説明

集光型太陽光発電装置のレシーバ

【課題】レシーバ同士を繋ぐ内部配線の、リード電極に対するはんだ付け作業を良好に行うことができ、またその際に溶けたはんだのつらら状の突起が生じても、金属製のベース基板とリード電極との間を絶縁する伝熱絶縁シートの耐電圧性が損なわれることのない集光型太陽光発電装置のレシーバを提供する。
【解決手段】発電セル12と、これに接合された上側リード電極14及び下側リード電極16と、ホモジナイザ22と、放熱基板としての金属製のベース基板26と、柔軟性の伝熱絶縁シート28と、封止材32と、を有する集光型太陽光発電装置のレシーバ10において、下側リード電極16の封止材32からの突出し部分16Aと伝熱絶縁シート28との間に、突出し部分16Aを伝熱絶縁シート28から離間した状態に保つ断熱性の電極支持層54を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は太陽光を集光する集光レンズからの光を受けるレシーバ、詳しくはリード電極付きの発電セルをホモジナイザ等とともに放熱性のベース基板に固定し、1つのユニットとなしたレシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置として、平面的に配列した発電セルで直接太陽光を受けて発電する平板型太陽光発電装置と、集光レンズで集光した太陽光をホモジナイザで2次集光して発電セルに導き、発電する集光型太陽光発電装置とが知られている。
【0003】
この集光型太陽光発電装置では、組立てや取扱いを容易にする等の目的で、一対のリード電極付きの発電セルをホモジナイザ等とともに放熱性のベース基板に固定し、1つのユニットとなしたレシーバが用いられる。
【0004】
このレシーバとして、光エネルギーを電気エネルギーに変換する発電セルと、発電セルの受光面となる上面の縁部から延び出した上側リード電極と、発電セルの下面から上側リード電極とは異なった方向に延び出した下側リード電極と、発電セルの真上位置で発電セルに光学カップリングされ、集光レンズで集光された太陽光を2次集光して発電セルに導くホモジナイザと、リード電極付きの発電セル,ホモジナイザを下側リード電極の側で固定させるベース基板と、上側リード電極及び下側リード電極を外部に突き出させる状態に発電セル,上側及び下側リード電極の発電セルへの接合部,ホモジナイザの下部を包み込んで封止する封止材と、を含んで構成したものが従来公知である。
例えば下記特許文献1にこの種のレシーバの構成例が開示されている。
【0005】
このレシーバにおいては、発電セルに対して集光した太陽光が照射されるため、発電セル及びその周辺部が高温となる。
そこで発電セルによる変換効率を高く維持するため或いは発電セル及び周辺部の劣化を防止するため、上記のベース基板を金属製の放熱性の高い基板としておくこと、即ちベース基板を放熱基板として構成しておくことが望ましい。
この場合、発電セルやリード電極とベース基板との間に絶縁層を設けることが必要となる。
【0006】
但しこの絶縁層を断熱性の層としてしまうと(一般に絶縁材は断熱性が高い)、発電セル等からの熱が放熱基板としてのベース基板に伝わらなくなってしまい、放熱できなくなってしまう。
従ってこの絶縁層には同時に良好な伝熱性(熱伝導性)をもたせておくことが必要である。
【0007】
更にこの絶縁層は、熱膨張による応力を吸収し緩和するため、低弾性率で柔軟性のシートとして構成しておくこと、即ち絶縁層を、熱伝導率が高く、発電セル等からの熱をベース基板に対して良好に伝熱することのできる軟質の伝熱絶縁シートとして構成しておくことが望ましい。
【0008】
ところで、このような柔軟性の伝熱絶縁シートをベース基板の表面に積層し、発電セルやリード電極とベース基板との間に介在させておくことで以下のような問題の生じることが判明した。
集光型太陽光発電装置では、レシーバを並べて配置し、隣接するレシーバのリード電極同士を内部配線で互いに直列に繋いで全体を1つのパッケージとし、モジュールを構成する。
この内部配線とリード電極との接合は、リード電極の封止材から外部に突き出した部分に対して、内部配線を一般にはんだ付けすることで行う。
【0009】
ところが発電セルに接合したリード電極、特に下側リード電極は上記の伝熱絶縁シートに近い位置にあり、下側リード電極の封止材からの突出し部分に対して(その上面に対して)内部配線をはんだ付けする際に、その突出し部分が下側の伝熱絶縁シートに接触した状態となり、はんだの熱が高い熱伝導性を有する伝熱絶縁シートを通じて放熱基板としてのベース基板の側に抜けてしまい、はんだ付け作業を良好に行うことができない。
【0010】
そこで下側リード電極の端部、詳しくは封止材からの突出し部分を持ち上げて伝熱絶縁シートから離間させ、その状態ではんだ付け作業を行うようにすると、はんだの熱が伝熱絶縁シートを伝って下側のベース基板に抜けるのを防止でき、はんだを良好に溶融させることができるが、一方この状態ではんだを溶融させると、溶けたはんだが下側リード電極の上面を流れて幅方向の端部から垂れ下り、これがつらら状の突起となってしまうことがある。
そしてこの突起が、レシーバのハンドリングの際等に意図せず加わった下向きの力で下側の柔軟性を有する軟質の伝熱絶縁シートを突き破ったりしてしまう。
【0011】
このようにしてつらら状の突起が伝熱絶縁シートを突き破ってしまうと伝熱絶縁シートの耐電圧特性が大きく損なわれてしまう。
レシーバは、完成後に安全性の試験として耐電圧試験を行うが、このとき伝熱絶縁シートを突き破った突起とベース基板とが短絡してしまい、そこでスパークを起してしまう。
またその他の問題として、リード電極の切断加工時に生じたバリによって伝熱絶縁シートが傷付けられてしまい、そのことによって伝熱絶縁シートの耐電圧特性が損なわれる問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−313809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、レシーバ同士を繋ぐ内部配線の、リード電極に対するはんだ付け作業を良好に行うことができるとともに、はんだ付け作業の際に生じた溶けたはんだがつらら状の突起となって伝熱絶縁シートの耐電圧特性を損ない、更にリード電極の加工時に生じたバリが伝熱絶縁シートを傷付け、耐電圧性能を損なう問題を解決することのできる集光型太陽光発電装置のレシーバを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、(a)発電セルと、(b)該発電セルの受光面となる上面の縁部から延び出した上側リード電極と、(c)該発電セルの下面から該上側リード電極とは異なった方向に延び出した下側リード電極と、(d)該発電セルの真上位置で該発電セルに光学カップリングされ、集光レンズで集光された太陽光を2次集光して該発電セルに導くホモジナイザと、(e)前記リード電極付きの該発電セル,該ホモジナイザを前記下側リード電極の側で固定させる放熱基板としての金属製のベース基板と、(f)該ベース基板の表面に積層され、前記発電セル及びリード電極と前記ベース基板との間を絶縁するとともに、該発電セルからの熱を該ベース基板に伝熱する柔軟性の伝熱絶縁シートと、(g)前記上側リード電極及び下側リード電極を外部に突き出させる状態に前記発電セル,該上側及び下側リード電極の該発電セルへの接合部,前記ホモジナイザの下部を包み込んで封止する封止材と、を有する集光型太陽光発電装置のレシーバであって、前記下側リード電極の前記封止材からの突出し部分と前記伝熱絶縁シートとの間に、該突出し部分を該伝熱絶縁シートから離間した状態に保つ断熱性の電極支持層を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記上側リード電極の前記封止材からの突出し部分と前記伝熱絶縁シートとの間に、該突出し部分を該伝熱絶縁シートから離間した状態に保つ断熱性の電極支持層を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記断熱性の電極支持層がゴム弾性を有するシリコーン樹脂の層であることを特徴とする。
【0017】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記発電セルの真下位置且つ前記下側リード電極の下面側に、該発電セルの形状を保持する形状保持板が設けてあり、該形状保持板が前記伝熱絶縁シートに接触せしめられていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上のように本発明は、下側リード電極の封止材からの突出し部分と伝熱絶縁シートとの間に、その下側リード電極の突出し部分を伝熱絶縁シートから離間した状態に保つ断熱性の電極支持層を設けたものである。
本発明によれば、下側リード電極の封止材からの突出し部分に対して、レシーバ同士を繋ぐための内部配線をはんだ付けする際、下側リード電極の封止材からの突出し部分が断熱性の電極支持層により支持され、伝熱絶縁シートから離間した状態に保たれる。
従ってはんだの熱が伝熱絶縁シートを通じて放熱基板としてのベース基板の側に抜けてしまうのを防止でき、これによりはんだを十分に溶融させ得てはんだ付け作業を良好に行うことができる。
【0019】
またその際、下側リード電極の封止材からの突出し部分を伝熱絶縁シートから持ち上げた状態ではんだ付け作業する場合のように溶けたはんだが下側リード電極から垂れ下り、つらら状の突起を形成してしまうのを防ぐことができる。
また仮にそのような突起が生じたとしても、下側リード電極の突出し部分は電極支持層により下側から支持され、伝熱絶縁シートから離隔した状態に保持されているため、生じた突起が伝熱絶縁シートを突き破ってしまうといったことは生じず、従ってその突起により伝熱絶縁シートの耐電圧特性が損なわれてしまうのを防ぐことができる。
更に下側リード電極の加工時に生じたバリが伝熱絶縁シートを損傷し、伝熱絶縁シートの耐電圧特性を損なってしまう問題も解決することができる。
【0020】
請求項2は、上側リード電極の封止材からの突出し部分と伝熱絶縁シートとの間に断熱性の電極支持層を設けたものである。
上側リード電極は、発電セルの上面の端縁部から延び出しているが、この上側リード電極に対して、詳しくは封止材からの外部への突出し部分に対して内部配線をはんだ付けする際においても、下側リード電極に内部配線をはんだ付けする際と同様の問題が生じる可能性を有している。
【0021】
ここにおいて、上側リード電極の封止材からの突出し部分と伝熱絶縁シートとの間に断熱性の電極支持層を設けておくことで、その上側リード電極の突出し部分に対して内部配線をはんだ付けする際、はんだを十分に溶融させることができ、また溶けたはんだが上側リード電極から垂れ下がってつらら状の突起となり、その突起により伝熱絶縁シートの耐電圧性能が損なわれる問題を解決できる効果が得られる。
更に上側リード電極の加工時に生じたバリによって伝熱絶縁シートが傷付けられ、耐電圧性能が損なわれる問題も併せて解決できる効果が得られる。
【0022】
本発明において、断熱性の電極支持層は、ゴム弾性を有するシリコーン樹脂の層となしておくことができる(請求項3)。
このようにすることで、電極支持層に耐熱性をもたせることができ、またシリコーン樹脂の有するゴム弾性によって熱応力を良好に吸収することができる。
【0023】
本発明では、発電セルの真下位置且つ下側リード電極の下面側に、発電セルの形状を保持する形状保持板を設けておき、その形状保持板を伝熱絶縁シートに接触させておくことができる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である集光型太陽光発電装置のレシーバの図である。
【図2】同実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図3】発電セル,上側及び下側リード電極の図である。
【図4】本発明の他の実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図5】実施形態の利点を説明するために比較例を示した比較例図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
尚、以下の図は各部の寸法比を正確に反映したものではなく、一部模式化して表している。
図1において、10は集光レンズにて集光された太陽光を受ける1つの組付体、即ちユニットとしてのレシーバで、このレシーバ10は、発電セル12,その受光面となる上面の端縁部から延び出した上側リード電極(ここでは負リード電極)14,上側リード電極14の延び出し方向と直交方向に発電セル12の裏面から延び出した下側リード電極(ここでは正リード電極)16,下側リード電極16の下面側の形状保持板20,発電セル12の真上位置で発電セル12に光学カップリングされたホモジナイザ22,ホモジナイザ22の略上端の高さ位置に配置された遮光板24を有している。
【0026】
レシーバ10は、また、放熱基板としてのベース基板26,その表面に積層された柔軟性の伝熱絶縁シート28,ベース基板26のコーナ部から立ち上がる2本の支柱30を有している。
更にレシーバ10は、発電セル12,上側リード電極14及び下側リード電極16の発電セル12への接合部,形状保持板20,ホモジナイザ22の下部を包み込んで封止する封止材32を有している。
【0027】
ベース基板26は、上側リード電極14及び下側リード電極16付きの発電セル12,形状保持板20,ホモジナイザ22等を固定し下側から支持する働きと、集光した太陽光が照射される発電セル12及びその周辺部からの熱を放熱して逃がし、発電セル12及び周辺部の過度の温度上昇を防ぐ働きを有するもので、ここではかかるベース基板26として厚みが4mmのアルミニウム合金板が用いられている。
【0028】
このベース基板26は平面形状が正方形状のもので、対角のコーナ部から上記の2本の支柱30が立ち上がっている。
尚これら2本の支柱30は、ベース基板26の裏面(下面)からベース基板26を貫通して支柱30にねじ込まれたねじ部材によって、ベース基板26にねじ固定されている。
【0029】
ベース基板26の表面に積層された伝熱絶縁シート28は、発電セル12,上側及び下側リード電極14及び16,形状保持板20等とベース基板26との間を電気的に絶縁する働きと、発電セル12及び周辺部からの熱をベース基板26に伝熱し、放熱させる働きとを有する。
【0030】
この伝熱絶縁シート28は耐熱性,電気絶縁性,高い熱伝導性を有する各種材料を用いることが可能であるが、ここでは樹脂材、特に放熱シリコーン樹脂シートが用いられている。
伝熱絶縁シート28は熱膨張,収縮に伴う熱応力を吸収し緩和する点で柔軟性を有するものであることが望ましく、そこでここではかかる伝熱絶縁シート28として、常温でゴム弾性を有する放熱性のシリコーン樹脂シート(シリコーンゴムシートと称される場合もある)が用いられている。
【0031】
このシリコーン樹脂シートは、シリコーン樹脂ポリマーを母材マトリックスとしてそこにアルミナ,窒化ホウ素,酸化亜鉛,窒化アルミニウム等の熱伝導性フィラーを配合したもので、母材マトリックスによる電気絶縁性と、熱伝導性フィラーに基づく高い熱伝導性を両立させている。
【0032】
本実施形態において、この伝熱絶縁シート28は熱伝導率が2.4W/m・K以上の高い熱伝導率を有するもので、ベース基板26の表面のほぼ全面に亘って積層されている。
尚、伝熱絶縁シート28は厚みが0.5mm程度の薄肉のものである。
【0033】
上記発電セル12は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するもので、図3(A)に示しているようにここでは平面形状が7mm角の正方形状をなしている。
受光面となる上面は大部分が開放されており、その上面の縁部に一対のバスバー電極34が形成されている。
また裏面全面に亘って、バスバー電極34と対をなす電極36が形成されている。
尚、上面には細線から成る多数のフィンガ電極38が互いに平行に延びており、それらフィンガ電極38にバスバー電極34が導通されている。
尚発電セル12は、ここではその厚みが0.17mm程度の薄いものである。
【0034】
発電セル12には、その裏面の電極36に対して1本の帯板状のリボン電極(材質は銅)がはんだ付けにて接合されて、上記の下側リード電極16を形成している。
この下側リード電極16は、図3(B)に示しているように長手方向の両端側が発電セル12から互いに反対側に延び出している。
【0035】
一方上面のバスバー電極34のそれぞれに、同じく帯板状のリボン電極(材質は銅)が互いに逆向きに延び出す形ではんだ付けにて接合され、上記の上側リード電極14を形成している。
図3(B)に示しているように、これら上側リード電極14と下側リード電極16とは互いに直交する方向に延びている。
即ち、平面視において下側リード電極16と上側リード電極14とは十字状をなしている。
【0036】
下側リード電極16の下面側に配置された上記の形状保持板20は、厚みの薄い発電セル12を補強し、形状保持する働きを有するもので、ここでは銅にて形成されており、下側リード電極16の下面に対してはんだ付けにて接合されている。
この形状保持板20は発電セル12とほぼ同じ平面形状をなしており、その厚みはこの例では0.3mmである。
発電セル12は、下側リード電極16及びこの形状保持板20を介して上記の伝熱絶縁シート28に当接せしめられている。
【0037】
ホモジナイザ22は、集光レンズにて1次集光された太陽光を上面で受けて、これを2次集光し発電セル12に導くもので、横断面が正方形状の4角錐形状をなしている。
ホモジナイザ22は透明なガラス製で、上面で受けた光を4周内側面で全反射させつつ発電セル12に向けて下向きに透過させ、その過程で波長の異なる光を混合し、エネルギー的に均等化して発電セル12に対し下端から放射する。
この実施形態において、ホモジナイザ22は高さが40mmほどのものであり、その下面と発電セル12との間に微小な間隙を形成する状態で配置されている。
【0038】
ホモジナイザ22の略上端の高さ位置に配置された上記の遮光板24は、中心部に貫通の光通過穴37を有し、集光レンズにて集光された太陽光、即ち発電に有効利用できる太陽光だけを光通過穴37を通して通過させる一方、発電に利用できない光を遮光する働きを有するもので、平面形状が概略4角環状をなしており、対角の一対のコーナ部から延びたアーム部において支柱30に固定され、支柱30にて支持されている。
【0039】
この遮光板24は、ホモジナイザ22の上端部を固定し保持する働きも併せ有するもので、ホモジナイザ22の上端の4つのコーナ部を下向きに押し付けるとともに、光通過穴37の縁部に沿って下向きに折り曲げた爪39を、ホモジナイザ22の外面に当て、ホモジナイザ22を軸線方向及びこれと直角方向に拘束している。
尚この遮光板24端部のアーム部の支柱30への固定は、支柱30から同アーム部を上向きに貫通して突き抜けた雄ねじ部40に対してナット42を締め込むことで行われている。
【0040】
発電セル12,上側及び下側の各リード電極14,16の発電セル12との接合側の一部,形状保持板20,ホモジナイザ22の下部を包み込んで封止する上記の封止材32は、その封止によって、発電セル12や形状保持板20及びそれらに対する上側リード電極14,下側リード電極16の接合部,ホモジナイザ22と発電セル12との光学カップリング部分を密閉状態として保護し、水分や異物の侵入による発電セル12の劣化や各接合部の剥離を防止する働きを有する。
【0041】
この実施形態において、封止材32はその全体が樹脂にて形成されている。
封止材32は、ここではダム部44と、ダム部44にて囲まれた空間内部に充填された封止本体部46と、封止本体部46の上面を被覆する上被覆部48とに分かれている。
ダム部44は、発電セル12,形状保持板20,ホモジナイザ22の下部の四周を取り囲むように伝熱絶縁シート28上に設けられており、全体が遮光性の樹脂にて形成されている。具体的には白色のフィラーを充填することで遮光性とされた白色の樹脂にて形成されている。
【0042】
ダム部44は、流動状態で形状保持できる程度の比較的粘度の高い樹脂から成り、これをその流動状態で伝熱絶縁シート28上に盛り、その後これを硬化させることで形成されている。
一方、封止本体部46は透明な樹脂にて形成されている。
この封止本体部46は、ダム部44にて囲まれた空間に樹脂を流動状態で充填し、その後これを硬化させることで形成されている。
【0043】
この透明な樹脂から成る封止本体部46は、発電セル12,形状保持板20及びそれらと上側リード電極14,下側リード電極16との接合部、更にホモジナイザ22の下部を実質的に封止する部分である。
この透明な封止本体部46は、ホモジナイザ22の下面と発電セル12との間の微小な隙間を埋め、ホモジナイザ22の下面と発電セル12とを接着している。即ち封止本体部46の透明な樹脂にて、発電セル12とホモジナイザ22とが光学カップリングされている。
【0044】
ホモジナイザ22にて2次集光された光は、発電セル12とホモジナイザ22との間の透明な樹脂を通過して発電セル12に照射される。
尚この封止本体部46を形成する樹脂は、流動状態でダム部44を形成する樹脂よりも粘度の低いものが用いられている。
【0045】
一方、上被覆部48はダム部44と同じく遮光性の樹脂にて形成されている。具体的には白色のフィラーを配合することで遮光性とされた白色の樹脂にて形成されている。
即ちこれら上被覆部48とダム部44とで、透明な樹脂から成る封止本体部46を上面と側面とから被覆し遮光している。
これにより透明な樹脂から成る封止本体部46に光が到達するのを防ぎ、封止本体部46が光により劣化するのを防止している。
【0046】
尚上被覆部48は、ホモジナイザ22の内部においてその側面で全反射できずにホモジナイザ22を突き抜けた光を遮光及び反射させ、漏洩した光が透明な封止本体部46に侵入するのを防ぐ役割も果たしている。
【0047】
尚本実施形態では、ダム部44,封止本体部46,上被覆部48として、何れも常温でゴム弾性を有するRTVシリコーン樹脂(RTVシリコーンゴムと称されることもある)が用いられている。
より具体的には、ダム部44及び封止本体部46として2液型RTVシリコーン樹脂が、また上被腹部48として1液型RTVシリコーン樹脂が用いられている。
【0048】
これら樹脂から成る封止部32は、先ずダム部44を形成する流動状態のシリコーン樹脂を伝熱絶縁シート28上に盛り、その後に内側の空間に同じく流動状態の封止本体部46を形成するシリコーン樹脂を注入して充填し、その後これらを加熱処理し硬化させることで、ダム部44及び封止本体部46を形成している(RTVとは本来室温で加硫(硬化)するとの意味であるが、このRTVには加熱硬化タイプも含まれており、ここでは後者のものを用いている)。
尚上被覆部48は、その後に上被覆部48用のシリコーン樹脂を流動状態で封止本体部46を被覆する状態に施し、その後これを硬化反応させることで形成している。
【0049】
上記封止材32は、上側リード電極14及び下側リード電極16を外部に突き出させる状態に、詳しくはダム部44を貫通して外部に突き出させる状態に発電セル12等の周りを封止している。
この状態で、下側リード電極16の封止材32からの突出し部分16Aに、レシーバ10と10とを直列に電気接続するための図5(A)に示す内部配線50をはんだ付け作業すると、突出し部分16Aが熱伝導率の高い伝熱絶縁シート28に接触することで、はんだの熱がその伝熱絶縁シート28による熱伝導によってベース基板26側に抜けてしまい、はんだが上手く溶融しない。そのためにはんだ付け作業を上手く行うことができない。
【0050】
この場合、図5(B)に示しているように下側リード電極16の突出し部分16Aを上側に持ち上げて伝熱絶縁シート28から離し、その状態ではんだ付け作業すると、この場合にははんだが十分に溶融することができるが、持ち上げた突出し部分16Aが伝熱絶縁シート28から浮き上り不規則に傾いたりするために、溶融したはんだが突出し部分16Aの上面を幅方向に流れ、更に幅方向の端部から下向きに垂れ下がって、つらら状の突起Kを形成してしまい易い。
【0051】
このようにして突起Kが生じると、その後においてレシーバ10をハンドリングする際等に、突出し部分16Aに下向きの力が意図せず加わったりすると、つらら状に垂れ下がったはんだの突起Kが柔軟性を有する伝熱絶縁シート28を、図5(C)に示しているように突き破ってしまう。
そうすると、その突起Kとアルミ合金製の放熱性のベース基板26とが短絡状態となり、伝熱絶縁シート28の絶縁性が損なわれてしまう。
従ってこの状態で安全試験としての耐電圧試験を行うと、はんだの突起Kとベース基板26との間でスパークが生じてしまう。
【0052】
そこでこの実施形態では、図2に示しているように下側リード電極16の突出し部分16Aと伝熱絶縁シート28との間に、突出し部分16Aを伝熱絶縁シート28から離間した状態に保つ、断熱性の電極支持層54を設けている。
ここで電極支持層54は、当然ながら伝熱絶縁シート28よりも熱伝導率が低いことが必要であるが、断熱性を良好に発揮する上で、その熱伝導率を0.4W/m・K以下としておくことが望ましい。
【0053】
尚ここでは下側リード電極16の突出し部分16A全体に亘って電極支持層54が設けてあるが(但し突出し部分16Aが存在していない部分においては電極支持層54は設けられていない)、場合によってこの電極支持層54は、封止材32からの突出し方向において、或いはこれと直角方向の平面視幅方向において、部分的に突出し部分16Aと伝熱絶縁シート28との間に設けておくこともできる。
特に内部配線50がはんだ付けされる部分及びその熱影響が及ぶ部分、即ちはんだ付けの際の熱を受ける部分にだけ部分的に設けておくことができる。
【0054】
本実施形態では、実際にはこの電極支持層54として樹脂が用いられている。より具体的には、図1(B)に示したダム部44を形成しているのと同じ2液型のRTVシリコーン樹脂が用いられている。
上記伝熱絶縁シート28を構成している放熱シリコーン樹脂シートは、熱伝導性フィラーを配合することで高熱伝導率とされているが、電極支持層54を形成しているシリコーン樹脂にはそのような熱伝導性フィラーは配合されておらず、従って電極支持層54はシリコーン樹脂ポリマーによる高い断熱性を有している。
この電極支持層54は、断熱性と併せて絶縁性も有している。
尚これとは異なったシリコーン樹脂或いはシリコーン樹脂以外の他の樹脂材にて電極支持層54を構成することも可能である。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、下側リード電極16の封止材32からの突出し部分16Aに対してレシーバ10同士を繋ぐための内部配線50をはんだ付けする際、突出し部分16Aが断熱性の電極支持層54により支持され、伝熱絶縁シート28から離間した状態に保たれるため、はんだの熱が伝熱絶縁シート28を通じて放熱基板としてのベース基板26の側に抜けてしまうのを防止でき、これによりはんだを十分に溶融させ得てはんだ付け作業を良好に行うことができる。
【0056】
またその際、下側リード電極16の突出し部分16Aを伝熱絶縁シート28から持ち上げた状態ではんだ付け作業する場合のように、突出し部分16Aが不規則に傾いたりするなどして溶けたはんだが下側リード電極16から垂れ下り、つらら状の突起Kを形成してしまうのを防止することができる。
また仮にそのような突起Kが生じたとしても、下側リード電極の突出し部分16Aは電極支持層54により支持され、伝熱絶縁シート28から離隔状態に保持されているため、生じた突起Kが伝熱絶縁シート28を突き破って、その耐電圧特性を損なってしまうのを防ぐことができる。
更に下側リード電極16の加工時に生じたバリが伝熱絶縁シート28を損傷し、伝熱絶縁シート28の耐電圧特性を損なってしまう問題も解決することができる。
【0057】
また本実施形態において、断熱性の電極支持層54はゴム弾性を有するシリコーン樹脂から成っているため、かかる電極支持層54に耐熱性をもたせることができ、またシリコーン樹脂の有するゴム弾性によって熱応力を良好に吸収することができる。
【0058】
以上は下側リード電極16の突出し部分16Aと伝熱絶縁シート28との間にのみ電極支持層54を設ける場合の例であるが、本発明では、図4に示しているように上側リード電極14の突出し部分14Aと伝熱絶縁シート28との間においても同様の電極支持層54を設け、上側リード電極14の突出し部分14Aを伝熱絶縁シート28から離間した状態に保つようになしておくこともできる。
【0059】
このように上側リード電極14の突出し部分14Aと伝熱絶縁シート28との間に断熱性の電極支持層34を設けておくことで、突出し部分14Aに対して内部配線50をはんだ付けする際、はんだを十分に溶融させることができ、また溶けたはんだが上側リード電極14から垂れ下がってつらら状の突起となり、その突起により伝熱絶縁シート28の耐電圧性能が損なわれるのを防止することができる。
また上側リード電極14の加工時に生じたバリによって伝熱絶縁シート28が傷付けられ、耐電圧性能が損なわれることも防止できる。
【0060】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 レシーバ
12 発電セル
14 上側リード電極
16 下側リード電極
20 形状保持板
22 ホモジナイザ
26 ベース基板
28 伝熱絶縁シート
32 封止材
54 電極支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)発電セルと、(b)該発電セルの受光面となる上面の縁部から延び出した上側リード電極と、(c)該発電セルの下面から該上側リード電極とは異なった方向に延び出した下側リード電極と、(d)該発電セルの真上位置で該発電セルに光学カップリングされ、集光レンズで集光された太陽光を2次集光して該発電セルに導くホモジナイザと、(e)前記リード電極付きの該発電セル,該ホモジナイザを前記下側リード電極の側で固定させる放熱基板としての金属製のベース基板と、(f)該ベース基板の表面に積層され、前記発電セル及びリード電極と前記ベース基板との間を絶縁するとともに、該発電セルからの熱を該ベース基板に伝熱する柔軟性の伝熱絶縁シートと、(g)前記上側リード電極及び下側リード電極を外部に突き出させる状態に前記発電セル,該上側及び下側リード電極の該発電セルへの接合部,前記ホモジナイザの下部を包み込んで封止する封止材と、を有する集光型太陽光発電装置のレシーバであって、
前記下側リード電極の前記封止材からの突出し部分と前記伝熱絶縁シートとの間に、該突出し部分を該伝熱絶縁シートから離間した状態に保つ断熱性の電極支持層を設けたことを特徴とする集光型太陽光発電装置のレシーバ。
【請求項2】
請求項1において、前記上側リード電極の前記封止材からの突出し部分と前記伝熱絶縁シートとの間に、該突出し部分を該伝熱絶縁シートから離間した状態に保つ断熱性の電極支持層を設けたことを特徴とする集光型太陽光発電装置のレシーバ。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記断熱性の電極支持層がゴム弾性を有するシリコーン樹脂の層であることを特徴とする集光型太陽光発電装置のレシーバ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記発電セルの真下位置且つ前記下側リード電極の下面側に、該発電セルの形状を保持する形状保持板が設けてあり、該形状保持板が前記伝熱絶縁シートに接触せしめられていることを特徴とする集光型太陽光発電装置のレシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−26355(P2013−26355A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158387(P2011−158387)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】