説明

集合住宅の駐輪場

【課題】非常に限られた敷地内で大量の自転車を、住戸として使用できる部分の床面積を狭めることなく、しかも自転車の利便性を損なわずに収容でき、管理できるようにした集合住宅の駐輪場を提供する。
【解決手段】各階に互いに隣接する複数の住戸1,1と当該住戸1の一側に当該住戸1と接する共用の外廊下2を配置する。各階の外廊下2の屋外側に当該外廊下2と接しかつ各住戸1の玄関戸口1aと対峙して駐輪場3を設ける。駐車場3の周囲には壁8を地上階から屋上階まで連続して設ける。各駐輪場3の住戸1側に自転車を出し入れするための出入り口9を設け、出入り口9に扉10を設ける。扉10に盗難防止用の鍵を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各階に互いに隣接する複数の住戸と当該住戸の一側に当該住戸と接する共用廊下をそれぞれ配置されてなる集合住宅の駐輪場に関し、主にマンション等の中高層の集合住宅に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅には入居者専用の駐輪場が設けられている。従来この種の駐輪場はマンションの敷地内に1ヶ所または数ヶ所に分散して設けられていることが多い。また、自転車を各住戸の玄関戸口まで乗り入れできるように、各住戸の玄関戸口付近に設けられた駐輪場もある(特許文献1参照)。
【0003】
その多くは屋根を有し、なかには独立した建物として設けられているものもあるが、いずれも自転車の一世帯当りの保有台数が二台ない三台程度であることから、かなり広いスペースを必要とする。
【0004】
【特許文献1】特開2002−138688号公報
【特許文献2】特開2005−226261号公報
【特許文献3】特開平10−159361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マンション全体での自転車の保有台数は相当数に達するため、特に都心部の限られた敷地内に建つマンションではその収容能力には自ずと限界があった。
【0006】
また、自転車の種類は子供用から大人用、さらにはスポーツタイプ等と多種多用におよぶため、大量の自転車をまとめて収容するとなると管理が非常に煩雑になり、盗難の恐れがあるだけでなく入居者の中には駐輪場までの距離が遠くなって自転車の持つ利便性が損なわれる等の課題があった。
【0007】
さらに、玄関戸口付近に設けられた駐輪場は、住戸部分に設けられているため、駐輪場のスペースによって住戸部分の床面積が狭められてしまうだけでなく、共用廊下側の窓を共用廊下に直接設けることができないため、住戸内に充分な採光をとり込むことができないという課題があった(特許文献1参照)。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、きわめて限られた敷地内で各住戸の床面積が狭められることなく、かつ自転車の利便性が損なわれることなく大量の自転車を収容し、管理できるようにした集合住宅の駐輪場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の集合住宅の駐輪場は、各階に互いに隣接する複数の住戸と当該住戸の一側に当該住戸と接する共用廊下が配置されてなる集合住宅の駐輪場であって、各階の共用廊下の屋外側に当該共用廊下に接して配置されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は特に、共用廊下を挟んで当該共用廊下の屋外側に駐輪場を設けたことで、住戸として使用できる部分の床面積が駐輪場によって狭められることはなく、また共用廊下側の窓を当該共用廊下に直接設けることが可能になり、採光の問題も解消できる。
【0011】
なお、駐輪場の周囲に壁面材を設置する場合、少なくとも玄関戸口と対向する側に壁面材が設置してあれば、各住戸のプライバシーを保護することができると共に、玄関戸口への風の吹き込みを防止することもできる。この場合の壁面材は単に目隠し、風除けになる程度のものでよく、例えば合成樹脂板などを用いることができる。
【0012】
また、合成樹脂板などからなる採光可能なものの他に、格子材や金網材などを利用することにより周囲に圧迫感を与えない開放感のある駐輪場とすることができる。
【0013】
さらに、駐輪場には建築基準法上の容積率に関する緩和規定が適用され、また周囲に防火製の壁を配置して駐輪場の周囲を囲む構造にすれば消防法の適用も免れる。
【0014】
請求項2記載の駐輪場は、請求項1記載の集合住宅の駐輪場において、各住戸の玄関戸口と対峙して配置されてなることを特徴とするものである。本発明は、駐輪場を各住戸ごとに住戸の玄関戸口と対峙して設けたことにより、建物全体で相当数の数になる自転車を各世帯毎に非常にコンパクトに収容することができ、また自転車を玄関戸口まで乗り入れすることができるため自転車の利便性が損なわれることがなく、しかも各住戸ごとに自己管理の下に自転車を保有することができるため盗難の心配もない。
【0015】
請求項3記載の集合住宅の駐輪場は、請求項1または2記載の集合住宅の駐輪場において、複数階に跨って配置されてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明は、駐輪場が当該駐輪場の周囲に配置された壁や柱、あるいはブレース等の構造体によって複数階に跨って結合されていることで、駐輪場部分の支持力を安定させることができる。この場合、壁や柱、あるいはブレース等の構造体は複数階に跨って配置されていてもよく、あるいは地上階から最上階まで連続して配置されていてもよい。
【0017】
請求項4記載の集合住宅の駐輪場は、請求項1〜3のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場において、共用廊下の上部に住戸と駐輪場とをつなぐ梁が配置されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明は、住戸側の建物本体と駐輪場とを梁によってつなぐことにより、建物全体としての剛性を高めるようにしたものである。この場合の梁は各階ごとに、あるいは1階おきまたは複数階おきに設けられていてもよい。
【0019】
請求項5記載の駐輪場は、請求項1〜4のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場において、駐輪場の床と当該床と住戸とをつなぐ共用廊下の床を剛性の大きい床スラブによって形成してあることを特徴とするものである。この場合、当該部分の床スラブを他の部分より厚くし、さらに配筋量を多くする等の方法によって剛性の大きい床スラブは容易に形成することができる。
【0020】
請求項6記載の集合住宅の駐輪場は、請求項1〜5のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場において、施錠可能な扉が取り付けられてなることを特徴とするものであり、特に自転車の盗難防止を図ったものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、駐輪場が共用廊下を挟んで当該共用廊下の屋外側に設けられていることで、住戸として使用できる部分の床面積が駐輪場によって狭められることがなく、また共用廊下側の窓を共用廊下に直接設けることができるため採光の問題も解消できる。
【0022】
また、駐輪場が各住戸ごとに住戸の玄関戸口と対峙して設けられていることにより、建物全体では相当数の数になる自転車も非常に限られたスペースにコンパクトに収容することができる。
【0023】
また、自転車を各住戸の玄関戸口まで乗り入れすることができるため自転車の利便性が損なわれることもない。さらに、鍵付きの扉を設置することにより自転車の盗難を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1〜図4は中高層の集合住宅に設けられた駐輪場を示し、図1は基準階の一部平面図、図2と図5はその外観を示す一部斜視図、図3は基準階の一部拡大平面図、そして、図4と図6は基準階の一部縦断面図である。
【0025】
図において、各階に互いに独立した複数の住戸1が一方向に互いに隣接して配置されている。また、各階の住戸1の屋外側に共用の外廊下2が各住戸1,1にそれぞれ接し、当住戸1の隣接する方向に連続して配置されている。
【0026】
さらに、各階の外廊下2の屋外側に駐輪場3と自転車専用のエレベーター4がそれぞれ配置され、特に駐輪場3は、外廊下2を挟んで各住戸1の玄関戸口1aとほぼ対称な位置に玄関戸口1aと対峙して配置されている。
【0027】
また、駐輪場3は数台の自転車を収納できる広さを有し、当該駐輪場3の床は外廊下2の床と同じ高さに連続して形成されている。また、駐輪場3は各階ごとに外廊下2と共に、住戸1側から外廊下2の上部を横切って突設された張り出し梁5,5によって住戸1側の建物本体と結合されている。
【0028】
張り出し梁5,5の先端には必要に応じて小梁6が架け渡され、さらに柱7,7が地上から屋上階まで連続して配置されている。
【0029】
また特に、図1〜図4に図示する例の場合にあっては、駐車場3の周囲に壁8が地上から屋上階まで連続して設けられ、各階の壁8には必要に応じて窓や換気口(図省略)などが設けられている。
【0030】
さらに、各駐輪場3の住戸1側には自転車を出し入れするための出入り口9が設けられ、出入り口9には必要に応じて扉10が取り付けられている。そして、扉10に鍵を取り付けて自転車の盗難防止が図られている。
【0031】
また、図5および図6に図示する例の場合にあっては、各階の駐輪場3の周囲に腰壁11が設けられ、また住戸1側には自転車を出し入れするための出入り口9が設けられ、出入り口9には必要に応じて鍵付きの扉(図省略)が設けられている。
【0032】
このように、駐輪場3が当該駐輪場3の周囲に柱7や壁8などの構造体を設置して複数階に跨って配置されていることで、住戸1側の建物本体と駐輪場3が複数階に渡って結合されるため、駐輪場3部分の支持力を安定させることができ、耐震性が増す。
【0033】
エレベーター4は、自転車を利用する者が自転車と共に利用するもので、地上階から最上階まで連続して設けられている。また、エレベーター4は必要に応じて複数台設けられている。
【0034】
自転車専用のエレベーター4を設けることで、自転車を利用する者と他の入居者との出入り(動線)を明確に分離することができ、両者の出入りが非常にスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】共用の外廊下に接して駐輪場が設けられた中高層の集合住宅の間取りを示す基準階の一部平面図である。
【図2】共用の外廊下に接して駐輪場が設けられた中高層の集合住宅の外観を示す一部斜視図である。
【図3】基準階の一部拡大平面図である。
【図4】基準階の一部縦断面図である。
【図5】共用の外廊下に接して駐輪場が設けられた中高層の集合住宅の外観を示す一部斜視図である。
【図6】基準階の一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 住戸
1a 玄関戸口
2 共用の外廊下(共用廊下)
3 駐輪場
4 自転車専用のエレベーター
5 張り出し梁
6 小梁
7 柱
8 壁
9 出入り口
10 扉
11 腰壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階に互いに隣接する複数の住戸と当該住戸の一側に当該住戸と接する共用廊下がそれぞれ配置されてなる集合住宅の駐輪場であって、各階の共用廊下の屋外側に当該共用廊下に接して配置されてなることを特徴とする集合住宅の駐輪場。
【請求項2】
各住戸の玄関戸口と対峙して配置されてなることを特徴とする請求項1記載の集合住宅の駐輪場。
【請求項3】
複数階に跨って配置されてなることを特徴とする請求項1または2記載の集合住宅の駐輪場。
【請求項4】
共用廊下の上部に住戸と駐輪場とをつなぐ梁が配置されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場。
【請求項5】
駐輪場の床と当該床と住戸とをつなぐ共用廊下の床が剛性大に形成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場。
【請求項6】
施錠可能な扉が取り付けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の集合住宅の駐輪場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−154594(P2007−154594A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354724(P2005−354724)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)