説明

集塵用フィルタ装置

【課題】濾過面積が大きくかつコンパクトな集塵装置であって、濾材の濾過性能を長期にわたって安定して保持できる集塵装置に用いるための、逆洗時の払落し効果を向上させる機構を有する集塵用フィルタ装置を提供する。
【解決手段】間欠式の逆流洗浄方式によるフィルタ粒子群の払い落とし機構と、気流と粒子群を分離するためのフィルタカートリッジを備えた集塵用フィルタ装置において、前記フィルタカートリッジは、筒状で、かつ折り目により蛇腹部が形成された濾材を有し、該濾材は、外部から気流が流通する向きで、かつ前記蛇腹部が伸縮可能な状態で前記フィルタカートリッジに取り付けられ、前記濾材の折り目に対して直交する方向に、該濾材部が伸縮可能であり、前記濾材の折り目に対して直交する方向の濾材の逆流洗浄時の全長が、該濾材の濾過時の全長に対して長くなるように構成された集塵用フィルタ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高濃度の粉塵を捕集する必要がある粉体製造システムに利用される集塵・捕集装置で利用される集塵用フィルタ装置に関する。本発明の集塵用フィルタ装置は、電子写真のトナーや、粉体塗料、電子材料、食品、医薬品他の粉体取り扱い分野の集塵・捕集装置や、流動層造粒装置のような集塵部を内蔵した粉体処理装置に適用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、集塵装置のフィルタカートリッジのユニットサイズあたりの濾過面積を拡大するために、蛇腹状(プリーツ状、アコーディオン状とも言う)に濾材を構成したフィルタカートリッジが使用されている。このような蛇腹状の濾材を用いたフィルタは、濾材の濾過面積が大きいが故に、逆流洗浄(払い落しとも言う。例えば、パルスエア方式による逆洗などが挙げられる。)の際の逆流洗浄効果を得にくいという問題があり、特に蛇腹の谷部に存在する粉塵を除去できないという問題があった。
この問題に対し、従来、逆流洗浄に伴う濾材の物理的な変形、例えば蛇腹の山の膨らみ、または谷の膨らみを利用して洗浄効果を高める手段が採用されている。例えば特許文献1には、フィルタカートリッジに対してその長手方向に濾材の山・谷が形成された装置について、蛇腹状の円筒フィルタの固定冶具により、フィルタ本体の膨らみを制限することで、フィルタ本体の蛇腹を大きく変形する工夫がなされていることが記載されている。
さらに積極的に蛇腹の変形を制御する方法としては、主に液体流体向けの提案であるが、特許文献2のように、蛇腹の谷部を、例えば機械的な作用で外側に押出す(例えば、谷を機械的に持ち上げて山にする)ことで、フィルタ表面に付着した異物をはがすシステムが提案されている。
しかし、従来構成における蛇腹の谷部の払い落とし方法は、単にフィルタのふくらみを利用する場合には、フィルタの山部のふくらみが、谷部を隠蔽してしまうため、特に谷部における払い落とし効果が不十分であり、機械的な作用によりフィルタを変形させる場合には新たに複雑な機構が必要であり、利用上の障害となっていた。
また、フィルタ濾材の逆洗とは直接的なかかわりは無いが、このような蛇腹状フィルタの形状保持に関する工夫については、特許文献3において提案されている。すなわち、蛇腹の各々のヒダの伸長する間隔を一定とするために、例えば蛇腹の各ヒダにヒモ体を取り付ける提案がなされている。
逆流洗浄を用いない蛇腹状の伸縮可能なフィルタ装置を用いた集塵装置としては、特許文献4にその形態が例示されている。すなわち、フィルタへの通気を停止した状態で、フィルタを機械的作用で伸縮させることで濾材から粉塵を払い落とす方法が例示されている。しかし、この方法は、粉塵の払落し動作に時間がかかり、粉塵の払い落としのために機械的な駆動力を与える機構が別途必要となってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3775665号公報
【特許文献2】特許第3668217号公報
【特許文献3】特開2007−14891号公報
【特許文献4】特開平03−278811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、濾過面積が大きくかつコンパクトな集塵装置であって、さらに濾材の濾過性能を長期にわたって安定して保持できる集塵装置に用いるための、逆洗時の払落し効果を向上させる機構を有する集塵用フィルタ装置を提供することにある。具体的には、機械的な駆動力を与える機構を用いずに、フィルタの濾材上の粉塵を濾材上から機械的に弾き飛ばす機構を有する集塵用フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、以下の1ないし8の発明によって、上記課題は解決される。
1.間欠式の逆流洗浄方式によるフィルタ粒子群の払い落とし機構と、気流と粒子群を分離するためのフィルタカートリッジを備えた集塵用フィルタ装置において、前記フィルタカートリッジは、筒状でかつ折り目により蛇腹部が形成された濾材を有し、該濾材は、外部から気流が流通する向きで、かつ前記蛇腹部が伸縮可能な状態で前記フィルタカートリッジに取り付けられ、前記濾材の折り目に対して直交する方向に、該濾材部が伸縮可能であり、前記濾材の折り目に対して直交する方向の濾材の逆流洗浄時の全長が、該濾材の濾過時の全長に対して長くなるように構成されたことを特徴とする集塵用フィルタ装置である。
2.前記濾材の内部から吸引することにより、該濾材の外部から内部へ気流を吸引することを特徴とする前記1に記載の集塵用フィルタ装置である。
3.前記逆流洗浄方式が、パルスジェット方式であることを特徴とする前記1又は2に記載の集塵用フィルタ装置である。
4.前記フィルタカートリッジの内部に、前記濾材の最大伸長長さを規制する部材を設けたことを特徴とする前記1ないし3のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置である。
5.前記フィルタカートリッジの内部に、前記濾材の最小収縮長さを規制する部材を設けたことを特徴とする前記1ないし4のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置である。
6.前記濾材の蛇腹の両端部が、蛇腹の山で構成されることを特徴とする前記1ないし5のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置である。
7.前記フィルタカートリッジが円筒型であり、前記濾材の山と谷の折り目と平行な面の断面形状が円形であることを特徴とする前記1ないし6のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置である。
8.フィルタカートリッジが封筒型であり、前記濾材の山と谷の折り目と平行な面の断面形状が方形であることを特徴とする前記1ないし6のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、機械的な駆動力を与える機構を用いずに、フィルタの濾材上の粉塵を濾材上から機械的に弾き飛ばす機構をフィルタ装置に与えた集塵用フィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のフィルタ装置を有する粉塵用集塵機の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示すフィルタカートリッジの拡大断面図である。
【図3】図2に示す濾材の収縮時及び伸長後状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係るフィルタカートリッジの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
図1に、本発明を実施するにあたっての好適な装置形態の一例を示す。図1は、本発明のフィルタ装置を有する粉塵用集塵機の一実施形態を示す。集塵機1は、内部にフィルタカートリッジ2を固定する隔壁3と、集塵室4と、フィルタ装置5を備え、集塵した粉塵の排出口である集塵機排出口6と、含塵気流7を流入させる集塵機入り口8と、濾過後の気流9を排出する集塵機出口10を有し、集塵機出口10は例えばブロア(図示せず)などの吸引装置へつながっている。
フィルタカートリッジの取り付け部は、フィルタカートリッジ吸引口11を兼ねており、フィルタカートリッジ吸引口11には、吸引機構とは別に設置された、逆洗空気流12を供給する装置を備えている。逆洗空気流12としては例えば圧縮空気が好ましく、例えばノズル装置13から間欠的に供給されることが好ましい。また、フィルタカートリッジ吸引口は11、逆洗空気流12とともに、周辺空気流を巻き込むことができるベンチュリー状に構成される。図1において、14は気流を示す。
【0009】
図2に、図1に示したフィルタカートリッジの拡大断面図を示す。図2(a)は、吸引中のフィルタカートリッジを示しており、濾材の収縮時の状態を示す。図2(b)は逆洗中のフィルタカートリッジを示しており、濾材の伸長時の状態を示す。図2において、15は濾材、16は濾材の山部、17は濾材の谷部、18はリテーナー、19は濾材端部、20は伸長長さ規制部材を示す。
図2に示すように濾材15が蛇腹状であることによって、フィルタカートリッジが伸縮自在となり、逆洗時に図3に示すように、濾材の谷部171がフィルタカートリッジの外周部に加速度をもって動き、濾材の谷部17に存在する粉体を弾き飛ばす効果を得ることができる。図3において、151は収縮時の濾材、152は伸長後の濾材、171は濾材の谷部の移動距離を示す。
なお、図2に示すように、濾材端部が山部で終わるように構成すると、粉だまりとなる周動不可な谷部を無くすことが出来るので、終端部における払い落とし効果の低下を回避することができる。
【0010】
ここで、フィルタの収縮時の形状を、濾材の弾力や、重力の効果のみにゆだねると、フィルタの目詰まりが一時的にでも進行した際にフィルタカートリッジの濾材が収縮し尽くしてつぶれてしまい、濾材の濾過面が通気不可な状態となってしまうことがある。また、それ故、図2に示すリテーナー18のように、フィルタカートリッジの濾材の収縮時の長さを規定する部材(フィルタカートリッジの最短長を決定する部材)を挿入しておくことが好ましい。
また、フィルタが逆洗時に伸長する長さが一定以上となると、集塵機の缶体に内部で衝突したり、濾材の折り目に過大な負荷が掛かり好ましくない。また、フィルタ装置の設計上、フィルタカートリッジの濾材が集塵装置の内部空間よりも長く伸びると集塵装置内壁に衝突して騒音の原因となるおそれがある。それ故、図2に示すように、フィルタカートリッジの濾材の伸長長さ規制部材(フィルタカートリッジの最大長を決定する部材)20をフィルタ内部に設置することが好ましい。伸長長さ規制部材としては、例えばフィルタの伸長方向逆向きに引っ張り力を有するバネ状部材や、一定長さまでの伸長を許すよう構成された単なる紐状部材などを採用することができる。
【0011】
フィルタカートリッジの濾材の形状は筒状であり、濾材の折り目(山、谷)と平行な面の断面形状が円筒、方形、三角形などのいずれであってもよい。しかし、フィルタカートリッジの取り付け・取り扱いを考慮すると、例えば図4に示すように、円筒または封筒型の方形(特に長方形)であることが好ましい。図4(a−1)は円筒型濾材を示し、図(a−2)はその断面である。また、図4(b−1)は封筒濾材を示し、図(b−2)はその断面である。
フィルタカートリッジの取り付けの向きは、いずれの方向でも良いが、払い落とした粉塵の回収のしやすさから、鉛直方向下向きにつるして重力に対して上部から濾過気流を排気可能な構成とするか、または集塵装置の側面に保持し、この側面から濾過気流を排気可能な構成とするのが好ましい。ここで、「排気」とは、図1中の気流14をいい、筒状のフィルタカートリッジの排気を示す。
【0012】
濾材には通常、圧力損失が存在し、通気時には、通気の向きに圧力損失に比例する圧力が加わる。濾材が筒状のフィルタカートリッジとして構成された場合には、筒の内外に圧力差が発生し、例えば筒の外部から内部へ気流を吸引する場合、筒を押しつぶす方向に圧力が加わる。逆に筒の内部から外部へ気流を吐き出す場合、筒を膨らませる方向に圧力が加わる。
言い換えれば、上述したようにフィルタ装置を構成することで、通常使用時(濾過時)には、フィルタカートリッジの濾材は収縮状態であり、逆洗時(払い落とし時)には、フィルタカートリッジの濾材は伸長状態となる。すなわち、逆洗時には濾材の谷部が開くとともに、谷部が持ち上がり濾材の外側へ付着物を弾き飛ばす効果が得られる。それ故、従来構成に対して逆洗時の払い落とし効果を高めることができる。
【0013】
ここで、筒状に構成された濾材の(筒の)内部から吸引し、濾材の外部から内部へ気流を吸引する構成の集塵装置とすることが、集塵機の利用上利用しやすく好ましい。このように構成することで、集塵装置の内部が負圧になり、フィルタ装置から周辺の作業環境への粉塵のリークが防止できる。
また、逆流洗浄の方式は、パルスジェット方式であるフィルタ装置であることが好ましい。パルスジェット方式を用いることで、従来知られているように、逆流洗浄時の逆流通気量を減少させることができる上に、さらに、パルスジェットによる瞬間的なフィルタカートリッジの伸縮により、より大きな加速度で谷部の付着粉塵を払い落とすことができる。
【符号の説明】
【0014】
1 集塵機
2 フィルタカートリッジ
3 隔壁
4 集塵室
5 フィルタ装置
6 集塵機排出口
7 含塵気流
8 集塵機入り口
9 濾過後の気流
10 集塵機出口
11 フィルタカートリッジ吸引口
12 逆洗空気流
13 ノズル装置
14 気流
15 濾材
151 収縮時の濾材
152 伸長後の濾材
16 濾材の山部
17 濾材の谷部
171 濾材の谷部の移動距離
18 リテーナー
19 濾材端部
20 伸長長さ規制部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠式の逆流洗浄方式によるフィルタ粒子群の払い落とし機構と、気流と粒子群を分離するためのフィルタカートリッジを備えた集塵用フィルタ装置において、
前記フィルタカートリッジは、筒状で、かつ折り目により蛇腹部が形成された濾材を有し、
該濾材は、外部から気流が流通する向きで、かつ前記蛇腹部が伸縮可能な状態で前記フィルタカートリッジに取り付けられ、
前記濾材の折り目に対して直交する方向に、該濾材部が伸縮可能であり、
前記濾材の折り目に対して直交する方向の濾材の逆流洗浄時の全長が、該濾材の濾過時の全長に対して長くなるように構成された
ことを特徴とする集塵用フィルタ装置。
【請求項2】
前記濾材の内部から吸引することにより、該濾材の外部から内部へ気流を吸引する
ことを特徴とする請求項1に記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項3】
前記逆流洗浄方式が、パルスジェット方式である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタカートリッジの内部に、前記濾材の最大伸長長さを規制する部材を設けた
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタカートリッジの内部に、前記濾材の最小収縮長さを規制する部材を設けた
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項6】
前記濾材の蛇腹の両端部が、蛇腹の山で構成される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項7】
前記フィルタカートリッジが円筒型であり、前記濾材の山と谷の折り目と平行な面の断面形状が円形である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置。
【請求項8】
フィルタカートリッジが封筒型であり、前記濾材の山と谷の折り目と平行な面の断面形状が方形である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の集塵用フィルタ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate