説明

集塵性タイルマット

【課題】
本発明は、良好な集塵性能に加え、溶出した染料による再汚染の防止等のクリーニング性、汚れ除去容易性、耐へたり性に優れた集塵性タイルマットを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明タイルマットは単糸3〜700dtexのポリメチレンテレフタレートBCFのマルチフィラメントからなるパイルから構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な集塵性能に加え、汚れ除去容易性、耐へたり性に優れた集塵性タイルマットに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等の入り口に敷設される集塵用マットは靴の裏面に付着した泥や砂等を除去することが要求されるため、パイル部に優れた耐へたり性を有することが必要であった。また、集塵用マットは一般に汚れた場合には専門業者によってクリーニングされ、再度使用されるという特殊な使用態様であることから、最も汚れやすいパイル部に汚れ除去容易性を有することが必要であると同時に、クリーニング時に溶出した染料が、再度パイル糸に再付着するいわゆる逆汚染を防止することが必要であった。そこで、基布、パイル糸及びバッキング層から形成されるレンタル用マットにおいて、該パイル糸はアミノ基単位が20μeq/g以下のナイロン6を原液着色法により着色した着色ナイロンからなることを特徴とする集塵用マット(特許文献1)、が提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−60787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、耐へたり性は優れているものの、クリーニング性においてはそれ以前の集塵用マットと比較して、かなり向上はしていたが、依然として洗濯回数を重ねるごとに染料が溶出し、当該染料がパイル糸に再付着するいわゆる逆汚染が確認され、集塵用マットの本来の色合いを損なうことがあった。また、付着した酸性物質由来の汚れについての除去が極めて困難であるということもあった。すなわち、集塵性マット等に必要な逆汚染防止性、及び汚れ除去容易性という点で不十分であり、かかる点において更なる改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は上記問題を解決したものであり、請求項1記載の発明は 単糸3〜700dtexのポリメチレンテレフタレートBCFのマルチフィラメントからなるパイルから構成された集塵性タイルマットを提供するものである。ここで、本明細書において、タイルマットとは、一般にタイルカーペットと言われているタイル状のカーペットに加え、マット状の敷物も含むものとする。また、BCFとはBulked Continuous Filamentの略称であり、嵩高性連続繊維を意味する。本発明集塵性タイルマットはそのパイルがポリメチレンテレフタレートBCF(以下PTT糸と記す)のマルチフィラメントから構成されていることから、従来のポリエステルBCFをパイルとして使用した集塵用マットと比較して耐へたり性等にきわめて優れている。また、本発明集塵性タイルマットは前記PTT糸の単糸を3〜700dtexとすることで集塵用マットに適した優れた耐へたり性を確保することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明集塵性タイルマットは単糸3〜700dtexのPTT糸のマルチフィラメントからなるパイルから構成されているため、優れた耐へたり性、汚れ除去容易性、クリーニング時の逆汚染の防止性、即ち、クリーニング性、集塵性、及び吸水性を実現することができる。
【0007】
また、本発明集塵性タイルマットは、タイルカーペットとして使用可能であることはもちろんであるが、優れた集塵性能に加え、耐へたり性、及び汚れ除去容易性に優れていることから、汚れた場合に専門業者等によってクリーニングされ、再度利用されることが定着している集塵用マットとしても好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明集塵性タイルマットのパイルには、PTT糸が用いられる。本発明集塵性タイルマットのパイルをPTT糸により形成することで、優れた耐へたり性、逆汚染防止性、及び汚れ除去容易性を得ることができる。耐へたり性とは一定の荷重が継続的にかけられた場合のパイルの元の形状に回復する度合いを示すものである。逆汚染防止性とはクリーニング時に溶出した染料が、再度パイル糸に再付着することを防止する性質をいう。また、汚れ除去容易性とは汚れが付着した場合除去の容易性を示すものである。
【0009】
また、本発明集塵性タイルマットの汚れ除去容易性が優れている理由はPTT糸が帯電していないためであり、例えば、醤油、コーヒー等の帯電している物質が付着しにくく、仮に付着したとしても、きわめて弱い力で付着しているため、汚れ除去容易性が極めて高い。一方、従来のナイロン樹脂からなる繊維は当該樹脂自体がプラスに帯電しているため、特に醤油、コーヒー等の汚染物質がマイナスに帯電しているものが付着すると、ナイロン樹脂自体のプラスと汚染物質のマイナスがイオン結合で強固に結合してしまうため、当該汚染物質を除去することはきわめて困難であった。
【0010】
本発明集塵性タイルマットのパイルは単糸3〜700dtexのPTT糸のマルチフィラメントから構成されている。本発明集塵性タイルマットの前記PTT糸が単糸3〜700dtexの範囲である理由は集塵用マットに一般的に要求される集塵性、耐へたり性、吸水性が得られるからである。本発明集塵性タイルマットに吸水性が要求される理由は、本発明集塵性タイルマットは集塵用マットとしての使用も予定されており、かかる場合には建物の入り口に敷設されることが大半であり、外部からの持ち込まれる靴底に付着した砂等の塵を除去することに加え、雨等による水の持ち込みを防止する観点から、吸水性が重要な要求性能の一つになっているからである。本発明集塵性タイルマットのパイルを構成するPTT糸は上述した観点から、単糸3〜700dtexのBCFのマルチフィラメントであることが好ましい。前記PTT糸の単糸が3dtex未満になると、耐へたり性が低下し集塵用マットとしての用途に適しないことがある。一方、前記PTT糸の単糸が700dtexを超えると、集塵性タイルマットを製作する際の加工性面で次のような問題が生じることがある。集塵性タイルマットのパイルを構成するPTT糸自体がその太さゆえに剛性が大きく、そのためにタフト加工時に基布に円滑に植設できないことがある。
【0011】
また、本発明集塵性タイルマットにおいては、パイルの形態はカットパイルであっても、ループパイルであっても良いが、その集塵性能を向上させるために、ループ状のパイルとして植設されたパイルの先端部を切断し、カットパイルにすることが集塵性という観点からは好ましい。より具体的には、本発明集塵性タイルマットを構成する全パイルの30%以上がカットパイルであることが好ましく、50%以上であればさらに好ましい。
【0012】
また、本発明集塵性タイルマットを構成するパイルについて、ループパイルを設けることで全体的なボリューム感や模様付与のバリエーションの向上を図ることができる。一方、カットパイルは集塵性という集塵性タイルマットに不可欠な機能を向上させることに大いに役立たせることができる。即ち、カットパイルにすることにより、パイル本体によるブラシ効果を高め、集塵性を向上させることを目的としてなされるものである。本発明集塵性タイルマットのパイルを構成するPTT糸の単糸が700dtexを超えると上述したループパイルとして植設されたパイルの先端を切断することが、当該PTT糸の剛性が大きいため、十分にできないことがある。
【0013】
また、本発明集塵性タイルマットを構成するPTT糸の単糸はBCFであることが好ましい。BCFとは上述したように、Bulked Continuous Filament の略称であり、所謂、嵩高連続長繊維のことをいい、繊維自体の嵩が大きくなるように加工されている。従って、BCFフィラメント糸をパイルに使用することにより、ハードな歩行に対し、パイルの欠落、または、パイルの毛羽立ちを有効に防止することができ、当該BCFから構成されるパイルはボリューム感があり、重厚な風合いを表現できる。さらに、集塵性タイルマットとしては、パイル自体にボリュームを持たせることが、前記以外に少ない繊維の使用量で塵の捕捉性や吸水性の向上という観点からも好ましい。
【0014】
また、本発明集塵性タイルマットのパイルはPTT糸が複数合撚、又は前記いずれか2以上の方法で形成されたマルチフィラメントであることが好ましい。当該マルチフィラメントの総繊度は耐へたり性という観点から1000〜6000dtexであることが好ましく、より好ましくは2000〜4000dtexである。前記PTT糸のマルチフィラメントの総繊度が1000dtex未満である場合には耐へたり性が低下し、ボリューム感が少ない等の外観上の問題まで生じる可能性があり、一方、6000dtexを超える場合にはタフト加工時に問題が発生する等加工性面での問題があるほかコスト面でも好ましくない。
また、本発明集塵性タイルマットのパイルの目付け量は耐へたり性、及びボリューム感のある外観を保持するという観点から、300〜1500g/m であることが好ましく、より好ましくは500〜1000g/mである。集塵性タイルマットのパイルの目付け量が300g/m未満である場合には耐へたり性の劣化やボリューム感のある外観が得られないという問題が生じる可能性があり、一方、目付け量が1500g/mを超える場合にはコスト面で好ましくないからである。
【0015】
本発明集塵性タイルマットにおいて、単糸3〜700dtexのPTT糸マルチフィラメントからなるパイルを植設する基布としては、公知の任意の基布を用いることができるが、タフト時の加工性、及び寸法安定性の観点から、ポリエステル繊維からなる不織布が好ましい。
【0016】
また、本発明集塵性タイルマットは前記PTT糸のマルチフィラメントを植設し、パイルを設けた基布とバッキング材を貼り合わせることで形成される。裏貼り材としては集塵性タイルマットに使用される任意の裏貼り材、例えば、ゴム製裏貼り材、フェルト製裏貼り材が好適に使用することができる。
【0017】
本発明集塵性タイルマットに使用されるゴム製裏貼り材は具体的には、洗濯耐久性、及び耐油性が優れているということから、アクリルニトリルとブタジエンであるNBRが好適である。
【実施例】
【0018】
ポリエステル繊維からなる基布(商品名:LTD-5612B、日本ルトラビル社製)に表に記載されたパイル糸(パイルの形態は集塵性能の優劣の判断を容易にするため全面カットパイルを形成した)を植設することにより表面材を得、さらに、当該表面材をNBRで裏打ちし、600mm×900mmのマットのサンプルを得た。当該マットについて、以下の試験を行った。
1.耐へたり性試験
摩擦を伴った動的荷重による厚さ減少試験(JISL1022 9項(2000年度版))に準じて行った。

2.クリーニング性試験
AATCC175(1991年度版)に準じて行った。

3.加工性
基布へのパイル植設工程、及びカットパイルを形成するためのパイル先端部を切除する工程での加工性を調べた。
【0019】
「表1」に示すように、実施例1、及び比較例1より、耐へたり性については、若干比較例1の方が優れているが、大差はない。一方、汚れ除去容易性については実施例1が9級であるのに対し、比較例1では5級であり顕著な差異が認められる。また、実施例1、及び比較例2より、汚れ除去容易性では差がないものの、耐へたり性で実施例1が優れていることがわかった。
【0020】
「表2」の比較例3に示すように、PTT糸の単糸繊度が3dtex未満になると、耐へたり性が著しく低下ししていることが認められる。一方、比較例4に示すようにPTT糸の単糸繊度が700dtexを超えるとパイルの先端を切除する工程で十分に切除できないという問題が発生した。
(表1)

(表2)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸3〜700dtexのポリメチレンテレフタレートBCFのマルチフィラメントからなるパイルから構成された集塵性タイルマット。

【公開番号】特開2007−7239(P2007−7239A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193506(P2005−193506)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】