説明

集砂装置

【課題】沈砂流路内に短い間隔で集砂ノズルを配置でき、少水量での集砂を可能にするとともに、沈砂池の底板の下に圧力水配管を埋設しないために施工性が良く、沈砂流路を遮る多数の配管や配管サポートがないため、異物の絡みつきを最小限とすることができ、かつメンテナンス作業が容易となる集砂装置を提供する。
【解決手段】沈砂池1の池底に堆積した沈砂を沈砂流路に圧力水を噴射して集砂ピット15へ移送する集砂装置において、沈砂池1の基礎面1aの上方に互いに並行して設置された複数の沈砂流路を構成するトラフ3と、トラフ3に並行に且つ隣接して設置された圧力水配管5と、圧力水配管5から沈砂流路内に延びる複数の集砂ノズル10とを備え、圧力水配管5および複数の集砂ノズル10は、沈砂流路の底面よりも上方にあり、複数の集砂ノズル10は、沈砂流路内で間隔を置いて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備に係り、特に沈砂池の底部に堆積させた沈砂に圧力水を噴射して沈砂を集砂ピットに移送する集砂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場やポンプ場においては、水中に含まれる砂等を除去するために沈砂池設備を設置している。この沈砂池設備では、沈砂池の底部に堆積させた沈砂を集砂装置によって集砂ピットに移送するようにしている。集砂装置は集砂ノズルを備え、沈砂池の底部に堆積させた沈砂に集砂ノズルから圧力水を噴射し、この圧力水の水流、水圧により集砂ピットに移送している。そして、集砂ピットに集砂された沈砂は、揚砂機(揚砂ポンプ)によって水と一緒に沈砂池の外に排出される。
【0003】
集砂装置において、集砂ノズルから噴射した圧力水により沈砂を移動させることができるが、従来の集砂装置では、集砂ノズルの間隔が長いため、噴射された圧力水の圧力が届かない部分の沈砂を移送するには多くの水量を必要としていた。集砂ノズルから噴射された圧力水の圧力を流路全域に作用させるには、ノズル間隔を短くする必要がある。
【0004】
上述した圧力水をノズルから噴射する方式の集砂装置においては、沈砂池の池底形状は、平坦式勾配状、平坦式階段状、トラフ式の3種類に分類される。トラフ式は、平坦式勾配状および平坦式階段状に比べて集砂効率が良いために、一般的に多用されているが、池底に並列する多数のトラフをコンクリートまたはモルタル充填された鋼板で形成するために施工性が悪いという欠点がある。
【0005】
図14は従来のトラフ式集砂装置を示す図であり、図14(a)は圧力水配管埋設型集砂装置の典型例を示す概略断面図であり、図14(b)は吊下げノズル型集砂装置の典型例を示す概略断面図である。
【0006】
図14(a)に示すように、圧力水配管埋設型集砂装置は、コンクリートまたは鋼板で形成された並列する仕切壁100の基礎面(底板)の下方に圧力水配管101を埋設し、圧力水配管101より所定間隔毎に配管102を立ち上げ、各配管102の先端に集砂ノズル103を設けた構造である。
図14(b)に示すように、吊下げノズル型集砂装置は、コンクリートまたは鋼板で形成された並列する仕切壁100の上方に圧力水配管111を配設し、圧力水配管111より下方および側方に延びる多数の配管112を設け、各配管112の先端に集砂ノズル113を設けた構造である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−129313号公報
【特許文献2】特開2002−282609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図14(a)に示すような、従来の圧力水配管埋設型集砂装置においては、集砂ノズルが沈砂流路の底板に設置されているため、集砂ノズルが沈砂流路底部に所定間隔を置いて配置されることになり、ノズル間の間隔を短くすると、沈砂流路底部のノズルが砂の移送の妨げとなるという問題点がある。またノズルから噴射された圧力水が前方のノズルに当たり、噴射された圧力水の圧力が作用する距離が短くなってしまうという問題点がある。
【0009】
一方、図14(b)に示すような、従来の吊下げノズル型集砂装置においては、沈砂池上部の圧力水配管より多数の配管を延ばして沈砂流路内のノズルに接続するという構成であるため、総配管数が増え、またこれらの配管を支持するための配管サポート数が増え、異物の絡みつきが頻発するという問題点があり、また沈砂池内の点検や交換等のメンテナンス作業の妨げとなるという問題点がある。そして、ノズル間の間隔を短くしてノズルの数を多くすると、これらのデメリットが一層顕著になるために、ノズル間の間隔を短くすることができないという問題点がある。
【0010】
また、図14(a)および(b)に示す集砂装置に限らず、従来の集砂装置の共通の問題点として、以下に列挙する問題点がある。
(1)沈砂流路は、下面がモルタル充填された鋼板製かコンクリート成形のトラフであり、一般に沈砂池内は腐食環境下であり、沈砂を圧力水によって移送すると、腐食や摩耗で沈砂流路が破損する恐れがある。そして、破損した場合、沈砂流路の補修や交換に多くの時間と費用がかかる。
(2)集砂ピットを沈砂流路よりも下位レベルに設置する必要があるため、沈砂流路を嵩上げするために多量のモルタル等の充填材が必要となる。また、沈砂流路の嵩上げの結果、沈砂池流路の断面積が小さくなり、沈砂池内の流速が速くなり、砂の沈降を妨げる。
(3)集砂ノズルから噴射された圧力水によって集砂ピット内に移送された沈砂が圧力水を噴射していない他の沈砂流路に流れてしまい、集砂効率が低下する。
(4)沈砂流路のレベル(高さ)を集砂ピットのレベル(高さ)より高くするために、沈砂流路を嵩上げする必要があり、多量のモルタルの充填が必要となる。そして、流砂流路の嵩上げにより、沈砂池流路断面積が小さくなり、その結果、沈砂池内の流速が速くなり砂の沈降を妨げる。
【0011】
本発明は、上述した従来の集砂装置が抱える種々の問題点を解決し、沈砂流路内に短い間隔で集砂ノズルを配置でき、少水量での集砂を可能にするとともに、沈砂池の底板の下に圧力水配管を埋設しないために施工性が良く、沈砂流路を遮る多数の配管や配管サポートが少ないため、異物の絡みつきを最小限とすることができ、かつメンテナンス作業が容易となる集砂装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の一態様は、沈砂池の池底に堆積した沈砂を沈砂流路に圧力水を噴射して集砂ピットへ移送する集砂装置において、前記沈砂池の基礎面の上方に互いに並行して設置された複数の沈砂流路を構成するトラフと、前記トラフに並行に且つ隣接して設置された圧力水配管と、前記圧力水配管から前記沈砂流路内に延びる複数の集砂ノズルとを備え、前記圧力水配管および前記複数の集砂ノズルは、前記沈砂流路の底面よりも上方にあり、前記複数の集砂ノズルは、前記沈砂流路内で間隔を置いて配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、沈砂池の基礎面の下に圧力水配管を埋め込まないため、施工性がきわめて良く、また沈砂流路を遮る多数の配管や配管サポートが少ないため、異物の絡みつきを最小限とすることができ、かつ池内での作業や移動に支障がない。また、圧力水配管をトラフに隣接して配置し、圧力水配管から沈砂流路内に延びる複数の集砂ノズルを設けたため、短い間隔で集砂ノズルを配置することができる。その結果、一箇所のノズルから噴射された圧力水が高い圧力のまま沈砂流路の一部のエリアに存在する沈砂に有効に作用し、その作用が複数のノズルによって流路全域の沈砂に及ぶことになるため、流路全長では多くの水量を必要とせず、少ない水量で集砂を行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、相隣接するトラフの間に仕切壁を設け、前記圧力水配管を前記仕切壁内に設置したことを特徴とする。
本発明によれば、圧力水配管は沈砂流路の一部を形成する仕切壁内に設置されているため、集砂ノズルを短い間隔で配置しても、沈砂池内に設置される配管やサポートが少なく、異物が絡まることが少ない。また、沈砂池内での作業の支障とならない。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記圧力水配管は相隣接するトラフの間に設置され、前記仕切壁は、頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、相隣接するトラフに跨るように設置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記圧力水配管と前記集砂ノズルは、圧力水枝管を介して接続され、該圧力水枝管は前記仕切壁の少なくとも一面から前記沈砂流路内に突出していることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記トラフを構成するトラフ底板の上に、薄板からなるライナー板を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、沈砂流路を形成するトラフ底板の上に、交換が容易なライナー板を設置することで、流路の摩耗や腐食に容易に対処することができる。またトラフ底板がライナー板により覆われているため、トラフ底板は摩耗の恐れがなく、トラフ底板の板厚を薄くすることができ、また樹脂等の軽量で施工性が良い材料も使用可能である。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記トラフの端部の前記集砂ピットへの接続部に、前記集砂ピット内の沈砂が前記トラフ内へ逆流しないように、集砂ピット側にのみ開くことができる逆止板を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、トラフの最下流、すなわち各沈砂流路の集砂ピット側の端部に、集砂ノズルの噴射時には噴射された水圧・水流により流路を開くように構成された逆止板を設けることで、集砂ピットを挟んで相対する沈砂流路からの沈砂の逆流を防ぐことができる。また、逆止板が集砂ピットの壁面を構成するので、集砂ピットを沈砂流路よりも下位レベルに設ける必要がなく、沈砂流路を嵩上げする必要がない。したがって、モルタル充填量を低減することができるとともに沈砂池内の流速を低くすることができ、砂の沈降を促進することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記トラフを前記集砂ピットに向けて上り勾配としたことを特徴とする。
本発明によれば、トラフからなる沈砂流路を集砂ピットに向けて上り勾配になるように構成している。このように沈砂流路を上り勾配にすることにより、トラフの左右の両端側(集砂ピットと反対側)で沈砂流路の嵩上げをする必要がなく、モルタル充填量の低減を図ることができるとともに沈砂池内の流速を低くすることができる。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記集砂ノズルの先端は、前記トラフの延びる方向に向き、且つ水平に対して下方へ向いている。
本発明によれば、集砂ノズルの先端が圧力水を斜め下向きに噴出するようになっているため、少水量で集砂効率を向上させ、かつトラフ底板又はライナー板の上面を清浄に保つことができる。
【0021】
また、本発明の他の態様は、沈砂池の池底に堆積した沈砂を圧力水を噴射して集砂ピットへ移送する集砂装置において、前記沈砂池の基礎面の上方に設置されたトラフと、前記トラフ内に設置され且つトラフに並行に設置された圧力水配管と、前記圧力水配管から前記トラフ内に延びる複数の集砂ノズルとを備え、前記複数の集砂ノズルは、前記トラフ内で間隔を置いて配置されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、沈砂池の基礎面の下に圧力水配管を埋め込まないため、施工性がきわめて良く、また沈砂流路を遮る多数の配管や配管サポートがないため、異物の絡みつきを最小限とすることができ、かつ池内での作業や移動に支障がない。また、圧力水配管をトラフ内に配置し、圧力水配管からトラフ内に延びる複数の集砂ノズルを設けたため、短い間隔で集砂ノズルを配置することができ、少ない水量で集砂を行うことができる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、前記圧力水配管を堆積防止用カバー内に設置したことを特徴とする。
本発明によれば、圧力水配管は沈砂流路の一部を形成する堆積防止用カバー内に設置されているため、集砂ノズルを短い間隔で配置しても、沈砂池内に設置される配管やサポートが少なく、異物が絡まることが少ない。また、沈砂池内での作業の支障とならない。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、前記圧力水配管を支持するためのサポートを設け、前記堆積防止用カバーは頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、該堆積防止用カバーの両端部は前記サポートに固定されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、前記圧力水配管と前記集砂ノズルは、圧力水枝管を介して接続され、該圧力水枝管は前記サポートの一面から前記トラフ内に突出していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記トラフの端部の前記集砂ピットへの接続部に、前記集砂ピット内の沈砂が前記トラフ内へ逆流しないように、集砂ピット側にのみ開くことができる逆止板を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、トラフの最下流、すなわち各沈砂流路の集砂ピット側の端部に、集砂ノズルの噴射時には噴射された水圧・水流により流路を開くように構成された逆止板を設けることで、集砂ピットを挟んで相対する沈砂流路からの沈砂の逆流を防ぐことができる。また、逆止板が集砂ピットの壁面を構成するので、集砂ピットを沈砂流路よりも下位レベルに設ける必要がなく、沈砂流路を嵩上げする必要がない。したがって、モルタル充填量を低減することができるとともに沈砂池内の流速を低くすることができ、砂の沈降を促進することができる。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、前記集砂ノズルの先端は、前記トラフの延びる方向に向き、且つ水平に対して下方へ向いている。
本発明によれば、集砂ノズルの先端が圧力水を斜め下向きに噴出するようになっているため、少水量で集砂効率を向上させ、かつトラフ底板又はライナー板の上面を清浄に保つことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
(1)沈砂池の基礎面の下に圧力水配管を埋め込まないため、施工性がきわめて良く、また沈砂流路を遮る多数の配管や配管サポートが少ないため、異物の絡みつきを最小限とすることができ、かつ池内での作業や移動に支障がない。また、汚物の付着しやすい配管サポート等の構造物が少ないため、池内での作業の衛生状態も改善される。
(2)圧力水配管をトラフに隣接して配置し、圧力水配管から沈砂流路内に延びる複数の集砂ノズルを設けたため、短い間隔で集砂ノズルを配置することができ、少ない水量で集砂を行うことができる。
(3)トラフを構成するトラフ底板の上に交換が容易なライナー板を設けることで、沈砂流路の摩耗や破損に容易に対処できる。また、沈砂と接触する部分はライナー板であるため、底板は摩耗の恐れが無く、底板の板厚を薄くしたり、底板について樹脂等の安価で軽量で施工性の良い材料が使用可能となる。
(4)トラフの端部に設けた逆止板が集砂ピットの壁を構成するため、集砂ピットを沈砂流路より下位レベルに配置する必要がないので、沈砂流路をモルタル等で嵩上げする必要がなくなり、沈砂池流路断面積を維持し、沈砂流路の下面のモルタル施工を大幅に低減できる。
(5)トラフの端部に設けた逆止板は、集砂ノズルから噴射された圧力水の水圧・水流により流路を開き、それ以外は閉じているので、他の沈砂流路での圧力水の噴射による沈砂の逆流や、集砂ピット内の集砂ノズルからの圧力水の噴射による沈砂の逆流を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る集砂装置の実施形態を図1乃至図13を参照して説明する。
図1および図2は、本発明に係る集砂装置の一実施形態を示す図であり、図1は沈砂池および集砂装置を示す縦断面図であり、図2は集砂装置の要部を示す縦断面図である。
図1に示すように、沈砂池1は、コンクリート等により略箱状に形成されており、沈砂池1の底部は平坦に形成されている。沈砂池1の底部の上面は、基礎面1aを構成している。沈砂池1の基礎面1aには、鋼板または樹脂製の板からなるトラフ底板2が敷設されている。トラフ底板2には、並行に且つ隣接して配置された複数のトラフ3が設けられており、相隣接するトラフ3の上端は平坦な連結部4によって連結されている。各トラフ3は、沈砂池1に堆積した沈砂を流すための沈砂流路を構成している。
【0029】
また、相隣接するトラフ3を連結する連結部4上には、圧力水配管5が配設されている。圧力水配管5は、トラフ3の底面よりも上方に位置している。そして、各圧力水配管5は、山形状(三角形状)の断面を有しかつ鋼板または樹脂製の板からなる仕切壁6によって覆われている。仕切壁6は、相隣接するトラフ3,3の間に設置されている。この仕切壁6は、流れを整流するための整流板としての機能も有している。各仕切壁6は、頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、相隣接するトラフ3,3に跨るように設置されている。
【0030】
図2に示すように、仕切壁6の両下端部は、トラフ底板2にボルト7およびナット8により固定されている。また、圧力水配管5には、所定間隔毎に圧力水枝管9が設けられている。仕切壁6内に設置された圧力水配管5から延びる各圧力水枝管9は仕切壁6の一面から沈砂流路側に突出しており、各圧力水枝管9の先端には集砂ノズル10が取り付けられている。集砂ノズル10は、トラフ3の底面よりも上方に位置している。また、各トラフ3には、トラフ3の上面を覆うように薄板の鋼板等からなるライナー板12が設けられている。ライナー板12は、中央部が略V字状の断面を有するように折曲されている。
【0031】
なお、図2においては、ライナー板12は、仕切壁6をトラフ底板2に固定するためのボルト7およびナット8によって、トラフ底板2に固定されているが、ライナー板12をトラフ底板2に専用に固定するための専用のボルト・ナットを設けてもよい。専用のボルト・ナットを用いてライナー板12をトラフ底板2に固定した場合には、ライナー板12をトラフ底板2から単独で着脱できるという利点がある。
【0032】
上述したように、沈砂流路を形成するトラフ底板2に交換が容易なライナー板12を設置することで、流路の摩耗や腐食に容易に対処することができる。またトラフ底板2がライナー板12により覆われているため、トラフ底板2は摩耗の恐れがなく、トラフ底板2の板厚を薄くすることができ、またトラフ底板2について樹脂等の軽量で施工性が良い材料も使用可能である。また、ライナー板12を集砂ピット方向に折り曲げ線が伸びるように折り曲げることで当該板にV字を形成させ、沈砂の移送に方向性を与えることができ、集砂ノズル10からの噴射エネルギーを分散させることが少なく、また沈砂流路の底部断面積が小さくなることで、沈砂流路の底部の流速が速くなり、集砂効率が向上する。
【0033】
図3は、図1のIII−III線断面図であり、沈砂流路の側断面図である。図3に示すように、沈砂池1には、左右に2つのトラフ底板2が設置され、2つのトラフ底板2,2間に、集砂ピット15が設置されている。各トラフ底板2には、図1および図2に示す複数のトラフ3が並列して形成されている。仕切壁6内に設置された圧力水配管5から延びる各圧力水枝管9は、仕切壁6の一面から沈砂流路側に突出しており、各圧力水枝管9の先端には集砂ノズル10が取り付けられている。図3に示すように、左側のトラフ3内に設置された集砂ノズル10の先端は、右側を向き且つ水平に対してやや下方を向いており、集砂ノズル10は圧力水を右方向且つ斜め下向きに噴出するようになっている。右側トラフ3内に設置された集砂ノズル10の先端は、左側を向き且つ水平に対してやや下方を向いており、集砂ノズル10は圧力水を左方向且つ斜め下向きに噴出するようになっている。このように、集砂ノズル10の先端が圧力水を斜め下向きに噴出するようになっているため、少水量で集砂効率を向上させ、かつ底板又はライナー板の上面を清浄に保つことができる。
【0034】
図2および図3に示すように、集砂ノズル10を沈砂流路の側面の仕切壁6から突出させることにより、従来、沈砂の移送やノズル噴射圧を阻害していた沈砂流路底部のノズルがなくなり、集砂ノズル10を短い間隔で配置できる。また、圧力水配管5は沈砂流路の一部を形成する仕切壁6内に設置されているため、集砂ノズル10を短い間隔で配置しても、沈砂池1内に設置される配管やサポートが少なく、異物が絡まることが少ない。また、沈砂池1内での作業の支障とならない。
【0035】
図3に示すように、仕切壁6内に収容された各圧力水配管5は、その一端が縦に延びる圧力水配管5vに接続されており、圧力水は圧力水配管5vから仕切壁6内の圧力水配管5に供給されるようになっている。なお、各圧力水配管5の他端は閉塞板によって閉塞されている(図示せず)。
【0036】
また、図3に示すように、各トラフ3の最下流には、逆止板16が配設されている。逆止板16は、仕切壁6の上端にヒンジ等によって開閉可能に固定されていおり、集砂ピット側にのみ開くことができるようになっている。すなわち、集砂ノズル10から圧力水が噴出しているときには、逆止板16は開き(図3において左側の逆止板)、集砂ノズル10から圧力水が噴出していないときには、逆止板16は閉じるようになっている(図3において右側の逆止板)。
【0037】
上述したように、各トラフ3の最下流、すなわち各沈砂流路の集砂ピット側の端部に、集砂ノズル10の噴射時には噴射された水圧・水流により流路を開くように構成された逆止板16を設けることで、集砂ピット15を挟んで相対する沈砂流路からの沈砂の逆流を防ぐことができる。また、逆止板16が集砂ピット15の壁面を構成するので、集砂ピットを沈砂流路よりも下位レベルに設ける必要がなく、沈砂流路を嵩上げする必要がない。したがって、モルタル充填量を低減することができるとともに沈砂池1内の流速を低くすることができ、砂の沈降を促進することができる。
【0038】
図4および図5は、沈砂池の平面図である。図4は、トラフの最下流に逆止板を設置していない集砂装置を備えた沈砂池を示す平面図である。図5は、トラフの最下流に逆止板を設置した集砂装置を備えた沈砂池を示す平面図である。
図4および図5に示すように、矩形状の沈砂池1には、左右に2つのトラフ底板2が設置され、2つのトラフ底板2,2間に、集砂ピット15が設置されている。各トラフ底板2には、図1および図2に示す複数のトラフ3が並列して形成されている。そして、集砂ピット15の両端部には、集砂ピット用の複数の集砂ノズル18が配置されており、各集砂ノズル18から圧力水を噴射して集砂ピット15内の沈砂を揚砂機(揚砂ポンプ)のノズル近傍へ移送するようになっている。図4に示す集砂装置および沈砂池と、図5に示す集砂装置および沈砂池の相違点は、逆止板16の有無だけであり、その他の構成は同一である。
【0039】
図6は沈砂池の側面図である。図6に示すように、トラフ3からなる沈砂流路を集砂ピット15に向けて上り勾配になるように構成している。このように沈砂流路を上り勾配にすることにより、トラフ3の左右の両端側(集砂ピット15と反対側)で沈砂流路の嵩上げをする必要がなく、モルタル充填量の低減を図ることができるとともに沈砂池内の流速を低くすることができる。
【0040】
次に、図1乃至図6に示す集砂装置の具体的な態様について以下に説明する。
図4および図5に示すように、沈砂池1の幅方向を分割するように、400mm〜600mmのピッチでトラフ3および仕切壁6を設置し、並列する沈砂流路を形成している。沈砂流路の上り勾配は3°以下とすることが好ましい。そして、各沈砂流路には、ノズル径5〜8mmの集砂ノズル10を500mm〜800mmのピッチで複数個配置している。図1乃至図5に示すように、仕切壁6から突出させる集砂ノズル10は、仕切壁6で隔てた片側の沈砂流路に配置されている。なお、集砂ノズル10は仕切壁6の両側の沈砂流路に配置してもよく、両側の沈砂流路に配置した場合には圧力水配管5を収容するための仕切壁の数を半減できる。
【0041】
図1乃至図6に示す集砂装置において、沈砂流路毎に集砂ノズル10から0.1〜0.4MPaの圧力水を10〜40秒噴射し、堆積した沈砂を集砂ピット15に移送する。同様の工程を順次全ての沈砂流路において行う。次に、集砂ピット15内の集砂ノズル18から圧力水を噴射して揚砂機(揚砂ポンプ)のノズル近傍へ沈砂を移送する。なお、トラフ底板2と池躯体との間隙は、汚泥や沈砂の堆積を防ぐために、モルタルや砂や樹脂等で充填することが好ましい。
【0042】
図7および図8は、本発明に係る集砂装置の他の実施形態を示す図である。図7は集砂装置の要部を示す縦断面図であり、図2に対応した図である。図8(a)は図7のVIIIA−VIIIA線断面図であり、図8(b)は図7のVIIIB−VIIIB線断面図である。
図7および図8に示すように、沈砂池1の基礎面1a上には、みぞ形鋼からなるトラフ受け台21が所定間隔を置いて複数個設置されている。トラフ受け台21上には、対をなすブラケット22a,22bが複数個固定されている。この対をなすブラケット22a,22bは、トラフ受け台21が延びる方向に所定間隔を置いて複数個設置されている。そして、各対をなすブラケット22a,22bには、鋼板または樹脂製の板からなるトラフ底板23が固定されている。各トラフ底板23は、略V字状の断面を有するように折曲されており、各トラフ底板23により沈砂流路を構成するトラフを形成している。
【0043】
また、相隣接するトラフ底板23の間には、支持台24が固定されており、この支持台24上に圧力水配管25が配設されている。そして、各圧力水配管25は、山形状(三角形状)の断面を有し鋼板または樹脂製の板からなる仕切壁26によって覆われている。仕切壁26の両下端部は、トラフ底板23とともにブラケット22a,22bにボルト7およびナット8により固定されている。また、圧力水配管25には、所定間隔毎に圧力水枝管29が設けられている。仕切壁26内に設置された圧力水配管25から延びる各圧力水枝管29は、仕切壁26の一面から沈砂池流路側に突出しており、各圧力水枝管29の先端には集砂ノズル30が取り付けられている。
図7および図8に示す集砂装置は、トラフ底板を複数に分割したため、図1および図2に示す集砂装置より、部材の重量の軽量化を図ることができ、材料費を廉価にできる。その他の構成および作用効果は、図1および図2に示す集砂装置と同様である。
【0044】
図9は、本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図で図2に対応した図である。図9に示す実施形態の集砂装置は図2に示す実施形態の集砂装置から仕切壁6を取り除いたものである。図9に示す集砂装置は、仕切壁6がないため、圧力水配管5が露出しているが、他の構成は図2に示す集砂装置と同様である。図9に示す集砂装置は、構造が簡素であるため、施工が容易であり、また材料費も低減できる。
【0045】
図12および図13は、本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図で図2に対応した図である。図12および図13に示す実施形態の集砂装置は図2に示す実施形態の集砂装置の圧力水配管5を取り除き、仕切壁6に圧力水配管5と同様の機能を具備させたものである。すなわち、圧力水配管に代えて仕切壁6が圧力水ヘッダーとなっている。仕切壁6は三角形断面(図12)または四角形断面(図13)を有している。この仕切壁6の側面に接続されて延びた圧力水枝管9がトラフの上方に突出しており、その枝管の先端部分に集砂ノズル10を設けている点は、前述の圧力水配管を使用した態様と同様である。図12および図13に示す集砂装置は、トラフ底板2とトラフ底板2上の鋼帯50によりトラフを形成している。この鋼帯50は仕切壁6の取付座も兼ねている。図13に示す集砂装置は、仕切壁6上に沈砂が堆積することを防止するための堆積防止カバー46を具備している。堆積防止用カバー46は、頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、堆積防止用カバー46の両端部は仕切壁6に固定されている。その他の構成は、図12に示す集砂装置と同様である。図12および図13に示す集砂装置は、構造が簡素であるため、施工が容易であるとともに図2等に示した集砂装置と同様の集砂の効果を奏する。また、沈砂流路へ前述のライナー板の設置をすることやトラフの集砂ピット側に逆止板を設けることもできる。
【0046】
図10および図11は、本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図である。図10は沈砂池および集砂装置の縦断面図であり、図11は図10のXI−XI線断面図である。
図10に示す沈砂池は、図1から図9に示したような沈砂池よりも小さい規模の池で池幅が600mmを超え、800mm未満と比較的狭いために、単一のトラフが設置されている。すなわち、沈砂池1の基礎面1a上には、鋼板または樹脂製の板を折曲して形成されたトラフ底板32が設置されている。トラフ底板32は、中央部が略V字状の断面を有するように折曲されており、さらにトラフ底板32の上部は内側に折曲されている。そして、トラフ底板32の上部両端は、沈砂池1の側壁にボルト等(図示せず)によって固定されている。トラフ底板32は単一のトラフを形成し、このトラフは沈砂池1に堆積した沈砂を流すための沈砂流路を構成している。そして、トラフ内には、圧力水配管35がトラフに並行に配置されている。圧力水配管35は、サポート36により支持されている。サポート36は、図11に示すように、沈砂池1の端部に設けられた支持板37により片持ちで支持されている。また圧力水配管35には、所定間隔毎に圧力水枝管39が設けられており、各圧力水枝管39はサポート36の支持面36sから沈砂流路の底部側に突出している。そして、各圧力水枝管39の先端に、集砂ノズル40が取り付けられている。その他の構成および作用効果は、図1および図2に示す集砂装置と同様である。
【0047】
前記各圧力水配管35は、鋼板または樹脂製の板からなる堆積防止用カバー46によって覆われている。堆積防止用カバー46は、頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、堆積防止用カバー46の両端部はサポート36に固定されている。なお、図11では図示していないが、図11に示すトラフ底板32に対して、集砂ピット45を挟んで対向するように、もう一つのトラフ底板が設置されている。また、トラフ底板32の端部の集砂ピット45への接続部に、図3に示す逆止弁と同様の逆止弁が設けられている。集砂ノズル40の構成は、図1乃至図3に示す集砂ノズル10と同様である。
図10および図11に示す集砂装置によれば、ほぼトラフ2本相当を、圧力水配管35から下方に延び所定間隔を置いて配置された1組の集砂ノズル40で集砂できる。
【0048】
これまで本発明について、いくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る集砂装置の一実施形態を示す図であり、沈砂池および集砂装置の縦断面図である。
【図2】集砂装置の要部を示す縦断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図であり、沈砂流路の側断面を示す図である。
【図4】トラフの最下流に逆止板を設置していない集砂装置を備えた沈砂池を示す平面図である。
【図5】トラフの最下流に逆止板を設置した集砂装置を備えた沈砂池を示す平面図である。
【図6】沈砂池の側面図である。
【図7】本発明に係る集砂装置の他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図である。
【図8】図8(a)は図7のVIIIA−VIIIA線断面図であり、図8(b)は図7のVIIIB−VIIIB線断面図である。
【図9】本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図で図2に対応した図である。
【図10】本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、沈砂池および集砂装置の縦断面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図で図2に対応した図である。
【図13】本発明に係る集砂装置の更に他の実施形態を示す図であり、集砂装置の要部を示す縦断面図で図2に対応した図である。
【図14】従来のトラフ式集砂装置を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 沈砂池
1a 基礎面
2,23,32 トラフ底板
3 トラフ
4 連結部
5,5v,25,35,101,111 圧力水配管
6,26,100 仕切壁
7 ボルト
8 ナット
9,29,39 圧力水枝管
10,30,40,103,113 集砂ノズル
12 ライナー板
15,45 集砂ピット
16 逆止板
18 集砂ピット用の集砂ノズル
21 トラフ受け台
22a,22b ブラケット
24 支持台
36 サポート
37 支持板
46 堆積防止用カバー
50 鋼帯
102,112 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池の池底に堆積した沈砂を沈砂流路に圧力水を噴射して集砂ピットへ移送する集砂装置において、
前記沈砂池の基礎面の上方に互いに並行して設置された複数の沈砂流路を構成するトラフと、
前記トラフに並行に且つ隣接して設置された圧力水配管と、
前記圧力水配管から前記沈砂流路内に延びる複数の集砂ノズルとを備え、
前記圧力水配管および前記複数の集砂ノズルは、前記沈砂流路の底面よりも上方にあり、
前記複数の集砂ノズルは、前記沈砂流路内で間隔を置いて配置されていることを特徴とする集砂装置。
【請求項2】
相隣接するトラフの間に仕切壁を設け、前記圧力水配管を前記仕切壁内に設置したことを特徴とする請求項1記載の集砂装置。
【請求項3】
前記圧力水配管は相隣接するトラフの間に設置され、前記仕切壁は、頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、相隣接するトラフに跨るように設置されていることを特徴とする請求項2記載の集砂装置。
【請求項4】
前記圧力水配管と前記集砂ノズルは、圧力水枝管を介して接続され、該圧力水枝管は前記仕切壁の少なくとも一面から前記沈砂流路内に突出していることを特徴とする請求項2または3記載の集砂装置。
【請求項5】
前記トラフを構成するトラフ底板の上に、薄板からなるライナー板を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の集砂装置。
【請求項6】
前記トラフの端部の前記集砂ピットへの接続部に、前記集砂ピット内の沈砂が前記トラフ内へ逆流しないように、集砂ピット側にのみ開くことができる逆止板を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の集砂装置。
【請求項7】
前記トラフを前記集砂ピットに向けて上り勾配としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の集砂装置。
【請求項8】
沈砂池の池底に堆積した沈砂を圧力水を噴射して集砂ピットへ移送する集砂装置において、
前記沈砂池の基礎面の上方に設置されたトラフと、
前記トラフ内に設置され且つトラフに並行に設置された圧力水配管と、
前記圧力水配管から前記トラフ内に延びる複数の集砂ノズルとを備え、
前記複数の集砂ノズルは、前記トラフ内で間隔を置いて配置されていることを特徴とする集砂装置。
【請求項9】
前記圧力水配管を堆積防止用カバー内に設置したことを特徴とする請求項8記載の集砂装置。
【請求項10】
前記圧力水配管を支持するためのサポートを設け、前記堆積防止用カバーは頂部が高く両端部が低い山形状の断面を有し、該堆積防止用カバーの両端部は前記サポートに固定されていることを特徴とする請求項9記載の集砂装置。
【請求項11】
前記圧力水配管と前記集砂ノズルは、圧力水枝管を介して接続され、該圧力水枝管は前記サポートの一面から前記トラフ内に突出していることを特徴とする請求項10記載の集砂装置。
【請求項12】
前記トラフの端部の前記集砂ピットへの接続部に、前記集砂ピット内の沈砂が前記トラフ内へ逆流しないように、集砂ピット側にのみ開くことができる逆止板を設けたことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の集砂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−39698(P2009−39698A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210482(P2007−210482)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(308024395)荏原環境エンジニアリング株式会社 (8)