説明

集塵装置

【課題】室内に浮遊する塵埃は勿論、床に沈降している塵埃も確実に吸引して捕集することのできる集塵装置を提供する。
【解決手段】本体ケース1内に送風機5及びフィルタ6が設けられ、送風機5の駆動により吸気口2から吸引した外気をフィルタ6によって浄化し、浄化した排気流e1,e2を第1、第2の排気口3,4から排出するように構成され、この第1、第2の排気口3,4から排出された排気流e1,e2を床面又はその付近で衝突させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置に係り、より詳しくは、室内に沈降している塵埃を効率的に捕集することのできる集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内の塵埃を除去する集塵装置は、本体に設けた吸気口から室内空気を吸引し、フィルタを通過させて塵埃を捕捉し、浄化した空気を排気口から放出する形態がよく知られている。そして、排気口から放出された空気は室内を循環し、浮遊している塵埃を取り込んで再び本体の吸気口から吸引されて塵埃が除去され、室内空間の清浄を行うように構成されている。この場合、浮遊している塵埃に対しては装置の風量を上げることで除去性能を向上させることができるが、一度床に沈降した塵埃は、前述のような循環気流では除去することが困難であった。
【0003】
ところで、人体に対して影響を及ぼすことの多い花粉、ダニの死骸や真菌などのアレルゲンは粒子が大きいため、浮遊せずに床に沈降していることが多い。そして、床に沈降しているアレルゲンは、人の通過などによって舞い上げられ、人体に吸い込まれることがある。また、生後1年にも満たない乳幼児などは床に手を突くことが多い上に、鼻の位置と床との距離が近く、床上のアレルゲンを吸引する可能性が高い。
【0004】
このような床に沈降したアレルゲンを除去するために、本体ケース内に送風機とフィルタを設け、送風機の駆動により本体ケースに設けた吸気口から外気を吸引してフィルタに通し、浄化したのち上部排気口から放出すると共に、本体ケースの下端部に上部排出口から放出される前の空気の一部をシャッタを介して床面に吹き付ける下部排気口を設け、この下部排気口から吹き出した空気により床上の塵埃を舞い上らせて、吸気口から吸引するようにした空気清浄機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−136804号公報(第4,5頁、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の空気清浄機では、本体ケースの下部においては高い風速が得られるが、床面に吹き付けられた空気は床面に衝突すると同時に拡散してしまうため、舞い上ることのできるのは本体ケース近傍の床面の塵埃のみであり、本体ケースから離れた床面の塵埃を舞い上げることができず、このため床面の塵埃を効果的に吸引することができない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、室内に浮遊している塵埃は勿論、床に沈降している塵埃も確実に吸引して捕集することのできる集塵装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る集塵装置は、本体ケース内に送風機及びフィルタが設けられ、前記送風機の駆動により吸気口から吸引した外気を前記フィルタによって浄化し、浄化した排気流を第1、第2の排気口から排出するように構成され、前記第1、第2の排気口から排出された排気流を床面又はその付近で衝突させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空中に浮遊する塵埃は勿論、床に沈降した塵埃も確実に吸引して捕集できるので、常に清浄な室内環境を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る集塵装置の断面説明図である。
【図2】図1の集塵装置を設置した室内の排気流の状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る集塵装置の断面説明図である。
【図4】図3の集塵装置を設置した室内の排気流の状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る集塵装置の断面説明図である。
【図6】図5の集塵装置を設置した室内の排気流の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る集塵装置の断面説明図、図2は図1の集塵装置を設置した室内の排気流の状態を示す説明図である。なお、以下の説明では、図1の左側を前面側、右側を後面側という。
集塵装置を構成するほぼ直方体状の本体ケース1の側面には、室内の空気を吸引する吸気口2が設けられており、また、天面には第1の排気口3が設けられ、前面側の下部には第2の排気口4が設けられている。
【0012】
本体ケース1内の後面側には送風機5が設置されており、その前面側には吸気口2及び送風機5と連通するフィルタ6が設けられている。そして、送風機5と第1の排気口3との間には第1の風路7が設けられており、送風機5と第2の排気口4との間には第2の風路8が設けられている。なお、図示してないが、本体ケース1内には集塵装置の運転を制御する制御部が設けられており、また、本体ケース1の上面又は前面には、操作部が設けられている。
【0013】
上記のように構成した集塵装置において、室内に浮遊している塵埃を含む室内空気a(外気)は、送風機5の駆動によって形成された気流により吸気口2から吸引され、フィルタ6を通過して塵埃が捕捉され、清浄化されてその一部は第1の風路7を経て第1の排気口3から室内に排出される。また、一部は第2の風路8を経て第2の排気口4から室内に排出される。
【0014】
そして、第1の排気口3から排出された排気(以下、第1の排気流e1又は単に排気流e1という)は、天井及び壁面21に沿って流れたのち床面20に至り、浮遊する塵埃を含む室内空気aとなって集塵装置の吸気口2から吸引される。また、第2の排気口4から排出された排気(以下、第2の排気流e2又は単に排気流e2という)は、床面20に沿って流れるが、床面20上において第1の排気流e1と衝突し、床面20に沈降している塵埃25を舞い上げる。そして、舞い上げられた塵埃25は、室内空気aと共に集塵装置の吸気口2から吸引される。
【0015】
このとき、第1の排気流e1と第2の排気流e2とは、床面20上で衝突するように、第1、第2の排気口3,4の位置及び角度(排気流e1,e2の流出方向)が調整されている。この場合、第1の排気口3からの排気流e1の風量を、第2の排気口4からの排気流e2の風量より大きく設定することにより、両排気流e1,e2の衝突によって舞い上って塵埃25は、第1の排気流e1に押されて集塵装置側に移動するため、吸気口2による吸引が容易になり、舞い上った塵埃を確実に吸引してフィルタ6により捕捉し、除去することができる。
【0016】
また、第1、第2の排気口3,4の両者又はいずれか一方に、制御部によって自動的に角度が制御される風向板9を設けることにより、第1、第2の排気流e1,e2の衝突によって塵埃25が舞い上る床面20の範囲を変えることができるので、床面20の広範囲に亘って沈降している塵埃25を除去することができる。
さらに、風向板9を制御することにより、第1、第2の排気流e1,e2が衝突する位置を、集塵装置から離れた場所から徐々に近い場所に移動させることができ、これにより、舞い上げた塵埃25を集塵装置側へ移動させ、より確実に集塵装置に吸引して捕捉し、除去することができる。
【0017】
また、第2の排気口4から排出される排気流e2を、第2の風路8に設けたヒータ等の加熱手段(図示せず)で加熱して温風とすることにより、排気流e2は床面20に吹き付けられたのち上昇気流となり、床面20に沈降した塵埃がこの上昇気流によって舞い上るようにしてもよい。
【0018】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2に係る集塵装置の断面説明図、図4は図3の集塵装置を設置した室内に排気流の状態を示す説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、第2の風路8の第2の排気口4側に加圧室10を設けると共に、この加圧室10内に第2の排気流e2を加圧する加圧手段11を設けたものである。
【0019】
上記のように構成した本実施の形態において、送風機5の駆動によって吸気口2から吸引された室内空気aは、フィルタ6により清浄化され、その一部は排気流e1となって第1の排気口3から上方に排出される。一方、第2の風路8から加圧室10に送られた第2の排気流e2は加圧手段11により加圧され、第2の排気口4によって渦輪e3が生成されて第2の排気口4から吹き出し、床面20に向って並進する。並進した渦輪e3は床面20に衝突して四方に拡散され、同時に床面20に沈降している塵埃25を舞い上らせる。
【0020】
このとき、第1の排気口3から排出された排気流e1は天井及び壁面21に沿って流れ、第2の排気口4から吹き出した渦輪e3によって舞い上った塵埃25を含む室内空気aと衝突し、塵埃25を運びながら吸気口2に吸引される。
【0021】
上記のような本実施の形態において、第2の排気口4から吹き出した渦輪e3は、小さい循環気流が輪を形成して並進している状態であり、固定平面との衝突時には大きな拡散流が得られるので、床面20と衝突したときに、この拡散流により沈降している塵埃25を多量かつ確実に舞い上らせることができる。なお、図示してないが、第1、第2の排気口3,4の両者又はいずれか一方に、自動的に制御される風向板9を設けてもよい。
【0022】
[実施の形態3]
図5は本発明の実施の形態3に係る集塵装置の断面説明図、図6は図5の集塵装置を設置した室内の排気流の状態を示す説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、実施の形態1の集塵装置において、第1の排気口3を本体ケース1の前面側上部に設け、第1、第2の排気口3,4を床面20に向けて開口したもので、第1、第2の排気口3,4から排気した排気流e1,e2は、床面20又はその付近で衝突するように構成されている。
【0023】
上記のように構成した本実施の形態においては、第1の排気口3からは大きな風量の排気流e1が排出され、第2の排気口4からは小さい風量の排気流e2が排出されて床面20又はその付近で衝突し、衝突によって乱気流が生成されて床面20に沈降している塵埃が舞い上げられ、室内空気aと共に第1の排気流e1に押されて吸気口2から集塵装置に吸引される。
【0024】
この場合、第1、第2の排気口3,4に自動的に角度を調整することのできる風向板9を設けることにより、塵埃25を舞い上げさせる床面20の範囲(排気流e1,e2の衝突位置)を変えることができるので、床面20に沈降している塵埃を広範囲に亘って除去することができる。また、風向板9を調整することにより、床面20の集塵装置から離れた位置に排気流e1,e2を吹き付け、ついでその位置を徐々に集塵装置側に移動させて、舞い上げた塵埃25を集塵装置側に移動させることにより、塵埃25をより確実に吸引して捕捉し、除去することができる。
【0025】
また、本実施の形態においては、第1、第2の排気口3,4は高低差を有して設けられているため、第1、第2の排気流e1,e2が衝突する角度を大きくすることができ、これにより衝突によって生成される乱流も大きくなるため、床面20の塵埃25を大きく(高く)舞い上らせることができる。なお、前述のように、第1、第2の排気流e1,e2に風量差を設ける場合は、第1、第2の排気口3,4に容量の異なる送風機をそれぞれ設けてもよい。
【0026】
さらに、下方に設けた第2の排気口4から排出される排気流e2を、前述のように加熱手段で加熱して床面20に温風を吹き付けるように構成すると共に、上方に設けた第1の排気口3を床面20と平行に、又は第2の排気口4からの温風である排気流e2と衝突しないように、冷風である排気流e1を排出するように構成してもよい。
【0027】
このように構成することにより、第2の排気口4から排出された温風である排気流e2は、床面20に吹き付けられて上昇気流を生じ、さらに、第1の排気口3から排出された冷風である排気流e1により、床面との温度差が一層拡大されてさらに大きな上昇気流が生成され、この大きな上昇気流により床面20に沈降した塵埃25を舞い上らせ、より確実に塵埃を吸引し、捕捉、除去することができる。
【0028】
[実施の形態4]
本実施の形態は、実施の形態1〜3のいずれかの本体ケース1の前面側に、人の存在を検知するセンサ(以下、人感センサという)を設けたもので、この人感センサは、人の存在を検知して検知信号を出力する例えば、赤外線センサ、振動センサ、マイクロ波センサのうち、少なくとも1つ以上のセンサによって構成される。
【0029】
本実施の形態においては、人感センサにより集塵装置が設置された室内(空間)に人が存在するかどうかを検知し、人が存在しないときは掃除モードとし、第1の排気口3から排出される排気流e1の風量を大きくして、床面20に沈降している塵埃25の舞い上げを積極的に行い、大風量で舞い上った塵埃及び浮遊している塵埃を高速で短時間に除去する。
本実施の形態によれば、室内に人が居ない時間帯に床面20を含む室内の塵埃を除去し、人が入室するときは常に清浄な室内環境を提供することができる。
【0030】
[実施の形態5]
本実施の形態は、実施の形態1〜3のいずれかの集塵装置の本体ケース1に、時間帯により運転状態を制御するタイマーを設けたものである。
本実施の形態においては、室内に人が居ない時間帯をタイマーに設定しておき、設定した時間帯になったときは、掃除モードとして実施の形態4の場合と同様に、第1の排気流e1の風量を大きくして塵埃を除去するようにしたものである。
【0031】
この場合、実施の形態4に係る人感センサと組み合わせることにより、人の居ない時間帯のデータを蓄積して記憶させ、このデータに基づいて人の居ない時間帯を掃除モードとし、実施の形態4の場合と同様に室内の塵埃を除去するようにしてもよい。
【0032】
本発明によれば、室内空間の塵埃を除去するばかりでなく、床面20に沈降している塵埃25も効率的に捕集して快適な室内環境が得られるばかりでなく、掃除機による掃除回数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 本体ケース、2 吸気口、3 第1の排気口、4 第2の排気口、5 送風機、6 フィルタ、9 風向板、10 加圧室、11 加圧手段、20 床面、21 壁、25 塵埃、a 室内空気、e1 第1の排気流、e2 第2の排気流、e3 渦輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に送風機及びフィルタが設けられ、前記送風機の駆動により吸気口から吸引した外気を前記フィルタによって浄化し、浄化した排気流を第1、第2の排気口から排出するように構成され、
前記第1、第2の排気口から排出された排気流を床面又はその付近で衝突させるように構成したことを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記第1の排気口を前記本体ケースの天面に設け、前記第2の排気口を該本体ケースの前面側下部に設けたことを特徴とする請求項1記載の集塵装置。
【請求項3】
前記第1の排気口を前記本体ケースの前面側上部に設け、前記第2の排気口を該本体ケースの前面側下部に設けたことを特徴とする請求項1記載の集塵装置。
【請求項4】
前記第1の排気口から排出される排気流の風量を、前記第2の排気口から排出される排気流の風量より大きくしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項5】
前記第1、第2の排気口の両者又はいずれか一方を、該第1、第2の排気口から排出される排気流の流出方向が可変になるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項6】
前記送風機から第2の排気口に至る風路に、該風路を流れる排気流を加圧する加圧手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項7】
前記送風機から第2の排気口に至る風路に、該風路を流れる排気流を加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項8】
前記第1、第2の排気口の両者又はいずれか一方に、これら排気口から排出される排気流の流出方向を制御する風向板を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項9】
前記本体ケースの前面側に人感センサを設けたことを特徴とする請求項1〜8記載の集塵装置。
【請求項10】
前記本体ケースに、該本体ケースが設置されている空間に人が居ない時間帯を記録又は記憶するタイマーを設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279890(P2010−279890A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134761(P2009−134761)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】