説明

集合住宅の補修情報処理システムと補修情報処理プログラムと記録媒体

【課題】集合住宅の居住者や管理者や業者に、設備の補修等に関する情報を提供する。
【解決手段】集合住宅12に設置されている設備の補修依頼情報と、この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名、設備の設置場所、不具合情報等を抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、補修依頼に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名、設備の設置場所、補修箇所、補修内容等を抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、新たな補修依頼情報が入力したとき、補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書22を発行する補修依頼書22発行手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の居住者やオーナー等に対して、建物の利用や管理のために有用な情報を提供する集合住宅の補修情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅では、その補修管理に多額の費用がかかる。その費用を少しでも圧縮し、経済的な運用を図るために、各種のシステムが開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−288270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
集合住宅の居住者は、設備の不具合等を発見すると、管理人に通知する。その処置の結果は、管理情報として蓄積される。しかし、この情報には個人情報が含まれており、不具合の発生した理由も一律ではない。従って、直ちにニュースとして配信してその他の居住者に利用させるわけにはいかない。また、居住者が管理人以外の業者に補修を依頼したときには、管理情報が蓄積されない。従って、重要な要補修事項を見落とすおそれがある。こうしたことから、この種の情報は有効に活用されていない。
本発明は、自動的に速やかに多様な保守情報を取得して蓄積し、それをマンションのオーナーや居住者に還元できる集合住宅の補修情報処理システムと補修情報処理プログラムと記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、上記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、新たな補修依頼情報が入力したとき、上記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段を備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【0005】
集合住宅では、ほぼ同一の機種の設備が同時期に多数設置されることが多い。従って、同一の症状の不具合がどの設備でも発生することがある。この情報を的確に自動的に蓄積して、居住者や業者に伝える。この情報は、同じ集合住宅の中で収集して共有できるので、情報収集が容易でメンテナンスコストも安いという効果もある。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、集合住宅に設置されている各設備について、その操作やトラブルへの対策情報を蓄積した設備利用情報データベースと、上記設備利用情報データベースの検索履歴を解析して、設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、上記補修依頼データベースに、当該設備名が一致して不具合情報が類似する補修依頼情報があるときは、補修結果データベースに含まれた対応する補修結果報告を対策情報として選択する既存情報検索手段と、上記対策情報を編集して、上記検索元に対して発信する対策情報発信手段とを備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【0007】
インターネットのホームページ等を利用して、居住者に対して設備の操作やトラブル対策についての情報を発信する。このとき、その検索履歴を利用して、過去の同様のトラブル例の有無を自動的に検索する。これに、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用する。もし、過去に同様の例があって、それが、補修依頼により解決されていれば、その情報を該当する居住者に提供する。これにより、トラブルを解決するための重要な情報が提供できる。また、全てを自動処理することにより、個人情報の漏洩も防止できる。
【0008】
〈構成3〉
構成2に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、設備利用情報データベースの検索履歴を解析して、設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、検索履歴データベースを生成する検索履歴管理手段と、上記検索履歴データベースの内容と、上記補修依頼データベースの内容と、上記補修結果データベースの内容とを、設備毎に分類して、集合住宅管理資料を出力する管理資料出力手段を備えることを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【0009】
検索履歴データベースの内容と、補修依頼データベースの内容と、補修結果データベースの内容から、集合住宅の管理者は、設備の初期不良や機能低下等を把握し、保守点検計画を作成することができる。
【0010】
〈構成4〉
構成3に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、上記集合住宅管理資料には、少なくとも、該当する設備の補修費用と買い換え費用との比較結果を演算処理した情報を含めることを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【0011】
管理者にとって、設備の寿命は重要な問題になる。設備毎に具体的な補修費用と故障の頻度等の情報が取得できるから、その買い換え費用と比較して、設備の交換時期を適切に選択できる。従って、これを集合住宅管理資料に含めることにした。
【0012】
〈構成5〉
構成2に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、上記設備利用情報データベースの内容と、上記検索履歴データベースの内容と、上記補修依頼データベースの内容と、上記補修結果データベースの内容から、設備の定期的な管理情報とこの情報の配信先情報とを抽出し、カレンダーデータに従って、該当する日時に該当する配信先へ、定期的な管理情報を一斉配信する管理情報配信手段を備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【0013】
設備利用情報には、例えば、季節毎の設備のメンテナンスの必要性を伝える部分が存在する。検索履歴データベースの内容と、補修依頼データベースの内容と、補修結果データベースの内容から、設備の点検要項が抽出できる。これを、該当する設備を保有する居住者に対して配信するので、ノイズを除外した有用な情報提供ができる。例えば、正月休暇等の留守中の事故防止のために対処すべき事項も通知できる。
【0014】
〈構成6〉
コンピュータを、集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、上記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、新たな補修依頼情報が入力したとき、上記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段、として機能させる集合住宅の補修情報処理プログラム。
【0015】
〈構成7〉
コンピュータを、集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、上記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、新たな補修依頼情報が入力したとき、上記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段、として機能させる集合住宅の補修情報処理プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
建物の管理サービス担当者は、居住者から建物の設備について補修依頼を受ける。この補修依頼は、所定の情報とともに、補修を担当する業者に転送される。管理サービス担当者の端末装置では、補修依頼を受けると、補修依頼情報が作成される。依頼解析手段は、この補修依頼情報から少なくとも、設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを含む補修依頼データベースを生成する。一方、補修依頼に対して補修担当業者による処置がなされると、補修結果報告が作成される。ここから、少なくとも、設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する。補修結果データベースは、その後、同様の設備の補修に効果的に利用される。
【0017】
新たな補修依頼があったときには、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果を補修依頼書に含める。これにより、補修担当業者は過去の補修結果を参考にして、的確かつ迅速に補修を実施できる。集合住宅では、ほぼ同一の機種の設備が同時期に多数設置されることが多い。従って、同一の症状の不具合がどの設備でも発生することがある。この情報を業者に伝えることができるシステムとした。これは、業者にとっても居住者にとっても有益である。また、この情報は、同じ集合住宅の中で収集して共有できる。情報収集が容易でメンテナンスコストも安い。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、集合住宅の補修情報処理システムを実現するネットワークの説明図である。
このシステムは、図1の(a)に示すように、ネットワーク19に接続されたサーバ11によって実現される。サーバ11は、後で説明するようなデータベースを記憶し、コンピュータによってそのデータベースを検索して加工し処理する機能を持つ。ネットワーク19には、集合住宅の管理者端末14、居住者端末16、及び、設備の補修等を行う業者端末18が接続されている。これらの端末数は任意である。
【0019】
ある集合住宅12の管理者は、その居住者のための設備や管理費その他についての管理を行う。その管理業務に使用される管理者端末14を、ネットワーク19に接続し、サーバ11からの情報サービスを受ける。集合住宅12の居住者は、それぞれ個人の居住者端末16を使用して、ネットワーク19を通じてサーバ11から所定の情報サービスを受ける。サーバ11は、ネットワーク19を通じて、多数の集合住宅12の管理者や居住者へのサービスを提供する。例えば、集合住宅12に使用される設備の補修や点検などの作業については、該当する各種の専門業者を登録し、居住者に紹介する。各業者の業者端末18は、ネットワーク19を通じてサーバ11から補修依頼を受け付ける。該当する業者は該当する居住者の設備を補修し、その結果をサーバ11に返す。これらにより、サーバ11は、業者や居住者に提供する情報をデータベースに蓄積する。
【0020】
図1の(b)に示すように、このシステムでは、サーバ11は居住者端末16に対して、不具合対策情報20を提供するサービスを行う。また、業者端末18に対して、過去の類似する装置の補修結果を含む補修依頼書22を発送し、効率よく設備の補修点検ができるよう便宜を図る。さらに、管理者端末14に対して、設備の更新管理等に参考になる集合住宅管理資料24を作成して提供する。以上の集合住宅の補修情報処理システム10において、演算処理装置は、サーバ11のコンピュータとコンピュータプログラムにより実現する。記憶装置はサーバ11の内部記憶装置、あるいは外部記憶装置により実現する。以下の実施例においてこのサービスの内容を詳細に説明する。
【0021】
図2は、実施例1の集合住宅の補修情報処理システムの機能ブロック図である。
集合住宅の補修情報処理システム10は、居住者から設備の補修依頼を受け付けて、業者に対して補修依頼書22を発行する。居住者は、電話機26やファクシミリ28や居住者端末16を使用して補修依頼を作成する。補修情報処理システム側では、例えばオペレータが、受信した電話による依頼やファクシミリによる依頼に基づき、手作業で補修依頼情報30を作成する。また、例えば、音声認識装置や文字読み取り装置を使用して電話やファクシミリで受信した情報を自動的に補修依頼情報30に変換する。居住者端末16により所定のフォームで入力された補修依頼はそのまま補修依頼情報30にすることができる。補修依頼情報30の内容が、記憶装置29の補修依頼データベース38に追加される。依頼解析手段44は補修依頼情報30への自動変換や補修依頼データベース38の生成管理機能を持つコンピュータプログラムである。
【0022】
図3は各種データのデータ構造の説明図である。(a)は補修依頼情報30のデータ構造を示す。(b)は補修結果報告40のデータ構造を示す。(c)は補修依頼書22のデータ構造を示す。
図の(a)に示すように、補修依頼情報30には、補修を担当する業者に対する補修依頼に必要な様々な情報が含まれる。即ち、依頼者である居住者の名前や電話番号、ファクシミリ番号、部屋番号等が含められる。さらに、補修依頼の対象になる設備名32、設置場所34、不具合情報36が含められている。補修依頼データベース38には、こうした情報が含められる。また、補修を担当する業者は、補修が終了すると、補修結果報告40を作成する。補修結果報告40は、その後に同種の設備を補修するとき参考になる情報として、補修結果データベース42に蓄積される。従って、補修結果報告40には、図3(b)に示すように、依頼者の氏名の他、補修をした設備名35や設置場所34や補修箇所50や補修内容52等が含まれている。
【0023】
補修を担当する業者は、補修を完了すると業者端末18(図1)を操作して、補修結果報告40をサーバ11(図11)に送信する。図2に示した補修結果解析手段48は、補修結果報告40を解析し、所定のフォームにして補修結果データベース42に追記する機能を持つコンピュータプログラムである。ここで、図2に示した実施例では、補修依頼書22に、補修依頼情報30のみならず、補修結果データベース42から抽出した参考情報を加える。補修依頼書発行手段46は、補修依頼データベース38と補修結果データベース42の両方を参照して補修依頼書22を生成する機能を持つコンピュータプログラムである。
【0024】
図4は、補修依頼書22の具体例を示す説明図である。
補修依頼書22には、居住者からの補修依頼情報30に基づいて生成された補修依頼の内容と、該当する類似する設備について過去に様々な業者が行った補修内容等が含まれる。例えば、図のように、補修依頼をした依頼者名、電話番号、ファクシミリ番号、部屋番号、設備名32、設置場所34、不具合情報36の他、過去に補修がされた類似の設備名35、設置場所34、補修箇所50、補修内容52を表示する。補修結果データベース42から、設備名32が一致し、不具合箇所54もしくは補修箇所50が類似する補修結果を抽出するとよい。
【0025】
例えば、設備名をキーとして、補修結果データベース42を検索する。その検索結果には、依頼者の個人情報が含まれることもある。そこで、補修依頼書発行手段46は、過去の補修結果から個人情報を削除し、検索結果の表現を一般化するように変換処理する機能を持つことが好ましい。一般化処理とは、例えば、補修日、不具合情報、補修箇所、補修内容を列挙しただけの出力にするとよい。これだけで、補修依頼を受けた業者は、速やかに見積もりを出すことができ、速やかに補修作業に取り掛かることができる。また、頻度の高い補修部品は、予め仕入れておくといった準備も可能になる。
【0026】
以上説明した実施例1の集合住宅の補修情報処理システム10では、サーバ11が居住者の補修依頼を可能な限り一括して受け付ける。サーバ11に登録されている様々な業者を居住者に紹介して居住者の便宜を図るとともに、業者に対しても適切な依頼書の発行と有効な過去分の情報を提供する。従って、集合住宅の相当数の居住者の利用と多くの業者の参加を促す。特定の集合住宅のみならず、複数の集合住宅の情報を一括管理できれば、ますますデータベースの価値が高まる。情報を集中管理することにより、個人情報の漏洩に対するセキュリティも確保できる。
【実施例2】
【0027】
図5は、実施例2のシステムの機能ブロック図である。
このシステムは、実施例1に示すような機能に加えて、さらにこの図に示すようなサービスを提供できる。サーバ11の記憶装置には、設備利用情報データベース60、検索履歴データベース62、補修依頼データベース38、補修結果データベース42が記憶されている。設備利用情報データベース60は、居住者の住む集合住宅に取り付けられた各設備の使用方法を示すユーザマニュアルである。ユーザマニュアルの形式は良く知られており、その説明を省略する。ユーザマニュアルには、設備のトラブルシューティングなども含まれている。
【0028】
居住者は、居住者端末16を操作して、図1に示したネットワーク19を通じてサーバ11にアクセスする。そして、設備利用情報データベース60を参照して、様々な設備に関する情報を検索して取り出す。この制御のために、居住者端末16から入力した検索要求55を処理する検索エンジン58が設けられている。検索エンジン58は、検索要求55に従って検索した検索結果56を居住者端末16に返す機能を持つ。
【0029】
同時に、この検索要求55を検索履歴管理手段64が監視し、所定の情報が抽出されて検索履歴データベース62に蓄積される。即ち、居住者が様々な検索を行った時、その結果がモニタされて検索履歴データベース62に蓄積される。この中には居住者の個人情報などが含まれるおそれ場合があるから、合わせて検索履歴管理手段64のセキュリティ保護機能を強化しておくことが好ましい。
【0030】
図2を用いて既に説明したように、サーバ11の記憶装置には補修依頼データベース38と補修結果データベース42が既に記憶されている。既存情報検索手段66は、検索履歴データベース62と補修依頼データベース38と補修結果データベース42を使用して、居住者の検索要求の回答に類似する情報を検索する機能を持つ。こうして得られたものが対策情報68である。対策情報発信手段70は生成された対策情報68を居住者端末16に対し自動的に発信する。この図に示す検索履歴管理手段64、既存情報検索手段66、対策情報発信手段70はいずれもサーバ11のコンピュータとコンピュータプログラムによって実現する。
【0031】
図6は、検索履歴の内容説明図である。
検索履歴57には、検索者のアドレスと、設備名32、設置場所34、不具合情報36などが含まれている。例えば、設備名32と不具合情報36とをキーにして、補修依頼データベース38や補修結果データベース42を検索する。これにより、例えば、特定の居住者の該当する設備に類似する不具合があって、先月、所定の場所の修理をした等の情報が取得できる。なお、検索履歴データベース62、補修依頼データベース38補修結果データベース42にはいずれも様々な個人情報が含まれる。また、単に個人情報を削除しただけでは必ずしも十分ではない。そこで、既存情報検索手段66は対策情報68の内容を一般化した表現に変換して処理する機能を持つ。例えば、サーバを管理するオペレータが、対策情報68の内容を検証した上で記憶装置に記憶させるとよい。また、対策情報発信手段70が自動的に対策情報68を編集するとよい。
【0032】
例えば、居住者が換気扇の換気機能が悪い、といったキーワードで設備利用情報データベース60を検索したとする。このとき、検索エンジン58(図5)は、設備利用情報データベース60から換気扇の機能低下の一般的な原因をリストアップし、これについて居住者に点検を促す。例えば、フィルタの目詰まりはありませんか、フィルタを掃除して下さい、といった案内が出力される。一方、補修依頼データベース38や補修結果データベース42を参照して、その設備固有の問題も抽出する。例えば、過去にこの種の設備では次のような対応により換気能力の低下を解決しました、と説明する。
【0033】
そして、例えば、換気窓が完全に開かなかったケースがあります、換気窓を点検し、開きが悪い時は集中的に清掃し給油をして下さい、といった情報を表示する。過去の不具合事例と、補修結果とを、依頼者や設備の場所を特定せずに表示する。なお、例えば、補修結果データベースに、専門家でなくても対処できる事項と専門家でなければ対象不可能な事項を区別する表示を含めておき、前者の場合には具体的な説明を対策情報68に含める。後者の場合には、業者に補修依頼をして下さいというメッセージを含めるとよい。
【0034】
一般に、集合住宅12の管理者は、昼間の時間帯に所定の管理業務を行い、就業時間から朝までは警備会社等に管理を任せる。ところが居住者の多くは、自宅に帰宅後の夜間に設備の様々な不具合を発見する。この不具合に対して、設備利用情報データベース60を検索して適切な対処法を見つけることができれば便利である。しかも、一般的な対処法だけでなく比較的同様の設備で多く発生している不具合とその不具合に対する補修方法が提示されればさらによい。しかも、その補修処理が個人でも実施可能なものであれば、夜間に業者を呼ばなくてもすむ。実施例2のシステムは、居住者に対して、こうした便宜を図るサービスを実現する。
【実施例3】
【0035】
図7は、対策情報発信手段の出力の具体例を示す説明図である。
この情報は、定期的に居住者に送信される。送信先は、居住者の端末装置や携帯電話である。ここには、設備利用情報データベース60の内容と、検索履歴データベース62の内容と、補修依頼データベース38の内容と、補修結果データベース42の内容から抽出された情報が含まれる。例えば、設備の定期的な管理のための設備利用情報である。設備を保有する居住者に、カレンダーデータに従って、該当する日時に、個別に配信される。
【0036】
設備利用情報には、例えば、季節毎の設備のメンテナンスの必要性を伝える部分が存在する。検索履歴データベース62の内容と、補修依頼データベース38の内容と、補修結果データベース42の内容から、設備の点検要項が抽出できる。これを、該当する設備を保有する居住者に対して配信するので、ノイズを除外した有用な情報提供ができる。例えば、この図に示す例のように、正月休暇等の留守中の事故防止のために対処すべき事項も通知できる。こうした処理は、次の実施例で説明する管理情報配信手段により実行される。
【実施例4】
【0037】
図8は、実施例4のシステムの機能ブロック図である。
図1に示したサーバ11には、集合住宅管理資料74を生成する管理情報出力手段73が設けられている。集合住宅管理資料74には、図に示すように、集合住宅に使用されている各設備の設備名と設置日、過去に発生した不具合箇所、その発生日、補修箇所、補修内容、補修費用、及び、その設備の更新費用などが含まれる。これによって設備ごとにどの程度の補修が行われたか、その補修にどの程度の費用がかかったかという結果が出力される。さらに、同じ型の設備についてどういった不具合が高頻度で発生しているかといった統計資料を含めてもよい。また、各設備に対し設備の補修費用と買い換え費用との比較結果を演算処理し、その比較によって買い換えが勧められるべきかどうかの判定を行う。その結果がここに表示されるとよい。この判定方法は例えば、過去の補修費用が設備の更新費用の2分の1に達した時といった基準を設けて判断すればよい。
【0038】
管理情報出力手段73は、設備名32をキーにして検索履歴データベース62、補修依頼データベース38、補修結果データベース42、設備仕様書データベース72を検索し、該当する設備に関する情報を抽出する。これによって集合住宅管理資料74を編集する。設備仕様書データベース72は、設備の購入費や買い換え費用などを抽出するために利用するとよい。集合住宅管理資料74を集合住宅の管理者に提供することによって、集合住宅の管理者は、例えば、ある設備が高頻度に故障するから、居住者からのクレームが増加する前に設備の総入れ換えを行う、といった対応ができる。また、補修費用がかさむ前に経済的に設備の更新を行うことができる。
【実施例5】
【0039】
図9は、補修依頼受け付けと依頼書の発行処理動作フローチャートである。
以下、上記のコンピュータプログラムの実施例について、その具体的な動作を説明する。図9と図2を合わせて参照する。まず、居住者端末16から補修依頼があると、依頼解析手段44が、ステップS11で補修依頼を取得する。さらに、これを解析して、ステップS12で、補修依頼情報30を生成する。ステップS13で、その補修依頼情報30は、記憶装置29に一時的に蓄積される。ステップS14で、補修依頼情報30から、設備名や不具合箇所等のデータを抽出する。そして、ステップS15で、そのデータを補修依頼データベース38へ追記する。
【0040】
次に、補修依頼書発行手段46が、ステップS16で補修依頼データベース38を参照する。そして、ステップS17で、過去に生成された類似する補修依頼情報30を検索して取得する。ステップS18では、補修結果データベース42を参照して、補修依頼情報30に対応する補修結果を抽出する。ステップS19で、その補修結果を取得する。これで、過去の類似する補修依頼に対してなされた補修結果を得る。これは一件でも複数件でも構わない。ステップS20では、取得情報から補修依頼書の生成をする。即ち、一般的な補修依頼書に、過去の補修結果を付加した補修依頼書ができる。これが、その後、業者端末18に送信される。
【0041】
図10は、居住者によるデータベースの検索利用動作フローチャートである。
図10と図5を参照しながら説明する。設備に何かトラブルがあると、居住者は居住者端末16を操作して設備利用情報データベース60を検索する。検索エンジン58はステップS21で検索要求を取得して、ステップS22で設備利用情報データベース60の検索処理を実行する。検索履歴管理手段64はこの操作を監視して、ステップS23で、検索履歴データベース62の生成をする。その後既存情報検索手段66は、ステップS24で検索履歴の解析をする。そして、ステップS25で、検索履歴データ中から設備名や不具合情報を取得する。
【0042】
既存情報検索手段66は、さらに、ステップS26で補修依頼データベース38の検索をする。ステップS27で類似する補修依頼を抽出する。ステップS28で補修結果データベース42の検索をする。ステップS29で対応する補修結果の抽出をする。ステップS30では、抽出結果の編集をする。こうして、過去の類似の不具合発生例とその対策を編集する。ステップS31では、対策情報発信手段70が編集結果を検索者にメール送信する。
【0043】
図11は補修結果の収集処理動作フローチャートである。
この処理は図2に示した補修結果解析手段48の動作をさらに具体的に示すものである。この補修結果解析手段48は、業者端末18から送信された補修結果報告40から補修結果データベース42を生成して蓄積する機能を持つ。即ち、居住者の依頼に基づいて、ステップS41で、補修依頼書発行手段46が補修依頼書22を発送する。これを受けて業者は補修処理をして、補修結果を作成する。この補修結果が業者端末18により送信される。補修結果解析手段48は、ステップS42で補修結果報告40を取得する。ステップS43では、その中から、設備名、補修箇所等のデータを取得する。ステップS44で、補修結果データベース42への追記をする。この補修結果データベース42が、図9や図10の処理に利用される。
【0044】
図12は、管理者への情報サービス処理を示すフローチャートである。
この処理は図8を参照しながら説明する。管理資料出力手段73は、例えば、毎月一定の日に自動的に起動する。そして、まず、ステップS51で一つの設備名を選択する。このフローチャートのステップS51−56の処理は全ての設備について繰り返し実行される。最初に、ステップS52で検索履歴データベース62を参照する。次に、ステップS53で補修依頼データベース38を参照する。さらに、ステップS54で補修結果データベース42を参照する。これで、一つの設備について、関連情報の抽出が終わり、ステップS55で集合住宅管理資料74の追記をする。ステップS56では、全ての設備について処理が済んだかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS57の処理に移行し、ノーのときはステップS51の処理に戻る。
【0045】
全ての設備について参照処理を終了して、ステップS57に進む。ステップS57では、設備毎の補修費用の累積計算をする。過去の補修結果を集計すればよい。ステップS58では、設備毎の買い換え費用の計算をする。各設備の最新の価格を設備仕様書データベース72等に記録しておくとよい。ステップS59では、比較表の生成をする。各設備の補修費用の累積額と買い換え費用を列挙すればよい。ステップS60では、出来上がった集合住宅管理資料74を出力する。
【0046】
図13は、居住者へのメールマガジンサービスの動作フローチャートである。
この情報は、各設備毎に決められているサービス要領に基づいて提供される。従って、まず始めに、ステップS61で設備利用情報データベース60の参照をする。これにより、定期点検項目等を抽出する。次に、ステップS62で、カレンダーを参照して、該当する季節に不要な情報を削除する。以下は、高い頻度で補修依頼があったものについて、注意を促すための情報抽出処理である。ステップS63で補修依頼データベース38を参照する。ステップS64では、対応する補修結果データベース42を検索する。こうして、例えば、一定件数以上の補修依頼があった項目については、同様の不具合が発生していないかを点検するように、ステップS65で、点検要項としてリストアップする。ステップS66では、既に説明したように、設備の点検要項を一般的な表現に編集する。その後、ステップS67で登録居住者に配信処理をする。
【0047】
なお、上記の演算処理装置で実行されるコンピュータプログラムは、機能ブロックで図示した単位でモジュール化されてもよいし、複数の機能ブロックを組み合わせて一体化されてもよい。また、上記のコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムに組み込んで使用してもよい。本発明を実現するためのコンピュータプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、任意の情報処理装置にインストールして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】集合住宅の補修情報処理システムを実現するネットワークの説明図である。
【図2】実施例1の集合住宅の補修情報処理システムの機能ブロック図である。
【図3】各種データのデータ構造の説明図で、(a)は補修依頼情報30のデータ構造、(b)は補修結果報告40のデータ構造、(c)は補修依頼書22のデータ構造を示す。
【図4】補修依頼書22の具体例を示す説明図である。
【図5】実施例2のシステムの機能ブロック図である。
【図6】検索履歴の内容説明図である。
【図7】対策情報発信手段の出力の具体例を示す説明図である。
【図8】実施例4のシステムの機能ブロック図である。
【図9】補修依頼受け付けと依頼書の発行処理動作フローチャートである。
【図10】居住者によるデータベースの検索利用動作フローチャートである。
【図11】補修結果の収集処理動作フローチャートである。
【図12】管理者への情報サービス処理を示すフローチャートである。
【図13】居住者へのメールマガジンサービスの動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 集合住宅の補修情報処理システム
11 サーバ
12 集合住宅
14 管理者端末
16 居住者端末
18 業者端末
19 ネットワーク
20 不具合対策情報
22 補修依頼書
24 集合住宅管理資料
26 電話機
28 ファクシミリ
29 記憶装置
30 補修依頼情報
32 設備名
34 設置場所
35 補修をした設備名
36 不具合情報
38 補修依頼データベース
40 補修結果報告
42 補修結果データベース
44 依頼解析手段
46 補修依頼書発行手段
48 補修結果解析手段
50 補修箇所
52 補修内容
54 不具合箇所
55 検索要求
56 検索結果
57 検索履歴
58 検索エンジン
60 設備利用情報データベース
62 検索履歴データベース
64 検索履歴管理手段
66 既存情報検索手段
68 対策情報
70 対策情報発信手段
72 設備仕様書データベース
73 管理資料出力手段
74 集合住宅管理資料
75 管理資料配信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、
この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、
前記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、
新たな補修依頼情報が入力したとき、前記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段を備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、
集合住宅に設置されている各設備について、その操作やトラブルへの対策情報を蓄積した設備利用情報データベースと、
前記設備利用情報データベースの検索履歴を解析して、設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、前記補修依頼データベースに、当該設備名が一致して不具合情報が類似する補修依頼情報があるときは、補修結果データベースに含まれた対応する補修結果報告を対策情報として選択する既存情報検索手段と、
前記対策情報を編集して、前記検索元に対して発信する対策情報発信手段とを備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、
設備利用情報データベースの検索履歴を解析して、設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、検索履歴データベースを生成する検索履歴管理手段と、
前記検索履歴データベースの内容と、前記補修依頼データベースの内容と、前記補修結果データベースの内容とを、設備毎に分類して、集合住宅管理資料を出力する管理資料出力手段を備えることを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、
前記集合住宅管理資料には、少なくとも、該当する設備の補修費用と買い換え費用との比較結果を演算処理した情報を含めることを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の集合住宅の補修情報処理システムにおいて、
前記設備利用情報データベースの内容と、前記検索履歴データベースの内容と、前記補修依頼データベースの内容と、前記補修結果データベースの内容から、設備の定期的な管理情報とこの情報の配信先情報とを抽出し、カレンダーデータに従って、該当する日時に該当する配信先へ、定期的な管理情報を一斉配信する管理情報配信手段を備えたことを特徴とする集合住宅の補修情報処理システム。
【請求項6】
コンピュータを、
集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、
この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、
前記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、
新たな補修依頼情報が入力したとき、前記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段、
として機能させる集合住宅の補修情報処理プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
集合住宅に設置されている設備の補修依頼情報と、
この補修依頼情報から、補修の対象となる設備名と、設備の設置場所と、不具合情報とを抽出して、補修依頼データベースを生成する依頼解析手段と、
前記補修依頼情報に対応する補修結果報告から、補修を終了した設備名と、設備の設置場所と、補修箇所と、補修内容とを抽出して、補修結果データベースを生成する補修結果解析手段と、
新たな補修依頼情報が入力したとき、前記補修結果データベースを検索して、補修依頼データベースと補修結果データベースとを利用して、設備名が一致し、不具合箇所もしくは補修箇所が類似する補修結果と補修依頼情報とを含む補修依頼書を発行する補修依頼書発行手段、
として機能させる集合住宅の補修情報処理プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−25864(P2009−25864A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185337(P2007−185337)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(507199687)株式会社アクトコール (2)
【Fターム(参考)】