説明

集塵装置

【課題】空気中の塵埃を帯電させる荷電部と、帯電した塵埃を捕集する集塵部とを備えた集塵装置において、集塵電極(40)のがたつきを抑えて集塵装置の性能低下を防止する。
【解決手段】集塵部に、複数枚の第1の板状部材(42)と、複数枚の第2の板状部材(43)とを組み合わせた集塵電極(40)を設ける。第1及び第2の板状部材(42,43)には、複数のスリット(45a,45b)を形成し、両板状部材(42,43)をスリット(45a,45b)同士ではめ込むことにより、集塵電極(40)を格子状に構成する。そして、第1の板状部材(42)の高さ寸法を第2の板状部材(43)の高さ寸法より大きく設定する一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法を第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法より小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を電気的な力で捕集する集塵装置に関し、特に、集塵電極の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気的な引力を利用して空気等に含まれる粉塵を捕集する電気式の集塵装置が知られている。例えば、特許文献1には、矩形断面の通気孔が多数形成された格子状の集塵電極と、集塵電極の通気孔へ1つずつ挿入される突起部が形成された対向電極とを備える集塵装置が開示されている。
【0003】
この集塵装置において、対向電極の突起部は、その断面形状が矩形状となっており、その側面が通気孔の内壁面と向かい合っている。集塵電極と対向電極の間に電位差を付与すると、通気孔の内壁面と突起部の表面との間の空間に電界が形成される。そのため、通気孔を流れる気体中の粒子は、通気孔の内壁に引き寄せられて捕捉される。
【0004】
集塵電極(100)の組み立て状態を示す斜視図である図11に示すように、上記集塵電極は、複数のスリット(103,104)が形成された金属製の板状部材(101,102)を、スリット(103,104)同士で噛み合わせることで格子状に構成されている。このようなスリット(103,104)は、プレス加工により板状部材(101,102)を打ち抜いて形成するのが一般的である。
【特許文献1】登録実用新案第3033859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スリット(103,104)の幅が広いと、集塵電極(格子電極)(100)を組み立てやすくなるが、格子電極のがたつきも生じやすく、分解も起こりやすくなってしまう。また、スリット(103,104)の幅が広いと、スリット(103,104)に嵌合させた板状部材(101,102)が、電圧を印加したときに傾いて電極間隔が変化してしまい、十分な集塵性能を得られないおそれもある。さらに、図12に示すように、格子状に組み合わせる板状部材の縦板(101)と横板(102)の高さ寸法(H1,H2)が異なる場合、高さの大きい方の板状部材(この例の場合は横板(102))のがたつき量が図13に示すように大きくなる(B2>B1)ため、電極間隔が狭い(約2mm以下の)集塵装置では、集塵電極と対向電極とが接触してしまうおそれもあった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、集塵電極のがたつきを抑えて集塵装置の性能低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空気中の塵埃を帯電させる荷電部(12)と、帯電した塵埃を捕集する集塵部(30)とを備えた集塵装置を前提としている。
【0008】
そして、この集塵装置では、上記集塵部(30)が、互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(42)と、該第1の板状部材(42)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(43)とが組み合わされて構成された集塵電極(40)を備え、上記第1及び第2の板状部材(42,43)には、長手方向に間隔をあけて複数のスリット(45a,45b)が形成され、両板状部材(42,43)をスリット(45a,45b)同士ではめ込むことにより、上記集塵電極(40)が、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に構成され、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)が第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定される一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法(D1)が第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法(D2)より小さく設定されていることを特徴としている。
【0009】
この第1の発明では、第1の板状部材(42)と第2の板状部材(43)をスリット(45a,45b)同士ではめ込むことにより集塵電極(40)が構成される。その際、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)が第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定される一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法(D1)が第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法(D2)より小さく設定されているので、高さの大きい第1の板状部材(42)のがたつき量が大きくなるのを抑えられる。そのため、格子電極内での電極同士の接触を避けることができる。
【0010】
第2の発明は、請求項1において、上記板状部材(42,43)には、上記スリット(45a,45b)の開口側端部の片側または両側に面取り(c)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
この第2の発明では、スリット(45a,45b)の開口側端部の片側または両側に面取り(c)が形成されているので、第1の板状部材(42)と第2の板状部材(43)をスリット(45a,45b)同士でかみ合わせやすくなる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記板状部材(42,43)のスリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)が、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定されていることを特徴としている。
【0013】
この第3の発明では、第1,第2スリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)を、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定しているので、第1,第2板状部材(42,43)をかみ合わせやすく、しかも第1,第2板状部材(42,43)が必要以上にがたつくのを防止することができる。
【0014】
第4の発明は、第1から第3の発明の何れか1つにおいて、上記第1,第2板状部材(42,43)の少なくとも一方には、他方のスリット(45a,45b)にはまり込む部分に、0.05mm以下の隙間が生じる凸部(42P,43P)が形成されていることを特徴としている。
【0015】
この第4の発明では、第1,第2板状部材(42,43)の少なくとも一方に凸部(42P,43P)を形成し、他方のスリット(45a,45b)との間の隙間寸法を規制するようにしている。このことにより、板状部材(42,43)のがたつきが大きくなるのを防止できる。
【0016】
第5の発明は、第1から第4の発明の何れか1つにおいて、空気が流れる複数の通風孔(56)が形成された格子状の基台部(51)と、該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に突出して延びる突起部(52)とを有する対向電極(50)を備え、該対向電極(50)は、該突起部(52)が上記集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通されるように該集塵電極(40)に対向して配設されていることを特徴としている。
【0017】
この第5の発明では、対向電極(50)の突起部(52)を集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通させ、対向電極(50)と集塵電極(40)とが対向するように構成したから、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面と対向電極(50)の突起部(52)の側周面との間で空気中の塵埃を捕集するための電界が形成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)を第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定する一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法(D1)を第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法(D2)より小さく設定したことにより、高さの大きい第1の板状部材(42)のがたつき量が大きくなるのを抑えられるので、格子電極内での電極同士の接触を避けることができる。したがって、集塵電極(40)のがたつきを抑えて集塵装置の性能低下を防止することができる。
【0019】
上記第2の発明によれば、上記スリット(45a,45b)の開口側端部の片側または両側に面取り(c)が形成されているので、第1の板状部材(42)と第2の板状部材(43)をスリット(45a,45b)同士でかみ合わせやすくなる。したがって、組み立てが容易になる。
【0020】
上記第3の発明によれば、第1,第2スリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)を、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定しているので、第1,第2板状部材(42,43)をかみ合わせやすく、しかも第1,第2板状部材(42,43)が必要以上にがたつくのを防止することができる。
【0021】
ここで、第1,第2スリット(45a,45b)のスリット幅(W1,W2)を第1及び第2の板状部材(42,43)の板厚と略同一の幅に設定してプレス加工する場合には、スリット幅(W1,W2)が狭すぎるためにプレス金型の打ち抜き部分の厚みを薄くしなければならず、強度が不足して折れやすくなり、第1及び第2の板状部材(42,43)の量産化が困難になるという問題があった。
【0022】
これに対して、本発明では、第1,第2スリット(45a,45b)の幅を、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるようにしているので、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを厚くして十分な強度を確保することにより、該プレス金型の打ち抜き部分が折れにくくなるため、第1及び第2の板状部材(42,43)の量産化を図る上で有利となる。
【0023】
上記第4の発明によれば、第1,第2板状部材(42,43)の少なくとも一方に凸部(42P,43P)を形成し、他方のスリット(45a,45b)との間の隙間寸法を規制するようにしている。このことにより、板状部材(42,43)のがたつきが大きくなるのを防止できるので、集塵電極(40)のがたつきを抑えて集塵装置の性能低下を防止することができる。
【0024】
上記第5の発明によれば、対向電極(50)の突起部(52)を集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通させ、対向電極(50)と集塵電極(40)とが対向するように構成したから、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面と対向電極(50)の突起部(52)の側周面との間で空気中の塵埃を捕集するための電界が形成される。その結果、集塵装置のコンパクトを図りつつ、集塵効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
本実施形態の空気清浄機は、一般家庭や小規模店舗などで用いられる民生用の空気浄化装置であって、本発明に係る集塵装置を構成している。
【0027】
〈空気清浄機の全体構成〉
図1は、本発明の実施形態に係る空気清浄機(集塵装置)の概略構成を示す斜視図、図2は側面図である。図1および図2に示すように、空気清浄機(10)は、ケーシング(20)を備えている。このケーシング(20)は、例えば直方体状の横長の容器により形成されている。ケーシング(20)には、前面に空気の吸込口(21)が形成され、背面に空気の吹出口(22)が形成されている。また、ケーシング(20)の内部には、吸込口(21)から吹出口(22)に向かう空気通路(23)が形成されている。
【0028】
そして、上記空気通路(23)には、吸込口(21)から吹出口(22)に向かって順に、プレフィルタ(11)、荷電部(12)、集塵部(30)、触媒フィルタ(13)、及び送風機(14)が配置されている。
【0029】
上記プレフィルタ(11)は、吸込口(21)からケーシング(20)内に吸込まれた空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタである。
【0030】
上記荷電部(12)は、この実施形態では、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるイオン化部である。この荷電部(12)は、図示しないが、例えば、複数のイオン化線と複数の対向電極とを備え、イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加されるように構成されている。このイオン化線は、例えば荷電部(12)の上端から下端にわたって設けられ、対向電極はイオン化線の間に配置されている。
【0031】
上記集塵部(30)は、荷電部(12)で帯電した塵埃を捕集するものである。この集塵部(30)には、分解斜視図である図3に示すように、アース電極としての集塵電極(40)と、集塵電極(40)よりも高電位となる陽電極としての対向電極(50)とが設けられている。集塵電極(40)と対向電極(50)との間には直流電圧が印加される。これにより、集塵電極(40)と対向電極(50)との間には、集塵電極(40)に塵埃を誘引するための電界が形成される。なお、集塵部(30)の詳細構造については後述する。
【0032】
上記触媒フィルタ(13)は、図示しないが、例えばハニカム構造の基材の表面に触媒が担持されたものである。この触媒には、例えばマンガン系触媒や貴金属触媒等が適用されている。この触媒により、集塵部(30)を通過して塵埃が除去された空気中の有害成分や臭気成分が分解される。
【0033】
上記送風機(14)は、ケーシング(20)内の空気通路(23)において最下流側に配置されている。この送風機(14)は、室内空気をケーシング(20)内に吸い込み、清浄化された空気を室内に吹き出すためのものである。
【0034】
〈集塵部の構成〉
上記集塵部(30)の構造について詳細に説明する。図3は、上述したように集塵部の分解斜視図、図4は、集塵部の一部を拡大して示す縦断面図である。図示するように、上記集塵部(30)は、上記集塵電極(40)と、集塵電極(40)と組み合わされる上記対向電極(50)とを備えている。
【0035】
上記集塵電極(40)は、導電性であるステンレスバネ鋼製の薄板金属で構成されている。一方、対向電極(50)は、材質が導電性樹脂となっており、例えば射出成形等の手法を用いて成形されている。
【0036】
上記集塵電極(40)および対向電極(50)のそれぞれは、外形が矩形体状に形成されており、1つの基台部(41,51)と、該基台部(41,51)から突出する多数の突起部(44,52)とを備えている。
【0037】
上記集塵電極(40)の基台部(41)は、それぞれ板状部材である複数の横仕切部(42)および複数の縦仕切部(43)を備えている。基台部(41)は、横仕切部(42)と縦仕切部(43)とが互いに四角格子状に組み合わされて構成されている。
【0038】
具体的には、上記集塵電極(40)は、互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(横仕切部)(42)と、第1の板状部材(42)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(縦仕切部)(43)とが組み合わされて構成されている。第1及び第2の板状部材(42,43)は、上述したようにステンレスバネ鋼などの金属製の板材で構成されている。
【0039】
ここで、第1の板状部材(横仕切部)(42)と、第2の板状部材(縦仕切部)(43)について説明する。
【0040】
第1の板状部材(42)及び第2の板状部材(43)の正面図である図5および図6に示すように、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の端部には、いわゆるヘミング処理が施されている。
【0041】
具体的に、基台部(41)の横仕切部(42)では、上流側の端部(42a)が後述する通風孔(46,56)の軸心方向(即ち、空気流れ方向)に折り返されている。また、基台部(41)の横仕切部(42)では、突起部(44)と突起部(44)の間の端部(42b)が通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。突起部(44)では、先端部(44a)が通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。また、突起部(44)では、側端部(44b)が通風孔(46,56)の軸心方向に直交する方向(即ち、空気流れ方向に直交する方向)に折り返されている。基台部(41)の縦仕切部(43)では、上流側の端部(43a)および下流側の端部(43b)がそれぞれ通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。
【0042】
このように、集塵電極(40)では、基台部(41)の上流側および下流側の端部(42a,42b,43a,43b)が折り返され、且つ、突起部(44)の端部(44a,44b)が折り返されている。これにより、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の各端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)において、尖ったエッジがなくなり、その端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)での電界の集中が抑制される。
【0043】
図5と図7,8に示すように、第1の板状部材(42)の上縁部には長手方向に間隔をあけて複数の第1スリット(45a)が形成されている。また、第2の板状部材(43)の下縁部にも同様に、長手方向に間隔をあけて複数の第2スリット(45b)が形成されている。
【0044】
そして、両板状部材(42,43)を第1,第2スリット(45a,45b)同士で噛み合わせることにより上記集塵電極(40)が構成されている。また、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)は第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定されている。一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法(D1)は、第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法(D2)より小さく設定されている。この第1,第2スリット(45a,45b)の深さ寸法は、第1及び第2の板状部材(42,43)をスリット(45a,45b)同士で対応させて嵌合させたときに、第1及び第2の板状部材(42,43)の上縁が略同一平面上に位置するように定められている。また、第1,第2スリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)は、はめ込まれる板状部材の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定されている。
【0045】
図3に示すように、上記基台部(41)には、横仕切部(42)と縦仕切部(43)とによって囲まれる多数の通風孔(46)が形成されている。この通風孔(46)は、被処理気体としての空気が流れる通気孔を構成している。集塵電極(40)の突起部(44)は、図5にも示すように、上記各横仕切部(42)の下縁部から突出するように形成されている。突起部(44)は、横仕切部(42)の幅方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、3つ)形成されている。つまり、突起部(44)は横仕切部(42)から延びる突出片により構成され、突起部(44)と横仕切部(42)とは図5に示す一枚の金属板(ステンレスバネ鋼板)で形成されている。
【0046】
上記対向電極(50)の基台部(51)は、枠体(53)と、該枠体(53)の内部に設けられた複数の横仕切部(54)および複数の縦仕切部(55)とを備えている。対向電極(50)の基台部(51)は、枠体(53)と横仕切部(54)と縦仕切部(55)とが四角格子状に且つ一体に形成されている。そして、基台部(51)には、枠体(53)と横仕切部(54)と縦仕切部(55)とによって囲まれる多数の通風孔(56)が形成されている。この通風孔(56)は、上記集塵電極(40)の通風孔(46)と同様に、被処理気体としての空気が流れる通気孔を構成している。対向電極(50)の突起部(52)は、上記各横仕切部(54)の上縁部から突出するように形成されている。突起部(52)は、横仕切部(54)の幅方向に間隔をあけて複数形成されている。つまり、突起部(52)は、横仕切部(54)と同一厚さの平板状の突出片により構成され、横仕切部(54)に一体形成されて、対向する集塵電極(40)の通風孔(46)の内部まで延びるようになっている。
【0047】
上記集塵部(30)は、上記集塵電極(40)および対向電極(50)の基台部(41,51)同士が対向した状態で固定されて組み立てられる。この組み立て状態では、集塵電極(40)の突起部(44)が対向電極(50)の通風孔(56)内に挿通され、対向電極(50)の突起部(52)が集塵電極(40)の通風孔(46)内に挿通される。また、各基台部(41,51)は、空気通路(23)において空気流れと直交する方向に配置されている。上記図4は、集塵部(30)の一部を拡大して示す縦断面図であり、矢印が空気の流れ方向を示している。この図4に示すように、上記集塵電極(40)と対向電極(50)とは、互いに対向した状態で、集塵電極(40)が空気通路(23)の上流側となるように配設されている。
【0048】
上記各縦仕切部(43,55)は、ケーシング(20)の上下方向に延び、各横仕切部(42,54)は、ケーシング(20)の幅方向に延びている。つまり、縦仕切部(43,55)と横仕切部(42,54)とは縦横に交差するように配列されている。
【0049】
上記各縦仕切部(43,55)は、集塵電極(40)の基台部(41)と対向電極(50)の基台部(51)とが組み立てられた状態では、同一平面上に位置するように形成されている。また、この組み立て状態において、両者の縦仕切部(43,55)は、互いに接触することなく、所定の間隔を置いて配置される。一方、各横仕切部(42,54)は、集塵電極(40)の基台部(41)と対向電極(50)の基台部(51)とが組み立てられた状態では、図4の上下方向に、千鳥状に互い違いに位置するように形成されている。つまり、集塵電極(40)の横仕切部(42)は、対向電極(50)の通風孔(56)の中央部に位置し、対向電極(50)の横仕切部(54)は、集塵電極(40)の通風孔(46)の中央部に位置している。
【0050】
上記各突起部(44,52)の先端側は、相対する電極(50,40)の縦仕切部(43,55)と横仕切部(42,54)とによって囲まれる。つまり、各突起部(44,52)は、通風孔(46,56)の内部中央に位置する。そして、突起部(44,52)と縦仕切部(43,55)および横仕切部(42,54)との間に電位差が与えられる。このことにより、突起部(44,52)の周囲には、通風孔(46,56)の横断面において電界が放射状に形成される。
【0051】
−運転動作−
次に、上記空気清浄機(10)の空気清浄動作について説明する。
【0052】
図1および図2に示すように、送風機(14)を駆動すると、被処理気体である室内空気がケーシング(20)の空気通路(23)に吸引され、該空気通路(23)を流れる。また、空気清浄機(10)では、荷電部(12)のイオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加され、集塵部(30)の集塵電極(40)と対向電極(50)との間に直流電圧が印加される。
【0053】
ケーシング(20)の空気通路(23)に吸引された室内空気は、先ずプレフィルタ(11)を通過する。プレフィルタ(11)は、室内空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集する。プレフィルタ(11)を通過した室内空気は、荷電部(12)に流れる。この荷電部(12)では、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃が正極に帯電し、この帯電した塵埃が下流側に流れることになる。
【0054】
続いて、帯電した塵埃は、室内空気と共に集塵部(30)に流れる。集塵部(30)に流入した空気は、先ず、集塵電極(40)の基台部(41)の通風孔(46)を流れる。この通風孔(46)では、空気が対向電極(50)の突起部(52)の周囲を流れる。ここで、対向電極(50)の突起部(52)と、集塵電極(40)の基台部(41)との間には電界が形成され、集塵電極(40)がアース電極となっている。したがって、正極に帯電している塵埃は、集塵電極(40)の基台部(41)、即ち横仕切部(42)や縦仕切部(43)に誘引される。その結果、集塵電極(40)の通風孔(46)を空気が流通する間には、塵埃がこれらの横仕切部(42)や縦仕切部(43)の表面に付着して捕集される。
【0055】
集塵電極(40)の基台部(41)を通過した空気は、対向電極(50)の基台部(51)の通風孔(56)に流れる。この通風孔(56)では、空気が集塵電極(40)の突起部(44)の周囲を流れる。ここで、対向電極(50)の基台部(51)と、集塵電極(40)の突起部(44)との間には電界が形成されているので、未だ空気中に残存している塵埃が集塵電極(40)の突起部(44)の表面に付着して捕集される。
【0056】
集塵部(30)で塵埃が除去された空気は、触媒フィルタ(13)を流れる。触媒フィルタ(13)では、空気中の有害物質や臭気物質が分解除去される。以上のようにして清浄化された空気は、送風機(14)を通過して、吹出口(22)より室内へ供給される。空気清浄機(10)は、このような動作を行うことで、室内空気を清浄化する。
【0057】
ここで、集塵部(30)の集塵電極(40)では、第1,第2板状部材(42,43)を第1,第2スリット(45a,45b)同士で噛み合わせることにより、上記集塵電極(40)が構成されている。そして、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)が第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定され、第1の板状部材(42)の第1スリット(45)の深さ寸法(D1)が第2の板状部材(43)の第2スリット(45)の深さ寸法(D2)より小さく設定されている。したがって、高さの大きい第1の板状部材(42)のがたつき量が大きくなるのを抑えられる。そのため、格子電極内での電極同士の接触を避けることができる。また、第1,第2スリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)が、はめ込まれる板状部材の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定されているので、このことも板状部材(42,43)のがたつき防止に寄与する。
【0058】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)を第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定し、第1の板状部材(42)の第1スリット(45)の深さ寸法(D1)を第2の板状部材(43)の第2スリット(45)の深さ寸法(D2)より小さく設定したことにより、高さの大きい第1の板状部材(42)のがたつき量が大きくなったり傾いたりするのを抑えられる。したがって、格子電極内での電極同士の接触を避けることができる。また、第1,第2スリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)を、はめ込まれる板状部材の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定しているので、このことによっても第1,第2板状部材(42,43)の必要以上のがたつきを防止することができる。
【0059】
また、第1,第2スリット(45a,45b)のスリット幅(W1,W2)を第1及び第2の板状部材(42,43)の板厚と略同一の幅に設定してプレス加工する場合には、スリット幅が狭すぎるためにプレス金型の打ち抜き部分の厚みを薄くしなければならず、強度が不足して折れやすくなり、第1及び第2の板状部材(42,43)の量産化が困難になるという問題があった。
【0060】
これに対して、本発明では、第1,第2スリット(45a,45b)の幅を、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるようにしているので、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを厚くして十分な強度を確保することにより、該プレス金型の打ち抜き部分が折れにくくなるため、第1及び第2の板状部材(42,43)の量産化を図る上で有利となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、集塵電極(40)の突起部(44)は対向電極(50)の通風孔(56)内に挿通させ、対向電極(50)の突起部(52)は集塵電極(40)の通風孔(46)内に挿通させ、突起部(44,52)と通風孔(46,56)の内壁との間に電界を形成するようにしている。これにより、集塵電極(40)と対向電極(50)との間の集塵面積を拡大させることができる。このように、集塵面積を拡大させつつも、均一な電界を形成できるため、集塵効率を一層向上させることができる。
【0062】
−実施形態の変形例−
(変形例1)
第1及び第2の板状部材(42,43)のスリット(45a,45b)には、図9(A)に示すように片側に面取り(c)を設けたり、図9(B)に示すように両側に面取りを設けてもよい。このようにすると、第1及び第2の板状部材(42,43)を第1,第2スリット(45a,45b)でかみ合わせるのが容易になる。
【0063】
(変形例2)
図10に示すように、第1及び第2の板状部材(42,43)の少なくとも一方には、他方のスリット(45a,45b)にはまり込む部分に、0.05mm以下の隙間が生じる凸部(42p,43p)を形成することができる。このように構成すると、板状部材(42,43)のがたつきや傾きを防止しやすくなる。
【0064】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態では、集塵部(30)の対向電極(50)に正の電圧を印加し、荷電部(12)で正極に帯電させた塵埃をアース電極である集塵電極(40)に付着させるようにしたが、本発明は以下のように構成してもよい。つまり、上記実施形態においては、荷電部(12)で塵埃を負極に帯電させる一方、集塵電極(40)をアース電極として対向電極(50)に負の電圧を印加するようにしてもよい。この場合、負極に帯電した塵埃は、集塵部(30)の集塵電極(40)に付着される。
【0066】
また、上記実施形態において、対向電極(50)も集塵電極(40)のように金属電極とするようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、集塵電極(40)の材質にステンレスバネ鋼を用いたが、本発明はこれに限らず、他の導電性金属を用いるようにしてもよい。
【0068】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、帯電した塵埃を捕集する集塵装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄機(集塵装置)の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の空気清浄機の概略構成を示す側面図である。
【図3】図1の空気清浄機の集塵部の分解斜視図である。
【図4】実施形態に係る集塵部の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】実施形態に係る集塵電極の横仕切部および突起部を示す正面図である。
【図6】実施形態に係る集塵電極の縦仕切部を示す正面図である。
【図7】横仕切部と縦仕切部を組み合わせる状態を示す斜視図である。
【図8】スリットの拡大形状を示す図である。
【図9】変形例1に係るスリット形状を示す図である。
【図10】変形例2に係るスリット噛み合わせ構造を示す図である。
【図11】従来の集塵電極の組み立て状態を示す斜視図である。
【図12】従来の集塵電極において縦板と横板の高さ寸法が異なる場合の分解斜視図である。
【図13】従来の重心電極における縦板と横板のがたつき量を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 空気清浄機(集塵装置)
12 荷電部
30 集塵部
40 集塵電極
42 横仕切部(第1の板状部材)
42P 凸部
43P 凸部
43 縦仕切部(第2の板状部材)
45a 第1スリット
45b 第2スリット
46 通風孔
50 対向電極
51 基台部
52 突起部
56 通風孔
H1 第1の板状部材の高さ寸法
H2 第2の板状部材の高さ寸法
D1 第1スリットの深さ寸法
D2 第2スリットの深さ寸法
W1 第1スリットの幅寸法
W2 第2スリットの幅寸法
c 面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の塵埃を帯電させる荷電部(12)と、帯電した塵埃を捕集する集塵部(30)とを備えた集塵装置であって、
上記集塵部(30)は、互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(42)と、該第1の板状部材(42)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(43)とが組み合わされて構成された集塵電極(40)を備え、
上記第1及び第2の板状部材(42,43)には、長手方向に間隔をあけて複数のスリット(45a,45b)が形成され、両板状部材(42,43)をスリット(45a,45b)同士ではめ込むことにより、上記集塵電極(40)が、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に構成され、
第1の板状部材(42)の高さ寸法(H1)が第2の板状部材(43)の高さ寸法(H2)より大きく設定される一方、第1の板状部材(42)の第1スリット(45a)の深さ寸法(D1)が第2の板状部材(43)の第2スリット(45b)の深さ寸法(D2)より小さく設定されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記板状部材(42,43)には、スリット(45a,45b)の開口側端部の片側または両側に面取り(c)が形成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記板状部材(42,43)のスリット(45a,45b)の幅寸法(W1,W2)は、はめ込まれる板状部材(42,43)の厚さ寸法に対して0.05mm以下の隙間が形成されるように設定されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
上記第1,第2板状部材(42,43)の少なくとも一方には、他方のスリット(45a,45b)にはまり込む部分に、0.05mm以下の隙間が生じる凸部(42P,43P)が形成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
空気が流れる複数の通風孔(56)が形成された格子状の基台部(51)と、該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に突出して延びる突起部(52)とを有する対向電極(50)を備え、該対向電極(50)は、該突起部(52)が上記集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通されるように該集塵電極(40)に対向して配設されていることを特徴とする集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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