説明

集積型マイクロ流体デバイスおよび集積型マイクロ流体デバイスの流量偏差補正方法

【課題】 複数のマイクロ流体デバイスを並列に接続し、一つのポンプや加圧貯留槽などの流体駆動機構から流体を分配供給して運転するに当たり、各デバイスの個体差に起因する、各デバイスに流れる流体の体積流速の偏差を抑制すること。
【解決手段】 圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスのそれぞれの流路入口が、枝分かれした接続配管を介して、一つの流体駆動機構に接続された集積型マイクロ流体デバイスであって、接続配管の分岐部から流路入口までの部分として各々補正配管が設けられること、及び/又はデバイスの流路出口に各々補正配管が設けられること、及び、補正配管とそれに接続されたデバイスの圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値が、デバイスの圧力損失の標準偏差を、該圧力損失の平均で除した値より小さく、かつ5%以下になるように補正配管が各々調製されている集積型マイクロ流体デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスを複数台並列に接続した集積型マイクロ流体デバイスにおいて、該圧力損失の個体差に起因する流量の偏差を低減した集積型マイクロ流体デバイス、及び、該圧力損失の個体差に起因する流量の偏差低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、マイクロ流路、マイクロ流路チップ、化学アイシー(IC)、マイクロリアクター、マイクロ分析チップ、マイクロタス(μ−TAS)等とも称され、部材中に微細な毛細管状の流路を有するデバイスであり、化学的、生化学的、電気化学的などの、反応、処理、分析、検出などに用いられる。例えば、化学や生化学用の合成又は分解反応用デバイス;膜濾過、透析、脱気、吸気、抽出、分散、混合、油水分離などの化学工学的処理デバイス;DNA分析、蛋白質分析、糖鎖分析、電気泳動、液体クロマトグラフィー、ガス分析、水質分析などの分析デバイス;DNAチップなどのマイクロアレイ製造用や微粒子製造用などの微小ノズル、などとして使用される。
【0003】
マイクロ流体デバイスは、特に化学、生化学反応の分野や化学工学的処理の分野に於いて、処理の高速化、副生成物の減少、条件検討の高速化等が図れる上、最適運転条件が定まると、同じマイクロ流体デバイスを必要な生産量となる数だけ並列運転すること(パイルアップ型生産システム)により、スケールアップの検討を行うことなく生産出来るため、基礎研究の終了から生産プラントの稼働までの時間とコストを大幅に節減できると言われており、今後の化学反応装置や化学工学的処理装置として期待されている。また、(生)化学分析の分野に於いても、分析やその前処理において多数並列運転が容易であり、分析の効率の向上とコスト削減が図れると言われている。
【0004】
このようなマイクロ流体デバイスを並列に接続したものとしては、例えば、マイクロリアクターを並列接続したマイクロリアクターシステムが開示されている(特許文献1参照)。これは個々のマイクロリアクターの圧力変動を抑制することによって、これらを並列に接続したマイクロリアクターシステムにおける反応収率の低下などの不都合を低減させるものである。しかしながら、個々のマイクロリアクターの圧力変動を抑制することは、微細な構造を高精度で作製する必要があるため、実際には相当困難であり、製造誤差や経時変化により、各マイクロリアクターの圧力損失に個体差が生じがちであった。
【0005】
この事情は、マイクロリアクター以外のマイクロ流体デバイスについても同様であり、1台のポンプや加圧貯留槽から、並列に設置されたマイクロ流体デバイスに流体を供給すると、各マイクロ流体デバイスの圧力損失に個体差があるために、各マイクロ流体デバイスに流れる流体の体積流速(単位時間当たりの体積流量)に差が生じ、これが製品の特性や分析結果の偏差(ばらつき)の原因となっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2004−16904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数のマイクロ流体デバイスを並列に接続し、一つのポンプや加圧貯留槽などの流体駆動機構から流体を分配供給して運転するに当たり、各マイクロ流体デバイスの個体差に起因する、各マイクロ流体デバイスに流れる流体流量の偏差を改善することにより、並列接続された流体デバイスシステムによって製造される製品の特性や分析結果の均一性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、並列に接続された、圧力損失に個体差のある複数のマイクロ流体デバイスに流れる流体流量の偏差を抑制するためには、ポンプや加圧貯留槽などの流体駆動機構からマイクロ流体デバイスの流路を経て流体が流出するまでの、配管と流路の合計の圧力損失の偏差を減少させればよいこと、また、配管の圧力損失は該配管の長さを調節することによって、正確且つ簡便に調節できることから、両者の圧力損失の和が一定となるように配管の圧力損失を調節することにより課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスのそれぞれの流路入口が、枝分かれした接続配管を介して、一つの流体駆動機構に接続された集積型マイクロ流体デバイスであって、(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管が設けられること、及び/又は前記デバイスの流路出口に各々補正配管が設けられること、及び(2)前記補正配管とそれに接続されたマイクロ流体デバイスの圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値が、前記マイクロ流体デバイスの圧力損失の標準偏差を、該圧力損失の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように、前記補正配管が各々調製されていること、を特徴とする集積型マイクロ流体デバイスを提供する。
【0010】
また、本発明は、一つの流体駆動機構から、枝分かれした接続配管を介して、流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスとのそれぞれの流路入口に接続された集積型マイクロ流体デバイスの各マイクロ流体デバイスに流れる流量偏差の補正方法であって、(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管を設けること、及び/又は前記デバイスの流路出口に各々補正配管を設けること、及び(2)前記補正配管を、該補正配管とそれに接続されたマイクロ流体デバイスの圧力損失の和の標準偏差が、該補正配管と、前記マイクロ流体デバイスの圧力損失の標準偏差を、該圧力損失の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように補正配管を調整すること、を特徴とする流量偏差補正方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、圧力損失に個体差のある複数のマイクロ流体デバイスを並列に接続し、一つの流体駆動機構から流体を分配供給して運転する集積型マイクロ流体デバイスを構築するに当たり、各マイクロ流体デバイスの個体差に起因する流量の偏差を補正して、前記集積型マイクロ流体デバイスによって製造される製品の特性や分析結果の均一性を高めるることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[マイクロ流体デバイス]
マイクロ流体デバイス(以下、単に[デバイス]と称する場合がある)内に設けられた毛細管状の流路は、単なる流体移送用の流路の他、反応や検出などの場としての働きを持つ流路も含む。流路の寸法や形状は任意であり、用途目的に応じて好適な寸法・形状にすることが出来る。例えば断面形状は円、半円、矩形、台形、スリット状などであり得る。流路の断面積は任意であるが、1〜100000μmが好ましく、100〜10000μmがさらに好ましい。この範囲である場合に、マイクロ流体デバイスの流路に一定の体積流速(単位時間当たりの体積流量)で流体を流した場合の圧力損失(以下、「(流路に)一定の体積流速で流体を流した場合の圧力損失」を、単に「(流路の)圧力損失」と称する)が、本発明の効果が発揮され易い値になる。
【0013】
前記マイクロ流体デバイスの圧力損失は任意であるが、マイクロ流体デバイスの使用条件における圧力損失が100Pa〜1MPaであることが好ましく、1〜300kPaであることがさらに好ましい。この範囲の圧力損失のマイクロ流体デバイスを用いる場合に、本発明は容易に実施でき、また本発明の効果が十分に発揮される。なお、上記圧力損失は、マイクロ流体デバイスの流路入口から流路出口までの流路の圧力損失を言う。また、上記圧力損失の値は、並列に接続される複数のマイクロ流体デバイスの平均値とする。
【0014】
本発明の集積型マイクロ流体デバイス(以下、単に「集積型デバイス」と称する場合もある)は、前記マイクロ流体デバイスが並列に接続されて構成されている。本集積型デバイスを構成するデバイスの圧力損失の個体差の程度、即ち、偏差(ばらつき)は特に限定する必要はないが、偏差が大きいほど、本発明の効果が発揮される。例えば、マイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差は、標準偏差を平均で除した値(以下、変動係数と称する。即ち、変動係数=100×標準偏差/平均、(%)]にして3%以上であることが好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。変動係数の上限は限定する必要はなく、いくら大きくても本発明の効果が発揮されるが、100%以下が好ましく、30%以下がさらに好ましい。この範囲であると、後述の補正配管の長さを過大に長くすることや、補正配管の圧力損失をそれほど大きくすることなく、圧力損失の偏差を実用的な水準に改善できる。但し、マイクロ流体デバイスの圧力損失が例えば0.1〜1kPaのように低い場合には、デバイスの圧力損失の変動係数が、例えば1000%のように大きくても、不都合なく十分に改善できる。
【0015】
この意味で、本発明の集積型デバイスを構成するマイクロ流体デバイスは、内部にビーズや繊維などの充填材や保持物を有する流路、内面に多孔質層、凹凸、柱などの構造が設けられた流路、途中に単なる流路以外の構造、例えば濾過膜、ノズル、逆止弁、圧力弁、開閉バルブ、流路切り替えバルブ、などの構造を有するものが、単なる毛細管状の流路に比べて圧力損失の偏差が大きくなりがちであるため、本発明の効果が発揮されやすく好ましい。
【0016】
なお、複数のマイクロ流体デバイスに圧力損失の偏差があると、これらのデバイスに共通の圧力で流体を流したときに、体積流速に偏差が生じる。体積流速と圧力損失とは逆比例の関係にあるから、体積流速の標準偏差は圧力損失の逆数の標準偏差に比例し、体積流速の変動係数は圧力損失の逆数の変動係数と一致する。
【0017】
本発明で並列に接続されるマイクロ流体デバイスの数は、2以上であれば任意であるが、2〜100000が好ましく、10〜100000が更に好ましく、10〜10000が最も好ましい。並列に接続される数が上記の範囲である場合に、個々のマイクロ流体デバイスの圧力損失を比較的容易に測定できる。
【0018】
[流体駆動機構]
上記の複数のマイクロ流体デバイスは、流体を流すための流体駆動機構に接続されている。該流体駆動機構は任意であり、ポンプ、加圧貯留槽、減圧貯留槽、超音波駆動部などが挙げられる。ポンプの種類は任意であり、例えば、シリンジポンプ、プランジャーポンプ、電気浸透流式ポンプなどの、吐出量に吐出圧依存性があるポンプ、が挙げられる。また、加圧貯留槽は、気体で加圧された加圧貯留槽や、液体の高低差により液体を流す液体貯留槽が挙げられる。流体駆動機構が吸引により駆動するものである場合には、上記と同様のポンプ、減圧貯留槽、液体の高低差により減圧された液体貯留槽が挙げられる。
【0019】
[接続配管]
本発明に於いては、前記複数のマイクロ流体デバイスは、1つの流体駆動機構から、前記複数のマイクロ流体デバイスの数に対応して枝分かれした接続配管によって接続されている。前記接続配管は、前記流体駆動機構から直接マイクロ流体デバイスの数だけ枝分かれして接続されていても良いし、流体駆動機構から1本の共通配管部分を経た後に枝分かれして各個別配管部がマイクロ流体デバイスに接続されていても良いし、流体駆動機構から複数の共通配管部分を経た後にそれぞれ枝分かれして各個別配管部がマイクロ流体デバイスに接続されていても良いし、樹枝状に、複数段の枝分かれを繰り返して、各個別配管部がマイクロ流体デバイスに接続されていても良い。ここで、個別配管部とは、流体駆動機構とマイクロ流体デバイス間に接続された配管における、枝分かれ部分からマイクロ流体デバイスまでの配管部分をいい、共通配管部分や枝分かれ部分と連続した配管の一部であってもよいし、枝分かれ部分に接続された別個の配管であってもよい。該個別配管部を後述のように、補正配管とすることが出来る。
【0020】
[出口側配管]
各マイクロ流体デバイスの流路出口には、排出される流体を回収する目的などのために、出口側配管を接続しても良い。該出口側配管は、入口側配管を補正配管とした場合には、マイクロ流体デバイスの流路出口から排出された流体を回収するための配管や、他の装置等に供給するための配管等の任意の配管であってよい。また、後述のように、該出口側配管を補正配管とすることも出来る。
【0021】
[補正配管]
本発明に於いては、前記接続配管の個別配管部と前記出口側配管の少なくとも一方を各々補正配管とする。前記接続配管の個別配管部と前記出口側配管の一方を補正配管とする場合には、そのどちらを補正配管とするかについては、並列に接続した各マイクロ流体デバイス毎に異なっても良いが、統一されていることが好ましい。統一することにより、各マイクロ流体デバイスに掛かる圧力差が減少し、補正配管の圧力損失の偏差を小さくすることが容易になる。
【0022】
前記接続配管の個別配管部を補正配管とする場合(これを第一態様とする)には、前記出口側配管の有無や、その圧力損失の特性は任意である。
【0023】
前記出口側配管が補正配管とする場合(これを第二態様とする)には、前記接続配管の圧力損失は任意である。
【0024】
前記接続配管と前記出口側配管の両者が補正配管であっても良い。即ち、上記第一態様と第二態様を併用しても良い。この場合には、補正配管の長さや圧力損失は、前記接続配管の個別配管部と前記出口側の補正配管の和となる。本態様は、マイクロ流体デバイスの圧力損失が大きい場合や、マイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差が大きい場合に好ましい。
【0025】
本発明に於いては、前記補正配管とそれに接続されたマイクロ流体デバイスの圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値(即ち、変動係数)が、本集積型マイクロ流体デバイスを構成するマイクロ流体デバイスの圧力損失の変動係数より小さく、かつ、該変動係数が5%以下、好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下になるように、前記補正配管が各々調整されている。
【0026】
[第一態様]
本発明の第一態様においては、前記接続配管の分岐部から各マイクロ流体デバイスの流路入口に至る接続配管の個別配管部を補正配管とする。各補正配管は、該補正配管の圧力損失とそれに接続されるデバイスの圧力損失の和が一定になるように圧力損失を定める。上記のように補正配管の圧力損失を定める方法は任意であり、例えば、(1)各マイクロ流体デバイスに一定の体積流速で流体を流して、各マイクロ流体デバイスの圧力損失を測定し、それに応じて接続する補正配管の圧力損失を定める方法、(2)各マイクロ流体デバイスに一定圧力損失の補正配管を接続した状態で、上記(1)と同様にして合計の圧力損失を測定し、その結果から、合計の圧力損失が一定値になるように補正配管を切断して長さを調節する方法、(3)上記(1)において一定の体積流速でなく、一定の圧力差で流体を流して体積流速を測定し、これを圧力損失に換算して補正する方法、(4)上記(2)において一定の体積流速の代わりに一定の圧力差で流体を流し、各体積流速が一定となるように補正配管の長さを調節して補正する方法、等を採用しうる。
【0027】
また、補正配管の圧力損失を定める方法も任意であり、(1)管の一定長さ当たりの圧力損失を測定し、補正すべき圧力損失に相当する長さを計算して調製する方法、(2)圧力損失の実測により、目的の圧力損失を持つ補正配管を得る方法、等を例示できる。
【0028】
最小の圧力損失(即ち、圧力損失の最小の補正量)を持つ補正配管の圧力損失は任意であるが、好ましくはそれが接続されるマイクロ流体デバイスの圧力損失の10倍以下、更に好ましくは3倍以下、最も好ましくは1倍以下である。他の補正配管の圧力損失は、マイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差に応じて決められる。この範囲とすることにより、圧力損失の補正を補正配管の長さで行う場合に、補正配管として用いる管の圧力損失の変動係数が大きくても、圧力損失の標準偏差としての誤差が少なくなり、簡単に高精度の補正が可能になる。さらに、補正配管の耐圧性や、接続配管と流体駆動機構との接続部の耐圧性を高くする必要が無くなり、流体駆動機構として、吐出圧の低いものが使用できる。補正配管の圧力損失の下限は、本発明の集積型デバイスを構成するマイクロ流体デバイスの内で最も高い圧力損失を示すデバイスに接続する補正配管についてはゼロであっても良く、この時、本発明の集積型デバイスを構成するデバイスの内で最も低い圧力損失を示すマイクロ流体デバイスに接続する補正配管の圧力損失の下限は、本集積型デバイスを構成するデバイス中の最大の圧力損失と最低の圧力損失の差となる。
【0029】
ところで、本第一態様に於いて、前記接続配管の共通配管部の圧力損失は、該共通配管部が1本である場合は任意であり、複数本である場合はそれらの圧力損失が同じであればその値は任意で得ある。しかしながら、補正配管である個別配管部の圧力損失に比べて十分小さいことが好ましく、例えば、10%以下が好ましく、5%以下が更に好ましく、2%以下が最も好ましい。下限は、限りなくゼロに近いことが好ましい。この範囲とすることで、補正配管を共通配管部に接続する位置の誤差による影響が小さくなり、本発明の変動改善効果が十分に発揮される。
【0030】
補正配管の圧力損失は、内径(又は断面積)の選択と長さでもって調節することが出来る。本発明に於いては、補正配管の内径は10〜200μmの範囲にあることが好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。前記補正配管の内径は、用いるマイクロ流体デバイスに流す流体の体積流速やマイクロ流体デバイスの圧力損失に応じて選択でき、マイクロ流体デバイスを使用するときの体積流速が小さいほど、また、マイクロ流体デバイスの圧力損失が高いほど小径のものを用いることが好ましい。勿論、該内径は一定である必要はなく、例えば途中から変わっていて良い。接続配管の流路断面形状は円が好ましいが、円以外の場合には、上記内径に相当する断面積のものとする。
【0031】
前記補正配管の長さは任意であり、圧力損失を前記のように調節すれば、本集積型マイクロ流体デバイスの寸法や並列接続数によって、好適な値に出来る。例えば、最短の補正配管の長さは他の補正配管の長さは、マイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差に応じて決められる。また、0.01m以上とすることも好ましく、配管の切断と接続が容易になる。さらに、0.5m以上とすることも好ましく、補正配管が接続配管や出口側配管の機能を兼用することが出来る。最短の補正配管の長さの上限は5m以下が好ましく、3m以下がさらに好ましい。この範囲以下とすることにより、コンパクトに補正できる。長さが好ましい範囲に入るよう、上記内径を選択することができる。
【0032】
また、本発明に於いては、前記補正配管として用いる管の、一定長さの圧力損失の変動係数は任意であるが、マイクロ流体デバイスの圧力損失の変動係数に比べて小さいもの、例えば、好ましくは1倍未満、さらに好ましくは1/2未満、最も好ましくは1/4未満のものが好ましい。これにより、補正配管の長さからその圧力損失を十分な精度で推定出来るため、補正配管を、圧力損失の測定を行うことなく、計算された長さに切断するだけで形成出来るため、補正が極めて容易になる。なお、補正配管として用いることのできる管の市販工業製品の変動係数は通常2%未満である。
【0033】
また、補正配管の材質は任意であるが、硬度の高いものが、補正配管の寸法精度を高める上で好ましい。特に、補正配管とマイクロ流体デバイスの圧力損失の和が大きな時、例えば100kPa以上である場合には、運転時の補正配管の内径の変動を小さくする上で好ましい。補正配管の材質は、例えば、ヤング率が好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは2MPa以上、最も好ましくは3MPa以上である。ヤング率の上限は、配管がもろくならなければ高い方が好ましく、特に上限を設ける必要はないが、製造の容易さなどの点から、好ましくは500MPa、さらに好ましくは200MPa以下である。補正配管は、金属、ガラス、水晶などの結晶、有機重合体などであり得るが、有機重合体が、柔軟性と高い破壊強度を兼ね備えているため好ましい。勿論、これらの複合体であっても良い。
【0034】
有機重合体としては、ポリイミド、(芳香族)ポリアミド、ポリ四フッ化エチレンなどの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、PFA(四フッ化エチレンとアルコキシフッ化エチレンの共重合体)などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。有機重合体は、勿論、共重合体やブレンドであっても良い。
【0035】
本第一態様において、マイクロ流体デバイスの流路出口側に出口側配管を接続する場合には、該出口側配管の圧力損失については任意であるが、該出口側配管の圧力損失の標準偏差は、前記補正配管とマイクロ流体デバイスの合計の圧力損失の標準偏差より小さいことが好ましい。該圧力損失の標準偏差が小さいと、用いる配管の圧力損失が大きくても、本発明の効果を損なうことがない。
【0036】
また、該出口側配管の圧力損失は、好ましくは前記補正配管とデバイスの圧力損失の和未満であり、更に好ましくは前記和の50%未満、最も好ましくは20%未満である。該圧力損失を小さくすることにより、圧力損失の変動係数が大きな配管を用いても、圧力損失の標準偏差が前記和に比べて小さくなり、本発明の効果を損なうことがない。
【0037】
或いはまた、本発明に於いて、該出口側配管の圧力損失とマイクロ流体デバイスの圧力損失の和をマイクロ流体デバイスの圧力損失と見なし、その圧力損失の偏差を補正配管により補正することも好ましい。本法は、出口側配管の圧力損失の偏差がマイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差に比して無視できない程度に大きな場合に好ましく、該出口側配管の圧力損失の偏差も同時に補正することができる。
【0038】
本第一態様は、補正配管の圧力損失が大きくても、マイクロ流体デバイスに掛かる圧力は増加しないため、マイクロ流体デバイス自体の耐圧性や、補正配管とデバイスとの接続部の耐圧性を増す必要はない。
【0039】
[第二態様]
本発明の第二態様は、前記各マイクロ流体デバイスの流路出口にそれぞれ接続された出口側配管を補正配管とする。該補正配管の他端の処理は任意であり、例えば、それぞれが大気中に開放されていても良いし、前記接続配管と丁度逆に、一度に又は段階的に合流していても良い。しかしながら、合流している場合には、前記各マイクロ流体デバイスの流路出口から前記合流部までの出口側配管を補正配管とする。この場合、合流部までの出口側配管の圧力損失やその変動係数については、前記第一態様に於ける接続配管の個別配管部と同様であり、合流部以後の共通配管部分の圧力損失については、前記第一態様に於ける接続配管の共通配管部分と同様である。
【0040】
本態様に於ける補正配管の圧力損失の大きさ、圧力損失の変動係数、配管の長さ、配管の断面積、素材などについては、前記第一態様に於ける補正配管と同様である。
【0041】
本態様においては、流体駆動装置とマイクロ流体デバイスとを結ぶ接続配管の圧力損失やその変動係数については任意であるが、前記第一態様に於ける出口側配管と同様である。
【0042】
また、本発明に於いて、流体駆動装置とマイクロ流体デバイスとを結ぶ接続配管の圧力損失とマイクロ流体デバイスの圧力損失の和をマイクロ流体デバイスの圧力損失と見なし、その圧力損失の偏差を補正配管により補正することも好ましい。本法は、接続配管の圧力損失の偏差がマイクロ流体デバイスの圧力損失の偏差に比して無視できない程度に大きな場合に好ましく、該接続配管の圧力損失の偏差も同時に補正することができる。
【0043】
本第二態様は、出口側配管を1本に纏める必要がないため、配管の接続と補正が容易である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に
限定されるものではない。なお、本実施例で言う「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0045】
[紫外線硬化性の組成物(X1)の調製]
重合性化合物としてジシクロペンタニルジアクリレート「DCA−200」(大日本インキ化学工業株式会社製)50部および平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)50部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部を均一に混合して紫外線硬化性の組成物(X1)を調製した。
【0046】
[紫外線硬化性の組成物(X2)の調製]
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加しなかったこと以外は紫外線硬化性組成物(X1)と同様にして紫外線硬化性の組成物(X2)を調製した。
【0047】
[製膜液(Y1)の調製]
重合性化合物として、前記「DCA−200」を40部、および前記「ユニディックV−4263」50部、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)10部、貧溶剤としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を240部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュア184」を5部、均一に混合して、製膜液(Y1)を調製した。
【0048】
[紫外線の照射]
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト251Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が50mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、大気中で照射した。
【0049】
[参考例]
本参考例に於いては、実施例において使用するマイクロ流体デバイスの圧力損失及び変動係数を測定した。
【0050】
〔マイクロ流体デバイスの作製〕
厚さ1mmのアクリル板製の基材1上に、スピンコーターにて組成物(X2)を塗工し、該塗膜に紫外線を2秒間照射して、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X2)が半硬化した第一樹脂層2を形成した。
【0051】
その上に、スピンコーターにて製膜液(Y1)を塗工し、該塗膜に紫外線を60秒間照射して、製膜液(Y1)中の重合性化合物が重合すると同時に貧溶剤と相分離し、多孔質体を形成した。その後、エタノールにて該多孔質体の細孔中の貧溶剤を洗浄除去し、室温で乾燥して、第一樹脂層2の上に固着した多孔質層3を形成した。
【0052】
多孔質層3の上に、スピンコーターにて組成物(X1)を塗工すると、組成物(X1)の一部は多孔質層3の細孔を充填し、更に多孔質層3の上に未硬化の塗膜を形成した。次いで、フォトマスクを通して流路5となるべき部分以外の部分に紫外線照射を40秒行い、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)が半硬化した第二樹枝層4を形成し、非照射部分の未硬化の組成物(X1)を50%エタノール水溶液で洗浄除去して、第二樹脂層4の流路5となるべき溝を形成し、該溝の底面は、再び多孔質層3を露出させた。そして、多孔質層3の該溝以外の部分は、組成物(X1)が細孔に充填された状態で硬化し、非多孔質とした。
【0053】
厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンシート(OPPシート)(二村化学社製)を一時的な支持体(図示略)とし、その上にスピンコーターにて組成物(X2)を塗工し、紫外線ランプにより紫外線を2秒間照射して半硬化させて第三樹脂層6とし、これを、先に作製した積層部材の第二樹脂層4の上に積層し、紫外線を120秒間照射することにより固着させた後、前記一時的な支持体(図示略)を剥離除去した。
以上のようにして、断面が矩形で、底面に多孔質層が形成された、平面視ジグザグ状の毛細管状の流路5を有するマイクロ流体デバイス前駆体が得られた。
【0054】
前記マイクロ流体デバイス前駆体の基材1側から第二樹脂層4まで、流路5の両端部において、各直径0.3mmの孔をドリルで開け、流入口7および流出口8を形成し、マイクロ流体デバイスを得た。
【0055】
〔マイクロ流体デバイスの寸法測定〕
下記のマイクロ流体デバイスの圧力損失の測定及び集積型マイクロ流体デバイスの圧力損失の測定を行った後、該マイクロ流体デバイスから10個をランダムに取り出して切断し、ノギス、光学顕微鏡、及び走査型電子顕微鏡を用いてデバイス各部の寸法を測定した。その結果、マイクロ流体デバイスの外寸は、75×50×1.19mmであり、基材1の平均厚みは1.00mm、第一樹脂層2の平均厚みは31μm、多孔質層の平均厚みは8μm、多孔質層3に含浸した部分を除く第二樹脂層4の平均厚みは51μm、第三樹脂層6の平均厚みは98μmであり、また、流路5の平均幅は106μm、流路6の平均長さは50cmであった。
【0056】
〔マイクロ流体デバイスの圧力損失の測定〕
上記工程により作製した10個のマイクロ流体デバイスの圧力損失とその変動係数を測定した。
【0057】
吐出圧を測定できる圧力計(図示略)が付属したマイクロシリンジポンプ(図示略)に、端部をプラズマ処理により親水化した、外径1.6mm、内径500μm、長さ1.0m±0.5mmのテフロン(登録商標)チューブ(図示略)(APCHURCH SCIENTIHIC社製)を接続し、前記テフロン(登録商標)チューブ(図示略)の他端を、図1に示したような、孔を空けた7×7×3mmのアクリル樹脂製の接続部材9にシリコーン系接着剤で接着し、厚さ1mmのシリコーン製のパッキン18を介して、クランプ(図示略)によりマイクロ流体デバイス10の各流入口7に接続した。
【0058】
マイクロシリンジポンプから、0.1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を3.0mm/分の体積流速で送液し、マイクロシリンジポンプ(図示略)の吐出圧力(即ち、配管とマイクロ流体デバイスの圧力損失)を測定した。結果を表1に示した。圧力損失の変動係数が9.4%であることから、これらのマイクロ流体デバイスを並列に接続し、全マイクロ流体デバイスに掛かる圧力が同じ条件で前記水溶液を流した場合には、各マイクロ流体デバイスに流れる前記水溶液の体積流速の変動係数は9.8%であると計算される。
【0059】
なお、前記接続部材9をマイクロ流体デバイス10に接続せずに測定したときの圧力損失、即ち前記テフロン(登録商標)チューブの圧力損失は、0.1kPa未満と小さな値であったため、表1に示した圧力損失はマイクロ流体デバイスの圧力損失であることが分かる。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例1]
本実施例に於いては、本発明の第一態様の例を示す。
〔補正配管用管の作製〕
外径1.6mm、内径50μmの、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製のチューブ(APCHURCH SCIENTIHIC社製)を長さ1000mmに切断し、端部をプラズマ処理により親水化して前記マイクロシリンジポンプ(図示略)に接続し、前記マイクロ流体デバイスの圧力損失の測定と同様にして該PEEKチューブの圧力損失を測定したところ、335.0kPaであった。即ち、このチューブは上記流量において、1mm当たりの圧力損失が0.335kPaであることが分かる。上記で測定した長さ1mのPEEKチューブをマイクロ流体デバイスNo.1用の補正配管(補正配管No.1)とすると、マイクロ流体デバイスNo.1と補正配管No.1の圧力損失の合計は372.9kPaと計算されるから、No.2〜No.10の各マイクロ流体デバイスについても、合計の圧力損失が372.9kPaとなるように長さを計算してPEEKチューブを切断し、端部をプラズマ処理により親水化して、補正配管No.2〜No.10を作製した。各補正配管の長さを表2に示す。
【0062】
〔集積型マイクロ流体デバイスの作製〕
吐出圧を測定できる圧力計(図示略)が付属したギヤポンプ12に、接続配管の共通配管部13として、内径5mm、長さ10cmの、一方の端が塞がれた黄銅管を接続し、該黄銅管に、接続配管の個別配管部14として、前記補正配管No.1〜No.10を接続した。
【0063】
前記各補正配管の他端に接続部材9を接着し、厚さ1mmのシリコーン製のパッキン18を介して、クランプ(図示略)により各マイクロ流体デバイス10の流入口7に接続した。
【0064】
また、各マイクロ流体デバイスの流出口8に、端部をプラズマ処理により親水化した、外形1.6mm、内径500μm、長さ1.0m±0.5mmのテフロン(登録商標)チューブを、接続部材9、パッキン18、及びクランプ(図示略)を用いて接続して出口側配管15とし、該テフロン(登録商標)チューブの他端を試験管16に挿入した。各試験管16に蒸発防止用の流動パラフィンを1滴注入し、その状態で各試験管16の質量を秤量した。
【0065】
マイクロ流体デバイス10は台の上に水平に並べて置き、試験管16に挿入した出口側配管15の端の高さは、全て同じ高さとした。ポンプ12の吸入口は、内径5mmのテフロン(登録商標)チューブ17でもって貯液層11に接続した。
【0066】
〔集積型マイクロ流体デバイスの体積流速の測定〕
試験溶液として0.1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を用い、あらかじめポンプ12を運転して、全ての接続配管13、14、マイクロ流体デバイス10の流路、及び出口側配管15中に該水溶液を充満させた後、前記のように接続配管14の端を試験管16に挿入し、ポンプ12から300mm/分の体積流速で送液したところ、ポンプ12の吐出圧力(配管とマイクロ流体デバイスの合計の圧力損失)は373kPaを示した。
【0067】
ポンプ12から1時間送液した後ポンプ12を停止し、各試験管16に溜まった水溶液の量を秤量して、各マイクロ流体デバイスに流れる体積流速の値を得た。結果を表2に示した。これから体積流速の変動係数を計算すると0.18%であり、著しい改善効果を示した。
【0068】
その後、各マイクロ流体デバイスから出口側配管15を取り外して、同じ体積流速でポンプを駆動したが、ポンプの吐出圧に変化はなかった。このことから、出口側配管15の圧力損失は、マイクロ流体デバイスに比べて無視できる程小さく、出口側配管15は 上記の体積流速の測定に影響しないことがわかる。
【0069】
【表2】

【0070】
[実施例2]
本実施例に於いては、本発明の第二の態様の例を示す。
実施例1で作製した集積型マイクロ流体デバイスに於いて、流入口7に接続する個別配管14として、端部をプラズマ処理により親水化した、内径500μm、長さ1000±0.5mmのテフロン(登録商標)チューブを用い、出口側配管15として、前記補正配管No.1〜No.10を用いた。それ以外は、実施例1と同様の測定を行った結果、体積流速の変動係数は0.17%と、実施例1とほぼ同じであった。
【0071】
即ち、補正配管をマイクロ流体デバイスより下流側に接続しても、上流側に接続した婆愛と同様の、体積流速の偏差の改善効果が得られた。
【0072】
[実施例3]
表3に示したように、実施例2に於ける補正配管No.1〜No.10の代わりに、最も補正量の小さい補正配管(No.11)の長さを100mmとした補正配管No.11〜No.20を使用したこと、および、各補正配管の下流端に、端部をプラズマ処理により親水化した、外形1.6mm、内径500μm、長さ500±0.5mmのテフロン(登録商標)チューブを接続し、前記補正配管と該テフロン(登録商標)チューブの合計を出口側配管15としたこと、以外は、実施例2と同様の試験を行った。得られた各体積流速の値を表3に示した。体積流速の変動係数は0.24%であり、著しい改善効果が認められた。
【0073】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施例で作製するマイクロ流体デバイスの斜視分解図である。
【図2】実施例で作製する集積型マイクロ流体デバイスの見取り図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基材
2 第一樹脂層
3 多孔質層
4 第二樹脂層
5 流路
6 第三樹脂層
7 流入口
8 流出口
9 接続部材
10 マイクロ流体デバイス
11 貯留槽
12 ポンプ(ギヤポンプ)
13 接続配管の共通配管部
14 接続配管の個別配管部
15 出口側配管
16 試験管
17 ポンプ吸入側配管
18 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスのそれぞれの流路入口が、枝分かれした接続配管を介して、一つの流体駆動機構に接続された集積型マイクロ流体デバイスであって、
(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管が設けられること、及び/又は前記マイクロ流体デバイスの流路出口に各々補正配管が設けられること、
及び、
(2)前記補正配管とそれに接続されたマイクロ流体デバイスの圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値が、前記マイクロ流体デバイスの圧力損失の標準偏差を、該圧力損失の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように、前記補正配管が各々調製されていること、
を特徴とする集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスのそれぞれの流路入口が、枝分かれした接続配管を介して、一つの流体駆動機構に接続された集積型マイクロ流体デバイスであって、
(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管が設けられ、前記マイクロ流体デバイスの流路出口に補正配管以外の配管が設けられること、
又は、前記接続配管が前記マイクロ流体デバイスの各々の流路入口に接続され、前記マイクロ流体デバイスの流路出口に各々補正配管が設けられること、及び
(2)前記補正配管と、それに接続されたマイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスに接続された補正配管以外の配管部との圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値が、前記マイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスに接続された補正配管以外の配管部との圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように、前記補正配管が各々調製されていること、
を特徴とする集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記補正配管の調製が、補正配管の長さを調製することによる補正である請求項1又は2に記載の集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記マイクロ流体デバイスの接続数が2〜100000の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記補正配管の内径が10〜200μmの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記マイクロ流体デバイスの流路断面積が1〜100000μmの範囲にある請求項1〜5のいずれかに記載の集積型マイクロ流体デバイス。
【請求項7】
一つの流体駆動機構から、枝分かれした接続配管を介して、流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスとのそれぞれの流路入口に接続された集積型マイクロ流体デバイスの各マイクロ流体デバイスに流れる流量偏差の補正方法であって、
(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管を設けること、及び/又は前記デバイスの流路出口に各々補正配管を設けること、及び
(2)前記補正配管を、該補正配管とそれに接続されたマイクロ流体デバイスの圧力損失の和の標準偏差が、該補正配管と、前記マイクロ流体デバイスの圧力損失の標準偏差を、該圧力損失の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように補正配管を調整すること、
を特徴とする流量偏差補正方法。
【請求項8】
一つの流体駆動機構から、枝分かれした接続配管を介して、流路入口から流路出口までの圧力損失に個体差がある複数のマイクロ流体デバイスとのそれぞれの流路入口に接続された集積型マイクロ流体デバイスの各マイクロ流体デバイスに流れる流量偏差の補正方法であって、
(1)前記接続配管の前記分岐部から前記流路入口までの部分として各々補正配管を設け、前記マイクロ流体デバイスの流路出口に任意の配管を設けること、
又は、前記接続配管が前記マイクロ流体デバイスの各々の流路入口に接続し、前記マイクロ流体デバイスの流路出口に各々補正配管を設けること、
(2)前記補正配管と、それに接続されたマイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスに接続された補正配管以外の配管部との圧力損失の和の標準偏差が、該補正配管と、前記マイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスに接続された補正配管以外の配管部との圧力損失の和の標準偏差を、該圧力損失の和の平均で除した値より小さく、かつ、5%以下になるように補正配管を調整すること、
を特徴とする流量偏差補正方法。
【請求項9】
前記補正配管の調製を、該補正配管の長さの調製により行う請求項6に記載の流量偏差補正方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−272230(P2006−272230A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97871(P2005−97871)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】