説明

集光型太陽電池モジュール用裏面保護シート

【課題】本発明は、太陽光の吸収を低減することで集光型太陽電池モジュールの温度上昇を抑えるともに、反射光を効率よく発電に使用できることから高い発電量を実現できる集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの外部に備えられた反射鏡及び/または集光レンズにより太陽光を集光する集光型太陽電池モジュールにおいて、該太陽電池モジュールの太陽光入射面とは反対側の面に積層される樹脂製裏面保護シートであって、該シートの厚さが150〜400μmの範囲であり、400〜1500nmの波長域における太陽光入射側からの平均反射率が70%以上であり、該波長域における平均吸収率が5%以下であることを特徴とする集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものであり、具体的には集光型太陽電池モジュールとして平面鏡や曲面鏡、集光レンズを使用して光を集光する集光機能と共に用いられる太陽電池モジュールの裏面保護シートに関し、集光された光による該裏面保護シートにおける発熱を抑制し、太陽電池モジュールの温度上昇を抑えることで発電効率を高め、集光型太陽電池モジュールとしての性能を発揮させることができる集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、太陽光エネルギーは無尽蔵で無公害の新たなエネルギー源として注目されており、太陽光発電はクリーンで環境に優しい発電システムとして急速に開発が進んでいる。
【0003】
一般に、太陽電池モジュールは結晶シリコン太陽電池素子あるいはアモルファスシリコン太陽電池素子等の太陽電池素子を使用し、表面保護シート、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等の接着性樹脂シート、太陽電池素子、接着性樹脂シート、および裏面保護シート層の順に積層し、真空吸引して加熱圧着して一体化する方法により製造されている。太陽電池モジュールを構成する裏面保護シートとしては、軽量であり、電気特性、強度に優れたプラスチック基材が一般的に使用されてきている。太陽電池モジュールは20年以上の長期にわたり性能を維持することが求められるため、裏面保護シートは、強度、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、防湿性、意匠性等に優れ、これらが経時的に変化しないことが必要とされる。
【0004】
ところで集光型太陽電池モジュールは、モジュール全体の受光面積に対して太陽電池素子の面積を小さくできる構成であるため、高価な太陽電池素子の削減によるコストダウン、太陽電池素子のみの交換が可能であることから高性能の太陽電池素子に交換することで性能向上をはかったり、長期のメンテナンス性に優れるという特長を持つ。
【0005】
一般に、集光型太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールと平面鏡や曲面鏡、集光レンズを使用して光を集光する集光機能と、太陽の動きに追従して鏡の向きを調整する機構とで構成される。太陽光を光電変換する太陽電池素子としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの透明性の高い樹脂にて封止され、アルミニウム板や銅板などの金属やセラミック材料のレシーバ基板が接続されたものが例示でき、レシーバ基板を通して集光された太陽光による熱を逃がす構造が採用される(特許文献1)。
【0006】
また、前述の表面保護シート、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等の接着性樹脂シート、太陽電池素子、接着性樹脂シート、および裏面保護シート層の順に積層された太陽電池モジュールを集光型太陽電池モジュールに使用する試みがある。
【0007】
太陽電池モジュールにおいては、太陽電池素子自身の発電による発熱に加え、太陽光に曝されることで裏面保護シートが太陽光のエネルギーを吸収し温度が上昇するため、太陽電池モジュール全体の温度が真夏の無風時には80℃近くまで上昇すると言われている。集光型太陽電池モジュールにおいては更に高温度での使用を想定する必要があり、裏面保護シートが樹脂製である場合には樹脂であることによる耐熱性の制約が大きく、太陽電池モジュールの温度上昇を抑えるための設計が必要となる。
【0008】
また、太陽電池素子として一般的な単結晶シリコンセルを使用した場合、温度の上昇10℃あたり4〜5%出力が小さくなることが知られており、セルの温度上昇は出力低下に直結することが分かっている。発電量を1%向上させることに凌ぎを削る太陽電池の現状にとって太陽電池モジュールの温度上昇を抑えることは重要な課題であり、太陽光領域の波長の光の吸収による発熱を防止するために、太陽電池モジュール用裏面保護シートの積層された層のうち特定の着色樹脂層において800〜1400nmの範囲の波長吸収率を10%以下とすることで発熱を防止する提案がなされている(特許文献2)。
【0009】
しかしながら、太陽電池モジュール用裏面保護シートに積層された一部の層のみの吸収率を抑えても、他の層で太陽光の吸収による温度上昇が発生し、太陽電池モジュールの温度を上昇させるという問題がある。また、800〜1400nmの波長範囲は太陽光エネルギーの30%程度を占めるに過ぎず、太陽電池モジュールの発熱を抑えるには、より広い範囲の波長域での吸収率を下げて、太陽光照射による太陽電池モジュール用裏面保護シートの発熱を抑える必要がある。この課題は、特に温度上昇が懸念される集光型太陽電池モジュールに用いられる裏面保護シートに強く求められるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−118507号公報
【特許文献2】特開2009−181989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、表面保護シート、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂等の接着性樹脂シート、太陽電池素子、接着性樹脂シートおよび裏面保護シート層の順に積層された太陽電池モジュールを集光型太陽電池モジュールに使用する場合に、太陽電池モジュールの温度上昇を抑え、集光倍率に応じた高出力の集光型太陽電池モジュールを達成するための裏面保護シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、太陽電池モジュールの外部に備えられた反射鏡及び、または集光レンズにより太陽光を集光する集光型太陽電池モジュールにおいて、該太陽電池モジュールの太陽光入射面とは反対側の面に積層される樹脂製裏面保護シートであり、該シートの厚さが150〜400μmの範囲であり、400〜1500nmの波長域における太陽光入射側からの平均反射率が70%以上であり、該波長域における太陽光入射側からの平均吸収率が5%以下であることを特徴とする集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートにより、集光型太陽電池モジュールが上記課題を達成できることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートを使用することで、裏面保護シートとしての基本特性である絶縁性を保つとともに、裏面保護シートからの発熱を抑えることで太陽電池モジュールの温度上昇を抑え、集光倍率に応じた高出力の集光型太陽電池モジュールを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の集光型太陽電池モジュールの集光機構を除いた一例を示した概略断面図である。
【図2】本発明の太陽電池裏面保護シートを例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、集光型太陽電池モジュールに使用される太陽電池モジュールを構成する部材であり、以下に集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートを図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の集光型太陽電池モジュールに使用される太陽電池モジュールの層構成の一例を示す断面図である。表面ガラス(あるいは表面保護シート)(1)、接着性樹脂層(2)、太陽電池素子(3)、接着性樹脂層(2)、裏面保護シート(4)、およびアルミニウム製ヒートシンク(5)によって構成される。太陽光は表面ガラス(1)から入射し、接着性樹脂層(2)を通り、太陽電池素子(3)に到達し起電力が生ずる。吸収した熱は裏面保護シート(4)を通じてアルミニウム製ヒートシンク(5)より放熱される。
【0017】
図2は、集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートの一例を示す断面模式図である。光照射面側から白色ポリオレフィンフィルム(6)、接着剤層(7)、耐加水分解性を有するポリエステルフィルム(8)の順番に積層されている。
【0018】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、樹脂製のシートであることが太陽電池素子を絶縁破壊から保護するために必要であり、シートの厚さは150〜400μmの範囲にあることが必要である。150μm未満では、どの様に裏面保護シートを構成する樹脂フィルムを選択しても、耐絶縁性が不十分であり、長期に集光型太陽電池モジュールを使用することができない。400μm以上とすると、集光した太陽光により、及び太陽電池素子自身で発生した熱を裏面保護シートに接続したヒートシンクに効率よく伝達できず、太陽電池素子の温度が上昇して効率の良い発電ができなくなり、集光型太陽電池モジュールとして集光倍率に応じた発電量を得ることができなくなる。
【0019】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、太陽光入射側からの反射率を高くして太陽光を反射することで裏面保護シートにおける光の吸収率を低下させることができる。400〜1500nmの波長域における太陽光入射側からの平均反射率が70%以上である必要があり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。また、400〜1500nmの波長域における平均反射率を70%以上とすることにより、太陽電池素子の傍らから裏面保護シートに入射した光が接着性樹脂層と裏面保護シート界面で反射され、表面ガラスや表面ガラスと接着性樹脂層との界面で反射された光が太陽電池素子に入射して発電に寄与し、全体の発電効率を高めるという効果も得られる。
【0020】
本発明における集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、400〜1500nmの波長域の平均反射率を70%以上とするには、裏面保護シートに白色微粒子を添加することが効果的である。白色微粒子としては、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等から選択される。これら白色微粒子は、裏面保護シート全体に添加されても良く、一部の層として積層される一部のフィルムにのみ添加されても良い。
【0021】
白色微粒子は最も反射率の優れる酸化チタンが好ましく、その平均粒子径は200〜500nmの範囲が分散性と反射スペクトル特性から好ましい。酸化チタン粒子としては特に限定されるものではないが、結晶型として、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型などが知られており、優れた白色度と耐候性および光反射性などの特性からルチル型が好ましい。また酸化チタンは、光触媒作用によって樹脂を劣化させる可能性があることから、光触媒作用を抑制する目的で、表面被覆処理されていることが好ましく、その組成は限定されないが、酸化ケイ素やアルミナ、または酸化亜鉛などの無機酸化物であることが好ましい。表面被覆剤の被覆方法についても特に限定されたものではなく、公知の方法で得られた酸化チタン粒子を使用することができる。
【0022】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートにおける、400〜1500nmの波長域における太陽光入射側からの平均吸収率は5%以下とすることが必要である。より好ましくは3%以下である。5%を越えると集光された太陽光により裏面保護シートの温度が上昇し、集光型太陽電池モジュールとしての効率を低下させる。該吸収率を5%以下とするには、太陽光を吸収する樹脂組成からなる層を反射率の高い白色フィルムでカバーするという設計が好ましい。本発明における好ましい態様として、前述の白色微粒子を添加した白色ポリオレフィンフィルム層を太陽光が入射する側に配設し、太陽光を吸収するポリエステルフィルムを該白色ポリオレフィンフィルムの下に積層する構成を提案するが、この態様に限定はされない。
【0023】
本発明における裏面保護シートは、白色ポリオレフィンフィルムと耐加水分解性ポリエステルフィルムを少なくとも1層含むことが好ましい。
【0024】
さらに、耐加水分解性ポリエステルフィルムの白色ポリオレフィン側とは反対側の表層に白色微粒子を添加し耐加水分解性ポリエステルフィルムの反射率を向上させることは、耐加水分解性ポリエステルフィルムに到達した光が白色ポリオレフィンフィルムに再帰し、白色ポリオレフィンフィルム側の平均反射率を上昇させることに有効である。またこの耐加水分解性ポリエステルフィルムの構成により、白色微粒子が添加された層が、周囲の照り返しによる太陽電池モジュール裏面側への紫外線の影響を低減することで耐加水分解性ポリエステルフィルムの耐紫外線性が向上するため好ましい。
【0025】
白色ポリオレフィンフィルムの材料樹脂であるポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのオレフィンモノマーを単独あるいは共重合したものの総称であるが、耐熱性の点でポリエチレンとポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方がさらに耐熱性に優れ、太陽電池モジュール用裏面保護シートを成型する際の高温・高圧下での変形を受けにくく、該加工温度が高い場合にはより好ましく用いられる。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、140℃〜170℃の範囲であることが、耐熱性をはじめ、滑り性やフィルムのハンドリング性、耐カール性、接着性樹脂層との熱接着性の点から好ましい。融点を140℃以上とすることで耐熱性に優れ、太陽電池モジュール用裏面シートとして接着性樹脂層と熱融着させたときに、シートの厚みが低減したり、耐絶縁性が低下するといった不具合を抑えることができるため好ましい。融点を170℃以下とすることで、接着性樹脂層との優れた密着力を確保することができ好ましい。
【0027】
白色ポリオレフィンフィルムは、白色微粒子を添加したポリオレフィン樹脂を溶融しスリット状の口金から押し出し、冷却固化して成型する。白色ポリオレフィンフィルムは単層であっても良く、複層であっても良いが、白色微粒子が内層(B層)にのみ添加され、表裏層(A層、C層)には白色微粒子が添加されない、A/B/CあるいはA/B/Aの3層構成であることが溶融押出の口金の汚れを抑えることができ好ましい。
【0028】
白色ポリオレフィンフィルムの厚さは、用いられる太陽電池モジュールの構造によって変わるものの、10〜200μmの範囲が好ましく、更に、20〜150μmの範囲がフィルム製造面や他基材とのラミネート加工性から好ましく、なるべく薄い方が、経済性、軽量性から好ましい。
【0029】
本発明における好ましい部材である耐加水分解性ポリエステルフィルムとは、140℃高圧スチームで10時間保管後の引張伸度がフィルムの縦方向、横方向共に60%以上を保持するポリエステルフィルムのことである。耐加水分解性を有するポリエステルフィルムは、耐熱性、防湿性、耐加水分解に優れる性能を有し、太陽電池モジュールの保護を確実に行うことができる。
【0030】
ポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られる樹脂であり、ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などを用いることができる。これらのうちテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、さらにテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。
【0031】
またジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、2,5−ナフタレンジオール、p−キシレンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。これらのうちエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、さらにエチレングリコールが特に好ましい。
【0032】
ポリエステルの融点は耐熱性の点から250℃以上であることが好ましく、また300℃以下であることが生産性の面から好ましい。このようなポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0033】
耐加水分解性ポリエステルフィルムは、ジカルボン酸成分にテレフタル酸、ジオール成分にエチレングリコールを用いた固有粘度[η]が0.70〜1.20、より好ましくは0.75〜1.00のポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルムや、ジカルボン酸成分に2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分にエチレングリコールを用いたポリエチレン−2,6−ナフタレートの二軸延伸フィルムが耐熱性、耐加水分解性、耐候性、機械強度等の面で特に好ましい。ここで、固有粘度[η]は、o−クロロフェノールを溶媒としてポリエステルフィルムを溶解し、25℃の温度で測定した値であり、該粘度はポリエステルの重合度に比例する。この固有粘度が0.70以上である場合には、耐加水分解性、耐熱性を付与することが容易となり、裏面保護シート、さらには太陽電池モジュールの耐加水分解性能を向上させるため好ましい。また、該数値が1.20以下の場合には、溶融粘度が低くなり溶融押出成形が容易となり、フィルムの製膜性が向上するため好ましい。
【0034】
これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を用いることができる。 また、このポリエステルの中には、必要に応じて、本発明の効果が損なわれない量で適宜な添加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、耐侯安定剤、有機の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0035】
上述のポリエステルから二軸延伸フィルムにするには、ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥し、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシートを押出し、金属ドラムに密着させ該ポリエステルのガラス転移点以下の温度まで冷却して未延伸フィルムを得る。該未延伸フィルムを同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法などの周知の方法で二軸延伸フィルムを得ることができる。この場合の条件としては、延伸温度は該ポリエステルのガラス転移点Tg以上Tg+100℃以下の任意の条件を選ぶことができ、通常は80〜170℃の温度範囲が最終的に得られるフィルムの物性と生産性から好ましい。また延伸倍率はフィルムの長手方向、幅方向とも1.6〜5.0、好ましくは1.7〜4.5の範囲が選べる。また、延伸速度は1000〜200000%/分であることが好ましい。更に延伸後にフィルムの熱処理を行うが、幅方向に延伸するテンターに後続する熱処理室で連続的に熱処理するか、別のオーブンで加熱したり、加熱ロールでも熱処理できる。熱処理条件は、温度が120〜245℃、時間が1〜60秒の範囲が通常用いられる。熱処理時に幅方向、長手方向に熱寸法安定性をよくする目的でリラックス処理が行われてもよい。
【0036】
また、前述の通り、耐加水分解性ポリエステルフィルムは、耐加水分解性ポリエステルフィルムの白色ポリオレフィン側とは反対側の表層に白色微粒子を添加し耐加水分解性ポリエステルフィルムの耐紫外線性を向上させる構成、すなわち耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートと白色耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートが共押し出し製膜された構成であっても良い。この場合、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートと白色耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート層の厚さの比が、白色耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートに対して耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートが2〜8の範囲であることが望ましい。該共押し出しポリエステルフィルムを使用することによって、従来のポリエステルフィルムでは得られなかった高い反射率と耐紫外線性、耐湿熱性を得ることができる。
【0037】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、前述のポリオレフィン、ポリエステルからなる層に加え、あるいはこれらに代えてナイロン樹脂や、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂からなる層を積層しても良い。
【0038】
ナイロン(ポリアミド)樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−11、ナイロン−12など機械強度や寸法安定性、耐熱性に優れるものが望ましい。
【0039】
フッ素系樹脂としては、例えばポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、またはエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を主成分とする樹脂を使用するのが望ましい。
【0040】
集光型太陽電池用裏面保護シート表層にエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂層を積層する場合は、太陽電池素子を封止するための接着性樹脂層として使用するエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂と強く密着するために、酢酸ビニル含有率が2〜20重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を使用するのが良い。酢酸ビニル含有率が2重量%未満では、接着性樹脂のエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂との密着性が悪くなり、20重量%を超えるとブロッキングしやすくなるためである。
【0041】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、120℃高圧スチームで72時間保管後の引張伸度がフィルムの縦方向横方向共に60%以上を保持することが、耐加水分解性が良好となるため好ましい。耐加水分解性を有する集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、耐熱性、防湿性、耐加水分解に優れる性能を有し、集光型太陽電池モジュールの保護を確実に行うことができる。
【0042】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、太陽電池モジュール作製時のシワ混入抑制のため、150℃、30分熱処理をしたときの収縮率が、縦方向横方向共に0.5%以下であることが好ましい。
【0043】
集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートの150℃、30分の熱処理における収縮率を、縦方向横方向共に0.5%以下に抑える方法としては、例えば、アニール処理により、事前に熱を与えることにより収縮させ、後工程において熱が加わるラミネートや熱圧着等の工程での収縮を防ぐ技術が知られている。
【0044】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、積層フィルムの各層を積層する接着の方法としては、接着剤を一方のフィルムに塗布したのち、もう一方のフィルムと重ね合せ、加圧あるいは、加熱下で接着する方法などを用いることができる。接着に用いられる接着剤として代表的なものは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂,ポリアミド、フェノール、ポリオレフィン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタールなど、およびこれらの共重合体や混合物などがあげられる。接着剤は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂,ポリオレフィン、アイオノマーが、接着力およびガスバリア性の点で好ましい。接着剤の厚さは、1.0〜10.0μmが好ましく、より好ましくは、3.0〜5.0μmである。
【0045】
太陽電池モジュール用裏面保護シートは、接着性樹脂層を介して、太陽電池素子、接着性樹脂層、表面保護シートと積層し、接着性樹脂層を加熱溶融、圧着、冷却することにより、太陽電池モジュールとして一体化し形成されるのが一般的である。
【0046】
太陽電池モジュールの接着性樹脂層は、太陽電池素子の凹凸を被覆し、素子を温度変化、湿度、衝撃などから保護し、かつ太陽電池モジュール用表面保護シートとの接着性を確保する目的で使用される。太陽電池モジュールの接着性樹脂層としては、公知の接着性フィルムを使用することができ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、EVAと略称することがある)、エチレン・アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、エチレン・酢酸ビニル部分鹸化物、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。太陽電池モジュールの接着性樹脂層は、耐光性、透過性、耐湿性、経済性の点からEVAが特に好ましく用いられ、酢酸ビニル含有量が15〜40重量%のものが特に好ましい。太陽電池モジュールの接着性樹脂層の酢酸ビニル含有量が15〜40重量%であると、透明性が低下せず、樹脂のべたつきがなく、加工性や取り扱い性がよい。
【0047】
太陽電池モジュールの接着性樹脂層には、必要に応じて、有機過酸化物などの架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等添加剤を使用することができる。
【0048】
本発明の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートは、表面保護シート、接着性樹脂層、太陽電池素子、接着性樹脂層および裏面保護シート層の順に積層された太陽電池モジュールを集光型太陽電池モジュールに使用する場合に、太陽電池モジュールの温度上昇を抑え、集光倍率に応じた高出力の集光型太陽電池モジュールを達成することができる。
【0049】
通常の太陽電池モジュールは、AM−1と呼ばれる春分、秋分の南中時の赤道直下での太陽光エネルギースペクトルの太陽光が入射する条件を標準として出力や変換効率が評価され、この場合の太陽電池モジュールに入射するエネルギー密度は100mW/cmである。集光型太陽電池モジュールにおいては、集光レンズや鏡により太陽光が集光されるため、本発明の集光型太陽電池モジュールにおける太陽電池モジュールは、150〜1000mW/cmのエネルギー密度により太陽光が入射する場合に大いに能力を発揮する。すなわち、AM−1(100mW/cm)の条件における太陽電池モジュールの変換効率η(%)に対する、当該太陽電池モジュールによる150〜1000mW/cmの条件での変換効率η(%)の比率(集光効率)η/ηが0.8以上であれば、集光倍率に応じた高出力の集光型太陽電池モジュールを達成できている。高エネルギーの太陽光入力によっても、裏面保護シートによる発熱が小さく、裏面保護シートを通じての放熱が効率よく行われ、太陽電池モジュールの温度上昇が抑えられ、入射太陽光エネルギーに応じた出力が得られるからである。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例および比較例における本発明の特性値は、以下に示す測定方法ならびに評価基準によるものである。
・評価方法
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法、積層体サンプル作製方法を下記に示す。
【0051】
(1)全厚さ(μm)
アンリツ(株)製膜厚計「K351C」を用いて、太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚みを1ミクロン単位で測定した。
【0052】
(2)平均反射率(%)および平均吸収率(%)
(株)島津製作所製分光光度計「UV-3100」を用いて、波長400〜1500nmにおける2nm毎の太陽電池モジュール用裏面保護シートの太陽光入射側からの透過率及び反射率を測定した。光源はタングステンランプを使用し、スキャン速度1600nm/分、φ60積分球((株)島津製作所製「BIS-3100」)を使用し測定した。
【0053】
反射率について、標準白色板として硫酸バリウムを用いて、傾斜角度を8°つけて拡散反射率を求め、その時の反射率を100%とした(R)。その後、標準白色板を50mm×50mmの試料片に取り替え拡散反射率を測定した(R)。その後、下記式により反射率に換算した(R)。
R(%)=R/R×100
R :反射率
:標準白色板の反射率
:試験片の反射率
透過率について、試験片をつけないまま透過率を求め、その時の透過率を100%とした(T)。その後、試験片を取り付け透過率を測定した(T)。その後、下記式により透過率に換算した(T)。
T(%)=T/T×100
T :透過率
:試験片なしでの透過率
:試験片の透過率
吸収率については、次式に基づいて求めた。
吸収率(%)=100−(T+R)
この様に求めた波長400〜1500nm間の反射率および吸収率の2nm毎の全データ値を算術平均し、さらにn=3での平均値を平均反射率(5)と平均吸収率(%)とした。
【0054】
(3)太陽電池モジュール作製方法
厚さ3.2mm、200mm×200mmのガラス(AGCファブリテック(株)製)の上に単結晶シリコンセル(100mm×100mm)を厚さ0.45mmのエチレン・酢酸ビニル共重合体シート(サンビック(株)製「PV−45FR000」)2枚で挟み込み、更に裏面保護シートを重ねて封止し、太陽電池モジュールを作製した。該太陽電池モジュールの裏面保護シート中央にサーマルグリス(「YG6260−5」モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)5gを塗布し、100mm×100mm×20mmのアルミニウム製ヒートシンク(LPD100−20B(株)アルファ製)を空気が入らないようにして接着し、太陽電池モジュールを作製した。
【0055】
(4)模擬実験による300mW/cmでの集光型太陽電池モジュールの表面温度(℃)
(3)にて作製した太陽電池モジュールを用い、温度23±2℃、湿度60±5%RHに調節された雰囲気において、キセノンランプ(出力2000W、AM−1規格)により日本特殊光学樹脂(株)製フレネルレンズCF200−B(250mm×250mm)にて集光し、照度計(英弘精機(株)製小型センサーML−020)により100mW/cmのエネルギー密度となるようフレネルレンズの位置を調整した。この時の照射面積を基準とし、フレネルレンズを更に調整して照射面積を狭くし、集光した倍率を考慮して300mW/cmのエネルギー密度となるようにフレネルレンズの位置を固定した。この条件で、太陽電池モジュールの表面保護ガラス面にランプ、太陽電池間距離500mmにてランプ照射を行ない、ランプ照射開始60分経過後に温度が一定した条件でガラス表面の温度を(株)チノー製放射温度計(IR−AHT0)により、放射率0.95としてランプの反射光が入射しない方向からガラス表面温度を測定した。
【0056】
(5)集光効率(%)
上記(4)のランプ照射の装置により、温度23±2℃、湿度60±5%RHに調節された雰囲気において、フレネルレンズの位置を調整することで100mW/cmのエネルギー密度(Iとする)および、集光して100mW/cmを越えるエネルギー密度(Iとする)の条件で照射し、照射開始60分後に英弘精機(株)製I−VカーブトレーサーMP−160を使用し、100mW/cmでの発電量P、集光した場合の発電量Pをそれぞれ求め、n=5での測定結果の平均を測定値とした。
【0057】
前述の通り、集光効率をAM−1(100mW/cm)の条件における太陽電池モジュールの変換効率η(%)に対する、当該太陽電池モジュールによる100mW/cmを越える条件での変換効率η(%)の比率(集光効率)η/ηとすると、
集光効率=η/η
=(P/I)/(P/I
=(P/P)/(I/I
すなわち、例えばエネルギー密度すなわち集光倍率が3倍になったときに発電量は理想的には3倍になり上記値は1となるが、温度上昇により発電量が下がるため1未満の値となり、1より大きく低下しないことが集光型太陽電池モジュールとして重要となる。Iが150〜1000mW/cmの範囲において、0.8以上であれば性能の良い集光型太陽電池モジュールとすることができる。
【0058】
(6)部分放電電圧特性
50mm×50mmの裏面保護シートを菊水電子工業(株)製「KPD2050」を使用し、部分放電電圧を測定した。
【0059】
温度23±2℃、湿度50±5%RHに調節された雰囲気において、0Vから印加電圧を上昇させ電荷量が10pCとなる電圧を開始電圧とした。この開始電圧の1.1倍の電圧まで印加電圧を上昇させ、この電圧で2秒間印加する。その後、印加電圧を下げていき電荷が消滅する電圧(閾値10pC)となる電圧を消滅電圧とした。
この消滅電圧のn=10での測定結果の平均より標準偏差を引き、1.414を掛け、それらの値を1.5で除した値を部分放電電圧とし、下記の評価基準に従って評価した。
○:部分放電電圧が1000V以上
△:部分放電電圧700V以上1000V未満
×:部分放電電圧が700V未満。
【0060】
実施例1〜6と比較例1〜3の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートの各種評価結果を表1に示す。表1に示したシート厚さは、5g/mの接着剤厚さを含めた集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートの厚さである。
【0061】
(実施例1)
耐加水分解性を有するポリエステルフィルムとして、印ガルワレ社製の厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムEM6−LOを用い、岡崎機械工業(株)製のフィルムコーターを用いて、180℃の乾燥温度にて44秒間熱処理した。しかる後に大日本インキ化学工業(株)製接着剤TAF−300の12重量部に対し、大日本インキ化学工業(株)製硬化剤AH−3の1重量部を添加し、固形分濃度を19重量%になるよう酢酸エチルにて希釈し、岡崎機械工業(株)製のフィルムコーターを用いて80℃の乾燥温度にて乾燥後の塗工層厚さ5.0g/mとなるように接着剤層を形成した。
【0062】
ガルワレ社製EM6−LOと貼合するフィルムとして、東レフィルム加工(株)製の150μm白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)を使用し、40℃オーブンにて72時間硬化エージングを行って集光型太陽電池モジュール用裏面保護シートを作製した。
【0063】
この裏面保護シートの全厚さは280μmであり、白色ポリプロピレンフィルム側からの平均反射率は87%、平均吸収率は2.5%であった。
【0064】
この裏面保護シートを用いて作製した太陽電池モジュールの300mW/cmの照射エネルギー密度における表面温度は82℃であり、100mW/cmでの発電量は1850mWであった。フレネルレンズを用いて200mW/cmとしたときの発電量は3550mWであり、集光効率は0.96と高い値となった。
【0065】
なお、裏面保護シートの状態で評価した部分放電電圧特性も良好であった。
【0066】
(実施例2)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製125μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)の厚さ100μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0067】
(実施例3)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製75μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)の厚さ75μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0068】
(実施例4)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製188μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)の厚さ200μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0069】
(実施例5)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製75μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリエチレンフィルム(ルチル型酸化チタン20重量%添加)の厚さ150μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
実施例3では全厚さが155μmと小さく、部分放電電圧特性が不十分であったが、実用レベルであった。
実施例4では全厚さが393μmと大きく、集光効率が0.81と低めであった。裏面保護シートが厚いことで、発生した熱を逃がす能力が不十分で温度上昇により集光型太陽電池として集光効率が低下したものと推定できる。
【0070】
(実施例6)
実施例1で作製した太陽電池モジュールを900mW/cmの条件で駆動した。高エネルギー密度の照射に関わらず、集光効率0.83と高く、良好な集光型太陽電池モジュールとすることができた。
【0071】
(実施例7)
実施例1で作製した太陽電池モジュールを120mW/cmの条件で駆動した。効率としては良好であるが、集光型太陽電池モジュールとしての高出力の性能を発揮できていない。
【0072】
(実施例8)
実施例1で作製した太陽電池モジュールを1100mW/cmの条件で駆動した。集光効率は0.72と低下しており、集光型太陽電池モジュールとしての性能が低下した。
【0073】
(実施例9)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製“ルミラー”MX11の125μmの厚さに、貼合するフィルムを白色ポリエチレンフィルムの厚さ100μmのものへ変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。MX11は、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートを原料に用い、共押出により白色微粒子を添加した層を25μm積層したものである。
【0074】
(比較例1)
厚さ335μmのISOVOLTA社製太陽電池モジュール用裏面保護シートIcosolar2442(38μm白色PVF(ポリフッ化ビニルフィルム)/250μmポリエステルフィルム/38μm白色PVFの構成)を比較例1とした。
【0075】
(比較例2)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製75μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)の厚さ50μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0076】
(比較例3)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製188μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン33重量%添加)の厚さ250μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0077】
(比較例4)
耐加水分解性ポリエステルフィルムを東レ(株)製125μm“ルミラー”X10Sに、これに貼合するフィルムを東レフィルム加工(株)製白色ポリプロピレンフィルム(ルチル型酸化チタン5重量%添加)の厚さ150μmのものへ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0078】
比較例1では、平均吸収率が28%と高く、集光効率は0.65と低いものとなった。
【0079】
比較例2では、全厚さが130μmであり、部分放電電圧特性が不十分となった。
【0080】
比較例3では、全厚さが443μmとなり、ヒートシンクへの放熱が不十分となり、集光効率が低下した。
【0081】
比較例4では、平均反射率が低く、平均吸収率も高いことからやはり集光効率が低下した。
【0082】
【表1】

【符号の説明】
【0083】
(1) 表面ガラス(あるいは表面保護シート)
(2) 接着性樹脂層
(3) 太陽電池素子
(4) 裏面保護シート(4)
(5) アルミニウム製ヒートシンク
(6) 白色ポリオレフィンフィルム
(7) 接着剤層
(8) 耐加水分解性を有するポリエステルフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの外部に備えられた反射鏡及び/または集光レンズにより太陽光を集光する集光型太陽電池モジュールにおいて、該太陽電池モジュールの太陽光入射面とは反対側の面に積層される樹脂製裏面保護シートであって、該シートの厚さが150〜400μmの範囲であり、400〜1500nmの波長域における太陽光入射側からの平均反射率が70%以上であり、該波長域における平均吸収率が5%以下であることを特徴とする集光型太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
太陽電池モジュールに入射する太陽光のエネルギー密度が最大で150〜1000mW/cmの範囲で使用される請求項1に記載の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記裏面保護シートが、白色ポリオレフィンフィルムと耐加水分解性ポリエステルフィルムを少なくとも1層含むことを特徴とする請求項1または2に記載の集光型太陽電池モジュール用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−110286(P2013−110286A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254697(P2011−254697)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】