説明

集合ケーブル

【課題】小型化および各ケーブルの確実な接続を可能にする集合ケーブルを提供すること。
【解決手段】複数のケーブル11を固定部材20によって固定し、該複数のケーブル11内の接続端部を含む集合ケーブル端面Sが形成された集合ケーブルであって、集合ケーブル端面S内の芯線12表面およびシールド線14表面を覆う導電体層32,34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のケーブルを一括して接続することができる集合ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡の先端部回路では、複数のケーブルを一括して接続することができる集合ケーブルが用いられ、接続端子部分として機能する硬質部の長さを短くすることによって小型化を実現している。この集合ケーブルは、硬質部を形成する配列ブロックを用いて複数のケーブルを固定し、この固定された複数のケーブルの先端部分を研磨処理によって同一平面が形成されたケーブル接続端面を形成し、このケーブル接続端面に異方性導電性樹脂フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Adhesive Film)や異方性導電性樹脂ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Adhesive Paste)を用いて接続することによって、複数のケーブルを硬質部長を短くして一括接続していた。
【0003】
【特許文献1】特許第3863583号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の集合ケーブルは、配列ブロックを用いて各ケーブルを固定するようにしているが、上述した研磨処理を行っても、各ケーブルと配列ブロックとの間の位置ずれが生じたり、あるいはケーブルが同軸ケーブル等である場合には、外部絶縁体または内部絶縁体に対するシールド線や芯線の位置ずれが生じたりしてしまい、各ケーブル端部を同一平面上に揃えることが難しく、集合ケーブルを基板等に直接接続する場合、接続不良のケーブルが存在する場合があるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化および各ケーブルの確実な接続を可能にする集合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる集合ケーブルは、 複数のケーブルをケーブル固定部材によって固定し、該複数のケーブル内の接続端部を含む接続端面が形成された集合ケーブルであって、前記接続端面内の前記接続端部表面上を覆う導電体層を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる集合ケーブルは、上述した発明において、前記導電体層は、それぞれ前記接続端部表面を超えて覆うことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる集合ケーブルは、上述した発明において、前記導電体層は、それぞれ前記接続端部表面と該接続端部に隣接する絶縁部との間を跨いで形成されたリング状であることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる集合ケーブルは、上述した発明において、各ケーブルは、共通のシールド線を有し、前記導電体層は、各シールド線の接続端部表面間を接続することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる集合ケーブルは、上述した発明において、各導電体層上に、前記接続端部と該接続端部に対応する外部の接続端部とを接続するための接続用導電部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる集合ケーブルは、上述した発明において、前記接続用導電部材が設けられた領域以外の領域に絶縁体膜を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、複数のケーブルをケーブル固定部材によって固定し、該複数のケーブル内の接続端部を含む接続端面が形成された集合ケーブルに、前記接続端面内の前記接続端部表面上を覆う導電体層を設け、該導電体層が、前記接続端面近傍で、前記接続端部と該接続端部に隣接する絶縁部との間を埋めるように位置し、前記導電体層が前記接続端部と該絶縁部とを接合するように作用しているので、前記接続端部が、該接続端部に隣接する絶縁部に対して引き込まれることがなくなり、常に接続端部が接続端面上に位置するので、外部の接続端子と確実に導通接続させることができ、集合ケーブルの小型化を維持しつつ、複数のケーブルの確実な接続を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明にかかる集合ケーブルの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる集合ケーブルの製造を説明する説明図である。また、図2は、製造された集合ケーブルの適用例を示す説明図である。図1において、まず集合ケーブルは、複数のケーブル11からなるケーブル群10を束ね、この束ねたケーブル群10を、樹脂などで実現される固定部材20によって各ケーブル11を固定する。この固定された状態で、集合ケーブルの接続端面である集合ケーブル端面Sを形成するため、カット面21で、固定部材20の一部をカットする。このカットされた面のうち、ケーブル群10が接続されている接続端面に対して研磨処理を施し、各ケーブル11の接続端部を含む接続端面を同一面に形成する。
【0015】
各ケーブル11は、同一径の同軸ケーブルであり、芯線12の外周に内部絶縁体13を介してシールド線14が形成され、このシールド線14の外周に外部絶縁体15が設けられている。なお、図1では、断面が略矩形となる3×3の9本の集合ケーブル11が隣接して並行配置されているが、予めケーブル挿入孔が設けられた配列ブロックを用いてもよい。この場合、各ケーブル11は隣接配置されない。なお、配列ブロックを含めてカットし研磨処理することが好ましい。
【0016】
研磨処理によって集合ケーブル端面Sが形成されると、各ケーブル11の芯線12およびシールド線14の断面である接続端面表面上にそれぞれ対応する導電体層パターン30をもつ導電体層32,34を設ける。導電体層32,34は、金属膜で実現され、導電体層パターン30を電解めっき、無電解めっき、あるいはスパッタリングで形成する。なお、導電体層32,34は、単層構造であっても多層構造であってもよい。最表面側からAu→NiとなるNi−Au膜となる多層構造とすると、外部の接続端面との結合を強く形成することができるため好ましい。また、Ni−Au膜とすることによって、ACFやACPによる接続だけでなく、はんだバンプ接続やAuバンプ接続にも対応することが可能になり、接続態様の柔軟性が増す。
【0017】
このようにして形成された集合ケーブル1は、図2に示すように、集合ケーブル1の集合ケーブル端面Sの導電体層パターン30に応じた基板パターン41が形成された基板40に接続される。この集合ケーブル1と基板40との間に、ACF50などの異方性導電性樹脂材料を挟み込み、この異方性導電性樹脂を熱圧着することにより、圧着された領域に導電部51が形成されるとともに集合ケーブル1と基板40とが接合される。導電体層32,34が形成された領域は、集合ケーブル端面Sから外側に向けて凸状態になっているため、大きな圧力がかかって、ACF50内の密になったフィラーなどを介して導電部51が形成される。
【0018】
ここで、この実施の形態では、導電体層32,34の形状が、それぞれ芯線12の断面形状およびシールド線14の断面形状に一致させている。現実のケーブル11は、図3に示すように、芯線12と内部絶縁体13との間や、シールド線14と内部絶縁体13および外部絶縁体15との間には、それぞれ間隙12a,14aが存在しており、導電体層32,34は、集合ケーブル端面S近傍の各間隙12a,14aに入り込むように形成される。すなわち、導電体層32,34が、間隙12a,14aに楔状に入り込むように形成され、集合ケーブル端面S近傍において、線幅方向への応力発生とともに、芯線12と内部絶縁体13との間、およびシールド線14と内部絶縁体13および外部絶縁体15との間を固定させる。一般に、固定部材20によって固定されていないケーブル11の屈曲や、温度変化などによって、芯線12やシールド線14は矢印A1方向に引き込まれるおそれがあるが、上記の固定によりこのことが防止され、集合ケーブル端面S上に確実に接続端面が形成されることになる。換言すれば、導電体層32,34は、芯線12やシールド線14が矢印A1方向へ引き込まれるのを防止するストッパとしての機能を有することになる。なお、芯線12やシールド線14が撚線等、複数の線で形成されている場合には、集合ケーブル端面S近傍で、各線間に導電体層32,34が楔状に入り込み、線幅方向への応力発生によってストッパとしての機能を発生する。
【0019】
なお、図4に示すように、芯線12,シールド線14の各幅W12,W14を超え、オーバーラップさせた導電体層52,54としてもよい。この場合、芯線12,シールド線14の領域を超えて設けられた導電体層の部分が、芯線12,シールド線14のA1方向への引き込みを防止するとともに、導電体層52,54は、集合ケーブル端面Sで芯線12,シールド線14に導電接続される。
【0020】
また、図5に示すように、芯線12と内部絶縁体13とが接している領域近傍、シールド線14と内部絶縁体13とが接している領域近傍、シールド線14と外部絶縁体15とが接している領域近傍のみをリング状に形成した導電体層62,63,64としてもよい。これによれば、導電領域が減少するものの、芯線12,シールド線14の引き込みを防止できる。
【0021】
さらに、図6に示すように、各ケーブル11のシールド線14が共通電位のシールド線である場合、各導電体層34間を、導電体層35によって共通接続するようにすることが好ましい。これによって、シールド線14の接続が容易になるとともに、接触ノイズをさらに軽減することができる。特に、外部の接続端子側におけるシールド領域を一箇所にすることができる。
【0022】
同様にして、図7に示すように、隣接するシールド線14間の領域をすべて導電体層38によって覆うようにしてもよい。すなわち、集合ケーブル端面S上の芯線12および内部絶縁体13以外の領域すべてを導電体層38によって覆うようにしてもよい。
【0023】
また、図8に示すように、各導電体層32,34上にさらに、はんだ突起である接続用導電部材72,74を設けるようにしてもよい。このはんだ突起は、まず芯線12およびシールド線14の接続端部表面に、はんだペーストもしくははんだ粉を塗布し、その後リフローによりはんだを溶融させることではんだ突起を形成する。このはんだ突起は、そのまま外部の基板40と集合ケーブル1との接続用部材として用いることができるので、基板40と集合ケーブル1との接続処理時における接続材料の供給処理を簡素化することができる。
【0024】
さらに、図9に示すように、接続用導電部材72,74および導電体膜32,34の間に絶縁膜80としてレジストを塗布してもよい。なお、この場合、絶縁膜80は、接続用導電部材72,74の先端部分が露出できる厚さにする。これによって、芯線12およびシールド線14間の短絡を防止することができる。
【0025】
また、図10に示すように、芯線12およびシールド線14の接続端部表面の各導電体層32,34上に、Agペーストを突起状に供給し、加熱硬化させることによって導電突起部92,94を形成するようにしてもよい。さらに、集合ケーブル端面Sに絶縁体フィルム90を覆い、導電突起部92,94によって該絶縁体フィルム90を突き破らせ、導電突起部92,94の先端部分を絶縁体フィルム90の表面上に露出させるようにする。これによって、導電突起部92,94間の短絡を防止することができる。この場合、特に、絶縁体フィルム90を用いているので、絶縁体の塗布処理等が不要であるため、簡易に絶縁処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態である集合ケーブルの製造を説明する説明図である。
【図2】集合ケーブルと外部の基板との接続処理を説明する説明図である。
【図3】集合ケーブル端面近傍における導電体層の状態を示す断面図である。
【図4】導電体層の変形例を示す断面図である。
【図5】導電体層の変形例を示す断面図である。
【図6】シールド線を覆う導電体層の変形例を示す図である。
【図7】シールド線を覆う導電体層の変形例を示す図である。
【図8】接続用導電部材を設けた変形例を示す断面図である。
【図9】接続用導電部材と絶縁膜とを設けた変形例を示す断面図である。
【図10】導電突起部と絶縁体フィルムとを設けた変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 集合ケーブル
10 ケーブル群
11 ケーブル
12 芯線
12a,14a 間隙
13 内部絶縁体
14 シールド線
15 外部絶縁体
20 固定部材
21 カット面
30 導電体層パターン
32,34,35,38,52,54,62,63,64 導電体層
40 基板
41 基板パターン
50 ACF
51 導電部
72,74 接続用導電部材
80 絶縁膜
90 絶縁体フィルム
92,94 導電突起部
S 集合ケーブル端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルをケーブル固定部材によって固定し、該複数のケーブル内の接続端部を含む接続端面が形成された集合ケーブルであって、
前記接続端面内の前記接続端部表面上を覆う導電体層を設けたことを特徴とする集合ケーブル。
【請求項2】
前記導電体層は、それぞれ前記接続端部表面を超えて覆うことを特徴とする請求項1に記載の集合ケーブル。
【請求項3】
前記導電体層は、それぞれ前記接続端部表面と該接続端部に隣接する絶縁部との間を跨いで形成されたリング状であることを特徴とする請求項2に記載の集合ケーブル。
【請求項4】
各ケーブルは、共通のシールド線を有し、前記導電体層は、各シールド線の接続端部表面間を接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の集合ケーブル。
【請求項5】
各導電体層上に、前記接続端部と該接続端部に対応する外部の接続端部とを接続するための接続用導電部材を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の集合ケーブル。
【請求項6】
前記接続用導電部材が設けられた領域以外の領域に絶縁体膜を設けたことを特徴とする請求項5に記載の集合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−23134(P2011−23134A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164883(P2009−164883)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】