材同士の密着性を高めた集光ユニットを構成することができる。よって、従来の接着剤により光学部材群を固定していたときに散乱光により発生するおそれがある光学部材等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を防止することができる。また、保持フレームを光学部材群の両端側部に嵌め込むことにより光学部材群を保持固定することができる。よって、光学部材の位置決めが容易となり高精度な位置決め精度を得ることができ、また集光ユニットの組立作業工数を大幅に低減することができる。
【0015】
(請求項2)光学部材群における光の入射面および出射面以外の面の少なくとも一部が保持部材と密接されて保持される。よって、光学部材群をより安定に非接着固定することができる。また、光学部材群における光の入射面および出射面以外の面の少なくとも一部は保持部材により保護されることになる。よって、保持フレームにより保持部材を含む光学部材群の両端側部が保持固定される際に発生するおそれがある上記面の傷付けを防止することができる。
【0016】
(請求項3)光源からの光の出射方向と平行な光学部材群における面が保持プレートと密接される。よって、該面からの光の漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材等の発熱を抑えることができる。
【0017】
(請求項4)全反射面が保持ブロックと密接されるので、全反射面における光の反射効率を高めて全反射面からの光の漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材等の発熱を抑えることができる。
【0018】
(請求項5)保持部材により光学部材群における光の入射面および出射面以外の面の少なくとも一部が略完全に遮光される。よって、該面における光の漏れにより発生するおそれがある光学部材等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を略完全に防止することができる。
【0019】
(請求項6)保持部材により光学部材群における光による発熱を冷却することができるので、光学部材群の発熱により発生するおそれがある熱膨張による位置ズレおよび熱損傷を略完全に防止することができる。
【0020】
(請求項7)全反射面の光の入射角が45°以下となるように形成されているので、全反射膜の厚さを薄くしても略完全に光を全反射することができる。よって、全反射膜の製作が容易となりコストの削減を図ることができると共に、全反射面における光の漏れにより発生するおそれがある光学部材等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を略完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る集光ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1の集光ユニットの分解斜視図である。
【図3】図1の集光ユニットを有する半導体レーザ集光装置をY軸方向から見た平面図である。
【図4】(A),(B),(C)は、本発明の第2から第4の実施の形態に係る集光ユニットをY軸方向から見た平面図である。
【図5】(A),(B)は、本発明の第5および第6の実施の形態に係る集光ユニットをY軸方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
(集光ユニットの詳細構成)
第1の実施の形態に係る集光ユニットの詳細構成について、図1〜3を参照して説明する。図1〜3に示すように、集光ユニット1は、扁平の直方体状に形成された偏光変換板2(本発明の「偏光変換部材」に相当する)と、扁平の直方体状に形成された透過板3と、三角柱状に形成された第1プリズム4(本発明の「伝搬部材」に相当する)と、六角柱状に形成された第2プリズム5(本発明の「合波部材」に相当する)との4つの光学部材2〜5が非接着で一体的に組合わされ、さらに一体的に組合わされた光学部材2〜5(以下、光学部材群2〜5という)が、後述する5つの部材でなる保持固定部材10により非接着で保持固定された構成となっている。
【0023】
この集光ユニット1は、詳細は後述するが図3に示すように、半導体レーザアレイ7(本発明の「光源」に相当する)から出射される所定幅Wの第1偏光方向(本例ではP偏光)のレーザ光Lpを入射し、入射したレーザ光LpのうちW/2の幅のレーザ光Lpをそのまま透過する。そして、残りのW/2の幅のレーザ光Lpは第2偏光方向(本例ではS偏光)のレーザ光Lsに変換し、各レーザ光Lp,Lsを集光してW/2の幅のレーザ光Lとして出射するレーザ集光プリズムである。なお、図における直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)のX軸方向は集光ユニット1に入射されるレーザ光Lpの短軸方向(幅方向)を示し、Y軸方向は集光ユニット1に入射されるレーザ光Lpの長軸方向を示し、Z軸方向は集光ユニット1に入射されるレーザ光Lpの入射方向を示している。
【0024】
(光学部材群の詳細構成)
偏光変換板2は、水晶等でなる所謂半波長板(λ/2板)であり、対向する入射面21および出射面22がZ軸方向と直交するように配置されている。入射面21および出射面22には、レーザ光Lp,Lsの反射光を減衰する反射防止膜が被覆されている。この偏光変換板2は、半導体レーザアレイ7から出射されるレーザ光Lpを入射して第1偏光方向と直交する第2偏光方向のレーザ光Lsに変換して出射する機能を有している。
【0025】
透過板3は、偏光変換板2と略同一形状に形成された石英ガラス等でなり、対向する入射面31および出射面32がZ軸方向と直交するようにして偏光変換板2に対しX軸方向に並列に配置されZ軸方向に平行な側面同士が密接されている。入射面31および出射面32には、レーザ光Lpの反射光を減衰する反射防止膜が被覆されている。この透過板3は、半導体レーザアレイ7から出射されるレーザ光Lpを入射して第1偏光方向のまま出射する機能を有している。なお、透過板3を省略した構成としてもよい。
【0026】
第1プリズム4は、石英ガラス等でなり、直交する2側面のうち一側面が透過板3の出射面32と同一形状で入射面41として形成され、斜辺を含む側面が入射面41に対して所定角度θ°傾斜した出射面42として形成され、入射面41と直交する一側面がZ軸方向と平行な平行側面43として形成されている。入射面41および出射面42には、レーザ光Lpの反射光を減衰する反射防止膜が被覆されている。そして、第1プリズム4は、入射面41がZ軸方向と直交するようにして透過板3に対しZ軸方向に直列に配置され、入射面41と透過板3の出射面32とが密接されている。この第1プリズム4は、透過板3を透過してくるレーザ光Lpを入射して第1偏光方向のまま出射する機能を有している。
【0027】
第2プリズム5は、石英ガラス等でなり、一側面が偏光変換板2の出射面22と同一形状で入射面51として形成され、該入射面51と平行な一側面が出射面52として形成されている。さらに、入射面51と直交する一側面が、Z軸方向と平行な平行側面53として形成され、出射面52と直交する一側面が、Z軸方向と平行な平行側面54として形成されている。そして、入射面51に隣接する一側面が、第1プリズム4の出射面42と同一形状で入射面51に対して180°−θ°傾斜した選択反射面55として形成され、出射面52に隣接する一側面が、選択反射面55と平行、すなわち出射面52に対して180°−θ°傾斜した全反射面56として形成されている。
【0028】
選択反射面55は、PS分離膜が被覆され第1偏光方向のレーザ光Lpを透過すると共に第2偏光方向のレーザ光Lsを反射する機能を有している。全反射面56は、全反射膜が被覆され第2偏光方向のレーザ光Lsを選択反射面55に向かって全反射する機能を有している。そして、全反射面56は、第2偏光方向のレーザ光Lsの入射角θ°が45°以下となるように形成されている。これにより、全反射膜の厚さを薄くしても略完全に第2偏光方向のレーザ光Lsを全反射することができる。よって、全反射膜の製作が容易となりコストの削減を図ることができると共に、全反射面56における第2偏光方向のレーザ光Lsの漏れにより発生するおそれがある光学部材2〜5等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を略完全に防止することができる。
【0029】
入射面51および出射面52には、レーザ光Ls,Lの反射光を減衰する反射防止膜が被覆されている。そして、第2プリズム5は、入射面51がZ軸方向と直交するようにして偏光変換板2に対しZ軸方向に直列に配置され、入射面51と偏光変換板2の出射面22とが密接されていると共に選択反射面55と第1プリズム4の出射面42とが密接されている。この第2プリズム5は、偏光変換板2を透過してくるレーザ光Lsを入射すると共に、透過板3を透過してくるレーザ光Lp入射し、レーザ光Lsとレーザ光Lpとを幅方向に集光して出射する機能を有している。
【0030】
(保持固定部材の詳細構成)
保持固定部材10は、三角柱状に形成された保持ブロック11(本発明の「保持部材」に相当する)と、扁平の略四角柱状に形成された2枚の保持プレート12,13(本発明の「保持部材」に相当する)と、矩形枠状に形成された2枚の保持フレーム14,15とから構成されている。この保持固定部材10は、光学部材群2〜5を非接着で保持固定する機能を有している。
【0031】
保持ブロック11は、アルミニウムや銅等の金属やアルミナ等のセラミックスもしくは樹脂等の材料でなる。そして、斜辺を含む側面111が、第2プリズム5の全反射面56と同一形状で形成され、直交する2側面112,113が、Z軸方向と平行および直交となるようにして第2プリズム5に対しZ軸方向に直列に配置され、側面111と第2プリズム5の全反射面56とが密接されている。このように、全反射面56が保持ブロック11と密接されるので、第2プリズム5の全反射面56におけるレーザ光Lsの反射効率を高めて全反射面56からのレーザ光Lsの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。
【0032】
この保持ブロック11は、後述する固定ネジ16の締付力により光学部材群2〜5を保持フレーム14,15に押付けて保持固定する機能を備えており、光学部材群2〜5をより安定に非接着固定することができる。また、保持ブロック11が特に金属等の遮光性材料で形成されている場合は、第2プリズム5の全反射面56を略完全に遮光する機能を備えている。これにより、全反射面56におけるレーザ光Lsの漏れにより発生するおそれがある光学部材群2〜5等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を略完全に防止することができると共に、高出力なレーザ光Lsを集光して出射することができる。
【0033】
また、保持ブロック11が特に金属等の熱容量の大きい材料で形成されている場合は、全反射面56におけるレーザ光Lsによる発熱を吸熱・放熱して冷却する機能を備えている。これにより、光学部材群2〜5の発熱により発生するおそれがある熱膨張による位置ズレおよび熱損傷を略完全に防止することができる。さらに、保持ブロック11の内部に水や油等の冷却液を通す管路を形成した構成としてもよく、これにより冷却機能を向上させることができる。また、側面111に黒色の塗料等を塗布した構成としてもよく、これにより吸熱効果を高めて冷却機能を向上させることができる。
【0034】
保持プレート12,13は、アルミニウムや銅等の金属やアルミナ等のセラミックスもしくは樹脂等の材料でなる。そして、一方の保持プレート12の一側面121は、組合わされた状態の透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5のZ軸方向と平行な側面33,43,54と同一形状で形成され、他方の保持プレート13の一側面131は、組合わされた状態の偏光変換板2、第2プリズム5および保持ブロック11のZ軸方向と平行な側面23,53,112と同一形状で形成されている。また、保持プレート12,13の側面121,131と対向する側面122,132のY軸方向の両端部には、保持フレーム14,15が嵌め込まれるZ軸方向に延在するL字状の溝123,133が設けられている。
【0035】
保持プレート12,13は、側面121,131がZ軸方向と平行となるようにして上記側面33,43,54および側面23,53,112に夫々密接されている。なお、保持プレート13と保持ブロック11とを1つの材料により一体成形してもよい。このように、半導体レーザアレイ7からのレーザ光Lpの出射方向と平行な光学部材群2〜5における側面33,43,54,23,53が保持プレート12,13と密接されるので、上記側面33,43,54,23,53からのレーザ光Ls,Lpの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。また、該漏れ光による周辺部材等の発熱を抑えることができる。
【0036】
これらの保持プレート12,13は、後述する固定ネジ17の締付力により光学部材群2〜5を保持フレーム14,15に押付けて保持固定する機能を備えている。これにより、光学部材群2〜5をより安定に非接着固定することができる。また、保持プレート12,13が特に金属等の遮光性材料で形成されている場合は、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の各側面33,43,54および偏光変換板2および第2プリズム5の各側面23,53から外側にレーザ光Ls,Lpが漏れないように遮光する機能を備えている。これにより、上記各側面33,43,54,23,53におけるレーザ光Ls,Lpの漏れにより発生するおそれがある光学部材群2〜5等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を略完全に防止することができると共に、高出力なレーザ光Ls,Lpを集光して出射することができる。
【0037】
また、保持プレート12,13が特に金属等の熱容量の大きい材料で形成されている場合は、上記各側面33,43,54,23,53におけるレーザ光Ls,Lpによる発熱を吸熱・放熱して冷却する機能を備えている。これにより、光学部材群2〜5の発熱により発生するおそれがある熱膨張による位置ズレおよび熱損傷を略完全に防止することができる。さらに、保持プレート12,13の内部に水や油等の冷却液を通す管路を形成した構成としてもよく、これにより冷却機能を向上させることができる。また、側面121,131に黒色の塗料等を塗布した構成としてもよく、これにより吸熱効果を高めて冷却機能を向上させることができる。
【0038】
保持フレーム14,15は、アルミニウムや銅等の金属やアルミナ等のセラミックスもしくは樹脂等の材料でなる。そして、矩形内側のZ軸方向の一辺の長さは保持プレート12,13の溝123,133の長さより僅かに長くなるように形成されている。また、矩形内側の一方(半導体レーザアレイ7側)のX軸方向の一辺の長さは、保持プレート12,13の側面121,131と直交する側面124,134の溝123,133が形成された部分のX軸方向の長さと偏光変換板2の入射面21のX軸方向の長さと透過板3の入射面31のX軸方向の長さとの和より僅かに長くなるように形成されている。また、矩形内側の他方のX軸方向の一辺の長さは、保持プレート12,13の側面124,134と対向する側面125,135の溝123,133が形成された部分のX軸方向の長さと保持ブロック11の側面113のX軸方向の長さと第2プリズム5の出射面52のX軸方向の長さとの和より僅かに長くなるように形成されている。
【0039】
そして、保持フレーム14,15における保持ブロック11の側面113と当接する部分には、Z軸方向に貫通して固定ネジ16が螺合されるネジ穴14a,15aが穿設され、保持フレーム14,15における保持プレート12の側面121と当接する部分には、X軸方向に貫通して固定ネジ17が螺合されるネジ穴14b,15bが穿設されている。
【0040】
これらの保持フレーム14,15は、保持ブロック11および保持プレート12,13が組合わせられた光学部材群2〜5におけるY軸方向の両端側部に嵌め込まれることにより、該両端側部を全周にわたって囲繞して保持固定することが可能に形成されている。これにより、従来の光学部材間に塗布していた接着剤は不要となり、光学部材群2〜5の非接着固定の安定性および光学部材2〜5同士の密着性を高めた集光ユニット1を構成することができる。よって、従来の接着剤により光学部材群を固定していたときに散乱光により発生するおそれがある光学部材等の熱膨張による位置ズレや熱損傷を防止することができる。また、保持フレーム14,15を光学部材群2〜5の両端側部に嵌め込むことにより光学部材群2〜5を保持固定することができるため、光学部材2〜5の位置決めが容易となり高精度な位置決め精度を得ることができ、また集光ユニット1の組立作業工数を大幅に低減することができる。
【0041】
保持フレーム14,15をアルミナ等のセラミックスもしくは樹脂等の絶縁性の材料により形成する場合、保持フレーム14,15の両端を半導体レーザアレイ7側に突出させ、該突出部分に半導体レーザアレイ7および長軸方向コリメートレンズ8を取付けるように構成してもよい。これにより、従来必要であった半導体レーザアレイ7および長軸方向コリメートレンズ8の位置決め用のスペーサが不要となり、半導体レーザアレイ7および長軸方向コリメートレンズ8の集光ユニット1に対する位置決めが容易となり、位置決め精度を向上させることができる。
【0042】
(集光ユニットの組立手順)
次に、上述の光学部材2〜5を一体的に組合わせ保持固定部材10により保持固定する手順について説明する。第2プリズム5の選択反射面55と第1プリズム4の出射面42とを密接させ、第2プリズム5の入射面51と偏光変換板2の出射面22とを密接させ、第1プリズム4の入射面41と透過板3の出射面32とを密接させる。これにより、光学部材群2〜5が完成する。そして、第2プリズム5の全反射面56と保持ブロック11の側面111とを密接させ、保持プレート12の側面121と透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の各側面33,43,54とを密接させ、保持プレート13の側面131と偏光変換板2、第2プリズム5および保持ブロック11の各側面23,53,112と密接させる。
【0043】
そして、保持プレート12,13の側面122,132の両端部に設けられている溝123,133に保持フレーム14,15を夫々嵌め込み、固定ネジ16,17をネジ穴14a,15aに夫々螺合して固定ネジ16の先端で保持ブロック11の側面113を押圧すると共に固定ネジ17の先端で保持プレート12の側面121を押圧する。これにより、各光学部材群2〜5および保持プレート12,13は、保持フレーム14,15のネジ穴14a,15aが穿設されていない直交する矩形内側面に押付けられることになる。よって、各光学部材群2〜5を高精度に位置決めすることができると共に、各光学部材群2〜5および保持プレート12,13を保持フレーム14,15に強固に固定保持させることができる。
【0044】
このとき、全反射面56は保持ブロック11により保護され、また、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の各側面33,43,54は保持プレート12により保護され、偏光変換板2および第2プリズム5の各側面23,53は保持プレート13により保護されることになるので、全反射面56および各側面33,43,54,23,53の傷付けを防止することができる。
【0045】
(半導体レーザ集光装置の動作)
以上のような構成の集光ユニット1を半導体レーザ集光装置に適用した場合の動作について説明する。図3に示すように、半導体レーザ集光装置6は、半導体レーザアレイ7と、長軸方向コリメートレンズ8と、集光ユニット1とがこの順で配置された構成となっている。半導体レーザアレイ7から出射される所定幅Wの第1偏光方向のレーザ光Lpは、長軸方向コリメートレンズ8に入射され長軸方向(Y軸方向)において平行な第1偏光方向のレーザ光Lpに変換される。なお、本例では省略しているが、長軸方向コリメートレンズ8と集光ユニット1との間に短軸方向コリメートレンズを配置し、レーザ光Lpを短軸方向においても平行光に変換するように構成してもよい。
【0046】
長軸方向コリメートレンズ8から出射される所定幅Wの第1偏光方向のレーザ光LpのうちW/2の幅のレーザ光Lpは、透過板3の入射面31に入射され、偏光方向が変換されることなく第1偏光方向のまま透過される。一方、残りのW/2の幅のレーザ光Lpは、偏光変換板2の入射面21に入射され、第1偏光方向と直交する第2偏光方向のレーザ光Lsに変換される。このとき、光学部材群2,3における側面33,23が保持プレート12,13と密接されているので、上記側面33,23からのレーザ光Ls,Lpの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。また、該漏れ光による周辺部材等の発熱を抑えることができる。
【0047】
透過板3の出射面32から出射される第1偏光方向のレーザ光Lpは、第1プリズム4の入射面41に入射され、偏光方向が変換されることなく第1偏光方向のまま透過される。一方、偏光変換板2の出射面22から出射される第2偏光方向のレーザ光Lsは、第2プリズム5の入射面51に入射され、全反射面56にて選択反射面55に向けて全反射される。このとき、光学部材群4,5における側面43,53が保持プレート12,13と密接されているので、上記側面43,53からのレーザ光Ls,Lpの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。また、全反射面56が保持ブロック11と密接されているので、第2プリズム5の全反射面56におけるレーザ光Lsの反射効率を高めて全反射面56からのレーザ光Lsの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。さらに、該漏れ光による周辺部材等の発熱を抑えることができる。
【0048】
第1プリズム4の出射面42から出射される第1偏光方向のレーザ光Lpは、第2プリズム5の選択反射面55に入射される。このとき、第1プリズム4の出射面42が所定角度θ°で傾斜しているので、出射面42から出射される第1偏光方向のレーザ光Lpは屈折するが、次の入射面である第2プリズム5の選択反射面55も所定角度θ°で傾斜しているので、選択反射面55に入射される第1偏光方向のレーザ光Lpは再度屈折してZ軸方向に戻る。
【0049】
そして、第2プリズム5の全反射面56にて全反射される第2偏光方向のレーザ光Lsは、選択反射面55にて出射面52に向けて反射される。一方、選択反射面55に入射される第1偏光方向のレーザ光Lpは、選択反射面55から出射面52に向けて透過される。このとき、第2偏光方向のレーザ光Lsと第1偏光方向のレーザ光Lpとは、選択反射面55にて集光されW/2の幅のレーザ光Lとして出射面52から出射される。このとき、光学部材群5における側面54が保持プレート12と密接されているので、上記側面54からのレーザ光Ls,Lpの漏れを低減することができ、該漏れ光による光学部材群2〜5等の発熱を抑えることができる。また、該漏れ光による光学部材等の発熱等を抑えることができる。
【0050】
上述の第1の実施形態の集光ユニット1は、偏光変換板2、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の4つの光学部材でなる光学部材群2〜5と、保持ブロック11、保持プレート12,13および保持フレーム14,15の5つの部材でなる保持固定部材10とが組合わされて構成されており、保持ブロック11および保持プレート12,13により直方体状の形状となっている。よって、保持フレーム14,15の形状は矩形枠状となり、光学部材群2〜5を安定して保持固定することができ、また、特に保持フレーム14,15を低コストで作製することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図4(A)に示す第2の実施形態の集光ユニット60は、偏光変換板2、第1プリズム4および第2プリズム5の3つの光学部材でなる光学部材群2,4,5と、保持フレーム61,62の2つの部材でなる保持固定部材63とが組合わされて構成されており、透過板3、保持ブロック11および保持プレート12,13が省略されている分、第1の実施形態の集光ユニット1よりも小型とすることができる。このような構成の集光ユニット60においても、第1の実施形態の集光ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
<第3実施形態>
図4(B)に示す第3の実施形態の集光ユニット64は、偏光変換板2、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の4つの光学部材でなる光学部材群2〜5と、保持フレーム65,66の2つの部材でなる保持固定部材67とが組合わされて構成されており、保持フレーム65,66の形状が第2の実施形態の保持フレーム61,62の形状と比べて単純である分、第2の実施形態の集光ユニット60よりも低コストで製作でき、また、保持ブロック11および保持プレート12,13が省略されている分、第1の実施形態の集光ユニット1よりも小型とすることができる。このような構成の集光ユニット64においても、第1の実施形態の集光ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0053】
<第4実施形態>
図4(C)に示す第4の実施形態の集光ユニット68は、偏光変換板2、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の4つの光学部材でなる光学部材群2〜5と、保持プレート12および保持フレーム69,70の3つの部材でなる保持固定部材71とが組合わされて構成されており、保持プレート12を備えている分、第2,3の実施形態の集光ユニット60,64よりも保持安定性、遮光性および吸熱性等に優れている。また、保持フレーム69,70の形状が第2の実施形態の保持フレーム61,62の形状と比べて単純である分、第2の実施形態の集光ユニット60よりも低コストで製作でき、また、保持ブロック11および保持プレート13が省略されている分、第1の実施形態の集光ユニット1よりも小型とすることができる。このような構成の集光ユニット68においても、第1の実施形態の集光ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
<第5実施形態>
図5(A)に示す第5の実施形態の集光ユニット72は、偏光変換板2、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の4つの光学部材でなる光学部材群2〜5と、保持プレート73および保持フレーム74,75の3つの部材でなる保持固定部材76とが組合わされて構成されており、保持プレート73を備えている分、第2,3の実施形態の集光ユニット60,64よりも保持安定性、遮光性および吸熱性等に優れている。また、保持フレーム74,75の形状が第2の実施形態の保持フレーム61,62の形状と比べて単純である分、第2の実施形態の集光ユニット60よりも低コストで製作でき、また、保持ブロック11および保持プレート12が省略されている分、第1の実施形態の集光ユニット1よりも小型とすることができる。このような構成の集光ユニット72においても、第1の実施形態の集光ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0055】
<第6実施形態>
図5(B)に示すの第6の実施形態の集光ユニット77は、偏光変換板2、透過板3、第1プリズム4および第2プリズム5の4つの光学部材でなる光学部材群2〜5と、保持ブロック78、保持プレート12,79および保持フレーム80,81の5つの部材でなる保持固定部材82とが組合わされて構成されており、保持プレート12,79を備えている分、第2,3,4,5の実施形態の集光ユニット60,64,68,72よりも保持安定性、遮光性および吸熱性等に優れている。また、保持ブロック78および保持プレート79の形状が第1の実施形態の保持ブロック11および保持プレート13の形状よりも小さくなる分、第1の実施形態の集光ユニット1よりも低コストで製作できる。このような構成の集光ユニット77においても、第1の実施形態の集光ユニット1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
<第1〜第6実施形態の変形態様>
なお、上述した実施形態では、第1偏光方向をP偏光、第2偏光方向をS偏光として説明したが、第1偏光方向をS偏光、第2偏光方向をP偏光としても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,60,64,68,72,77:集光ユニット、 2:偏光変換板(偏光変換部材)、 3:透過板、 4:第1プリズム(伝搬部材)、 5:第2プリズム(合波部材)、 7:半導体レーザアレイ(光源)
10,63,67,71,76,82:保持固定部材、 11,78:保持ブロック(保持部材)、 12,13,73,79:保持プレート(保持部材)、 14,15,61,62,65,66,69,70,74,75,80,81:保持フレーム
55:選択反射面、 56:全反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される所定幅の第1偏光方向の光を入射し、入射した光を幅方向に集光して出射する集光ユニットであって、
前記光源から出射される光を入射して前記第1偏光方向とは異なる偏光方向である第2偏光方向の光に変換して出射する偏光変換部材と、
該偏光変換部材に対し前記光の幅方向に並列配置され、前記光源から出射される光を入射して前記第1偏光方向のまま出射する伝搬部材と、
前記第1偏光方向の光を透過すると共に前記第2偏光方向の光を反射する選択反射面および前記第2偏光方向の光を前記選択反射面に向かって全反射する全反射面が形成され、前記偏光変換部材および前記伝搬部材から出射される光を入射可能に配置され、前記偏光変換部材から出射される前記第2偏光方向の光を入射して前記全反射面にて全反射すると共に、前記伝搬部材から出射される前記第1偏光方向の光を前記選択反射面から入射し、全反射した前記第2偏光方向の光と入射した前記第1偏光方向の光とを前記選択反射面にて幅方向に集光して出射する合波部材と、
一体的に組合わされた前記偏光変換部材と前記伝搬部材と前記合波部材とでなる光学部材群における前記光源からの光の出射方向および前記光の幅方向と直交する方向の両端側部に嵌め込まれることにより、該両端側部を全周にわたって囲繞して保持固定する保持フレームと、を備えたことを特徴とする集光ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記光学部材群における前記光の入射面および出射面以外の面の少なくとも一部と密接して前記光学部材群を保持する保持部材を備え、前記保持フレームは、前記保持部材を含む前記光学部材群の前記両端側部に嵌め込まれることにより、該両端側部を全周にわたって囲繞して保持固定することを特徴とする集光ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
前記保持部材は、前記光源からの光の出射方向と平行な前記光学部材群における面と密接する保持プレートであることを特徴とする集光ユニット。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記保持部材は、前記全反射面と密接する保持ブロックであることを特徴とする集光ユニット。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一項において、
前記保持部材は、前記光を遮光する機能を有することを特徴とする集光ユニット。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか一項において、
前記保持部材は、前記光による発熱を冷却する機能を有することを特徴とする集光ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項において、
前記全反射面は、前記光の入射角が45°以下となるように形成されていることを特徴とする集光ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−123249(P2012−123249A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274692(P2010−274692)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】