説明

集魚灯

【課題】集魚灯のLEDが発生する熱を効率よく外部に放熱する構造にし、且つ、LEDの温度をLEDの最大定格温度以下に保ちLEDの特性を長時間維持し長寿命を実現する。また、エンジン起動用のバッテリーを併用する場合、電力の使用が長時間となり、電圧が下がり過ぎエンジンが起動しない事故を未然に防ぐ。
【解決手段】LED1を搭載する基板3をポリイミドに薄膜技術で銅箔を形成し0.05mm以下に薄くし、LEDで発生された熱をすばやく基板の裏の金属板を通して放熱フィンに効率良く伝熱し外部に放散する。また、温度が最も上昇する基板中央に温度センサー7を設け温度検出しLEDの温度が最大定格より越えないよう制御しLEDの特性劣化を防ぎLEDが長時間使用できるようにする。さらに、エンジン起動用のバッテリーを併用する場合、出力電圧をモニターし設定電圧を下回った時LED集魚灯を自動的に消灯しエンジンが起動しない事故を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを用いた照明器の構造および電源制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油価格が高騰し燃料費が大きな負担となる車両を使用している業界および自家用車の使用頻度の高い地方の家庭に影響を及ぼすようになってきた。この対策として輸送業者は鉄道を併用する等おこない燃料負担を軽減させる取り組みを行ってきている。家庭でも、エコカー補助金、減税等の助成もあり燃料効率の改善を進めている。
【0003】
一方、照明器においてもエネルギー効率の低い電球の生産が打ち切られ、蛍光灯あるいはLEDに置き換えられてきている。LEDは消費電力が小さいが価格が高く初期投資負担が大きいことから導入の壁となっており、使用時間が長い業務用では比較的導入が進んできたが家庭ではあまり進んでいないのが実情である。
【0004】
業務用途として漁船の集魚灯があり、現在、メタルハロイドランプ、ハロゲンランプが使用されている。これらのランプをLED化し省エネを行うべく10年近く前から水産庁を中心として研究が進められ、最近になりLED化により釣果はさほど変わらず重油の使用量が激減するという成果が発表され漁船に導入されてきた。
【0005】
LEDは熱を発生しないと宣伝されているが、発生する熱が比較的少ないのが実際で0.1wクラスのLEDはほとんど熱をもたない。しかしながらLED電球のように数ワットクラスになると熱が発生し電球の放熱部の金属を触れないほど熱くなっている。集魚灯のメタルハロイドランプが1kワット程度でありLED化し低消費電力を実現しても100ワット程度が必要となりLEDの温度が100℃を超えLEDの寿命を縮めてしまう。
【0006】
この対策として、LEDの基板の銅箔を100μm程度と厚くし熱抵抗を下げ短時間に放熱板に熱を伝え放熱効果を上げる工夫を行っている。しかしながら、一般の基板の銅箔の厚みは35μmが限界でそれ以上は特殊品となり高価なものとなっており、また、100μm以上にした方がさらに効果があり望ましい。さらにいかなる環境下でも放熱が十分な放熱設計が非常に難しいものであるため問題がおこる可能性がある。
【0007】
LED集魚灯はバッテリーでも点灯でき、エンジン起動用のバッテリーを使用する場合があり、特にプレジャーボートで多い。LEDを長時間点灯しっぱなしにするとバッテリーの電圧が降下し、エンジンが起動できない事故が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−086230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LEDを用いた集魚灯において、LEDが発生する熱を良好に放熱するLED基板まわりの構造を実現する。また、LEDが搭載された基板の温度分布の一番高い中央部の温度を監視し、設定温度以上昇温しないことを可能とする。さらに、エンジン起動用のバッテリーを使用したときバッテリーの電圧を検知する機能を持たせる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
LEDを使用した集魚灯において、複数のパワーLEDとポリイミドに無接着剤にて銅箔を形成した薄型基板と金属板と放熱フィンを備えた構造であることを特徴とするものである。
【0011】
前記薄型基板は金属板に熱伝導性接着テープにて接着され、金属板の裏面に熱伝導性接着テープにて放熱フィンが接着されビスにて固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記薄型基板にLEDを分散し搭載し、薄型基板の中央に温度センサーを搭載したことを特徴とするものである。
【0013】
前記温度センサーの情報を基に検出温度が上るに従いLEDに流す電流を抑制する機能の制御回路を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
バッテリーにて駆動するLED集魚灯において、バッテリーの出力電圧と基準電圧を比較する機能と、比較した結果に基づきLEDを消灯させる機能を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
厚みが0.1mm以下の薄型基板を使用し、熱伝導性が優れた接着剤で熱伝導の良好な金属板に貼り、且つ、放熱フィンで放熱をおこなうことによりパワーLEDが過度の昇温をすることを抑制する。
【0016】
複数のLEDを搭載した薄型基板の中央部に温度センサーを設け、温度検出回路で温度を検出し電流制御回路にて温度を制御することによりLEDの温度を定格温度以下に維持しLEDの特性劣化を防止し長時間使用できることを実現する。
【0017】
バッテリーから供給される電圧を監視し、エンジンが駆動できる最小の電圧よりやや高い電圧になったら自動的にLEDを消灯することにより、バッテリー電圧降下によるエンジンが始動しなくなる事故を未然に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例の集魚灯の断面図。
【図2】本発明の実施例の集魚灯の正面図。
【図3】本発明の実施例の電圧制御回路の回路図。
【図4】本発明の実施例の電圧モニターの回路図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の実施例の集魚灯の断面図である。LED1と電流制限抵抗器2は薄型基板3に搭載されている。本実施例ではLED1は表面実装型の白色パワーLED1ワットクラスのものを使用した。白色LEDは青色LEDの表面に黄色の蛍光シリコン樹脂がコーティングされており、光スペクトルは青色でピークを示し可視光領域で中心に山を持って全域に分布しているため、青色LEDより明るく、且つ、青色の色も含むため多くの魚類を集めるのに適している。
【0020】
薄型基板3は、ポリイミドシートに薄膜技術で銅箔を形成しており厚みが薄い。本実施例ではポリイミドの厚みが25μmで銅箔の厚みは8μmのものを使用した。この薄型基板を金属板5に熱伝導性接着剤4で貼った。金属板5には熱伝導性接着剤4で放熱フィンが貼られている。本実施例では、金属板5はさびに強いステンレスの厚み1.5mmを使用した。熱伝導性接着剤4は厚み50μmを使用し、放熱フィンはアルミの表面がアルマイト処理されたものを使用した。
【0021】
本実施例の薄型基板は50μm以下の厚みであるため、LED1で発生された熱は短時間で金属板5に伝熱され放熱フィンからすばやく放熱する構造となっている。
【0022】
図2は、本実施例の集魚灯のLED(薄型)基板の表面図である。図を分かり易くするためLEDの数が18個の場合を示している。LED1の電流を制限するために電流制限抵抗器2が設けられている。多数のLED1が点灯されると発熱し、時間と共に温度分布が現れ中央部が一番高温になる。この位置に温度センサー7が設けられている。
【0023】
図3は、本実施例の温度が自動的に制御される機能を備えた集魚灯の回路図であり、右側のLED群と左側の制御回路からなる。本実施例の集魚灯の電源Viは12vである。電圧Viが三端子レギュレータ42に入力されVoに減圧される。Vo≒1.25×{1+(S7+R42)/R1}となるように設計した。抵抗器R1、R42は一定の値であるがサーミスタの抵抗値S7は温度によって変化する。サーミスタの抵抗値S7は温度の上昇と共に小さくなる。よって、温度が上ると出力電圧V0は小さくなりLED1に流れる電流が小さくなりLEDの温度が上昇しないように作用する。
【0024】
本実施例に使用したパワーLEDの温度の最大定格が120℃であったが、測定箇所までの温度差を取って90度以下になるように設定した。LEDの温度を常に120以下になるよう制御しLEDの特性劣化を防いでいる。
【0025】
LEDに印加する電力を下げる方法は、電圧を下げる方法以外に印加電圧をパルス状にし、通電する時間と通電しない時間に分割し、この2つの時間を変えることにより調節する方法がありLEDの温度が上るに従い通電時間を短くすることによってもLEDの温度上昇を調節することができる。
【0026】
図4は、本実施例のバッテリーの電圧を監視する電圧モニター回路である。定格12vのバッテリーの出力電圧Viは充電直後は14vを越えているが使用するに従い電圧効果を起こす。プレジャーボートの場合、LED集魚灯専用のバッテリーを搭載しているが、エンジン起動用のバッテリーもLED集魚灯の電源として併用していることが多い。この場合、LED集魚灯の点灯時間が長くなってバッテリーの出力電圧Viが12vを下回りエンジンを起動できなくなる事故が発生することが予知される。よって、この対策としてバッテリーの出力電圧Viをモニターし設定電圧を下回ったとき自動的にLED集魚灯を消灯させることで対策をおこなう。
【0027】
バッテリーの出力電圧Viは抵抗器R51、R52で分圧され、出力電圧Viが12vの時5.1vよりやや小さい電圧になるよう設定しコンパレータ55−入力端子に入力している。コンパレータ55の+入力端子には参照電圧を入力するが参照電圧として5.1Vのツェナーダイオード54を採用している。ツェナーダイオード54にはバッテリーの出力電圧Viを利用し抵抗器R53を経て電流が供給され徐々に電圧が上るが、出力電圧Viが12vを超えると5.1vの一定電圧になる。よってバッテリーの出力電圧が12vを下回るとコンパレータ55の出力が反転しスイッチ56が切断されLEDに供給される電圧Vo2は遮断される。
【0028】
プレジャーボート用のLED集魚灯は12vで4A流れるタイプが主流である。これに対し船外機のエンジン起動時は数十Aを必要とする。バッテリーの出力は出力電流が大きくなると電圧が下がる傾向にあるため、余裕を見て12vでLED集魚灯が切断されるように設定している。また、ツェナーダイオードの電圧が温度によって変化するのが一般であるが、ほとんど変化が無い5v近辺のものを選択し温度の影響を小さくした。
【符号の説明】
【0029】
1・・・LED
2・・・電流制限抵抗
3・・・薄型基板
4・・・熱伝導性接着テープ
5・・・金属板
6・・・放熱フィン
7・・・温度センサー
Vi・・・入力電圧
Vo・・・出力電圧
41・・・三端子レギュレータ
R1、R42、R51〜R53・・・抵抗器
S7・・・サーミスタ
54・・・ツェナーダイオード
55・・・コンパレータ
56・・・スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを使用した集魚灯において、複数のパワーLEDとポリイミドに無接着剤にて銅箔を形成した薄型基板と金属板と放熱フィンを備えた構造であることを特徴とするLED集魚灯
【請求項2】
前記薄型基板は金属板に熱伝導性接着テープにて接着され、金属板の裏面に熱伝導性接着テープにて放熱フィンが接着されビスにて固定されていることを特徴とする請求項1に記載したLED集魚灯。
【請求項3】
前記薄型基板にLEDを分散し搭載し、薄型基板の中央に温度センサーを搭載したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したLED集魚灯。
【請求項4】
前記温度センサーの情報を基に検出温度が上るに従いLEDに流す電流を抑制する機能の制御回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載したLED集魚灯。
【請求項5】
バッテリーにて駆動するLED集魚灯において、バッテリーの出力電圧と基準電圧を比較する機能と、比較した結果に基づきLEDを消灯させる機能を備えていることを特徴とするLED集魚灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−191926(P2012−191926A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82263(P2011−82263)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(503014012)株式会社サーマルプリンタ研究所 (10)
【出願人】(511084407)有限会社藤田商店 (1)
【出願人】(511084072)
【出願人】(511084083)
【Fターム(参考)】